金曜日, 7月 11, 2025
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竹園高の学級増に向け県と対話《竹林亭日乗》30

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中貫橋㊧と筑波山(写真は筆者)

【片岡英明】7月は受験生が高校入試を考える時期だ。夏休みの高校説明会では、3校は見学するよう中学校の指導がある。今回、私たちはその説明会に間に合うよう県立竹園高校(つくば市)の学級増を求めた。構造的な県立高不足のつくば市内で、「勉強をもっと頑張れ」ではなく、県立高の受験枠を広げよと活動している大人がいる―これが受験生への励ましである。

その意味で、つくば市議会による竹園高学級増の意見書採択(6月)は受験生への激励になった。今回は、竹園高学級増を求めた教育委員会との懇談(7月4日)でのやり取りを報告したい(7月5日付記事参照)。

私たち「つくば市の小中学生の高校進学を考える会」は、市議会の「竹園高校2学級増」の意見書提出に際して、つくば市選出の県議4名とつくば市副市長などと一緒に、同趣旨の要望書を県教育委員会に提出した。庄司学校教育部長が受け取り「要望をしっかり検討します」と言って、退席した後は、県の行政的で乾いた言葉が続いた。

県関係者との懇談では、県議からは「改善に向けて工夫して欲しい」「具体的で絞った要望に前向きな回答を…」「機械的な応答でなく要望を受けとめた話を…」といった発言があった。

県担当者の「竹園高校の学級増の必要性が分からない。皆さんの説明をお聞きしたい」との問いに、県議からは市議会の意見書に対応するよう求める発言があり、市議会議長は地域住民から県立高不足の多くの声が届いていると指摘した。さらに、つくば市副市長が市も県に竹園高の学級増を求めていると述べた後、私たちの「高校進学を考える集い」(5月)での熱気を説明した。

皆さんの熱い思いはよく分かった

私たちは、県が2019年改革プランで2026年までにつくばエリアで2学級増やすと発表したのに、まだ未達成であり、生徒は増えているのにもかかわらず高校入学枠は増えていないと指摘。県の計画を達成するためにも、今年の高校説明会の前に竹園高2学級増を発表するよう要望した。さらに、つくば市の県立高通学支援策などを紹介すると、「県も報告を受けている」などと、うれしい応答もあった。

また、つくば市のPTA役員が、土浦一高の4学級化で発生した「受験生の津波」によって、高校受験を最後まで悩んだ息子のことを語るなど、参加者はつくば市内の県立高不足を解消するよう本音で訴えた。

最後に発言を求められた県の担当者は「皆さんの熱い思いはよく分かりました」と、教育の現場を知る「教師の笑顔」で語った。この温かい言葉に、参加者は「竹園高学級増の声が県の方々の心に届き、今回の意見書と要望書の提出で、改善に向けての対話が成立した」と感じた。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表)

つくば秀英 11安打で初戦突破【高校野球茨城’25】

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1回裏つくば秀英1死三塁、知久が中前へ適時打を放つ


第107回全国高校野球選手権茨城大会は4日目の10日、4会場で2回戦8試合が行われた。J:COMスタジアム土浦の第2試合ではつくば秀英が石岡商に4-1で勝利した。

10日 2回戦 第2試合 J:COMスタジアム土浦
石 岡 商 000000100 1
つくば秀英 20000200X 4

1回裏、先制点に盛り上がるつくば秀英ベンチ

つくば秀英の先発投手は公式戦初登板の安光駿太。先頭打者に初球を中前へ運ばれ、いきなりピンチを背負うが、後続を送りバントと内野ゴロ2つで乗り切った。「初戦なので絶対勝たないとと思い緊張したが、全体的にコントロールよく打たせて取ることができ、チームのリズムをつくれた」と安光。

公式戦初登板となったつくば秀英の先発、安光

1回裏はつくば秀英が打者7人の猛攻。1番・芦谷響が内野安打で出塁、暴投と2番・吉田侑真の二ゴロで1死三塁とし、3番・知久燿の中前適時打で1点を先制。「確実に先制点を取りたいと思って、狙い球のまっすぐが来たので気持ちよく振り抜いた」と知久。その後、盗塁と四球で2死一・二塁とし、6番・石井清太郎の二遊間を抜く適時打で1点を追加した。「打ったのはややインコース寄りのまっすぐ。 自分が返すというより後ろへつなぐ意識で、少し詰まったが強い打球を打ちきれた」と石井。

1回裏つくば秀英2死一・二塁、石井が中前へ適時打を放つ

2回以降のつくば秀英は、安光が相手打線に1安打を許すのみで6回までゼロに抑える。打線はチャンスはつくるものの、相手投手の粘りのピッチングになかなか追加点を奪えない。

すると6回裏2死一塁の場面、安光が自らのバットで自分を援護。「自分にできるのはつなぐことだと思い、来た球を強く打つ意識で振り抜いた」。これが右中間を抜く三塁打となり1点を追加。続く芦谷も右前への適時打で、この回4-0と突き放した。

6回裏つくば秀英2死一塁、安光の右中間への適時三塁打

だが7回表、石岡商は打線が積極性を取り戻し、安光に2安打を浴びせてマウンドから引きずり降ろす。無死一・三塁の場面で救援に向かったのはエース中郷泰臣。最初の打者を三ゴロに打ち取り三走を挟殺、2人目は二ゴロ、3人目は三振でこの回1失点。残る2回も2安打の無失点に抑えた。

「ピンチの場面での登板だったが、内野フライか悪くても一・三塁のゴロに打ち取ろうといつも通りの気持ちで投げた。うまく行ったと思う」と中郷。この日の直球は最速139キロ。「もっと行ける感覚はある。次も自分のピッチングをして勝利に導きたい」と頼もしい言葉を発した。

7回途中から登板したつくば秀英のエース中郷

櫻井健監督は「1回表を守りきって、その裏に得点できた。初回をいい形で入れたのが勝因。安光はひたむきな努力が結実した。スタメンだけでは戦い抜けないことが昨夏の決勝で分かった。総力戦で一つでも多く勝ちたい」と話した。

常総コールド勝ち、土浦湖北は競り負け

10日の土浦、つくば地域の高校の試合結果は、ノーブルホームスタジアム水戸の第1試合は常総学院が太田西山に10-1で7回コールド勝ち、第2試合は県西連合が鹿島に0-12で5回コールド負け。J:COMスタジアム土浦の第1試合は土浦湖北が藤代に2-3と競り負けた。(池田充雄)

10日第1試合、ノーブルホームスタジアム水戸
常総学院 4300102   10
太田西山 0010000   1

10日第1試合、J:COMスタジアム土浦
土浦湖北 000001010 2
藤  代 00120000X 3

茎崎、県西連合で19年ぶり出場【高校野球茨城’25】

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スタメン出場した茎崎の梅山昊選手。茎崎が大会に出場したのは19年ぶり

第107回全国高校野球選手権茨城大会は4日目の10日から2回戦に入った。ノーブルホーム水戸では、19年ぶりの出場となる茎崎が県西連合(ほかに古河二、総和工、結城一、石下紫峰)に加わり鹿島と対戦、試合は5回コールド0ー12で破れた。茎崎は2006年以来の出場となり、梅山昊(2年)、菊地勝星(1年)、金子俐央(1年)の3選手が出場した。

10日 2回戦 第2試合 ノーブルホーム水戸
県西連合 00000 0
鹿  島 5142×  12

試合前に並ぶ県西連合。中央は茎崎の梅山昊

県西連合は初回に先発の臼井依風希(結城一)の制球が定まらず、2四球と死球で無死満塁から押し出しの四球を与え先制を許した。代わった2番手松井隼人(総和工)も2本のタイムリーヒットを打たれ、1回に打者11人の猛攻で5点をリードされた。

先発し4回もマウンドに上がった投手の臼井依風希(結城一)

さらに2回に1点、3回に4点を奪われ、0ー10と大量リードを許す。県西連合は4回に石下紫峰からただ1人出場した代打沖山蒼右がセンターにチーム初ヒットを放ち反撃に出るが、後続が凡退。5回は2死から斎藤悠希(総和工)がヒットで出塁するも、続く小池颯人(古河二)がセンターフライに倒れ5回コールドで敗れた。

4回にチーム初ヒットを放つ沖山蒼右(石下紫峰)

県西連合は土日のいずれかに全体練習と練習試合を行い、平日は各自が個人練習を続けて大会に挑んだ。

レフトでスタメン出場した茎崎の梅山昊は「見逃し三振とファーストゴロに終わり、打撃では自分の力が出せなかったのが悔しい。今までの練習試合とは違った空気、雰囲気を感じて、まだまだ打つ方では力を出せなかったのが悔しい」と述べた。中学校はバスケットボール部に所属し、本格的に野球を始めたのは高校に入ってから。「来年は最後の大会なのでこれまで練習してきたこと、教わってきたことを出し切って、監督、家族に自分の姿を見せたい」と話した。 

