火曜日, 4月 22, 2025
ホーム ブログ ページ 24

健康寿命のこと《ハチドリ暮らし》41

1
写真は筆者

【コラム・山口京子】母の介護サービスを通所から入所に切り替えて半年が過ぎました。家族が同居していれば家で暮らすこともできたのでしょうが、1人暮らしは不安が多く、私たち子どもの方から入所を勧め、納得してもらいました。

母は、施設や職員の様子、食事のこと、介護されている人との会話などを、よく話してくれます。施設に入所している人の年齢は90代が9割近くで、通所している人は80代後半の人が多いそうです。重い病気やケガで、70代で介護サービスを利用している人がいるものの、多くは90代だと。 

その話を聞きながら、疑問に感じたことがあります。それは健康寿命についてでした。平均寿命(男性81歳、女性87歳)に比べ、健康寿命は、男性が9年、女性は12年の差があります。男性なら72歳を過ぎ、女性なら75歳を過ぎたあたりから、介護のお世話になるのかしらと漠然としたイメージを持っていました。

しかし、本当に介護が必要になるのは、個人差があるので一概には言えないものの、80歳後半からではないかと…。

平均自立期間

健康寿命がどうやって割り出されているかを調べてみると、厚生労働省が行っている「国民生活基礎調査」の「あなたは現在、健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか」の問いに対して「ある」と回答すれば不健康、「ない」と回答すれば健康として扱い計算するということでした。

健康上の問題で日常生活に影響がある程度をどのように意識するかは自己申告のため、主観の要素が高いのではないかと感じました。また、健康上の問題があると意識しても、どうにか普通に生活できる期間は一定の年数あるのではないかと。

健康寿命を割り出す方法も複数あるようです。たとえば、国民健康保険中央会では、「日常生活動作が自立している期間の平均」を指標とした健康寿命を算出し、「平均自立期間」と呼んでいます。介護受給者台帳の「要介護 2以上」を「不健康」と定義して、毎年度算出していて、直近では、男性は79.7歳、女性は84歳でした。要介護2以上と認定されている人は、約350万人と言われています。 

高齢期は、普通の暮らしから、虚弱の状態へ、そして介護が必要になる道行なのかもしれません。厚生労働省のデータでは、要介護認定を受けた人が約700万人で、実際にサービスを受けている人が約590万人となっています。

今年は夏の暑さで外出を控えることが多かったのですが、体調を意識しつつ、できることをしながら、同時に老いを受け入れていければと思います。(消費生活アドバイザー)

9日控訴審始まる 鬼怒川水害訴訟 住民、国の河川管理の在り方問う

0
原告団共同代表の高橋敏明さん

2015年9月の鬼怒川水害で、常総市の住民が甚大な被害に遭ったのは国交省の河川管理に落ち度があったためだなどとして、同市住民が国を相手取って約3億5800万円の損害賠償を求めた国家賠償訴訟の控訴審が9日、東京高裁で始まる。

一審では、鬼怒川沿いで堤防の役目を果たしていた砂丘の管理方法、堤防改修の優先順位の妥当性などが争われた。2022年7月水戸地裁は、国の河川管理の落ち度を一部認め、国に対し、原告住民32人のうち9人に約3900万円の損害賠償を支払うよう命じる判決を出した(2023年7月22日付)。原告住民20人と被告の国の双方が控訴していた。

「水害は人災だった」

原告住民らによる説明会。原告と支援者ら8人が説明に立った

控訴審を前に2日、原告住民ら8人による説明会が常総市内で開かれた。原告団の共同代表を務める高橋敏明さん(70)は「水害は、国が対策を怠ってきたことによる人災」と厳しく批判した。

高橋さんは同市内で、観賞用の花や植物を扱う花き園芸会社を営んできた。2015年の水害では16棟あった温室が高さ1メートルの泥水に浸かり解体を余儀なくされ、「我が子のように丹精込めて育ててきた」花や植物10万株が流出するなど被害を受けた。高橋さんは「この地域は砂丘が自然の堤防となっていた。今回の水害の前年、ソーラー発電業者が砂丘を掘削していたのを国交省は止めず、十分な補修もしなかった。砂丘が存在していたならば被害を抑えることができた。砂丘を守れなかったのが悔しい」と声を震わせた。

水害から5カ月後に死亡した妻が災害関連死に認定された赤羽武義さん(84)は「妻の死の原因がどこにあったのかをはっきりさせたい。国には誠意ある回答を求める」と訴えた。

堤防が決壊した跡地に石碑が建つ

鬼怒川水害では、豪雨により常総市内を流れる鬼怒川の堤防決壊や越水があり、市内の3分の1が浸水した。同市の被害は、災害関連死を含め死亡15人、住宅被害は全壊53軒、半壊5120軒、床上浸水193軒、床下浸水2508軒に及んだ。

2018年8月、同市若宮戸地区と上三坂地区の住民約30人が、被害を受けたのは国の河川管理の問題だとして国を相手取って損害賠償を求める訴訟を起こした。

一審で原告住民は①若宮戸地区で自然の堤防の役目を果たしていた砂丘林が、太陽光発電パネル設置のために採掘された場所は、国が「河川区域」に指定し開発を制限すべきだった。②上三坂地区で決壊した堤防は、堤防の高さが低く他の地区に優先して改修すべきだったのに、国はそれぞれ対応を怠ったことが水害につながったなどと主張した。

水戸地裁は、若宮戸地区の砂丘が「(同地区の)治水安全度を維持する上で極めて重要であった」とし、国は砂丘を維持するために「河川区域として管理を行う必要があった」と国の責任を一部認める判決を出した。一方で、堤防が決壊した上三坂地区については、堤防の高さだけでなく、堤防幅も含めた評価を行う必要があるなどとし、「国の改修計画が格別不合理であるということはできない」などとして、住民の訴えを一部退けた。

一審判決についてで原告住民は「国の瑕疵(かし)を認めたことは歴史的」としながらも、敗訴した部分もあることから控訴していた。

一審で住民の訴えが退けられた上三坂地区の争点となっているのが、住民側が主張する、堤防改修の優先順位だ。住民側は決壊した堤防が、高さや幅が不十分な状態に置かれており、改修が後回しにされていたことが決壊につながったと主張した。

これに対し国は、堤防の高さと質を含めた機能評価として行った「スライドダウン評価」を根拠として反論した。

原告団共同代表の片岡一美さん(71)は「スライドダウン評価」では実際の治水安全度を正確に判断できないとして、判断基準の是非を問うことで「一審判決は間違いだったことを説明したい」とし、「国は国民の生命財産を守る意思がないと感じる。国には堤防の決壊を最優先で防ぐことを求める」と訴える。

控訴審の第1回口頭弁論は9日(月)午前10時半から東京高等裁判所101号法廷で開かれる。終了後、衆議院第2議員会館第2会議室で報告会が予定されている。(柴田大輔)

◆鬼怒川水害国家賠償訴訟の過去記事はこちら

いよいよ憧れの海辺暮らしか?《続・平熱日記》165

2
絵は筆者

【コラム・斉藤裕之】毎週火曜日、この海辺の街では市が立つ。空き家になった建物などを利用して、街おこしのような形で始まったものらしい。だから、市ではなくて今風のマルシェと呼ばれている。

私は元金物店だったというジャンクショップをのぞくのが好きで、その日はライトグリーンに塗られた物干し用の金具を安価で手に入れた。それから、いつもは斜め向かいの店で柏(かしわ)餅を買って帰るのだが、あまりの暑さに喉を通らないような気がしてやめた。

ここは室積(むろづみ、コラム124参照)。かつては海の交通の要所として栄え、また美しい砂浜の海水浴場や陸系砂州として、教科書にも載る象鼻が岬(ぞうびがさき)で有名な街。

さて、マルシェを後にした私は以前たまたま見つけた半島の反対側にある小さな入り江に向かった。そこには地元の人しか知らないようなきれいな浜があって、そのときは恐らく近所の方だろうと思われる親子連れが波打ち際で遊んでいた。岸壁ではこれも地元の方だろう、3人ほどの釣り人。

