【コラム・先﨑千尋】明るい話題が少ない中山間地の農村と農業。しかし、「ここは違う」というところを見つけた。茨城県北部で花材として欠かせない枝物栽培に楽しく取り組んでいる集団があった。その名は、常陸農協奥久慈枝物部会だ。エリアは常陸大宮市、大子町、常陸太田市、那珂市。2025年には、地域の活性化とさまざまな取り組みが評価され、「日本農業賞大賞」を受賞している。
県農協中央会常務だった石川幸太郎さんは、山間部である常陸大宮市那賀(旧緒川村)に住んでいる。26年前、「年金プラスアルファの収入を枝物で稼ごう。耕作放棄地を再生し、宝の山にしよう」と考え、20アールの畑にハナモモを植え、枝物の生産を始めた。2005年に9人の仲間と当時の茨城みどり農協で枝物部会を立ち上げ、「部会員100人、栽培面積100ヘクタール、売り上げ1億円」の目標を掲げた。
売り上げは2018年に1億円を突破した。現在、部会員は150人を超え、販売金額も2億5000万円を超えている。
石川さんは、年金生活者が自分や孫にあげる小遣いを稼ぐための仕事として思いついた。枝物は花材としての需要があり、特殊な栽培技術が要らない。荒地での栽培が可能だし、他の農産物と違い出荷時期の調整も容易で、天候にも左右されない。とにかく地域を元気にしたいと考えた。今では会員は皆「枝物栽培が楽しい」と言い、部会を辞めたいという人は1人もいない、と楽しそうに話す。現在、同部会の会長を務めている。
石川さんがハナモモを選んだのは、当時つき合いがあった青柳フラワー(ひたちなか市)の笹川茂社長の勧めがあったから。今では年に17万束(5~6本で1束)を出荷し、枝物促成施設と貯蔵施設を持つ。一元管理による高品質のハナモモは、市場から高い評価を受けている。

250種類以上の枝物を全国出荷
現在では、主力のハナモモのほかに、奥久慈桜や染柳、夏ハゼ、ヒメリョウブ、七夕笹など250種類以上の枝物を全国に出荷している。多品種少量生産だ。ハナモモは3月3日のひな祭りに向けて1月から2月に枝切りをし、促成温室で加温して花芽の膨らみ具合をそろえ、注文に応じて出荷する。作業は部会員が共同で行っているので、部会の強い結束が原動力になっている。
同部会の現況は、部会員が160人、販売額2億5000万円超、栽培面積80ヘクタール。生産者は定年帰農者の60代以上が75%を占めている。トップの生産者は5ヘクタールを栽培し、販売額は2000万円に達している。部会員1人平均で160万円を超しており、小遣い以上の収入が得られ、プラスアルファ以上になっている。
部会には若手生産者の「ヤング・ファーマーズ」という青年部組織があり、30~40代の9人が技術の研鑽(けんさん)と新しい品目や技術の情報収集などに当たっている。さらに装飾部もあり、各種イベントの会場の飾りつけを行っている。2023年の「G7茨城水戸内務・安全担当大臣会合」の会場では、季節外れの桜をメーンに飾りつけを行い、参加者は「オー、ワンダフル」と歓声の声を上げていた。
同部会は地域貢献活動も活発に行っている。「全国高校生花いけバトル」出場校への支援や、地元小学生たちへの花いけ支援、福島県浪江町への枝物苗の無償提供、植え付け支援などの復興支援、ウクライナ難民支援など。(元瓜連町長)
















