同じ茎崎から出場し、ベンチから応援した菊地勝星は「先輩たちの打つ姿、守る姿を見て勉強になった。来年は言われたことをしっかり出来るように全力で頑張る」と雪辱を誓った。

ベンチで試合を見守る県西連合の選手。右から3人目は茎崎の菊地勝星

県西連合の監督として指揮を執った結城一の加藤聡監督は「いい球場で選手が浮足立って、本来持てる力をほとんど出せなかった。沖山が初ヒットを打ってくれて流れを変えたかったが、ミスが出てしまって流れを持ってこれなかった。所々いいプレーも出来た。連合チームは3年生が少ない若いチームなので次につなげていきたい」と期待を寄せた。(高橋浩一)

ベンチ前で作戦を練る県西連合

7月から手持ち花火OKに つくば市の公園302カ所

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手持ち花火ができるようになり、利用ルールなどが書かれた看板(右)が設置されたつくば市内の公園=つくば市御幸が丘、科学万博記念公園

つくば市内の市営公園302カ所で7月1日から、手持ち花火ができるようになった。これまで公園の管理に支障のある行為だとして市都市公園条例で禁止していたが、手持ち花火に限って期間や時間帯を限定し、公園管理に支障のある行為からはずした。

ただし現在、協議会を設置し管理・運営方法を検討中の洞峰公園(同市二の宮)と、開園時間が午後5時までのさくら交通公園(同市吾妻)の2カ所、緑地帯59カ所は引き続き花火ができない。

「多くの人に子どもの頃花火をやった楽しい思い出がある。あれもだめこれもだめではなく柔軟に検討した。市として、身近な場所で夏の思い出をつくってほしい」(五十嵐立青市長)と方針を変更した。県内では取手市などが公園での手持ち花火を認めている。

つくば市では7月から9月の3カ月間、午後6時~8時30分まで楽しめるようにする。1組10人程度までとし、18歳以上の大人が付き添うことが必要。ロケット花火や打ち上げ花火、爆竹などは近隣住民や他の利用者の迷惑になるため禁止する。消火用のバケツを持参し水をくんで用意する、花火が終わった後はごみを持ち帰ることが必要。大声で騒いだり飲酒をしたりすることは禁止する。ルールが守られない場合は見直すという。

市役所駐車場を開放

一方、手持ち花火をしたいけれど近くに楽しむ場所がない市民のために、市は8月14日、15日の2日間、市役所駐車場を開放する。駐車場を44区画に区切り、1グループ6人以内で、1日44組まで楽しむことができる。会場ではかき氷やアイスコーヒーなどを販売する。

つくばみらい市が市役所を開放して実施していることから、つくば市でも実施する。手持ち花火、ライターなどの着火器具、バケツは自分で用意する。

参加費は無料。参加は事前申込が必要で、7月11日から31日までいばらき電子申請・届出サービスから申し込む。先着順。(鈴木宏子)

4年連続の赤字 つくばのまちづくり会社、24年度決算

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つくばまちなかデザインの2024年度決算報告がされたつくば市議会全員協議会の様子

黒字化予定も大幅減収

つくば市が出資するまちづくり会社「つくばまちなかデザイン」(同市吾妻、内山博文社長)の2024年度決算(24年4月-25年3月)が9日開かれた同市議会全員協議会に報告された。24年度の最終的な当期損益は約3258万円の赤字となり、188万円の赤字だった前年度より大幅に赤字が増えた。赤字は設立以来4年連続。

内山社長は「当初は4年目に黒字化を予定していたが大幅な減収となった」とし「(つくば駅周辺でスーパーなどの商品を配送する)自動配送ロボットの受託事業(約6000万円)が24年1月に無くなってしまったため」だと説明する。同社は市中心市街地の活性化などを目的に2021年4月に設立された第3センターで、つくば駅近くのつくばセンタービル1階で貸しオフィスなどを運営する。

元市職員のナンバー2が退職

一方、元市職員で、設立以来ナンバー2として同社の経営を担っていた小林遼平専務が今年3月末で退職したことが明らかにされた。内山社長によると退職理由は「個人的なもの」という。現在専務は空席で、内山社長が常勤で経営に当たっているとしている。

今年4月から新役員に、常陽銀行の子会社でファンドを運営する投資会社、常陽キャピタルパートナーズ(水戸市)の池田重人社長が非常勤の取締役に加わった。

社債5500万円を追加発行

同社は、つくばセンタービル1階を貸しオフィスなどに改修して開業する際、社債を発行し約3億1600万円を調達して工事費にあてた。24年度は2期工事分として新たに同ビル4階の市吾妻交流センター跡地に貸しオフィスを増やす工事(約5500万円)と、1階のオフィスを間仕切りして区画を狭くするなどの工事(約1500万円)を実施した。工事費は計約7000万円で、工事費の一部として今年6月、新たに社債を追加発行して常陽キャピタルパートナーズから約5500万円を調達したことも明らかにされた。

社債の償還(返済)については、最初に発行した約3億1600万円の元本償還が24年度から始まり、24年度は500万円を償還した。25年度は2000万円の償還が求められる。さらに今年6月に追加発行した社債5500万円の償還は来春から始まるという。

3カ年の見通し示すも

議会の要請を受けて、内山社長は25年度から3カ年の事業計画目標を今回初めて議会に示した。売上高から経費などを差し引いた営業利益は、25年は1439万円、26年度は2498万円、26年度は1960万円になるとする強気の見通しが示されたが、ただし営業外費用の社債の償還などを加えると最終損益は赤字のまま。

決算報告に対し市議からは「3億1600万円借りた社債の返済は24年度は500万円だったが、25年度は2000万円、26年度2500万円、27~30年度は各3000万円、31年度は1億4600万円ある。大丈夫か」「小林専務は会社の立ち上げから尽力した。小林専務のあと、営業活動はどうするのか」などの質問が出た。内山社長は「コンサルタントなどの受託事業が順調に積み上がると思っている」「(貸しオフィスの入居などの)営業は基本的に市への問い合わせが多く、人海戦術で動いていたわけではない。私が後方支援から前面に出てマネジメントを行う。3、4年経ち現場の職員も育ってきている」などと答えた。

スーパーシティ実証実験の受注見込む

24年度決算の内訳については、全体の売上高は、前年度より約3100万円少ない1億1826万円となった。売上高から経費(販売費及び一般管理費)を差し引いた、本業で稼いだ利益である営業利益は約2358万円の赤字で、24年分の社債の元本や利息の支払いなど営業外費用を含めると、通常事業の収支である24年度の経常損益は3258万円の赤字になった。

事業別では、貸しオフィスやコワーキングスペース(共同オフィス)、カフェなどつくばセンタービル1階のco-en(コーエン)事業は、売上高が前年度より約880万円多い約5516万円になった。コワーキングスペース(共同オフィス)の月額会員は60人(23年度末は56人)、ビジター会員は1500人超(同1375人)という。25年度は5月に4階の貸しオフィスが開業することから約2110万円増の7626万円の売り上げを見込むほか、26年度は貸しオフィスがすべて埋まるとして9286万円の売上を見込む。

地下駐車場の売り上げは前年度比微増の1404万円(23年度は1360万円)。25年度、26年度いずれも1357万円の売上を見込む。つくばセンター広場の指定管理者としては921万円の売上があり、40件(23年度は29件)を超えるイベントについてアドバイスや物品貸出などの支援をした。

コンサルタントなどの受託事業は、同市のスーパーシティ実証実験の取り組みの一つとして、パーソナルモビリティ―シェアリングサービス「つくモビ」のアドバイザーなどを受注するなどし3775万円の売上があった。25年度以降も同事業の売り上げを見込む。ほかに現在、受託を前提に(地域のつながりをつくる)エリアマネジメントの相談を数件、受けているとした。

一方、23年度にサンドイッチ専門店として事業を継続し約2100万円の売上があったつくばエキスポセンター内のカフェ事業は、借主側の事業で継続が難しくなり、25年4月に閉店した。(鈴木宏子)

世界初公開資料も デフリンピックの歴史知るパネル展 筑波技大

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展示企画を担当する大杉豊教授

聴覚障害者による国際スポーツ大会「東京2025デフリンピック」が11月に開催されるのに先立ち、筑波技術大学(つくば市天久保 石原保志学長)の天久保キャンパスで、デフリンピックの歴史を紹介する特別パネル展「デフリンピックの歴史を知る」が7日から始まった。展示されているのは、大会最初期の記録などに基づき作成された歴史年表などパネルや動画作品約20点。会期は11日まで。

