月曜日, 10月 7, 2024
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《吾妻カガミ》79 善政?つくば市のコロナ対応

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春の筑波山=土浦の霞ヶ浦畔から撮影

【コラム・坂本栄】コロナウイルス禍は厄介なことになってきました。欧米の指導者はコロナの来襲を戦争事態と宣言。国境の往来が抑えられ、内外の経済は縮みつつあります。日本では安倍政権の危機管理力が衰えているときだけに、困ったものです。

コロナの攻撃に対する防御策はある意味シンプルといえます。迎撃策(治療薬)の開発が肝心であることは言うまでもありませんが、それまでの間、人に潜んで来襲する敵に対する基本作戦は二つです。一つは国・県の境で阻止すること。もう一つは、侵入を許してしまった場合、戦域でのコロナの活動(蔓延)を抑えることです。

つまり、阻止線を設け(人の移動を抑え)、敵の活動を許さない(コロナを運ぶ人が群れない)ことです。このため、国は非常事態を宣言し、国民の行動(移動する、群れる)を制限することが必要になります。

米も英も独も伊も準戦時体制を立ち上げました。ところが、「森友と花見」で政治力が衰えた安倍さんは、急ぎ特措法をいじったもの、国民に自制を求めるにとどめました。先の大津波の教訓を踏まえ、平時に非常事態法体系を整えておくべきだったのに、初期対応は緊張感に欠け、その後も準戦時の形にはなっておりません。

「移動するな」「群れるな」

市域でコロナが顕在化する前、つくば市でもナイーブな施策が見られました。政府の要請を受け、小中校を休みにする(群れる場をなくす)と言いながら、自習の登校は認める(群れる場を別の形で用意する)と、父母に配慮したことが一つ。市内の宿に泊まり飲食する人におカネを出す(人の移動を促す)という、業者さんへの配慮がもう一つです。

詳しくは「新型コロナでつくば市小中学校…」(2月28日掲載)、「ホテル・旅館宿泊者に最高7000円補助」(3月13日掲載)をご覧ください。前者は父母の負担を軽くする策、後者は市民の消費を刺激する策(業者への間接支援)といえます。善政ということでしょうが、「人を群れさせない」「人の移動を抑える」という、対コロナ作戦の基本に穴を開けることにならないでしょうか。

ある潜水艦映画にこんな場面がありました。魚雷攻撃を受け1区画が浸水、修理するも間に合わず、別区画に海水が流れ込みそうになる。そのとき艦長は修理員を作業区画に残し、隔壁扉を閉じて全艦に海水が回るのを防ぐ―。2~3の修理員を犠牲にし、残り20~30の艦乗員を救うという冷酷な判断です。

父母や業者を軽視しても構わないと言っているのではありません。作戦目標(コロナ蔓延阻止)に留意すべきではないかと言っているのです。善政を施すのであれば、教職員による児童宅巡回、宿屋・食堂への直接支援を考えるべきでしょう。

財政で経営と家計を回せ

国民の信が薄くなっている安倍政権が、対コロナ戦で国民に不便を強いるのは難しいかも知れません。でも政権を担っている以上、非常時宣言とセットで戦時国債を発行、企業経営と国民生計を維持する策を繰り出すべきです。天変地異や金融危機に比べると、コロナ危機の構造は単純です。敵を破る間、財政支援で経営と家計が回っていれば、V字復興が可能でしょう。(経済ジャーナリスト、戦史研究者)

【追記】この稿を送る直前、つくば市は①4月7~19日も小中学校を休校にする②(今度は)自習の登校も受け入れない―と発表しました。善政の一つを②に切り替えたことを評価します。

《続・気軽にSOS》58 「過ぎる」感情のデメリット

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【コラム・浅井和幸】前回のコラムでは、不安にも憂鬱な気分にもポジティブな意味があるということをお伝えしました。ネガティブに思える感情や感覚も、適切に作用すれば、それは大きな利点があるものです。しかし、「過ぎる」感情や感覚は、短期的にも長期的にもデメリットが大きいので、対処が必要ということになります。

例えば、不安についてです。不安は、これから起こるかもしれない「嫌なこと」に対する警報機のようなものです。それは、まるで「この先に行ったら電車にひかれてしまうよ」と呼び掛けているような作用です。

踏切の警報機の音は、人が聞いて嫌だなと感じる不協和音が使われているらしいですね。他の警報音も、なんとなく気持ち悪いな、怖いな、不安だなと感じる音になっているはずです。

不安があるから、なんとなく嫌な感覚だから、そこを避けられるわけですね。ですが、電車も来ないのに、この警報機が鳴りっぱなしだったらいかがでしょう。もしくは、まだまだ電車は遠くかなたで、踏切に到着するには1時間以上もかかるような時点から、遮断機が下り、警報機が鳴り続けたらどうでしょうか?

この文章を書いていて、具体的に想像してしまい、今、私は背筋が「ぞくっ」とするような感覚です。とても怖い状況であるからです。

不安をコントロール

警報機が鳴っている。不安になることは必要なことです。踏切に入らなければ安全だという事を知っていれば、不安はコントロールしやすいですね。音がうるさくて耳が痛いのであれば、警報機から少し離れたり、耳を少し塞(ふさ)いだりしてもよいでしょう。

少し、友達との会話の声を大きくして、楽しい話しに気を紛らわしてもよいかもしれません。カーラジオの音量を少し大きくしたり、鼻歌を歌ったりしてもいいですね。別の道を探したり、そもそも踏切を使わずとも、好い生活スタイルを計画したりしてもよいかもしれません。

どこから危険な電車か何かが自分にぶつかってくるかもしれないということにパニックにならないようにするには、知り合いや専門家などとコミュニケーションをとり、対処法を模索することが必要です。

私たち人間は、正確な現在の状況や未来を感じたり考えたりすることはできません。さらに私たちの脳は、勘違い、思い込みもドンドンするようにつくられているそうです。そのなかで、有効な心の警報機の聞き方と、対処法を繰り返しバージョンアップしていくことで、自分の行きたい生き方に近づけて行けるとよいなと思うのです。

あなたは、幸せになるために生きていますか? 不幸になるために生きていますか? 楽しむため? 苦しむため? 日々、選択の繰り返しですね。(精神保健福祉士)

《くずかごの唄》58 コロナ対策 医療崩壊をくい止めるために

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イラストは筆者

【コラム・奧井登美子】 Sさんからの電話。

「コロナが怖くて、電話で再診察をやってもらいました」
「大学病院のホームページに、再診に限り、電話診察をするってあったけれど、それを受けたの?」
「そうです。あの混んだ待合室に行きたくなかったので、電話診察にしました」
「わかる。わかる」
「いつもと同じ薬の処方箋が、大学病院からおたくの薬局にファクスで届くと思います」
「ファクス? 処方箋は公文書だから、FAXでの調剤は違反です。やったことがない。困っちゃうわ。本物の処方箋はどこへもらいに行けばいいんですか?」
「そのことについては、病院側から薬局に説明があると思います」

