月曜日, 11月 10, 2025
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常陸牛に続きヒラメも 給食に県産メニュー

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写真はイメージ(土浦市の学校給食試食メニュー)

【山崎実】4日開会の県議会第3回定例会には、コロナ禍の影響で需要が落ち込んでいる茨城県産水産物の消費拡大を目的とする学校給食提供緊急対策事業の予算が提案される。

常陸牛に続いて、県内の全小中学校の学校給食に、ヒラメ、イワシ、シラス、サバ類など、茨城を代表する水産物のメニューを月1回程度、提供する試みだ。

補助率は児童生徒1人1回当たり1000円で、漁業者や養殖業者、水産加工業者などの経営安定に寄与する狙いもある。予算額は1億1000万円。

従来は、魚種をタイやブリなど養殖魚に限って国の補助事業で行われてきた。その後、国の補助がヒラメ、イワシ等へも緩和されたことで、全県規模で学校給食に提供する。

需要や出荷の低迷が続く霞ケ浦の養殖ゴイも給食の対象魚種に加えており、現在、各小中学校に、希望魚種の調査を実施している。

県漁政課は「各学校に食材を提供することで、児童生徒の県産品に対する理解が深まれば」と話している。11月ごろを目途にスタートさせたい意向だ。

《くずかごの唄》68 関東大震災 PTSDになった母

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イラストは筆者

【コラム・奥井登美子】私は母から9月1日の関東大震災の時の話を耳にタコができるほど聞かされて育った。母は20歳、妊娠8カ月だった。昼御飯を食べている時、今まで経験したことのないほど揺れ、老齢で目の見えなくなった姑(しゅうとめ)の手を引いて、父と3人で京橋の新富町から皇居方面に避難することにしたという。

ご飯は後で食べるつもりで持って出た。あいにくお昼時とあって、どこの家でもかまどに火を焚いていたからたまらない。木造住宅の崩壊した家から煙が出て、あれよあれよという間に、点々と火が広がってしまったという。

15分間くらい歩く間に、火事はますますひどくなって、銀座の通りを横切る時、風が熱風となって左右から吹き付けてくるので、とても怖かったという。

やっとの思いで皇居前広場に着いて、さて、のどが渇いて水が飲みたいと思ったが水がない。井戸水は朝鮮の人が毒を投入したので飲んではいけないという「おふれ」まがいの「噂」が広がって、水が飲めなかったのがとても苦しかったという。

3日間そこで野宿し、父が歩いて探し回って、友達の亀山さんの目黒の家が焼けないで残っていたので、その家にしばらくお世話になり、芝公園の中に臨時の産院が出来たので、そこで兄を出産した。可哀そうに、兄の戸籍謄本には、「出生地 芝公園内2号地」と書かれていた。

怖かった震災時の話を何回も

震災で京橋区の98%が焼失。焼け出された人たちは、当時は郊外の、自然の豊かな阿佐ヶ谷や荻窪に移り住んだ。

父は子供が大好きで、慶應の学生時代から「藤友会」という、今でいう子供文庫みたいな塾を造って、近所の子供たちに、勉強や水泳を教えていたという。父は早く次の子供が欲しかったらしいが、20歳で震災避難と出産を体験した母が、今でいえばPTSD(心的外傷後ストレス障害)みたいな精神状態で、不安定で、なかなか子供が出来なかったという。兄の出産から10年たって、やっと私が生まれた。

私がもの心ついた時、母はまるで、蚕(かいこ)が糸を吐き出すように、私をつかまえては、怖かった震災の時の話。何が不安だったか、同じ話を何回もしていた。今思えば、新しく生まれてきた娘に話をすることでストレスを軽減していたのかも知れない。

私は、震災と戦争のつかの間の年月、荻窪の原っぱでのびのびと、楽しい幼年時代をすごして育った。(随筆家、薬剤師)

ホテル・旅館を要配慮者の避難所に つくば市が協定

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協定を締結した五十嵐つくば市長と高橋支部長(左)

【鈴木宏子】災害時に、ホテルや旅館を避難所として活用しようと、つくば市は2日、県ホテル旅館生活衛生同業組合つくば支部(高橋栄支部長、市内29施設加盟)と災害時避難所提供協定を締結した。高齢者や障害者、妊婦などの要配慮者や、体調が悪い人、共同生活が困難な人などに優先して利用してもらう。

近年、災害が多発していることに加え、コロナ禍で避難所の3密を防ぐことが求められ、避難所を数多く確保しなければならないこと、本来、要配慮者が避難する民間の福祉施設など福祉避難所はコロナ禍で受け入れが難しくなることが想定されることなどから、市内のホテルや旅館で、宿泊や食事、入浴などを提供してもらえるようにする。

ホテルなどへの避難は、地域の小中学校や交流センターなど避難所に避難してきた住民の中から、市職員が、特段の配慮が必要な人を、空き室があるホテルなどに割り振る。自力でホテルなどに行けない避難者は、市が送迎する。

避難所となったホテルや旅館には市職員を派遣し、避難者の健康状態を確認などする。

滞在期間は、災害発生直後の短期間のほか、家屋が壊れて自宅に戻れないケースなど長期間の利用も想定している。宿泊費は食事代を含め1人1泊上限7000円程度を目安とし、費用は市が負担する。

同協定締結は水戸、ひたちなか市についで県内3市目。同組合に加盟する市内29カ所のホテルや旅館が協力するが、実際に何人程度が利用するかは未定という。

五十嵐立青市長は「3密を回避するためには公共施設だけでは限界がある。市民の安心にとっても大きい」と話し、同組合つくば支部の高橋支部長は「組合として、つくば市や住民のために協力させていただきたい」と話した。

市危機管理室によると、避難所で3密を避ける対策をとった場合、市内に112カ所ある避難所の定員は、従来の約1万5000人から6割減の約6000人程度になってしまうことから、今後さらに増やすことを検討していくとしている。

登録義務条例とセットで事業者の感染防止対策を支援 県

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茨城県庁(イラストは「いばらきアマビエちゃん」)

【山崎実】茨城県議会第3回定例会が4日開会する。県は、県独自の新型コロナウイルス感染者接触通知システム「いばらきアマビエちゃん」の登録事業者を支援する経費など、感染拡大防止を中心に、総額195億5200万円の一般会計補正予算案を提案する。

