水曜日, 9月 9, 2026
ホームつくば伝説のライブハウス「アクアク」原点回帰 つくばで3つのイベント

伝説のライブハウス「アクアク」原点回帰 つくばで3つのイベント

山下洋輔さんジャズコンサートなど

かつてつくば市に存在した、多くの著名人が足を運んだライブハウス「クリエイティブハウスAkuAku(アクアク)」。今も、当時を知る市民に語り継がれる「伝説的」な存在だ。アクアクに関連する3つのイベントが、12月から来年2月にかけてつくば市内で開催される。

その第1弾となるのが、15日につくばカピオ(つくば市竹園)で開かれるジャズコンサート「特別な一日」だ。世界的ジャズピアニストの山下洋輔さん、ロックシンガーのカルメン・マキさん、作曲家兼アレンジャーで知られるベーシスト水谷浩章さんが出演する。かつてアクアクを主宰し、「特別な一日」実行委員長の野口修さん(68)と山下さんの40年にわたる親交により実現する。

活動の原点は山下洋輔さん

かつて天久保2丁目にあったアクアクの外観(野口さん提供)

「オープニングアクトは(山下)洋輔さん。あの日が私たちの原点でした」と、野口さんが当時を振り返る。

1979年、筑波大学のキャンパスに隣り合う現在のつくば市天久保に、1軒のライブハウスが誕生した。カフェとイベントスペースを兼ねそなえた「クリエイティブハウス アクアク」だ。旧桜村(現つくば市)出身の野口さんが、数名の筑波大生たちと立ち上げた。現在の天久保には、学生向けのアパートやマンションが立ち並ぶが、当時は筑波研究学園都市の開発初期。雨が降ると未舗装路はぬかるみ、栗や野菜の畑の中に立ち始めた建物は、まだまばらだった。天久保のアクアクからは「500m先の東大通りが丸見えだった」。

「アクアク」とは、モアイ像で知られるイースター島の言葉で「何かを創造しようとする欲求」を指すという。当時、23歳だった野口さんと学生たちは、まだ文化施設がなかった研究学園都市に文化の拠点をつくろうと考えた。オープニング企画を山下さんのライブに決めた理由を野口さんは「アクアクでは、自立した自由な個人が互いを認め合い、一緒に生きていくことを追求したかった。洋輔さんのステージにはそれがあった」と話す。

「洋輔さんたちは、自立した個人がステージに立ち、互いに認め合うことから始まり、舞台を成立させていく。初めはどんな音を出すのかわからないもの同士、演奏しながら関係性を築いていく。それを見ている私たち観客も、いつしかそこに引き摺り込まれ、演者と関係性を築いてく。会場全体がひとつの『社会』として形作られていく感覚になる」のだと語る。

1991年、アクアクでのライブに向けリハーサルする山下洋輔さん(左端)と、サックス奏者の早坂紗知さん(同)

このオープニングアクト以降、アクアクでは、幕を下ろす2000年までの21年間、山下さんとの企画を毎年続けてきた。さらに詩人・谷川俊太郎、思想家・吉本隆明、映画監督・若松孝二、俳優・大杉漣ら、数々の著名人を招いて詩の朗読会や音楽演奏、演劇、舞踏、映画上映、ワークショップなど多岐にわたる活動を、表現活動への熱にあふれるつくばの若者たちと共に繰り広げていく。

今を見つめ返すコンサートに

野口さんが、もう一つの「原点」と語るのが、劇作家の寺山修司。野口さんが寺山の作品に関心を抱いた70年代は、60年代に隆盛した学生運動が、意見を異にする人に暴力を向け、活動自体を閉塞させていく時代だった。そうした中で、舞台上で問題を提起する前衛的な寺山の作品に触れ、野口さんは強く感銘を受けたという。カフェとステージが同居するアクアクは、寺山が渋谷で主宰した、劇場と喫茶店が同居する「天井桟敷館」をモデルにした。

寺山の劇団「天井桟敷」が輩出したのが、今回、山下さんと共演するカルメン・マキさんだ。山下さんと共に、野口さんにとっての「原点」が同じステージに立つジャズコンサートへの個人的な想いをこう語る。

「コロナ禍で、表現活動が制限される苦しさを経験した。一方で、強者も弱者も区別なくコロナに罹ることで、垣根なく、互いに助け合う社会ができるのではと期待した。どう健康を維持し、どう生き延びていくかをみんなで考え合う機会になるはずだった。しかし、現実は差別が助長され、世界各地で戦争が続いている。混乱し続ける時代だからこそ、私自身、原点を見つめたいという思いがあった」

「人間にとって大切なことは戦争ではない。いかに個人が自立して、自由に生きるのかということ。コロナ禍の時代から、再び表現活動ができる時代になった。多くの方と共に、同じ会場で一緒にコンサートを聞くことで、改めて、人間を見つめる大切さを思い出す機会になれば。今回の企画は、私自身にとっても『原点回帰』だが、こんな時代だからこそ、皆さんにとっても、今を見つめ返す『特別な一日』になるといい」と野口さんが呼びかける。

絵本作家ののスズキコージさんの展覧会での一場面(同)

ジャズコンサート「特別な一日」は、12月15日(金)19時からつくばカピオホールで。全席指定。一般5500円、学生・障害者4500円。詳細、問い合わせはイベントホームページ、または電話090-8580-1288(野口さん)へ。

記録を残したい

第2弾、第3弾のイベントは、野口さんが「原点に返りたい」とコンサートを企画していたところ、アクアクの記録を残したいと考える有志がコンサートに合わせて関連企画を立ち上げ、3つのイベントが実現することになった。

第2弾は、12月16日(土)16時からギャラリーネオ(つくば市千現)で、野口さんとつくば市を拠点に活動する劇団「踊母会」によるアクアクに関するトークイベントが開かれる。第3弾は、1月25日から2月5日にかけて千年一日焙煎所カフェ(つくば市天久保)で、アクアクを振り返る展示会「アクアクの時代 1979-2000」がそれぞれ、野口さんを慕う有志らによるアーカイブアクアク実行委員会により開催される。問い合わせはメール(千年一日珈琲焙煎所)へ。(柴田大輔)

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