木曜日, 11月 6, 2025
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雪不足影響 コハクチョウ飛来数 最少 土浦市乙戸沼公園

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優雅に水面を泳ぐ乙戸沼公園のコハクチョウ=15日

【鈴木宏子】土浦市中村西根、乙戸沼公園に飛来しているコハクチョウが、今シーズンはまだ10羽と、同市が2012年に統計を取り始めて以来、最も少なく、来園者らをやきもきさせている。

同市公園街路課によると、今シーズンは昨年12月16日に1羽が初飛来し、25日に5羽に増えた。年末年始はどこかに飛んで行ってしまって1羽も姿が見えず、年明けの今月6日に6羽が再び飛来、7日に今シーズン最多の10羽が確認された。

15日は家族連れとみられる6羽が、ユリカモメやオオバンなどと一緒に優雅に水面を泳ぐ姿が確認され、ウオーキングや犬の散歩の途中に足を止めて、コハクチョウを観察する市民の姿が見られた。

愛犬とほぼ毎日、同公園を散歩しているという近くに住む主婦、下平節子さん(65)は「毎年ハクチョウがくるを楽しみにしている。去年は20~30羽いて数えるのが大変だったのに今年は少ない。『暖冬のせいかね』と主人と話している」などと語っていた。

同公園はコハクチョウの越冬地の一つで、統計を取り始めた2013年2月には最多の102羽が飛来した。その後70~80羽が飛来する年もあったが、ここ数年は20~30羽の飛来数にとどまっている。

乙戸沼で優雅に泳ぐハクチョウの姿を市民に見てほしいと、同市はえさになるマコモを湖岸に植栽するなど環境整備をしてきた。市公園街路課は「(今シーズンの飛来数が少ないのは)気候の関係があるかもしれないが、多く飛来してきてくれればうれしい」と話す。

東北や新潟にとどまる

県内最大級のコハクチョウの越冬地として知られる菅生沼でも今シーズの飛来数は少なく、例年は300羽ほど飛来するが今年はまだ200羽前後にとどまっているという。

ミュージアムパーク県自然博物館(坂東市)動物研究室の椿本武さんは「今年は(越冬地の)新潟や東北で雪が少なく、えさを食べることができるので、こちらの飛来数が増えないのではないか」とし「積雪の影響を受けており、今後、新潟や東北でドカ雪が降れば飛来数が増える可能性もある」と話している。

羽が灰色がかった幼鳥もいて6羽は家族連れとみられる=同

児童虐待防止へ 県が福祉司、心理司を増員

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茨城県庁

【山崎実】児童、高齢者、障害者など「弱者虐待」が止まらない。さらなるセーフティネットの構築が喫緊の課題となっている。

最悪更新の児童虐待 原則48時間以内に安全確認

2018年度の県内の児童虐待相談対応件数は前年度比1.2倍の2687件と、過去最悪を更新した。このため県は各児童相談所の組織改正を行い、「子ども虐待対応課」を新設するなど対策を強化し、国が求めている虐待通告受理後、原則48時間以内に児童相談所などが安全確認を行う。保護者の拒否などにあった場合は、所轄の警察署に情報提供を行い、警察官同行による家庭訪問、安全確認などを実施している。

一方、児童相談所に配置する専門職員については、児童福祉司69人から83人へ、児童心理司を31人から38人に増員するなどの体制強化を図っている。また、現在は中央児童相談所の分室として設置されている日立、鹿行2カ所の分室の在り方についても検討が進められている。

高齢者虐待 息子が最多

県内の要介護施設従事者による2018年度の高齢者虐待件数は、相談・通報が32件、うち虐待(身体拘束、たたく、怒鳴るなど)が認められたのは県内4件で、県は施設調査を行い改善指導した。

また、養護者(同居人など)による高齢者虐待では、相談・通報が597件で虐待は304件。虐待者(重複あり)は息子が157件(45.2%)で最も多く、次いで夫68件(19.6%)、娘42件(12.1%)の順。虐待を受けた高齢者は314人で、女性が239人と全体の76.1%を占めた。

県健康・地域ケア推進課によると、高齢者権利擁護対策推進委員会を設置し、関係機関と連携を強化。高齢者虐待防止に係る対応マニュアル、リーフレットの作成など各種施設を推進している。

障害者虐待 家庭の相談7割

2018年度の障害者虐待の調査では、家庭、職場内での障害者への虐待は県内で14件、被害者は15人。福祉施設内での虐待はなかった。一方、相談・通報は88件で、うち家庭内が60件と7割弱を占め、虐待と判断されたのは12件、13人だった。

虐待の種類別(複数回答)では、身体的虐待10件が最も多く、次いで心理的虐待6件、ネグレクト(放棄、放置)、経済的虐待各2件、性的虐待1件など。

県障害福祉課によると、障害者虐待防止マニュアルなどを配布して啓発活動のほか、市町村職員、障害者福祉施設の施設長などを対象に研修会を実施している。

レトロな市街地と自然の魅力を体感 桜川遊覧船が「こたつ船」に

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暖かい船内からレトロな市街地の景色を楽しむ観光客=土浦市、桜川

【田中めぐみ】風光明媚(めいび)な桜川の魅力を体感してほしいと、霞ケ浦で遊覧船を運航するラクスマリーナ(土浦市川口)が、桜川を遊覧するサッパ船(小型船)を就航している。桜川のサッパ船が1月から暖かな「こたつ船」となってお目見えした。

こたつ船の船首から見た筑波山

「こたつ船」は、土浦港にあるラクスマリーナから出航。桜川を遡上(そじょう)して土浦港に戻るルートで往復約14キロを約1時間かけて周遊する。船長の坪田哲也さんによると、冬は景色が遠くまで見え、ユリカモメ、カモなどさまざまな種類の野鳥を観察することができる。

河口付近から虫掛方面までの桜川沿いには約500本の桜が植えられている。春には「こたつ船」の暖かな船内で花冷えすることなく桜を楽しむことができるとあって毎年人気を博しているという。

ラクスマリーナ専務の秋元昭臣さんは「かつては桜川に貸しボート屋があり、ボートでデートをするのが若者の憧れだった。桜川には冬にしか見られない景色があり、この地域は筑波山地域ジオパークでもあるので、ぜひ船に乗って体感してほしい」と話す。

乗船し澄み切った冬の景色を満喫

13日、記者は「こたつ船」に乗船し桜川を上った。土浦港から霞ケ浦の沖に出ると冬の澄み切った空気の中、遠く南に牛久大仏が見える。やがて桜川の河口に入り、水郷橋、土浦橋、桜川橋、匂橋と4つの橋の下をくぐり抜けていく。匂橋は人と自転車しか通れない趣ある石橋で、映画のロケ地にもなったという。

橋を過ぎると真正面には徐々に筑波山が見え始め、鳥の群れが水面をたたきながら羽ばたいていく。レトロな市街地と絶景の筑波山、雄大な自然の魅力を感じた。

春に満開の桜の中を遊覧するこたつ船(ラクスマリーナ提供)

◆桜川の「こたつ船」は毎年1月から4月まで限定。乗船料は大人1名3300円(税込み)、飲み物、お菓子付き。飲食物の持ち込みも可。午前10時から午後3時まで1日6便運航している。

◆霞ケ浦の沖合を運航する86人乗りの定期観光遊覧船ホワイトアイリス号も期間限定で「こたつ船」となっている。乗船料は大人1570円、子ども780円。午前10時から午後4時までの運航。

問い合わせはラクスマリーナ(電話029-822-2437)。

➡霞ケ浦や桜川の水辺観光に関する過去記事はこちら

TX延伸で議論活発化 臨海地下鉄相互乗り入れ構想 

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つくばエクスプレス=研究学園駅

【山崎実】首都圏とつくばを直結するつくばエクスプレス(TX)の将来延伸構想・計画をめぐる議論が活発化している。実現には莫大な費用と時間を要するが、県議会の議論から一端をのぞいてみる。

東京2020オリンピック・パラリンピックの開催を背景に、東京・臨海開発に熱い視線が注がれているが、TXの将来計画で提起されたのが臨海地下鉄線との相互乗り入れだ。2016年4月の国の交通政策審議会答申で、これまでの秋葉原から東京までの延伸に加えて、都心部・臨海地域地下鉄構想との一体的整備が初めて盛り込まれた。

この臨海地域地下鉄構想は、将来、交通需要の増加が見込まれる晴海、豊洲、有明などの地域と都心部を結ぶ約5キロの整備構想。臨海副都心とのアクセスの利便性が図られ、TXの東京延伸と一体整備の検討に期待がかかる。

しかし東京都は、その重要性は理解しつつも「他に優先して整備すべき路線があり、現時点では臨海地下鉄整備の方針を固めた事実はなく、構想の段階」だという。今後、関係者間で調整を重ねていく必要があると慎重な姿勢だ。