県議会に同時提案する予定の「県感染防止と経済活動の両立を図る条例」案とセットで、事業者の対策を支援する。同条例は、4月の感染拡大の際、県が休業要請や時短営業要請をした飲食店やホテル、ショッピングモール、美容院などに「アマビエちゃん」の登録を義務付ける。さらに、県民に県が行うPCR検査などへの協力を義務化したり、感染者に対する不当な差別的取り扱いを禁止することを定めている。

補正予算案の事業者への感染拡大防止への対応では、「アマビエちゃん」登録事業者に、感染防止対策に要する経費の一部を助成する。助成額は1事業者当たり定額3万円、複数店舗所有者の場合は6万円となる。県内の条例登録義務事業者約2万5000事業者を対象とする。8月17日時点のアマビエちゃん登録事業者は1万6260件という。

この事業では、登録店舗での利用登録者向けプレゼントキャンペーンも実施する。毎月抽選で5000円相当の県産品を、1カ月当たり3500人にプレゼントする。6カ月間実施する予定で、計約2万1000人にプレゼントする。予算額は10億4700万円。

このほか、介護・障害福祉施設などの感染拡大防止事業として、マスクなど衛生用品等の購入費用を支援したり、濃厚接触者が発生した施設がサービスを継続するための経費支援などに57億300万円を計上する。

保育施設などの感染拡大防止では、放課後児童クラブなどに補助を行う市町村に対する補助や、幼保連携型認定こども園や認可外保育施設等の感染拡大防止対策に補助を行う市町村への補助などに9億7400万円を盛り込む。

学校サポーターを配置する事業には、新たに2億2100万円の予算を措置する。学校サポーターは小中学校などに配置し、円滑に授業を進めるため、児童生徒の健康管理、保護者への連絡業務、構内の消毒作業を行う。配置人数は各学級1人(大規模校は2人)で、教員免許は必要ない。時給は1000円(通勤相当分は別途支給)で来年3月までの配置を予定している。

県議会第3回定例会の会期は4日から10月1日まで28日間。

《ことばのおはなし》25 私のおはなし⑭

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【コラム・山口絹記】「手術、終わったよ」。自分のことばで伝えるというのが、今の私には大切なことだ。それは、とりあえず元気だ、という証拠であり、同時にことばを失っていない、という証拠になるからだ。

自分が元気に生きているということを、一対一で伝えなければいけない人というのは実はそう多くないのだな。手術前に作った連絡リストを眺めながら、そんなことを考えた。

術後のリハビリでは―と言っても、後遺症がほとんどないため、お話するだけなのだが―ずっとお世話になっていた言語聴覚士の方が、失語について学ぶためのおすすめ書籍を教えてくれながら「山口さんのリハビリをしないで済んで、本当に良かったです」と言った。術前は話せた人が術後に話せなくなってしまうことは、当然だが、普通にあることだそうだ。

担当医の先生に抜糸をしてもらったときには、手術の難易度を定量的に教えてほしいと頼んでみた。5段階のグレードのうち、私の状態はグレード2で、グレード3になると手術するか迷う状態。グレード4以上になると手術は危険なため、基本的に放射線治療などになるらしい。

「そういうのって、普通術前に聞きませんかね?」。先生は苦笑しながら、「山口さん、割と無理する人だから、やっぱり3針縫っておきましょう。一応50針の傷ですから、かきむしったりしないでくださいよ。はがれますからね」と、もう一度頭を縫われた。

一度退院してからも、手術の影響で軽い硬膜外出血を起こしたり、短期間に2度インフルエンザで倒れたりといろいろあったものの、桜が咲くころには体調も落ち着いた。

「パパ、だいぶしゃべれるようになったね」

桜吹雪の中を娘に手を引かれて走る。空を舞う花びらと、大きなその幹に私は目を奪われるのだけど、娘はそんなもの見てはいない。素晴らしいものを見つけたのだろう、何かを指差しながら、ただ全力で走る。私には何を指しているのかわからない。

一度失ったことばは取り戻したが、時とともに失ってしまった小さいころの記憶が戻ることはあまりない。失って、取り戻すことのできないものの見方があるとしたら、その視点で、見方で、見たものも失っているのかもしれない。だとしたら、私の中にはどれだけのものが残っているのだろうか。

「何かいいもの、見つけたの?」。ちょっと無粋だなと思いながら娘にたずねてみる。娘は私の顔をじっと見つめてしばらく何かを考えていたようだが、説明することを諦めたのだろう。すべり台へ走っていってしまった。

抱っこした娘の頭にくっついた桜の花びらを払い落としながら、家路につく。

「まだ遊びたい」「帰らない」とジタバタする娘を「お昼ごはんの時間です」とたしなめながら、いつの間にか、娘もずいぶんとことばを話せるようになったものだなと感慨に浸る。

すると、娘がなぜか、内緒話をするように耳元に口を寄せて、「パパ、だいぶしゃべれるようになったね」とささやいた。私は一瞬呆気にとられ、大笑いしながら言った。 「おかげさまでね」-おしまい-(言語研究者)

「土浦病院と小川芋銭」 市立博物館で初公開の作品展

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作品に見入る入館者=土浦市立博物館

【伊藤悦子】土浦で開業して100余年、2018年に閉院した産科病院とゆかりの画家を取り上げるテーマ展「土浦病院と小川芋銭(おがわ・うせん)展」が1日、土浦市立博物館で始まった。10月11日まで。

土浦病院に残された芋銭の作品は今回初公開になる。作品のほかに、土浦病院新築工事の棟札など貴重な資料も合わせて30点展示されている。

土浦病院は、1914(大正3)年石島ゑいが内西町(現在の土浦市中央1丁目)に開業した産婦人科を専門にした病院。ゑいは茨城県初の女性医師だ。石島家は3代にわたって地域医療を支えたが、2018年閉院した。

小川芋銭は、1868(慶応4)年江戸赤坂で牛久藩士の家に生まれた画家。挿絵画家として名声を高め、のちに日本画に取り組んだ。また俳人としても活躍した。

交流のきっかけは人とのつながり

ゑいの夫、績(いさお)が芋銭と交流があったことから、土浦病院には芋銭の作品が保管されていた。芋銭は病院の患者というわけではなく、何が交流のきっかけとなったかなど分かっていないことも多い。