ファクス調剤が、法律的に許されるのかどうか。薬剤師になって以来、初めてのことなので、私もどう対応していいかわからずに、少なからず惑ってしまった。

薬を扱う私たち薬剤師は、薬事法の厳しい規制に従って仕事をこなしている。新型コロナ肺炎のウイルスをくい止めるためには、医療関係者の1人として、かなりの努力が必要であることは覚悟しているものの、頭が変化のスピードについていけない。

処方箋が病院からファクスで届く

間もなく、病院から処方箋のファクスが届くと同時に、電話がかかってきた。コロナ肺炎の収束時まで、期間限定で厚労省が許可したとのこと。ファクスを受け取った人の氏名まで聞かれて、病院側も、臨時の処置とはいえ事故があったら大変なので、煩雑さも大変だろうと思う。

「本物の処方箋はどこに取りにいけばいいのですか?」
「病院から郵送されますのでご心配なく」
「郵送の費用は?」
「病院で持ちます」

コロナ禍での医療崩壊をくい止めるためには、病院内の医療関係者も、病院外の関係者も、患者さんも、一時的な変化のスピードと厳しさについていかなければならないのだ。(随筆家、薬剤師)

 

《ことばのおはなし》20 私のおはなし⑨

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【コラム・山口絹記】サイドテーブルに妻の電波時計と、私のメモ帳とペンケースが置かれていた。寝ている間に妻が届けてくれたのだろう。

深夜0時。失語発症から約7時間。文庫本に書かれた文字は全く認識できない。とにかく、今は勉強だ。寝ている場合ではない。

左手人差し指を挟んでいた脈拍測定器を右手に付けかえ、左手で鉛筆を持ち、少し考えて文字を書いた。

“Cogito ergo sum. I think therefore I am.”

左手で第2言語を書くことはできた。思考が鈍る様子もない。しかし、私には英語よりも使いこなしていた言語があったはずなのだ。それがどのような言語だったかがわからないことが問題だ。

今度は左手で右手に鉛筆を握らせてみる。深呼吸をして何かを書こうと試みるも、腕はあらぬ方向に動いてメモ帳の上に置くこともできない。掛け布団の上で右手がもぞもぞと動いている。

左手で右手を導き、両手でメモ帳のマス目をなぞる。まだ痺れている右手に感覚を集中させ、右手だけで線を書いているとイメージし続ける。

1時間ほど、いびつなアルファベットを書き続け、試しに左手を離してみた。右手は意志とは関係なく文字を書き続けるものの、腕が動かずに同じ場所に文字を書き続けてしまった。壊れたタイプライターのようである。手ではなく、紙を動かしながら書いてみると、どうにか判読できる文字が書けた。

忘れないうちに失語発症からのことを断片的に記録し始める。ちょうど記録が現在に追いついた3時頃、何の前触れもなく部屋の明かりが消えた。

今の私のことばを書きたかった

「停電嗎?」私の口が唐突に中国語を発した。「我想…」暗闇でつぶやきながら、世界の認識に再起動がかかるのを感じた。今、頭の中に思い描いているのは、漢字だ。さっきまでどうしてもイメージできなかった漢字が頭の中に溢れてくる。

江碧鳥逾白
山青花欲然
今春看又過
何日是帰年

なぜ杜甫の絶句が頭に浮かんだのかはわからないが、暗闇に慣れてきた目と両手で必死にメモ帳に書きつけた。文庫本の文字に目を凝らすと、さっきまで何もわからなかった文字列の所々にぼんやりと意味を感じた。今私は、言語を学ぶ上で最高に楽しい瞬間を、自分の母語で味わっているのだ。看護師の巡回が来るたびに寝たふりをしてやり過ごし、ページをめくる。

本に挟まれた、かつての自分が書いたメモを見、それを右手と左手交互に使いながら書き写し始めた。ペンケースに入っていた鉛筆すべての芯が潰れてしまい、万年筆を取り出した頃には、外が明るくなり始めていた。唇を噛み切って眠気を堪える。

文字を書き写すのではなく、自分で新たに文章を書くことはまだできなかった。「今日は…」と書き写して、続きを書こうとすると、「今日は今日は今日は…」と1ページ書きつくしてしまうのだ。

私は、今の私のことばを書きたかった。過去の私のことばを書き写すのではなく、今の私のことばを。

再び深呼吸をして、頭の中を真っ白にする。どこかまだ自分のものではないような右手が書いたのは、娘の名だった。-次回に続く-(言語研究者)

《令和楽学ラボ》6 「みらいのもり保育園」が開園

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「みらいのもり保育園」の室内

【コラム・川上美智子】新型コロナウイルスの流行拡大で、この春、新入園や新入学を迎える子どもたちや保護者にとって、新学期への期待やうれしさがトーンダウンし、不安を抱えてのものとなりました。我が家の孫たちも、水戸の小学校と東京の中学校に合格し、喜びの春を迎えるはずでしたが、入学式が挙行されるのか、正常に学校が始まるのか、また、通学中に感染の恐れはないのか―など、心配の種は尽きません。

待機児童が多く、子育て支援の必要性が高いつくば市で、関彰商事(創業112年)は、社会貢献事業の一つとして保育園開設を目指してきました。2年間の準備期間を経て、セキショウグループの社会福祉法人「関耀会」が、この4月1日に民間認可保育所「みらいのもり保育園」を同市鬼ケ窪に開園します。

保育園の開園にあたり、園長として現在最も配慮を要することは、子どもの安全・安心の基本である感染予防です。新型コロナウイルス対策で求められるのは、従来のインフルエンザやノロウイルス対策よりも一段と厳しい感染予防管理です。

そうは言っても限界がありますが、職員のマスク着用や体温管理(37.1℃以下であること)、園児登園時や保育中の体温チェック(37.4℃以下であること)や、こまめな手洗い、室内の換気、玄関でお子様をお預かりする保護者のマスク着用や手の消毒、室内の次亜塩素酸水による消毒、トイレの次亜塩素酸ナトリウムによる消毒などなど、管理を徹底することにしています。

未来を生きる自信と意欲を育てる

「自分らしさと自ら伸びるチカラで、未来を生きる自信と意欲を育てる」の理念のもと、「子どものやりたいを引き出す」「非認知能力を育てる」「健やかな育ちのスタートを応援する」「発達を促す環境を大切にする」の4つの目標を掲げ、4月は特に園児が園に馴染めるよう楽しい環境を作ることに専念したいと考えていましたが、思わぬ環境下のスタートとなります。

保育園が大切にしている子どもの興味関心を引き出す教育、人間関係の中で培われる協同性と受容や規範意識の醸成、手作りのおいしい給食やおやつの提供、地域を活用した経験活動など、保育園の本来の活動にしっかり目を向け、子どもと保護者の期待に応えて行かなければなりません。特に、ゼロ歳児にとっては保護者不在の中での初めての社会デビュー、最初の2週間は大泣きの毎日になるのは必至ですが、安心できる居場所を築いて行きたいと思います。

地域の皆様にもご支援をいただき、魅力ある保育園の実現を目指してまいりますので、よろしくお願い致します。(茨城キリスト教大学名誉教授、みらいのもり保育園園長)

