土曜日, 4月 20, 2024
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LGBTQとパレスチナ、分断ではなく連帯を 筑波大生が映画試聴会

「LGBTQ(性的少数者)に排他的なパレスチナを擁護することは、LGBTQの権利をないがしろにしている」。SNS上でも広がる「パレスチナへの連帯か、LGBTQの人権か」という二項対立的な論争にあらがおうと、筑波大学の学生有志を中心に、「LGBTQ+の運動を考えよう 映像試聴会」が14日に開催される。試聴会を企画した木原里沙さん(21) 、同大学院の正木僚さん(28)、りょうさん(仮名・23)は「あらゆる人権侵害を許さずに、LGBTQの権利回復を目指すための連帯と抵抗について考えたい」と話す。木原さんと正木さんはLGBTQ当事者だ。 虐殺を覆い隠す「ピンクウォッシュ」 人権侵害の事実を隠す意図で、特に同性愛者に理解があることを強調することを「ピンクウォッシュ」という。同性愛者のシンボルカラーとされる「ピンク」と、「覆い隠す」という動詞「whitewash(ホワイトウォッシュ)」を合わせた造語だ。特にイスラエル政府がLGBTQフレンドリーであると世界にアピールすることで、パレスチナへの占領という負のイメージを覆い隠していると批判する言葉だ。 毎年4月後半に開催される国内最大級のLGBTQ関連イベント「東京レインボープライド」も例年、イスラエル大使館がブースを出展していたため、「ピンクウォッシュだ」と当事者団体などから批判されていた。今年も19日から3日間、開催される予定だが、協賛企業のいくつかが、パレスチナで虐殺を続けるイスラエルに製品・サービスを提供しているとして、現在、世界中で不買運動が呼び掛けられている。 人権問題に優先順位はない 試聴会では、ドキュメンタリー映画『これがピンクウォッシュ!シアトルの闘い』(ディーン・スペード監督、2015年)を上映し、参加者同士で感想を共有する。2012年、イスラエルのLGBTQ活動家の訪問を歓迎するかどうかで、シアトルのLGBTQコミュニティが激しく揺れた様子を描いたものだ。 「過去のLGBT運動にはトランスジェンダーも関わっていたが、同性愛者の権利回復が優先されしまい、トランスジェンダーの権利は取り残されてきた。『LGBTQの権利か、パレスチナの解放か』のように、人権問題に優先順位をつけてしまうと、見落とされてしまう人が出てくる。レインボープライドを目前に、これからの運動のあり方を考えたい」と、正木さんは企画の趣旨を説明する。 木原さんは、大学内でLGBTQ当事者か否かに関わらずレインボープライドに参加予定の人もいるとし、「LGBTQというマイノリティ性を持っていても、他の社会課題に関心を持てるとは限らない。レインボープライドに参加する前に、一緒に映画を観て、パレスチナについて考えられたら」と話す。 りょうさんは「反対意見が出ると、それを押さえつけたくなるが、規模が大きくなるほど、いろんな考えの人が入ってきて当たり前。最初から批判されないことを目指すと、意見の異なる人を排除し、当事者を分断してしまうことにもなりかねない。意見の違いを受け入れながら、変わり続けることが大切」という。 連帯の可能性を模索 正木さんは昨年、イスラエルによるパレスチナへの攻撃が激しくなってから、問題に関心を持つようになり、できるだけ不買運動の対象にされている企業の商品を買わなくなった。「遠く離れたパレスチナを身近に感じることは難しいかもしれないが、社会課題はLGBTQの問題だけを切り離して考えられるものではない。気づかないうちに、自分が虐殺に加担してしまう可能性もあることを参加者と共有できたら」と話す。りょうさんも「私自身も知らないことが多く、危機感を持っている。知ることを放棄せず、仲間と一緒に知識を更新し続ける必要性も、参加者と考えたい」と期待する。 一方「今の私たちが見えていない社会課題もある。世代も関係なく、様々な人に参加してもらい、私たち自身も新しい視点を獲得したい。これからもLGBTQの問題に限らず、立場を超えて、いろんな人と繋がれるイベントを開催する予定」だと正木さんは話し、複合的な社会課題の解決に向けた連帯の可能性を模索する。 その一環として、28日には、同じメンバーが主催し、地域住民を対象に、特定の問題に限定することなく、日常で感じるモヤモヤを参加者同士で共有しあうイベント「灰色のため息だって彩りたい!」を開催する。 ◆「LGBTQ+の運動を考えよう 映像試聴会」は4月14日(日)午後1時から3時、ブックカフェ「本と喫茶 サッフォー」(つくば市天久保)で開催。参加費無料、ただしワンオーダー制。参加申込はこちら。定員20人。定員になり次第、締め切る。 ◆「灰色のため息だって彩りたい!」は4月28日(日) 午後1時から3時、同会場で開催。参加費無料、ただし19歳以上はワンオーダー制。参加申込はこちら。定員20人。

能登の高校生に元気を 筑波大バドミントン部が練習会 OBが呼び掛け 

筑波大学(つくば市天王台)バドミントン部の部員らが3月30、31日の2日間、能登半島地震で被災した高校生を対象に、石川県金沢市の県立工業高校体育館でバドミントン練習会を開催した。同大バドミントン部OBで、被災地の珠洲市で高校教員として勤務する清水亮輔さん(27)が「被災した子どもたちにバドミントを練習できる機会をつくれないか」と呼び掛けたことがきっかけになった。 清水さんは石川県出身。「震災後、部活動がしたいという生徒がいる中で、体育館が自由に使えないのが現状」という。清水さんによると、能登地区の生徒たちは、現在オンライン授業を活用するなど、学習機会を最低限確保できている一方、部活動に関しては、地震による体育館損壊の影響で、一部のスペースしか利用することができない。バドミントン部の生徒を含め、部活動は週に1回程度。ライフラインである水道はいまだ復旧しておらず、普段通りの生活が取り戻せない状況下で、生徒は自身の進路や大会に向けた練習に向き合っている。 清水さんの呼び掛けをきっかけに、石川県高体連バドミントン専門部、同県バドミントン協会と、筑波大バドミントン部が協働し、開催に至った。清水さんを中心に、能登地区周辺の高校に声を掛け、能登半島の県立輪島高校、七尾高校、飯田高校などのバドミントン部に所属する1〜3年生の生徒が参加した。当日はバスを利用して同校体育館に集まり、両日で延べ150人が練習に励んだ。 筑波大から派遣された部員有志は新入生も含めて12人。部員らで考えた練習メニューをもとに、バドミントンコート6面分ほどの広さの体育館で、男女シングルス、ダブルスなど種目別に分かれて練習を指導した。 清水さんは、同大バドミントン部に対して「ただ単に活動の場所を提供することだけでなく、参加した高校生が今まで以上にバドミントンに熱中できるよう接してもらうことを期待していた」と語り、「学生のおかげで、実際に参加した高校生の生き生きとした表情や、笑顔で楽しむ様子を見ることができた。制限がある中での生活だが、気が紛れたのではないか。石川のために時間を割いてもらってとても感謝している」と話した。 同大部員らの交通費や宿泊費などの開催費用は「がんばろう能登プロジェクト寄付金」と題して同部が寄付を呼び掛けた。約3週間で個人や法人などからおよそ75万円が集まり、練習会では、参加した高校生に対し、メーカーや有志らによるバドミントン練習用具の提供も行われた。 同大体育系助教でバドミントン部顧問の吹田真士総監督は「高校生には、バドミントンに取り組む瞬間だけは、日常を忘れて夢中になってもらえるよう心掛けて接した。この活動が、高校生たちの背中を押す一歩になれば」と話した。 同大大学院1年で部員の服部嶺さん(22)は石川県出身。バドミントンを通して地元に貢献したいという思いで参加した。「参加した生徒から『震災後初めてラケットを握った』『週1回1時間程度の練習しかできない』などと聞き、バドミントンが練習できる環境が整っていない現状を目の当たりにした」と述べ、「大変な時でも必死に1日を生きようとしている高校生の姿を見て、とても勇気づけられた。今後も地元やバドミントン界のためにできることを考えていきたい」と話した。 同大体育専門学群2年で部員の岡村祐輝さん(20)は、小学生の頃から南海トラフ地震に備えた訓練を経験してきたことで、被災地への支援活動に興味を持ち参加した。「金沢で出会えた高校生や、自分たちが活動するための寄付金など、周囲の助けや縁を感じられた2日間だった。自分たちに何ができるかを常に考えながら活動した」と話した。 参加した高校生からは「地震で週に1回しか練習ができていないため、こういった練習はとても良い機会になった」「自分に足りなかった部分がたくさんあったけれど、筑波大学の先輩たちが丁寧にアドバイスしてくれたおかげで、たくさん吸収できた」という声が寄せられた。一方「校舎の体育館が使えないため、自主練習ができない」という声や、「学校で練習ができない」「体育館が使えるか不安」など、地震の被害を受け、練習施設不足に関する悩みも寄せられたという。 吹田総監督は「自分たちに何ができるのかを考えながら、継続して行動し続けることで、周りに良い影響を与えていきたい。将来的には、高校生だけでなく、小中学生を巻き込んだ活動や、石川県以外の被災地とも連携し、支援の幅を広げていければ」と話した。 清水さんも今後について「自分たちにできることには限界があるが、高校生のためにも、競技力の高い筑波大学の学生の力を借りて、練習会をまた実現させたい」と話している。(上田侑子)