どうやらサヨリを釣っているようだ。さて、そこから少し先にある小さな港まで行ってみようと思って車を走らせたそのとき、「売土地」と書かれた看板が目に入った。

気になって、少し戻って車から降りてみた。生い茂った庭木と古い平屋。入り江に面していて、先ほどのビーチやその先の海水浴場まで見渡せるまさに海辺の一軒家。そのときは「へー」という感じで、数枚の写真を撮ってその家を後にした。

青い空、白い雲、遠くの島々…

その日の夕食時。義妹の手によるカワハギの煮つけをつつきながら、「そういえば今日こんなのがあってさ…」。私は思い出して、スマホの画像を弟夫妻に見せた。「いいじゃん!」。話のネタとして披露したつもりだった私にとって、弟のこの反応は意外だった。

実は、弟もかねがね同様の物件をネットで探していて(弟の場合は主に日本海側、釣りのためのシーカヤックの拠点としてだが)、その弟が立地条件や建物、環境、それから価格を見て、お買い得物件だと言うではないか。

しかし、これまで無目的に住まいを移したことはない。勉強のため、仕事のため、家族のために、住む場所は必然的に決めざるを得なかった。果たして海のそばに住みたいというわがままは通用するのだろうか。

だが、ごく近い将来、日雇い先生も辞める日が来たとき、果たして私は何をして過ごすのだろう。そう思うと、この海辺のボロ屋がユートピアに思えてくる。ここを好きなように直しながら暮らしたいと思った。

数日後、私と弟は件(くだん)の売り家の前の浜にいた。この夏新調したという弟のシーカヤックの進水式。初心者の私は、一応の説明を受けて海へと漕(こ)ぎ出した。穏やかで透き通った瀬戸内海。いつまでもギラギラしている今年の太陽も、この時ばかりは心地よく感じられた。パドルの使い方も何となく分かってきた。

テトラポットを超えて私は漕ぐのをやめて周りを眺めた。青い空、白い雲、遠くの島々、砂浜に松原。そして、すぐそこに売り家が見える。瀬戸内の海は鏡のように穏やかだが、私の心の中にはさざ波が立っていた。どうする、俺!(画家)

市長、管理職らに対し損害額の返還勧告を 生活保護行政の不適正めぐり監査請求 つくば市

45
6日開かれたつくば市監査委員会。左端(後ろ向き)は陳述した市職員

市職員が陳述し告発

生活保護行政をめぐり、つくば市で不適正な事務処理が相次いでいる問題で、市が7月と8月に公表した生活保護受給者に対する生活保護費の過払い(7月20日付)と、国に請求するのを怠った生活保護費の過支給による徴収不能(8月21日付)による市の損害額計約3842万円は違法、不当な支出だなどとして、市長や歴代管理職が同額を市に返還するよう勧告を出すことを求める監査請求が市監査委員に出された。

昨年まで生活保護業務を担当し、市議会に生活保護行政の適正化を求める請願を出した(9月3日付)市男性職員(39)が6日、請求者代理人として陳述し、不適正事務の原因は、市が発表しているような管理職の認識不足などではなく、ずさんな債権管理と、生活保護費の誤った支給が発覚するのを恐れた管理職の故意、重過失が原因だなどと告発した。監査請求は7月29日、元市議の塚本武志さんが市監査委員に出し、市職員が請求者代理人として陳述した。9月27日監査結果が出される。

返還を求めた3842万円は、生活保護受給者30人に対する生活保護費の過払い約1481万円と、国に請求するのを怠ったなど生活保護費の過支給による徴収不能分約2361万円を合計した市の損害分。

市職員の陳述によると、法定受託事務である生活保護は、法令や実施要領、運営要領などが書かれた生活保護手帳や同問答集に基づいて支給されるべきだが、3842万円については法的根拠を欠いたまま支給された。

原因について市の発表では「制度に対する解釈や認識を誤り監督職員もチェックができていなかった」「管理職の認識が不足し問題視されなかった」などとされているが、市職員は「不適正な支給をするための明確な指示があった」「(担当課内部で)複数のケースワーカーから指摘や改善の訴えもあったにもかかわらず繰り返しており、もはや故意、重過失だ」などとしている。

特に障害がある人に一定額が上乗せされる障害者加算の誤認定については、2019年に会計検査院から指摘を受け、当時、誤認定は11件だったが、今年の発表では22件に増えているとしている。

さらに、長きにわたって不適正な状況にあったにもかかわらず発覚しなかった原因について市職員は「各種監査で虚偽の報告をしてきたから」だとしている。

その上で「(残業代未払いなど)働いても給与がもらえない環境、(市職員が)暴行を受けても自分で身を守るしかない環境、法的正当性より管理職の感覚が勝つ環境、不適正を指摘すると村八分にされる環境、そういった一連の労務環境が不適正事案を生んだ」として、「今後同じ過ちを繰り返さないため(監査請求が)適正化の端緒となってほしい」などとしている。(鈴木宏子)

懸案の土浦スマートIC 国交省が設置にゴー・サイン

12
土浦スマートICの位置図(国交省のプレスリリースより引用)

土浦市は6日、常磐自動車道の桜土浦IC(インターチェンジ)と土浦北ICの間に「土浦スマートIC」(仮称)を設置する事業について、国土交通省から正式に事業許可が出たと発表した。このスマートICが設置される場所は、つくば市との境の常磐自動車道と土浦学園線が交差する土浦市宍塚エリアになる。

国交省は発表文の中で、①高速道路と「土浦駅・つくば駅」の中心市街地とのアクセスでは、渋滞箇所を回避したアクセスが可能になり、所要時間が短縮し、住民の利便性向上および事業者の生産性向上に寄与する、②高速道路から物流施設が立地するつくば市中根金田台地区や土浦市上高津への所要時間が短縮する―と、新スマートICの利便性を指摘した。

土浦スマートICは、土浦北ICの南4.2キロ、桜土浦ICの北3.7キロの場所に設置される。開通すれば、水戸方面からつくば駅への所要時間は約12分、東京方面から土浦駅への同時間は約2分、常磐道から中根金田台地区への同時間は約18分、常磐道から土浦市上高津地区への同時間は約5分、それぞれ短縮される―と、国交省は試算している。

アクセス道路整備は土浦、つくば両市が負担

土浦スマートICを設置する費用は東日本高速道路が負担するが、同ICへのアクセス道路整備などは地元の土浦市とつくば市が負担する。

設置を国と高速道路会社に働きかけてきた土浦市と、土浦市よりも利便性を享受するつくば市との間で今後、整備費用の分担について協議する。土浦市の担当者は「これから用地交渉に入ることになるが、いつ開通するか、どのくらい予算が必要かなどは、現時点では計算できない」と述べた。

土浦市の安藤真理子市長は「これまで土浦スマートICの設置に向けて、各関係機関と調査検討を進めてきたが、このたび、新規事業化が決定された。ご尽力いただいた各関係機関の皆さまに厚く御礼申し上げる」とのコメントを発表した。土浦市は今年度、土浦スマートIC調査委託費として3070万の予算を計上している。

県内ではほかに、常磐自動車道柏ICと谷和原ICの間の守谷サービスエリアに設置する守谷サービスエリアスマートIC(仮称)も同日、国交省から事業許可が出された。(岩田大志)

「土浦道中絵図」展覧にウオーキングも 7日から市立博物館

2
「土浦道中絵図」の一部。桜川から新川間の土浦城下部分(土浦市立博物館提供)。下段にNEWSつくばが地名等を付記した

土浦市立博物館(同市中央)は7日から、テーマ展「土浦道中絵図-描かれた水戸道中」を開催する。市指定文化財で土浦藩主が描いた「土浦道中絵図」が公開されるのをはじめ約40点が紹介される。10月20日までの会期中、道中絵図周辺の史跡をめぐる城下町ウオーキングなどのイベントも予定されている。

展示のメーンとなる「土浦道中絵図」は、江戸時代中期の1758年に土浦藩主、土屋篤直(土屋家4代、1732~76年)によって描かれた。千住宿(東京都足立区)から中貫宿(土浦市中貫)までの道程や周辺の様相を細かに描写した。現在の旧水戸街道の行程で約60キロあるが、絵図のサイズは長さ約18メートル、幅25センチ。蛇腹状に折りたたんで閲覧時に広げる「折り本」という形式で作られている。