資料作成を担ったのは、企画を担当する同大教員で、デフリンピックの主催団体「国際ろう者スポーツ委員会(ICSD)」副会長の大杉豊教授だ。大杉さんは今回の展示資料作成のために3月に渡米し、聴覚障害者の大学・ギャローデッド大学に保管される非公開資料などを調査した。

「100箱以上ある全てのボックスを開けて中身を確認した。これまで把握できなかった国際ろう者スポーツ委員会設立当時の議事録をはじめ、国際オリンピック委員会が初めて国際ろう者スポーツ委員会を認知した時の通知など貴重な資料が多数あった。今回の展示では、世界初公開となる資料も複数含まれている。聞こえない人が時間をかけて大会を発展させてきた。デフリンピックを知ってもらう機会にしたい」と企画への思いを語る。

米国で発見した資料をもとに作成した展示パネル

「手話の復権」

デフリンピックの始まりは、1924年8月にフランス・パリで開かれた、ろう者による世界初となる国際スポーツ大会「国際サイレント大会」だ。以降、それぞれ4年に1度ずつ夏期と冬季にそれぞれ大会が開かれた。今回の東京大会は25回目の夏季大会。デフリンピック100周年の記念大会で、日本での開催は夏・冬通じて初めてとなる。

大杉さんが、今回の展示で伝えたい物語の一つに「手話の復権」があるという。第1回大会がパリで開かれた当時、世界的に手話は差別の対象となっていた。1880年にイタリア・ミラノで開かれた第2回国際ろう教育者会議(通称:ミラノ会議)で、ろう学校での手話が禁止され、言葉を声に出して話す「口話」がろう者のコミュニケーション手段として奨励された。日本でも1933年にろう学校での手話使用が禁止された。口語のみを認め、ろう者の言語である手話が否定されたことは、ろう者の尊厳を傷つけることにつながったという。

パリで第1回大会が開かれるひと月前、同じパリで、第8回夏季オリンピックが開かれていた。それを見た、ろうの当事者たちは「聞こえる人も、スポーツを楽しんでいる。聞こえない人たちも、同じように楽しみたい」と考えた。そして、「スポーツのために世界から人が集まるのなら、心置きなく世界中の人々がコミュニケーションを取り合い、精一杯スポーツを楽しもう。そのために手話が話されるのは悪くない」と話し合ったという。大杉さんは「第1回大会はいわば、手話にとっての『ルネサンス(復権)』」の機会となったのだと話す。

今回の展示では、大杉さんが米国で関係者から聞き取った「手話の復権」に関するインタビュー動画も上映する。国際手話で語られた内容に、日本語字幕と、日本語手話と字幕を載せた約20分の映像作品だ。期間中、毎日正午から午後1時までの間、リピート再生する。

一連の調査と資料作成を通じて大杉さんは「時代を超えて(国際スポーツ大会を始めた)当時の人々の気持ちとつながることができたのは感慨深かった」と語る。

11月16日から

手話で拍手をした手を前に突き出す「サインエール」は、デフリンピック東京大会のために開発された目で見える応援スタイルだ

11月16日から始まる「東京2025デフリンピック」は、東京体育館(渋谷区)や駒沢オリンピック公園総合運動場(世田谷区)など東京都内にある17会場のほか、静岡県伊豆市の日本サイクルスポーツセンター、福島県楢葉町のJビレッジなど19会場で全21競技が行われる。12日間の大会期間中、70から80の国と地域から約3000人の選手が参加する。

筑波技術大学・大学院からは、現在、産業技術学部に所属するテコンドー選手の星野萌さんら5人が代表に内定している。また、バドミントンの沼倉千紘さん・沼倉昌明さん、サッカーの岩渕亜依さん、柔道の蒲生和麻さんなど多数の卒業生も代表選手に選ばれている。大会のエンブレムをデザインしたのは、卒業生の多田伊吹さんだ。

「是非、聴覚障害者が活躍する大会があるということを知ってほしい」と、同大広報担当の折笠紀恵さんも期待を込める。(柴田大輔)

◆特別パネル展「デフリンピックの歴史を知る」は7日(月)~11日(金)、つくば市天久保4-3-15 筑波技術大学天久保キャンパス「大学会館1階OnOffラウンジ」で開催。開館時間は午前9時から午後5時まで。最終日は午後2時まで。展示期間中、毎日正午から午後1時まで、大杉さんが手話による作品解説を行う。入場無料。

つくばの廃校、芸術文化創造拠点に 

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旧田水山小の教室棟=つくば市水守

旧田水山小で改修工事着工へ

廃校となったつくば市水守、旧田水山(たみやま)小学校を改修し、同市の芸術文化創造拠点にする工事が8月から始まる。だれもがアートに触れることが出来る施設として、来年度後半にオープンする計画だ。

市民が創作室を一定期間借りて趣味の作品をつくったり、備え付けの木工工作機械を使って工作に挑戦したり、音楽やダンス、演劇を練習したりできる。作品の展覧会や舞台の発表をする設備も整える。土日曜には、筑波大芸術系の関係者や市内のプロのアーティストがワークショップを開く計画もある。公募で選んだアーティストが数カ月間、教室で創作活動をするなどアーティストの育成にも取り組む。運営は当面、市直営とし、アートコーディネーターが常駐して企画展なども開催する計画だ。

完成イメージ図(つくば市提供)

同小は、秀峰筑波義務教育学校が開校したのに伴って2018年3月に閉校した。敷地面積約1.1ヘクタール、教室棟は鉄筋コンクリート造3階建て。建築面積約1000平方メートル。

教室棟は創作室などに改修する。校庭には遊歩道を整備して屋外ギャラリーをつくる。体育館は2023年3月の同基本計画策定時点では、修繕し地域のスポーツ団体が引き続き使用する予定だったが、劣化が激しいため取り壊し、跡地を駐車場にする。プールは解体し、跡地にプールの形を生かした展望デッキと屋外ギャラリースペースを整備する。駐車場は計70台、駐輪場は17台整備する。災害時の指定避難所になっていることから、引き続き地域住民が避難所として利用できるようにする。

教室棟の1階は、職員室を改修しだれでも利用できる地域利用スペースにする。だれでもふらっと立ち寄って休憩したり、中高生などが勉強したり、アーティストと交流できるスペースにする。家庭科室と理科室をそれぞれ改修した創作室は、個人やグループが創作活動に利用できるようにする。

2階は、教室3室を改修して創作室をつくる。プロを目指すアーティストが滞在しながら創作活動を行ったり、作品展示などする。元コンピューター室は、自在に間仕切りができる展示パネルや可動式スポットライトなどを設置し、さまざまな企画展示を開催などする。

3階は、教室を改修して創作室を3室つくる。木工工作機械などを備えた部屋をつくり、市民が工具を使ってDIYなどにも挑戦できるようにする。音楽室は音楽の練習に使えるよう防音壁などを整備したり、図工室はダンスや演劇の練習ができるスペースにする。図書室は本棚をそのまま利用し芸術を専門とするライブラリーに改修する。

各創作室の使用料金などはこれから検討するという。職員室を改修した1階の地域利用スペースと、図書室を改修した3階のライブラリーはだれでも無料で利用できるようにする。

「人、モノ、情報が出会い、つながりが生まれ、新たな価値観やつくば独自の芸術文化を育む」をコンセプトに、アーティストの育成、市民が文化芸術に触れる機会の創出、地域交流の場の形成などに取り組む方針だ。

改修工事費は約8億8000万円。改修工事期間は8月から来年7月まで。2023年3月の試算では概算工事費は約4億4000万円だったが2倍になる。1995年の教室棟建築から30年経ち、改修や修繕だけでなく施設の長寿命化工事を実施する必要が生じたためと市は説明する。

同基本計画によると、年間約2万8000人の利用者を想定している。完成後の施設の維持管理費は概算で年間約4700万円の見通し。

市民説明会の様子

改修を前に同小でこのほど市民説明会が開かれ約30人が参加した。集まった市民からは「多額の費用をかけるのだから計画通りに進めてほしい」「野外の芸術にも力をいれてほしい」「災害時の避難場所としての機能はどうなるのか」「周辺の道路が狭いので対策をしてほしい」「工事の騒音が心配」「地元の(伝統芸能の)田中ばやしも芸術なのだから練習場所として使わせてほしい」など意見が出た。

市民部芸術文化推進課の矢口治重課長は「市民みんなが気軽に集えるような場所になるように努力していきたい」と話す。(榎田智司)

土浦工業、コールド勝ち【高校野球茨城’25】

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2回裏1死満塁でレフトへタイムリーヒットを放つ土浦工業の長南琉愛