同館学芸員の野田礼子さんは「芋銭は全国に応援してくれる人が多く、芋銭を介して人と人がつながっていった。その輪の中に績、ゑいもいたのではと考えられる」と見ている。「今の時点で分かることは限られているが、展示をすることで芋銭と績、ゑいなど人のつながりが新たに分かるのでは」という思いから企画した。

病院の閉院に際し、芋銭の作品の一部は市に寄贈されたが、ほかに個人所蔵で今まで紹介されていない作品もあった。これらをまとめ博物館で紹介する。野田さんは「石島家の寝室や客間に飾ってあったものは初公開だが、病院のエレベーターホールや玄関にずっと飾られていた作品も展示しているので、入院や通院したことがある方は見たことがあると思うかもしれない。そういったものを一堂に展示するのは初めて」という。

会期中は、小川芋銭研究者の北畠健による記念講演「土浦と芋銭」(9月20日)や市立博物館学芸員による講座「土浦病院と小川芋銭―石島家に残る作品の整理」(10月10日)などの行事が予定されている。

◆「土浦病院と小川芋銭」10月11日まで。開館時間は午前9時から午後4時30分。入館料は一般105円、小中高校生50円(税込み)。休館日は月曜と9月23日。問い合わせ電話029-824-2928(同館)

【参考記事】《霞月楼コレクション》3 小川芋銭 農村と水辺の風物を愛した文人画家

事業ごみを家庭ごみに不正積み替え つくばの収集業者

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つくば市のごみ焼却施設「サステナスクエア」に入るごみ収集車=つくば市水守(本文と関係ありません)

つくば市内のごみ収集業者が、収集・処理料が有料の事業系ごみの一部を、処理料が無料の家庭ごみに不正に積み替えて、市のごみ焼却施設に搬出していたことが分かった。市は調査を実施し、被害額が確定次第、警察に告訴する方針だ。

今年3月、元従業員から市に内部告発があり、不正が分かった。一方「NHKから国民を守る党」が8月下旬、不正積み替えを内部告発動画で配信し、市に抗議などが寄せられている。

市環境衛生課によると、この業者は、飲食店や事務所などから出る事業系ごみを収集・運搬する許可を市から受けているほか、市の委託を受け、谷田部地区の一部で家庭ごみを収集運搬している。

事業系ごみは、事業所がそれぞれ料金を払って許可業者に収集してもらい、業者は10キロ190円の処理料を払って市のごみ焼却施設に搬出する。ところがこの業者は、事業所から収集運搬料を受け取りながら、事業系ごみの一部を、処理料が無料の家庭ごみ収集車に不正に積み替えて、市に処理料を払わず、ごみ焼却施設に搬出していた。

市の調べに対しごみ収集業者は、数年前から事業系ごみの一部を家庭ごみに積み替えていたと不正を認めているという。実際にどれくらいの量を積み替え、どれくらいの利益を不正に得ていたかは、現在、市が調査している。

市は3月以降、警察と相談しながらこの業者を複数回立ち入り調査した。さらに業者がごみを収集している市内外の事業者約70社に聞き取り調査して、不正に積み替えたごみの量や市の被害額を調べている。これまでに約60社の聞き取りを終了したという。

市は、なるべく早く、警察に告訴するとしているほか、事業系ごみの収集許可と家庭ごみの収集委託を取り消すことも検討している。

《雑記録》15 安倍長期政権 ついに限界辞任

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【コラム・瀧田薫】8月28日、安倍晋三首相が辞任の意向を表明した。第2次内閣発足(2012年12月26日)以降、首相在任日数は2800日を超えており、難病を抱えながら激務をこなしてきた首相の自己管理能力には敬服するが、それも限界にきたということだろう。自民党総裁の任期はまだ残り1年あるが、政治空白をつくるわけにはいかない。後任選びを急がねばなるまい。

辞任表明を受け、「突然のことで驚いている」とコメントする有力議員がほとんどだが、後釜首相候補者は活発に動きだしているし、新聞紙上でも「安倍長期政権の総括」が始まっている。

たとえば、政治学者・細谷雄一氏(8月25日付朝日新聞)は、「安倍首相の思想信条(戦後レジーム=戦後体制からの脱却)は、多くの国民の意識とはかけ離れていた。それが、第1次政権が短命に終った理由だ」とし、さらに「第2次安倍政権は先の失敗を教訓として、アベノミクス(実利の経済政策)を前面に押し出すと同時に集団的自衛権行使の一部容認に代表される保守重視のイメージ戦略を組み合わせた、この絶妙なバランス感覚が安倍長期政権を支えた」と指摘している。

安倍首相からすれば、レームダック(政治的影響力を失い、政権末期を指摘される首相や大統領)扱いをされることは不愉快なことだろう。しかし、もっと不愉快なのは「戦後体制からの脱却」が事実上失敗に終わったと指摘されたことだろう。

教育基本法の改正や集団的自衛権行使の一部容認など、一定の成果はあったとする与党内の見方もあるが、「この国を安倍首相の考える本道に戻す」という究極の目標からすれば、満足できる成果ではない。結局、安倍首相は、志半ばにして、失意のうちに第一線を退くこととなった。

トランプ依存外交は幕引き

さて、後継政権の政策課題はどうなるだろうか。イデオロギーについては「戦後体制からの脱却」という看板が継承される可能性は低い。しかし、世界情勢次第では、ナショナリズムへの対応が必要になるかも知れない。

安全保障政策については、安倍政権の敷いた路線が当面継承されるだろう。経済面では、アベノミクスの負の遺産(経済格差の拡大、財政規律の破綻と累積債務、地方の疲弊など)を抱えながら、人口減少と低成長、そしてコロナ禍という苦い現実に向き合わねばならない。

残念ながら、日本の技術競争力は、デジタル化に代表される構造改革についていけず、落ち込む一方である。日本の産業を支えてきた中小企業を支援し、これをベンチャー化するなど、新たな産業政策も必要だ。行政と国会の改革も待ったなしである。いわゆる「政治主導(安倍一強)」を見直すことになろう。

