火曜日, 11月 11, 2025
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車いすから見た世界を描くライター、川端舞さん

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川端舞さん

「障害者として堂々と生きていきたい」

そう話すのは、重度障害のあるライター、川端舞さん(29)だ。NEWSつくばでコラム「電動車いすから見た景色」を連載、市民記者としても活動し1年が経った。介助者のサポートを得て営む一人暮らしは11年目を迎えた。ありのままの自身の経験や日々の出来事を発信し、障害について考えるきっかけを読者に投げかける。

言語に障害があっても話していい

言語障害のある人は、「(自分は)話さないほうがいい」と思ってしまうことがあるという。自身も言語に障害のある川端さんは、積極的に発言することで、誰もが気楽に話せる社会を作ろうとする。

原稿執筆のため資料をあたる

川端さんは生まれつき脳性まひによる障害があり生活に車いすが欠かせない。手足とともに口の筋肉や舌がうまく動かないことから、思うように発音することが難しい。会話によるコミュニケーションへの悩みを、以前は書くことで補っていた。荷物を出しに行く郵便局や買い物先の商店で、緊張する胸の内を隠しつつ、必要なことを書いた紙を相手に差し出した。話を聞いてもらえないのではないかと心配する言語障害のある人は多いという。だから川端さんは「会話」にこだわる。

「初めから聞き取れないと諦められることが一番辛いです。私が話しているのに、介助者と話し始めてしまう人もいます。『話してるのは私なのに』って思いますよね。聞き取れなければ、気を使わずに何度でも聞き返してもらえたらうれしいです」

朝、介助者と自宅を出る準備をする

群馬でがんばってきた

群馬県出身の川端さんは、周囲のサポートを受けつつ地元の普通学校に通った。教室に障害のある生徒は川端さんだけだった。重い障害のある多くの子どもは特別支援学校や特別支援学級に通学し、一般生徒と分けられるからだ。

「周りに迷惑をかけてはいけない」「友達に手伝ってもらってはいけない」と学校で教師に言われていた。川端さんの言葉を聞いてくれない教師もいた。周りに迷惑をかけたくないから「言語障害のある自分は話しちゃいけない」と思ったし、「障害者は勉強ができないと見捨てられ、普通学校に通えなくなる」と本気で思っていた。

歩行器を使う小学生の川端さん。「頑張っていた時代です」と振り返る

一生懸命勉強し、筑波大学に進学した。筑波大は障害のある学生へのサポートが整うことから母親も勧めていた。進学を機に大学宿舎で一人暮らしを始めた。福祉事業所から派遣される介助者が家事をサポートし、大学では学生同士が支援し合う制度を利用した。ただ、人の手を借りるのが嫌だったから、大学の制度は使わなくなった。「自分のことは自分でやらなければいけない」という考えが、川端さんを縛っていた。

「障害のためにできないことがあるから学習で補わないと、どの会社にも雇ってもらえず、お金も稼げない。つまり社会で生きていけない」と思っていた。大学卒業後は大学院に進学し同大で勉強を続けた。

大学院時代、半年休学してアメリカへ留学した。部屋には友人から送られた色紙が飾られている

つくばで出会った自立生活

「なんで一人で食べてんの? そんなの迷惑だからやめろよ」

衝撃的な一言だった。川端さんが現在メンバーとして活動するつくば市の「自立生活センターほにゃら」を大学院時代に訪ねて食事について話した時、重度障害のあるほにゃらメンバーから投げかけられた言葉だ。自立生活センターとは、障害者の生活を支援する当事者団体で、障害者が運営の中心を担う。

自立生活センターほにゃらの事務所

それまで川端さんは、スムーズではない自分の手を使い食事をとっていた。時間がかかっても、自分のことは自分でやるべきだと考えていたからだ。だがここでは「できないことは自分でしなくていい」というのだ。大事なことは、自分で行動を決めること。それを介助者に伝えて代わりにやってもらえば、障害者が自分でしたことと変わらない。それが「自立生活」なのだという。そして、こうも言う。

「川端さんが自分で食事をとることで、他の障害者もできないことを自力で無理してやる状況が続いてしまうでしょ?」

真逆の価値観だった。

食事介助によって周囲と会話する余裕ができた

ほにゃらのメンバーとなった川端さんは、「どんな障害があっても、自分らしく暮らせる社会」をつくる活動に関わり、自立生活する大勢の重度障害者と出会った。健常者の中で生きてきた川端さんにとって、初めてのことだった。

知的障害のある人との出会いは、群馬時代の同級生を思い起こさせた。同級生は特別支援学級に通学していた。普通学級の川端さんは当時「勉強できる自分は、彼(彼女)とは違う」と差別していた。「私は授業についていけないと見捨てられる。見下される側になるという恐怖感を抱いていました」と当時を振り返る。

普通学級に通っていた高校のクラスメイトとの思い出

多様な障害のある人々と出会い「学校の勉強だけがすべてではない」と気付いた。そして、「苦手なことは周囲に手伝ってもらえれば、どんな障害があっても社会で生きていける」と思い至ると、自分の心を縛っていた恐怖感から解放された。

障害当事者として活動に力を注ぐため、大学院は退学した。同じ教室に障害のある子どもとない子どもが一緒にいられる環境こそが、全ての子どもが無条件に「ここにいていい」と安心できる場所だと考える。そんな社会が当たり前の社会にしたいと思い活動を続けている。

