【コラム・よぎ】かつて世界トップクラスの競争力を誇った日本は現在、IMD(国際経営開発研究所)の国際競争力ランキングで38位に後退している。技術革新、企業ガバナンス、労働生産性など多くの分野で停滞が見られ、国際社会における存在感が低下している。インフラ面では依然として高い水準を維持しているものの、ビジネスや政治の効率性に課題が残り、その背景には人材の質の低下があると指摘されている。

人手不足でなくスキル不足が問題
教育分野においても問題は深刻である。不登校やいじめの増加に加え、学級閉鎖の頻発や教員不足が進行している。さらに、大学ランキングの低下、英語力やICT(情報通信技術)教育の遅れも顕著であり、若者の海外進出や高度な研究への挑戦を阻む要因となっている。また、企業が求めるスキルと教育内容との乖離(かいり)や、企業内研修機会の減少が重なり、スキル不足や構造的失業を招いている。加えて、自己肯定感の低さや将来への希望の欠如といった精神的課題も社会全体に広がっている。
人口減少や高齢化に伴う人手不足が深刻だと指摘されている一方で、専門家は「日本の問題は人手不足ではなくスキル不足である」と強調する。産学連携の強化や国内人材のリスキリング、IT・AI分野の教育機関の拡充が不可欠である。また、人手不足への対応として外国人材の受け入れが進んでいるが、その活用には課題も多い。技能や言語能力が十分でない人材の受け入れが進むなど、質と量のバランスに問題がある。
適切な移民政策の下で、人材マッチングを進めるとともに、教育・医療などを含めた包括的な支援体制の整備が求められている。
学校を「学びの企業」と再定義
地方から都市への人口流出を防ぐには、地域における教育と雇用の機会創出が重要である。公立学校では生徒数減少により統廃合が進み、学校経営そのものの見直しが求められている。学校を「学びの企業」として再定義し、生徒や保護者のニーズに応じた教育の提供、教員育成、ガバナンス強化を進めていく必要がある。
進学校、一般校、特別支援学校、工業高校、夜間学校、通信制教育など、多様な学校形態が存在する中で、それぞれの教育が本当に生徒や社会のニーズに応えているのかを具体的に問い直す必要がある。例えば、夜間学校において全日制と同様のカリキュラムをそのまま適用しても、多くの生徒にとっては現実的ではない。学校の形態や生徒の実情に応じて、カリキュラムや教育活動を柔軟に調整することが求められる。
問題は「形骸化」と「現状維持」
日本社会の最大の課題は「形骸化」と「現状維持」である。これを打破するためには、教育の目的と理念を再確認し、改革と改善を同時に進めることが不可欠である。教育は単なる知識伝達にとどまらず、人材育成を通じて社会と国家の未来を形づくる基盤であり、日本再生の最も重要な鍵である。このコラムでは、教育をどのように変革していくべきか、考えていきたい。(元土浦一高・付属中学校 校長)
【よぎ(本名プラニク・ヨゲンドラ)】インド西部のプネ大学(物理・経済)卒、同大学院(国際・労務経済)修士。同時に日本語と情報技術を学ぶ。1997年に国費留学生として来日、大手IT企業や金融機関の幹部として勤務。2019年から東京都江戸川区議。22年4月~26年3月、茨城県立高校の公募校長として、土浦一高・付属中学の副校長・校長。全日本インド人協会会長、江戸川印度文化センター館長。1977年生まれ、インド出身。






最近のコメント