第107回全国高校野球選手権茨城大会は3日目の7日、ひたちなか市民球場で1回戦が行われ、土浦工業は那珂湊と対戦、10ー0で5回コールド勝ちし2回戦進出を決めた。土浦工業先発の前島悠輝は那珂湊打線をノーヒットに抑えた。

7日 1回戦 第1試合 ひたちなか市民球場
那珂湊 00000 0
土浦工 26011× 10

土浦工業先発の前島悠輝投手

「昨年、一昨年と初戦敗退し悔しい思いをした先輩たちの無念を晴らしたいと試合に挑んだ」と成島瑠依主将。捕手でもある成島は「初戦で緊張した」と話す一方、先発の前島をうまくリードし、初回の那珂湊打線を三者凡退に抑えた。

その裏、相手のエラーで、ノーヒットのまま2点を先制。2回には無死満塁のチャンスに長南琉愛が高めのストレートを思い切り振り抜いた。打球はレフトへのタイムリーヒットとなり1点を追加すると、助川誓哉と谷田部秀夫もタイムリーヒットを放ちさらに4点を追加しリードを広げた。

大量得点に盛り上がる土浦工業ベンチ

前島は1回、2回と制球が定まらず荒れていたが、主将で捕手の成島やベンチの声に支えられて調子が上がり始めた。次第に低めのストレートが決まりだし三振を奪うと、野手も堅い守備でチームに勢いをつけた。

5回には那珂湊の守備のミスも重なり、長南琉愛がワイルドピッチでホームイン。10点差をつけコールド勝ちを決めた。

長南琉愛が生還。10点目が入りコールド勝ちを決めた

先発した前島は、参考記録ながら5回ノーヒットノーラン8奪三振を達成した。ノーヒットノーランは「野球をやってきて初めて」と言い、「2回戦でも負けない気持ちを出してやっていく」と力強く語った。試合を終えた成島主将は安堵の表情を浮かべながらも「次の試合もこの勢いで勝って土浦工業の野球を強くしていきたい」述べた。

久保田昌倫監督は「昨年の夏から出ている選手が多数いたので落ち着いて出来た。若いチームなので2回戦はベンチワークも含めていろんな選手を出せる試合にしたい」と話した。2回戦は13日、八千代と対戦する。

土浦工業の応援席

那珂湊の地元であるひたちなか市民球場での開催とあって、スタンドでは那珂湊が全校を挙げて応援した。土浦工業は完全アウェイだったが、価値ある勝利をつかんだ。(高橋浩一)

背水の陣で臨む 今年の土浦の花火《吾妻カガミ》208

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土浦の花火(土浦市提供)

【コラム・坂本栄】昨年の土浦の花火(正式名は土浦全国花火競技大会)は、予定日(11月2日)が降雨予報で中止になり、代替日(同3日と9日)に延期しようとしたところ、周辺道路や会場周辺の警備体制が両日とも確保できず、全日程で中止に追い込まれた。実行委員会(委員長・安藤真理子土浦市長)の運営体制に花火ファンや関係業者から批判が出たことから、土浦市は今年の大会(11月1日、代替日8日)は背水の陣で臨む。

昨年大会では3つのミス

私はコラム198「…欠けていたリスク管理」(2024年12月16日掲載)で昨年の大会運営上の問題点を三つ指摘した。「曖昧だった延期日の警備手配」「無駄だった花火興業中止保険」「実行委に呼ばれなかった議長」の3点だ。詳しくは上の青字部をクリックしてもらうとして、以下のように要約できる。

▼警備体制の不備:予定日2日の警備体制は警備会社と契約して500人近く確保してあったものの、代替日の警備については契約しておらず、延期になった場合は「相互に協議する」と曖昧になっていた。警備会社は人手不足で市の確保要請に応えることができず、市としてもプロの警備抜きでの大会は危険過ぎると判断、代替日への延期を見送った。

▼中止保険が不発:この種のイベントには興業中止保険をかけ、悪天候などで中止に追い込まれた場合、その準備などに使った経費を損害保険会社に払ってもらうのが常識。土浦市もこの保険に入っていたが、契約には「延期日有り」条項が入っていた。ところが、市は代替日に延期せず全日程を中止にしてしまったため、イベント保険を受け取れず、市は多額の追加出費を迫られた。

▼議長抜きの決定:大会中止(11月1日午前発表)を決めた実行委(10月31日夕方開催)に、実行委メンバーの市議会議長が呼ばれなかった。混乱の中、事務局が議長に連絡することを忘れたからだ。決定プロセスから外された議会はこれに怒り、定例議会で市側のミスを追求した。

今年は失敗が許されない

今年の土浦の花火は第94回になる。同時に市は「土浦の花火100周年記念」とも謳(うた)っており、今年の大会にはかなり力が入っている。昭和14年(1925)の第1回から数えると確かに1世紀。先の大戦や市街地洪水などで6回中止されており、通算ではその分マイナスになる。100周年と大見えを切った手前、土浦市としては昨年のような失敗は許されない。そこで、土浦市・花火のまち推進室長の菊田さんに準備状況を聞いた。

警備体制は、予定日(1日)だけでなく代替日(8日)についても警備会社と契約を結び、代替日の要員も確保する。このため、昨年は1日分だった警備会社に払う経費(約1800万円)が今年は2倍になる。代替日を従来の2日でなく1日に減らしたのは、警備費用を抑えるためだ。一方、記事「順延は1日のみ…」(5月26日掲載)にあるように、有料観覧席の値上げで収入増も図る。

また、予定日に大会を実施でき、代替日の警備が不要になった場合、契約額の一定割合を減額するよう警備会社と交渉している。警備会社は代替日用に確保した要員を別の仕事に回せることを理由に挙げ、市としては割引率の最大化を図る。経費節約のために代替日の割引率をいかに大きくするか。予定日の契約額も含め、警備会社との交渉は面白くなりそうだ。

花火興業中止保険については、「延期日有り」を踏まえ、予定日中止の場合は代替日にトライする。今回大会の予算書を見ると、役務費(保険料、ゴミ処理費など)が昨年大会の2倍以上計上されており、抜かりはないようだ。また、大会中止などの重要事項は、市長+副市長+市議会議長+商工会議所会頭(観光協会会長)の4人に必ず諮ると運営マニュアルに明記した。議会対策は万全らしい。(経済ジャーナリスト)

土浦湖北、初戦を突破【高校野球茨城’25】

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3回、奥畑のライト犠牲フライで柿沼がホームイン

第107回全国高校野球選手権茨城大会は2日目の6日、ひたちなか市民球場で1回戦が行われ、土浦湖北は磯原郷英と対戦、3ー0で勝ち初戦突破を果たした。 

6日 1回戦 第3試合 ひたちなか市民球場
磯原郷英 000000000 0
土浦湖北 00200001× 3

完投したエース矢野

土浦湖北は先発したエース矢野陽仁が持てる力を発揮し、磯原郷英打線を完璧に抑え、3回までランナーを許さなかった。打線は3回裏1死後、2つの四球とヒットで1死満塁のチャンスに、高橋颯太郎が変化球を上手く転がしセーフティースクイズを決め先制。続く奥畑優梧がライトへの犠牲フライを放ち2点をリードした。

3回、セーフティスクイズを決めた高橋

矢野は、5回に初ヒットを許すも、カーブ、カットボール、フォークを巧みに使い分け要所を抑える。8回には1死1、2塁とこの試合初めてのピンチを迎えるが、後続をきっちり抑えた。

その裏、8回2死2塁で斎藤大樹がタイムリーツーベースを放ち1点追加。矢野は「最初から完投するつもりでいた」と9回もマウンドに上がり、2死2塁でセンター前ヒットを許すも、センター高橋の見事な返球で2塁走者をホームで刺し試合終了。2年ぶりに初戦を突破した。 

9回、センター高橋の好返球でホームタッチアウトで試合終了

土浦湖北の土佐一成監督は「矢野は3年間で1番出来が良かった。最後まで投げられたのが勝因。守備も含めて、ランナーを出しても粘り強く守ってくれた」とエース矢野をたたえた。

柿沼颯馬主将は「昨年はエラーもあり初戦敗退して悔しい思いをしたので初戦に勝てて良かった。次の対戦は関東大会に出場した藤代。力は向こうの方が上だが初戦を勝った勢いのまま挑む」と力を込めた。

9回を1人で投げ抜いた矢野は141球を投げ、被安打5、10奪三振を奪った。矢野は「調子が良く、追い込んでからはスライダーとフォークで三振を取りに行きコースを意識して投げた。3年生最後の大会で勝つことが出来てうれしい。次の藤代戦も自分の持てる力を発揮して勝ちたい」と意気込みを語った。

