土曜日, 10月 31, 2020
ホーム 土浦 《霞月楼コレクション》2 浦田正夫 土浦疎開を機に新たな作風開花

《霞月楼コレクション》2 浦田正夫 土浦疎開を機に新たな作風開花

【池田充雄】日本芸術院会員、日展事務局長などを務めた日本画の重鎮、浦田正夫は土浦とも縁が深い。1910年(明治43)熊本県山鹿市生まれ。代々画家の家系で祖父は浦田雪翁、伯父は高橋廣湖、父は浦田廣香。

題・年代不詳(1945年に描かれた類似構図の写生があるため、同年以降の制作と推察される)絹本彩色軸装 43×50.5cm 霞月楼所蔵

1915(大正4)年、父に連れられ上京。中学卒業後は画家を目指し、伝統の大和絵に近代的な造形感覚を加味した「新興大和絵」を唱えた松岡映丘に入門。並行して岡田三郎助らに洋画も学ぶ。東京美術学校日本画科に入学し、在学中の1933(昭和8)年、第14回帝展に「展望風景」で初入選。その後も帝展や文展などで受賞を重ねた。

美校卒業後は同じ映丘門下の山本丘人、杉山寧らと瑠爽画社(るそうがしゃ)を結成。後にその活動は一采社(いっさいしゃ)に引き継がれる。正夫は両団体を通じて中心的役割を果たし、仲間と共に新しい日本画の創造に取り組んでいく。

戦後の美術復興を土浦から始める

浦田正夫

1945(昭和20)年、空襲で池袋の家を焼失した浦田一家は藤沢村(現土浦市藤沢)に疎開。1948(昭和23)年には栄村(現つくば市上境)、1951(昭和26)年には土浦市内へ転居した。その間、正夫は永田春水らと県南美術協会を設立するなど地域の美術復興に貢献。栄公民館報の表紙絵も担当した。1953(昭和28)年には東京に戻るが、その後も県展審査員などの形で茨城との縁は続いた。

1951(昭和26)年から山口蓬春に師事。蓬春も古典的な大和絵から出発し、西欧近代絵画を取り入れながら新しい日本画を模索していた一人だった。

この頃から正夫の作調も大きく変化する。端緒となったのが1952(昭和27)年の「牛」だ。当時、土浦市下高津の国立霞ケ浦病院(現霞ケ浦医療センター)に入院中、窓外に見える牧場の牛を数多くデッサンした。まず生き物としての牛を研究するために描き、次に構図や色彩を考え、試行錯誤を重ねながら作品に落とし込んだという。

自然の風景を柔らかな表情で描く

「牛」1952年 絹本彩色額装 第8回日展出品 212×227cm 茨城県近代美術館所蔵

疎開先に土浦近郊を選んだのは、絵を描くのに必要な環境を考えた結果でもあった。朝昼晩と姿を変える風景があり、水辺や田園の音があり、土地の人情すら感じられる。そうした自然のすべての要素と一体となりながら、自身の琴線に触れた美を絵筆によって定着させていった。

土浦を離れてからも北関東や東北の自然に題材を求め、特に蓮のある水辺の風景は生涯の重要なモチーフになった。水彩画を思わせる柔らかな色彩とタッチを得意とし、一見すると無造作に描き上げたような印象の作品も、実は「牛」と同様に多くのデッサンや下絵の工程を経て、綿密な計算が施されている。

神龍寺障壁画に最期の思いを託す

1998(平成10)年に落成した神龍寺(土浦市文京町)本堂には、正夫と弟子で養女の浦田由佳子の手による障壁画がある。

正夫は1995(平成7)年に依頼を受けると、土浦での日々を思いながら構想を練り、写生など取材を重ねていたが、肝臓がんのため1997(平成9)年11月に87歳で他界。残された小下図を元に由佳子さんが制作を進め、完成させた。

神龍寺障壁画のうち「白梅」「太陽」 1998年

障壁画は全部で39枚。大間天井に「龍」、外陣3室には「松」「白梅・太陽」「紅梅・月」、室中には「蓮花」と杉戸の「竹」、室中脇間には「赤牡丹・白牡丹」がそれぞれ描かれている。由佳子は「小下図には部屋の大きさに対してふさわしくないものもあり、大幅に変更せざるを得なかったが、義父の思いは引き継ぐことができたと信じている」と話している。(文中敬称略)

  • 取材協力・参考資料▽茨城県近代美術館▽宝珠山神龍寺▽浦田由佳子氏▽図録「現代作家デッサンシリーズ浦田正夫展」(1987年、朝日新聞社)▽図録「茨城近代美術の精華」(1992年、茨城県近代美術館・茨城県つくば美術館)▽図録「浦田正夫の世界展」(2000年、茨城県近代美術館)▽桜村史下巻
  • シリーズ協賛 土浦ロータリークラブ 土浦中央ロータリークラブ

返事を書く

Please enter your comment!
Please enter your name here

スポンサー

LATEST

11月の週末はアクティブに 筑波山・霞ケ浦周辺トライアルツアー募集中

茨城県は11月の週末を中心に、筑波山・霞ケ浦周辺エリアでの一般向けのトライアルツアー「Mount Tsukuba(マウント・ツクバ) PLAY2020」を特別開催する。地域の魅力を堪能しながらロングライドを楽しめるサイクリングツアーをはじめ、子供向けプログラムや親子コンサートなど、さまざまなアクティビティープログラムやガイドツアーを行う。オンラインで参加予約を受け付け中。 県は18年度から3カ年計画で「筑波山・霞ケ浦広域エリア観光連携促進事業」を実施し、周辺エリアの魅力発掘と発信に関する施策に取り組んでいる。その一環として行われる企画で、昨年度に続く開催となる。 イベントのラインアップは次のとおり(以下の表示料金は税込み)。申し込みの特設サイトはこちら。 筑西市のサイクリングロードから筑波山を望む(茨城県提供) ◆筑波山&霞ケ浦1泊2日スポーツ体験ツアー 11月7日(土)〜8日(日)1泊2日筑波山登山や桜川でのカヌー体験など、親元を離れて子供たちだけで過ごす秋の大冒険。専門ガイド同行の県内小学生対象のスポーツ体験ツアー。料金は子供(小学生限定)2万9000円、定員は15人。