建つか?筑波大恩師の銅像《看取り医者は見た!》16

【コラム・平野国美】数年前に北海道のある街に出掛けた時のこと。地元の方との話の中で我が恩師の地元が確かここだと思い出し、名前を挙げてみると、「おお、YZ先生のお知り合いですか?」と、相手が身を乗り出してきました。 先生は筑波大学時代の担任で、留年を繰り返した私は、何度も天久保の寿司屋で説教と励ましを受けました。恐れ多くて、知り合いなどとは言えません。その後、先生は母校の東京医科歯科大学に転籍され、トップに登り詰めました。医学界では伝説の方です。 先生の業績で理解しやすいものは、東京工業大学と東京医科歯科大学統合(2024年10月発足)の地ならしがあります。20年以上前、ある空港でお会いしたとき、2大学だけでなく、4大学連合(東京医科歯科大、東京外国語大、東京工業大、一橋大)を唱えておられました。各大学の人材や単位の流動性を図るのだと。 銅像は街の歴史を刻む 地元の方は「立ち消えになりましたが、駅前に先生の銅像を建てようという計画案があったのです」と言っていました。この話を聞き、駅前広場に青空を指差して立つ先生のブロンズ像を想像しました。見た目は、俳優の國村隼さんと「こち亀」の両さんを足して二で割ったような感じです。 学生時代、なぜ東京医科歯科大を目指したのか、先生に聞いたことがあります。「俺、田舎が比布でよ。子供の頃に地元代議士の息子がよ、東京の大学に合格してよ。入学するとき、なまら、わんさの人が駅のホームに集まってよ。札幌に向かう電車に向かって、万歳三唱したの見てよ。俺も、いつか東京に行かなきゃって思ったわけよ。だから、冠(かんむり)に東京って書いてある大学を狙ったわけ」と、話されていました。 地元の人が言う駅前が、比布町なのか旭川市なのか分かりませんが、いつか銅像が実現してほしいものです。もう先生は80代に入り、穏やかな日々を過ごされていると思います。空港で最後にお会いしたときの言葉は「今からハーバードに行ってくる」でした。 銅像は芸術的な意味もあると思いますが、街の歴史を刻むものもあります。私が見てみたいのはロッキー・バルボア像(フィラデルフィア)です。今回の写真の右は別府駅前の別府観光の生みの親、油屋熊八さんの像、そして左の写真は石垣港にある具志堅用高さんの銅像です。(訪問診療医師)

建つか?筑波大恩師の銅像《看取り医者は見た!》16

【コラム・平野国美】数年前に北海道のある街に出掛けた時のこと。地元の方との話の中で我が恩師の地元が確かここだと思い出し、名前を挙げてみると、「おお、YZ先生のお知り合いですか?」と、相手が身を乗り出してきました。 先生は筑波大学時代の担任で、留年を繰り返した私は、何度も天久保の寿司屋で説教と励ましを受けました。恐れ多くて、知り合いなどとは言えません。その後、先生は母校の東京医科歯科大学に転籍され、トップに登り詰めました。医学界では伝説の方です。 先生の業績で理解しやすいものは、東京工業大学と東京医科歯科大学統合(2024年10月発足)の地ならしがあります。20年以上前、ある空港でお会いしたとき、2大学だけでなく、4大学連合(東京医科歯科大、東京外国語大、東京工業大、一橋大)を唱えておられました。各大学の人材や単位の流動性を図るのだと。 銅像は街の歴史を刻む 地元の方は「立ち消えになりましたが、駅前に先生の銅像を建てようという計画案があったのです」と言っていました。この話を聞き、駅前広場に青空を指差して立つ先生のブロンズ像を想像しました。見た目は、俳優の國村隼さんと「こち亀」の両さんを足して二で割ったような感じです。 学生時代、なぜ東京医科歯科大を目指したのか、先生に聞いたことがあります。「俺、田舎が比布でよ。子供の頃に地元代議士の息子がよ、東京の大学に合格してよ。入学するとき、なまら、わんさの人が駅のホームに集まってよ。札幌に向かう電車に向かって、万歳三唱したの見てよ。俺も、いつか東京に行かなきゃって思ったわけよ。だから、冠(かんむり)に東京って書いてある大学を狙ったわけ」と、話されていました。 地元の人が言う駅前が、比布町なのか旭川市なのか分かりませんが、いつか銅像が実現してほしいものです。もう先生は80代に入り、穏やかな日々を過ごされていると思います。空港で最後にお会いしたときの言葉は「今からハーバードに行ってくる」でした。 銅像は芸術的な意味もあると思いますが、街の歴史を刻むものもあります。私が見てみたいのはロッキー・バルボア像(フィラデルフィア)です。今回の写真の右は別府駅前の別府観光の生みの親、油屋熊八さんの像、そして左の写真は石垣港にある具志堅用高さんの銅像です。(訪問診療医師)