暑い声援を送るチアリーダー

スタンドでは土浦湖北のチアリーダーと応援団50人、OBらが熱い声援を送った。(高橋浩一)

土浦一、初戦突破できず【高校野球茨城’25】

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4回表茨城二死満塁、三走の本盗を阻止する土浦一の捕手・海老原悠彦(左端)


第107回全国高校野球選手権茨城大会は2日目の6日、J:COMスタジアム土浦の第1試合で土浦一が茨城と対戦。土浦一は2-6で敗れ、初戦を突破できなかった。

6日第1試合、J:COMスタジアム土浦
茨 城 200 110 020 6
土浦一 001 001 000 2

土浦一は9四死球4失策とミスが目立ち、ミスが失点に直結した。打線は相手投手の130キロを超える直球とスライダーに対応できなかった。荒木理行監督は「相手のミスのない守備と投手力に、チャンスをつくらせてもらえなかった。守備の強化が課題。この経験を次に生かしたい」と唇をかんだ。

土浦一の先発、松橋

土浦一の先発は2年生の松橋隆太郎。土浦一付属中の出身で、去年まで中学生を指導していた荒木監督とは付き合いが長く、厚い信頼関係で結ばれている。「今日は緊張して汗もかいていたので、長いイニングは難しいかもと思っていた」と荒木監督。「初回はコントロールが定まらず、思ったところへ投げられなかった。割り切ってど真ん中へ投げられればよかったが、真っ向勝負にひるんでしまった」と松橋。初回、3四死球で1死満塁から、適時打で2点を先制された。

3回裏には土浦一が反撃。8番・日下部勇の右越え二塁打と9番・星田侑希の送りバントで1死三塁とし、1番・清遠健二の遊ゴロで1点を返した。「ショートとセカンドが下がっていたので、低く強い打球で間を抜き、確実に1点を返そうと考えた。打ったのは真ん中低めのスライダー。ヒットで出られれば良かったが最低限の結果を出せた」と清遠。

3回裏土浦一1死三塁、清遠の遊ゴロで1点を返す

しかし4回表は茨城が足でかき回して追加点。1死二塁の場面、左前打からのバックホームで走者はいったん三塁にストップするが、打者走者が二塁を狙ったため捕手が二塁に送球、この間に三走が再スタートを切り、本塁を陥れた。茨城はこの後二死満塁からも、二走が飛び出して牽制を誘うが、松橋は落ち着いて対処し、ホームに送球して三走のホームスチールを封じた。

6回裏土浦一2死一・二塁、増田の適時二塁打で1点を追加

6回裏、土浦一は相手投手の乱れに乗じて2死一・二塁とし、5番・増田勇翔の適時二塁打で1点を追加。増田は前の打席でストレートを打ちあぐねたので、この打席ではスライダーに狙いを切り替えたという。「真ん中のスライダーを迷いなく振り抜いた。左翼ライン際に落ちたので一気に二塁へ向かった」との振り返り。

7回表茨城1死一塁、一走の二盗を阻止する遊撃手・高橋陸斗と二塁手・星田

その後土浦一は、7回と9回に走者を出すがどちらもダブルプレーでチャンスを潰し、得点を伸ばせず。8回表には3人目の白根大輝が捕まり、茨城に2点を加えられ大勢が決した。「最後まであきらめない気持ちはあったが相手が一枚上だった。スタンドから支えてくれた1・2年が胸を張れるようなプレーがしたかった」と清遠。増田は「この大会を目標に全員が練習の成果を出そうと取り組んできた。最後までこの仲間でやれて良かった」と振り返った。(池田充雄)

8回表茨城1死三塁、飛び出した三走を挟殺する土浦一の三塁手・清遠

「戸籍」作り14年間調査 シジュウカラの暮らし知る企画展 筑波実験植物園

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企画を担当する濱尾章二名誉研究員。後ろは園内に設置されている巣箱

国立科学博物館 筑波実験植物園(つくば市天久保、遊川知久園長)で5日から、企画展「シジュウカラの社会ー鳥の眼で見る植物園」が始まった。同園内のシジュウカラの暮らしをつぶさに知ることができる展示で、餌となる昆虫や天敵の蛇、タカなど、園内に生息する多様な生き物との関係を通じて、同植物園を新たな視点で見るきっかけとなる展示でもある。園内で14年間、調査が続けられてきた。企画を担当する同館の濱尾章二名誉研究員は「2012年から続けてきた研究の成果を見ていただきたい」と思いを込める。

展示されているシジュウカラの標本

ひなから生涯を追う

シジュウカラは体長14センチ、体重14グラムほどの大きさ。手のひらに乗るくらいの小型の鳥で、市街地、住宅地など全国各地で見ることができる。近年の研究では、異なる意味を持つ鳴き声を⽂法に従って組み合わせ、⽂章をつくりコミュニケーションをとっていることが知られている。

同園では濱尾さんが中心となり、2012年から園内に30個の巣箱を設置しシジュウカラの観察をスタートさせた。現在は36個の巣箱を約50メートル間隔で設置し、つがいから生まれたひなを1羽ずつ把握しながら「戸籍」をつくり、それぞれの成長の過程と共に、次の世代を生み出す様子を観察し続けている。

パネル展では園内で見られる昆虫類についても知ることができる

死別により伴侶変える

シジュウカラは、オスとメスがつがいとなり子育てをする「一夫一妻」。他の鳥類でも見られる繁殖形態で、オスとメスが協力して巣を作り、抱卵、餌やり、ひなの世話などをする。主に3月から5月にかけて繁殖期を迎え、中には年に2回、繁殖するつがいもいる。一度の産卵で8から10個の卵を産む。ひなは40日ほどで巣立っていく。

これまでの研究でわかったのは、「一夫一妻」のシジュウカラが伴侶を変えることがあることだと濱尾さんはいう。生まれてから生育の過程で毎年半数の個体が、天敵の蛇やタカに襲われるなどして死んでいく中で、死別によって相手を変えていることがわかったのだと話す。これまで観測してきた中で最も長く生きた個体は7年だった。大半が、卵や孵化して間もなく、巣の中で天敵に食われるなどして1歳未満で死んでしまう。近年は、増え続けるアライグマも天敵の一つに加わった。

巣箱で育つシジュウカラのひな

園内に二つの「名家」

こうした過酷な環境を生き抜く中で、4代にわたり、95羽を巣立たせた2つの家族がいる。約8年前から継続して観察している植物園が誇る「名家」だ。2024年には両家の間でつがいが生まれ、親族関係になったことが確認されている。

濱尾さんは、「シジュウカラは身近なところにたくさんいて、非常に調べやすいのが特徴。特に巣箱を使うと、生態を細かく観察できる。見るほどに、つがい関係や親子関係などを追跡できるのも魅力」と話す。また「今回は、植物園で開催する鳥の展示。鳥が好きな方だけでなく、植物に関心がある方、研究に関心がある方などにも見てもらえるような展示にした。展示をきっかけに、お子さんにも研究の面白さを知ってもらいたい」と思いを込める。

教育棟と研修展示館1階、2階の3会場で企画展が開かれている。教育棟では植物園での14年間にわたるシジュウカラ研究の成果を記したパネル展、研修展示館1階ではパネルや標本、実際に生きている昆虫の展示などを通じてシジュウカラと関わる植物園内で見られる動植物の生態について展示している。同2階では、中高生による鳥研究ポスターや、研究者の研究方法などが紹介されている。(柴田大輔)

◆企画展「シジュウカラの社会―鳥の眼で見る植物園」は5日(土)から13日(日)、つくば市天久保4-1-1、国立科学博物館 筑波実験植物園で開催。開園時間は午前9時から午後4時30分(入園は午後4時まで)。入場料は一般320円、高校生以下と65歳以上、障害者などは無料。会期中、7日(月)と13日(日)午後2時からは、濱尾さんによる鳥類学研究にまつわる講座が開かれる。研修展示館2階の「観察、研究への誘い」は8月31日まで開催される。詳細はイベント公式ホームページへ。

生活困窮者の自立促す家計改善支援《ハチドリ暮らし》51

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写真は筆者

【コラム・山口京子】生活クラブ生協・東京が主催する「家計改善支援」研修を受講しました。生活困窮者自立支援法に基づいて、市役所などに生活全般の困りごとに対応する相談窓口が設置されています。家計改善支援員とは「家計改善支援事業」に従事する支援員のことで、既に従事している支援員だけでなく、支援員を目指す人や自身の家計管理を学びたい人も対象にした研修でした。

生活困窮者自立支援法が施行された背景には、収入の減少や支出の増加、社会的孤立などで生活がひっ迫している世帯が増加していることがあります。以前は生活保護を受給するまで相談に来ない人が多かったのですが、生活保護受給に至る前から支援することがこの法律の目的です。