➡川上美智子さんの過去のコラムはこちら

《食とエトセトラ》1 温故知新 ご飯の炊き方

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吉田礼子さん

【コラム・吉田礼子】「食は母系で伝わる」と言ったら、今どき、古臭いと一蹴されてしまうでしょうか? あなたにとってお袋の味は何? と聞かれたら、何を思いうかべるでしょうか? 卵焼き、味噌汁、ご飯おにぎり、コロッケ、カレー、ポテトサラダ? 昭和30年代までに生まれた人だったら、思い当たるのではないでしょうか。

美味しい思い出とともに、若いころの母や兄弟姉妹の姿が蘇(よみがえ)る。今振りかえると、自分の味覚はこのころ形成されたと感じている。母が料理する姿を見ていると、こちらも楽しかった。そのうち自分でもしたくなり、母に頼んで手伝う。先ずはお米のとぎ方から。

見ているときと違って、1升の米をとぐのは大変なこと。水は冷たく、羽釜(はがま)は重たく、米粒をこぼさないよう神経を集中する。竹ザルに上げ、シャッシャッと水を切る。斜めにするとさらに水が出る。15~30分、布巾(ふきん)をかけて上げておく。この状態でも浸水時間は進んでいる。

初めチョロチョロ、中パッパッ

いよいよ炊飯。初めチョロチョロ、中パッパ、ブツブツ言うころ火を引いて、赤子(あかご)泣くとも蓋(ふた)とるな―。この歌、聞いたことがあると思いますが、蓋を開けないで、釜の中の状態を判断する先人の知恵に脱帽です。

初めチョロチョロは火加減のこと。強めの中火で釜の中の水が沸騰して、中の圧力が最高点まで高まり、隙間から蒸気が徐々に出てきます。蒸気が上に向かい勢いも強くなり、泡が出て噴きこぼれそうなら、圧力は最高点でブツブツ。

そこで一番弱い火加減にし、五合ぐらいで15分、赤子がせがんでも我慢。15分経ったら、一度強火にして、20ぐらい心の中で数える。耳を澄ますとチリチリ音が聞こえ、美味しいおこげができている。火を止め15分蒸らし、蓋を開ける。蓋は釜の上で立てず、水平に動かして外で立てる。

ご飯粒が立って、瑞々(みずみず)しくピカピカ光っている。周りをシャモジで回し、上下にかきまぜ、お櫃(ひつ)か飯台(はんだい)に空けて蓋をする。余分な水分を木が吸ってくれ、パリッと旨味と甘みが増す。

和食はユネスコの無形文化遺産

2013年、和食がユネスコの無形文化遺産に認定さました。和食が評価されたのは以下の点です。

▽多様で新鮮な食材とその持ち味の尊重:国土が南北に長く、海、山、里に多種多様な食材を有する
▽栄養バランスに優れた健康的な食生活:一汁三菜を基本とした理想的な栄養バランス、旨味を上手に使いヘルシーな食生活が長寿の秘訣
▽自然の美しさや季節の移ろいの表現:四季折々の花や葉を飾って料理して、季節感を楽しんでいる
▽年中行事との密接な関わり:正月などの年中行事と食文化が密接に関わり、また食の時間が家族や地域の絆を深めた

お料理も欧米型、調理法も簡便な方が求められている昨今、先人の知恵を学び、和食を次世代につなげていきたい。和食を通じて、年中行事、家庭や地域の絆も大切にしていきたい。(料理教室主宰)

【よしだ・れいこ】東北学院大文学部史学科卒。子どものころから母が料理する姿に触れ、料理の先生に憧れる。「台所は実験室」をモットーに独学。50歳を前に、全国料理学校協会所属の児玉久美子先生に師事。2008年、土浦市に吉田料理教室を開校。1953年、宮城県生まれ。土浦市在住。

 

《ひょうたんの眼》25 原発事故対応の失態を教訓に

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ユキヤナギ

【コラム・高橋恵一】クラスター。パンデミック。オーバーシュート。ロックダウン。新型コロナウィルスの感染拡大に伴って登場した「用語」である。行き過ぎた感染拡大、市民の移動や生活・経済活動が制限される都市封鎖。つまり、日本も武漢やイタリアのようになる可能性があるということだ。メッセージは明解さが必要だ。

新型ウィルス感染は、治療薬も予防ワクチンも無いので、国民はどうしたらよいのか分からない。人混みは避けて手洗い、うがい、マスクを使用する。風邪の症状が出て、体温37.5度が4日間続く間は自宅で静かにしている。それまでは感染の有無の検査もしない。ただし、重症化している人は医者にかかる。つまり、仮に感染しても重症化する人は少ないから、少々の発熱や体調不良の人は我慢していろというわけだ。

日本の初期対応は、武漢封鎖は中国国内の問題と見て、感染者が出た大型クルーズ船の乗客を上陸させず、水際作戦で感染を封じ込めるはずが、日本におけるクラスターの第1号にしてしまった。酒と美食のパーティー、社交ダンスあり、カジノあり。豪奢(ごうしゃ)だが不健康な環境下で、当然のように感染拡大した。情けないのは、政府もマスメディアもこのクルーズ船だけを見ていた。

国内での感染が出始め、国民の不信感を感じとると、首相は突然、小中高学校の休校を言い出し、続く記者会見では、検査体制の整備とマスクなどの供給体制を「次の週」までに整えると発言した。メディアも国民も、少なくとも「スグ」と受け取った。

結果、検査は増えず、店頭にはマスクも消毒用アルコールも並ばなかった。首相は「スグ準備に取り組む」と言ったのだという、「得意のご飯論法」だが、なんと記者会見から2カ月になろうというのに、まだ準備体制のままだ。このようなときのトップリーダーの言動は国民の命にかかわる。マスコミの追及も緊迫感がない。

新型コロナ 危機を見据え全力対応を

東京オリンピックについても、首相は「完全な形での開催」と、意味不明のことを言い出した。どうやら延期の伏線だったようだ。オリンピックも気になるが、新聞もテレビもそこに集中してしまう。感染拡大の危機から逃げようとしているみたいだ。いずれにしても、世界が新型感染症との「戦争」を終えなければ、オリンピックができないのは明らかだ。優先されるのは地球人民の生命の安全だ。

武漢の感染情報から2カ月半、首相の記者会見から2カ月。日本のナノテクノロジーを動員すれば、万能のマスクを生み出せるかも知れない時間だ。検査の完全実施による感染者の実態把握、感染爆発に対応できる医療体制の確保、国民の感染防止活動の徹底。野党も含めた政治とマスメディアは、危機を正面から見据え、全力で対応すべきだ。耳障(ざわ)りのよい「掛け声」ではなく、施策として。

9年前の津波による原発被災で、旧型の原発の廃炉を惜しんで、海水による冷却の決断ができなかったときのような、大失態を起こさないことだ。なにが大切か。国民の命を守らなければならない―政府とマスメディアの真価が問われる。(元茨城県生活環境部長)

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《宍塚の里山》59 春の美味しい草花いろいろ

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(左側の上下は)芽が出る前のタラとタラの芽、(中央の上下は)ヤブカンゾウの若い芽とヤブカンゾウの花、(右側4枚は上から下に)タネツケバナ、ハハコグサ、アザミ若芽、カラスノエンドウ若葉

