【コラム・奧井登美子】1953年、ジェームス・ワトソンとフランシス・クリックがDNAの二重螺旋(らせん)構造を提唱した。新聞記事でそれを読んだ、当時大学生の私たち。二重螺旋の形が、カイモク解らなかった。今なら小学生でも知っている形である。

「新聞に書いてある二重螺旋ってどんな形なの?」
「螺旋が二つに分かれているのかしら?」
「違う、違う、螺旋が絡まっているのではない」
「二重に絡まるって、どういうこと?」
「ほら、こういう風に手を絡ませて、あなたの手と」
「手だけでは二重にならないわよ、足も絡ませないと…」
「みんなで、二重螺旋のダンスをやってみましょうよ」
「螺旋の形のダンスは難しいわよ」
「曲はどうするの?」
「ワルツにする? タンゴ?」
「タンゴの方が似合うわよ」

5~6人で、ああでもないこうでもないと言い合って、二重ダンスごっこをした。

高校で生物の時間に、タバコモザイクウイルスが針のような結晶の形をしていると教えられてからは、ウイルスの形の独特さに魅せられてしまって、今度はどんな形のウイルスが出て来るかと、心待ちにしていた世代である。

新型コロナウイルスの形。どこのテレビにも、同じ写真が1枚出ている。果たしてどんな形をしているのだろう。今の技術で不明なのがなんだか怪しい。(随筆家、薬剤師)

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