水曜日, 10月 28, 2020
ホーム 土浦 《霞月楼コレクション》3 小川芋銭 農村と水辺の風物を愛した文人画家

《霞月楼コレクション》3 小川芋銭 農村と水辺の風物を愛した文人画家

「浮れ舟」紙本淡彩 霞月楼所蔵

長期滞在の礼にと贈られた作品

【池田充雄】小川芋銭(おがわ・うせん)が霞月楼に滞在した際、主人に贈ったとされる作品「浮れ舟」を掲げる。制作年代は1934(昭和9)年春と伝わるが定かではない。かつての霞月楼は宿泊もでき、長逗留(とうりゅう)して作品に向かう文人墨客(ぶんじんぼっかく)が多くいたそうだ。

落款(らっかん)には「芋銭併題」とあり、これは画と題(賛、添え文とも)共に芋銭という意味。題の冒頭にある「花」と「月」の図柄で「花月」と読ませ、店の名である「霞月」を折り込んだ。全文は以下のように読める。

「花月美なるてふ 千金のよい おぼろ月夜や かすみが浦に 遊ぶなら あの うき草の 浮れ舟」

洋画を学び挿絵画家として出発

小川芋銭は1868(慶応4)年、江戸・赤坂溜池の牛久藩邸に生まれた。本名茂吉。父は同藩大目付職を務めたが、1871(明治4)年の廃藩置県を機に帰農し、牛久沼畔の新治県城中村(現牛久市城中町)に住んだ。

小川芋銭

芋銭は1879(明治12)年に上京すると、本多錦吉郎の画塾「彰技堂」で洋画を4年間学んだほか、独学で和漢洋の画技や教養を修めたという。その後、政治家でジャーナリストの尾崎行雄の推挙を受けて「朝野新聞」の画工となるが、1893(明治26)年、父の意思により牛久に戻り、農業に従事する。

1903(明治36)年、「読売新聞」の懸賞絵画に応募した「新年の意」が第1等当選し、元旦の紙面に掲載された。この頃から「いはらき」「平民新聞」など多くの新聞雑誌に挿絵や短文を発表し始める。1908(明治41)年には初の作品集「草汁漫画」を刊行し、挿絵画家としての名声を高めた。

院展の同人になり土浦で初執筆

1911(明治44)年、友人の小杉未醒(放庵)と2人で初の展覧会を東京と大阪で開催。1915(大正4)年には平福百穂、川端龍子らと「珊瑚会」を結成し、1917(大正6)年6月の第3回珊瑚会展に出品した「肉案」が横山大観に激賞され、日本美術院の同人に迎えられた。

「肉案」1917年 紙本墨画軸装 137×64cm 茨城県近代美術館所蔵

同年8月、芋銭は院展同人としての初作品を制作するため、画想を霞ケ浦に求めた。舟で数日かけて巡った後、神龍寺(土浦市文京町)の一室を借りて2景を描き上げ、牛久へ戻って残り3景を完成させ、「澤國五景」として9月の再興第4回日本美術院展に出品。これを斉藤隆三は「やや漫画的な臭いを残しつつ、克明な写生に基づく細心な風景」と評している。

内助の功により画家として大成

生来虚弱だった芋銭が農業を営みながら画業を続けられたのは、1896(明治29)年に結婚した妻こうの働きぶりが大きかったという。河童や獺(かわうそ)などの妖魅を多く描いたのも、神経衰弱による幻覚の現れと見る人もいる。

画号の「芋銭」は「自分の絵が芋を買うほどの銭になれば」という思いによる。また「牛里」の号で俳人としても活躍し、正岡子規らとも交流があった。雑誌「ホトトギス」では1910(明治43)年から没年まで、表紙絵や挿絵を数多く手掛けている。

芋銭は1938(昭和13)年12月、自宅前の画室「雲魚亭」で没した。この建物は現在、小川芋銭記念館として牛久市が管理し、作品や遺品、書簡などを展示している。墓は近くの稲荷山得月院にある。