路上から対抗 筑波大生「本を読むデモ」でパレスチナと連帯

イスラエルによるパレスチナ・ガザ地区への軍事侵攻が続く中、「理不尽な暴力に、学ぶことで対抗する」という思いを抱く学生らが23日、犠牲者への連帯を示す「静かに本を読むデモ」をつくば市天王台の筑波大学構内で行った。 「もしよかったら、本読んでいってください」 雨上がりの午後5時、冷え込む屋外で筑波大大学院1年の安田茉由さん(23)が、通りかかる学生に声を掛ける。地面に敷いたシートの上には19冊のパレスチナ関連書籍と印刷した資料が並んでいる。誰でも自由に手に取り、時間をかけて読むことができる。「大学内に、パレスチナの今を学べる空間をつくれたら」と考え用意した書籍は主に安田さんと、企画に協力する同大大学院3年の上田由至さん(31)によるものだ。上田さんによる短い感想が添えられたものもある。風に飛ばないよう印刷物に置かれた小石には、「停戦」「誰も殺すな」など安田さん直筆のメッセージがカラフルなイラストとともに描かれている。 「スタートは午前11時。これまでに5人くらいが長い時間読んでくれ、その他に話をしてくれた親子や、立ち止まって見てくれる学生などがいた」と、厚手のコートに身を包む2人は笑顔で話す。 きっかけはデモ参加 きっかけとなったのが、3月14日につくば駅前で行われたガザ地区攻撃への抗議デモだった。参加した安田さんはパレスチナ問題に関心を持ち、署名活動に協力するなど行動してきた。ただ、大きい音が苦手な安田さんはデモでの音に馴染めなず、「自分ができる他のことがあるんじゃないか。大学という場がせっかくあるのだから、学ぶことで暴力に対抗できないか」と考えた。そこで思い至ったのが「静かに本を読むデモ」だった。「知らないことで、日本人の私たちも民族浄化や虐殺への加担につながってしまった」という反省があった。 活動の場を屋外にした理由は「室内で読書会をやるより、ランダムに人と出会うことができる外が良かった。屋外なら、ちょっとだけ見て去っていく、じっくり見る、遠くから眺めるなど様々な関わり方ができる。静かにできるのも大事にしたい。スピーカーを使ってデモをするのも素敵で応援したいと思いつつ、私のように大きな音が苦手だったり気後れしちゃう人でも関われる場をつくりたかった」という。そして同じ学科で学ぶ上田さんに声を掛けた。 安田さんは都内の大学に通っていた学部時代に、駅前の広場や路上に敷いた大きなロール紙にペンで誰でも落書きできるイベントを開いた。路上を行き交う人同士が絵を描くことでつながり、そこで生まれる交流に心を動かされたという。海外から来た人、路上生活する人、多様な職業の人、子ども、大人、高齢者がそこで交わった。上田さんは、大正期の路上での芸術、政治活動などを始め「路上」で繰り広げられた表現活動を研究対象としている。2月には、国内外の事例や思想を論じる雑誌「路上の抵抗誌」を創刊した。 暴力に抗う 「暴力」に対して2人はこう話す。自身の研究対象であるフェミニズムとの関わりから安田さんは「私はフェミニズムを研究する中で性暴力についても学んでいる。暴力に対して誰が一緒に怒り、周囲がどうそれに応答したのかが性暴力被害に遭う人にとって、その後の回復や残る傷の深さを左右する。パレスチナで人々が負う傷やトラウマは今だけでなく一生続くかもしれない。それに対して命を落とす一人一人を悼むととともに、私がその傷を広げてしまわないよう何とかできればというのも個人的な動機になっている」 上田さんは「ガザでは日々死傷者数が増えている中で欧米諸国がイスラエル支援に立っている。マイノリティーの側に立つことが、自分が学んできた人文学だと考える。学ぶこと、実際に声を上げることが大切」と話す。 安田さんはさらに「一番は続けていくこと」だと言う。今後については「足を止めてくれる人が同じ空間で本を読んで、同じ思いを共有できるのは良い経験。今すぐ何かが変わるわけではないかもしれないが、家に帰ってから思い返すなど、少しでも変化を与えられたらと思っている」と話す。「私はパレスチナのことを知らなかった。だからこそ声を上げてこなかった。そのために暴力に加担し、また、させられてきたのが悲しかった。大学院生として学ぶことで(暴力に)加担しないよう抗っていきたい」と述べる。今後の活動は、SNSを通じて発信していくという。(柴田大輔)

筑波大で4年遅れの入学式 在校生らが感謝伝える

新型コロナウイルスの感染拡大で入学式が中止となった2020年度入学の筑波大4年生と同大学院2年生のための入学式が13日、同大大学会館(つくば市天王台)で催された。4年前に入学した大学生と大学院生計約4700人のうち約200人がスーツに身を包み参加した。2週間後の3月25日には4年生らの卒業式が催される。 入学式には永田恭介学長や副学長らも出席し、同大管弦楽団の演奏で4年生らを出迎えた。式辞を述べた永田学長は「大学生活最初の年はとてつもなく予想外のものであったはず」と振り返り、「皆さんのコロナ禍での4年間の歩みは無駄ではない。学士としての力を備えているはず。卒業前の2週間に学生生活を振り返ってみてほしい」と話した。 先輩たちに感謝の気持ちを伝えたいと、学生組織「全学学類・専門学群・総合学域群代表者会議(全代会)」が主催した。全代会議長で理工学群社会工学類3年の林凜太郎さん(21)が企画を提案し、昨年12月から本格的に準備を開始した。 式典のあいさつで林さんは「大学1年目で思うような活動ができない中、私たち後輩に対しては、新歓活動や学園祭の運営などを精力的に行ってくれた。そのおかげで充実した学生生活を送ることができている。皆さんの今後のご活躍を祈る」と在校生代表として感謝の気持ちを述べた。 同大大学院に進学予定の社会工学類4年の星野明日美さん(22)は「思い描いた以上の入学式で驚いた。行動が制限されていた私たちの学生生活に寄り添った言葉を学長が投げかけてくれていたのが印象的だった」と話した。同大学院に進学予定の理工学群工学システム学類4年、男子学生(22)は後輩からの誘いで参加し「せっかくの機会をいただけてうれしい。初々しい気持ちになった」と語った。 式典の最後に、同大のメッセージソング「IMAGINE THE FUTURE~未来を想え」の合唱も行われた。(上田侑子)

学食メニューにCO₂排出量を見える化 筑波大

筑波大学(つくば市天王台)は学生食堂のメニューに2月末から期間限定で、二酸化炭素(CO₂)排出量を表示し提供している。カーボンフットプリント(CFP)という取り組みで、食材を調達し、食事として提供されるまでに排出された二酸化炭素を数値化する。二酸化炭素排出量を可視化し、学生らが地球環境負荷を理解することで、排出量削減につなげる狙いがある。 CFPは、商品やサービスがつくられてから捨てられるまで、生産、加工、流通、消費、廃棄の各過程で排出された温室効果ガスを追跡し二酸化炭素に換算して、表示すること。 地球規模課題の解決や持続可能な未来に向けて学問領域を超えて探索する同大デザイン・ザ・フューチャー(DESIGN THE FUTURE)機構と、学生、学食提供会社などが連携し、大学会館レストラン「筑波デミ」を含む3つの食堂で2月26日から3月8日まで実施している。 同大で学食メニューにCFPを表示する取り組みは、昨年10月開催された同大創立50周年記念イベントのランチパーティーで実施して以来のことで、今回は、同大食堂を訪れる学生や教職員らに向けて、初めて期間を設けて実施する。 CFP表示されるメニューは、日替わり32種と定番10種に及び、3つの食堂で1日3種類程度の日替わり定食や丼ぶりものにCFPが表示されて提供されるほか、医学食堂や1A棟食堂ではそばやうどん、ラーメンなどの定番メニューも対象だ。 CFPの低い学食をランキング形式にして紹介するなど、学生が二酸化炭素排出量を考慮してメニューを選択することもできる。 デザイン・ザ・フューチャー機構長で同大副学長の西尾チヅル教授は「二酸化炭素排出量削減に向けては、脱炭素に関する研究など技術的に進化している一方で、消費者が食料と二酸化炭素排出量を結びつけて考える機会はなかなかない」と話す。 そこで学生が地球環境について考える場を設けるため、まずは身近な学食に目を付け、CFPを表示するプロジェクトが昨年4月から企画され始動した。 西尾教授は「将来的には、消費者によりわかりやすい表示法の模索や、継続的に、期間を設けて運用し、二酸化炭素削減につながる暮らし方の提案ができれば」と話した。 同プロジェクトには学生も参加し、ポスターのデザインや、食堂のテーブルに設置されたポップ案内の作成、CFP表示に併せてカロリーや三大栄養素表示の提案を行うなどしている。 学食メニューのCFP表示は、今年1月に東京大学で期間限定で実施された。海外では、米国、ドイツ、フィンランドなどで環境負荷の低いメニューが提供されている事例などがある。(上田侑子) ◆筑波大の学食メニューにCFPを表示する取り組みは3月8日(金)まで、大学会館レストラン「筑波デミ」、医学食堂、1A棟食堂「TSUKUBA TABLE」で実施。営業時間は午前11時〜午後1時30分まで(月〜金、現在短縮営業中)、医学食堂のみ午後2時まで営業。