道中絵図の公開は、同館の開館(1988年)時以来36年ぶりとなる。同市内の個人が所蔵していたが、今年同市が購入し市立博物館に収蔵されることになった。

江戸時代、土浦の城下町やその周辺地域は、水陸交通の要衝として繁栄した。陸路の中でも多くの往来があったのが「水戸道中」で、江戸から土浦を経て水戸へつながる三十里十四町(約119キロ)の道のり。江戸時代前期には整備されたと考えられており、記録では道中に18の宿駅があったとされる。

展覧会では、「土浦道中絵図」を通して18世紀中頃の水戸道中の姿を紹介するとともに、この道の機能や通行を支えた人々や地域の様相にも迫る。展示はほかに「常州土浦城図」(県指定文化財)、「水戸様御入国之図」(土浦市指定文化財)など博物館所蔵史料を中心に約40点の紹介となる。

博物館の西口正隆学芸員は「道中図は観光協会の印刷物などさまざまにビジュアル化されてきたが今回は現物そのもの。土浦城下町の南門から北門にかけての描写など細かなところを見てほしい」と語る。(相澤冬樹)

◆「土浦道中絵図-描かれた水戸道中」会期中のイベントは次のとおり。①記念講演会「描かれた水戸道中」=28日(土)午後1時30分~講師・小口康仁さん(学習院大学文学部哲学科助教)②城下町ウオーキング=10月13日(日)午前10時~水戸道中に関する史跡を巡り学芸員が解説。①②とも10日から電話(029-824-2928)で申し込み受付。➂ギャラリートーク=7日(土)・16日(月・敬老の日)・10月20日(日)午前と午後の2回、テーマ展の見どころを担当学芸員が解説(事前予約不要)。問い合わせは電話029-824-2928(土浦市立博物館)。

日本人にとって遺影とは何か?《看取り医者は見た!》26

0
写真は筆者

【コラム・平野国美】昭和、平成、令和と時代が変わっていく中で、住まいの形も変わっていくのを感じます。仕事で診療先の家を回っていると、その文化的様式が変わっていくのがわかります。現代住宅から消えつつあるものとして、神棚と仏壇があります。あったとしても昔のような仏間にある巨大な物でなく、コンパクト化された家具のようなデザインです。

注目しているのは遺影が消えていることです。昔、母親の実家に泊まりに行くと、名前も知らぬ5代も前の先祖の遺影ににらまれ、怖くてなかなか寝付けなかった記憶があります。つくば市の伝統的な地区に入ると、遺影が残されており、見ていると興味深いものです。

今、目の前にいる患者さんと先祖の顔を見比べて、似ているなと思ったり、ある時から、その顔が写真に変わったりと、時代の変遷を味わえるのです。

ご家族の話で、つくば市のある地区に遺影画家がおり、描いてもらったという話を聞いたことがあります。ある日お会いした患者さんは、その伝説の遺影画家でした。得意な分野は肖像画であり、4000件を超える遺影を描かれたそうです。

いろいろ調べてみると、遺影は元々、江戸後期から幕末にかけて存在した「死絵(しにえ)」に起源があるそうです。死絵とは、歌舞伎役者などが亡くなった際に描かれた似顔絵で、絵巻物だったようです。そこから、日清戦争、日露戦争、太平洋戦争を通して、出征する兵士の写真がそれに変わっていったようです。

霊性や霊魂を意識

私の患者さんが逝去された際、ご家族が遺影はいらないと言っていたことがありました。いろいろ複雑な思いがあったようですが、「何かがないと会葬者がどこに手を合わせていいのかわからず困る」と葬儀屋さんがご家族を説得し、遺影を用意してもらいました。

他国では、葬儀に遺影がない場合、ある場合があるようですが、葬儀後も部屋に飾る習慣は日本だけかもしれません。米国のドラマを見ていると、部屋に故人の写真が飾られていますが、それは宗教的なものというよりも「メモリー」の写真のようです。

遺影について、日本人の根底に何か共通する概念があると思います。今、何代も前の遺影を壁から外しても、それを廃棄できない我々日本人を多く見ます。単なる写真や絵として扱えないので、部屋の片隅に保存されているのです。

日本の遺影には何があるのか? 遺影は故人をしのぶための肖像画や写真であると同時に、霊性や霊魂を意識しているのではないでしょうか。日本的アニミズムに根差していると思うのです。日本人の八百万(やおよろず)の神という概念は、生物だけでなく、無生物にも霊魂が宿ると考えます。令和の時代にも、これが意識として残っているような気がするのです。(訪問診療医師)

寄付金30万円でペア席など 特別観覧席を初設置 土浦全国花火競技大会

15
特設観覧席が設けられる土浦市の桜川河川敷 有料観覧席設置予定地

土浦全国花火競技大会実行委員会(委員長・安藤真理子土浦市長)は、11月2日に土浦市の桜川河川敷で開催する第93回大会で、初の特別観覧席を用意する。専用のテーブルとリクライニング椅子が設置され、花火鑑賞師による解説が付くなど個別のサービスを充実させた特別席となる。93回目で初めての試みとなる。

ふるさと納税とツアーで

特別席は、花火打ち上げ場を正面に見る桜川を挟んだ対岸の、桟敷席などがある有料観覧席の一角に設ける。各席に一つずつの小型テーブルとリクライニング椅子のほか、トイレも特別観覧席エリア内専用の仮設トイレを用意する。エリア内に設置するブースでは、「大曲の花火」で知られる秋田県大仙市のNPO大曲花火倶楽部が認定する「花火鑑賞士」による実況解説を、イヤフォンガイドで聴くことができる。鑑賞師は日本花火鑑賞師協会から派遣される予定で、特別観覧席でのみ聞くことができるサービスだ。

座席は、土浦市がふるさと納税の返礼品として36席用意するほか、旅行代理店のJTBロイヤルロード銀座が10席、三越伊勢丹ニッコウトラベルが16席をそれぞれツアーに組み込む形で取り扱う。合わせて62席まで設ける予定だ。

ふるさと納税では、寄付額30万円に対してペア席を18組(36人席)まで用意する。JTBロイヤルロード銀座は、55人乗りの大型バスを全席独立型の10席限定に改装した特別バス「ロイヤルロードプレミアム」で東京を出発し、花火大会とともに牛久シャトーや菊まつりが行われる笠間稲荷神社を周遊する1泊2日のツアーを販売する。三越伊勢丹ニッコウトラベルは、東京から特別バスで花火大会当日に土浦に向かい、花火観覧後は東京に戻り帝国ホテル東京に宿泊するプランを用意する。ツアー料金は、JTBロイヤルロード銀座が2人1室49万円、1人1室54万円、三越伊勢丹ニッコウトラベルは2人1室23万8000円、1人1室28万8000円。料金はいずれも消費税込み。

土浦市の担当課は「コロナ禍が明けて外出の機会が増え、旅先で特別感を味わいたいという希望が増えている。こうした中、土浦市でもその声に応えるための試みとして、今回、特別観覧席を初めて試験的に用意した。当日、来場される方の声を聞いて来年度以降の取り組みに反映させたい。この機会に是非、多くの方に申し込んでいただければ」と呼び掛ける。

一方、一般の桟敷席、椅子席による有料観覧席は事前申し込みにより抽選で販売している。申し込み期間が8月26日から9月22日まで。27日に当選が発表される。(柴田大輔)

◆特別観覧席は専用ホームページか電話で申し込む。①ふるさと納税返礼品は、さとふる楽天ふるさと納税ふるさとチョイスの各ホームページへ。②JTBロイヤルロード銀座の申し込み用ホームページはこちら、電話は03-6731-7690へ。➂三越伊勢丹ニッコウトラベルの申し込み用ホームページはこちら、電話は03-3274-5272(国内旅行窓口)または03-3274-6493(クルーズ旅行窓口)へ。