最後に外交面であるが、米大統領選挙の結果一つ、それで国際環境は激変する。これからは、米中対立の狭間で、日本外交の自主性とバランス感覚が問われるだろう。トランプ依存でやっていけた時代は、コロナウイルスの登場で潮目が変わり、安倍首相の退陣とともに幕引きとなりそうだ。(茨城キリスト教大学名誉教授)

【土浦市長会見】魅力をPR テレワーク移住体験ツアー

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会見する安藤真理子市長=土浦市庁

【伊藤悦子】土浦市は、新型コロナウイルス感染症緊急経済対策第6弾を実施する。マスク・消毒液の確保、妊婦子育て世帯への支援のほか、公民館のトイレ改修、移住定住促進事業など「新しい生活様式」を踏まえた地域経済の活性化事業に取り組む。安藤真理子市長が31日の定例会見で発表した。事業費は総額約7900万円。1日開会の市議会定例会に、一般会計補正予算を提出する。

「泊りがけ体験」で呼び込む

移住定住促進事業は、地域経済の活性化に関する事業のうち「新たな暮らしのスタイルの確立」として事業費約550万円を計上する。

新型コロナの感染拡大以降、出社をしないテレワークが定着し、これに伴い都心から郊外への移住も関心の高まりみせている。同市は、出社が必要になった場合でも電車、車ともに東京まで約1時間とアクセスに優れること、駅から歩いて行ける距離に霞ケ浦があるなど自然にも恵まれていること、レンコンをはじめ農産物の質が高いこと-など移住に適した環境であることをPRする。

テレワーク移住体験ツアーは、県外居住者で特にサイクルライフに興味のある層をターゲットに取り組む。土浦駅に直結した自転車と一緒に泊まれるホテルに数日滞在してもらい、実際にテレワークをしながら、自転車を活用した生活体験を通し、市の魅力や都心へのアクセスの良さを実感してもらうのが狙い。

実施は来年2月ごろを予定している。今年12月ごろ、家族連れなども想定し10組ほど募集する予定。

新しい生活にらみ市独自事業

「新しい生活様式」を踏まえた地域経済の活性化に関する事業では、「社会的な環境の整備」として、各地区の公民館施設のトイレ改修事業も実施する。和式トイレの水を流すときに発生する飛沫やエアロゾル感染防止のために、ふた付き洋式トイレに改修する。事業費に約3300万円を計上する。

妊婦健診など妊婦で移動する際、公共交通機関を使わずにタクシーが利用できるように助成する。事業費は約580万円。

小中学校および義務教育学校には、消毒薬や防護服など、感染防止用消耗品を追加で購入する。事業費は約490万円を計上する。

ガバメントクラウドファンディング(GCF)は、自治体がプロジェクトオーナーとなり、賛同者から寄付金を募集する仕組み。税金の控除が受けられるふるさと納税制度とクラウドファンディングを組み合わせたもので、今回は市内の高齢者施設に非接触型体温計を購入して配る。ふるさと土浦応援寄付金として歳入100万円を計上する。

会見で市長は「不確かな情報や誤った情報により、感染者その家族、感染防止に対応している人などへの偏見や差別が全国的にみられる。恐れるべきはコロナウイルスであって人ではないこと、偏見や差別をなくすためにも、市民1人ひとりが正しい知識を得て欲しい」と話があった。市のホームページ8月11日付「市民の皆様へ」からも読むことができる。

土浦市長会見映像=J:COM茨城提供

会社経営の富島純一氏が出馬表明 つくば市長選、一騎打ちに

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記者会見し立候補表明する富島純一氏=つくば研究交流センター内記者クラブ室

【鈴木宏子】任期満了に伴い10月18日告示、25日投開票で行われるつくば市長選に、自動車販売会社などを経営する「チャンプ・ホールディングス」社長で、新人の富島純一氏(37)=無所属=が31日、記者会見し立候補を表明した。同市長選には現職の五十嵐立青氏(42)=同=がすでに2期目を目指して立候補を表明しており、現職と新人の一騎打ちになりそうだ。

富島氏は「1期4年で結果が出せないのでは動きが遅い」と現職を批判した上で、「企業経営では毎年結果を出さなければ倒産してしまう。コロナ禍で新しい生活が求められている今、即断即決できるリーダーが不可欠。このままでは、目先の問題だけを解決するつくば市になってしまう」と立候補の動機を話した。

具体的には、つくば駅周辺開発や待機児童、公共交通、スタートアップ支援などの問題点を指摘し「つくば駅前開発は数年間方向性がはっきりしない。待機児童問題の解決は、やるべきことは分かっているのだからさっさとやるべき。つくバスは本数を増やしたのに利用者が減っており、やり方を抜本的に見直す必要がある」などと批判し、さらに「スタートアップ支援はパフォーマンスとしてはできているが、どこにつながるかというと、つくば市が支援して東京に出て行ってしまう。つくば駅周辺にビジネス拠点を整備し、全国の先端企業を誘致してつくばにスタートアップ企業をつくるべき」などと話した。

基本スタンスとして、①企業経営の経験を生かしスピーディーに実行し、結果を出す②科学技術に加え、文化、芸術、スポーツなど多種多様な人が集い活躍できる開かれた街を目指す③地の利のポテンシャルを生かし民間の力とアイデアを幅広く募りながら街づくりを行うーの3つを掲げるとした。

具体的な公約としてはほかに、市内6地区ごとに月1回市民の意見を聞く会を実施する、一般競争入札を適切に運用する、公式記録のとれる陸上競技場が必要という市民ニーズを踏まえ、財政負担を抑えながらコンサートにも活用できる施設整備を行う、単独で中核市移行を目指すーなどを掲げた。

富島氏は土浦市出身、市立都和中学卒。21歳のときつくば市花室で中古車販売業を起業し、現在、つくばや土浦などを中心に、自動車販売の「オートチャンプ」やレッカーロードサービスの「ITY」のほか、不動産賃貸、ソフトウエア開発、障害者就労支援会社などを幅広く経営する。

選挙戦は、つくばでのビジネス交流を通して親交を深めた実業家仲間や市民などが応援するという。

《ライズ学園日記》7 何でもできなければ…いけないのか?

