つくば市と筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構(柳沢正史機構長)は26日、睡眠の課題発見と解決に向けた連携協定を締結した。400人規模の同市職員を対象に、今年秋ごろから睡眠の質を調査し、さらに改善策を検証する実証研究を共同で実施する。
おでこなどにシールを貼って、自宅で眠っている時に脳波を測ることができる機器を対象者に貸し出し、個々の職員の睡眠の質と量を測定し解析する。さらに睡眠に関する個々の問題点をそれぞれ洗い出して、改善策をアドバイスなどして、再び脳波を測定してもらい、改善できたかどうかを検証する。
脳波の測定は一人に付き眠っている間の5日間ほど。改善策やアドバイスを受けて再び5日間ほど脳波を測定し検証する。
実証研究の対象者や方法など詳細は今後決めるが、一つの職場で400人規模で実施することにより、働く世代の睡眠に関する有病率がどれくらいか分かることが期待されるほか、例えば、測定結果や改善策をすぐにアドバイスするグループとそうでないグループに分けて、自分の睡眠を知ることがどれだけ行動変容につながるのか、本人が自分の睡眠を自覚するだけでどのような変化があるかなどの検証も期待できるという。実証研究の対象職員からは併せて、飲酒など普段の生活習慣や生活パターンなどを聞き取り、睡眠の質や量と突き合わせる。
柳沢機構長が、功績の大きい研究者に贈られる2023年の国際的な学術賞「ブレイクスルー賞」を受賞し、受賞記念講演を聞いた五十嵐立青市長が柳沢機構長に働き掛けたことがきっかけという。実証研究の費用は約970万円で市が負担する。9月議会に提案し、可決されれば、10月か11月ごろから来年3月まで実施する計画。
柳沢機構長は「健康の3要素は食、運動、睡眠といわれるが、睡眠だけは自分で自覚できない。企業の従業員や自治体の職員などが問題を抱えている時の生産性の低下は、睡眠による影響が食、運動に比べて10倍大きいという調査もある。睡眠が悪ければ病気になりやすくなるのに加えて、睡眠不足を含めた睡眠障害は直接に頭や体のパフォーマンスに影響してきて生産性が下がる。感情のコントロールもできにくくなるので人間関係や信頼関係が悪くなりがちということもあって、その辺りを職域で改善することは極めて大事になる」とし「在宅で脳波を測れるデバイスを用いて、客観的に職員の睡眠を測り、高解像度で睡眠を見える化した上で、個人の問題点を洗い出して、改善策をアドバイスするなり、探っていき、さらに改善できたことを検証したい。この手の実証研究は数十人でやるなど、ともするとスケールが小さくなりがちだが、職域を一つのフィールドとして400人規模で自治体が率先して行っていくことに敬意を表したい」と話した。
五十嵐立青市長は「ノーベル賞につながるといわれるブレークスルー賞を受賞した柳沢先生が率いられる機構とご一緒できることはひじょうに価値がある。共同研究の成果は直接的に市民の健康に資する。睡眠が幸福度の大きなカギだと確信しているので、協定をきっかけに市民の幸福度を高める取り組みを進めていきたい」と話す。