研修の内容は大きく3つに整理できます。

一つめは「相談者との関係づくり」でした。相談者と一緒に考え、最大限の力を引き出し、動機付けを高めることです。相談者を説得するのではなく、納得して家計管理ができるように信頼関係づくりが大事です。「相談者ができることを伸ばす」「利用できる制度を知ってもらう」「困ったら早く頼ってもらう」「困りごとを共有する」「行うことを役割分担する」「具体的な行動を決める」などです。

二つめは「家計管理の手法」で、家計の問題点を把握するために家計を見える化することから始めます。過去の支出から家計を洗い出し、現在の家計の把握を支援し、家計収支のバランス、優先順位、ライフプランを掘り下げます。相談者が大事にする項目を優先しながら、一緒に考えることが狙いです。

相談者が何を大切にして生活しているのかを理解し、それを優先することで相談者の意欲を引き出すポイントがつかめます。生活を守るために活用できる社会保障制度の知識が家計管理には不可欠となります。

支援者との連携が大事

三つめは「支援者との連携」ですが、これはとても重要です。相談者が対象となる制度がないかを調べ、相談者と行政の担当課に同行し、情報収集を手伝ったり、担当課への説明を助言します。相談者が孤立しないように関係者と連携し、その地域にはどのような支援体制や制度があるのかを調べます。

家計改善支援では、家計の安定にはどのような支援を利用するのがよいか、関係機関と連携するためには家計に関するどのような資料があればよいのか―などに対応します。講師は、家計改善支援に当たっては、行動の「結果」だけではなく「経過」を見ることが大切と強調していました。そのヒントとなる「行動分析学」を学ぶことができました。(消費生活アドバイザー)

夏の高校野球茨城大会開幕 91校84チームが入場行進

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優勝旗をもって入場行進する昨年の優勝校、霞ケ浦高校。今年からプラカードは自校の部員またはマネージャーが持って先導した

第107回全国高校野球茨城大会の開会式が5日、水戸市のノーブルホームスタジアム水戸で開かれ、三つの連合チームを含む91校84チームが入場行進し、熱い戦いが幕を開けた。今年から、開会式の入場行進で長年にわたりプラカードを持ち選手を先導してきた水戸女子高校の生徒に代わって、自校のマネージャーまたは部員がプラカードを持ち入場した。

開会式は午前9時から行われた。大洗高校マーチングバンド部ブルーホークスの演奏が響き渡ると、スタンドからは大きな拍手と歓声が沸き起こった。

開会式で元気に入場行進する高校球児たち

初めてプラカードを持ち入場行進した土浦湖北高校マネージャーの3年、佐久間望さんは「人生で1度きりの経験が出来てとてもうれしい。緊張せずにいつもの練習通りに出来た」と微笑んだ。

開会式で県高校野球連盟の深谷靖会長は「皆のひたむきな姿勢、仲間を思いやる心、真剣に野球に取り組む姿は観戦する側にとっても学ぶことが多い。皆さんが流す汗と涙の一つひとつが希望や感動をもたらしている。自分を信じ、仲間を信じ、悔いのないプレーを存分に発揮して下さい。この大会が皆さんの今後の人生の誇りとなるよう心からの健闘をお祈りします」とあいさつした。

選手宣誓をする日立工業の青山海翔主将

選手宣誓をした日立工業高校の青山海翔主将は「年を追うごとに暑くなる夏をさらに暑くするため、今、僕たちはこの場所に来ている。試合をするからには必ず勝ち負けがあり、半数近くのチームの3年生は初戦で引退を迎えることになる。しかしそれをむなしいと感じる選手はこの場所には1人もいない。今日まで大好きな野球をやってこられたことに喜びと感謝の念でいっぱい」と述べ宣誓した。

開会式の司会進行は土浦三高3年の斎藤陽奈多さんと牛久栄進高校3年の弘中葵さんが務めた。斎藤さんは「緊張を感じるよりもずっと楽しくやれた。全員に届くようにハキハキと出来た」、弘中さんは「楽しかった。会場の雰囲気にのみ込まれそうになったが自分の学校の行進を見て笑顔でやれた」と2人とも満足した表情で話し「全員が全力を出し切り、悔いの無い終わり方をしてほしい」と高校球児に熱いエールを送った。

司会進行をする土浦三高の斎藤陽奈多さん(左)と牛久栄進高の弘中葵さん 

連覇を目指す昨年の覇者、霞ケ浦高校の鹿又嵩翔主将は「球場に着くなり夏の大会の雰囲気で、緊張感を感じる。チーム全員が甲子園という舞台に戻って野球をやりたいという思いがあるので、連覇して、あこがれの舞台に戻って甲子園で優勝したい」と意気込みを語った。

優勝旗の返還をする昨年の覇者、霞ケ浦の鹿又嵩翔主将

昨年、決勝で霞ケ浦に敗れ初優勝を逃したつくば秀英の吉田侑真主将は「自分たち3年生は2年半やってきて最後の大会なので、昨年の悔しさも含めてこれまでやってきたことを全部出し切る」と力強く語った。

試合が順調に進めば決勝は26日午前10時からノーブルホーム水戸で行われる。(高橋浩一)

県「学級増必要な状況でない」 竹園高2学級増求め つくば市議長、意見書手渡す 

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庄司一裕県教育庁学校教育部長に意見書を手渡す黒田健祐つくば市議会議長(左)=4日、県庁

つくば市議会が6月定例会議で、県立竹園高校の募集定員を8学級から10学級に増やすことを知事に求める意見書を全会一致で可決したことを受けて(6月27日付)、黒田健祐市議会議長らは4日、県庁を訪れ、庄司一裕県教育庁学校教育部長に意見書を手渡した。これに対し県高校教育課高校教育改革推進室の片見徳太郎室長は「学級増が必要といえる状況ではない」と話し、竹園高の学級増に否定的な見解を示した。

片見室長は「県全体で5年後までに中学卒業者が2000人減少し、10年後までに5600人を超える減少が見込まれている。つくば市は2030年まで生徒数増が見込まれていることを承知しているが、県立高校改革プランを策定した際、子供たちにどのくらいの通学時間なら大丈夫かと聞いたところ、一番多かったのが1時間程度だった。つくば市周辺地域では、つくば市の増加分以上に生徒数が減少すると推計している(24年10月24日付)。今年度はつくばサイエンス高校に普通科を設置し大学進学を打ち出して、志をもった中学生にたくさん入ってきていただいたが、サイエンス高校と筑波高校併せてまだ117人の欠員がある。県としてはサイエンス高校と筑波高校の欠員解消を中心に取り組んでおり、学級増が必要といえる状況ではない)と話した。

「落としどころ見いだしたい」

4日は、つくば市議会の意見書提出と併せて、市民団体「つくば市の小中学生の高校進学を考える会」の片岡英明代表が、同じ竹園高校の2学級増を求める要望書を手渡した。ほかに、篠塚英司つくば市副市長、つくば市選出の鈴木将、山本美和、うののぶこ、ヘイズ・ジョン県議4人らが同席した。

黒田議長は「(2013年に県立並木高校が閉校し並木中等教育学校に移行した後の)10年ほど前から『ちょうどいい県立高校の受け皿がない』といった声が出て、ここ最近、切実な声が大きくなっている。つくば市の県立高校は(中学卒業者数で比較し)水戸市の3分の1しかないというデータもある。市内には小中学校がたくさん新設されているが高校はそのまま。教育環境の充実は重要なこと」だなどと話し、理解を求めた。

これに対し県の庄司部長は「貴重なご意見としてお受けさせていただきたい」などと答えるにとどまった。

意見交換の席で、考える会の片岡代表は「(中高一貫により)土浦一高が(高校入試の募集枠が)8学級から4学級になって1年目の2024年は、県立高校志願者の波が土浦二高と竹園高に行き、両校とも志願者が100人以上オーバーした。2年目の25年は牛久栄進高校の志願者が137人オーバーになった。この波は2026年にどこに向かうのか。受け皿はあるのか」と迫り「県立高校改革プランに沿って学級増をやってほしい。オールつくばの願いを受け止めてほしい」と要望した。

同席した県議からは「子供たちのために何ができるか、ぶつかり合いながらも落としどころを見いだしていきたい」(山本県議)などの意見が出された。(鈴木宏子)

二十四節季と虫のはなし《続・平熱日記》182

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絵は筆者

【コラム・斉藤裕之】夏草の生い茂る季節となり、件(くだん)の打ちっぱなしゴルフ場の草刈りに出かける。ついでにナラ枯れの木を数本伐る(確実にナラ枯れは進行している)。そのうちの1本は直径60センチの大きなクヌギで、確か一昨年あたりはカブトムシが群がっていたのを見たのだけれども、かわいそうに新芽もつけずに立ち枯れてしまった。