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平沢官衙(かんが)遺跡=つくば市平沢

【コラム・小野村哲】教師という立場で、「できないことがあってもいい」などと言ったら、「それをできるようにするのが、お前の仕事だろう!」と、お叱りを受けるかもしれない。けれど英語教師の私には、できないことがたくさんある。まず、算数は苦手だ。「それでよく教師が務まる」と言われるかもしれないが、算数はできても英語はダメだという人も多いに違いない。

一歩職場を離れれば、できないことだらけだと言ってもいい。義母が野菜を育ててくれるおかげで、我が家の食卓には毎日取り立ての野菜が並ぶが、私自身は大根1本まともに育てられない。

私たちは今、改めて「何を目指すのか」を話し合っている。ライズ学園開校時に掲げていたのは、「1人ひとりに異なる学びを尊重し、その可能性を伸長する」ということだ。学校を休んでいたりすれば勉強は遅れる。ゆっくり遠回りをしてくる子もいるが、遠回りは無駄とは限らないし、「遅い」ということは必ずしも「できない」ということではないはずだ。

しかしこの国では、「大器晩成」などという言葉は死語となりかけている。コロナ休校の後、新聞に折り込まれていた大手塾のチラシには、「倍速コース」「ぜったいに取り戻す」と大見出しが躍っていた。マスクをした上にフェイスシールドをした講師とともに、子どもたちはどこに導かれようとしているのだろう。

学校へ行かなくてはいけないのだろうか?

しかし今となれば、「1人ひとりに異なる可能性を伸長する」などとは、大層かっこいいセリフを掲げたものだと思う。「私たちが、伸ばしてあげましょう」といった、上から目線も感じられる。そこで目指すところして「子どもたちの幸せ」をあげてみたが、スタッフからは「幸せってどういうことですか?」と、混ぜ返された。

毎日きちんと学校に行って、高校、大学と進み、就職といったレールの上を無難に進むことをいうのか? だとすると学校は、子どもたちをそのようなステレオタイプにはめるための組織なのだろうか? 幸せはそんなものではないし、これからの学校が目指すのも、そのようなものではないはずだ。

ますます高度化、複雑化する社会では、IT技術者に限っても1人で何でもできるなどと言うことはありえない。新型コロナウィルスの感染拡大で、地方での暮しを模索する人も増えてきているという。価値観は多様化している。なのに学校は、次代の変化に適応できていない。不登校児童生徒のための支援施設として「適応指導教室」というものがあったが、適応指導が必要なのは、むしろ学校の方だ。

1人で何でもできるようにする必要なんてない(大人だってできないんだから…)。学校だって、自分のプラスにならないと思えば、無理に行かなくたっていい。コロナ休校期間に料理を覚え、それをレシピにまとめた子がいる。学校以外にも、学びの機会はいくらだってある。私たちもそんな子どもたちのニーズに応えられるよう、努力を重ねたいと思っている。(つくば市教育委員)

《食とエトセトラ》6 自分のために極上のお茶を

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【コラム・吉田礼子】極上などというと高値、高ければ美味しいに決まっているという方もいらっしゃるかと思いつつ、同じ茶葉でも入れ方でこんなに違うということが今回のお話です。お茶と言えば、煎茶(せんちゃ)が思い起こされるでしょう。

新婚のころ、主人の実家で教えられたことは、お客様がいらしたときは挨拶したらまずお茶を出すこと、茶葉は切らさないようにということでした。子どものころ、母が入れたお茶をお盆に載せて平らに持ち、お茶を出したことを思い出しました。

当時、急須(きゅうす)でお茶を入れることは普通のことでした。半世紀の間に様変わりして、今のお茶の時間は、コーヒー、紅茶、中国茶、ハーブ茶など様々。日本茶に急須を使わないお宅もあるようです。ペットボトルの飲料がない家は皆無でしょう。

お茶を入れる手間、後片付けは面倒とは思いますが、美味しいお茶を出されたときの感激は忘れられません。でも、なかなか思い通りに入れることができず、濃過ぎたのではなどと自責の念にかられます。そこで、美味しいお茶を入れる方法を研究。試行錯誤の末に、お湯の温度、茶葉の量、急須や茶碗などの温め方など、やっとお客様に出せるようになったような気がします。

美味しいお茶の淹れ方

▽まず急須に入る湯量を計り、沸かしたお湯を入れる
▽急須のお湯で茶碗を温め、1人約80ccで何杯分かを確認する
▽茶碗の個数×2グラムの茶葉を急須に入れる
▽茶碗のお湯を急須に戻す
▽1分ぐらい蒸らし茶碗に入れる
▽2煎目のお湯は冷ましてから入れる

そんなお茶の入れ方を意識していたころ、久しぶりに仙台に帰り、母が入れたお茶をひと口。本当においしい。昔、母とデパートに行ったとき、茶葉の手揉(も)み実演を見たことを思い出しました。茶葉が針のように細長くピンとしている。1本いただき口に含む。お茶の香りとほろ苦さが広がる。唾液がジワーっと湧き甘く感じる…。

そんなお茶を入れられたらと思います。煎茶の温度は熱過ぎないように(茶碗の中は55~60度)に。お鮨(すし)屋さんのお茶はアツアツですが、口の中の鮨ネタの脂っこさを取ったり、殺菌のためだそうです。コロナ禍のため、家にいる時間が増えたことと思いますが、時間をかけて、美味しいお茶を入れてみてはいかがでしょう。(料理教室主宰)

つくばFCレディースが無観客でホーム開幕戦 新潟に引き分け

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【つくばFCレディース―新潟医療福祉大学女子サッカー部】後半38分、相手陣地内で競り合う、つくばFCレディースの廣田愛(中央の青色ユニホーム)=つくば市山木のセキショウチャレンジスタジアム

【崎山勝功】日本女子サッカーリーグ3部のチャレンジリーグEAST(イースト)に所属する「つくばFCレディース」のホームゲーム開幕戦(第2節)が29日、つくば市山木のセキショウチャレンジスタジアムで行われた。アウェーで勝利した第1節に続き無観客試合で第2節に臨み、新潟医療福祉大女子サッカー部に1―1で引き分けた。

コロナ禍で4カ月遅れてホーム開幕戦を迎えた。今年は、選手の半数が新入団と、若い布陣でなでしこリーグ昇格を目指す。

試合は前半、つくばがペースをつかめず、新潟優位で進み、前半25分に新潟に先制点を許した。新加入のFW大坪菜が高い位置でボールを奪うも、相手陣地での支配権維持がやや甘く、試合の流れを取り戻せないまま、前半を0-1で折り返した。