県は、臨海地下鉄線との相互乗り入れはTXの東京延伸につながるだけでなく、ひいては関西圏など全国各地とのアクセスが飛躍的に増大すると見込んでいる。「東京都からの情報収集に努め、都の今後の検討状況や沿線自治体の意向などを踏まえながら、協議を進めていく」(政策企画部)としている。

TXの延伸構想については県内でも茨城空港への延伸実現への働き掛けがあり、今後、各方面でさらに活発な議論が展開されそうだ。

➡TXに関する過去記事はこちら

【成人式’20】つくばは今年も厳戒態勢 土浦は会場変更に拍手

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つくば市の成人式で新成人の手荷物検査をする市消防団員たち=つくば市竹園のつくばカピオ

【崎山勝功】つくば・土浦両市で12日、成人式が執り行われた。両市とも式典は約40分と短く、会場内外には警察官などが多数配置された。つくば市は今年も厳戒態勢を敷いた。新成人の声を受け会場を市内8カ所開催から1カ所開催に改めた土浦市は出席率が上がった。つくば中央署と土浦署によると、今年は両市とも逮捕者は出なかった。

つくば 厳重警備に苦言も

つくば市の式典は、五十嵐立青市長の新成人向けスピーチと、筑波大学サークル「斬桐舞(きりきりまい)」のよさこいソーラン演舞などを含めて約40分で終了した。会場のつくばカピオ(同市竹園)周辺では、制服・私服警察官をはじめ、市消防団員や民間警備員も多数動員して警戒に当たった。

2017年の式典で壇上に上がろうとした新成人が逮捕された同市では、18年から手荷物検査をはじめ警察官を大量動員した厳戒態勢を敷いた。19年からは会場前の道路を封鎖して車両侵入を防ぐなど警備体制を強化した。

今年は暴走族対策としてビデオカメラを導入したり、「新成人が式典終了後に会場前で滞留して混雑するのを防止するため」(市職員)として、式典終了後に出口付近をロープで規制して会場隣の大清水公園まで誘導する措置を取った。

式典終了後、警備員たちに規制ロープを張られた中で会場を出る新成人たち=同

捜査関係者の一人は「なあなあにはしない」と厳しい姿勢を見せた。私服警察官たちは「茨城県警」「捜査」などの腕章を付け、折り畳み式警棒など装備品を見えるようにして「見せる警備」を実施し、「騒ぎを起こさせない」抑止効果を狙った。

大学で歴史を学ぶ新成人の松崎未有さん(20)=大学2年=は、会場での厳戒態勢ぶりに「ツイッターで(つくば市の)成人式を見ていると『本当なのかな』と思ったけど、実際に会場に来たら警察の人がたくさんいてビックリした」と話した。

手荷物検査を受けた新成人の女性(20)=大学2年=は、コンサート会場での手荷物検査が一般化していることを挙げ「何とも思っていない」と答えた。

一方、会場付近に居合わせた60代女性は「成田空港より(警備が)厳しい。警備が物々しすぎる」と苦言を呈した。近隣住民の一人は「もっとソフトな警備ができないのか。余計に(新成人の)反感を買ってしまう」と不安げな表情を見せた。「たった40分のためにこの警備か」とあきれる声もあった。

会場周辺の道路では、新成人の名前入りののぼり旗を掲げた乗用車が4台程度走行したが、大きな混乱は無かった。

五十嵐市長は式典終了後の取材に対し「基本的には新成人の実行委員会が話し合いをしながらやっている」と述べ「分散(開催)のメリットもあるけど、デメリットもある。新成人が考えて『今年も合同(開催)でやる』と選んでいるので我々としては当然バックアップをしていく」と答えた。市民から成人式の内容見直しなどの意見が出た場合には「彼らが大人になる節目なので、いろんな意見を聞きながら考えていくことはいいことだと思うので、私が『こうするべきだ』と言うつもりは一切ない」として、新成人たちの判断を尊重する考えを示した。

土浦 「みんなが市役所動かした」

「今日は一堂に会して成人式を迎えられて良かったですね」。昨年11月に土浦市長に就任した安藤真理子市長は、あいさつ冒頭で約1000人の新成人たちを前に、成人式会場が霞ケ浦文化体育会館(同市大岩田)1カ所に変更されたことに触れた。会場の新成人からは拍手が起きた。

土浦市の会場に集まった新成人たち=同市大岩田の霞ケ浦文化体育会館

安藤市長は、市長就任当日に成人式実行委員会の新成人たちから面会を求められた件に触れ、2日後に集まった実行委メンバーの新成人全員から「(全員が)一緒にやりたい。でも市民会館は工事中。何とかできないか」との要望が寄せられたことを明かし「みんなが市役所を動かしました。これはすごいことです。皆さんが市役所に電話して『市長に会いたい』。これは中々言えません。皆さんの勇気に『うれしい』という思いを伝えたい」と述べた。

あいさつ途中で、同市出身の女優で新成人の宮崎さやさん(20)が登壇し、楽曲「未来へ」を熱唱した。宮崎さんは取材に対し「12月後半に、(安藤)市長が伝えたい言葉が『未来へ』に詰まっているというのをお聞きしたので、1人の女優として(安藤市長の)思いを伝えられたらいいなと思い頑張った」と語った。

会場入り口では、隣のつくば市と異なり手荷物検査や鉄柵による規制は行われず、警察官や市職員たちが警戒に当たったものの大きな混乱はなく、式典は約40分で閉幕した。「大学で観光の勉強をしている」という新成人の草野孔明さん(20)=大学2年=は「中学校単位での開催だと過去の友だちに会えなくなるので、ここ(霞ケ浦文化体育会館)で一堂に会えてよかった」と喜びの表情を見せた。昨年に男児(4カ月)を出産した、新成人の三井優奈さん(20)=主婦=は「あっという間だった。これから子育てを頑張りたい」と抱負を述べた。夫の三井伸之さん(24)=運送会社勤務=は「責任感が増えて、何事も頑張らなければと思う」と、父親になった重みをかみしめていた。

会場周辺では、不測の事態に備えて土浦警察署員らが、暴走車両の侵入を阻止するために交差点などで警戒に当たった。昨年の会場の市民会館前では暴走行為や、会館前の広場に一斗樽などの酒類を持ち込んだ例があったが、今年は式典開始前の正午過ぎに雨が降ったこともあり、体育館前広場に酒類を持ち込んで騒ぐ行為はほとんど無かったという。

式典終了後、安藤市長は取材に対し、元々は別の団体が使う予定が入っていたのを譲ってもらったことを明かした上で「みんなが『ここ(霞ケ浦文化体育会館)でやりたい』と思ったので、トラブルもなく出席率も良かったと思う」と述べた。その上で「子どもたちが望んだ成人式なので、子どもたち同士で『いい成人式にしようよ』となったのではないか」と、会場内外での迷惑行為が昨年より沈静化した理由を解説した。

捜査関係者の一人は、県警が昨年の稲敷市での成人式後に集団暴走行為をした新成人ら34人を水戸地検に送検(3人は逮捕後に送検、31人は書類送検)した件に触れ「今年の成人式前に(送検の)新聞報道が出たことも抑止につながったのではないか」と話した。

➡成人式の過去記事はこちら

栃木県立農業高校と連携協定 つくば国際ペット専門学校

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連携協定に調印した(左から)つくば国際ペット専門学校の高橋仁校長と栃木県立農業高校の巻島陽一校長=10日、栃木県立農業高校(つくば国際ペット専門学校提供)

【鈴木宏子】県内最大の動物専門学校「つくば国際ペット専門学校」(つくば市沼田、東郷治久理事長)が10日、栃木県立栃木農業高校(栃木市、巻島陽一校長)と連携協定を締結した。

同農業高校は昨年4月、学科編成を変更し、動物科学科内に、従来の牛豚など畜産を学ぶ生産動物コースに加えて、犬などのペットについて学ぶ社会動物コースを新設した。学科改編後初の2019年度入試では動物科学科の出願倍率が4.00倍と栃木県内で最高となった。

社会動物コースの新設を前に、同専門学校は18年5月から、犬を伴って教員と生徒が同農業高校に出向き出張講義をしたり、中学生対象の学校見学会でデモンストレーションなどを実施した。さらに19年6月から3カ月間、犬などペットについて教える高校教員を育成するため専門学校に内地留学してもらい、専門学校の教員助手として授業に参加してもらったり、隣接の犬のテーマパーク「つくばわんわんランド」で犬の世話を体験してもらうなど連携の実績を積み上げてきた。

連携協定調印式は同農業高校で催され、同専門学校の高橋仁校長は「当校が培ってきたノウハウを生徒さんたちにお伝えし、勉強する中でさらに興味を持っていただき、自分の進路や目指す職業として考えていただければ一層お役に立てる」などと話した。同農業高校の巻島校長は「生徒たちが巣立っていく時は道の先にあっていただいて、いろいろな場面で交流できれば一番。社会動物などの技術、知識もまだ足りない部分があるので、いろいろな部分でご指導いただき生徒の教育ができれば」などとあいさつした。