LGBTに寄り添う教員に「勝手に感謝状」 筑波大 学生組織

意識高め合う機会に 筑波大学の学生組織「LGBTQ+ = ALLIES Salon(アライズ・サロン)」が、「だいばーしてぃ 勝手にBEST TEACHER(ベスト・ティーチャー)賞」と題し、LGBTQを始めとする性的少数者の学生に寄り添っている教員に、感謝状を贈った。28日に学内で開催された「感謝状授与式」には、受賞した教員25人のうち12人が出席。学生から感謝状が手渡された。 感謝状を受け取ったカザフスタン出身で人間系のタスタンベコワ・クアニシ准教授は「私自身、外国人女性として、大学内で居づらさを感じることもある。同じようなマイノリティー性を持つ仲間として認めてもらえたようでうれしい」と笑顔で話した。 学生が教員に投票 同会は、LGBTQ+当事者学生と、当事者学生に寄り添い共に行動するアライ(Ally)である非当事者学生が、性のあり方に関わらず、自分らしく過ごせる環境づくりを目指して活動している。 今回の企画では、昨年12月から2カ月間かけ、学内の学生や教員などに、性の多様性に寄り添っている教員を投票してもらった。結果、学生ら約35人が投票。より多くの教員を表彰したいと、自ら表彰を辞退した教員以外は、名前が挙がった全員に感謝状を授与した。 アライの立場から今回の企画運営に関わった大学院修士2年の後藤美句さん(24)は「予想以上に多くの先生が性の多様性を意識してくれていた。今回受賞された先生同士がつながることで、先生方の中でもより意識が高まることを期待したい。来年度も同様の企画を続け、LGBTQ+の学生に寄り添う先生が増えるきっかけになれば」と話す。 多様な性と向き合うために 授与式後には「普段、学生と向き合うために気をつけていること」をテーマにパネルディスカッションが催され、受賞した3人の教員が登壇した。 助産師実習を担当する医学医療系の岡山久代教授は、出産を経験するのは男女のカップルだけでないため、相手の性別を決めつける表現をしないように指導したり、数年前、看護実習のユニフォームを男女で同じデザインにするように働き掛けた経験を紹介し、「学生には多様な生き方に寄り添う医療を提供できるようになってほしい」と語った。 教育学の授業で性教育にも触れるというクアニシ准教授は「すべての人にとって平等な社会をつくるため、日本の性教育をどう変えていくかを学生と考えている」と話し、「トランスジェンダーの生徒が性自認に合わせた制服を着用できない問題も性教育で扱うべきだろう」と指摘した。 学内組織「キャリア支援チーム」として学生に関わる福嶋美佐子助教は、大学院の進学率における男女差を指摘。「大学入学時点で博士課程進学を希望する女子学生はほぼいない。進路選択の幅を広げるために、学群生を対象としたキャリア形成に関するイベント等で、ロールモデルとして博士号を取得した卒業生を紹介することに注力している」と普段の取り組みを紹介した。 クアニシ准教授の「レズビアンの友人に『相手の性を決めつけないことが大切』と教わり、心掛けている」という発言に対し、福嶋助教は「LGBTQ+に限らず、どんなに気をつけていても相手を傷つけてしまうことはある。その時は素直に謝り、どうすればいいか教わっていきたい」と述べるなど、教員同士で意識を高め合う場にもなった。(川端舞)

歌舞伎の魅力を広めたい 筑波大 学生サークルが初公演

瀧夜叉姫の演目もとに創作 筑波大学の学生サークル「かぶき會」(加藤悠介代表)が28日、同大春日講堂(つくば市春日)で「地歌舞伎」を初公演する。江戸時代から庶民が芝居小屋や神社の祭礼で演じてきた、筑波山が舞台の地歌舞伎の演目を基に、同大人間学群障害科学類4年の加藤悠介さん(22)が脚本を書き、サークルのメンバーが演じる。 筑波山の岩屋を舞台にした演目「蟇妖術 瀧夜叉姫(がまようじゅつ たきやしゃひめ)筑波山岩屋の場」を基に、加藤さんが歌舞伎と現代劇を融合させた新たな演目「雙峰 相筑波(ふたつのみね あいのちくなみ)」を創作した。同大で地歌舞伎の公演が催されるのは初めて。        同サークルは演者9人とスタッフ8人で、男女問わず1~4年の計17人が所属する。2023年4月に加藤さんが公演の企画を立て、7、8月にメンバーを募集、昨年11月から稽古を開始した。 練習は、歌舞伎の観劇経験が数多くあり知識や情報が豊富な加藤さんが、脚本の構想や役柄のイメージを元に主導した。細かな所作やセリフの言い回しは全員で資料映像などを見て研究し、歌舞伎特有の表情や発声法、手の動き、扇子など小道具の使い方などの練習を重ねた。 同大の教室で週3、4回の練習をこれまで約30回行ってきた。衣装は各メンバーがお金を出し合ったり寄付を受けて調達した。隈取(くまどり)など歌舞伎独特の化粧は、映像や書籍を参考に学生自身が担う。 原作の「蟇妖術 瀧夜叉姫ー」は、平将門の息女である瀧夜叉姫が父亡き後に妖術を覚え、筑波山に潜んでいたという伝説を基にした演目だ。脚本と演出を担当した加藤さんは、原作から大きく構成を変え、オリジナルキャラクターを登場させる。古語と現代語が入り混じる演出で、演者に男女の区別はない。 題名「雙峰相筑波」は、同大の学園祭「雙峰祭」(そうほうさい)に由来し、2023年10月に、師範学校から創基151年、開学50周年を迎えた同大を記念し、つくばや同大に由来した設定となる。 リハビリの一環で小5から日本舞踊 加藤さんは体が不自由で普段は車椅子で生活している。辛くても歩くことや身体を動かすことを楽しみたいと考え、リハビリテーションの一環として小学5年から日本舞踊を始めた。日本舞踊を通して、中学で歌舞伎に興味を持ち、さらに和の所作の美しさに興味を膨らませた。 筑波大に進学後、2021年に同団体を立ち上げた。「歌舞伎の歴史や演目の幅の多様性に魅了されたことや、見せ場である『見得』は、映像技術でいうクローズアップの技法に関連すること、『黒幕』や『修羅場』、『幕の内』といった現代語は歌舞伎に由来するなど、現代と繋がりのある芸能の奥深さや面白さを、同世代の大学生を始め多くの人々と共有したいと思うようになったことが始まり」だという。                                            最初の活動として、当時2年の加藤さんと仲間2人で、同大生向けに歌舞伎のオンライン鑑賞会を開催した。翌年には、歌舞伎に興味を持つ留学生や教員を対象に、英語を交えた解説と、加藤さんによる実演を加えたオンライン鑑賞会を開いた。 加藤さんは「歌舞伎に関して伝統的で敷居が高いというイメージを持たれることが多いが、今回の公演は現代劇と融合させることで、老若男女誰もが楽しみやすく、理解しやすい演目になっている。筑波大生の私たちが描く、私たちなりの一つの歌舞伎の形として見ていただければ」と話す。 日本舞踊で学んだ腰の落とし方、呼吸法、首や肩、指先、すり足などの動作を稽古指導で生かし、歌舞伎の様式美や動きのしなやかさの表現に役立てたという。公演では自身の身体的特徴を生かしたオリジナルキャラクターとして登場する。(上田侑子) ◆筑波大学かぶき會第1回自主公演は、筑波大学春日講堂で2月28日(水)に開催される。開場・受付開始は午後2時45分、開演は午後3時15分から。入場無料。事前にチケット予約フォームから申し込みが必要。X(旧ツイッター)やインスタグラムで情報発信している。