後半に気持ちを切り替えたつくばは積極的な攻撃に転じ、DF平川梨紗、新加入のMF岸川りなたちが果敢に新潟ゴールを攻めた。

後半28分にMF廣田愛のシュートが決まり、1-1と同点に追いついた。つくばはさらに巻き返しを図ったが2点目が遠く、引き分けた。

後半28分、同点に追いつきピッチ上で喜び合うつくばFCレディースの選手たち=同

試合終了後、藤井志保主将は「コミュニケーションを取りながら、後半の最後は交代した選手も含めて、アグレッシブに点を取りに行くことができた。チームとしてトレーニングを積んできた成果。(同点に追いつき)ピッチの中もベンチも盛り上がった」と試合を振り返った。

小山勇気監督は「(前半に)失点してから苦しい時間帯だったが、(相手の)守備の前から奪うというのを(練習で)ずっとやっていたので、残り時間が少なくなってからも点を取ろうという形はうまくやれた」と語った。

無観客もチームが生中継

コロナ禍の今シーズンは、選手・スタッフはPCR検査を受けて試合に臨んでいる。無観客試合が続いているが、チームがYouTubeで生中継している。一方、現時点で観客を入れての試合運営の予定は立ってないという。

無観客試合について、藤井主将は「声援が無く今までとのギャップがすごい。すごい寂しい部分があるけど、サポーターからもメッセージをいただいているので、この場にいなくても応援してくれているということは感じている」と述べた。小山監督は「(なでしこリーグ)1部、2部は有観客試合になってきているので、少しずつ日常が戻っているのかなと思う。医療従事者とかサッカーの開催にいろいろ尽力してくださっている方々に感謝したい」と、感謝の意を示した。

◆第3節は9月6日午後4時から帝人アカデミー富士グラウンド(静岡県裾野市)で、JFAアカデミー福島(福島県)との無観客試合が行われる。試合はつくばFCのYouYube公式チャンネルで生中継する。同FCのホームぺージから無料で見ることができる。

大岩田小の放課後クラブ室などを抗菌 土浦の塗装会社社長が無償で

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透明な光触媒塗料をエアブラシで塗装する小椋直樹さん=市立大岩田小学校

【崎山勝功】新型コロナウイルスの感染拡大防止が求められる中、土浦市大岩田の市立大岩田小学校(児童数387人、原井一永校長)放課後児童クラブ室や保健室など3カ所を28日、市内で塗装工事会社を経営する小椋直樹さん(41)が無償で抗菌塗装した。

抗菌・抗ウイルス塗装工事の施工証明書を手にする小椋直樹さん=同

机などに光触媒塗料を吹き付けた。同塗料は光が当たると細菌やウイルスを分解するとされ、机や椅子などを毎日何度もアルコール消毒しなくても済むとされる。

小椋さんは同小のPTA副会長でもある。「(コロナ禍で)子どもたちに窮屈な思いをさせたくない。会社としても地域に貢献したいと思った」と語る。

小椋さんの会社では今年春、つくば市内のオフィスを同塗料で試験的に塗装し、7月から本格的に同塗料を使った塗装事業を始めた。

2~3年前から、インフルエンザ予防対策として、別の抗菌塗料を使った抗菌塗装工事を実施していたが、コロナ禍で引き合いが急増。しかし従来の抗菌塗料では、塗装する箇所以外はビニールシートをかけるなど準備が大掛かりになるため、顧客側に負担が掛かっていた。今回の塗料は速乾性で、塗料が乾いたらその日のうちに部屋が使用でき、利用者の負担を軽減している。

小椋さんは「安心をアピールできれば」と話す。

「市町村にマスタープラン策定働き掛けたい」 改正バリアフリー法学習会で

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オンラインで開催されたバリアフリー法学習会の参加者

【川端舞】市民団体「茨城に障害のある人の権利条例をつくる会」(事務局・水戸市)が主催し、今年5月改正されたバリアフリー法のオンライン学習会が27日、市民向けに開催された。国内のバリアフリー制度が進んだことを歓迎する一方、県内の障害者団体からは、バリアフリーがより浸透するよう、バリアフリーに関する促進方針(マスタープラン)を策定するように市町村に働き掛けていきたいなどの意見が聞かれた。

スロープ設置方法の習熟を義務化

学習会には、県内外の障害者団体や大学関係者、県選出の参議院議員など40人が参加した。主催した同つくる会は今月5日にも、県議会と県内市町村議会の議員向けバリアフリー法学習会を開催している(8月8日付)。

27日の市民向け学習会では、改正バリアフリー法の要点や、国内のバリアフリーの現状について、障害者の全国組織であるDPI(障害者インターナショナル)日本会議事務局長の佐藤聡さんが説明した。佐藤さんは自身も車いす利用者であり、バリアフリー法改正や、東京オリンピック・パラリンピック会場のバリアフリー化にも関わった。

今年のバリアフリー法改正で、公立小中学校を改修・新設する場合はバリアフリー化が義務になった。しかし既存の学校は対象ではない。学校は避難所や投票所としても利用されるため、バリアフリーは重要だ。各自治体で学校のバリアフリー化計画を策定する必要があると佐藤さんは指摘した。

改正法ではさらに、スロープを積んでいるユニバーサルデザイン(UD)タクシーに、車いす利用者が乗車を断られる事態が全国各地で報告されていることを受け、タクシーやバスなど公共交通事業者がスロープの設置方法を習熟することも義務化された。

学習会に参加した車いす利用者からは、道端ではスロープを出せないという理由でUDタクシーに乗れなかったこともあるという意見も出た。佐藤さんは「これからも障害者側から声を上げていくことで、状況は変わっていくだろう」と語った。

障害者が動けば社会は変わる

障害者が声を上げたことで東京オリンピック会場も変わったと佐藤さんはいう。新国立競技場は当初の設計案では、障害者団体が設計に関わることはなく、8万ある観客席のうち車いす席は120しかなかった。しかし、当初設計案が白紙撤回された後は、DPI日本会議を含めた多様な障害者団体や高齢者団体が基本設計から関わり、車いす席が500設けられた。車いす席を一段高い位置に設置し、前席の観客が立ち上がっても、フィールド手前まで見えるように造られた。

