【コラム・岡田富朗】足利学校は、日本で最も古い学校として知られ、その遺跡は1921(大正10)年に国の史跡に指定されています。1万7000冊以上の古書(和とじの書物)を所蔵しており、国宝に指定された漢籍(中国から輸入された書物)の存在はよく知られています。国宝に指定されている書籍は、「周易注疏」「文選」「礼記正義」「尚書正義」の4種です。
足利学校の創建については諸説ありますが、学校の歴史が明らかになるのは、室町時代中期以後、上杉憲実が関東管領になると、学校を整備し、学校領とともに孔子の教え「儒学」の五つの経典のうち四経の貴重な書籍を寄進し、鎌倉から禅僧快元(かいげん)を招き初代庠主(しょうしゅ=校長)とし、学問の道を興し、学生の養成に力を注ぎました。
その後は代々禅僧が庠主になり、学徒三千といわれるほどに隆盛しました。明治時代以降、足利学校を訪れた多くの人々が記した「来訪者揮毫集」からは、渋沢栄一や嘉納治五郎といった人物をはじめ、中村不折などの画家や文化人、学者が、上杉憲実以来の貴重な漢籍などの蔵書を求めて来訪していたことがわかります。

近世日本の教育遺産群
2015年には、「近世日本の教育遺産群」として、茨城県水戸市の旧藩校「弘道館」、岡山県備前市の郷学「閑谷学校」、大分県日田市の私塾「咸宜園」とともに日本遺産に認定されました。「弘道館」は1841年に水戸藩主・徳川斉昭が創設した藩校で、藩校としては日本最大規模を誇ります。学問・武芸から医学・薬学・天文学に至るまで幅広い分野の教育が行われており、総合大学のような存在でした。
企画展「文選と古典文学」
史跡足利学校内にある足利学校遺跡図書館では、年に5~6回、約2カ月ごとにテーマを変え、企画展が開催されています。4月7日(火)から6月7日(日)まで開催されている「文選と古典文学」では、令和の元号の典拠とされる「万葉集」をはじめ、「源氏物語」などの古典文学と、それらの作者に影響を与えた「文選」(江戸時代本)を展示し、その魅力や漢籍との関連について紹介しています。
また、4月25日(火)から5月10日(日)までの期間には、国宝書籍である「文選」(宋刊本)も特別に展示されます。この「文選」は金沢文庫旧蔵本だったのを、1560(永禄3)年、北条氏政が七世庠主九華に贈ったもので、末尾には北条氏の虎印「禄寿応穏」の朱印と、九華が北条家で易の講義をしたという識語があります。
足利学校の研究員・学芸員である大澤伸啓さんは「現代では紙の書籍の需要が減少しつつありますが、足利学校が幾度も火災に遭い、資料を失いながらも、長い年月を経てなお貴重な書籍を残し伝えることができたのは、和紙と墨でつくられた書籍であったからこそではないでしょうか」とお話しくださいました。(ブックセンター・キャンパス店主)


















































