候補者の主張をデータで検証
衆院選では、一部の候補者から外国人労働者や移民をめぐる主張がなされている。「失業者が増える一方で、外国人労働者を受け入れている」「移民が増えれば治安が悪化する」といった訴えは事実に基づくものなのか、公的統計や国際的な研究データをもとに検証する。
日本人失業者と外国人労働者の関係は
茨城6区から立候補した参政党の堀越麻紀候補は、選挙戦の第一声で「180万人の失業者が出ている。去年も7万人増えた。苦しんでいる日本人がいるのに、政府は人手不足を理由に安い外国人労働者を海外から受け入れている」と述べ、日本人の雇用支援を優先すべきだと訴えた。
では、統計は何を示しているのか。
総務省が2026年1月30日に公表した25年12月の労働力調査によると、就業者数は6842万人で、前年同月比31万人増と41カ月連続で増加した。一方、完全失業者数は166万人で、5カ月連続の増加となり、前年同月比で12万人増加している。完全失業率は2.6%で、コロナ禍以降の2023年から現在まで、2.5から2.6%の範囲で推移している。

国際比較で見ると、日本の失業率は低水準にあることがわかる。OECD(経済協力開発機構)が2025年6月に公表した報告書によれば、加盟する38カ国の24年5月の平均失業率は4.9%で、日本はこれを大きく下回っている。OECDは同報告書で「日本の労働市場は安定を維持している」と評価している。
外国人労働者はどこで働いているのか
一方、外国人労働者数は増加を続けている。厚労省の統計によると、2025年10月末時点の外国人労働者数は257万人で、前年比11.7%増となり、13年連続で過去最多を更新した。
しかし、国内の雇用環境を見ると、全体としては依然として人手不足の状況にある。2025年の平均有効求人倍率は1.22倍で、24年から0.03ポイント低下し2年連続の低下となったが、求人数が求職者数を上回る状態は続いている。19年に1.60倍だった求人倍率は、コロナ禍の20年に1.18倍まで落ち込んだが、23年には1.31倍まで回復し、24年、25年はやや低下しつつも一定水準を維持している。
業種別に見ると、人手不足はより鮮明だ。2025年11月時点のパートを含む有効求人倍率は、建設・採掘従事者で5.31倍、介護サービスで3.96倍、飲食店やホテルなどの接客・給仕職で2.51倍、製造業を含む生産工程従事者でも1.55倍となっている。

外国人労働者の就業先は、こうした分野に集中している。2025年10月末時点の「産業別外国人雇用事業所数及び外国人労働者数」によると、外国人労働者257万人のうち、製造業が約63万人(24.7%)と最も多く、飲食・宿泊業が約31万人(12.4%)、医療・福祉(介護職を含む)が約14万人(5.7%)、建設業が約20万人(8.0%)を占めている。
これらのデータから、低水準の失業率と売り手市場ともいえる雇用環境の中で、特定業種において深刻な人手不足が続いており、外国人労働者が人手の集まりにくい分野を補う役目を果たしていることが読み取れる。
堀越氏は、日本人失業者と外国人労働者の双方が増えていることに関連があるかのように主張するが、両者のあいだに直接的な因果関係を示す統計的な裏付けは確認できない。

「移民が10%を超えると治安が悪化」は事実か
堀越氏は、「ヨーロッパで移民の比率が人口の10%を超えた国では治安が悪化している」とも主張した。
EU統計局によると、2024年1月時点で、EU全体の人口に占める外国出身者の割合は13.3%に達している。加盟27カ国のうち、約51%のルクセンブルクをはじめ、ドイツ、フランス、スペイン、スウェーデン、オーストリアなど11カ国で外国出身者が人口の10%を超えており、「10%超」はEUでは珍しい状況ではない。
ドイツ・ミュンヘンに拠点を置くifo経済研究所は、外国出身者が人口の14.5%を占めるドイツについて、2018年から23年までの警察統計を分析した。その結果、「地域内の外国人比率の上昇と犯罪率との間に明確な相関関係は見られない。特に、難民についても同様」と結論づけている。スペインでも、移民流入と治安悪化を結びつける統計的裏付けは確認されておらず、主要犯罪件数は横ばいから減少傾向にある。EU全体で見ても、治安が長期的に悪化している傾向は確認されない。23年の殺人による犠牲者数は3930件で、13年と比べて約15%減少している。この間、EU全体で外国出身者は約50%増加している。

フランスの経済学者ジェローム・バレット氏は、欧州の独立系メディア「ヴォックス・ヨーロップ」の取材に対し、「移民と犯罪のあいだに直接的な因果関係は存在しない」とした上で、「若年、貧困、不安定な雇用といった社会経済的要因は犯罪リスクを高めるが、これは移民であるかどうかとは別の問題だ」と指摘する。EUも公式文書で、「移民と犯罪を単純に結びつける言説は、事実よりも印象や先入観に基づいて広がりやすい」と警鐘を鳴らしている。
検証から見えるもの
以上の統計や専門家の分析などを踏まえると、「外国人労働者が日本人の雇用を奪っている」「外国人比率が人口の10%を超えると治安が悪化する」といった主張は、正確ではないと結論づけられる。(柴田大輔)






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