大学院を辞めたときに送られた「退学証書」

自分もお金が稼げると自信がついた

昨年10月、川端さんの取材に立ち会った。その日は車いすに乗る障害者やその支援者ら約40人がつくば市内をデモパレードし思いを訴えた。パレードが終わり、川端さんが参加者にインタビューする。ゆっくり丁寧に質問を投げかけ返ってくる言葉を介助者がノートに書き取っていた。伝わりにくい言葉を介助者が「通訳」することもあったが、川端さんが自分の言葉で対話するのが基本だ。記事は自分でパソコンに打ち込むこともあれば、介助者が代筆することもある。こうして書いた記事は、翌朝にNEWSつくばのサイトで公開された=2020年10月1日付

パレード参加者にインタビューする川端さん

記事を書くことで、川端さんの手元に原稿料が入る。ライター業は川端さんにとって、定期的な報酬を得る初めての仕事だ。「仕事を評価してもらうのがうれしいし、自分もお金が稼げると自信がついた」と話す。だが、働き稼ぐという当たり前の営みは、重度障害者にとって簡単なことではない。介助制度の問題が立ちはだかるのだ。

つくば市内にて

川端さんのような重度障害のある人が社会活動を送るには、介助者の存在がかかせない。だが、現在の公的介助派遣制度は、その利用を就業中は認めていない。だから川端さんは取材中、1時間1200円の介助費を自費で介助者に支払っている。極端な話、お金がなければ働くことができないのだ。現在の制度は、重度障害者から働く機会を奪うという、極めて大きな問題をはらんでいる。

昨年、国は市町村の裁量で就業時の介助者派遣を認めた。だが、さいたま市のように実施する自治体はあるものの、全国的にはほとんどない。ほにゃらはつくば市に実施を呼びかけるとともに、経過モニタリングしている。

自宅で原稿を執筆する

コロナ禍でも自分らしく生きる

川端さんの生活に周囲のサポートは欠かせない。人と人が触れ合うことが感染拡大につながる新型コロナウィルスは、生活の根底を揺るがした。感染は自身の健康にも大きな影響する。

「実家に帰るべきだろうか?」

不安とともに、そんな思いが湧いてきた。だが、こう思い直した。

「いや私にはここで築いた生活がある」

「私にはここで築いた生活がある」

つくばに来て11年がたつ。群馬の両親も年齢を重ね体力が落ちた。実家で両親の介助を受けるのは心配だ。そして何より、親元を離れて来たつくばには、友人や地域の人と送る生活と仕事がある。それは自分が周囲と関わり築いてきた、代わりの効かない居場所なのだ。

「住み慣れた街で、いつも通りの生活をしたいと思っています」

コロナ禍にあって川端さんは、そう話す。

そして、ライターとしてこれから伝えていきたいことをこう話す。

川端さんの自宅にて

「障害者が特別な人じゃなくて、普通の人なんだって思ってくれたらいいなと思ってます。テレビで取り上げられる『頑張っている障害者』ばかりじゃない。私たちも普通の人なんだっていうことを伝えたいと思っています」 (柴田大輔)

➡川端舞さんの記事とコラムはこちら

書評「人新世の資本論」《雑記録》22

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【コラム・瀧田薫】斎藤幸平氏著の本書の核心は、旧来のマルクス理解を根底から覆し、エコロジーの視点からマルクスを解釈し直し、そこからさらに進めて、「人新世」(人類の経済活動が地球を破壊する環境危機の時代)を克服する方途、さらには豊かな未来社会に至るための実践論(「脱成長コミュニズム論」)を引き出したことにある。

読後感を一言でいえば、「宮沢賢治にこそ読んでもらいたかった1冊」であるということだ。宮沢と斎藤には時空を超えて共通する一つの思いがある。

すなわち、資本主義が追求する効率、利潤、経済成長を、環境破壊、労働疎外(個人は経済活動を担う歯車と化す)そしてコモン(共同体や共有財)解体の原因であると断じ、格差や生きづらさを生む資本主義社会から脱して、豊かな人間らしい生活と環境を求めようとする、その一点において両者は同じプラットフォーム上にある。

もちろん本書の狙いは、都市の生活や最新テクノロジーを捨てて農耕共同体社会に戻ることではない。21世紀の現実と向き合い、環境危機を克服し、「持続可能で公正な社会」を実現するための唯一の選択肢として、「脱成長コミュニズム」が提唱されているのである。そのことを確認した上で、宮沢の思想を本書読解のための補助線とする方法、その有効性を指摘したいと思う。

「人間と環境」に関する新しい知見

本書に対する批判の代表的な例は、「脱成長を標榜(ひょうぼう)する文明に繁栄などあり得ない」とする主張であろう。それに対する斎藤の反論については、本書を読んでいただくとして、それとの関連で、宮沢における「定常状態」(経済成長のない均衡状態)理解について簡単に触れておきたい。

バリ島は土地が肥沃(ひよく)であったことから、島民は朝夕それぞれ2~3時間働くと、その日の残りは絵画、彫刻、音楽、ダンスなど、それぞれの好む創作活動に当て、そのパフォーマンスを神へのささげものとすることで、日々の安息を得ていたとの事例報告がある。つまり、バリ島共同体をいわゆる「定常状態」に近いものとして理解した例である。

宮沢は、彼の著書「農民芸術概論」、その他において、このバリ島に強い関心を寄せている。ちなみに、井上ひさしは「バリは農業と芸能と宗教の島である。大切なのは、一人一人の人間がそれぞれ農業人と芸能人と宗教人との三つの人格を一身に兼ねていることで、宮沢賢治が見たらおそらく涙を流してよろこんだであろう」(エッセイ「演ずるバリ島」)と書いている。

井上は、1人3役をこなすバリ島人の生き方に、宮沢における「理想の人間像」を重ね合わせていたのだろう。ともあれ、今後、宮沢の思想と斎藤における「脱成長コミュニズム」思想が対比され、そこから「人間と環境」に関する新しい知見が生まれれば、それは21世紀を生きる人々にとってこの上ない贈り物となるだろう。(茨城キリスト教大学名誉教授)

つくば市長の名誉毀損提訴を検証する《吾妻カガミ》103

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つくば市役所正面玄関サイド

【コラム・坂本栄】今回も五十嵐つくば市長の名誉毀損(きそん)提訴問題を取り上げます。というのは、前々回の「つくば市長の名誉毀損提訴を笑う」(3月1日掲載)に多くのアクセスがあり、関心の強さを実感したからです。3月の市長会見も、提訴は「表現の自由」に照らして違和感があると問う複数の記者に、五十嵐さんは「(ミニ新聞の市政批判)記事はフェイク(虚偽)だ」と応じ、ホットなやりとりになりました。

市長批判記事は「フェイク」?