初発膠芽腫患者対象に治験スタート 筑波大学のがん治療法BNCT

加速器で発生した中性子を照射してがん細胞を破壊する治療法、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)の開発を進める筑波大学(つくば市天王台、永田恭介学長)が、難治性脳腫瘍の膠芽腫(こうがしゅ)に対する治験を開始した。現在、大学付属病院(原晃院長)の患者対象に候補者を絞り込んでおり、加速器のある東海村に設置した治療施設で3月にも臨床試験が開始される。初発膠芽腫患者を対象にした医師主導の治験は世界初という。 筑波大学は初発膠芽腫を対象とした国内第Ⅰ相医師主導臨床試験に関する治験計画を提出。日本医療研究開発機構(AMED)の「橋渡し研究プログラム」課題として採択され、23年度から3年間、8000万円が予算化された。治験登録の手続きは1月までに完了した。 脳と脊髄の神経膠細胞から発生する腫瘍のうち、最も悪性のものが膠芽腫(グリオブラストーマ)で、5年生存率が10%程度と極めて低いがんとされる。手術と放射線・化学療法の組み合わせでも多くが再発し、治療が困難とされ、有効な治療法が望まれている。日本国内での脳腫瘍の発生頻度は年間に約2万人、そのうち10%強が膠芽腫とされている。 今回の治験では、すべてを切り取れないような難しい部位に悪性腫瘍のある患者を対象に、BNCTの安全性などを検証する。効果を的確にとらえられるよう、放射線治療歴がない患者を対象とした試験となる。通常の放射線治療では放射線量で60グレイの照射が行われるが、BNCTと組み合わせることで40グレイにまで抑えられ、治療時間の短縮により、患者の負担も軽減されるという。 第Ⅰ相(安全性試験)の後、第Ⅱ相(治療の有効性治験)を実施して効果が認められれば、医療機器の承認を経て、保険診療へとつながっていく期待がある。第Ⅰ相では12人から最大18人、第Ⅱ相では30人程度の症例を得る想定で、結果が出るまでに3年程度を要すると見ている。 大量の中性子も低エネルギーで安全性確保 BNCTは、がん組織にのみ集積する性質のホウ素薬剤を投与し、加速器で発生させた中性子を患部に向けて照射すると、中性子とホウ素が反応し核反応を起こし、がん細胞を破壊する原理に基づく。放射線治療の一種だが、細胞単位で治療が可能で、皮膚や周囲の正常細胞は影響を受けにくいという利点がある。 筑波大では長年、付属病院の陽子線医学利用研究センターでBNCTの研究に取り組んできた。2011年3月以前は中性子の発生源に、東海村にあった実験用原子炉が用いられたが、東日本大震災で被災しストップ。これを機に実用化に向け病院にも設置できるよう、小型化と安全性を求めての装置開発が進められた。 照射装置は2013年、いばらき中性子医療研究センター(東海村白方)内に設置、15年に中性子の発生を確認した。高エネルギー加速器研究機構(KEK)と共同開発の加速器は長さ約8メートルとコンパクト、設置面積は40平方メートルに満たない。エネルギー8メガ電子ボルト、平均電流約2ミリアンペアで陽子を加速し、厚さ0.5ミリのベリリウムに照射して中性子を得る。中性子ビームは別室に導かれ、生体に照射される。 21年から治験薬開発のステラファーマなどと実証機(iBNCT001)による非臨床試験を行ってきた。陽子線医学利用研究センターの熊田博明准教授によれば「大量の中性子を発生させながらもエネルギーは低く抑える」ビームのコントロールに苦心した。エネルギーを低くすることで施設の放射化を避けられるという。(相澤冬樹)

無人販売の八百屋をオープン 元留学生が筑波大近くに

近所に八百屋がない筑波大学近くの春日4丁目に9日、24時間営業で無人販売の食品販売店「やおや・春日」がオープンした。同市天久保で四川料理店「麻辣十食」を運営する東洋十食が手がける。野菜や果物のほか、中国からの輸入食品や自社製造のお弁当、コロッケなどの惣菜も販売を始め、近隣住民や大学生らが買い物に訪れている。 店内にはキュウリやトマト、ジャガイモなど一般的な野菜と共に、赤い菜の花や、スティック状のカリフラワー、茎レタスといった珍しい野菜も並ぶ。店舗面積は約35平方メートル。販売する商品は野菜、果物、お弁当など合わせて約100種類ほど。 値段は50円から数百円程度で、一人暮らしの大学生にも買いやすいよう少量ずつパックするなど工夫されている。商品は水海道総合食品地方卸売市場や都内の中央卸売市場から仕入れる。商品の価格に跳ね返らないよう、内装は全てスタッフが手作りして初期投資額を抑えた。無人販売により人件費を抑えているほか、曲がったキュウリなど形が不ぞろいの規格外の野菜を仕入れ、できるだけ安くしている。 支払いは現金かQRコード決済で、品物を選んでから客自身が電卓で計算し、カメラに見えるようにして支払う仕組みだ。 夜遅くまで研究 同店を運営する東洋十食の代表は中国河南省の出身。筑波大学大学院で社会工学の修士課程を修了した。卒業後は都内の会社で働いていたが、自然豊かな環境で子育てしたいと、学生時代親しんだつくば市に戻ってきた。院生時代は大学の宿舎に住み、夜遅くまで学内で研究していた。その経験から「夜中でも食材を買うことができる24時間販売の八百屋が大学近くにあれば便利なのではないか」と思いついたという。都内で勤めていた時、白金や麻布十番の八百屋がにぎわっているのを見て、スーパーマーケットではなく八百屋の業態に魅力を感じたと話す。 孫さんは野菜の仕入れなども行う。「大学生だけでなく近隣に住むお年寄りからも、キャッシュレスでなく現金でも買えるのがありがたいと言われる。喜んでもらえている様子」と好感触だ。野菜を買いに来た筑波大2年の男子学生と女子学生は「オープンしたのを見て気になっていて今日初めて来た。いろいろな野菜があって便利」と話す。東洋十食の代表は「加工食品ばかりだと栄養も偏る。野菜を食べて、大学の後輩たちに元気に、健康になってほしいという思いがある」という。 コロナ禍、都内で人気高まる 街の八百屋は、コロナ禍により家庭内で食事をする内食や巣ごもり消費の需要が高まったことを背景に、都内では、道路に面した店頭に青果を並べる八百屋の人気が集まり、大手食品スーパーが昭和レトロな八百屋の業態で出店したり、ドライブスルーの八百屋もオープンするなどした。農水省の調査によると、2021年には全国の青果市場の約半数がコロナ禍前よりも取扱高を増やしている。(田中めぐみ) https://www.youtube.com/watch?v=zuRiYRuaud4