◆一般の観覧席、椅子席の申し込みはチケットぴあへ。

◆問い合わせは電話029-826-1111(同市役所)商工観光課花火のまち推進室へ。花火大会に関する情報は土浦全国花火競技大会の特設ホームページへ。

本好きが作る、街と人をつなげるフリーペーパー「ほんとこ」 土浦

0
「ほんとこ」の編集会議

土浦市内の喫茶店などの個人店を取材し、お店にまつわるひと物語をつづるフリーペーパー「本と珈琲と土浦」(通称『ほんとこ』、A5判 4ページ)の第3号が6月に発行された。作るのは、職業、年代もさまざまな、「本と珈琲と土浦が好き」だという思いでつながる市民たち。広がる人の輪で、土浦の隠れた魅力を軽やかに掘り起こす。

「『ほんとこ見たよ』というお客さんがお店に来てくれたと聞いて、私もつなげられたんだなと思って本当にうれしかった」と声を弾ませるのは、第2号に記事を書いた大学生の田畑千芙実さん(20)。土浦市桜町の喫茶店「カフェ デ ポロン」の店主・林盛健さんをインタビューした。学校以外で人に見せる文章を書くのは初めてだったと言い、「人と話すのはあまり得意じゃないがマスターの話を聞くのは楽しかった」と振り返る。

「ほんとこ」は、参加する人たちが手配りで広げている

参加者は学生、主婦、会社員にユーチューバー

「ほんとこ」は、同市中央の古民家を改築したカフェ、城藤茶店で毎月1回開かれる読書会に集まる本好きが作る。読書会の後、各々が気になる話題を持ちより編集会議が開かれる。参加するのは10代から50~60代までの男女15人ほど。学生、主婦、会社員、ユーチューバーなど背景や職業もさまざまだ。土浦出身者もいるし、近年土浦に越してきた人からは「土浦に関わってみたかった」「地元の方と知り合う機会になっている」などの声が聞こえてくる。

「読書会」では、最近読んだお薦めの本をそれぞれが持ち寄り、その本の魅力を一人一人語っていく。小説、漫画、ノンフィクション、ファッション雑誌など決まりはない。7月20日の読書会に参加した市内在住の増山創太さん(25)は5回目の参加になる。「僕は音楽が好きなので、本もいつも音楽関係だが、ここでは自分が普段読まない本に出合うことができる」と魅力を語る。

読書会には、参加者がさまざまなジャンルの本を持ち寄る

読書会の盛り上がりをそのまま引き継ぎ編集会議が始まる。先日は、市内で40年以上、子供文庫を続ける同市中央の「奥井薬局」をメンバー7人で取材した。今年3月には、会議での書物談義がきっかけになり亀城公園隣の商業施設・公園ビルで2日間の古本市開催につながった。

もともと本が好きで書店員をしていたという田中優衣さん(25)は、4カ月前に兵庫から土浦に越してきた。「ひょんなことで全然知らない土浦に越してきた。知り合いもいなくて寂しかったけれど、本でつながる『ほんとこ』のメンバーを通じて土浦を知ることができている。私にとって土浦が居場所になりつつある」と話す。

ちょっと土浦が好きになってきた

「ほんとこ」作りのきっかけは、2022年に城藤茶店で開かれた「まちづくりとデザイン」がテーマの市民向け講座。そこで意気投合した4人が立ち上げメンバーだ。その1人の葛西紘子さんは「土浦で話を聞きたい人に会い、好きな話が聞ければと思ったのが始まり。みんなで聞いた話を共有しようと思った」と言い、同じく立ち上げから参加する稲葉茂文さん(35)は「土浦は個人店が多い町。今聞かないとなくなってしまう」という危機感もあったと言い、「『ほんとこ』は作るのも楽しいが、月1回の読書会が何よりの楽しみ。本の話をするのって、なかなか会社ではできないですからね」と思いを語る。

読書会と編集会議が開かれている城藤茶店

1000部から始まった発行部数も回を重ねるたびに増え、第3号は1700部になった。配布先は、メンバーが足を使い、手渡しで広げている。当初はタイトルに沿って土浦市内の書店や喫茶店から始まったが、今ではつくば市やかすみがうら市など周辺地域にも広がり、土浦市内約40カ所、つくば市内約10カ所など県内計約60カ所に設置されている。「配るのをきっかけに店の人と仲良くなるのが楽しみ」という言葉を聞くようになり、その甲斐もあって「街で『ほんとこ』を見つけたのをきっかけに、夫を誘って読書会に参加するようになった」と言う女性や、「カフェに行くと『ほんとこ』がいろんなところにあって気になった」と話す人など、参加する人の輪がますます広がっている。

「土浦に戻って3年目」だと話す市内出身の稲葉さんは、もともと本が好きで、都内で古本屋を営み仲間やお客さんと同人誌を作ったり読書会を開いたりしていたという。その後、紆余曲折を経て戻った故郷での出会いをきっかけに「ほんとこ」に参加した。「以前は自分でこういう場をつくろうとしていました。こういう活動が好きなんです。色々な出会いがあって、生かされているなと思っている。ちょっと土浦が好きになってきたのかもしれません」と微笑む。

「ほんとこ」は、取材した記事のほかに、メンバーによるコラムなど4~5本の記事が掲載されている。デザインや編集作業などは、メンバーが得意な分野を生かしてボランティアで実施している。立ち上げメンバーの葛西さんは「『ほんとこ』は情報発信が目的ではなく、制作メンバーや設置したお店が、『ほんとこ』を介して人との交流をして欲しいという意図がある。読書会も含めて自分たちが楽しむための活動なので、やりたい人同士で、やれることだけでやっていこうと思っている。もちろん、興味がある方の参加はいつでも大歓迎」と話す。

タイトル名の由来は「本が好きな人はコーヒーも好きでしょう?という緩いものだった」という。「コーヒーを飲んでるときに、良い時間を過ごしながら土浦を知るきっかけになれば」と葛西さんは語る。

SNSでの情報発信が主流の世の中で、「縦書き」「紙媒体」にこだわるのは参加者たちの「本好き」としてのこだわりだ。現在は、半年に1回の発行だが、「いつか季刊にできれば」という思いも抱く。手紙を届けるように手渡しで広がる「ほんとこ」が、土浦の魅力を知らせてくれる。(柴田大輔)

本を積むということ《ことばのおはなし》73

0
写真は筆者

【コラム・山口絹記】最近は家に本が届くことが多くなった。積み上げると私の肩のあたりまで届く有様(ありさま)で、正確な数は数えていないが、まったく困ったものである。

自然現象のように書いてみたが、なんてことはない。自分で買ったのだ。買ったとも。紙の書物は当分購入を控えると(ひとり勝手に何かに)誓っていたのだが、無理だったらしい。性懲りもなく定期的に禁煙宣言している方々とおおむね同類であり、ああ、またなんか言っているな、と思っていただいて差し支えない。

過去のコラムでも何度か書いたが、私は重度の活字依存症である。活字なら何でもよいと思っているフシがあり、一般的な書物はもちろんのこと、内容が理解できない技術書でも、やったこともないゲームの攻略本でも気が付くと読んでいる。依存対象がアルコールであったなら、メチルアルコールでも手を出す手合いだろう。見境だとか節操というものがどこにも見当たらない。

今日も2冊届いた

こういった私のような、いわゆる『患者』と呼ばれる人間には共通点がある。基本的に対象が自然発生したような物言いをするのだ。例えば、カメラの界隈(かいわい)における患者たちは、レンズが『生えてくる』と強く主張する。生えてくるものは仕方がなかろう、ということらしい。たけのこか何かなのだろうか。

書籍やゲームソフトの界隈では、『積む』という用語がもっぱら多用されるのが特徴だ。コレは一見主体としての人間が対象を『積んでいる』わけで、意識してやっているように思われるが、重要なのはかたくなに発生過程について言及していないことだろう。

つまり、我々はどこからともなく現れた書物という物質を積み上げているだけなのであって、たくさんあるものは積むしかないんだ、仕方ないではないか、と言っているのだ。そういう意味では、購入したことをハッキリと明記(というか自白)した私はかなり潔いと言えるだろう。