この問題の概要、原告=五十嵐さん、被告=ミニ紙「つくば市民の声新聞」発行人・亀山さんのコメントについては、本サイトの記事「つくば市長の五十嵐氏 名誉毀損で元市議を提訴」(2月17日掲載)をご覧ください。五十嵐さんのSNSや訴状によると、提訴理由は、数多くの虚偽の内容を記載し、正しい情報を伝えずに選挙に重大な影響を与えた、ゆがんだ情報による選挙結果は自治体を混乱に陥れる―ということです。

私は先のコラムで、この件について3つの視点を示しました。1つは、政治家たるもの記事には言論で対抗すべきであり、裁判沙汰とは市長らしくない、と。2つ目は、名誉毀損訴状の最初の箇所(総合運動公園用地返還公約の未達を指摘する記事への反論)は明らかに「逃げ」の論理で構成されている、と。3つ目は、「表現の自由」抑制を是とするような訴状の論述は看過できない、と。

以上、おさらいです。以下、記者会見で「フェイク」の例として挙げた「谷田部給食センター建設計画」についての記事が、本当に虚偽なのかどうか検証します。

市長の政治力不足が明らかに

ミニ新聞は「前市長の計画を破棄し、新たに再設計を行い、県からの『補助金なし』に切り替えてしまった」とリポート、給食センターが市の予算だけで建てられたと指摘しました。これに対し訴状は、県に予算を付けるよう要請したが、補助金の交付が認められなかった―と反論しています。つまり、最初から「補助金なし」だったのではなく、結果として「補助金なし」になったという主張です。

いずれにしても「補助金なし」だったことは事実ですから、「フェイクだ」と騒ぐような話ではありません。それよりも、訴状の論述によって、五十嵐さんには(県からおカネを引っ張ってくるという)市長に求められる政治力の不足が明らかになりました。訴状で自ら名誉を毀損してしまい、何か冗談のような話です。

また記者会見では、同様の提訴を前市長も行っていたと、前例があることを強調しました。確かに、病院経営者だった前市長が、市長時代に市営病院を廃し、自分の病院に患者を誘導した―といった趣旨のビラがまかれ、前市長は発行者を名誉毀損で訴えました。しかし、その内容は市政を利用して個人的利益を図ったという中傷であり(判決は前市長側の勝訴)、市政の出来不出来を点検したミニ新聞の記事とは別物です。(経済ジャーナリスト)

終盤追い上げも届かず アストロプラネッツ ホーム開幕戦

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7回を2安打と好投した先発の濱矢(撮影/高橋浩一)

プロ野球独立リーグのルートインBCリーグが開幕した。茨城アストロプラネッツは4日、水戸市見川町のノーブルホームスタジアム水戸でホーム開幕戦を迎え、栃木ゴールデンブレーブスに4-5で敗れた。追い掛ける展開から9回裏に1点差まで詰め寄ったが、あと1本が出なかった。

開幕投手を務めたのは1年目の濱矢廣大。昨年、横浜DeNAベイスターズで戦力外となり、茨城から再起を目指す28歳だ。この日は7回を投げて2安打に抑えたが、6四死球と制球が乱れた。四球や野手のエラーで走者を出し、許した安打が2本とも適時打になるという展開だった。「栃木は好打者ぞろいなので、際どいところを攻めていかないと打たれる。小さなミスを修正し、精度を高めていきたい」と試合後、次の登板での挽回を誓った。

8回裏1死一・二塁、宮本が左中間へ2点適時二塁打(撮影/高橋浩一)

4点を失って迎えた8回裏、ようやく打線が奮起を見せた。池田瞳夢(在籍3年目)と上田政宗(四国リーグ香川から移籍)の連続安打で一・二塁とすると、宮本のこの日2本目のヒットが左中間を抜き、2者生還。

9回表にもう1点を失うが、茨城の勢いは衰えない。山中堯之(つくば秀英高、共栄大卒)と池田貴章(四国リーグ高知から移籍)の安打から満塁押し出しで1点を奪い、さらに吉本光甫(霞ケ浦高卒)の二遊間を破る適時打で1点差に迫る。だがここで後続を断たれ、結果4-5で試合終了。

9回裏1死満塁、吉本が右前へ適時打を放つ(撮影/池田充雄)

今季主将を務める大場駿太は「いい投手の投げ合いで、こういう試合では1つのミスが敗因になってしまう」と振り返り、「序盤劣勢でも気持ちが落ちず、終盤で力を見せられた。ここから逆転できるチームになっていければ」と、昨季との違いをアピールした。高校の後輩である吉本の活躍については「高卒1年目だが練習生から上がってきた。そのハングリー精神は尊敬している」と讃えた。

初采配となったジョニー・セリス監督は「開幕の緊張はあったがいい試合ができた。最後は逆転したかった。次はもっとバッティングを見せたい。リラックスしてエンジョイベースボールをすれば結果が出せると思う」と話した。(池田充雄)