協定締結を受けて、同専門学校は引き続き同農業高校で出張講義をしたり、高校生の職場体験を受け入れるなど交流や連携を深める。昨年、愛玩動物看護師法が成立し動物病院などで働く動物看護師が3年以内に国家資格になることから、動物看護師を目指す同専門学校の生徒が牛豚などと接したいときは、同農業高校が資源を提供などする。

➡つくば国際ペット専門学校の過去記事はこちら

つくばこそ「社会実装のモデルに」 筑協新春講演会

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筑波研究学園都市交流協議会の新春講演会=つくば市小野崎、ホテルグランド東雲

【鈴木宏子】つくばの産官学連携組織「筑波研究学園都市交流協議会」(会長・永田恭介筑波大学長)の新春講演会が10日、つくば市内で開かれ、内閣府で科学技術・イノベーションを担当する松尾泰寿・政策統括官が講演した。つくばの役割については「(研究成果を実社会で展開する)社会実装のモデルになってほしい」などと語った。

国が提唱する未来の超スマート社会のコンセプト「Society (ソサエティー)5.0の実現に向けて(我が国の科学技術・イノベーション政策)」と題して、AI(人工知能)や情報科学によって社会がこれからどう変わり、国は今後どのような科学技術政策に取り組むのかなどについて講演した。

これからの社会については、今の子供の6割以上は、現在は存在していない職業に就くとという米国の研究者の予測を紹介し、AIやロボットに代替される仕事とのすみわけが求められ、そのためにどういう社会をつくっていくか、どういう教育をしていくかが課題だと話した。

講演する内閣府の松尾泰寿・政策統括官=同

一方、日本の科学技術の現状に対しては、研究論文の質や量に関し国際的地位が大幅に低下しており、諸外国に比べて創業を通じて研究成果を実社会で実現する力が低調だと危機感を示した。

日本の研究者を取り巻く状況についも、大学の修士課程から博士課程への進学率の減少、40歳未満の国立大教員の任期付きの増加、国立大の若手教員採用割合の低下など課題を指摘し、「日本の大学は民間資金の獲得が乏しいため、大学の基金の規模が米国と比べけた違いに小さく諸外国との格差が拡大している」などと話した。

若手研究者が厳しい環境に置かれている問題に対しては、若手研究者の支援総合パッケージを策定するとし、具体的には、競争的研究費を一体的に見直し、7~10年間、700人~1000人規模で研究者を支援する仕組みをつくること、米スタンフォード大などを例に、大学や国立研究機関が出資して外部化法人を立ち上げ、大学や国立研究機関の共同研究機能を外部化することなどが目玉になるとした。

AI、バイオ、量子技術など強化

日本の産業についても、世界と日本の創業の動向を比較し、日本は国際比較で開業率、ベンチャー投資額、成長企業の創出が低く「周回遅れになっている」と強調。国としての科学技術・イノベーション政策について、政府や民間の集中支援により起業家の聖地になる拠点都市を形成する、AI、バイオ、量子技術、環境エネルギーなどを強化分野にすると話した。

そのための人材育成政策としてAI分野では、小中学校、高校では児童・生徒全員が一人1台の端末を活用する授業を実施する、大学では文系と理系を融合するAIの基盤的・融合的な中核研究プログラムの立ち上げなどに取り組むなどした。

さらに健康・医療、農業、国土強靭(きょうじん)化、交通インフラ・物流、地方創生(スマートシティー)の5分野でAIの社会実装に取り組み世界をリードしたいと話した。

地方創生と大学の役割についても触れ、日本は企業の東京一極集中度が他国と比べても大きいことから、地方大学と自治体が連携し、産業の振興や人材育成を行うなど様々なことに取り組んでいくことが重要だと述べた。

ふたたびの徳一大師 土浦の古代仏教研究家が30年ぶり続編

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内山純子さん=土浦市内の自宅で

【相澤冬樹】神の山、筑波山にお寺を開いた奈良・平安時代の僧侶、徳一(とくいつ)をご存じだろうか。土浦市在住の古代仏教研究家、内山純子さん(85)が「法相宗(ほっそうしゅう)徳一の教化を中心に」をサブタイトルとする著作『古代東国の仏教』(青史出版)をまとめた。内山さんは1990年にやはり徳一を取り上げた『東国における仏教諸宗派の展開』(そしえて)を上梓しており、ほぼ30年ぶりの続編となった。

筑波山を足場に東国教化

著作によれば、徳一は天平勝宝元年(749)生まれ、承和三年(836)- 九年(842)の間に没している。ほぼ最澄、空海と同時代の宗教家だが、平安密教の担い手としで華々しく活動した両大師に対し、徳一は奈良仏教の再生を願い東国に下向、筑波山に拠って論陣を張った。特に最澄と繰り広げた「三一権実論争」は、わが国における大乗・小乗仏教の宗教論争として知られ、徳一関連で今日に残された数少ない文献となっている。

その足跡は筑波山のほか、福島の会津、いわきに残されている。内山さんはそれらの地域を訪ね歩き、記録を再構成して、今回の著作にまとめあげた。

同書では、徳一を藤原仲麻呂(恵美押勝)の末子と特定した。仲麻呂の乱(764)は徳一16歳のときで、配流を経験したのが東国での布教のきっかけになったという見方を示した。当時の常陸は蝦夷(えぞ)征伐など度重なる出兵に疲弊し、さらには地震や水害に苦しめられていた。大同元年(806)には会津磐梯山が大噴火を起こしている。

徳一はぼろをまとい、粗食をいとわずこれらの地域に入り、救済のため仏法を説き、寺院を建立して回った。その足場としたのが筑波山。当時から神の山として知られていたが、藤原氏の氏神である鹿島神宮の許諾をとる形で筑波山に入ったと見られる。

「古代東国の仏教」表紙写真は徳一座像(月山寺所蔵)

筑波山寺(知足院中禅寺)を開基したのをはじめ、東西南北にそれぞれ菖蒲沢東光寺(石岡市)、椎尾山薬王院(桜川市)、東城寺(土浦市)、小幡薬王院(石岡市)を配した「筑波四面薬師」を教化の主な舞台とした。同書巻末には、徳一伝承寺社が一覧表にまとめられており、茨城県内には42寺社を数える。

さらに会津では恵日寺(磐梯町)、勝常寺(湯川村)、円蔵寺(柳津町)などが徳一の建立と伝わる。これらの寺院は徳一没後、早々に真言宗、天台宗に転じて存続を果たすことになるが、内山さんは「訪ねると、稲敷市の逢善寺など多くのお寺の過去帳に徳一の名が残っている。宗派に関係なく大事にされてきたことが分かる」という。

これらの寺の多くは明治の廃仏毀釈(きしゃく)による被害を免れず、特に徳川幕府の篤い庇護(ひご)を受けた筑波山の中禅寺は徹底的に破壊された。所在地だった筑波山神社周辺を訪ねても、寺跡すら見つけにくく徳一についての手掛かりは皆無に近い。

「そのせいか、筑波の徳一研究はあまり進まなかった」と内山さん。30年の間に、西谷隆義さん(故人)や保立道久さん(東大名誉教授)が論考を著すなどしているが、単発的で会津に比べると体系化されてこなかった。「自動車免許を返納し、歩き回るのが難しくなった機会に今一度資料をまとめ直したかった」という。

知足院中禅寺の流れを汲み、本堂・客殿の新築工事を行ってきた筑波山大御堂(おおみどう)が2020年春には完成の見通しになっている。これを機に徳一評価の機運がふたたび高まることを期待している。

◆内山純子『古代東国の仏教 – 法相宗徳一の教化を中心に』(青史出版刊、四六判、131ページ、本体価格3800円)

重度障害もつ高岡杏さん 筑波大の2020年度学園祭実行委員長に

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友人と会話をする高岡杏さん

【山口和紀】筑波大学の学生で重度の障害を持つ高岡杏さん(19)が、2020年度の同大学園祭「雙峰祭」の企画・運営を行う学園祭実行委員会の委員長になることが決まった。次期学園祭をとりまとめる。

高岡さんは人間学群障害科学類1年。重度の脳性まひがある。都内の高校を卒業後、同大に入学した。現在は同大の学生宿舎で1人暮らしだ。車椅子を使って生活する。一人だけでは食事をしたり、トイレに行ったりすることはできない。そのため重度訪問介護などの公的な介助サービスを利用している。明瞭な発声が出来ないため肘(ひじ)を使ってタブレット端末「iPad(アイパット)」に話したいことを打ち込み、聞かれたことには首を振ってイエスやノーを伝えることでコミュニケーションをする。