開けた斜面に立っていたので、伐り倒すのはそう大変ではなかったが、このクヌギの皮一枚下には恐らくカミキリムシの幼虫がはびこっていて、玉切りにした幹から何とも言えない「ワシワシ…」という幼虫のはみ音らしきものが聞こえ、それを割って薪(まき)にして積んでいくと、不気味な音のする壁となった(この幼虫は県が指定している特定外来種ではないようだ)。

しかし、一方では世界中で昆虫がどんどん減っていて、例えばミツバチの減少で草木が受粉できないで困っているとか。とはいえ、我が家では今年も軒下にテニスボールほどのスズメバチの巣を発見したので、人間様のご都合で叩き落した。多分周りはツルツルしたサイディングのお宅ばかりなので、木造の我が家の軒下は巣をかけやすいのだろう。

昔の人は(中国の人は)小さな動く生き物は大ざっぱに虫としたようだ。トカゲやコウモリも虫偏(むしへん)だし、虹も小さな虫の仕業だと思っていたらしい。

最近は聞かなくなったが、赤ちゃんが泣いているのは疳(かん)の虫のせいだなんて言っていたし、虫の居所が悪いとか、目に見えないものの犯人は虫ということにしたのだろう。というのも、パクの目の周りが急に赤くなって医者に連れて行ったらアレルギーだと言われた。飲み薬と塗り薬でよくなったが、昔だったらアレルギーも虫の仕業だと思われたに違いないと思った。

カエルも虫偏?

平熱日記の掲載が月に一度になった。隔週の寄稿が長く習慣になっていたせいか、せっかちな私はあまり早く原稿を書いてしまうと、掲載されるころには季節も世の中の話題も変わっていてやや戸惑っている。

そういえば、2週間をひとつの区切りとする「二十四節季」というのがある(これも大陸経由)ことを思い出した。今まであまり気にしたことはなかったけれども、2週間という長さは何となくひと区切りになる「ちょうどいい周期」なのかもしれない。してみると、草が勢いよく伸び始めたとか、蜂が巣をかけたとかというのは五日毎の七十二候に当たるわけで、はて、私は知らぬうちにこのペースで絵を描いているような気もしてきた。

農作業とも深いつながりのある二十四節季。ひと月前には備蓄米を喜々として手にする人々の画像が流れていたが、よくよく考えてみると米もガソリンも高いから怒っているのではなくて、本来は安いはずのものが高く売られていることに人々の腹の虫は収まらないのだと思う。

パクとの散歩道にある田んぼは、今年とうとう田植えをしまずじまいだ。雨の後などはケチャダンスのようにカエルの大合唱だけが勢いよく響いている。「コメ、カエル? カワズ? ケロケロ…」。カエルも虫偏だな…。(画家)

筑波実験植物園で倒木30本超 1日、35メートルの突風で被害

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幹から折れたモミの前に立つ遊川園長=4日午後、つくば市天久保、国立科学博物館 筑波実験植物園

ダウンバーストかガストフロント 水戸気象台

つくば市が豪雨や雷に見舞われた1日午後、同市柴崎付近で突風が発生した。水戸地方気象台は3日、現地調査を実施し、4日、突風について、ダウンバーストまたはガストフロントの可能性が高いと発表した。突風の強さは秒速約35メートルだったと推定されるという。

発表によると、1日午後4時30分ごろ同市柴崎付近で、豪雨やひょうに伴って突風が発生し、木造住宅の損壊、作業用足場の損壊、倒木などの被害が発生した。同市天久保の筑波実験植物園では樹木30本以上が倒れたり折れたりした。

ダウンバーストは積乱雲から吹き降ろす下降気流が地表に衝突して水平に吹きだす激しい空気の流れ。ガストフロントは積乱雲の下で形成された冷たく重い空気の塊が、重みによって、温かく軽い空気の側に流れ出すことによって発生する空気の流れ。柴崎付近の被害は面的に発生し、突風の強さは、0~5まで6段階で評価する「日本版改良藤田スケール」で、最も小さい0階級(JEF0)という。

全て東から西に倒れる

つくば市天久保、国立科学博物館 筑波実験植物園の遊川知久園長によると、雨が降り始めたのは1日午後4時30分ごろ。瞬く間に激しさを増す雨が窓を打ちつけ、建物全体が揺れるような落雷の音が響き渡ったという。同施設内の研究管理棟にいた広報の久保田美咲さんは「全く外に出られないくらいの大雨で、あっという間に屋外が川のようになっていた。帰れないかと思った」と話す。その後、午後5時15分ごろまでに雨は小降りになった。

園内では展示室の一部でガラス窓が割れ、敷地内の東側周辺部を中心に、高さ15メートルほどのモミや、コウヤマキなど30本以上が根本から倒れたり、幹が割れるなどしているのが確認された。折れた木は全て、東から西に向けて倒れていた。

遊川園長は、「台風などで1、2本の木が折れることはあったが、一度にこれだけ倒れたのは初めてのこと。敷地に隣接する住宅に倒れなかったのは風向きが幸いした」とし、「来場者出入りのある主だった部分では倒壊した木々の除去は進んでいる。遊歩道から離れた箇所についてはこれから順次、除去作業を進めていく」と話す。

同市消防本部によると1日午後は、突風の被害やけがなどによる救急車や消防車などの出動要請は無かったという。市危機管理課によると柴崎で2カ所、金田、玉取、今鹿嶋でそれぞれ1カ所倒木の被害があった。市公園・施設課によると筑波実験植物園近くの山鳩公園(同市天久保)のほか、流星台北公園(柴崎)、松見公園(天久保)、天久保公園(同)で各1本、倒木の被害があり、4日までに撤去した。(鈴木宏子、柴田大輔)

筑波実験植物園近くの山場公園で根元から倒れた樹木=4日午前11時ごろ、つくば市天久保

常総だから勝たなきゃではなく歴史つくるチームに 島田直也監督【高校野球展望’25】㊦

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島田直也監督=常総学院野球場

県内強豪校の名監督インタビュー最終回は、常総学院の島田直也監督。第107回高校野球選手権茨城大会開幕を控え、チームの仕上がりや手応えをお聞きした。

低めの投げ分けがうまい

―今年のチームについて教えてください。昨年と比較してどのような特徴を持っていますか?

島田 昨年は投手力、打撃力、守備力ともに個々の力が高かったのですが、今年は全体的に力が落ちます。投手も野手も、調子の良い選手を見極めながら起用しています。

エース右腕の小澤頼人投手

―投打の中心となる小澤頼人投手についてですが、秋は最速145キロをマークしながら、春は球速がやや落ちていた印象です。

島田 球速を求めすぎるとフォームが崩れ、コントロールが乱れてしまいます。春の大会ではその点を意識して、あえてコントロール重視で投げていたと思います。土台ができれば球速は自然と戻るもの。鋭いキレのあるボールを意識してほしいと伝えています。

―春の大会ではインコースとアウトコースの投げ分けが非常に効果的に見えました。

島田 そこが彼の持ち味です。低めへの投げ分けが非常にうまい。関東大会では少し高めに浮いて打たれましたが、夏に向けては修正して臨みます。

俊足の佐藤剛希捕手

―打撃陣では佐藤剛希選手と柳光璃青選手が印象的でした。

島田 調子を落とした選手がいる中で、この2人がしっかりとカバーしてくれました。小澤と佐藤剛希は昨年メンバー入りしており、今年の中心選手です。柳光も力がありましたがけがでメンバー入りできず、今年こそはチームを引っ張ってくれると期待しています。

次の代のチームつくる難しさ実感

若手の育成と課題

―春の県大会では1年生の出場も目立ちました。

島田 将来を見据えて、若い選手に経験を積ませました。上級生にも刺激になったと思います。

―秋・春の戦いを経て見えてきた課題は?

島田 実力ある代の次にチームをつくる難しさを改めて実感しました。監督1年目だった「大川・秋本・田邊世代」のあとも、結果が出なかった。今回も似たような状況で、最初は秋に勝てる気がしませんでした。ですが、そこからチームがまとまり、秋に4強まで進出できたのは大きかったですね。

―春は県大会3連覇を達成されました。

島田 3年生たちは1年時から優勝の景色しか見ていません。「3連覇を君たちの代で止めるのか」とプレッシャーをかけながら臨みました。達成できたことは大きな自信になると思います。

―関東大会では東海大相模に大敗。受け止めを教えてください。

島田 強豪校との対戦で悔しさを経験できたことは、選手たちにとってプラスでした。練習に対する姿勢も変わってきたと感じています。

采配を振るう島田直也監督(ベンチ中央)

自分の強みアピールしていた

―夏の組み合わせ抽選についていかがですか。

島田 Aシードでしたので抽選はありませんでしたが、会場で結果を見ていて童心に戻りました。「さあ、やるぞ」と気持ちが引き締まりました。

―これまで出会った指導者の中で、影響を受けた方はいますか?