開幕セレモニーで挨拶する大場主将(撮影/高橋浩一)

先生はセラピスト つくばの陶芸工房に新学期

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講師の大久保シェリルさんから手ほどきを受ける=つくば市吉瀬、KISEポッタリィ

休止していたつくば市吉瀬の陶芸工房に、再び火がともることになった。4日から体験教室をスタートさせたKISE(キセ)ポッタリィ(根本陽子代表)。新任の先生はアートセラピー講師でもある陶芸作家、大久保シェリルさんらで、ウィズコロナの時代に、粘土と向き合う豊かな時間を提供する。

体験陶芸は手びねりがメーン。初心者向きにコイル(ひもと作り輪に積んで器状にする)、ピンチ(粘土の塊をくりぬく)、スラブ(板状の粘土を成形する)についてそれぞれ手ほどきする約2時間の工程。経験者向けにロクロのコースも用意した。

体験の後、陶器は乾燥期間をおいて素焼きし、釉薬(ゆうやく)を塗って仕上げるまで3~4週間程度かけて制作者の元に届く。毎週土・日曜に午前・午後の2回(要予約)開催するほか、会員になると毎週水曜日の午後2時間程度、工房を利用できる。

指導陣には水井純子さん(写真右)と中村久美子さんが加わる

代表の根本さんによれば、「コロナ禍の1年、心静かに土と向き合う趣味として陶芸熱が次第に高まるのを感じた。約4年休眠させてしまった施設(陶芸舎)があったので、まずは初心者向け、少人数制の体験陶芸から再開させることにした」という。

ドリームズ カム トゥルーの場所

体験陶芸の指導には3人の女性講師があたるが、中心になるのは大久保シェリルさん。かつて陶芸舎の施設を利用し制作に励んでいたこともあったが、土浦市宍塚のアトリエに拠点「HEARTH(ハース)」を構えて活動するようになった。

米国ネブラスカ州出身、ニューメキシコ大学の修士課程で美術教育とアートセラピーを専攻していたとき、筑波大学出身のご主人と出会い、結婚して来日した。主に英語講師として働き日本在住は28年になるが、近年では筑波大学で「アートセラピー入門」を担当する。患者が描画などの芸術表現を通じ、心身の健康を取り戻す療法の日本では数少ない専門家だ。

その陶芸との付き合いは、高校生のときにロクロに触って以来で40年になる。最近は「練り込み」という技法に興味を持って作品を作っているが、身近に使える窯を探して陶芸工房再開の話を聞き再訪した。「ここにはスラブローラーっていう成形機もあれば、木から切りだした長いテーブルもある。何でもそろっていて、まさにドリームズカムトゥルー(夢は叶う)の場所」と講師を買ってでた。

大久保さんは「粘土に触っていると地球の柔らかさを感じる」といい、体験陶芸を通じその気持ちよさを多くに伝えたいと語る。

体験陶芸の開催日程や料金など詳細はKISEポッタリィのホームページまで。講師や生徒の作品を展示、販売するオンラインストアも設けている。(相澤冬樹)

住民意向は概ね好意的 独自の「つくばアプリ」開発 スーパーシティで説明会

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スーパーシティ構想について説明する(奥左から)森祐介・市政策イノベ―ジョン部長、五十嵐立青市長、鈴木健嗣筑波大教授=宝陽台公民館

国が進めるスーパーシティ国家戦略特区の指定を目指しているつくば市は3日、高齢化率が高い小田と宝陽台の2地区を対象にスーパーシティ構想の住民説明会を開催した。2地区とも、住民の受け止めは概ね好意的だった。説明会で市は新たに、市独自の「つくばアプリ」を開発し、同アプリを使って、インターネット投票や自家用車に頼らない移動支援サービスなどを展開する計画を明らかにした。

小田と宝陽台地区は、国の指定を受けた場合、AIやビッグデータなど先端技術を活用した事業が展開される市内4地区のうちの2カ所。住民説明会の開催など住民意向の把握は、国の応募要件の一つとなっている。

市総合教育研究所(旧大形小)体育館で開かれた小田地区対象の住民説明会の様子=3日午前、つくば市大形

小田地区の説明会は約30人、宝陽台地区は約50人が参加した。五十嵐立青市長、森祐介政策イノベ―ジョン部長のほか、同構想全体統括者(アーキテクト)の鈴木健嗣筑波大教授らが説明にあたった。

自動運転一人乗り電動車(シニアカー)などを活用した移動支援のほか、自宅で遠隔診療を受け処方薬を移動スーパーで受け取る事業、普段の食事や運動習慣、病院の受診歴などのデータを提供し、その人に合った食材の自動配送を受ける事業、災害時に避難所が開設されたかや現時点の収容人数などが分かる避難所・被災状況の可視化事業などについて説明があった。

小田地区では参加した住民から「周辺部は幹線道路以外、整備されておらず、段差があったり、ぬかるんだり、道路から自宅の玄関まで距離があったりする。一人乗り電動車は安全に走行できる車両か」などの質問が出た。宝陽台では「電動車は一人乗りだが、(介助が必要なため)2人でないと行動できない人がいる。2人乗りにはできないか」「スマホやタブレット端末は貸し出すのか」などの質問や意見が出た。「避難所の場所の周知が不十分」「防災無線が何を言っているのか分からない」など日ごろの市政に対する意見も出た。

宝陽台公民館で開かれた宝陽台地区の住民説明会の様子=3日午後、つくば市宝陽台

一方、スーパーシティに指定されれば、データ連携基盤を通して複数の分野で住民のデータが共有されることから、個人情報保護に関する質問も出された。質問に対し市は「個人情報の保護やプライバシーポリシー、倫理面での配慮も事業者に求めていきたい」などと答えるにとどまった。