【コラム・及川ひろみ】3月1日、モンシロチョウが飛び始め、3日にはアマガエルが鳴き、鶯(うぐいす)の初鳴きを聞いたのも、この日のことでした。初鳴きといっても、ホーホケキョと鳴いたわけではなく、藪(やぶ)から密やかに、鳴きたいな、鳴いてみようかなーとでもいうように、遠慮がちに。

2日後の少し暖かな日には、大分はっきりとさえずりました。それにしても、今年の生き物カレンダーは、初認日の更新がとても多い。

進む春、美味しい草花の成長も際立ちます。アマドコロは名前のように甘く、さっと茹(ゆ)でて酢味噌でいただくと美味しい、ユリ科の植物です。15センチほど伸びたものをスパッと白い部分から抜き取ります。野草を摘むときに大事なことは、来年も楽しめるように、根から掘り採るのはご法度(はっと)。

カンゾウも普通に見られる野草ですが、同じように、さっと茹でていただきます。両者とも癖がなく初心者向け。タラの芽は山菜の王様。鋭い大小の棘(とげ)が特徴の小木で、里山の方々(ほうぼう)に自生しています。膨らんだ芽だけをそっとむしり取ります。

ハリギリは棘(とげ)も芽もタラによく似た植物ですが、同じように食べられます。棘がタラより太く鋭い。タラもハリギリも天ぷらが香ばしい。どちらも、日が当たる林の縁に見られます。これも次年度を考え、取りすぎないように。

どちらも芽を取りすぎると、当たり前のことですが枯れます。食料用に改良されたタラに棘がないものもありますが、山野で育つタラは鋭い大小の棘が特徴です。以前、タラの芽と間違え山漆(ヤマウルシ)の芽を食べ、入院騒ぎを起こした人がいることはお伝えしました。

新鮮なうちに調理し食べ過ぎない

ノビルは、地元の方は「ののひろ、エシャロット」などと呼び、これも昔から好まれた野草。さすが、年季が入った方は採るのがうまい。丸く膨らんだ根がうまく採れたときは、子どもも大人も思わず笑顔に。ノビルは繁殖力が強く、根から採っても翌年に影響することはありません。

そのほか、新芽が食べられる植物は多々。クサギ、ハナイカダ、ウワミズザクラ、クズ、サルトリイバラ、ハコベ、クコ、アザミ(いずれも新芽をさっと茹で、お浸しやあえ物に)、タネツケバナ(若い葉や花をサラダに)、ナズナ(根をきんぴらに)、ハハコグサ、カラスノエンドウ(天ぷらに)。

またまだありますが、ナズナを除き、どれも若芽が食べごろ。摘んだ芽は新鮮なうちに調理し、食べ過ぎないこと。苦(にが)い、辛(から)いは、植物の自衛から生まれた薬物、毒物です。人によい効果をもたらす、薬効のあるものも種々ありますが、食べすぎにはご注意ください。(宍塚の自然と歴史の会代表)

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《吾妻カガミ》78 4月から本サイトを大刷新

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左は編集室がある筑波学院大の建物、右は1階入口に立て掛けてある案内版

【コラム・坂本栄】本サイトを立ち上げてから今月で2年半になります。月々の閲覧数が開始月の約10倍に増え、重くなってきたとの声もありますので、見やすく軽快なニュースサイトに全面更新、4月1日リリースします。

現サイトでは新着順に記事を上から載せていますが、パソコン向け新サイトでは最新記事4本を一覧できるように工夫しました。その中での順番は記事のサイズ(大きいほど最新)で示しています。トップ区画を見れば最新情報を入手できる仕掛けです。次の区画は少し前のニュース、その次の区画は少し前のコラムを置き、さらに、行政ニュース、特集ニュースを配します。

本サイトへのアクセス源を分析したところ、スマホが4分の3を占め、パソコン、タブレットを大きく上回りました。スマホ利用者が多いことを踏まえ、全面刷新に際しては、スマホ向けは小画面でも見やすく、スムーズに操作できる造りにしました。また、法人のバナー広告が増えていることから、その配置に工夫しました。

「今秋からヤフーでも発信」(2019年8月19日掲載)で触れましたように、NEWSつくばは自サイトでの発信だけでなく、大手サイトにも記事を提供しています。今後、グーグルなどの他のサイトでも露出度を高め、総閲覧数(ページビュー)月間100万を目指します。

ネットがメディアの主役に

最近、電通が2019年のメディア別広告費を発表しました。それによると、ネット広告が18年に比べ19.7%増え、2兆1048億円に達したそうです。朝日新聞は「ネット広告費 初のテレビ超え」と、ネットがテレビ(2.7%減の1兆8612億円)を抜いたと報じています。広告費のネット>テレビ>新聞(5.0%減の4547億円)の順は、各メデイアの将来性の順ともいえます。

新聞社は部数減と広告減を受けて、ネットメデイアへの変身に取り組んでいます。NHKが今春から番組のネット配信を始めましたが、広告費トップ落ちをした民放テレビも追随することになるでしょう。

新聞もテレビもスマホで読み視る時代になったといえます。スマホが5G(第5世代移動通信システム)で一層便利になることを考えると、新聞やテレビがメディアの主流である時代は終わりました。スマホを意識した本サイトの刷新に際しては、こういったメディアの構造変化も意識しました。(NEWSつくば理事長)

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《県南の食生活》11 ぼたもち、ボタメシ

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ぼたもち

【コラム・古家晴美】先週末、スーパーのレジ近くに沢山のおはぎが並んでいましたが、お買いになりましたか? 2020年春の彼岸は、中日(なかび)の3月20日(春分の日)をはさんで前後3日ずつ、17~23日でした。

現在、店頭で販売されているものは、その多くが「おはぎ」とラベル付けされていますが、『茨城方言民俗語辞典』を見ますと、県南地方ではオハギは見当たらず、ボタモジ(現桜川市、取手市)やボタメシ(つくば市、土浦市、取手市)などが「おはぎ」として紹介されています。

また、この季節になると、春彼岸に食べるのが「ぼたもち」で、秋彼岸に食べるのが「おはぎ」と解説する記事や番組も目立ちますね。確かに、季節的違いにより使い分ける地域もあるのですが、全国的に言えるものではなく、片方の呼称しか使わない地域もあります。

また、小豆餡(あずきあん)の「ぼたもち」と黄な粉やゴマをまぶした「おはぎ」(大正末期の水戸周辺、静岡県引佐群など)、もち米をつぶして握った「ぼたもち」と、つぶさず握った「おはぎ」(新潟県古志郡)など、材料や調理法で使い分ける例も報告されています。

阿見町大室では現在でも、お彼岸になると「ぼたもち」を作るお宅があります。炊飯器で炊いたもち米を皿によそい、その上に自宅で煮たつぶし餡を載せます。この地域では、「ぼたもち」は丸めずにこのような形で食べることが多いようです。地元では「おはぎ」と言う呼び名はあまり使いません。

60年前までは「漉し餡」

ダンゴツキの回(2019年9月25日掲載)でもご紹介したように、現在はつぶし餡が広く流通していますが、こちらでは、60年ほど前までは農家で自家用に作る場合でも、ほとんどが漉(こ)し餡だったそうです。作った経験のある方はよくご存じだと思いますが、漉し餡はつぶし餡と比べると数倍の手間と時間がかかります。