パワフルさをアピール

次期委員長を決める選挙は昨年12月6日に行われた。「皆さん、はじめまして。高岡杏です。私はうまくしゃべることが出来ないので、こうやってiPadで演説させていただきます」。事前に台本を作っておき、iPadの文字読み上げ機能を使ってしゃべった。

「私には障害があるので、皆さんは『本当にやりきれるのか』と不安かもしれない。けれど、体力には自信がある。テスト期間で徹夜してもへっちゃら。明日も早起きして大阪まで行きます」と持ち前のパワフルさをアピールした。「忙しくてきつい。そんな実行委員のイメージを良くする」「全体の仕事を透明化する」と運営方針も明確だ。

演説後の質疑応答では「『少しでも障害のイメージを良くしたい』とのことですが、障害のある委員長ということをアピールしていくのですか」と質問が挙がった。それに対しては「障害があっても私は普通に大学生。私が障害者であることとは関係なく、普通に委員長をやるだけ。それに意味があると思う」と返答をした。

結果は無事当選。「とても緊張した。改革をして再来年の1年生がいっぱい入ってくれるように頑張りたい」と抱負を語る。

「将来の夢は脚本家」

高岡さんの日常生活を介助するヘルパーの多くは、同じ障害科学類の同期や先輩だ。高岡さんは「気を使う必要がなくて楽で良い」と感じている。アイドルグループ「嵐」の大ファンで「小学生の頃から好き。ちなみに相葉くん推し」と満面の笑み。学生介助者の1人は「高岡さんのヘルパーに入ると嵐に詳しくなれる」と話す。

将来の夢は脚本家。高校の時には英語部に所属し「英語の映画」を作った。大学に入ってからは映画サークルで「ショートフィルム」を撮ったという。「次は障害のある大学生の日常を描く映画を撮る」と意気込む。筑波大で学ぶ障害学生たちの生活を追うドキュメンタリーだ。

卒業論文を執筆中の他の障害学生(右)と会話をする高岡さん(中央)=青山奈央さん提供

介助制度に課題

活動をしていく上での困りごとも少なくない。「(制度の運用上)サークルの時間はヘルパーを使えない」と制度の問題を語る。サークルの時間に介助の必要な場合は「面倒だけれども一旦宿舎に戻って支援を受けて、そこからまたサークルに戻ったりしている」という。

高岡さんは「公的な介助サービス」と「筑波大学が提供する支援」とを組み合わせて生活しているが、問題は制度の間にある「隙間(すきま)」だ。

公的な介助サービスである「重度訪問介護」。自宅のほか外出時も利用できる制度だ。しかし、同制度では厚生労働省が利用要件を制限しているため「学業」や「通学」は支援の対象外だ。

その一方で、同大は障害のある学生の修学のサポートとして、授業中に有償ボランティアが代わりにノートを取る「ノートテイク」の提供や試験時間の延長措置、バリアフリー化などを行う。

しかし、休み時間の「食事」「トイレ」などの介助は、これらの制度を利用できない支援の「空白」になってしまっているという。

支援の「空白」を埋めるため、国は2018年度から「重度訪問介護利用者の大学修学支援事業」を整備した。これにより、学内でのヘルパーの利用が制度上は可能になった。「画期的な制度」とされる。しかし、事業の実施主体であるつくば市がこれを「実施しない」とした。そのため、現在のところ高岡さんはこの制度を利用できていない。

そこで、同大では高岡さんが大学で学べるよう、大学側の負担で授業時間に合わせて必要な介助を提供する。昼休みの「食事」や「トイレ」の介助などだ。ただし同大は「つくば市がサービス実施を決定するまでのあくまで暫定的な措置だ」としているそうだ。この措置においてもサークル活動には支援の提供がなされていないという。

もちろん、公的なサービスであるからには「どこまで支援をするか」という線引きは重要だ。予算が際限なくあるわけではないのだから「つくば市が悪い」「筑波大の対応が不十分」などと断ずることはできない。しかし、「食事」や「トイレ」などの支援は、本人がどこで何をしているかには関係なく必要になる。そして、どこまでが「修学」で、どこまでが「生活」なのか、明確な線引きはできない。

高岡さんは「サークル活動も学生生活の大切な一部だ」と語る。だからこそ「もっと柔軟にヘルパーを利用できる形になっていってくれたら」と話す。

そのうえで「仕方のないことだが学園祭実行委員会の仕事が遅くなったり、突然入ったりするので、(宿舎での)ヘルパーさんの日程調整が難しい。自分勝手に変更は出来ない」と活動をしていくうえでの悩みを語った。

ユリカモメ乱舞 霞ケ浦で初日の出クルーズ

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帰りの航路に就いたころ、ようやく雲間から日差しが届いた=2020年1月1日午前7時10分ごろ、土浦市大岩田沖の霞ケ浦

【相澤冬樹】2020年の幕が開けた。1日未明、土浦市川口の土浦港を出て初日の出クルーズを行ったのはラクスマリーナ社の観光遊覧船、ホワイトアイリス号。ユリカモメ舞い飛ぶ霞ケ浦で初日の出を待った。

初日の出クルーズは約15年続く同社の人気企画。今回は約80人が乗船し、午前6時に出港した。同市大岩田のライトアップされた霞ケ浦総合公園地先の沖合あたりを巡航しながら、朝ぼらけの湖を楽しむ趣向だ。

上空は星空が見えるものの東南の空には低く雲が垂れ込め、スマホで見る気温計は摂氏2度をさした。日の出予定時刻は午前6時50分、船上で振る舞われる豚汁に、温もりを求める行列が出来た。

夜が白みかけると、ユリカモメの群れが現れ、船の周囲を飛び回り始めた。カムチャッカあたりからやってくる冬の渡り鳥だが、年々飛来数が増えているそう。「カモメたちにお年玉をあげましょう」の船上アナウンスで、乗船客による餌付けタイムが始まった。子供たちが大騒ぎになると、大人たちも熱くなり歓声が飛び交う。

ホワイトアイリス号の周辺に、ヨットやら一般のクルーズ船も目立ち始める。なかなか姿を現さなかったお日様が、雲間から日差しを湖面に届けたのは7時10分ごろ。帰港時間が迫っていた。

それでも乗客は大満足。神奈川県川崎市の原田厚子さんは取手市の実家に帰省中、NEWSつくばの記事を見て申し込んだという。「こんな初日の出は初めてだし、カモメさんがすごかった。いい写真もいっぱい撮れた」と喜んでいた。

ホワイトアイリス号に群がるユリカモメ=同

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明けまして。パンダマウス 日本産 生物遺伝資源 江戸時代からはるかな旅

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パンダマウス=理研バイオリソース研究センター提供

【相澤冬樹】年の初めの福ネズミ、理化学研究所バイオリソース研究センター(つくば市高野台)の城石俊彦センター長(66)が紹介してくれるのは白黒のブチ模様、ご丁寧にも耳と顔の輪郭を黒く縁どるパンダマウスだ。1980年代にデンマークで見つかり実験動物として系統化されたマウスだが、素性をたどると18世紀、日本の江戸時代の愛玩ネズミにまで行きつくことが分かってきたそう。小さな体に宿るジャポニズムの系譜を追う。

研究リソースを日本から生み出す

理研バイオリソース研究センター長、城石俊彦さん

バイオリソースは生物遺伝資源のこと。実験に使う動植物は、かつては研究者自身が用意したが、経費や労力の効率化から収集や育成を専門に行う機関が設けられた。理研のバイオリソースセンター(BRC)は2001年の設立、19年4月に就任した城石さんが3代目センター長になる。前任地の国立遺伝学研究所以来、ゲノム解析や遺伝解析によるマウス研究に携わってきた。

BRCでマウスとはハツカネズミを指す。9000系統近くが保管されているなかに、ドブネズミなどのラットはいない。老化や免疫など生命現象の理解やヒトの病気の治癒、創薬の研究に欠かせないモデルとなる。過去10年にわたり毎年3000系統前後のマウスを国内外の研究者に提供してきたという。

実験用マウスの系統のほとんどはヨーロッパ産マウスを元に米国で生まれたものだ。日本では1970年代、国立遺伝学研究所の森脇和郎博士(1930-2013)を中心に「自分たちのリソースをつくろう」と、同研究所がある静岡県三島市で捕獲した野生マウスからMSM/Ms(通称・ミシマ)を系統化するなどしている。森脇博士はこの過程で、世界中の野生マウスを採集し、多数の近交系統を生み出した。何世代にもわたって近親交配を繰り返し、がんにかかりにくい形質などを遺伝的に樹立する手法である。

ジャポニズムとメンデル

後にBRC初代センター長となる森脇博士の元で働いたのが城石さんだった。森脇博士は1987年に、デンマークのペットショップでパンダマウスを発見している。

この模様には見覚えがあった。天明七年(1787)に「珍玩鼠育草」という本が出版されている。著者は定延子、現代語訳すれば「変わり種ネズミのカタログ」というべき図録で、掲載された「豆ぶち」というネズミがパンダマウスそのものだった。