国に応募するにあたって市は、個人情報保護やサイバーセキュリティ確保のほか、実証実験やサービス実装のスケジュール、事業を実施する主要な事業者候補、事業の費用や負担する主体、事業を実施した場合の経済的社会的効果などを説明しなければならないが、この日の説明会で、住民への説明はなかった。

市は、スーパーシティ特区に採択されれば、それぞれの地区でどのような事業を展開するか、地区住民による区域会議で詳細を決め、基本計画を策定するので、その際に説明したいとしている。合わせて住民投票や自治会または議会などでの決定など、住民の意向確認も求められる。

「つくばアプリ」今年度に利用開始

新たに開発する「つくばアプリ」については、多分野のデータを共有するデータ連携基盤の開発と合わせて、つくばスマートシティ協議会が開発している。2021年度中に一部利用できるようにする予定で、スマートシティ構想のサービスが利用できるようにするほか、4地区以外の住民も利用できるよう、例えば、子育て世代の場合、保育所の入所手続きを知らせたり、予防接種の接種券をアプリで配信など、その人に合った市の情報を発信する機能を備えるという。

スーパーシティは4月16日までに国に応募する。採択されるのは5自治体程度で、結果は6月ごろ出されるという。現時点で25~30自治体くらいが応募するとみられており、倍率は5~6倍になる。(鈴木宏子)

➡スーパーシティの過去記事はこちら

「混迷する世に立ち向かえる力付けて」筑波学院大学で入学式

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望月学長を前に宣誓する新入生代表の鈴木瑞穂さん(中央)=3日、筑波学院大学大教室

筑波学院大学(つくば市吾妻)で3日、入学式が催され、2021年度の新入生161人が緊張した面持ちで式典に臨んだ。

望月義人学長は、4月から経営情報学部に国際教養クラスを新設することに触れ、大学で身に着ける教養について「本を読む、ゼミや卒業研究、地域交流や友人たちとの交流などを通じて、ベースとなる教養をまず身に付けてほしい」と話した。

さらに海外の国々では軍隊とデモ隊が衝突するなど国際情勢が揺れ動いていること、日本国内でも新型コロナ感染拡大の終息にめどがついていないことに触れ「混迷する世の中の動きに我々はただ茫然と立ち尽くすわけにいかない。確かな教養力に根差す対応力を発揮するため、自身の全人格を賭けて立ち向かえる力を付けていただきたい」と式辞をのべた。

橋本綱夫理事長は「161人全員が、筑波学院大学で学んでよかった、最高の4年を過ごすことができたと思えるように教職員全員が支援をしていく。最高の4年を送れるように、自分の頭で行動して考え、相互にいい影響を与え合っていただきたい」とあいさつした。

これを受けて、新入生代表で福島県須賀川市出身の鈴木瑞穂さん(清陵情報高校卒)は「東京家政学院の建学の精神、KVA(知識の啓発、徳性の涵養、技術の錬磨)を継承した筑波学院大学で、知識・徳・技術を体得し、豊かな個性と知性を磨き、社会に貢献できる人間として羽ばたけるよう精進したい」と宣誓した。

新入生161人のうち留学生は52人。式典は、新型コロナ感染防止のため新入生と教職員のみで行われ、保護者の出席はなかった。新入生は入り口での検温と手指のアルコール消毒を行ってから入場、1席ずつ開けて着席し、会場は換気のため窓を開けた。(伊藤悦子)

英教育専門誌が見解発表 外国人学生数問題 平行線のまま 筑波大

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筑波大学正門

筑波大学の教職員有志でつくる「筑波大学の学長選考を考える会」(顧問・指宿昭一弁護士)が、「(同大は)指定国立大学法人の申請にあたって、水増しした外国人学生数を文部科学省に報告していた」と指摘している問題で、世界版と日本版で異なる外国人学生比率を掲載した英国の教育専門誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)」(英タイムズ紙発行)は3月18日、この問題に対する見解(ステートメント)を発表した。

見解は「THEは筑波大学と共同で、世界大学ランキングに提出されたデータを理解し、今後のデータにどのような学生を含めるべきか提案するために作業を行った。私たちは、今後提出されるデータが我々の公表している定義に沿った一貫したものになると確信している。我々は今回の結果として筑波大学のランクに重大な影響が生じることはないと考えている」とした。

見解に対し、考える会は「THE社が、筑波大学に対し、定義上含めるべき学生のみを外国人学生に含めるよう勧告したことを明らかにした」ものだと述べた。

日本版と世界版に掲載された各大学の外国人学生数の比率を示した図表。考える会、緊急会見時資料より作成。筑波大学の差は他大学に比して大きい

同大は昨年10月、指定国立大学法人に指定された。考える会は、指定国立大学法人の申請にあたって、「外国人学生数を水増しした」などと指摘、永田恭介学長はその責任を取るべきだとして、3月23日、萩生田光一文部科学相宛てに「次期学長に選出された永田恭介学長を再任用しないよう」に求める要望書を提出した。

他方、筑波大は「THEに提出した外国人学生比率の計算方法には大きな問題はなかった」との姿勢を現在まで崩していない。

問題となっているのはTHEに掲載された外国人学生比率(外国人学生の人数を全学生数で割り100を掛けた値)だ。世界版では同大の外国人学生比率は20%だが、日本版では12.60%で、実に7.4%もの違いがある。