茹(ゆ)でた小豆をつぶして数回裏ごしし、何度か水に晒(さら)して布に包んで絞るという、根気のいる作業です。これは時間にゆとりがあるお年寄りたちの1日がかりの仕事でした。

ぼたもちは、お彼岸以外にもミツメノボタモチと言って、産後3日目の産婦に食べさせ出産祝いに配ったり、死後35日の法事に作って、死者が剣の山を登る時に足を滑らせないようにと、草鞋(わらじ)でぼたもちを挟んで墓に供え、参列者に振る舞ったりしました。

同様の例は、かすみがうら市、行方市、つくば市でも行われていました。このほかに、田植えを始めるウエソメや田植えが終わったサナブリ、稲の収穫が終わったカリアゲ、麦播きをすませたマキアゲの際にも、ぼたもちを作って食べる習慣がありました。お餅を搗(つ)くほどではないけれど、祝いたいような機会に作られてしていたようですね。(筑波学院大学教授)

➡古家晴美さんの過去のコラムはこちら

《続・平熱日記》58 持つべき3人の友は…

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【コラム・斉藤裕之】さて、期せずしてロングバケーションとなった弥生3月。こういう時はとりあえず体から動かす。体を動かせばやがて脳も動く。

というわけで、かねてから訪れる約束をしていた八郷の友人宅へ。目的はその友人宅の裏手にあるお寺さん。急に信心深くなったわけではなく、敷地内で伐り倒した木をいただきに来た次第。出迎えていただいたかわいらしい奥様に案内され、ご先祖が植えられたという敷地内の大きなフクレミカンの木々を拝見。

「納骨堂をご案内しますよ」「はあ」。お寺の由来などをうかがいながら、裏の林を抜けると急に視界は開ける。春の筑波山系を見渡すその場所に現れたのは、直径10メートル余りの円弧状の建物。コンクリート打ちっぱなしのモダンな姿は小さな現代美術館のようだ。

中に入れていただくと、天窓からやさしい光。緩やかに描く壁の曲線には、例えはよくないが、銭湯の木製ロッカーに似た杉の扉が美しく並んでいた。奥様は何の躊躇(ちゅうちょ)もなくその一つを開けて、「この方は若くして亡くなられてねえ…」と、この納骨堂について語り始めた。

医者、弁護士、坊主、あん摩、パソコン上手…

世間でよく聞く墓の問題。「死んだら墓はいらんけえ、海にでも撒いちょけ」。これが私と弟の口癖。お互い娘2人。守るべき土地も屋敷もなし。そして墓も不要。生きてるうちが花。その信念は今でも変わりないのだが、この納骨堂を案内されて初めて、「こういうところだったらアリかも?」と思った。

つまり、入る方ではなくて、残された方の気持ちを考えたときに、「参る」場所ではなくて「会う」場所としては実に心地よい。巷(ちまた)ではeスポーツなるものが昨今話題となっていて、断じて私は認めないが、将来「e葬式」や「ウェブ墓地」「ネット法事」などは確実にありえるだろう。いやもうすでにある?

そうこうしているうちに、ご住職登場。これまたお優しそうな方で、聞けば私の一つ上。おまけに今年から髪の毛を伸ばし始めたということで、昨年長い坊主頭生活にピリオドを打った私としては、何かご縁を感じずにはおれない。それに加えて、親父の生前の口癖が甦る。

「人生には3人の友が要る。ひとりは医者、そして弁護士、それから坊さん」。この言葉の真意あるいは出典については深く考えたことはなかったが、この3つの職業に共通しているのは、人の不幸を飯の種にしているということ。いや、人の弱きときに必要であるということである。「困ったときに頼れる友を持て」という意味か。

さてと、そろそろ本来の目的に。伐り倒された山桜や樫を、チェンソーで手で運べるような大きさに切って、軽トラに積む作業。それにしても、伐って間もない幹は見た目より相当重く、足腰が悲鳴を上げている。

生憎(あいにく)というか幸いというか、医者や弁護士と仲良くなることのない暮らし。恐らくこれからも友人になることはないと思うが、是非とも4人目の友には、腕のいいマッサージ師を加えておこう。あとパソコンに強い人ね!(画家)

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《邑から日本を見る》60 改正特措を改憲の実験台に? やめて!

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飯野農夫也氏の版画「憩い」

【コラム・先﨑千尋】今や世界中にコロナウイルスが蔓延(まんえん)。アメリカやスペイン、ニューヨーク市などは非常事態宣言を出し、20日に米国務省は全国民に渡航中止、帰国を勧告した。今、世界各国で人や車両の移動制限、工場の閉鎖、国境閉鎖、集会の禁止、統一地方選挙の延期など、人とモノの移動に大幅な制限がかけられている。

わが国でも、先月に専門家会議とかが「ここ1~2週間が山場」と言っていたが、感染の拡大は止まらないでいる。茨城県でも17日に感染者が出て、県や関係企業などはあたふたしている。前回の本欄でも触れたように、私が関わりを持つ研究会や講演会、集会、法事などはすべて中止か延期になり、手持無沙汰(てもちぶさた)。農業に専念できる。

そんな中、13日には新型インフルエンザ等対策特別措置法(改正特措法)が成立した。この法律では、新型コロナウイルスの流行で国民生活に甚大な影響が生じると判断した場合、首相は期間と区域を定めて「緊急事態」を宣言し、都道府県知事が外出自粛や休校、工業施設の利用制限などができる。

この改正案の審議はわずか3日。立憲民主党の一部、共産党などが反対したが、圧倒的多数で国会を通過した。しかし、日本弁護士連合会や憲法学者などから反対の声明が出されている。また、新聞の論調もおおむね自制的だ。

国民生活の混乱、経済対策は後回し

その疑念は、政府が宣言を出す際の手続きが不透明、あいまいだということにある。安倍首相は専門家会議に諮ると言っているが、その専門家は政権に都合のいい人しか選ばれないのではないか。第一、国会で議論しないで、「一気呵成(いっきかせい)に、間髪を入れず、これまでにない発想で」(首相の記者会見での発言)非常事態を宣言されたら、私たちはたまったものではない。政府が「緊急やむを得ない」と判断すれば、伝家の宝刀はいつでも抜けるのだ。

安倍首相は、一斉休校やイベントの自粛を、専門家や官房長官、文科大臣などの取り巻きの反対を押し切って独断で決めた。国民生活の混乱、経済対策などは後回し、人権への配慮も見られない。まず、ダイヤモンド・プリンセス号での集団感染の実態解明をなすべきだ。

首相主催の「桜を見る会」をめぐる数々の疑惑、隠蔽、法解釈変更による東京高検検事長の定年延長問題など、直近の動きを見ると、「法の支配」を軽視する安倍政権の姿勢は鮮明ではないか。

「特措法の改正は改憲の布石ではないか」と見る考えもある。自民党の改憲草案には「外国からの武力攻撃や内乱、地震などの大規模災害の発生時には『緊急事態』を宣言し、内閣が法律と同じ効力を持つ政令を制定できる」とある。暴虐極まりなかったナチスドイツのヒトラーも、合法的なやり方で「全権委任法」を国会で制定し、反対勢力を駆逐した。