調べると、江戸時代の日本では、金魚やアジサイなどの動植物を品種改良する市井の文化が花開き、ハツカネズミでもさかんに行われた。幕末から維新の時期に、浮世絵などを買い求めるジャポニズムが欧米で流行し、これに乗って愛玩ネズミも流出したらしい。さらに20世紀初頭、ヨーロッパでは「メンデルの遺伝法則」の再発見により交配実験ブームが起こり、ここで豆ぶちネズミの白黒模様が格好のモデルとなったことが当時の文献から分かってきた。

近交系統化によって、パンダマウスにはJF1/Msの名がつけられた。JFは Japanese Fancy、すなわち日本の愛玩ネズミから採られている。

パンダマウスは便秘がち

遺伝子レベルで調べると、JF1/Msは現在実験用マウスとして国際的に最もよく用いられるC57BL/6という系統のマウスとDNA配列が0.8%しか違いがないことが分かってきた。従来、系統樹の根元にあった中国由来のマウスより近いのである、さらにC57BL/6をはじめとする実験用マウスには、こぞって7%の部分にJF1/Ms由来のゲノム領域が認められるのである。

つまり、日本産バイオリソースを探して行きついたのは、「150年以上の時を経て、日本からヨーロッパに渡り、欧米からから日本に戻ってくるというはるかな旅だった」と城石さんは述懐する。

ちなみにパンダマウスは便秘になりやすく、白黒まだら模様をつくる遺伝子と関連がありそうなのだという。遺伝子を一つ変えるだけでマウスは白黒から茶色に戻る。これで便秘まで治るか、遺伝子治療の研究中ということだった。

令和一番乗りなら筑波山頂 近場の初日の出スポットを紹介

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男体山側から女体山越しに望む筑波山の初日の出=筑波観光鉄道提供

【相澤冬樹】令和一早い初日の出を拝めるかもしれない。2020年、日本の本土の初日の出の予想時刻は午前6時46分(千葉県銚子市)から7時25分(長崎県平戸市)の範囲だが、あくまで平坦な地図上での計算。標高差を加味した日本気象協会などのデータでは、冬期閉山中の富士山頂の6時42分を除くと、筑波山山頂の6時44分は清澄山(千葉県鴨川市)と1、2を争う早さとなる。年の初め、「夜明け前が一番暗い」と格言にもあるから、お出かけには万全の注意を払い、高みを目指したい。

女体男体に3000人が登る

筑波山の初日の出。標高877メートルの女体山頂、870メートルの男体山頂からは関東平野の雄大なパノラマが広がる。

中腹まで車で行けば、ケーブルカー(宮脇駅~山頂駅)とロープウェイ(つつじケ丘~女体山駅)が山頂付近まで運んでくれる。1日はともに早朝運転を行う予定で、ケーブルカーは午前4時30分から、ロープウェイは同5時から運転する。天候や混雑度にもよるが、フル回転だと10分間隔で運行。往復の大人料金はケーブルカー1070円、ロープウェイ1120円(税込み)。

運行の筑波観光鉄道(つくば市)によれば、2019年は天候に恵まれ、日の出の時刻には女体男体に合わせ3000人以上が登っていたと見られるという。筑波山神社には大晦日、三が日とも参拝客が多数押し寄せ、駐車場待ちの長い車列ができる。神社周辺には市営の第1~第4まで約450台分、民営と合わせ1000台の駐車場があるが、元日早朝も例年満車状態となる。渋滞を避けたいなら山麓からの山登りも選択肢になる。多くのルートが整備されている。

◆筑波観光鉄道(電話029-866-0611)。筑波山観光案内所(電話029-866-1616)

富士山も見えるスポット 宝篋山・小町山

つくば市、土浦市の初日の出時刻は6時50分ごろ、標高461メートルの宝篋(ほうきょう)山、同361メートルの小町山は、少し早めに霞ケ浦方向から登る朝日を望めそうだ。目を西に転じれば天候次第だが、茜色に染まる富士山も見えるスポットだ。。

この10年、登山ルートが整備されたことにより、地元では筑波山の混雑を避けるように宝篋山に迂回してのトレッキング客が増えた。元日朝も宝篋山小田休憩所に車を置いて山頂をめざす利用者が多いが、東郷重夫さんによれば「一昨年は午前4時前、今年は3時ごろには駐車場がいっぱいになった。1000人以上登っていたのではないか」という。徒歩ならば、小田の旧市街に入って市営駐車場、小田城跡歴史ひろば駐車場も利用圏内だ。

この宝篋山の混雑から、さらに押し出される格好で近年人気なのが朝日峠近くの小町山。地元有志らが愛称を付けて登山ルートを整備してきた。こちらは土浦市小野の小町の館駐車場が利用できる。低山とはいえ、木立が深く、沢沿いの傾斜もきついので、衣類や靴を整え、装備も懐中電灯やヘッドライトは必携となる。

◆宝篋山小田休憩所(電話029-867-1368)。小町の館(電話029-862-1002)

ネイチャーセンターが早朝特別開園 雪入山・三ツ石公園

筑波山系をさらに東に向かうとかすみがうら市に入り、雪入ふれあいの里公園が整備されている。約14ヘクタールの園内には雪入山、浅間山と標高345メートルの山の連なりがあり、リピーターたちの「元朝参り」スポットになっている。地元では初詣でをこう呼ぶ人が多い。

雪入山にはかつて砕石場だった跡地を整備して、標高150メートル地点にネイチャーセンターがあり、つづら折りに急崖を登ると石岡市から土浦市にかけての霞ケ浦の眺望と鹿行地域の遠景が見渡せる。霧の出やすい地形のため、雲海のような展望が見られる年もあった。ネイチャーセンターは1日午前5時から8時まで特別開園、約100台収容の駐車場が開放される。

浅間山中腹にある三ツ石森林公園は駐車場を含め常時開園、こちらも年々出足が早まっているそうだ。

◆雪入ふれあいの里公園(電話0299-59-7000)

初日の出クルーズ船[ホワイトアイリス号」に群れ飛ぶユリカモメ=ラクスマリーナ提供

初日の出クルーズも 霞ケ浦

ご来光を拝むには東に開けた地形の場所を選ぶのが近道。茨城には大洗海岸という初日の出の景勝地があるが、土浦入りからの霞ケ浦も近年人気を集めている。土浦市大岩田、霞ケ浦総合公園のオランダ水車やネイチャーセンター周辺はごったがえすほどの人出になる。太陽が美浦村馬掛沖あたりに上がってくるのは午前6時50分ごろだが、写真撮影には1時間前ほどに来て場所を確保、空や湖面の色の変化を楽しみながら日の出を迎えるとおもしろいそうだ。

さらにアクティブにいくならラクスマリーナ(土浦市)が運航するホワイトアイリス号による「初日の出クルーズ船」がある。15年ほど続く人気企画で、土浦港を午前6時に出発、土浦・沖宿沖あたりをクルーズして寄港は7時30分ごろの予定。航行中、温かい豚汁やお酒も振る舞われる。料金は大人3000円、子供1000円。要予約で12月31日まで受け付けている。

◆霞ケ浦総合公園管理事務所(電話029-823-4811)。ラクスマリーナ(電電話029-822-2437)

【霞ケ浦を遊ぶ】1年越しのリベンジへ 冬の味覚ワカサギ釣り

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桟橋から釣り糸を垂れてワカサギを狙う体験イベント参加者たち=1月、土浦港ラクスマリーナ

【田中めぐみ】記者は今年1月、土浦港―ラクスマリーナ(土浦市川口)のイベント「手ぶらでワカサギ釣り体験」に参加した。まったくの初心者、それも午前中限定の“腰かけ気分”では、懇切丁寧な指導にもかかわらず釣果はゼロの残念な結果だった。1年越しのリベンジへ、改めて体験イベントを振り返る。

エサの「サシ」にひるむ

2018年の霞ケ浦北浦のワカサギ漁獲量は177トンで全国第4位。ワカサギ漁の最盛期は10月から3月ごろで、寒くなる秋から脂がのってくるが、霞ケ浦では毎年、産卵期の親魚の保護のために春の禁漁期間がある。2020年は1月21日から2月末日まで。採捕禁止期間は産卵後の5月1から7月20日にも設けられている。

体験イベントは春の禁漁期を前にしての開催。旬のワカサギを狙って朝10時、続々とラクスマリーナ事務所前に人が集まってきた。本来ラクスマリーナ内は釣りの禁止区域だが、この日は特別に開放され、大人と小学生の子ども、合わせて25人が参加を予定していた。釣りは全くの初心者でも、道具類はすべて貸してくれるというので安心だ。桜川漁業協同組合の組合長、鈴木清次さんをはじめとする3人の組合員さんとマリーナの職員さん1人が指導についた。