考える会は「世界版においては本来含めるべきではない種類の学生を算入することによって、恣意的に外国人学生の比率を多く見せようとしているのではないか」と指摘する。

一方、同大学長補佐室長の池田潤教授(大学執行役員)=当時=は「最大の差を生み出しているのは『データの報告形式の差』。例えば、世界版では外国人学生の総数を報告し、日本版では学年別の人数を報告する。この際、学年という考えを持たない交換留学生が日本版からは漏れてしまう。形式の差がある以上は、数字上の差が出るのは当然のこと。恣意的な判断によるものではない」と反論した。

大学側の主張に対し考える会は「大学が示した計算根拠の表は、いかにして恣意的な水増しを行ったのかを丁寧に説明しているように読める」と批判する。「THEはフルタイム(通常のカリキュラムを受ける学生)ではない学生については、フルタイムの学生と比して数値を減ずることとしている。しかしながら筑波大学は単位の取得が出来ない『研究生』や他大学に所属をする大学院生で筑波大学では研究指導を受けるのみの『特別研究学生』を1人分として計算に入れている。これはTHEの示す基準に則っているとは到底言えない」と指摘する。

算出根拠のうち非正規生について区分別に示した表。1人当たりの割合が1の区分は、フルタイム学生と全く同じに数えていることを表す。18日の筑波大学定例会見の事前資料および、筑波大学発行の「留学生のためのガイドブック(p.15)」から作成

考える会が3月23日に文科相に提出した要望書は、THEのステートメントを受けたもの。要望書では「学長選考会は永田学長を『人格が高潔で、学識が優れ』『国立大学法人筑波大学の卓越性を高めることができる』として再選したが、その決定の正当性は失われているのだから、再選は適当ではない」と述べている。(山口和紀)

FTE換算について たとえば、通常4年で取れる学士を8年かけて長期履修し取得するような場合には、0.5人と換算するべきであるとされる。このように、パートタイム学生の数をフルタイム学生の数に相当するように標準化することを、FTE(Full-Time Equivalents=フルタイム等量)換算と呼ぶ。

1月以降インフルエンザ感染者ゼロ つくば・土浦保健所

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2019年から2021年3月までの土浦保健所とつくば保健所管轄内の定点医療機関におけるインフルエンザの定点報告者数を示したグラフ。日付は週の最初の日を表す。2020年冬から2021年春にかけては流行がない(県発表資料から作成)

インフルエンザの感染者が今シーズン、激減している。つくば・土浦保健所の定点報告では、今年1月4日から3月21日(第1週から11週)までの感染確認者はゼロだった。一方、昨年同期間の定点報告数は、つくば保健所が1543人、土浦が1592人だった。

つくば保健所の入江ふじこ所長は「新型コロナウイルス感染症の予防対策として実施されているマスクの着用や手洗い、手指消毒が、インフルエンザの感染者減少にも影響していると考える」とし「新型コロナの水際対策の強化により、通年でインフルエンザが流行する亜熱帯地域からの渡航が制限されているため、流行が起きにくくなっていると思われる」と話した。

インフルエンザの定点報告は各保健所が所轄する定点医療機関からの報告によって行われる。定点医療機関はつくば保健所管轄内で11施設、土浦保健所は11施設がそれぞれ指定されている。1月4日から3月21日まで、つくば・土浦保健所の定点医療機関で、インフルエンザの感染者が全く出ていない。

今年、全国で1月4日から3月14日(第1週から第10週)までに定点報告された患者数は555人。昨年の同期間(2019年12月30日から2020年3月5日、第1週から第10週)の定点報告数は全国で55万0752人だったから、前年のわずか0.1%だ。厚生労働省は、この時期までインフルエンザが流行入りしないのは、現在の方法で調査を始めた1999年以降初めてだとしている。

例年インフルエンザは11月下旬から12月上旬にかけて流行が始まり、1月下旬から2月下旬にピークを迎え、3月頃まで流行が続く。しかし、新型コロナの感染が拡大した今シーズンは、様相が一変した。(山口和紀)

新教育長に入野浩美氏 土浦市

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土浦市役所

土浦市は1日、人事異動の辞令を交付した。2012年10月から8年半、教育長を務めた井坂隆氏が任期途中の3月31日付で退任し、新教育長に前県教育庁総務企画部長の入野浩美氏(60)が就任した。

入野浩美土浦市教育長

入野氏は高崎経済大学経済学部卒。県教育庁福祉厚生課長、文化課長、総務課長などを歴任し、3月31日、県職員を定年退職した。水戸市在住。任期は井坂前教育長の任期の来年9月末まで。

新設のこども未来部に初の女性部長

機構改革は、出会いから結婚、妊娠、子育てまで切れ目のない支援をワンストップで行うため子育て支援関係業務を集約し、こども未来部を新設した。同部には同市初の女性部長となる加藤史子・前保健福祉部障害福祉課長が就任した。

ほかに、コロナ禍における経済対策やまちづくりの重点施策推進のため、都市産業部を産業経済部と都市政策部に分割再編した。防災力向上と災害発生時の迅速で適切な対応を図るため、総務課危機管理室を防災危機管理課として独立させた。文化財の保護、活用や文化芸術活動の推進を図るため、文化生涯学習課を分割し文化振興課を新設などした。

機構改革により、7部5局44課22室体制から、9部5局47課19室体制になる。消防職を除く職員の異動総数は462人(昨年度は339人)。

管理職に女性を積極登用し、主査級以上の女性管理職の割合は2020年の22.4%から新年度は24.2%になった。(鈴木宏子)

図書館長に武藤知子前シティプロモーション室長

4月1日付け人事異動は以下の通り。カッコ内は前職。敬称略。

【部長】
▽総務部長(教育部長)羽生元幸
▽こども未来部長(保健福祉部障害福祉課長)加藤史子
▽産業経済部長(都市産業部農林水産課長)佐藤亨
▽都市政策部長(都市産業部長)船沢一郎
▽教育委員会事務局教育部長(総務部長)望月亮一