ついでに、この場を借りてひとつ言い訳をさせていただくと、今年の夏はバタバタと忙しく寝不足が続いていた。正直に申し上げて、これらの書籍を購入した記憶は判然とせず、この行為は責任能力が著しく低下していたことによるものと誰かに証明していただきたいのだが、本日も2冊書籍が届いた。どうやら余罪もありそうなのである。(言語研究者)

これにて打ち止め 7日、水海道 宝来館跡地で「第10回懐かシネマ」

1
懐かシネマ実行委員会の東郷さん(右)と羽富都史彰さん。旧宝来館跡地には、元宝来館従業員で看板絵師の井桁豊さんが描いた映画看板が所狭しと飾られている

常総市水海道宝町でかつて賑わいを見せた映画館「宝来館」をしのぶ野外映画会「懐かシネマ」が7日、旧宝来館跡地で開かれる。2014年に始まり10回目を数える人気のイベントだったが、今回で惜しまれつつ千秋楽を迎える。

最初は2014年の水海道千姫まつりの前夜祭に、一夜限りの復活として行われた。翌年は常総水害の被害に遭った市民を勇気付けようと2度目の復活を果たした。その後は「また来年もやってほしい」という周囲の声に支えられ、「10回目までは何とか頑張ってみよう」と続けてきたという。

かつての宝来館の姿

「一つの切れ目として10回目はちょうどいい。『場所を移してでも続けられないか』という声もあるが、ここでやることに意義がある。昔の宝来館を覚えている人が少なくなってきたことも終える理由の一つ」と話すのは、懐かシネマ実行委員会会長の東郷治久さん。

東郷さんは料亭「つくば山水亭」や、テーマパーク「つくばわんわんランド」、日本語学校「日本つくば国際語学院」などを経営するサンスイグループの代表。宝来館跡地は自身の出生地でもある。父で東郷商店2代目の通行さんが、明治期に建てられた古い芝居小屋を買い取り、映画館に改装して1946(昭和21)年から始めたのが宝来館だった。「父が映写技師、母が木戸番を務め、母の背中には私が背負われ、膝元には姉がうたた寝をしていた」と創業のころを語る。

1950(昭和25)年ごろの記念写真。前列中央が両親で、母の膝に座るのが東郷治久さん。前列左端は井桁さん

当時、映画は娯楽の王様で、宝来館では水海道駅まで続く約1000人もの行列ができたという。その後、通行さんが経営する映画館は1958(昭和33)年までに県西・県南・県央の計17館に急拡大。だが映画が斜陽産業化すると「つくばグランドホテル」を中心とするサービス業へ軸足を移し、1973(昭和48)年に宝来館も閉館した。

東郷さんらが「懐かシネマ」をスタートしたとき、「宝来館を懐かしんでくれる人がこんなにいたんだ」と感慨深かったという。「伊奈や谷和原から毎週自転車で来た」「よく家族で見に来た」「初デートがここだった」などの声が聞かれ、水戸や東京から子どもや孫に車を出してもらって来る人もいた。そのうち「病気になって来年は来れるかどうか」といった話が出るようになり、後に訃報が届いた人もいた。近年は宝来館をしのぶという当初の趣旨よりも、今では珍しくなった野外映画に興味を持って来る人が増えていた。

今回の上映作品は山田洋次監督・高倉健主演の「幸福の黄色いハンカチ」だ。「毎回の演目は自分が独断と偏見で選んでいる」と東郷さんは言うが、参加者に見たい映画をアンケートで問うと美空ひばり、石原裕次郎、吉永小百合、高倉健、オードリー・ヘップバーンの5人が圧倒的だった。その最後の一人の登場で、全10回のフィナーレを飾ることになる。(池田充雄)

ロコレディ前のベンチで談笑する東郷さんと羽富さん

◆第10回懐かシネマは9月7日(土)、常総市水海道宝町のブティックロコレディ駐車場(旧宝来館跡地)で。鑑賞無料、予約不要。午後4時30分受付開始、同6時30分上映開始。少雨決行、荒天時は9月8日(日)に順延。問い合わせは電話0297-22-1377(ロコレディ水海道事務所)

若い世代よ、羽ばたけ《医療通訳のつぶやき》10

8
北京の故宮博物館(娘が撮影)

【コラム・松永悠】今年、我が家の大きな出来事と言えば、子供3人中2人が海外へ短期留学したことです。高3の息子はシドニーへ、そして大学3年の娘が夏休みの間北京へ。

子供が生まれてから毎年のように3人を連れて北京に行っていますので、北京は子供にとって大変なじみ深い場所ですが、高校受験やコロナの関係で、気が付けば最後に北京に行ったのは6年も前のことです。

長女は大学で中国語を専攻しています。語学留学は入学してからずっと心の中で温めていた願いでした。本格留学のウォーミングアップとして、この夏休みに北京大学に行くことにしたのです。

親戚に囲まれて守られる滞在と違って、今回は寮生活だけでなく、一緒にいるのも全員初対面で、世界中から来た中国語を学ぶ大学生です。短期留学中は、勉強のほか、観光も組み込まれていて、故宮博物館、天壇公園、万里の長城といった世界遺産はもちろんのこと、中国版新幹線に乗って山西省大同にある雲岡石窟や懸空寺にも行きました。

最初はそれなりの不安もあったと思いますが、心配はご無用。若いパワーであっという間に慣れてくれました。送られてきた写真を見ると、まぶしく輝く笑顔があふれています。娘と一緒に写っているのは、日本、欧州、米国など世界中からの大学生です。

もうすぐ帰ってくるのですが、すでに「帰りたくない」を口にしています。確かに、最初の緊張が消え、徐々に慣れてきて、楽しくなったころに帰国しなければならないのは残念ですが、来年こそ長期留学できるように準備したいものです。

国をまたいで仕事をするという技

外の世界を見るのは、若い人にとって大切なことです。比較対象がないままでは自国を評価できないので、たくさんの国に行ってほしいと思っています。どの国も良いところ、良くないところ、自分に合うところ、合わないところがあります。

ネット情報が氾濫している今だからこそ、現地に行ってしっかり自分の目で見て、心で感じてほしいです。

飛躍的に生活が便利になっている北京ライフを満喫していて、めちゃくちゃ快適だと絶賛する娘。軽食やタピオカドリンクをデリバリーしてもらったり、日本よりずっと安い料金でネイルしたと喜んでいます。短い滞在ですと、どうしてもこのような表面的なことしか見られないでしょう。

今の中国はたくさんの問題を抱えています。若い世代の就職難、経済の後退など、語り出したらキリがありません。

娘には、「便利」の背後にある厳しい現実も知って欲しいです。グローバル化が進む今、言語という武器を手に入れて、国をまたいで仕事をするという技を身につけた上、客観的中立的に日本と中国を観察して、しっかり自分の考えを持つ社会人、そして大好きな二つの国をつなげる人材になってほしいと願わずにいられない今日この頃です。(医療通訳)

生活保護行政の適正化求め市職員が請願 市議会は異例の特別委設置 つくば市

29
請願審査特別委員会の委員長に選任され、あいさつする長塚俊宏委員長(右奥)

生活保護行政をめぐって不適正な事務処理が相次いでいるつくば市で、現役の市職員が3日開会の市議会9月会議に、生活保護業務の適正化を求める請願書を提出し、市議会は同日、同請願を審査する請願審査特別委員会(長塚俊宏委員長)を設置するなど異例の事態になっている。

請願したのは、昨年まで生活保護を担当する社会福祉課に在籍し、現在は別の部署に異動になった市職員。市がこれまで発表した残業代と特殊勤務手当未払い(5月9日付)や生活保護受給者に対する生活保護費の過払い(7月20日付)とそれぞれの再発防止策などに対して、「問題の全容解明には未だほど遠く、現場のケースワーカーにも具体的な再発防止策はおろか不適正事案の具体的な内容や問題の本質、問題発覚の本当の経緯が一切示されていない」などとして、市民と職員双方に身体的、法的、精神的安全が確立されること、不適正事務があった場合、うそ偽りや過不足のない誠実な公表と、具体的で中身のある再発防止策の検討などを求めている。