餌をつけてもらう

釣り糸には釣り針が5つ付いており、それぞれの釣り針にピンク色の「サシ」というハエの幼虫をひっかけていく。自分で付けろと言われると少しちゅうちょするが、組合員さんがエサ付けも全部やってくれる。至れり尽くせりだ。

ゆったり時間が流れるだけ

桟橋に行き、いよいよ釣り始め! リールの使い方が分からないでとまどっていると職員さんが丁寧に教えてくれた。「気長な人より気が短い人の方が良く釣れる。気が短い人は釣るために試行錯誤するので釣れやすい。場所を変えるのもいいですよ」と聞き、どんどん場所を変えながらトライしてみることにした。

ほどなくして、近くで釣れたという人が出た。全長12センチほど。銀色の透き通った体がきらきらと美しい。確かにワカサギがいるようだ。「よーし、自分も!」と意気込む。

が、どんなに待っても手応えはない。そろそろとリールを回して引き上げてみるも、エサは付いたままだ。「ワカサギは暗く冷たいところにいる」という組合員さんのアドバイスを聞き、日陰に場所を変えてみた。しかし、やはり何の手ごたえもない。別の桟橋からは「釣れたー!」という女の子の声が聞こえてきた。

長い竿でチャレンジしている隣の男性2人も釣れないようで首をかしげている。

記者のオケラの竿と釣り上げた人のまぶしい魚体(円内)

釣れなくとも水平線と青空を眺めているだけで心地よい。静かで冷たい空気の中、鳥が飛んでいくのを見ながら、釣り糸を垂れる。それだけで心が洗われていくようだ。ゆったりとした時間が流れる。なんとか1匹は釣り上げたい。ワカサギが隠れて居そうなボートと桟橋の間の日陰に場所を移した。

ワカサギヒットか

残り時間20分ほどになったころ、急にぐんっと釣り糸が引っ張られる感覚があった!

「あっ、ちょっと、待って!」

かなり強い力だ。しかし、落ち着いて対応しなければならない。静かに腕に力を込めていると、ふっと糸が緩まった。逃げられてしまったようだ。だが、ワカサギはこれほど強い力だろうか。そろそろとリールを巻いてみると、一番上の餌がない。やはり何かが食いついたのだ!

隣の男性を見ると、こちらの慌てぶりを見ていて互いに苦笑い。その後そのまま同じポイントで続けたが結局午前の釣果はゼロに終わった。姿は見えなかったが、それでも魚と1度は勝負できたという満足感があった。午前中のみの参加だったため、今回はここでタイムアップ。

午前は全く釣れなかった人も多かったが、組合長の鈴木さんによると、前年の同時期はよく釣れたのだという。釣れなかった人にも味わってほしいと、組合員さんたち自らが去年獲れたワカサギの冷凍をてんぷらにしてくれた。揚げたてのあつあつをいただく。

揚げたてのあつあつをいただく

釣れなかったのが悔しく、帰宅して改めてワカサギの釣り方を調べた。エサを生きているように見せるために、動かしたり止めたりしなければならないが、自分のやり方は止める時間が短かったかもしれない。霞ケ浦の暗い水底で餌を狙って隠れすむワカサギに思いを巡らせた。

新年も1月11日に開催

今季、霞ケ浦(西浦)のワカサギは豊漁だそう。県水産試験場内水面支場(行方市)では、餌となるプランクトンが多かったことが原因とみている。大きさは例年よりやや小ぶりだが、痩せすぎているわけではなく味も例年とそん色ないという。

食べ方についても、霞ケ浦北浦水産事務所(土浦市真鍋)が12月、コミュニティーウェブサイト「クックパッド」にワカサギやシラウオ、エビなどを使ったレシピを紹介するページ「霞ケ浦北浦水産事務所のキッチン」を開設した。地元漁師の漁師飯や郷土料理、職員の一押しの料理25品のレシピを公開している。釣る前に食欲で釣られてしまいそう。

ラクスマリーナの「手ぶらでワカサギ釣り体験」は2020年も1月11日に開催される。定員10人、参加料は大人1000円、子ども500円、前日までに予約が必要。詳しくはラクスマリーナ(電話029-822-2437)まで。

高齢者におせち届ける 土浦市社協

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おせち料理を受け取る宮本和子さん㊧

【鈴木宏子】豊かなお正月を迎えてもらおうと、土浦市内の一人暮らしの高齢者など147世帯に27日、手作りのおせち料理が届けられた。

同市社会福祉協議会のボランティアら計38人が同日午前8時30分から、同市大和町の市総合福祉会館内で調理した。大鍋で筑前煮と紅白なますの2品を手作りし、容器に盛り付けた。昆布巻き、黒豆、伊達巻、栗きんとん、かまぼこなどのおせちと一緒に届けた。

手作りの筑前煮となますを盛り付けるボランティアら

手作りのお弁当を月2回、一人暮らしの高齢者らに届けているボランティア団体のメンバーが、安否確認も兼ねて1996年から毎年取り組んでいる。

調理を指導した市内の料理研究家、石塚ナツ子さんは「煮物の具は縁起のいい7品で、こんにゃくなどは両面に隠し包丁を入れてかみ切りやすくした。一人暮らしでは煮物などはなかなか作らないと思う。大勢で心を込めて作ったので心を満たしていただければ」と話していた。

おせち料理を受け取った宮本和子さん(85)は「楽しみにしていました。手を付けるのがもったいないくらい。ありがたい」などと話していた。

おせち料理は1世帯400円。歳末助け合い募金の一部を活用している。

狩りガール押し立てイノシシ狩猟 県がコンテストと体験ツアー

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狩りガールと行く狩猟体験ツアーで狩猟グループの事務所を見学=茨城県自然環境課提供

【相澤冬樹】茨城県がイノシシ狩猟コンテストを行っている。亥年(いどし)の今季が初開催。元年度の「狩猟者登録」を行ったものが参加でき、新年2月15日まで県内で捕獲したイノシシ限定で体長の大きさを競う。

県民以外でも参加できるが、茨城県で狩猟者登録を行い、県内で捕獲した体長(尾の付け根から鼻の先までの長さ)100センチ以上のイノシシが対象になる。捕獲方法はわな猟、銃猟になるが、国の補助金が出ている有害鳥獣捕獲許可と指定管理鳥獣捕獲等事業で捕獲したイノシシは対象外となる。

参加者は捕獲したイノシシを横たわらせ、メジャーで採寸する写真を撮って応募する。コンテストは、体長に後ろ足長を加算したポイントを基準に審査し、上位入賞者を決める。第1位は最優秀狩人賞として10万円相当の副賞が贈られるのをはじめ、5位までを表彰。女性参加者の第1位には狩りガール賞(副賞5万円相当)、応募数が最も多かった者には特別賞として県猟友会長賞(副賞5万円相当)が出る。

県によれば、県内のイノシシによる農作物被害は17年度に約1億5000万円で、前年から約3割増加し、獣類全体の8割以上、鳥獣全体の約3割を占めた。さらに最近は市街地にまで出没し、通学や日常生活の安全安心の観点から看過できない状況になっている。

対策の強化が求められる一方で、捕獲の担い手となる狩猟者は20年前に比べてほぼ半減した。狩猟免許所持者の約7割が60歳以上と高齢化も進んでいるなど、全県的に担い手の確保が大きな課題となっている。

このためコンテストは、狩猟の意義や役割を広く発信し、理解を深めてもらうとともに、少しでも多くの人に捕獲の担い手になってもらう機会と位置づけ実施する。この際「大型獣を駆除するほど個体数の減少に効果があるという研究結果もある」(県自然環境課)ことから100センチ以上を対象にした。現在わな猟、銃猟合わせ延べ4000人近くが参加資格を持つという。

イノシシ解体に立ち合う体験ツアー参加者=同

定員超えの狩猟ツーリズム

コンテストは県の主催、県猟友会の協力で行われるが、応募や問い合わせの窓口は旅行代理店が担っているのが異色だ。同店では今季の猟期中、2回に分けて「狩りガールと行く狩猟体験ツアー」(主催は県)を企画・催行しており、第1回の「わなプラン」は今月7、8の両日、城里町で行った。

箱わなの架設見学やイノシシの解体体験に29人が参加、土浦市から3人、つくば市から1人の参加もあった。全体で20代、30代からそれぞれ2ケタの参加者があり、底辺拡大の目的は一部果たした。来年2月8、9日には第2回「銃プラン」の開催が予定されており、こちらは1月17日の締め切りを前に募集定員超え、抽選が必至となっている。

問い合わせはJTB水戸支店(電話029-225-5233)