インドのハンセン病患者を支援 筑波大学生団体

寄付募り住居5軒を建て替えへ 筑波大学の学生でつくる国際ボランティア団体「ナマステ(namaste!)つくば支部」(袴田裕菜代表=国際総合学類2年)は、インド国内のハンセン病患者への支援として、患者らのコロニー(集落)に家を建てるプロジェクトを行っている。2026年3月末をめどに計5軒の建て替えを目指す。 新規感染者が世界最多 ハンセン病は現在では完治する病だ。インドは今、ハンセン病新規感染数が世界最多と言われている。世界保健機関の調査では2021年のインド国内における新規感染者数は約7万5000人に上っている。背景にあるのは、衛生環境の問題とされる。インドでは差別がいまだ根強く、感染者や回復者、家族が暮らすコロニーが国内に点在している。数世代に渡って暮らしている場合が多いが、低賃金労働や物乞いによって生計を立てている生活者が多く、経済的問題から電気水道等のインフラも整っていないコロニーも多い。 そうしたインドでのハンセン病患者や、後遺症や差別に苦しむ回復者を支援しようと、ナマステはもともと、2011年頃に早稲田大学の学生らによって創設された。つくば支部は15年にスタートした。同支部の創設者は当時、筑波大国際総合学類に入学した酒井美和さんで、酒井さんは21年からインドでハンセン病コロニーを支援するNPO法人わぴねす(東京都中央区)の代表理事を務めている。現在のつくば支部はわぴねすとも協力関係にあり、協同してプロジェクトを行うこともある。 直接渡航し支援 つくば支部には現在30数人が所属する。創設以来インドに直接渡航し、ハンセン病差別の問題と向き合ってきた。渡航が制限されていたコロナ禍を除き、長期休暇で授業のない3月と9月の年2回、数週間程度滞在し支援活動を行ってきた。昨年12月まで代表を務めていた生物資源学類3年の長井絢香さんは「インドにはたくさんのコロニーがある。現在つくば支部が支援している西ベンガル州のビシュナプールコロニーもその一つで、西ベンガル州の州都カルカッタから電車で4時間ほどかかる場所にある」と話す。滞在中はコロニー内の学校施設を借りて滞在する場合が多かったが、コロナ禍以後はインド政府によって禁止され、コロニー近くのゲストハウスで寝泊まりをしている。 ビシュナプールコロニーは140人ほどが暮らすコロニーだ。村長のジョゲンナさんはハンセン病の回復者で、差別されホームレス状態にあった人たちに声を掛け共に暮らすようになり、徐々にコロニーが形成されていった。電気は通っているが極めて不安定で、飲料水は井戸に頼っている。男女比はほぼ同数で、90歳を超えた生活者もいる。23%が近隣の市場などで日雇い労働に従事し、40%が物乞い、そのほか多様な職業に就いているが「多くが低賃金労働で、生活環境は悪いまま」だと長井さんはいう。 学生としてできること 現在、つくば支部では26年3月末をめどに、ビシュナプールコロニー内の住居5軒を建て替えるプロジェクトを進めている。電気や上下水道、教育や就労などの支援ではなく、「住む家」に焦点を当てたのには理由がある。「コロニーに行って学生の私たちに何ができるかを聞くと、真っ先に出てくるのは雨漏りがひどくて安心して眠ることができないというような住居の具体的な問題。教育や就労の問題はあまり出てこない。お金を集めて家を建て替えることももちろん容易なことではないが、教育や就労よりも具体的な事業であり、学生としてできる最大限だと思った」と長井さん。コロニー内の住居は土壁が基本で崩れやすく、壁のない部屋もある。 23年の渡航時に地元の事業者に、家の建て替え工事の見積もりを行った。1軒あたり13万ルピー、日本円にして約23万円が工事費用としてかかることが分かった。そこで寄付型のクラウドファンディングで最も緊急度の高い1軒の建て替え工事費用を募ることにした。23年の11月25日からクラウドファンディングキャンペーンをスタートさせた。12月初めには目標金額10万円に届き、最終的に19万円を集めることができた、足りない分はさらに寄付を募るなどして工面したいという。 長井さんは「自分たちにできることは小さいと思う。それでも一歩踏み出す勇気が身に着いた。団体には行動力のある人が多くアクティブ」と話す。つくば支部での活動を経て、国際開発関係の進路を選択する学生も少なからずいる。長井さん自身も「将来は、国際的に社会の基盤を支えるような仕事に就きたい。直接的に国際開発の仕事に就きたいと考えているわけではないが、つくば支部での活動が影響を与えていると思う」と話す。つくば支部の長期的な活動目標は、支援するコロニーを増やすことだ。つくば支部では現在、実質的に支援しているのはビシュナプールコロニーのみ。「インド国内には数多くのコロニーがある。ビシュナプールコロニーだけでなく、他のコロニーへの支援をすることを長期的な目標にしたい」と長井さんは話す。(山口和紀) ◆ナマステつくば支部のX(旧ツイッター)はこちら

実家損壊など被災学生に経済支援 能登半島地震で 筑波大

一時金や生活支援など 能登半島地震で実家が損壊し仕送りが滞っている学生や大学院生などを対象に、筑波大学(つくば市天王台、永田恭介学長)は、20万円の一時金や月5万円の生活費支援、学生宿舎料や授業料免除など独自の経済支援を実施することを明らかにした。 同大によると、福井、石川、富山、新潟の被災4県の出身学生は大学生、大学院生併せて639人おり、26日時点で実家が損壊したなどの報告が学生6人から寄せられている。現在、学生の被災状況を調査しており、支援する学生が何人になるか、現時点で不明。甚大な被害が報告されている石川県七尾市と志賀町出身者については該当者14人に個別に安否確認を実施したとしている。 独自の支援内容は、実家の家計が急変し仕送りがもらえなくなるなど学業を続けることが困難となっている学生に一時金として緊急支援奨学金20万円を給付する。ほかに地震によって実家が全壊、半壊、一部損壊した上、実家からの仕送りがもらえなくなっている学生に1月分から、月5万円の生活費支援と学生宿舎料の免除を実施する。4月からは生活費支援、学生宿舎料免除に加えて、授業料や入学金の全額または半額免除を実施する。 永田学長は25日の定例会見で「被災4県の学生が600人おり、安否確認、安全確認はできたが、実家に大きな問題を抱えている学生がいる。現在個別に調査中だが、被災学生の支援のため寄付を募り始めた。長引いた場合、最長1年半の生活費支援を検討している」などと話した。(鈴木宏子)

自動運転バス実証実験開始 1日6便、筑波大を周回

筑波大学(つくば市天王台)で19日、自動運転バスの実証実験が始まった。30日まで平日の8日間、同大キャンパスの6つの停留所に停車し、一周約4キロのコースを1日当たり6便、時速20キロ未満で30分程度かけて走行する。 車体には、障害物を感知するセンサーや遠隔監視、物体や信号を検知するカメラ数台と、位置測定を行う衛星測位システムなどが搭載されている。現段階では、部分的な手動運転と自動運転の切り替えによって走る「レベル2」の小型バス(定員10人)による走行だが、2025年度までに運転手不在でも走行可能な「レベル4」で公道を走る大型の自動運転バスの実現を目指す。 同市は現在「つくばスーパーサイエンスシティ構想」のもと、先端的技術の社会実装に向けた取り組みを進めている。今回は「2024年問題」と言われるバス運転手の時間外労働の規制や、深刻なバス運転手不足による減便、高齢化など、同市が抱える公共交通問題を次世代の技術を用いて解決する狙いがある。 自動運転バスがつくば市内を走行するのは初めて。県内では境町が20年11月から路線バスとして運行を開始している。 筑波大での実証実験は、同大とつくば市、関東鉄道、KDDIなど8者による取り組み。初日の19日はキャンパス内のデモコース(天久保池前〜第一エリア前)約1.6キロを右回りで走行した。 自転車や歩行者が多く行き交い、死角が発生しやすいカスミ筑波大学店付近では、「路車間協調システム」を採用し、道路に設置した4Kカメラにより、広範囲の周辺道路の状況を即時に解析し、バスに提供することで危険を察知する。 またプロジェクトの一環として、位置情報専用スマートフォンアプリ「つくロケ」を利用し、運賃を支払う動作なしに乗り降りできるシステムの実証実験も行われる。バス停と「つくロケ」アプリの両方によるブルートゥース信号の情報が組み合わさることで、乗客の位置や状態を把握し、乗降判定に役立てられる。 自動運転バスは、環境にやさしく電動のグリーンスローモビリティ車両を使用する。土日は運行しない。乗車料金は無料で、事前予約によりだれでも乗車可能。先着順により定員が空いていれば当日予約なしで乗車もできる。 同市顧問で、同大システム情報系の鈴木健嗣教授は、「つくロケ」アプリ運用に関して、「自分の現在位置に合わせて、人々を見守るシステム。人を中心としたデータ活用社会を実現させたい」と述べた。KDDI事業創造本部の松田慧さんは「スーパーサイエンスシティのつくば市で、新しいテクノロジーを掛け合わせて、実証実験に取り組むことに意義がある」と話した。(上田侑子) ◆自動運転バスの乗車予約はこちら