市議会に設置された特別委は13人で構成する。長塚委員長は「二つの常任委員会にまたがる請願なので特別委員会の設置になった」とし「中身について各委員としっかり審議したい」としている。10月4日までの会期中に審議し採択か不採択かなどの結論を出す。

請願によると、5月に発表があった残業代未払いを生んだ社会福祉課職員の労務環境については、職員は過酷な業務に追われ、例えば(仕事が終わらず)金曜のうちに自宅に帰れず土曜日の始発で帰る職員がいた。その職員が始発で帰ろうとした土曜日朝5時、子供が寝ている時間に仕事をするため職場に来た別の職員と会うなどの勤務実態があったとしている。5月の発表後、実施するとしている全庁的調査については、過去3年の不適切な労務管理に関して実名で回答するという調査はあったが、未払い手当てに関する全庁的調査はいまだ実施されていないとしている。

7月に発表があった生活保護費の過払いに対しては、発表になったケースを担当するケースワーカーには誤認定の説明はあったが、原因や経緯などの説明はなく、フォローできる体制がまだないなどとしている。

請願は新たな問題も指摘している。2023年度に市職員が生活保護受給者宅を訪問した際、暴行を受けた事案について、管理職から対応策の指示があったのは3週間以上経ってからで、指示内容は「危ないと思う場合は2人で訪問してよい。気を付けて訪問するように」というものだった。護身術講座もあったが指導内容は「間合いを取ること、バインダーやペンで応戦すること」などで現実的対策とは思えなかったなどとしている。

さらに公務員は、法に基づいた業務が行えるよう、法解釈の誤りが起こらないようにすることが求められるが、生活保護の困難ケースについて法解釈を話し合うケース診断会議の場で、管理職が「これは感覚の問題」と発言したり、同じ会議の場で保護開始と決まったケースが、その後の管理職の決裁で「取り下げさせろ」と命令されたり、先輩職員から「何が正しいかはその時々の管理職が何て言うか次第」と言われるなど、法解釈の誤り以前の状況があったと指摘している。

ほかに、ケースワーカーは現金を取り扱わないことになっているが、県からの指摘で今年1月に取り扱いを改めるまで、管理職の机の引き出しから金庫のかぎを取り、別の管理職の後ろにある金庫から現金を取り出すなどしており、県の監査に対しうその報告していたーなどとも指摘している。(鈴木宏子)

水道料金値上げなど38件を提案 つくば市議会9月会議開会

7
3日開会したつくば市議会9月定例会議

つくば市議会9月定例会議が3日開会。五十嵐立青市長は来年4月から水道料金を平均15%引き上げる市水道給水条例改正案など議案18件、2023年度一般会計決算など認定7件、報告13件の計38件を提案した。

水道料金は、市上下水道審議会の答申を受けて提案した。モデルケースの試算では1人世帯は15%、2人世帯は23%、4人世帯は22%の引き上げになる。可決されれば2018年度以来の引き上げとなる。市は下水道料金の改定についても検討している(7月30日付)。

補正予算案は、筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構との連携協定に基づいて市職員の睡眠の質を400人規模で調査するための負担金約965万円(7月26日付)、アフタースクールモデル事業の運営を来年4月に開始するため沼崎小の空き教室を改修するなどの準備費用約510万円、環境省から選定を受けたつくば駅周辺地区の脱炭素先行地域づくり(23年12月12日付)を市民に周知しブランディングを進めるための業務委託費約660万円など、計約30億8600万円を増額する。

提案議案はほかに、つくば市長2期目の退職金の金額を市民のネット投票で決める条例案など(8月26日付)。

会期は10月4日までの32日間、一般質問は9月10、11、12日の3日間実施される。

やってみせ、言って聞かせて…《続・気軽にSOS》153

7

【コラム・浅井和幸】まったく今の若い子たちは…。下の世代と接していて、うまく物事が進まないと出てくる言葉です。コミュニケーションは相互作用で成り立っていますから、ほとんどのトラブルはどちらか一方だけに問題があることはないと言ってよいでしょう。

ですが、まったく今の若い子たちは…という呪文を唱えると、年上の自分は悪くない、年下の人間が悪いのだと思い込めてしまうのです。さらには、自分が若いときはもっと大変な状況で、もっと立派に立ち振る舞えていたと錯覚することができます。相手に悪いことを押し付けることで、自分のストレスを緩和しようという、年上の世代の用いる常套手段と言えるでしょう。

「今の若い子たちは…」と言っている世代の若いころはどうだったでしょうか。一つの例を見てみましょう。今の30歳前後は「さとり世代」とか「ゆとり世代」とかと呼ばれることがあります。ガツガツしていない、気力がない、欲がない、恋愛や物への執着心がないというような評価をされる世代でしょうか。

この世代に対する70歳前後は、「しらけ世代」と呼ばれていました。熱くならず冷めている、ノンポリ、真面目な行いが格好悪いと反発する世代とのことです。この世代が社会人になり、上司になり、「ゆとり世代」を叱咤(しった)激励し、お前らは無気力だと圧力をかける場面もあったことでしょう。

見守って、信頼せねば、人は実らず

たまたま、分かりやすい二つの世代を取り上げましたが、時代の移り変わりで変化はあるものの、やはり年上の人間は、年下の人間に対してイライラして、自分に落ち度がないときには、「今の若い奴らは…」と言いたくなるのでしょうね。

私も50を何年も過ぎた「老害」と呼ばれても否めない世代ですから、重々気を付けなければいけないなと思います。と言っても、自由にやらせてもらいますけどね。

さて、20代だろうが、80代だろうが、「今の若い奴らは…」と言いそうになったら、下の昭和の言葉を思い出してみるとよいかもしれません。少なくても昭和の初めには、「まったく今の若い奴らは…」という考え方があった何よりの証拠で、今に始まったことではないという現実に気づくでしょう。

「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、褒めてやらねば、人は動かじ。話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。やっている、姿を感謝で、見守って、信頼せねば、人は実らず」(山本五十六)。(精神保健福祉士)

つくば市選管「実施見送り」を最終決定 市長選・市議選のオンデマンド投票

17
8月6日から9日に実施したオンデマンド型移動期日前投票の実証実験の結果について、つくば市選挙管理員会委員(右側)に説明する市イノベーション部職員ら(左側)

三たび審議、いずれも不可

つくば市選挙管理委員会(南文男委員長)が2日開かれ、ワゴン車に投票箱を積んで自宅前まで行く「オンデマンド型移動期日前投票」を10月のつくば市長選・市議選で実施するか否かについて審議が行われ、実施を見送ることを決定した。4月24日、6月3日に続いて3度目の審議となり、いずれも全会一致で不可とする判断が出された。今回が最終判断となる。

実施見送りの理由について4人の委員からそれぞれ「選挙事務にミスは許されない。市民一人一人のニーズに対応するのは大事で、そことの兼ね合いになるが、ミスを無くすため事務を煩雑にすることは避けた方がいい」「実証実験と本番は違う。実証実験の検証報告では選挙本番での利用者を多く見積もって80人と推定しているが、80人を超えた場合、対応できるのか。リスクを排除して万全を期した方がいい」「衆議院の解散総選挙と期日前投票の日程が重なることも想定される。市長選・市議選はオンデマンド投票ができるが、衆院選はできないということにはならない」などの見解が示された。

これに対し五十嵐立青市長は「これまで選管の提言を受け、それに対応して課題を解決してきたという認識だったので最終的にこのような決定がされたことに驚いている。期待してくださった障害当事者や家族に非常に申し訳ない。今後も引き続きあらゆる可能性に挑戦し誰一人取り残さない社会の実現を目指していきたい」などとするコメントを発表した。

市執行部が実施する計画だったオンデマンド投票の対象者は、自力で立ったり歩いたりすることができない高齢者や障害者。8月6日から9日に実施した実証実験には対象者約3000人のうち35人が参加した。実施見送りが決まったことで、対象となる高齢者や障害者は、市から配布される無料のタクシー券を利用し福祉タクシーを使って投票するか、寝たきりの場合などは郵便投票を実施することになる。