覆面食通が食べ歩き 県代表 おいしい10店選定へ

【山崎実】茨城県が「食」に着目した新たな観光誘客事業に乗り出す。「食」に精通したプロに覆面で食べ歩いてもらい、観光客に積極的にPRできる美味しい飲食店や名物料理を選定してもらう。 茨城は首都圏の食料供給基地といわれ、野菜類のほか、全国的に有名なメロンなどの果物、常陸牛などの肉、ヒラメ、ハマグリなどの水産物を数多く生産する。しかし観光の目的ともなる県を代表する料理は、県外の人に認知されているとは言い難い。 第1弾として、飲食店の分野で約10人の食通のプロが覆面で食べ歩き、「特においしい」「観光客にお勧めしたい」飲食店10店程度を審査し選定してもらう。 選ばれた飲食店などを県がPRすることで、来店をきっかけとした観光周遊の新たな流れを創出したい考え。覆面での食べ歩きは10月から11月にかけて実施されている。 名物料理については、第2弾として一般ウェブ投票によるコンテストや、料理ブロガーによるアイデアコンペなどが予定されている。 「食」のプロによる、おいしい飲食店と名物料理に関する問い合わせは、県観光物産課(電話029-301-3622)へ。

コミュバス導入するなら中村南・西根南地域 公共交通活性化協議会で土浦市

【相澤冬樹】コミュニティーバスなど新たな地域公共交通導入の検討を進めている土浦市は28日、市地域公共交通活性化協議会(会長・岡本直久筑波大学教授)を開き、各種調査の分析評価を元に、市域南西部の中村南・西根南地域で導入を図りたい意向を示した。協議会では拙速を危ぶむ声も出たため、同地域をメーンとしながら周辺地区の意向も拾い、具体化に向かうことで了承された。 同市では17年度策定の「地域公共交通網形成計画」をベースに、地域公共交通の導入促進を図るため、今年度から都市計画課サイドで試験運行する地区の選定作業を行ってきた。これまでに公共交通不便地域として12地区を選び、7地域に再編して設定。既存計画や各種統計、アンケート調査などからコミュニティー交通を導入すべき地域の順位付けを行った。 交通の不便さなどを調べるばかりでなく、コミュニティーバスが運行された場合に利用するか、運賃はどの程度払えるかなども質問した。結果、中村南・西根南地域が11点でトップ、右籾地区9点、乙戸南地区8点と続いた。 この順位付けから、市は中村南・西根南地域を導入候補地区として選定したい意向で、28日の協議会に諮った。11月にも地元地区長らに説明し、地域に運営協議会を設立、バス・タクシー事業者らとの調整を図って、来年10月には試験運行に漕ぎつけたいロードマップを示した。 これに対して委員からは、利用率があがらず3年で試験運行が終了した新治地区での先行事例を踏まえ「中村南・西根南地域だけでなく2位、3位の地区を含め、ぜひうちでやりたいと手をあげるところがあれば優先したい。確認してからでもいいのではないか?」と拙速を危惧する意見や「コロナ禍の状況が織り込まれた調査とはいえない。バスでなくワンボックスカーにボランティアの運転手という組み合わせでの検討ならどうだろう」と運行方法への疑問などが出された。 協議会は、右籾地区、乙戸南地区も中村南・西根南地域に近接していることから、同地域をメーンに交渉し、周辺地区の意向を拾いながら進める形で委員間の了承を取り付けた。次回協議会には候補ルートや停留所などの評価をまとめた調査報告書が提出される予定だ。

土浦・ほっとONEにホットな足湯 月例で「マルシェ」開催へ

【伊藤悦子】土浦市川口・モール505のまちなか交流ステーション「ほっとOne(ワン)」で31日、月例イベントの「マルシェ」がスタートする。ハロウィン開催の今回は、仮装で来場するともれなくプレゼントがもらえるほか、毎回ホットな「足湯」がいただけるというお楽しみ付きだ。 ほっとOneマルシェは、JA水郷つくばによる朝採り野菜の移動販売はじめ、カレーやれんこんおろしそば、ポップコーンなど飲食店の出店がある。施設前の広場では紙芝居や音楽ライブも開かれ、Vチャンネルいばらきで配信される。入場は無料。 「足をのばしてほしい」 マルシェの目玉は「足湯」。ラクスマリーナ(同市川口)から移動式足湯を毎回持ってくる。ほっとOneの菅谷博樹さんによれば「モール505ができたのは、つくばで科学万博が開催された1985(昭和60)年のこと。35年がたち、店舗もテナントも減り、訪れる人も少なくなった。やっぱり魅力がないと人は来ない」と6人のスタッフとアイデアを出し合い、イベントでは珍しい足湯はどうかと考えたそうだ。 ラクスマリーナには地下700メートルから湧き出る「霞ケ浦温泉」があり、移動式足湯の設備があることから、協力を呼び掛けると快諾してもらえたという。“入浴”の前には検温のほか、足のアルコール消毒までして感染予防を徹底するそうだ。 11月以降の日取りと内容は未定だが、月例開催と足湯企画は決まっている。「サイクリングのお客様たなど観光客や市民の方がたに足をのばしていただき、楽しく触れ合ってもらえれば」とアピールしている。