佐藤さんは参加者に対し、「まだまだ社会には不便なことがあるが、障害者が動けば社会は変わる。一緒に声を上げていきましょう」と訴えた。

初公開含む収蔵品12点展示 土浦市民ギャラリーで浦田正夫日本画展

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展示風景

【池田充雄】土浦駅前の土浦市民ギャラリー(同市大和町)で9月6日まで、日本画の重鎮で土浦ゆかりの「浦田正夫日本画展」が開かれている。市の収蔵品から12点を選んで展示しており、うち3点はギャラリー初公開。いずれも大判の作品で見応えがある。

浦田正夫(1910~1997)は、日本芸術院会員や日展事務局長などを務めた。戦後の一時期、土浦周辺に疎開し地域の美術復興に力を尽くした。市では現在、日本画27点のほか自作陶器やスケッチ類など豊富な作品を所蔵しており、隔年で収蔵品展を開催している。

今展では、土浦疎開中の1950年に描かれた「蓮池」から、1985年発表の「蓮沼」まで12点の作品を、夏から秋・冬・春を経て再び夏へと四季が巡るかのように構成している。35年の隔たりがある新旧2枚の蓮の絵を見比べ、その間の画風の変遷を見比べることができる。

展示作品の一つ、浦田正夫「蓮池」(1950年、171×182cm)

「初期はシンプルな色遣いだが、年を経るごとに中間色が増え、構図も複雑になってくる。心象世界としての風景を描いているので、じっくり見てほしい。ぜひギャラリーに足を運び、1点1点時間をかけてご覧いただきたい」と、同館の米田修主任。

今展から本格再開

今年のコロナ禍では同館も一時期休館していたが、今展から本格的な再開となり美術ファンを喜ばせている。

9月1日からは旅をテーマとした洋画の収蔵品セレクション展も予定している。同26日からは中断されていた諏訪原寛幸戦国群像イラストレーション展を再開する。

◆浦田正夫日本画展は入場無料。開館時間は午前10:00~午後6:00、月曜休館(祝日除く)。問い合わせは同ギャラリー(電話029-846-2950)

◆関連記事《霞月楼コレクション》2 浦田正夫 土浦疎開を機に新たな作風開花はこちら

《宍塚の大池》68 地元小学校や市民がオニバス保全活動 

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葉を突き抜けて咲くオニバスの花(上段左)、葉の裏(同右)、葉を支える葉脈(下段左)、オニバスの閉鎖花(同中央)、 水草保存コンテナ(同右)


【コラム・及川ひろみ】オニバスは春発芽し、夏には直径2メートルもの大きな葉を水面に広げるスイレン科の一年草の水草です。葉・茎など花弁と根を除き、全体に鋭く長いトゲがあることから、オニバスと呼ばれるようになったようです。環境省レッドリスト絶滅危惧II類(VU)の絶滅の危機にある貴重な植物です。

宍塚大池は太平洋側のオニバス北限生育地で1982年、約500株が確認されました。1990年、会が行った調査では36株、その後さらに少なくなり、2000年ごろから宍塚大池ではオニバスが見られなくなりました。

オニバス減少の要因について、環境省「日本の絶滅のおそれのある野生生物」(レッドデーターブック、2002年改訂版)は、湖沼の開発、水質の汚濁土地造成を主原因に挙げています。

オニバスを育てるために会では、大池堤防の下流にオニバスの生育地として「オニバス池」を掘りました。が、そこでアメリカザリガニがオニバスを食べ尽くす現場を目撃しました。残念ながらオニバスをオニバス池で育てることを断念しています。

種を採取し1990年から栽培

オニバスは水面で咲く花とは別に、水中で自家受粉するたくさんの「閉鎖花」を付け、種を付けます。

会では1990年、宍塚大池で採取した閉鎖花の果実から約100個の種を取り、それを基に、1990年から減少が続くオニバスを種から育てる活動を始めました。

地元宍塚小学校(当時)の親御さんから、学校でも育てたいとの申し出を受け、1994年オニバスの若い苗を差し上げました。宍塚小学校では郷土の宝であるオニバスを保全するために池を掘り、成長を記録し、オニバスが絶滅危惧種になった原因を探りました。

その後何代もの先生によってこの活動が引き継がれ、この活動などによって環境省から「環境功労者賞表彰」を授与されました。宍塚小学校が閉校となった今では、土浦小学校がこの活動を引き継いでいます。

1997年、会はオニバスの里親を広く募り、市民によるオニバス保全が現在も続いています。

会は現在、180センチ×120センチ、深さ80センチの中型コンテナ数個による栽培を行っています。

オニバスだけでなく宍塚大池由来のジュンサイ、クロモ、ミクリなど希少種の水草を、20数個のコンテナを使い保全しています。

宍塚大池ではアメリカザリガニを取り除く活動を2006年から続けています。水草が育つ条件が整えばこれらの水草を大池に移植したいと考えています。大池の池底には未だオニバスの種が眠っていることも考えられますが、まずは大池の環境改善が急務です。(認定NPO法人宍塚の自然と歴史の会)

利活用方針出せず、改選後に持ち越し 旧総合運動公園用地 つくば市議会

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27日開かれた市議会調査特別委員会=つくば市役所

【鈴木宏子】住民投票で白紙撤回となったつくば市の旧総合運動公園用地(同市大穂、高エネ研南側約46ヘクタール)を民間に一括売却するという市の方針を調査検討する市議会調査特別委員会(小久保貴史委員長)が、9月議会開会日の27日開かれた。利活用方針について任期中に結論を出すことができず、改選後に持ち越しとなった。

市議は今年秋に改選となることから、9月議会が任期中の最後の定例会となり、利活用方針の提案が待たれていた。

同日開かれた調査特別委では、小久保委員長から中間報告の提案があった。内容として「新型コロナ感染拡大の影響で議会活動の自粛を余儀なくされ、論点整理後の議論の場を持つことができなかった」とし「改選後も引き続き調査検討を重ねていく」とする案が示され、全会一致で了承された。9月議会最終日の9月18日、本会議で報告される。

