【コラム・斉藤裕之】6月初旬から長野県千曲市にある「art cocoon(アート・コクーン) みらい」で2回目となる個展を開く。作品は日々淡々と描き続けていたものをお見せするほかないが、初日にアーティスト・トークなるものがある。「平熱日記」というタイトルが示す通り、特に熱く語るほどのこともないし、そのあたりはギャラリーのオーナーであるかおりさんにお任せしておけば、うまくリードしてくれるから心配はしていない。それよりも、「何か実演を!」と頼まれて、はたと困った。
当然のことながら、私のスマホはAIさんが「よかれ」と思い、やたら絵を描く動画を見せたがるのだが、これ見よがしなスキルやテクニックの画像は正直苦手。しかし、ピカソが実際に絵を描いている動画が出てきたときには、正直感激した。というか、「そこから描くのね…」という意外な発見も。
私の場合は小さな画面に向かって、人様にお見せするのがむしろ憚(はばか)られるほどのチマチマした描きっぷりだし…。しかし、ここで駄々をこねるわけにもいかないので、粘土をこねることにした。題して「粘土で作る風景」。そうそう、そのころ家に絵を描きに来ていた子供たちが使っていた一番やっすい紙粘土で、小さな牛久シャトーをこさえて描いてみたのが最初。
粘土で作ったシャトーは大ざっぱで形もゆるゆる。しかし面白いことに、それを俯瞰(ふかん)で絵にしてみると不思議なリアリティーが感じられた。それから、友人の家や東京タワー、学校、電車…、粘土の模型とそれを描いた絵は気が付けば結構な数になっていた。
なぜ粘土で作る「風景」としたのか。これはなにも粘土で山や川などのジオラマの様な風景を作るという意味ではない。例えば粘土で作った電車を描くと、その電車を描いている周りに大地のように広がる風景が絵の中に感じられてくるところがミソ。あまり好きな言葉ではないが、俗に「絵画空間」といわれたりする。
だから実演では、恐らく電車を描いているのと同じか、それ以上に電車以外の背景と呼ばれる部分に手を入れる時間が長くなると思う。
「みらい」に向けて出発!
さて、高校時代のある朋友。当時はトッポいあんちゃんだったが、彼が個展の情報をネットで同級生に回してくれたおかげで、関東各地から、遠くは滋賀県からも、わざわざ会場に足を運んでくれるというではないか。ということで、彼に感謝の意味も込めて、同級生のために故郷にちなんだアレを粘土で作って描くとしようか。もちろん、信州にちなんだアレは作って描こうと思っているけど…。
作り置いた手製の額に小さな絵を収めていくと、ちょうど煩悩の数ほどになった。あとは、いつも使っている牛乳パックのパレットと安物の筆、絵具、それから粘土も忘れずに車に積んで、さあ、信州千曲、「みらい」に向けて出発!(画家)
<斉藤裕之「平熱日記 in 千曲」展>
・日時・6月6日~28日の金・土・日・月
・場所:art cocoon みらい(長野県千曲市土口378-1)






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