自民党の伊吹文明元衆議院議長は、1月の派閥の会合で「新型肺炎の緊急事態に対し、憲法に保障されている個人の移動の自由、勤労の自由、居住の自由をどう制限するか。改憲の大きな一つの実験台と考えた方がいい」と述べている。コロナ感染を改憲の実験台にされてはかなわない。わが国で緊急事態が宣言されれば、オリンピックは確実に吹っ飛ぶ。(元瓜連町長)

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《食う寝る宇宙》58 ホワイトデーは「宇宙の日」

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【コラム・玉置晋】3月14日はホワイトデーでしたね。モテモテの男子諸君はお返しのプレゼントの準備で大変だったことでしょう。僕はそのような苦労はなかったなあ。実はこのホワイトデー、宇宙に関連する日なのです。

1879年3月14日は、相対性理論を生み出したアルベルト・アインシュタイン博士の誕生日です。アインシュタインは、光速に近いスピードで運動する場合、時間の進み方が遅くなることを示しました。また、重力は質量を持った物体が周りの時空間を歪めることを示しました。実際にこの時空間の歪みは、遠くにある星の光が曲がって届く「重力レンズ」が働きます。

そして、宇宙は膨張していること、光をも飲み込む「ブラックホール」、時空のさざ波「重力波」の存在を予言していきます。これらは観測的にも実証されています。

宇宙の膨張は、1929年、エドウィン・ハッブルが遠くの銀河が遠ざかっていることを観測しました。ブラックホールは、2019年、「イベント・ホライズン・テレスコープ」プロジェクトでその姿をとらえました。重力波は、2016年、LIGO(ライゴ)という実験グループが、ブラックホールの衝突で生じた重力波をとらえることに成功しました。

アインシュタインが生まれ、ホーキングが亡くなった日 

そして2018年3月14日は、宇宙物理学者スティーブン・ホーキング博士の命日でした。アインシュタインの一般相対性理論を用いて、宇宙は特異点から誕生したことを証明する「特異点理論」。ブラックホールは熱を放出しており、最終的に蒸発する可能性があるという「ブラックホール蒸発理論」。果てのない条件から宇宙は生まれることはできる(宇宙には境界や端はない)という「無境界仮説」。

宇宙の始まりと終わり、ブラックホールについて書かれた「ホーキング宇宙を語る」は、小学生の自分にとっては難しかった。でも、小学生が手に取ることができる宇宙論を書かれたことがいかにすごいことか。本書を読んで、研究者を志した人が世界中にいると思います。

3月14日は、アインシュタイン博士が生まれ、ホーキング博士が亡くなった日。何とも言えない因果を感じませんか?(宇宙天気防災研究者)

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《続・気軽にSOS》57 不安と「うつ」の効能

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【コラム・浅井和幸】新型コロナウイルスの脅威に振り回されている今日この頃、皆様はいかがお過ごしでしょうか? 世間の潮流には逆らえず、いくつかの相談会やギターの演奏会が、私の意志とは関係なく中止となりました。4月以降のイベントも、まだ開催できるかどうか分からない状況です。

この様な状況で、いろいろと不安が大きくなっていることと思います。未知なものは、何が起こるか分からないという不安を掻き立てます。マスクや消毒グッズが売り切れるばかりか、トイレットペーパーやティッシュペーパーまでが買い占められ、店頭から姿を消した時期がありました。

不安が大きいと、必ずデマが流れますね。ちょっとしたことでも、安心したいために、このような情報に飛びついて行動してしまうのです。

この不安ですが、あまり大きすぎてコントロールが出来なくなると、うつ病になることがあります。うつ病とまで行かなくても、気分が晴れない、意欲が出ず落ち込んでいる状態になることがあります。抑うつ状態というものです。

不安も抑うつ状態も、何の役にも立たずに苦しいだけなので、無くなって欲しいと捉えがちですが、実は、この二つにも立派な役割があります。

リスクマネジメント 何もしないことも必要

不安は、将来起こるかもしれない危険に対して備えることに役立ちます。不安になるから、勉強をしたり、危ない場所を避けたり、保険をかけたり、貯金したりという、リスクマネジメントが出来るのです。

不安がゼロのポジティブ全開の状態に憧れることもあるでしょう。しかしそれは、自分の車の運転技術を過信して、保険にも入らず、スピードを落とさず、急なカーブに突っ込んでいくようなものです。不安な予測から、ブレーキをかけ、適切なスピードにしなければいけませんよね。

では、抑うつ状態はいかがでしょうか。何もやりたくない、だるいような状態の何がよいのでしょうか。それは、怪我をしたときや病気をしたとき、疲労がたまっているときに有効です。骨折をしているのに元気に走り回っていては、骨がつながりにくいでしょう。

また、風邪をひいたときは、じっとしていて休んでいたほうが回復しやすいものです。疲労も、休憩もとらずに働いていては回復しません。(軽い運動をした方が、疲労が回復しやすいのは、今回は置いておきます)

一見、無くなってしまったほうがよいと思われる、ネガティブな感覚である不安や抑うつ状態でも、必要だからあるのです。だから、それを上手く利用していくことを考えてみて欲しいなと思います。

不安なんてなくなれ、抑うつ状態だから自分は不幸なんだ、これさえなければ…、と繰り返すだけでは、余計につらくなるだけですよ。(精神保健福祉士)

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《電動車いすから見た景色》4 言語障害のある私と話す方法

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【コラム・川端舞】「初めまして。川端と言います。私の言葉が聞き取れなかったら、遠慮なく聞き返してください」。初対面の人と会うとき、私はこう自己紹介することが多いです。

私は脳性麻痺という障害があり、手足をうまく動かせないのと同じように、口の筋肉や舌をうまく動かせず、話そうとする言葉を思ったように発音できません。自分では普通に「こんにちは」と言っているつもりなのに、特に子音をうまく発音できずに、周りからは「おんいいわ」と聞こえるようです。

おもしろいのは、自分では他の人と同じように話しているつもりなので、自分が話しているときに耳に入ってくる自分の言葉は、他の人が話している言葉と同じように聞こえるのに、自分の声を録音したものを改めて聞いてみると、思った以上にゆっくりと話していて、自分自身でも何を話しているのか聞き取れないときもあります。

自分では普通に話しているつもりなので、相手が自分の言葉を聞き取れたかどうかは相手から教えてもらわないと分かりません。

だから、周りの人に「自分の言葉が聞き取れなかったら、聞き返してほしい」とお願いしています。例えば、私が「昨日、洋服を買ったんだ」と言ったとき、相手から「何を買ったの? もう一回言って」と聞き返してもらえれば、「洋服」という部分だけを言い直せばいいことか分かりますし、「えっ? もう一回言って」と言われれば、最初から言い直せばいいことが分かります。

遠慮せず聞き返してください

でも、私とのコミュニケーションに慣れていない人は、私の言葉を聞き取れないのが申し訳ないと思ってしまうのか、聞き返してもらえないことも多いです。このようなとき、私は相手の表情などから、聞き取れているかどうかを判断し、聞き取れてないようだったら、再度言い直します。