【参事】
▽産業文化事業団事務局常務理事(スポーツ振興課長兼武道館長)根本卓也

【課長】
▽市長公室秘書課長(秘書課長補佐兼秘書係長)浅川邦子
▽総務部防災危機管理課長(建設部住宅営繕課長)皆藤秀宏
▽総務部人事課長(課税課長補佐兼土地係長)武井衛
▽総務部納税課長(都市産業部都市計画課長補佐兼まちづくり推進室長)福澄雄祐
▽市民生活部環境保全課長(建設部公園街路課長兼駅東・駅西駐車場管理事務所長)室町和徳
▽保健福祉部社会福祉課長(社会福祉課長補佐兼社会福祉係長)福原守
▽保健福祉部障害福祉課長(国保年金課長補佐兼国保給付係長)小池政幸
▽保健福祉部高齢福祉課長(市長公室秘書課長)塚本浩幸
▽保健福祉部健康増進課長(高齢福祉課長)水田和広
▽こども未来部こども政策課長(こども福祉課長)菊田宏巳
▽こども未来部こども包括支援課長(保健福祉部こども相談課長)中川光美
▽こども未来部保育課長兼子育て交流サロン館長兼こどもランド館長(総務部人事課長補佐兼厚生係長)野中佑起男
▽産業経済部商工観光課長兼勤労青少年ホーム館長(都市産業部商工観光課長兼勤労青少年ホーム館長)羽成健之
▽産業経済部農林水産課長(建設部水道課長)黒須清一
▽都市政策部都市計画課長(都市産業部都市計画課長兼りんりんポート土浦館長)飯泉貴史
▽都市政策部都市整備課長兼駅東・駅西駐車場管理事務所長兼りんりんポート土浦館長(保健福祉部社会福祉課長兼特別定額給付金対策室長)平井康裕
▽都市政策部建築指導課長(都市産業部建築指導課長)櫻井良哉
▽建設部住宅営繕課長(教育委員会事務局図書館長兼土浦市民ギャラリー副館長)大貫三千夫
▽建設部下水道課長(下水道課長補佐兼工務係長)滝田昌曉
▽建設部水道課長(建設部下水道課長)和田利昭
▽教育委員会事務局生涯学習課長兼青少年センター所長(市民生活部環境保全課長)佐賀憲一
▽教育委員会事務局図書館長兼土浦市民ギャラリー副館長(市長公室広報広聴課長補佐兼シティプロモーション室長)武藤知子
▽教育委員会事務局文化振興課長兼市民ギャラリー館長(文化生涯学習課長兼土浦市民ギャラリー館長)中澤達也
▽教育委員会事務局スポーツ振興課長兼武道館長(総務部納税課長)大橋博
▽議会事務局次長(議会事務局次長兼総務係長)天貝健一
▽農業委員会事務局長(保健福祉部健康増進課長)羽成信明

雑草は強い? 弱い? 《続・気軽にSOS》82

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【コラム・浅井和幸】自然農法という手法を使って農業を営んでいる、あるユーチューバーの動画がありました。そこでは、「雑草とは弱いものなんだ」というニュアンスのことを話されていました。

はて?何のことやら?となりますよね。ちょっと気を抜くと、あっという間に生い茂る雑草。草刈りをしようが、除草剤をまこうが、駆逐することは難しいことは周知の事実でしょう。アスファルトやコンクリートを打ち破って生えてくる雑草。屋上だろうが屋根の上だろうが、お構いなしの強さです。

農業は雑草との戦いだという言葉も、どこかで聞いた気がします。そのような雑草を、どうして弱いと表現したのか、先ほどのユーチューバーに話を戻します。

雑草が弱いと聞くと驚くけれど、では、その雑草を一種類だけ種から植木鉢で育ててみてください。結構これが難しくて、なかなか育ってくれないものなのです。ある特定一種類の雑草が育つ環境を、人工的に作ることの難しさなのだろうと推測できるわけです。

つまり、私たちが、家庭菜園、農業、庭や道路の整備などで苦戦を強いられる雑草は、その環境でよくて育つ種類の草が育っているということです。雑草同士も自分が生き延びるため、子孫を残すために、早く芽を出したり、早く高く伸びて日に当たったりなど、いろいろな生存競争をしています。

たまたま、そこに適応している草ひっくるめて、人間の価値観で見た目が悪いとか、食べられないとかで、邪魔な草を雑草と呼んでいるわけです。たまたま育った草を、種類の区別なく邪魔だと一緒くたに捉えているから、「雑草は強い」と感じてしまうらしいのです。

弱者の中の弱者が強者に勝つ

どこかで聞いた話でうろ覚えですが、私達の周りにある雑草は、森などでの生存競争で負けた弱者である(だったかな?)ということです。

海で暮らしていた魚の祖先は骨がなく、その中での弱者が川に逃げ、ミネラルが必要なので骨を作って蓄えた。川でも生存競争があり、川での弱者が海に逃げ、骨があるために早く泳げるなどの利点で、もともといた骨のない魚に打ち勝ったという話に似ていますね。

弱者の中の弱者が、もともとの強者に勝つという生存競争の妙です。私たち人間は強くなりたい、頂点に立ちたい、よりよく生きたいという願望があります。その中で、自然界では食物連鎖の頂点に立つ大型肉食獣が、ことごとく絶滅の危機に直面しているという話には考えさせられます。

弱者とカテゴリーされる方が生活困窮し苦しんでいる一方、テレビや新聞では強者であるはずの偉い人たちが連日の謝罪会見。弱者と強者、被害者と加害者。生存競争で、敵対か、協力していくのか、それぞれが自由に生きていけばよいのでしょう。

