【コラム・先﨑千尋】田植えから1カ月余り。どの田んぼも青々してきている。我が家の田んぼを見ていると、「今年も米が食べられるナ」、とホッとした気分になる。
この2年、この国では米をめぐって異常な事態が続いた。いわゆる「米騒動」。スーパーの棚から米が消え、米が入らなくなり、商売を止めた米屋が出るニュースも。備蓄米を買い求め、朝早くから行列。どこにも騒動が起きていないのに「米騒動」。日本人にとって米とは何かを問い直すきっかけでもあった。
5月23日、私も役員になっている「農業協同組合研究会」が、東京で「令和の米騒動の現在地と今後の展望」というテーマで研究大会を開いた。今回はその報告をする。
今年の秋も波乱含み
日本大学の西川邦夫教授(3月まで茨城大学教授)は「令和の米騒動と米政策」と題して報告した。西川氏は、令和の米騒動の要因は、事前対策としての生産調整の失敗と、事後対策としての流通対策の不備だとした。
長期的には主食用米の需要は減少していく傾向が続いているが、コロナ過で需要が大きく減り、在庫が膨らんだこともあって、政府は生産調整の強化を続けた。しかし、2023年から需要が回復し、24年までの2年間で78万トン不足した。備蓄米が59万トン放出されたが、生産現場では農協と業者の集荷競争が過熱化。米価が急騰し、店頭でも5キロで5000円以上になるまでになった。
25年産米は増産になり、輸入米も増え、現在では96万トンの供給過剰になっている。26年産も増産が見込まれており、今年の秋には米があふれかえることになる。
西川氏は最後に今後の政策の方向について、事前対策(生産調整、転作)から事後対策(流通対策)へ、主食用米に対する支援は適正価格+生産者への直接支払いの二段構えへ、反収の上昇のために新たな品種改良、既に開発されている品種の普及の3点を提言した。
続いて、米専門記者の熊野孝文氏(元米穀新聞記者)は「米価変動の実態と今後の行方を大胆に展望する」と題した報告をした。
同氏は農水省の米に関する統計データに疑問を示し、「需給見通しは主食用と非主食用を分けるべきでない。米の生産者が2030年には25万人、平均年齢は74歳になり、生産基盤が弱体化していく中、これまでと同じような政策を続けることはできない。今回の米の高騰で米を買わなくなった消費者が9%もいる調査結果は驚くべきことだ」と話した。
さらに「価格の安定については先物市場の活用が合理的。先物取引を活用して価格変動リスクを回避しなければ農家経営も難しい。農協は何故やらないのか」と指摘した。
揺さぶられた共計・概算金制度
最後に立った常陸農協の秋山豊組合長は「揺さぶられた共計・概算金制度と今後の対応」を報告した。
「昨年産米の概算金は農協にとって修羅場だった。概算金とは、農協がやっているコメ販売の無条件委託・共同計算のことで、出来秋に農家から出荷された米を1年から1年半かけて売る。集荷時点で支払額の7~8割、清算時に残りを払うという仕組みだ。常陸農協管内では民間業者の数が多く、昨年の早い時期から1俵3万円を超えた。農協もそれにあおられた。農協が業者との競争に対抗し、組合員の手取りを増やす対策として、和食大手チェーン店や東京の生協と契約取引を始めている」と、苦悩と展望を語った。(元瓜連町長)