島田 プロ4球団、独立リーグでも8年やってきましたが、特定の誰かというより、出会ってきた多くの指導者から良い部分を吸収してきたと感じています。

―ご自身の高校時代を振り返って、どんな選手でしたか?

島田 「絶対負けない」という強い気持ちを持っていました。与えられたチャンスは必ずものにするつもりで、自分の強み(肩・足)をとにかくアピールしていました。

―今の選手たちとの違いは?

島田 最近の選手は「どうしたら使ってもらえるか」を考える力が弱く、自主練でも好きなバッティングばかり。私は「守備や走塁、バントでベンチ入りできる」と伝えているのですが、なかなか行動に移す選手が少ない。逆に、過去には自己プロデュース力でベンチ入りをつかんだ選手もいました。社会に出ても大事な力ですので、今のうちから身につけてほしいです。

「常総学院の使命」転換点に

―常総学院は夏の甲子園から9年遠ざかっています。そのプレッシャーは?

島田 「常総は勝って当然」という空気が、選手にとってプレッシャーになっていると感じています。これまでは「気にするな」と言ってきましたが、今年は「楽しもう」という方向に意識を変えたいと思っています。

―「楽しむ」とは、どのような意味ですか?

島田 緊張感の中での本気の楽しさです。その感覚があれば自然と力が出せると考えています。

―センバツよりも「夏」にこだわりがあるということでしょうか。

島田 やはり「夏の常総」が周囲からの評価にも直結します。「甲子園で勝つ」ではなく、まずは「茨城を勝ち抜く」。そこに焦点を置いています。

―最後に、今年のチームに期待することを教えてください。

島田 「常総だから勝たなきゃ」ではなく、「自分たちが歴史をつくる」という意識を持って戦ってほしいです。甲子園出場はゴールではなく、その過程で得る経験こそが大きな財産。今年は、常総学院としても大きな“転換点”になる予感がしています。

【取材後記】過去4年間、夏を前にしたタイミングで島田監督に話をうかがってきたが、今年のインタビューではこれまでと少し違う空気を感じた。かつては「今年こそ」という悲壮感がどこかに漂っていたが、今回はむしろ“開き直り”にも似た落ち着きと、確かな覚悟が伝わってきた。選手たちに求めるのは「結果」ではなく「本気の中で楽しむ」こと。そこに、勝ち負けを超えた野球の本質がある。名門・常総学院の重圧を背負いながらも、今あるチームの可能性を信じて進む監督の姿は、頼もしくもあり、まさに“歴史をつくる”旅の先頭に立つ存在だった。今年こそ、夏の常総に新たな物語が刻まれるかもしれない。その瞬間の目撃者でありたい。素直に、そう思わせてくれる取材だった。(伊達康)

終わり

世界が壊れた日 その1《看取り医者は見た!》42

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写真は筆者

【コラム・平野国美】私たちの社会には、「普通」という暗黙のルールがあります。「空気」を読み、周りに合わせることが求められ、そこから外れる人は「変わっている」「融通が利かない」と見なされがちです。しかし、もし社会の「普通」という前提自体が崩れ落ちてしまったら、一体何が起きるでしょうか。

2011年3月11日に起きた東日本大震災。被災地の町の図書館も例外ではなく、すさまじい揺れで本棚は倒れ、蔵書が床一面に散乱する光景が広がりました。翌朝、出勤したスタッフは言葉を失い、立ち尽くすばかりでした。「どこから手を付ければ…」。誰もが絶望と無力感にさいなまれ、思考を停止していたのです。

その時が止まったような空間に、カツ、カツと規則正しい足音が響きます。定刻通りに出勤してきたKさんです。彼は普段、「仕事は正確だが冗談が通じない」「空気が読めず人を戸惑わせる」と評される、少し不思議な存在でした。

この日も、Kさんはいつもと寸分違わぬ「いつも通り」でした。茫然(ぼうぜん)自失の同僚たちを一瞥(いちべつ)しただけで、散乱した本の山にまっすぐ向かいます。そして静かに一冊の本を拾うと、汚れを払い、記憶の中にある完璧な配置図通り、本来あるべき棚にそっと差し込みました。一冊、また一冊…。

Kさんは、目の前の惨状など存在しないかのように、淡々と本を元の場所に戻し続けます。周りの混乱した空気とは完全に異質なその姿。「空気を読まない」と評された彼の特性が、この極限状況において、誰にも真似できない「不動の精神」として静かな光を放ち始めた瞬間でした。その規則正しい作業は、まるで正確に時を刻む振り子のようでした。

不思議なことに、その姿を見ているうちに、パニックに陥っていたスタッフたちの心は少しずつ凪いでいきます。「…そうだ、こうしていても始まらない」。誰かがつぶやくと、1人、また1人と魔法が解けたように動き出し、Kさんの隣で本を拾い始めたのです。

Kさんの「いつも通り」が、崩壊した世界の中で、秩序を取り戻すための最初の歯車となりました。作業は1日中続きました。しかし夕方5時に終業チャイムが鳴ると、Kさんはぴたりと手を止めます。そして、まだ山のように残る本には目もくれず、「お先に失礼いたします」と一礼し、いつも通りの定時に帰って行ったのです。

輝いた「異質な人間の存在」

一見、奇妙に見える彼の行動。しかし、この一連の出来事は、私たちが当たり前だと思う「普通」や「協調性」という物差しを、根底から揺さぶるものでした。彼の行動の裏には、一体何があったのでしょうか。

この話の中にダイバーシティの概念があります。人間の集団の中には、気質や行動パターンに多様性が存在します。町の図書館の中にも異質な人間が存在したのです。同じタイプの人間ばかりでは、同じストレスがかけられた場合、その集団が全滅する可能性があります。Kさんの性格・特性は「いつも通り」でない世界で輝いたのです。(訪問診療医師)

東田旺洋、兵藤秋穂 両選手にエール 関彰商事 4日から日本陸上選手権

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ガッツポーズをとる(左から)やり投げの兵藤秋穂選手と、短距離の東田旺洋選手=つくば市二の宮、関彰商事つくばオフィス

第109回日本陸上競技選手権が4日開幕するのを前に、関彰商事(本社筑西市・つくば市、関正樹社長) 所属でいずれも筑波大出身の東田旺洋選手(29)と兵藤秋穂選手(26)の壮行会が3日、同社つくばオフィスで催され、社員約100人がエールを送った。

東田選手は男子100メートルに、兵藤選手はやり投げに出場する。同選手権は6日まで国立競技場で開催され、9月に東京で開かれる2025世界陸上につながる重要な大会となる。

一生懸命走ることだけ 東田選手

東田選手は昨年開かれたパリ五輪に出場、今年4月にはアジア陸上競技選手権に出場した。昨年の日本選手権では2位になっている。奈良県出身、筑波大学卒、同大学院を修了し、関彰商事ではヒューマンケア部に所属する。自己ベストは100メートル10秒10。

「この1年で若い選手が台頭し、現在年間ランキングは国内10位なので、ともかく決勝に残ることが重要。準決勝に焦点を当てている。出来ることは一生懸命走ることだけ」と意気込みを話す。

自己新記録目指す 兵藤選手

兵藤選手は2023年、日本インカレ優勝。持ち味は、力強い振り切りと、そこから放たれる鋭く勢いのあるやりの飛行だ。宮城県出身、筑波大学卒、同大学院修了、関彰商事ではライフサイエンス事業企画室に所属する。やり投げの自己ベストは56メートル16。

「やり投げは北口榛花選手がオリンピックで金メダルをとったので、注目を集める種目となっている。昨年は12位に終わってしまって残念だった。今年は十分練習を積むことができたので、入賞と自己新記録を目指して頑張りたい」とコメントした。

壮行会で関社長は「社員一同が応援している。2人にはぜひ頑張って、9月に東京で開催される世界陸上に選ばれてほしい」と激励した。さらに同社所属の高橋理恵子選手がスウェーデン・マルモで開催されたゴールボールの大会で銀メダルをとったこと、同社野球部が天皇杯茨城県大会で決勝に進んだことなどの報告もあった。(榎田智司)

◆日本陸上競技選手権大会スケジュール▽男子100メートル予選は4日午後3時35分~、準決勝は同午後8時25分~、決勝は5日午後6時30分~▽やり投げ決勝は4日午後5時35分~。