「水魅戯」1923年 紙本淡彩軸装 62.4×95.2cm 茨城県近代美術館所蔵
  • 取材協力・参考資料 ▽茨城県近代美術館▽赤坂美術▽図録「小川芋銭展」(2012年、茨城県近代美術館)▽書籍「芋銭書簡拾遺」(1942年、山雅房発行)▽北畠健「小川芋銭研究」ウェブサイト▽牛久市観光協会ウェブサイト

返事を書く

Please enter your comment!
Please enter your name here

スポンサー

LATEST

コミュバス導入するなら中村南・西根南地域 公共交通活性化協議会で土浦市

【相澤冬樹】コミュニティーバスなど新たな地域公共交通導入の検討を進めている土浦市は28日、市地域公共交通活性化協議会(会長・岡本直久筑波大学教授)を開き、各種調査の分析評価を元に、市域南西部の中村南・西根南地域で公共交通の導入を図りたい意向を表明した。協議会では拙速を危ぶむ声も出たため、同地域をメーンとしながら周辺地区の意向も拾いながら、具体化に向かうことで了承された。 同市では17年度策定の「地域公共交通網形成計画」をベースに、地域公共交通の導入促進を図るため、今年度から都市計画課サイドで試験運行する地区の選定作業を行ってきた。これまでに公共交通不便地域として12地区を選び、7地域に再編して設定。既存計画や各種統計、アンケート調査などからコミュニティー交通を導入すべき地域の順位付けを行った。 交通の不便さなどを調べるばかりでなく、コミュニティーバスが運行された場合に利用するか、運賃はどの程度払えるかなども質問した。結果、中村南・西根南地域が11点でトップ、右籾地区9点、乙戸南地区8点と続いた。 この順位付けから、市は中村南・西根南地域を導入候補地区として選定したい意向で、28日の協議会に諮った。11月にも地元地区長らに説明し、地域に運営協議会を設立、バス・タクシー事業者らとの調整を図って、来年10月には試験運行に漕ぎつけたいロードマップを示した。 これに対して委員からは、利用率があがらず3年で試験運行が終了した新治地区での先行事例を踏まえ「中村南・西根南地域だけでなく2位、3位の地区を含め、ぜひうちでやりたいと手をあげるところがあれば優先したい。確認してからでもいいのではないか?」と拙速を危惧する意見や「コロナ禍の状況が織り込まれた調査とはいえない。バスでなくワンボックスカーにボランティアの運転手という組み合わせでの検討ならどうだろう」と運行方法への疑問などが出された。 協議会は、右籾地区、乙戸南地区も中村南・西根南地域に近接していることから、同地域をメーンに交渉し、周辺地区の意向を拾いながら進める形で委員間の了承を取り付けた。次回協議会には候補ルートや停留所などの評価をまとめた調査報告書が提出される予定だ。

土浦・ほっとONEにホットな足湯 月例で「マルシェ」開催へ

【伊藤悦子】土浦市川口・モール505のまちなか交流ステーション「ほっとOne(ワン)」で31日、月例イベントの「マルシェ」がスタートする。ハロウィン開催の今回は、仮装で来場するともれなくプレゼントがもらえるほか、毎回ホットな「足湯」がいただけるというお楽しみ付きだ。 ほっとOneマルシェは、JA水郷つくばによる朝採り野菜の移動販売はじめ、カレーやれんこんおろしそば、ポップコーンなど飲食店の出店がある。施設前の広場では紙芝居や音楽ライブも開かれ、Vチャンネルいばらきで配信される。入場は無料。 「足をのばしてほしい」 マルシェの目玉は「足湯」。ラクスマリーナ(同市川口)から移動式足湯を毎回持ってくる。ほっとOneの菅谷博樹さんによれば「モール505ができたのは、つくばで科学万博が開催された1985(昭和60)年のこと。35年がたち、店舗もテナントも減り、訪れる人も少なくなった。やっぱり魅力がないと人は来ない」と6人のスタッフとアイデアを出し合い、イベントでは珍しい足湯はどうかと考えたそうだ。 ラクスマリーナには地下700メートルから湧き出る「霞ケ浦温泉」があり、移動式足湯の設備があることから、協力を呼び掛けると快諾してもらえたという。“入浴”の前には検温のほか、足のアルコール消毒までして感染予防を徹底するそうだ。 11月以降の日取りと内容は未定だが、月例開催と足湯企画は決まっている。「サイクリングのお客様たなど観光客や市民の方がたに足をのばしていただき、楽しく触れ合ってもらえれば」とアピールしている。