筑波大で6300人が受験 共通テスト始まる

大学入学共通テストが13日始まった。試験は14日までの2日間。初日に地理歴史・公民、国語、外国語、2日目は数学と理科が実施される。会場となる筑波大(つくば市天王台)では、昨年より154人少ない6303人が受験を予定している。 全国の志願者数は、前年度から2万667人少ない49万1914人。県内では昨年とほぼ横ばいの1万2327人となっている。新型コロナが5類になって以降、初めてとなり、会場では入り口に消毒液が置かれたものの、マスクの着用が求められないなどコロナ以前の環境での受験となる。 「気張らず、いつも通りに」 午前7時30分、つくば市で最低気温マイナス3度を記録し冷え込む中、快晴の筑波大本部南駐車場には、受験生を会場に送り届ける車が徐々に集まり始めていた。 土浦市の松本信明さん(18)は緊張の面持ちで「今日は特別な日だけど特別視はせず、気張らずにいつもの模試のような気持ちで臨みたい」と話し、小美玉市の武井美佳さん(18)さんは、同級生3人と会場に向かいながら、「自宅を出たのは6時。昨日はよく眠れた。頑張りたい」と笑顔を向けた。阿見町から車で娘を送り届けた50代の男性は「いつもと同じ時間に起きて、同じように朝食を食べてきた。普段通りの力を発揮できるように頑張ってほしい」と言葉を送った。 痴漢被害者は追試験の対象 今年の共通テストをめぐっては、1月1日に発生した能登半島地震を受けて、今回の本試験を被災した生徒が受けられない場合、27日と28日に予定している追試験を金沢大学角間キャンパス(石川県金沢市)でも受験できる特例措置がとられると発表している。 ほかに12日、加藤鮎子男女共同参画担当相は記者会見で、大学入学共通テストに遅刻できない受験生を狙った性暴力を扇動する投稿がSNSで拡散されていることを踏まえて、「痴漢は重大犯罪であり許されるものではない」とし、被害を受けた場合、追試験の対象になると述べた。また松村祥史国家公安委員長も12日の会見で「しっかりと対策を講じる」と、警察として列車内などでの性暴力加害への警戒を強化するとした。大学入試センターは、被害にあった際は受験票に記載されている問い合わせ大学に電話連絡し、追試験を申請するよう求めている。(柴田大輔)

子どもたちに科学の楽しさを 筑波大でサイエンスキャンプ

筑波大学(つくば市天王台)で27日、科学に興味を持つ38人の小中学生を対象に「冬のサイエンスキャンプ」が開催された。今年8月の夏のサイエンスキャンプに続き2度目となる。今回は、同大教員らによる気象学と化学の授業が催され、受講生は実験を通して科学を身近に体感しながら理解を深めた。 サイエンスキャンプは、未来の理系人材を育成するためのプログラム「つくばSKIP(スキップ)アカデミー」の一環として、同大社会連携課SKIP(スキップ)事務局が中心となり開催された。同大を含め全国の約20機関で同様のプログラムが開催されており、理科離れを引き止める狙いがある。 同アカデミーは2017年から始まり、今年で7年目。コロナ禍を乗り越え、昨年度から対面での実施が再開された。今年6月の筆記試験を経て、小学5、6年生と中学生の男女40人が受講生として選抜され、理科が好きな生徒や、将来科学技術の分野で活躍したい生徒などが集まった。半数以上が県内から参加し、県外の関東圏からの参加者も目立った。 受講生は9カ月の間、社会問題と関連した科学に関する幅広い分野を学習する。これまで、同大構内の生態系調査、プログラミング、化石発掘実習、画像制作などを体験し、今年9月の「個人研究発表会」では、受講生各自が興味を持った内容をもとにテーマを設定し、研究成果を発表した。 27日の気象学の授業では、日下博幸同大教授による講義と実験が行われた。受講生は、スーパーコンピューターの計算により、日々の気象予測がなされることを学習し、同大計算科学研究センターに設置されているスーパーコンピューター「シグナス」を見学したほか、水と入浴剤、スマートフォンのライトを使い、夕陽のメカニズムを研究する実験や、真空容器に入ったマシュマロが空気圧により膨らむ様子を実験した。 屋外では、受講生は同大院生らと協力し、風速計を使って風の大きさを数値化し、サーモグラフィーカメラで光と陰、アスファルトと芝生というように条件によって変化する温度分布を観察した。また風の流れに乗って風船が動く様子を望遠鏡で観察し、風の向きや風速など目には見えない大気の様子を観察した。 神奈川県から参加した中学2年の女子生徒は、日下教授によるマシュマロと気圧の実験について「空気圧によって、マシュマロが膨らむ様子が面白かった」と話した。東京から参加した小学5年の男子児童は、夕陽のメカニズムを研究する実験が成功した様子を振り返り「夕陽をきれいに再現できたのがよかった」とし、将来については「科学が好きなので参加した。学びの中で興味を持った海洋生物学者を目指したい」と話した。 プログラムは修了式が行われる3月まで実施される。(上田侑子)

関東リーグ優勝メンバーから4人がプロ入り 筑波大蹴球部

筑波大学蹴球部からプロ入りする4選手の合同記者会見が25日、つくば市天王台の同大大学会館特別会議室で開かれ、各人が抱負を語った。今季、関東大学サッカーリーグ1部で6年ぶり16回目の優勝、全日本大学サッカー選手権大会(インカレ)では7年ぶりのベスト4と輝かしい成績を残した選手たちの次のステージでの活躍が期待される。 J1のヴィッセル神戸に内定した山内翔選手は、ゲームコントロールに長けたボランチで「戦術やゲームを認知する能力が高い。一人だけ見えている世界が違う」と小井土正亮監督の評。 プロへの抱負としては「中高の6年間を過ごしたチームに戻れてうれしい。筑波大での4年間がなければ成長できなかった。大学で学んだことを生かし自分が活躍することで、いろんな方々への恩返しになるよう、また大学サッカーの発展につながるよう頑張りたい」と話した。 同じく神戸に内定した高山汐生選手は、身長190センチの恵まれた体格を生かしたダイナミックなプレーが持ち味のゴールキーパー。シュートストップのみならずハイボール処理やコーチングでも小井土監督の評価は高い。 「J1のチャンピオンチームに加入できることをうれしく思う。セットプレーでは自分が前に出て相手に触らせず、コーチングでは声でチームを動かしたり鼓舞し、後ろに自分がいることでチームを安心させられる選手になりたい」 J3カターレ富山に内定した瀬良俊太選手は、テクニックとポジショニングに優れたファンタジスタタイプのサイドハーフ。「意外性やアイデアあふれるプレーで見る人のツボを突く。自分も好きなタイプ」と小井土監督。 「以前は自分のプレーを出したい、見てほしいという意識が強かったが、大学でいろんな人に出会い、チームが勝つために自分に何ができるかを考えられるようになった。今季は相手のプレッシャーを外して展開するだけでなく、自ら前へ出て得点することも意識した。この部分をもっと伸ばしていきたい」 J3のFC大阪に内定した林田魁斗選手は高さ、強さ、速さを兼ね備え、ゴール前でのシュートブロックに優れたセンターバック。「気持ちで戦える男。けがで試合に出場できないときも立ち振る舞いで他のお手本となった真面目な選手」と小井土監督。 「生まれ育った関西でプロのキャリアをスタートできることがうれしい。自分もサッカーからたくさんの夢や感動をもらったので、多くの人に夢や感動を与えられるようになりたい。FC大阪に欠かせない選手になり、J3優勝とJ2昇格に貢献したい」 大学での思い出として最も心に残っているのは、11月4日の関東リーグ東京国際大学戦だったと各選手は語る。同リーグは今季、初めてホーム&アウェー方式で開催され、筑波大はホーム最終戦で2000人超の観客を前に、見事に優勝を飾った。「1グラ(筑波大学第一サッカー場)に多くの人が応援に来てくれて、支えてもらっていると感じた。プロへ行ってもファンやサポーターへの思いを大切にしながらやっていきたい」と高山選手。 一方、最も悔しい思いをしたのは12月21日、流通経済大学龍ケ崎フィールドで行われたインカレ準決勝、明治大に0-1で敗れた試合。「紙一重の差だった。あれほど勝ちたい、負けて悔しい試合はない。この悔しさをプロで晴らしたい」と瀬良選手。 プロの世界では、これまで以上に結果が求められる。山内選手は「プロは大学と違って結果が全て。勝つことでチームはもちろん自分自身の価値も高めていきたい」、林田選手は「選手の価値は結果でしか示せない。常に結果を目指して、必要なことを考えながら成長していきたい」と、来季を見据える。(池田充雄)