一方、委員からは「(前回の市長選で)市長が(元所有者のUR都市機構に)返還するという大きな公約を出して、売却に変わり、(利子も含め)28億円マイナスを出しても売るということになった。今は利活用に流れが変わってきているが、特別委を設置したときは3月までに結論を出そうということになっていた。ずるずるして、4年間何も結論が出ないまま。新しい議員で検討するというが、こういうことをやっていると市民の期待に沿えない」「改選後(の議員)に縛りをかけるのは極めて異例」などの意見が出た。

小久保委員長は取材に対し「委員会として一つの方向にまとめるまでには時間が足りなかった」と説明し、「(市の方針に対し)反対、賛成と両方の立場があった。論点整理をして、それぞれの考え方の共有まではできたが、事業を(提案)する場合の財政面の検討や実現性を含めて、(議会の意見を)まとめるには時間が足りなかった。ただし議員それぞれの考え方は見える化されたと思う」と話した。

市は陸上競技場の検討開始

旧総合運動公園用地をめぐっては昨年3月、五十嵐立青市長が一括売却方針を示し(19年3月20日付)、4月に事業提案を公募した(同4月26日付)。結果、1社から、40億円で用地を購入し、倉庫や大型商業施設、老健施設などとして利用するという提案があった(同8月19日付)。

その後、9月に住民説明会が開かれたが、一括売却に異議を唱える意見が相次ぎ(9月7日付)、市議会に調査特別委員会が設置された(9月27日付)。

特別委では多数の委員から、一部公共利用すべきだとする意見が出された。具体的には陸上競技場、屋内プール、アリーナ、避難所、防災拠点、道の駅、市営墓地、研究所などの提案が出た(同11月7日付)。この間、計4回の委員会と3回の勉強会を開いたが、意見をまとめることができなかった。

一方、市執行部は、調査特別委が設置されたのを受けて、議会の結論を踏まえる方向に転換し、昨年9月以降、売却に向けた手続きをストップさせた。しかし議会の結論が見えない中で、市は7月に陸上競技場整備基本構想策定検討会議を設置し、旧総合運動公園用地も含めて場所や規模の検討を開始している(7月31日付)。

不登校も特別支援学級もない学校を語る つくばの市民団体などがオンライン授業

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イベントを告知するチラシ

【川端舞】不登校も特別支援学級もない、障害のある子もない子も同じ教室で一緒に学ぶインクルーシブ教育を目指している小学校がある。大阪市立大空小学校だ。つくば市で障害のある人もない人も通えるバリアフリーヨガや、知的障害のある青年たちのバスケットボールチームを運営している民間会社「PSYCHE(プシュケ)」(福原美紀代表)が9月5日、大空小学校の元校長を招いてオンライン授業を開催する。

大空小学校は、同校の1年間を追ったドキュメント映画「みんなの学校」が2013年度に文化庁芸術祭大賞を受賞し注目を集める。映画は7年たった今でも全国各地で上映されている。

9月5日のオンライン授業では、映画撮影当時、大空小学校の校長だった木村泰子さんが「木村先生のみんなの授業」と題し、インクルーシブ教育を語る。

主催は「PSYCHE」のほか、障害者団体「つくば自立生活センターほにゃら」、多様な人たちが関われる空間を目指した朝市をつくば市内で開催している「まめいち」。

当初は今年3月に「みんなの学校」映画上映会、4月には木村さんをつくばに呼んで「みんなの授業」を開催する予定だったが、新型コロナウイルスの影響で中止になっていた。

大声を出すのには理由がある

PSYCHEを運営し、自身も知的障害のある20歳の長男を持つ福原美紀さん(48)は、去年東京で木村さんの講演会に参加した。重度障害のある子が保護者と参加していて、その子が講演中に大きな声を出してしまい、保護者は周りを気にして退席しようとしていた。それを見た木村さんは親子に対し、「帰らなくていいよ」と語りかけた。そして木村さんはこんな話をしたという。

「大空小学校では、新任の教員が教室で大声を出す子を静かにさせようとすると、周りの子どもたちが教員に『この子は理由があって大声を出しているんだ』と声をかける。授業中に出歩く子がいて、黒板が見えなかったら、周りの子どもたちが自分の机を移動させ、黒板が見える位置に行けばいい」。

この話を聞いて、福原さんは気持ちが楽になったという。障害児を育てていると、迷惑をかけないようにと常に気にしてしまう。大空小学校のような環境があれば、障害児の子育てが楽になると思った。

福原さんは、つくばの教育関係者や福祉関係者、障害に関わる様々な人に木村さんの話を聞いてほしいと、「みんなの授業」を企画した。

当日、午前中は現職教員や教員志望の学生、福祉施設の職員などを対象とした授業を、午後は障害に関わらず、生きづらさを抱えた人など、どんな人でも参加できる授業を開催する。午前の部は満席になったが、午後の部はまだチケットを販売している。

◆チケットは2000円。購入方法はhttp://ptix.at/OZD2qs

つくば市の保育士が新型コロナ 公立保育所休園

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つくば市役所

つくば市は26日、公立保育所の保育士が新型コロナウイルスに感染していることが分かったとして、この保育士が勤務する公立保育所を26日から9月5日まで休園にすると発表した。保育所名は公表しないという。

県の発表によると、保育士は市内に住む30代男性で、23日、37~38度台の発熱などがあった。25日にPCR検査を実施し、同日、陽性が判明した。現在、症状は軽症という。

市幼児保育課によると、男性保育士は21日金曜まで通常勤務し、週明けの24日から休んでいた。21日時点で発熱などは無かったという。

今後は、同保育所の職員など男性保育士の濃厚接触者計約60人のPCR検査を27日に実施する。

濃厚接触者である同保育所職員は、男性の発熱から14日間、自宅待機し経過観察しなければならないことから、同保育所は26日から9月5日までの11日間、休園となる。

市内の公立保育所で新型コロナウイルス感染者が発生し休園になるのは初めて。

同市は「これまで感染予防対策としてマスク着用や手洗いの徹底、施設内の清掃・消毒作業、職員と児童の健康観察を行ってきたが、なお一層、感染予防に努めてまいります」としている。

五十嵐立青市長は「市としても県やつくば保健所と連携して対策を講じます。児童、保護者の皆様にはご心配とご不便をお掛けしますが、ご理解の程よろしくお願いします」とするコメントを発表した。