総合的に検討を

2日開かれた選挙管理委員会で、市政策イノベーション部は、8月6日から9日に実施した実証実験(8月6日付)の結果を報告した。利用者のニーズとして実証実験に参加した35人のうち91.4%が「10月の本番もオンデマンド投票を使いたい」と回答したなどと報告した。

これに対し市選管の委員から「雨の日は時間がかかるが(期日前投票所設置の時間内に)対応できるのか」「選挙公報をどこで読んでもらうのか」「(予約に応じて自宅まで迎えに行き期日前投票所まで送迎するサービスを実施しないなら)もはやオンデマンド(要求に応じて)という名称ではなく期日前移動投票になる」などの質問が出て、市政策イノベーション部が対応策などを一つひとつ答えていった。

選管の委員からはさらに、オンデマンド投票がネット投票へのステップになると位置付けることへの疑問が前回に続いて出され、「(オンデマンド投票を通して)どうやって公選法の穴をこじ開けようとするのか、8月6日から9日の検証結果にはネット投票に向かうステップが入ってない」「オンデマンド投票とインターネット投票とでは対象者が違うのではないか」などの意見も出た。オンデマンド投票ありきではなく、郵便投票のやり方など制度面も含めて総合的に再検討することが必要だとする意見も出た。

市議会からも懸念

同市は2022年、インターネット投票を看板事業に掲げ、政府からスーパーシティに指定された。インターネット投票にはなりすましや強要などの懸念があるなど総務省の理解を得られないことから、代わって市執行部は、オンデマンド投票をインターネット投票に向けたステップだと位置づけてきた。

オンデマンド投票実施に向けて市執行部は今年1月、市北部で実証実験を実施。今年3月議会で、市北部の一部地域で実施する計画で予算を計上した。一方市議会からも、公平性の観点から一部地域でのみの実施に疑問が出された。一部地域のみでの実施について市選管は4月24日、公平性の観点から時期尚早だとする判断を出した。

市議会からはタクシー券配布の提案も出ていた。市議会の意見や提案を受けて市は、市全域の移動困難な高齢者や障害者に期日前投票のタクシー券を配布する予算を計上(5月30日付)。タクシー券配布については選管で異議無く了承された。

その後、市執行部は計画を改め、市北部だけでなく市全域で、自力での歩行が難しい高齢者と障害者を対象にオンデマンド型移動期日前投票を実施する計画を立て、6月3日の選管に再提案した。これに対し市選管は再び「時期尚早」だとする結論を出した。

時期尚早の理由の一つに「市内全域で実証が必要」との意見があったことから市執行部は6月の市議会常任委員会で、市全域で実証実験をする計画を示し(6月25日付)、市は対象者約3000人にダイレクトメールを出し、8月6日から9日まで、申し込みがあった35人の自宅に投票箱を積んだワゴン車が出向く期日前移動投票の実証実験を実施した。市議会からは「どうやっても突き進むのか」など懸念の声が出ていた。

退職金でネット投票

一方で、インターネット投票をめぐって五十嵐市長は、自らの2期目の退職金約2039万円についてネット投票を実施し金額を決める条例案(8月26日付)を、3日開会の市議会9月会議に提案する。(鈴木宏子)

一騎打ち? 三つどもえ? つくば市長選《吾妻カガミ》190

41
つくば市役所正面玄関サイド

【コラム・坂本栄】つくば市の市長・市議選挙(10月20日公示、27日投票)まであと2カ月弱に。「…3期目への立候補を表明」(2月27日掲載)にあるように、五十嵐市長は早い時期に続投意欲を示した。ところが対抗馬が現れず、無投票当選かと思っていたら、「星田弘司県議が立候補へ…」(8月8日掲載)と報じたように、中堅の県議が出馬を表明。やっと市長選の構図が出来上がった。

パフォーマンス型と問題解決型

「政治家は選挙で鍛えられる。政策も選挙で磨かれる」(私の造語)。市政の健全化のためにも、両氏の今後のためにも、一騎打ちの形になりそうなことを歓迎したい。五十嵐氏の続投理由、星田氏の挑戦理由を上のリンク先から引用すると…。

五十嵐氏は「(常住人口25万人突破、人口増加率全国1位など)つくば市が選ばれるまちになっていることが数字に表れている。様々な取り組みが評価され、私自身、昨年、経済協力機構によるチャンピオン・メイヤーに選出された」と、つくば市と自分のパフォーマンス(出来栄え)を自慢。

星田氏は「(県営公園が市営化された)洞峰公園のやり取りが象徴しているように、県との連携が十分でない。無償譲渡だが、毎年膨大な管理費がかかる。知事との直接のやり取りが一度もできず、直談判もせずに譲り受けており、連携不足を感じた」と、実務に疎い五十嵐市長を批判。

県との連携:3つの具体的事例

現職の仕事振りは市の広報紙や各種報道で知られている。そこでバランスを取り、星田氏が出馬会見で明らかにした5分野・37項目の公約を紹介すると…。

項目の一つ、県と連携した県立高校問題の課題解決については、「県議として市民団体の(市内にある県立高の学級数を増やしてほしいといった)要望を聞き、活動してきた。(県立高が難しいのであれば)市立高を新設したらとの意見もあり、大井川知事はそれを支援すると言っている。その可能性も追求したい」と述べた。

他の項目もっと企業を呼び込む工業団地の造成と企業誘致については、「否定はしないが、市内には物流倉庫が目立つ。(こういった業種よりも)半導体とか食品といった職を生む企業を誘致する必要がある」と、企業誘致に熱心な県知事との連携を図ることを強調した。

市営化された洞峰公園問題について質問されると、「県と市の連携ができていれば、(市と県が維持管理費を折半するなど)負担割合などで別の形もあった」とし、五十嵐市長が選択した完全市営化に疑問を呈した。

行政改革を主張する理系研究者

実は、前回市長選で2位に終わった酒井泉氏(元高エネルギー加速器研究機構准教授、元福井大学教授)も再出馬を検討している。水戸市、土浦市、守谷市に比べると、つくば市役所の人件費、職員数、管理職が多過ぎると怒り、役所に乗り込んで行政改革をやりたいと言う。すでに比較分析を終え、近く市民にその要約ペーパーを配布する。

ただ、現時点では、市長選に臨むか、議会改革も念頭に市議選に出るか、市井の市政監視人として活動するか、熟慮中と言う。政治家になることが目的ではなく、それは市政を正常化するための手段と考えている。理系学者が市政を論じる学園都市。実に面白い。(経済ジャーナリスト)

若い世代が競技に打ち込める環境づくりへ 県パラスポーツ協会設立

4
舞台前に並んだ所属選手ら=31日、土浦市城北町のホテルマロウド筑波

障害者スポーツの普及・発展などを目指す一般社団法人「茨城パラスポーツ協会」がこのほど設立され、8月31日、土浦市内のホテルで設立式が開催された。パラスポーツの振興、障がいに関する理解の促進、自立と社会参加の促進、多様性の尊重と共生社会の構築ーの四つを設立目的とする。大井川和彦知事のほか国会議員、県会議員、周辺市町村長ら多数が来賓として出席し鏡開きによって門出を祝った。

代表理事を務める皆川鉄雄さんは「スポーツを通じて得られる絆や達成感、自己成長の機会を、より多くの人々に広げたいという思いから設立した。特に、若い世代が競技に打ち込める環境を提供し、彼らがスポーツの素晴らしさを実感しながら成長できる機会をつくりたい」と構想する。皆川さんはシッティングバレーボール日本代表としてパラリンピック北京大会と東京大会でともに8位入賞した。

鏡開きの後。田山東湖茨城県議会議員が乾杯の音頭をとった

協会設立は励みに

所属選手のうち最年少は9歳の冨嶋美月さん。2歳のとき脊髄梗塞で障害を負った。リハビリ入院していた阿見町の県立医療大に車いすバスケのチームがあることを知り、体験会を経て練習に参加するようになった。

同チームでは年齢や性別、障害の有無も問わず一緒に練習に励み、他県のチームなどと交流試合もしている。「大学生や大人の人と混ざってやるとテクニックの練習にもなるし、シュートも入りやすくて楽しい」と美月さん。

