【コラム・坂本栄】つくば市の市長・市議選挙(10月20日公示、27日投票)まであと2カ月弱に。「…3期目への立候補を表明」(2月27日掲載)にあるように、五十嵐市長は早い時期に続投意欲を示した。ところが対抗馬が現れず、無投票当選かと思っていたら、「星田弘司県議が立候補へ…」(8月8日掲載)と報じたように、中堅の県議が出馬を表明。やっと市長選の構図が出来上がった。
パフォーマンス型と問題解決型
「政治家は選挙で鍛えられる。政策も選挙で磨かれる」(私の造語)。市政の健全化のためにも、両氏の今後のためにも、一騎打ちの形になりそうなことを歓迎したい。五十嵐氏の続投理由、星田氏の挑戦理由を上のリンク先から引用すると…。
五十嵐氏は「(常住人口25万人突破、人口増加率全国1位など)つくば市が選ばれるまちになっていることが数字に表れている。様々な取り組みが評価され、私自身、昨年、経済協力機構によるチャンピオン・メイヤーに選出された」と、つくば市と自分のパフォーマンス(出来栄え)を自慢。
星田氏は「(県営公園が市営化された)洞峰公園のやり取りが象徴しているように、県との連携が十分でない。無償譲渡だが、毎年膨大な管理費がかかる。知事との直接のやり取りが一度もできず、直談判もせずに譲り受けており、連携不足を感じた」と、実務に疎い五十嵐市長を批判。
県との連携:3つの具体的事例
現職の仕事振りは市の広報紙や各種報道で知られている。そこでバランスを取り、星田氏が出馬会見で明らかにした5分野・37項目の公約を紹介すると…。
項目の一つ、<県と連携した県立高校問題の課題解決>については、「県議として市民団体の(市内にある県立高の学級数を増やしてほしいといった)要望を聞き、活動してきた。(県立高が難しいのであれば)市立高を新設したらとの意見もあり、大井川知事はそれを支援すると言っている。その可能性も追求したい」と述べた。
他の項目<もっと企業を呼び込む工業団地の造成と企業誘致>については、「否定はしないが、市内には物流倉庫が目立つ。(こういった業種よりも)半導体とか食品といった職を生む企業を誘致する必要がある」と、企業誘致に熱心な県知事との連携を図ることを強調した。
市営化された洞峰公園問題について質問されると、「県と市の連携ができていれば、(市と県が維持管理費を折半するなど)負担割合などで別の形もあった」とし、五十嵐市長が選択した完全市営化に疑問を呈した。
行政改革を主張する理系研究者
実は、前回市長選で2位に終わった酒井泉氏(元高エネルギー加速器研究機構准教授、元福井大学教授)も再出馬を検討している。水戸市、土浦市、守谷市に比べると、つくば市役所の人件費、職員数、管理職が多過ぎると怒り、役所に乗り込んで行政改革をやりたいと言う。すでに比較分析を終え、近く市民にその要約ペーパーを配布する。
ただ、現時点では、市長選に臨むか、議会改革も念頭に市議選に出るか、市井の市政監視人として活動するか、熟慮中と言う。政治家になることが目的ではなく、それは市政を正常化するための手段と考えている。理系学者が市政を論じる学園都市。実に面白い。(経済ジャーナリスト)