【コラム・海老原信一】築48年の我が家。古くなり傷んではきたが、それなりに心地よく暮らせている。玄関の右隅上方にベニヤ板の棚が取り付けられている。設置してから7~8年は経つが、ツバメに来てほしくて用意した営巣用棚だ。
だが来てくれない。なぜなのかと思いながら、毎年見ては寂しくなる季節がやってきた。家主はそれなりに心地よく暮らせているが、ツバメには気に入ってもらえないようだ。
庭先の電線に止まっては、ジュリ、ジュリと鳴く姿は見えるのに、あと3メートル先のこの物件で営巣してほしい。確かに、巣作りに必要な泥を採れる場所がこの近くにはない。田んぼとか、湿地のような湿った土がないと、巣作りは難しいようだ。諦めるより仕方がないのか。
巣立ち間もない子ツバメ
17年ぐらい前、花室川中流域でのこと。川の途中に石を敷き詰め、流れに変化をつけてある場所が一定の距離ごとに設置されている。その一つの下流に橋が架かっており、暑い盛りの季節、その上に通い詰めたことがある。
敷き詰めた石が流れを変化させると、そこにはいろいろな堆積物が集まる。ごみなどもあるのだが、小さな生き物たちもおり、魚がそれを目当てに集まってくる。その魚を狙ってサギが飛来する。敷石の上で水面を見つめ、くちばしを水中に打ち込み魚を捕らえる。
空振りになることの方が多い。だからだろうか、納得するまで頑張る。似たようなものかと思いながら、観察と撮影を続ける私。
それにしても暑いとつらくなり、少し動いてみようかと川下側に歩き出したとき、1本のヨシが揺れるのに違和感を覚えた。おや何だろうと視線を凝らす。そこに、3羽の巣立ち間もない子ツバメが止まっている。
1本のヨシに3羽も止まれるなんて、鳥の体は軽くできている。ヨシも細い見掛けとは違って柔軟なんだと、感心をしながら眺めていた。急に子ツバメたちが騒がしくなったと思ったら、すぐに親ツバメが現れた。
くちばしの先には虫を捕らえている。そうか、そういうことか。親の飛来をいち早く察知し、我先に食べ物を受け取ろうとアピールする子ツバメたち。そこに遠慮は存在しない。親は公平に与えようとするのだろうか、それともアピール度の強い子に傾くのだろうか。
希望を捨てない家主
自然界のおきては私たちが考える以上に厳しく、それでもうまく収まる柔軟さもあると思わせる一幕を見ることができた。そこへ誘導してくれた暑さにも感謝だ。
そんなやり取りを身近で見たいと設置した玄関先の棚。自身がツバメならどうだろうか? ここでしばらく暮らしてみようと思える場所なのだろうか? それでも希望を捨てたくない家主なのだが…。(写真家)






最近のコメント