スキーやバスケを楽しむ美月さん(協会設立趣意書より転載)

4歳からパラスキーも始めた。ガイドの人にロープで引っ張ってもらいながら滑っていたが、今年からは一人で滑って止まる練習もしている。中学生になったら一人でリフトに乗ることにも挑戦したいという。

「活発な子なので、歩けなくても何かスポーツをさせてあげたいと思ったが、最初はどこへ行けばできるかも分からなかった。テレビで見るパラスポーツも大人ばかりだったので、最初は『子どもでもできるんですか?』という質問からスタートした」と母の里美さん。「これからもいろんなスポーツにチャレンジさせてあげたい。協会の設立はこれから始めたい子にも、続けていきたい子にも励みになると思う。できてよかった」と喜ぶ。

サポート受け情報交換の場にも

「選手の頑張りを通じて、パラスポーツによって障害者がこんなに元気になっているんだと一般の人たちにも伝えられ、障害があってスポーツをやっていなかった人にも知ってもらう良い機会になる。協会があることでさまざまなサポートが受けられ、情報交換の場にもなると思う」と話すのは、車いすバスケ女子日本代表のチームドクターを務める筑波大学医学医療系リハビリテーション科准教授の清水如代さん。自らも健常者として車いすバスケの練習に参加しながら、選手にどういう困りごとがあるかや、どういうけがをしやすいかなどを研究する。「所属選手には日本代表を目指す子もいる。競技力向上やパフォーマンス向上のためのサポートもしたい」という。(池田充雄)

◆同協会はビジョンに共感し、共に歩んでくれる協賛企業を募集している。問い合わせは電話029-832-4699(一般社団法人茨城パラスポーツ協会)へ。

誰もが経験したことがある便秘 《メディカル知恵袋》6

9
筑波メディカルセンター病院

【コラム・間宮孝】便秘、誰もが一度は経験があるのではないでしょうか。あのつらさは一度味わうと、もう経験したくないと思うものです。みなさんも原因をいろいろ考えてみたり、健康食品や生活習慣などで予防されている方も多いと思いますが、ここでは最近の便秘治療についてご紹介します。

便秘とは

医学的には「本来排泄(はいせつ)すべき糞(ふん)便が大腸内に滞ることによる兎糞(とふん)状便、硬便(こうべん)、排便回数の減少や、糞便を快適に排泄できないことによる過度ないきみ、残便感、直腸肛門の閉塞(へいそく)感、排便困難感を認める状態」と定義されています。

すこし難しいですね。簡単に言うと、ただ便の回数が少ないだけでなく、そのことによって困っている状態という認識です。これらの状態により、生活に支障をきたすと便秘症と診断されます。

なぜ治療が必要なのか

もともと便秘は生命予後に影響を与えないと考えられてきました。しかし、近年の研究により、便秘症がある人とない人を15年追跡すると、便秘症の人の生存率が20%悪化したという報告がありました。便秘症の人は便秘のない人より生存率が低かったという内容です。

生存率

そのほかにも、血栓症や慢性腎不全のリスクになるという報告もあり、積極的に治療を行うべきと考えられています。死亡率上昇の理由については様々な説がありますが、排便時のいきみの際に血圧が急上昇し、心血管イベント(心筋梗塞や脳梗塞などに代表される心血管系の病気)を起こすと推定されています。

一方でこれらは観察研究が中心で、便秘治療を行った結果、寿命が延びたという介入研究の報告はないため、正確な評価には今後のさらなる研究が必要です。

便秘の分類

便秘は大きく4つに分類されます。

①器質的狭窄(きょうさく):大腸がんなどにより物理的に便の通過が困難な場合。

②薬物性:多くの薬剤が腸管の蠕動(ぜんどう)低下をもたらすことが知られており、それが便秘の原因となる場合。具体的には、抗コリン薬、向精神薬、抗うつ薬、抗パーキンソン病薬、化学療法薬、循環器作用薬、抗不整脈薬、利尿薬、制酸剤、鉄剤、吸着薬、制吐剤、止痢薬などです。

③他の病気の影響:甲状腺機能低下症、糖尿病、慢性腎不全、パーキンソン病、強皮症など、便秘をきたす疾患の場合。

④機能性便秘症;①~③以外の場合。

治療薬の進歩

便秘の治療は以下のフローチャートのように原因の精査から治療を行っています。まず大腸がんなどの器質的疾患が無いかを調べ、次に止められる薬がないかを調べていきます。そして、いよいよ治療薬を処方しましょうということになります。

便秘の治療は近年急激に選択肢が増えています。2012年に30年ぶりに新薬ルビプロストンが発売、2017年にリナクロチド、ナルデメジントシル酸塩、2018年にエロキシバット、ポリエチレングリコール(PEG)、2019年にラクツロースが発売になっています。下の表で種々の薬剤を簡単に紹介します。

それぞれの薬には特徴がありますが、直接比較の試験は少なく、一般的に若年者には酸化マグネシウム製剤、そのほかにはルビプロストンから開始し、腹痛など過敏性腸症候群の疑われる人にはリナクロチド、蠕動低下も疑われる際にはエロキシバット、難治の場合にはPEG製剤などを併用しています。それぞれの薬に特徴があるので、自分に合う薬を主治医の先生と相談してみてください。

便秘を防ぐ3つの習慣

最後に生活習慣についても、少しだけ触れさせていただきます。便秘を防ぐには、①十分な水分摂取、②1日3食を食べる、③便意を感じたら我慢しない―これらを習慣にしましょう。「たかが便秘、されど便秘」と言われ、人々のQOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)を妨げてきた疾患です。今後の生活や治療などに少しでも参考になれば幸いです。(筑波メディカルセンター病院 消化器内科診療科長)

霞ケ浦蓮根の花のお花見会《くずかごの唄》142

3
イラストは筆者

【コラム・奥井登美子】

「蓮根の花。霞ケ浦、すごい景色。これ日本一ですね」

「大げさだよ、日本一なんて…」

「とんでもない、世界一の風景ですよ」

「実さんは世界中飛び回って、オランダの田んぼもきれいでしょ」

「きれいですけれど、大きさと色が不ぞろいなんです。不ぞろいの美しさもあると言えば言えるけど…」

「大きさも色もきちんとそろって、しかもこれだけ広い面積は世界一なのね」

「そうです、そうです。1年1回、僕は見に来ないと、気が済まない」

1990年ごろ、1年に1回、7月の朝。福田実さんから電話がある。私たち夫婦は車を運転して、土浦駅で彼を拾って、霞ケ浦の畔の蓮根の花を観賞しながら、ゆっくりと歩いたり、車に乗ったり、歩﨑まで、おしゃべりに余念がなかった。

福田さん一家を偲びながら

北里柴三郎のもとで働いていた夫の祖父平沢有一郎が、自分の姪(めい)の琴子の夫に選んだのが中村万作氏だった。彼は牧師だったが、たくさんの社会的貢献を土浦の街に残している。万作氏の2人の姉妹は、偶然2人とも、かすみがうら市の福田家の兄弟と結婚している。

福田実さんと道子さんは2人とも医者で、道子さんは産婦人科医として、土浦新治病院(今の土浦協同病院)に勤務したこともある。実さんは麻酔医として米国のバーモントに住み、ものすごく忙しい日々を送っていたが、1年1回、7月に日本での学会や臨床報告会などにかこつけて、必ず日本にやってくる。

霞ケ浦の畔に咲く蓮根の花を見に来るのだ。花は昼にはしぼんでしまうので、朝早く行くしかない。

世界保健機関(WHO)にいて、世界的な感染症の防止に努めたケイジ・フクダ氏は、この2人の息子さんで、5年前、県の感染症講演会に講師として来てくれたが、声が父親とそっくりなので、私は聞きながら涙が出そうになってしまった。

夫も実夫妻も、あの世に行ってしまったが、今年も東京から娘が来てくれて、私は福田さん一家を偲(しの)びながら、霞ケ浦蓮根のお花見をすることができた。(随筆家、薬剤師)