地産地消の小規模電力網敷設など
つくば駅周辺の半径500メートル地域が環境省の脱炭素先行地域に選定され、共同提案者の同市と、市中心市街地に冷暖房を供給するミライデザインパワーなど民間企業5社が12日、相互に連携・協働して脱炭素社会を実現していくための連携協定に調印した。
同地域には、筑波研究学園都市建設時に地下に敷設された電気、水道、冷暖房などのケーブルやパイプラインを収容する共同溝があることから、共同溝を活用して、新たに地産地消の小規模電力網を構築する。化石燃料で発電した電力を使用せずに、太陽光発電やバイオマス発電で電気を供給するなどして、2030年までに地域全体で二酸化炭素排出量実質ゼロを目指す。国から最大50億円の交付金を得て、地域内に立地する企業やマンション、学校、公共施設などがそれぞれ、来年度から2028年度まで5年間で総額75億円規模の事業を実施する計画だ。
脱炭素先行地域は、国が2050年に達成を目指しているカーボンニュートラル(二酸化炭素排出実質ゼロ)に先立って、地域特性に応じ、道筋を付けるため先行して実施する取り組みで、環境省が30年までに先行地域を募集し全国で100カ所以上を選定するもの。つくば駅周辺は今年8月に実施された4回目の募集で選ばれた。これまでにつくばを含め36道府県95市町村の74の提案が選定されている。県内では初めて。
つくば駅周辺の対象地域は、同駅から半径約500メートルに立地する、民間施設21カ所、公共施設14カ所、マンション3棟(計656戸)の計38施設で、来年度から計13の取り組みを実施する。
具体的には、各施設の照明をLEDに交換したり、空調を省エネ型に変えたり、施設の断熱性を高めるなどして使用電力量を全体で3分の1削減する。
さらに民間や公共施設に各事業者が太陽光発電施設や蓄電池を整備したり、ミライデザインパワーが、市内の健康食品製造工場で廃棄される魚油や、市が市全域で回収している食用油の廃油を燃料に、駅近くの冷暖房供給施設でバイオマス発電を実施したり、再生可能エネルギーで水を電気分解して製造したクリーン水素を混焼して発電する。同社は発電した電力を、計2.6キロにわたって新たに敷設する小規模電力網で地域に供給する。
ほかに市が、市内の各農家が特産品の芝生を刈った葉や、公園や公共施設で剪定(せんてい)した枝葉を乾燥させて固めてバイオマス燃料をつくり、同市水守のごみ焼却施設で焼却し、発電した一部を同地域に供給する。
同地域では現在3800万キロワット時の電力量を消費し、年間約1万6000トンの二酸化炭素を排出していることから、13の取り組みを実施して2030年までに二酸化炭素排出量実質ゼロを目指す。取り組み実施後の電気料金については通常の電気代と同等に抑えることができる見込みだという。
環境省が脱炭素先行地域を募集していることを知った同市が、公募の上、共同提案した。共同提案の6者はほかに、電気やガスを販売する中部電力ミライズ、同地域に立地する常陽銀行と、現在、同地域に複合施設を建設中の大和ハウス工業茨城支店、EPAやDHAなどの健康食品を生産しバイオマス発電の燃料として魚油を提供するニッスイつくば工場。
12日の協定締結式で五十嵐立青市長は「脱炭素の取り組みは今すぐ取り組まなくてはならない課題、これから共同提案者と一緒に、ここで掲げられた事業を一つ一つ確実に実現していくことで目標を達成していけるように努力していきたい」と話し、ミライデザインパワーの山田高裕社長は「総力を挙げて全国的にも注目されるような先進的な取り組みを実施していきたい」などと話した。(鈴木宏子)