先を見通せる霞蓮雛 土浦で11月に手作り教室

【伊藤悦子】土浦市の市内の商店や事業主の女性12人で構成する同好会、菊被綿(きくきせわた)文化を守る会(木村恵子会長)が11月18日、ハスの花托(かたく)で作る霞蓮雛(かれんびな)手作り教室を開催する。霞蓮雛は会のメンバーが6年前から作っていたが、教室を開いて作り方を指導するのは初めて。 守る会は五節句のひとつ、旧暦9月9日の「重陽の節句」にちなむ催事として、9月に土浦駅周辺の商店や銀行、公共施設など約90カ所の店頭に霞蓮雛を展示した(9月10日付既報)。すると、会期中「どこで買えますか?」「自分でも作りたい」など問い合わせがあったという。 「今、新型コロナのことで気持ちも沈みがちな人が多い。こんなときだからこそ先を見通せる縁起物のハスを使った霞蓮雛を作って家に飾り、明るい未来を思い描いて欲しい」(木村さん)と思ったのが教室開催のきっかけになった。 手作り教室では、初めての人がすぐに取りかかれるように、ハスの花托、着物部分の千代紙、顔の部分の繭、台座などがセットで用意されている。ハスの花托はすべて土浦産だ。指導は守る会のメンバーが担当する。 木村さんは「重陽の節句だけでなく、1月7日に七草がゆを食べない、面倒だからおひな様は飾らないなど五節句そのものが、最近おざなりになっている」と嘆く。「城下町・土浦だからこそ、五節句という千年の昔からある伝統文化を今こそ大切にしてほしい」と強調した。 ◆霞蓮雛手作り教室 11月18日(水)午後1時30分から、すがた美容室(土浦市桜町)で3時間程度の開催。費用は2000円。先着3人まで。問い合わせは同美容室(電話029-821-1607)

常総学院出の鈴木投手(法大)ロッテ1位指名 プロ野球ドラフト会議

【崎山勝功】プロ野球ドラフト会議が26日、東京都内で開かれ、12球団で支配下指名74人、育成49人の合計123人が指名された。千葉ロッテが1位で常総学院出身で法政大学の鈴木昭汰投手(22)=土浦市出身=を指名し交渉権を獲得するなどした。 鈴木投手は、身長175センチ、体重80キロ、左投げ左打ち。土浦四中では土浦霞ケ浦ボーイズに所属し、全国大会準優勝。常総学院高では1年春からベンチ入り、甲子園には3回出場し、2年春と3年夏は8強。法大では3年春にリーグ初勝利を挙げた。最速152キロのストレートを投げる力量を持ち、球団担当者は「1年目から先発ローテーションに入り、二ケタ勝利が期待できる」とのコメントを出した。 小沼健太投手(茨城アストロプラネッツ提供) ロッテからは育成枠2巡目でBCリーグ茨城アストロプラネッツ(茨城AP、本部ひたちなか市)の小沼健太選手(22)=千葉県出身=が育成枠2位に指名された。小沼選手は身長189センチ、体重86キロ、右投げ右打ち。 筑波大・奈良木投手は巨人育成枠9巡目で