筑波山南麓のつくば市臼井を拠点に、知的障害者たちと共同生活をしながら、有機農業や表現活動に取り組むNPO法人「自然生(じねんじょ)クラブ」(柳瀬幸子代表)が、4月から都内で上映が始まった映画「日日(にちにち)芸術」(伊勢朋矢監督)に出演している。つくばでは7月12日に、同市竹園、つくばカピオで上映会が予定され、当日のオープニングパフォーマンスとして同クラブのメンバーが踊りと太鼓の舞台を披露する。
「日日芸術」は、俳優の富田望生がセロファンテープで作られた奇妙なメガネをかけて不思議な世界を旅する物語。メガネをかけると日常の風景がアートだらけの世界になり、望生は独創的な作品をつくるアーティストたちと出会う。
映画には、同クラブが活動する筑波山麓で、メンバーがダンスをしたり、絵画を制作する姿が登場する。
田植えで田楽舞を披露
同クラブでは田植えの際に田楽祭を開催し、踊りや太鼓による創作田楽舞を披露してきた。田植歌は筑波山麓地域で実際歌われたものだ。
同クラブの施設長で元教員の柳瀬敬さん(66)によると、創作田楽舞の始まりは1989年に筑波ふれあいの里で実施された農業講座で田植えや稲刈りを学んだとことからだ。「人間性を作るのには太鼓が一番」という柳瀬さんの信念から、太鼓の演奏を取り入れた。
創作田楽舞は、今月19日に同市神郡にある約100平方メートルの田んぼで実施された田植えでも、約100人の参加者らに披露された。新型コロナなどの影響で5年ぶりの田植祭での披露となった。同クラブのメンバーが太鼓や笛を力強く演奏する中、約1時間、踊りが披露され、拍手が鳴り響いた。
施設長の柳瀬敬さんは愛媛県今治市出身。筑波大学で教育哲学を学び、群馬県の全寮制私立学校、白根開善学校で自由教育を実践した。1990年筑波山南麓に自然生クラブを設立し、2001年にNPO法人化した。地元にあった大谷石造りの米倉庫を改装してミュージアムとし、シアターとアトリエを運営している。同クラブは踊りと太鼓の舞台でこれまでにヨーロッパ各国の演劇祭に出演し、ヨーロッパ公演を契機に、「異才の芸術」(アール・ディフェランシェ)を実践する芸術団体との交流を深め、2009年には国際交流基金より地球市民賞を受賞した。
柳瀬幸子代表は「5年ぶりに田植えで田楽舞を披露できたのはとてもうれしい。映画『日日芸術』は筑波山麓でもロケが行われた。つくばカピオで上映されるので、7月12日に見に来てほしい」と話した。(榎田智司)
◆映画「日日芸術」つくば上映会+自然生クラブ・オープニングパフォーマンスは、7月12日(金)午後6時30分、つくば市竹園1-10-1、つくばカピオホールで開演。チケットは一般2000円、小中高校生・大学生1000円、障害者1000円、介助者1000円。チケット購入は下記QRコードへ。問い合わせは自然生クラブ(電話029-866-2192)へ。