しかし、相手の表情から、聞き取れてなさそうなことは分かっても、どこから聞き取れてないのかまではわからず、どの部分を言い直せばいいのかが分かりません。私の言葉が聞き取れなかったとき、聞き取れなかったことをはっきり教えてもらった方が、私は安心して話せるのです。

どうやったら初対面の人でも、遠慮せずに聞き取れなかったことを教えてもらえるのか、私なりに考えて、「聞き返して大丈夫」ということを紙に書いて見せてみたり、「もう一回言って」と書いた札を作って、それを挙げてもらえば、聞き取れなかったことが分かるように工夫したりしています。

どうしたら気軽に聞き返せるか、いいアイデアがあれば、私に会ったら教えてください。お互いをわかり合うことがコミュニケーションの第一歩だと思います。(つくば自立生活センターほにゃらメンバー)

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《くずかごの唄》57 二重螺旋でダンスを

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タバコモザイクの上で二重螺旋が踊る(イラストは筆者)

【コラム・奧井登美子】1953年、ジェームス・ワトソンとフランシス・クリックがDNAの二重螺旋(らせん)構造を提唱した。新聞記事でそれを読んだ、当時大学生の私たち。二重螺旋の形が、カイモク解らなかった。今なら小学生でも知っている形である。

「新聞に書いてある二重螺旋ってどんな形なの?」
「螺旋が二つに分かれているのかしら?」
「違う、違う、螺旋が絡まっているのではない」
「二重に絡まるって、どういうこと?」
「ほら、こういう風に手を絡ませて、あなたの手と」
「手だけでは二重にならないわよ、足も絡ませないと…」
「みんなで、二重螺旋のダンスをやってみましょうよ」
「螺旋の形のダンスは難しいわよ」
「曲はどうするの?」
「ワルツにする? タンゴ?」
「タンゴの方が似合うわよ」

5~6人で、ああでもないこうでもないと言い合って、二重ダンスごっこをした。

高校で生物の時間に、タバコモザイクウイルスが針のような結晶の形をしていると教えられてからは、ウイルスの形の独特さに魅せられてしまって、今度はどんな形のウイルスが出て来るかと、心待ちにしていた世代である。

新型コロナウイルスの形。どこのテレビにも、同じ写真が1枚出ている。果たしてどんな形をしているのだろう。今の技術で不明なのがなんだか怪しい。(随筆家、薬剤師)

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《ご飯は世界を救う》21 ママ友と「8代葵カフェ つくば学園店」へ

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「珈琲8代葵カフェ」ヘルシープレート

【コラム・川浪せつ子】とても迷惑なウイルスが猛威を振るっていますね。2月は私の誕生日月ということもあり、まだこんな厳戒体制前でしたので、「珈琲8代葵カフェ」までママ友とランチに行きました。彼女Iさんとは、34年のお付き合いです。

出会いは、初めての子供がお腹にいた時、保健センターの「マタニティー教室」でした。ここは、お味噌汁を持っていき、日々の食生活を通して妊娠中の減塩方法や、赤ちゃんがお腹にいる時の注意点を、初産の人を集めて指導してくれる教室でした。

そのようなお勉強もためになりましたが、一番良かったのは、近所の同年代のママさん予備軍の方々と知り合いになれることでした。同じ時期に出産するので、生まれてからもママ友として親しく長くお付き合いすることになりました。

Iさんとは、たまたま団地の向かい側という立地。そして、同性の男の子を出産したので、特に仲良しになりました。子供が大きくなると、生活ペースが違ってきて、ママ友は疎遠になることもあります。ですが、Iさんとは交友関係が続き34年に。子供同士は、今は疎遠ですけどね。

老猫ミャーちゃんの大往生

そんなIさん、最近は母親と老猫ミャーちゃんの介護に大変でした。ミャーちゃんはボケてしまい、ご飯は食べるものの垂れ流し。部屋の一部を区切り、ペットシートを敷き詰めての介護でした。私は10年前にアルツハイマーだった父を看取っています。ミャーちゃんの話を聞いて、猫も人間も哺乳類だからでしょうか、ボケ方が同じなのだと思いました。

献身的なIさんの介護で、ミャーちゃんはボケてからも1年近く生きて、22歳で天国に。食欲旺盛だったのが、前々日から食べなくなり、いつもはあまり膝に乗ってこないのに、ずっと乗っていて、Iさんは夜中から明け方まで抱いていたそうです。

ゴミの日なので、ゴミ出ししようと膝から降ろしたら、ミャーちゃんはノビノビをして、フゥーという感じで、お空に行ったそうです。まさに、大往生ですね。ちなみにIさんのお母様は、まだらボケはあるものの、どうにか過ごされているそうです。

30数年もの時間、少し離れたところで生活していても、何かあった時、お互いに「良く頑張ったね。大変だったね」。そんなことを、美味しいランチをしながら話せる友人がいるのは本当に幸せです。(イラストレーター)

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《法律かけこみ寺》16 なぜクーリングオフに頼らなかったのか?

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土浦市神龍寺。本文とは関係ありません

【コラム・浦本弘海】4月から新年度、新生活をはじめる方もいらっしゃると思います。新生活はいろいろ物入りで、お買物も増えるかもしれません。そこで今回は生活に密着した、消費者として知っておきたい法律を紹介します。

クーリングオフ

キャッチセールスなどでつい、いらない物を買ってしまった。あとでよくよく頭を冷やして考えれば、たいしてほしくもなかったのに…。そんなときに役立つのがクーリングオフという制度。一定の期間であれば、契約の申し込みを撤回したり、契約を解除したりできる場合があります。

クーリングオフを定めた法律は商品、販売方法などの類型によりいくつかありますが、中心となるのは特定商取引に関する法律です。そこで、特定商取引に関する法律からクーリングオフできる類型と期間のうち、代表的なものを挙げます。

▽訪問販売(キャッチセールス等を含む):8日間
▽電話勧誘販売:8日間
▽特定継続的役務提供(エステティック、語学教室、学習塾、結婚相手紹介サービス等):8日間
▽業務提供誘引販売取引(内職商法、モニター商法等):20日間
▽訪問購入:8日間

買う買わないはしっかり考えてからというのが原則としても、キャッチセールスなどでは熟慮せずに購入を決めてしまう場合もあります。そんなときのために、消費者を保護する制度がちゃんと用意されているのです。

消費者契約法

営業の勧誘がしつこいのでイヤイヤ契約した、商品の説明がウソだった…。そんなときに役立つのが消費者契約法。消費者の利益の擁護を図るための法律です。

たとえば、事業者が消費者を困惑させたり、誤認させたりするような不当な勧誘をした場合、消費者は契約を取り消すことができます。不当な勧誘の例として、次のような行為が挙げられます。

▽重要事項について事実と異なる説明がされた(不実告知)
▽不確かなことを「確実だ」と説明された(断定的判断の提供)
▽消費者に不利な情報を故意に告げなかった(不利益事実の不告知)
▽営業マンなどが強引に居座った(不退去)
▽販売店などで強引に引き留められた(退去妨害)