クリスマス間近 金管ハーモニーを 筑波大生らが企画・運営

筑波大学の学生を中心に企画・運営されているクラシックコンサート「つくばリサイタルシリーズ」の第14回目となるコンサートが12月16日、つくば市竹園、つくばカピオ ホールで開催される。読売日本交響楽団(東京都千代田区神田錦町)の金管セクションが公演する。題名は「読響プラス―クリスマスに贈る金管のハーモニー」だ。 同楽団の金管セクションがつくばリサイタルシリーズに出演するのは、2019年1月14日に行われた第7回コンサートに引き続き二度目となる。出演者は、桒田晃(トロンボーン)、辻本憲一(トランペット)、次田心平(チューバ)、日橋辰朗(ホルン)、尹千浩(ユン・チョノ=トランペット)だ。 つくばリサイタルシリーズ実行委員の加藤千尋さん(同大障害科学類3年)は「金管五重奏のすばらしさがまずある。その上で、見ているお客様との距離の近さ、一緒に盛り上がる形のコンサートという点が特徴的だと思う。コロナ禍の制限が緩和している中で、演奏会ならではの魅力を感じられるコンサートになるはず」と話す。 新たに留学生や外国籍住民にも広報 2012年に始まったつくばリサイタルシリーズだが、10年以上が経ち、組織体制も充実してきている。筑波大学の学生を中心に運営がなされており、クラウドファンディングでの資金の調達や会場の運営なども学生によって行われている。現在、実行委員会のメンバーとして活動している人数はおよそ30人で、中心的に活動するメンバーも多くなってきているという。 今回、筑波大学に通う外国人留学生や外国籍の住民などに向けた広報を新たに始めた。「これまでも留学生などが来場することは多かった。しかし、日本語のみでの告知や案内だったので、そうした方にコンサートの情報が届きやすい環境はつくれていなかったと思う。委員会の体制が充実してきたこともあり、大学の留学生が多く住む宿舎などに英語のポスターを貼ったり英語での告知文を作成したりしている」と加藤さん。 つくばリサイタルシリーズの趣旨は、いままでクラシックになじみの薄かった人が気軽にクラシック音楽を楽しむ環境をつくることであり、そのための様々な工夫をこれからも行っていきたいと意気込む。 12月の開催となる第14回のテーマは「クリスマス」だ。「少し早いが、クリスマスのムードを楽しんでもらえたらうれしい」と加藤さんは語った。企画の創設者である同大の江藤光紀教授(比較文化学類)による新曲も披露される予定だ。(山口和紀) ◆第14回コンサートは12月16日(土)午後1時30分開場、午後2時開演。チケットは一般1500円(税込み)、大学生無料。事前申込必要。つくばリサイタルシリーズの情報は公式ブログで発信されている。現在、開催に向けたクラウドファンディングも実施中だ。

放射性同位元素含む分析機器を誤廃棄 筑波大

筑波大学(つくば市天王台)は1日、放射性同位元素のニッケル63を含む分析機器、ガスクロマトグラフの検出器1台を、適正な手続きをとらずに誤って廃棄してしまったと発表した。 同大研究推進部研究企画課によると、誤廃棄した機器は縦、横、高さいずれも30センチほどの大きさで、大学キャンパス内の生物農林学系棟D棟の101実験室にあった。同棟の改修工事に伴い9月4~8日、長期間使用していない他の大量の実験機器と一緒に、同実験室の使用責任者であり同機器の使用責任者である教員が一斉廃棄した。 その後10月30日、同大の放射線管理委員会から管理状況の確認があり、翌31日、誤って廃棄してしまったこと、すでに溶融処理されてしまい回収が見込めないことが分かり、同大は同日、国の原子力規制委員会と県警に誤廃棄を報告した。 10月26日に同大生命環境エリア支援室に提出された産業廃棄物管理票(マニフェスト)によると、誤廃棄した機器は、9月13~16日にかけて産廃処理業者に廃棄物として回収され、10月7日には、破砕処理を行った上で、鉄くずはリサイクル業者が溶融処理するなど最終処分を終えていた。処分に際しては中間処分場で処理業者が放射線チェックを実施したが、放射線は検出されなかったという。 機器内のニッケル63は、ステンレスで覆われ遮へいされており、取り外しができない構造になっているという。同大は、処理過程の圧縮や破砕によって壊れる可能性はなく、人体や環境への影響はないと考えられるとしている。 誤廃棄した機器は2005年1月に同大が取得した。廃棄されるまで使用できる状態だったが、機器を使用していた教員が退職した後は、長期間使用されてない状態だったという。 本来は、機器の製造メーカーや放射性物質を扱う専門業者に処理を依頼すべきだった。誤廃棄の原因について同大は、廃棄にあたり確認が不十分だったこと、機器を使用していた教員との引き継ぎが不十分で、退職後は機器が長期間使われていなかったのに速やかな処分ができていなかったことが原因だとしている。 再発防止策として、放射性同位元素を含む機器について全学的に再点検を実施するほか、管理責任者に対し無断廃棄の禁止を徹底すると共に、その内容を記載したシールを目立つところに貼るなどとしている。 同大は「適正な手続きをとらずに誤って廃棄するといった事態を二度と起こさないよう、保管、管理に関して注意を要する機器のリスト化、学内における管理ルールの再徹底、教職員への再教育など、再発防止と適切な危機管理に努めて参ります」などしている。

永田氏再任へ 筑波大 学長選考行わず

筑波大学(つくば市天王台)は24日、任期満了に伴う次期学長予定者に、現学長の永田恭介氏(70)が決定したと発表した。学長選考は行わず、学長選考・監察会議(議長・河田悌一元関西大学学長、学内・学外委員各10人で構成)の再任審査により決定した。再任後の任期は来年4月1日から2027年3月31日までの3年間。文科相が任命する。 同大の学長選考要項によると、学長の任期が満了する時は、学長候補者の中から新たな学長の選考を行うことになっている。一方、再任される場合の任期が新たな中期計画期間にまたがらず、現学長に再任の意思がある場合は、学長選考は行わず、学長選考・監察会議が再任の審査をすることになっている。 今回、現学長が再任された場合の任期は第4期中期計画期間(22年4月~28年3月の6年間)内にあり次の第5期計画にまたがらないこと、永田氏から再任の意思が示されたことから、新たな学長の選考は実施しなかったという。 再任審査にあたって同会議は5月24日と9月20日、手順の確認と検討を実施、さらに永田氏から提出があった業績調書と所信表明書に基づいて10月24日、永田氏と面談した。 審査の結果、永田氏は人格が高潔で学識に優れ、大学における教育研究活動を適切かつ効果的に運営する能力を有していること、情熱と実行力を有し、ビジョンを明示しながら中期計画を策定・推進し、大学の卓越性を高めるーとして次期学長予定者に決定した。 永田学長は東京大学薬学部薬学科卒、国立遺伝学研究所助手、東京工業大学生命理工学部助教授、筑波大学基礎医学系教授などを経て、2013年4月から同大学長を務める。 前回、2020年の学長選考では、永田氏の再任をめぐって、最長6年だった学長任期の上限が撤廃されたこと、教職員の意見聴取で対立候補の得票数の方が多かったことなどから、同大の教員有志らでつくる「筑波大学の学長選考を考える会」(共同代表・竹谷悦子、吉原ゆかり教授)が選考プロセスの正当性を問う声を挙げている(20年10月21日付、23年3月27日付)。

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