【コラム・沼田誠】「首都圏新築マンション、2025年度の平均価格は9383万円。前年比+15.3%で、5年連続の最高値を更新」。日本経済新聞(2026年4月20日付)で、こんなニュースを目にした。東京23区にいたっては平均1億3,784万円(平米単価214万円)。「マンション高騰」は確かに首都圏の現実になっている。
この調査の対象は東京・神奈川・埼玉・千葉の1都3県であり、茨城県は含まれていない。では、つくば市と水戸市の実態はどうか? 国土交通省「不動産情報ライブラリ」の中古マンション取引データから、両市の過去約20年の推移をたどってみた。単年中央値はばらつきが大きいため、傾向が見えやすい5年移動平均で描いた。

水戸は+7%、つくばは+46%
水戸市の単価は2010年24.3万円/平米→2025年26.0万円/平米で、長期で見ればほぼ横線(+7%)。2011年に17.3万円/平米まで急落したのは、東日本大震災の影響だろう。それ以外は、一貫して20万円台半ばを推移している。
一方つくば市は、2010年30.5万円/平米→2014年30.3万円/平米へ微減したあと、ゆっくり上昇に転じ、2025年は44.4万円/平米と+46%。2007〜2009年につくばの単年データが40万円台を示すのは、TX開業(2005年)直後で取引のほとんどが築浅物件だったためであり、純粋な「相場」ではない。
この期間の変化率は、水戸が+7%、つくばが+46%。小さくない差といえる。何が違うのだろうか?
「国道16号線」(新潮文庫)の著者、柳瀬博一氏は、首都圏の人口移動データについて「東京一極集中と言われるが、年代別に見ると実態は違う」と指摘する。0〜14歳の人口は、この10年、ずっと都心から国道16号エリアと湘南に移動しており、その背景は都心の家賃の高さや子育てに適さない交通環境―などにあるという。
つくば:都心子育てを諦めた世帯
つくば市は16号エリアより外側だが、TXで都心と直結する。もし、つくばのマンション単価U字上昇が、柳瀬氏の言う「都心からの子育て世帯の流出」の延長線上にあるとすれば、首都圏の住宅事情は、価格そのものとしてではなく、「都心で子育てを諦めた世帯の受け皿」として、茨城県南にまで届いているのかもしれない。
実際、公的データもこれを裏付けている。総務省「住民基本台帳人口移動報告」(2025年)によれば、つくば市の転入者1万4542人のうち、東京都から2103人、千葉県から1454人、埼玉県から944人、神奈川県から880人。
1都3県からの転入は合計5381人で、全転入者の37.0%を占める。同じ茨城県内からの流入(4854人、33.4%)を上回り、1都3県がつくば市最大の流入源になっている。
水戸:県内からの移住が過半数
一方、水戸市の1都3県からのシェアは26.8%にとどまり、県内が49.3%と約半数を占める。この傾向は2024年も同じで、同じ県内の都市でも、首都圏との結びつき方は明確に違う。
2015年、つくば市は「北関東からの転入超過が大きい一方、東京圏に対しては転出超過」と自市の人口動向を分析していた。だが、2025年の数字を見る限り、首都圏の住宅事情の延長線にこの市があるという見立ては、もはや仮説ではなく、データが示す事実に近づいている。(元水戸市みとの魅力発信課長)
<参考データ・出典>
▼日経新聞「首都圏新築マンション、25年度平均9383万円 最高更新」(2026/4/20)
▼不動産経済研究所「首都圏新築分譲マンション市場動向2025年度」(2026/4/20)
▼国土交通省「不動産情報ライブラリ」
▼柳瀬氏のSNS投稿(2025年、首都圏人口移動データの分析および国道16号エリアへの子育て世帯移動について)
▼総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告」2024年・2025年 第10表
▼つくば市「人口分析状況」(2015)






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