子ども食堂にクリスマスプレゼント つくば市の2JA

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子ども食堂にコメ600キロと野菜1年分を贈ったJAつくば市の岡本秀男組合長㊧とJAつくば市谷田部の横田伊佐夫組合長㊨。中央は五十嵐立青つくば市長=24日、つくば市役所

【鈴木宏子】クリスマスイブの24日、JAつくば市(岡本秀男組合長)とJAつくば市谷田部(横田伊佐夫組合長)から、市内の子ども食堂に、コメ600キロと野菜1年分の贈り物があった。

県内では各地域のJAがすでに、市町村の社会福祉協議会や生活協同組合などを通して、野菜やコメなどを子ども食堂に寄贈する取り組みを展開している。「当然、農協としてやっていかなくてはならない取り組み」(岡本組合長)、「皆で食べられる場所をつくるという取り組みをバックアップしたい」(横田組合長)と寄贈に至った。

併せて、経済的困難を抱える子供の未来を支援しようと市が4月に創設した「つくばこどもの青い羽根基金」に、2JAから総額約25万円が寄付された。JA職員からも寄付を募ったという。

寄贈されたコメ600キロは、市内にある子ども食堂6カ所に100キロずつ贈られる。野菜は各子ども食堂に商品券を贈り、JAつくば市の直売所3カ所でいつでも購入できるようにする。

寄付金は、子どもの学習支援に取り組むボランティア団体の事業や、学習塾代の助成、子ども食堂などの運営などに活用する。

目録などを受け取った五十嵐立青市長は「子ども食堂は基本ボランティア。両JAのご支援をいただくことができ頼もしい」と話すと、横田組合長は「私どもは明日の命を守る食材を持っているが、こういうことをしなくて済むような社会をつくっていただければありがたい」などと言い添えた。

市によれば、同基金に寄せられた寄付は11月末時点で約330件、総額約690万円になった。

「進学は回り道にあらず」5選手がプロに 筑波大蹴球部

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笑顔で肩を組む(左から)阿部航斗、三笘薫、高嶺朋樹、大川圭為、山川哲史の各選手=23日、筑波大学

【池田充雄】筑波大学(つくば市天王台)で23日、来季のプロチーム入団が内定した蹴球部5選手の合同記者会見が開かれた。5人ともJリーグクラブの育成組織出身で、うち4人は元のクラブに戻ってデビューを果たす。プロを目指す選手にとって大学進学はもはや回り道ではなく、将来を見据えた戦略的な選択になったと言えそうだ。(文中敬称略)

鋭い切り返しで敵陣を切り裂く三笘=全日本大学選手権準々決勝=12月16日、味の素フィールド西が丘、以下同

J1川崎フロンターレに進む三笘薫は、相手の間合いを外すドリブル突破や、創造性に富むパスが魅力の攻撃的MFだ。会見の翌日にはU-22日本代表に合流し、28日のキリンチャレンジカップ・ジャマイカ戦に備えるという。「この試合への思いは強い。活躍すれば東京オリンピックに向けて生き残れる。自分の特徴を生かしながら、チームに貢献できるようなプレーがしたい」

J1コンサドーレ札幌に進む高嶺朋樹は、体の強さを生かした1対1の守備と、左足からの高精度なキックを武器に、守備から攻撃へのスイッチを入れるボランチだ。「3年冬にオファーをもらい即決した。厳しい戦いになるだろうが1年目からスタメンを勝ち取り、試合に出られるようにしたい」

フィジカルの強さとともに気の強さも持ち味の高嶺(左写真)とインカレでは守備力だけでなく得点力も発揮した山川

J1ヴィッセル神戸に入る山川哲史は、長身を生かしたヘディングと、クレバーな守備を得意とするセンターバック。「監督から言われた、チームを勝たせられる選手になること。蹴球部のビジョンである、人の心を動かす存在になること。この2つを意識し、今後も目標にしたい」

J2アルビレックス新潟入りするGK阿部航斗は、身体能力に優れ、視野の広さと正確なポジショニングでゴールを守る。「考えてシュートを止めることと、相手が嫌がるような駆け引きを心掛けている。自分の力で新潟をJ1に上げ、ビッグクラブにすることが目標。新潟を象徴するような選手になりたい」

俊敏性と跳躍力を生かし、数々の大舞台で活躍したGK阿部(左写真)と来年度、大学院を休学してプロの道へ踏み出す大川

シンガポールプレミアリーグのアルビレックス新潟シンガポールに入団が決まった大川圭為は、瞬発力を生かしたシュートストップや、安定感あるロングキックが長所。同ポジションの阿部と切磋琢磨して成長し、4年後期は正GKに就いた。「来年1年で結果を出さないと先がなく、いい意味であせりがある。自分の努力次第でどれだけできるか、チャレンジしたい」

大学で得た、自ら成長する姿勢

三笘と山川は、ユース卒業時にもプロへの誘いがあったが、「もっと成長したい」「まだプロになれる覚悟がない」との理由で筑波大を選んだ。他の選手も「大学だからこそ学べたことがある」と口をそろえる。それは何だったのか。

一つは、自ら考えて取り組む姿勢だ。トレーニングや栄養管理はもちろん、自分の特徴は何なのかと悩み、それを作り出す努力や、身体能力などの弱点を直視し、プレーでカバーする取り組みなども含まれる。

「サッカーに対する考え方の幅が広がった」と話す選手もいる。ユースではチームのスタイルに合わせた練習ばかりだったが、筑波大では相手の強みを消すためのさまざまな戦い方を学んだ。また、試合や練習以外の活動を通じて、各自がそれぞれの役割を果たして物事を成し遂げることを学び、自分たちも誰かに支えられてサッカーができていることに気付いたそうだ。

小井土正亮監督は「技術の育成だけでなく人間的成長にも、大学が果たす役割は非常に大きい。本学で学んだことを生かし、プレーヤーとしても人としても必要とされる人材になってほしい」とエールを送る。

筑波大蹴球部にはプロ志望以外にコーチやトレーナー、あるいはクラブ運営スタッフなどを目指す部員もいる。技術レベルも人によってさまざまだ。大勢の仲間の中で、幅広い学びが得られる環境は、他大学にはない特徴的なものだという。

【民生委員】㊦ 災害の時代を超えて 取り組みと見守り

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切り倒されなかった児童公園のヒマラヤ杉を見上げる稲川誠一さん=つくば市あしび野

【橋立多美】「続けるからこそ横のつながりができ、地域のことがよく分かった」。11月末で茎崎地区の民生委員を退任したつくば市あしび野の稲川誠一さん(75)はそう語る。

子らの環境守った除染活動

4期12年の活動で忘れられないのが、2011年3月11日に発生した大地震に伴う福島第一原発の事故で、放射性物質に汚染されたあしび野児童公園の除染だという。

国は同年12月、被ばく線量が年間1ミリシーベルト以上の地域がある8県102市町村を、除染の財政支援が受けられる「汚染状況重点調査地域」に指定した。指定を受けた市が「放射線対策室」を設置。毎時0.23マイクロシーベルトを超える21区域の除染実施計画を公表した。

その中にあしび野が含まれ、住民たちに動揺が走った。当時民生委員兼自治会長だった稲川さんは、自治会主催で放射線物質の専門家による勉強会を開催し、あしび野自治会館は保護者や住民でいっぱいになった。

一方、同対策室から線量計2台を借りて自治会館や団地内道路、公園など5カ所の空間放射線量を測定した。稲川さんは測定を担当したり立ち会って数値に目を凝らした。「どうか(数値が)下がってくれと祈るような思いだった」。

8月22日の時点で、児童公園だけが毎時0.249マイクロシーベルトと数値が高いことが分かった。市は子どもたちが長時間滞在する幼保や小中学校の除染は行ったが、公園の除染は実施しなかった。

10月、子どもたちの被ばく線量低減のために自治会役員と保護者らの協力で児童公園の除染に取り組んだ。作業は対策室の助言を受けて進め、安全を確保するためにマスクと長袖、手袋、長靴を着用した。

砂場は砂を入れ替え、ブランコ周辺のくぼみは土盛りをした。さらに公園内に植えられていたヒマラヤ杉6本のうち4本を伐採。残る2本は枝木を剪定した。ヒマラヤ杉は放射線物質が葉に溜り、降雨で地表の放射線量が高くなりやすいとされるためだ。

ヒマラヤ杉周辺の表土は放射線物質濃度を測定しながら掘り進め、芝生は深く刈り込んだ。汚染土は何重にも重ねた放射線遮へいポリ袋に入れ、公園内の土中深く埋めた。

除染作業の結果、11月中旬に児童公園の放射線量は基準値を下回った。

大震災から8年9カ月ー。残った2本のヒマラヤ杉は大きくなった。目に見えぬ放射性物質におびえ、子どもたちの健康被害を食い止めようと住民が1つになったと稲川さんは振り返る。

