【相澤冬樹】筑波山地域ジオパークの「再認定」に向けた作業が、険しい難所に差し掛かっている。直面する課題への取り組みについて、自己評価で達成度を計ったところ、総合評価で40%と合格ラインには程遠かった。特に地質保全については保全計画もなくゼロ評価、6市にまたがる運営体制の構築・強化など山積する課題を前に、勝負の年となる新年度を迎えようとしている。
保全と運営面に大きな課題
厳しい現状認識は、つくば市、土浦市、かすみがうら市、石岡市、笠間市、桜川市の6市からなる筑波山地域ジオパーク推進協議会(会長・五十嵐立青つくば市長)が17日開いた臨時総会で報告された。
日本ジオパークは全国に44地域が認定されているが、継続には4年に1度、日本ジオパーク委員会(JGC)の審査を受けなければならない。筑波山地域の審査は20年10~11月に予定されており、5月~9月にかけ審査員による現地審査、現況報告書の作成、新たなアクションプラン(2021~25年)の策定などが予定されている。
同地域は認定を受けた16年の段階で、JGCから13の課題が示されていて、うち9課題は概ね1~2年以内に解決すべき取り組みとされた。地質や景観の見どころとなるジオサイトのデータベース、解説板、ガイドブックの整備や地域振興部会、教育・学術部会の具体的活動での進展などが指摘された。
これらの対応を怠ると、再認定は条件付きとなり、2年後に再審査となる。条件付き再認定はいわゆる「イエローカード」扱い、再審査をパスできないと「レッドカード」となり、認定が取り消される。活動への理解や認識の低さを指摘され、17年に茨城県北ジオパークが取り消しとなった前例がある。
19年度は、全国で再審査の2地域を含む9地域が再認定審査を受け、初審査の7地域中、4地域にイエローカードが出された。この結果に、事務局は緊張感を募らせている。審査時にも提出する自己評価表で課題への対応を洗い出したところ、達成度を示す総合評価は40%にとどまった。再認定審査をパスした地域では66%に達していたことから、いっそうの取り組みが望まれた。
特にジオサイトの地質保全は手つかず状態、地域内にジオサイトは26あるが、個別診断の「カルテ」の作成は行われたものの、データベース化には至っていない。求められた保全計画が策定されていないことから、アクションプランのなかに位置づける考えでいる。
また、運営体制の強化も急がれる。現状、専任職員を置くのはつくば市とかすみがうら市だけで、専門知識を持つ人材を欠いている。つくば市で任期付き専門員の採用計画を進めているが、6市による体制構築のため協議会での専門員雇用も検討課題にあげた。これらは5月に予定する定例総会で、事業計画として決定する。
五十嵐市長は「課題は解決されなくても達成度を示すのが重要。多地域にまたがるジオパークは特に一体的取り組みがポイントになる。広域連携によってイエローカードでなくグリーンカードを目指して進んでいきたい」と協調をアピールした。