取り消しは、追認することができる時(例:誤認をしたことに気付いた時)から1年間、契約の締結の時から5年間経過するとできなくなりますので、ご注意ください。

また、消費者契約法には、ほかに消費者の権利を不当に害する契約条項を無効にできる条文があります。たとえば、契約書に事業者に責任がある場合でも「損害賠償はしない」とする条項や「一切のキャンセルや返品・交換などを認めない」とする条項があった場合でも、これを無効にできることがあります。消費者としてぜひ覚えておきたいところです。

消費者としての困りごとについては、国民生活センターにいろいろな実例が掲載されていますし、国民生活センターや地域の消費生活センターで相談に応じてくれます。上手にご活用ください。(弁護士)

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《吾妻カガミ》77 「今、つくばが面白い」 水戸で市民講座

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シェイニーさん㊧と冠木新市さん

【コラム・坂本栄】水戸市教育委員会の「みと好文カレッジ」主催で、「今、つくばが面白い」というタイトルの市民講座が開かれました。昨年12月から今年2月にかけて、旧内原町の市民センターで開かれた全3回の講座には、私と、Tsukuba International School(TIS)校長のShaney Crawford(シェイニー・クロフォード)さん、脚本家の冠木新市さんが出かけ、学園都市のいろいろな顔について話してきました。

この講座、好文カレッジの企画アドバイザーをしている金沢正巳さん(元水戸商業高校校長、元茨城県南生涯学習センター所長)から、こういった趣旨で市民講座を開きたいので講師を選んでくれないかと相談され、私がアレンジしたものです。

つくばをタテ・ヨコ・ナナメから見てもらおうと、総論「ネット新聞を通して見る 学園都市つくばの面白さ」(坂本、12月8日)、国際「インターナショナルスクールの校長から見たつくば」(シェイニーさん、1月19日)、文化「野口雨情からのメッセージ 筑波小唄と筑波節の謎を解く」(冠木さん、2月9日)の3本立てにしました。

2月末に事務局から送られてきた来場者の感想集によると、水戸の皆さんの評価は上々だったようです。以下、講座のポイントと来場者の感想を紹介します。

「つくば、土浦が茨城の中心になる」

私は、本サイトのピーアールも兼ねて、記事やコラムをスクリーンに映し出し、つくばには国際性と田舎気分が同居(山林を切り拓いた新興都市)、TX開通でまちが激変(中心が研究学園駅にシフト、小中学校が不足)、核となる筑波大学の存在感(地域の医療環境は茨城離れ)―などについて話しました。

また、土浦市との合併が実現していれば、県のヘソは県央から県南に移っていたと、「県都民」のプライドを刺激したところ、「今後は間違いなく、つくば、土浦が茨城の中心になる」といった感想のほか、「県南との交流会はこれからも必要。『NEWSみと』の立ち上げも必要では」とのコメントもありましたので、私の役割は果たせたかなと思います。

インターナショナルスクールもあります

シェイニーさんの講義スタイルには、皆さん驚いたようです。パソコンとスクリーンを活用し、講師の問いかけに聴き手のスマホで答えてもらう、「双方向」だったからです。「こういった講義のテクニックが(外国人には)身についているようです」との感想もありました。講義のあらましは「『違いの価値観を理解する』 シェイニー先生、水戸へ出前授業」(2月20日掲載)をご覧ください。

平地林の中にあるTsukuba International School は、幼稚園児から高校生まで約260人が通う、英語で教える学校です。日本人の子弟も受け入れていますが、つくばの外国人比率の高さ(4.2パーセント、全国平均1.7パーセント)を考えると、学園都市に似合う施設と言えます。

「雨情の童謡や民謡が作られた時代背景や人間関係などを話していただき、歌の味わいを深くすることができました」。冠木さんの話にはこういったコメントがありました。話のポイントについては「筑波小唄と筑波節は2つで1つ」(2019年8月11日掲載)をご覧ください。雨情が県北出身ということもあり、水戸の皆さんの思い入れは格別でした。(NEWSつくば理事長)

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《沃野一望》14 藤田小四郎の4 天狗転戦

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藤田小四郎像=筑波山

【ノベル・広田文世】

灯火(ともしび)のもとに夜な夜な来たれ鬼
我(わが)ひめ歌の限りきかせむ  とて

天狗党と名乗りあげた水戸藩改革派諸派連合軍は、攘夷の実行を標榜(ひょうぼう)、京にいる禁裏御守衛総督(きんりごしゅえいそうとく)一橋慶喜(よしのぶ)を頼みに常陸国大子町から京を目指し出立していった。藤田小四郎は、隊の輔翼(ほよく)の重責を担っている。大子を出立した時点で小四郎たち天狗党幹部は、一橋慶喜に受け入れてもらえると楽観的であった。

大迂回のすえに下野国(今の栃木県)へ入り奥州街道を南下、整然と行軍していった。通過地域に迷惑をかけるなとする軍規はよく守られ、それだけに通過を予告した諸藩から特別の排斥を受けることはなかった。黒羽藩(くろばねはん)からは、「城下を通過するのであれば戦わざるを得ないが、間道を通ることは妨害しない」と、暗黙の了解が得られた。下野国方面ではまだ、当たらず触らず、見て見ぬふりの姿勢で天狗党の進軍を看過した。

下野国例幣使(れいへいし)街道を南下、やがて中山道へ入り高崎藩へ近づく。

高崎藩は、天狗党追討の幕府軍総括田沼意尊(おきたか)の命を受け、藤田小四郎たちの筑波山挙兵以来、終始天狗党追撃の先陣を担ってきた。那珂川を挟んで水戸藩門閥派と改革派軍が対峙した戦場でも、門閥派総括市川三左衛門(さんざえもん)たちを支援した藩であった。

高崎藩、松本藩と本格的戦闘

その藩の膝元を通過しようとする天狗党は、西上出立以来はじめて、本格的戦闘に立ち向かうこととなる。

下小坂村で、高崎藩兵と天狗勢は激突する。

高崎藩側にとっての不運は、この時点でまだ藩主力精鋭部隊が那珂湊の陣営から帰還できずにいたことだった。天狗党迎撃のために下小坂村へ布陣した部隊は、いわば予備役兵が駆り出されたもの。実戦につちかわれた巧な戦術と戦闘意欲で攻める天狗勢と、訓練もおぼつかない予備役集団の戦いの結末は明らかだった。半日も要さずに高崎藩兵は総崩れとなる。陣営を放り出しバラバラに逃げのびていった。

一方天狗党の側にも、本格的戦闘であっただけに死傷者がでる。野村丑之助(うしのすけ)など四名がこの戦闘で戦死している。

たった半日の戦闘ののち天狗党は、下仁田での宿泊代や買い上げた品々の代金をきちんと清算し、長居を避け信州へ向かった。

信州和田峠では、高島藩松本藩の連合軍に待ち伏せされる。

峠に布陣する敵軍を下から攻める不利な地勢を強いられた天狗勢は、ここでも巧妙な別動隊挟撃作戦を展開、激戦のすえに峠の防御陣を突破、峠を越え下諏訪へ下る。

その後、信州各地で小競り合いを重ね、木曽を通過し揖斐(いび)宿へ入る。

揖斐から南方へ濃尾平野がひろがり、平野の先は関ケ原、さらに進めば琵琶湖から京への道が見えてきた。

しかし天狗党はこの地で、夢想さえしなかった「敵」の登場に衝撃を受ける。(作家)

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