「地域の福祉を担う民生委員は、住民の生活を守るのも仕事のうち。予想外の自然災害が発生する昨今、民生委員には臨機応変の判断が求められる」と話した。

30年やってよかった

10期30年間、桜地区の民生委員として地域を見守ってきた中川発子さんも先月末で退任した。

市から引き受けてくれないかと声がかかり、民生委員として活動を始めたのは45歳のとき。「自分にできるか」という不安を「なんとかできそう」に変えたのが、先輩委員が言った「民生委員は目立ってはいけない」だった。

「そっと見守って困り事の悩みや寂しい気持ちを理解することで、人へのいたわりを持ち続けることができた。自分のためにも続けてきてよかった」と満足そうに振り返った。(おわり)

筑波大学サテライトオフィスで書籍を無料貸し出し つくば駅前

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無料貸し出しの書棚の前で現役大学生スタッフの四家武彦さん。お勧めの本は『炎上と拡散の考現学』=筑波大学サテライトオフィス

【田中めぐみ】つくば市吾妻のBiViつくば2階、筑波大学サテライトオフィスが、同大学の施設案内や各種資料の配布のほか、教員や卒業生が執筆した書籍の貸し出しを無料で行っている。貸出期間は3週間。

書棚には筑波大学出版会から刊行された本を中心に約30冊が並び、ジャンルは栄養学や生物学、社会学、宗教学、スポーツ理論などさまざま。出版年は問わず、古いものから新しいものまで、できるだけ分野が偏らないように並べ、時々新しいものと入れ替えているという。オフィスには筑波大学の学生スタッフが常駐しており、本や大学について聞くこともできる。

『蟲愛づる人の蟲がたり』を読む 

並べられた本の中から、今年3月6日に出版された『蟲愛(むしめ)づる人の蟲がたり』(筑波大学出版会)を手に取った。同大学山岳科学センター菅平高原実験所が発行している情報誌「菅平生き物通信」に掲載してきた10年分の記事の中から、昆虫にかかわる記事をピックアップしてまとめたもので、虫をこよなく愛する教職員と学生執筆者20人による、虫のエッセーや紹介、およそ60編が収録されている。

『蟲愛づる人の蟲がたり』筑波大学山岳科学センター菅平高原実験所編、町田龍一郎監修(A5判並製156ページ、本体価格 1950円)

「昆虫は口で呼吸をしない!」「結婚するために目が飛び出ちゃった昆虫たち」など、興味ひかれる見出しが並び、それぞれのテーマが1ページから2ページに短くまとまっている。読みたいところどこから読み始めてもいい。

「なぜ蛾は光に集まるの?」「ノミの心臓はどこにある?」といった誰もが一度は感じたことのあるような素朴な疑問も学術的に解説し、イラストや写真も豊富。内容は中学生から大人向けだが、専門用語には読みがながふってあり、語り口はやさしく読みやすい。

記者が特に驚いたのは、昆虫は血管が無い代わりに「背脈管(はいみゃくかん)」という長いポンプで血液を循環させているということだ。翅(はね)にも血液を行きわたらせるために「翅脈(しみゃく)」を使い、筋肉の弛緩によって血液を送り出すのだという。また、昆虫の脱皮が「クチクラ」という分泌物を使って行われ、昆虫にとって命がけの作業であることも初めて知った。昆虫はまるで宇宙生命なのではないかと思うほど不思議に満ちている。

本書のタイトルに用いられている「蟲」の字は、今は常用されていないが、宋代に作られた字書『集韻(しゅういん)』に、裸蟲、毛蟲、羽蟲、鱗のある生き物、魚介など細々とした小さな生き物たちを指すとある。「蟲」の字は、小さな虫たちが表紙の絵のように一堂に集まる様子を表しているように思える。そして短い文章が集まった本書の構成自体も実に「蟲」的だ。

「蟲愛づる人」というタイトルは、平安末期から鎌倉初期にまとめられたとされる短編集『堤中納言物語』の「虫めづる姫君」によっている。虫めづる姫君は「風の谷のナウシカ」のモデルにもなったという虫好きのおてんば姫だ。

物語の中で姫君は、様々な虫を採集し「これが成長して変化する様子を見よう」と言って虫かごに入れる。中でも毛虫が大のお気に入り。「毛虫が思慮深い様子をしているのは奥ゆかしい」と、一日中、額髪を耳の後ろにはさみ、毛虫を手のひらの上にはわせてじっと見つめ続けている。

高畑勲監督のアニメ「かぐや姫の物語」に出てくるかぐや姫はおてんばで、虫めづる姫君のイメージに近い。毛虫が「心深し」(思慮深い)というのはなんとなく分からないでもないが、「心にくし」(奥ゆかしい、心ひかれる、上品で美しい)とは。本書の中にも『枕草子』に模して「かはげら草子」と題し、カワゲラという虫の魅力について「をかし」と語ったエッセーが収録されている。虫愛でる姫君と本書の虫好き研究者たちとはまさに同じ目線。『蟲愛づる人の蟲がたり』というタイトルがぴったりだ。

◆BiViつくば 筑波大学サテライトオフィス(電話029-855-2101)

【民生委員】㊤ 担い手不足と高齢化 つくば

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民生委員児童委員退任式・委嘱状伝達式で民生委員らに委嘱状を手渡す五十嵐立青市長㊨=19日、つくば市谷田部

【橋立多美】住民の生活相談に応じて行政に橋渡しをする民生委員が今月、3年ぶりに全国一斉に改選された。困ったときの地域の「見守り役」だが、高齢の単身世帯や高齢者のみの世帯が増える一方、なり手不足などによる高齢化で「老老見守り」が進む。

今月の改選で2期目に入った50代女性は、担当区域で身寄りのない高齢男性の孤立死を経験した。

最初に訪問した時はパジャマ姿で現れ、「民生委員なんかの世話にはならない」と怒鳴られた。恐る恐る訪問するうちに玄関の椅子を勧めてくれてパジャマは洋服になった。

次の訪問で終活の相談に乗ることになっていたが、その日を待たずに亡くなった。「もっと早く訪問すればよかった」と今も自分を責める。

オートロックに阻まれて

女性によれば訪問はおおむね月1回、認知症の発症が疑われるなど目配りが必要なケースは毎週。さりげない地道な見守りは毎日のことだという。

訪問をかたくなに拒んだり、居留守を使う人もいる。ある委員は「民生委員に相談していることを知られたくない人の家には暗くなってから訪問する。それが民生委員の常識」と明かしてくれた。

「マンション1階玄関のオートロックに阻まれて会うことすら難しい」と話すのは田中邦宏さん(79)。TX沿線開発で誕生した高層マンションが林立する研究学園地区担当で、約860世帯を受け持つ。

まれに1階の共有スペースに降りてきてくれる人もいるが、インターホン越しでは会話は成立しない。「近所付き合いが面倒でマンションを購入した人が多く、一歩一歩やっていく」と話す。

茎崎地区で4期民生委員を務める片岡三郎さん(76)は、ほぼ毎夕、宝陽台団地の単身高齢者34世帯を見守るパトロールを続けている。昨日と違っているところはないか、電灯が付いているか、と注意を払う。

これまでに急に手足がしびれ、車庫で動けなくなった高齢者を見つけたり、徘徊する女性を見つけ、牛久の家族の元に帰したことがある。

改選のたびに適任と思う何人かに頼んでみたが「仕事が忙しい」「向いていない」と断られた。使命感から続けてきたが、ようやく60代の後任者が見つかった。「今期3年を悔いのないように努めたい」。

60代、70代で9割占める

民生委員は市町村の推薦で厚生労働相が委嘱する非常勤の地方公務員。任期は3年(再任可)で全国に約23万人、県内には約5千人いる。月1万円程度の活動費が支給されるだけで報酬はない。守秘義務があり、児童や妊産婦を支援する児童委員も兼ねる。

市社会福祉課によると、今月の改選時の定数271人に対し欠員は7人。再任は206人で新たに58人が推薦を受けた。30~80歳代で構成されているが60歳代が5割(133人)、70歳代が4割(110人)を占め、75歳以上の後期高齢者は21人いる。

国は「民生委員は原則75歳未満」としていたが、なり手不足を受けて2007年に年齢基準を緩和した。多くの自治体が国の通知に沿って選任したことで高齢化が進んだ。同課の木本係長は「75歳を目安として地域の事情に詳しく健康な人を推薦している」と話す。

担い手がさらに不足しかねない動きがある。国が進める高齢者の就業拡大だ。安田課長は「共働きや定年後も働く人が増え、支援が必要な人を支える分母の人数が減っている」と表情を曇らせた。

2018年度中に民生委員が受けた相談件数は7528件で年々増加している。介護保険や生活困窮の相談をはじめ、家族形態の変化に伴って家や墓の後継者問題など困難化しているという。安田課長は「日常的に地域に目を配り、相談に乗って支援することは行政には難しく、民生委員に助けられている」と話してくれた。(つづく)