生き方は人の好き好き。ここまで書いてきて、私の好きな言葉の一つに「君子、和して同ぜず」がふと思い浮かびました。ま、別に君子になる必要もなく、私は愚者のまま生きていきますが…。(精神保健福祉士)

民間へ、また市場調査開始 旧総合運動公園用地でつくば市

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旧総合運動公園用地=つくば市大穂

住民投票で計画が白紙撤回された旧総合運動公園用地(つくば市大穂、約45ヘクタール)の民間利活用を目指しているつくば市執行部は1日、民間企業などから活用意向やアイデアを聞く2回目のサウンディング型市場調査を1日から実施すると発表した。

2月に五十嵐立青市長は、一部を防災拠点として公共利用する案を議会に説明したばかりだが、今回の市場調査では、敷地全体の一括活用も含めて、一体的利活用または分割しての一部利活用について、事業イメージ、手法、地域や市全体への波及効果、市に期待する措置などを、企業などに示してもらう。

市公有地利活用推進課によると、市場調査の対象は、法人または法人のグループ。参加申し込み期間は5月21日まで。

6月に結果概要を公表し、市議会調査特別委員会に報告した上で、市として同用地の利活用策を検討するという。

市場調査は2017年度に実施したが、その後、市場動向に変化が見られることから、改めて調査することで、同用地の市場性を把握したいとしている。民間利活用の手法について五十嵐市長は2月時点で、売却だけでなく貸し付けなどもあり得るとしていた。

旧総合運動公園用地をめぐっては、2017年度の市場調査の後、「利子負担を減らしたい」などとして五十嵐市長は19年3月、用地を一括売却する方針を出した。66億円で購入された用地を、事業者1社が40億円以上で一括購入し物流倉庫などを建設する提案が出されたが、住民説明会で異論が噴出、市議会が調査特別委員会を設置し、民間売却案はいったん凍結となった。しかし議会も利活用方針を打ち出せないまま、昨年11月に改選を迎えた。

改選直後の昨年12月、テレビ番組にリモート出演した五十嵐市長は「一部は防災倉庫に活用して残りは民間に売却したい」などと発言。一方、市議会は改選後の新議員で改めて調査特別委員会を設置し、2月に五十嵐市長を呼んでテレビ発言の説明を求めた。五十嵐市長は3割を防災拠点として公共利用、残り7割を民間活用する案を示し、サウンディング調査を実施したい意向を示した(2月20日付)。

一方、利子負担を減らすことについては、2020年度の3月補正で約53億円、21年度当初予算で約9億円を、市が市土地開発公社に無利子貸し付けをして返済することが決まり、24年3月の返済期限を1年前倒しして返済し、利子負担を減らす道筋を付けたばかりだった(2月4日付)。

これに対し市議会調査特別委員会は、作業部会を開いて、利活用方針について議論している最中という。(鈴木宏子)

➡総合運動公園問題の過去記事はこちら

まちづくり会社1日設立 「情報を小出し」課題指摘も つくばセンタービル

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まちづくり会社が入居し、1階で貸しオフィスを運営するつくばセンタービル

つくば駅周辺の活性化を目指す、まちづくり会社「つくばまちなかデザイン」(内山博文社長)が1日、登記申請を完了し設立された。市が筆頭株主の第3セクターで、まちづくり法人として市長から都市再生推進法人の指定を受ける予定だ。一方、3月議会では「(つくばセンタービルの)リニューアルの全容が今になっても明らかでない」「情報を小出しにしている」など、課題を指摘された中での船出となる。

新会社は、事務所をつくばセンタービル内に置き、1階で貸しオフィスを運営するほか、センター地区に立地する企業や団体で構成する「つくばセンター地区活性化協議会」の事務局を担う。

市は同日、新会社のアドバイザーとして、筑波大学システム情報系の藤井さやか准教授と、同大芸術系の渡和由准教授の2人が就任予定だと発表した。2氏はいずれも、市中心市街地のまちづくりをするために必要なエリアマネジメントについて検討する「つくば中心市街地エリアマネジメント検討委員会」の委員を務めた。

ほかに新会社は、つくばの研究機関や企業などで構成する筑波研究学園都市研究交流協議会に入会し、つくば中心市街地まちづくり調査検討委員会に参画して意見交換をするという。つくばエキスポセンターとの連携に向けて、同センターを運営するつくば科学万博記念財団とも意見交換を開始したとも発表した。

一方、3月議会では、市が所有する1階アイアイモールの店舗と廊下部分約2470平方メートルと、地下駐車場約3660平方メートルを、市が新会社に6月から賃貸することなどが明らかになり、「情報を小出しにしている」などの指摘が出た。新会社は、1階の店舗と廊下の一部を改修して、その人に合わせた働き方ができる貸しオフィスなどを整備して運営する。さらに地下駐車場を運営して事業収入を得る。新会社の経営基盤をつくるため、市がさらなる面倒を見ることが新たに分かった形だ。

今後の工事スケジュールについて市職員から退職派遣される小林遼平専務は、夏ごろから(現在の1階店舗部分などの)解体工事に入りたいとしている。(鈴木宏子)

➡まちづくり会社の過去記事はこちら

子ども版 意思決定支援ツール作成目指す 筑波大 名川講師ら

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トーキングマットを使って会話をする様子。左が延原稚枝さん

障害者や子どもなど、自分の気持ちをうまく表現することが難しい人に対し、本人の思いを引き出し、意思決定を支援するときに使われるツールがある。イラストが描かれたカードを使って会話を深める「トーキングマット」だ。子ども版トーキングマットを作りたいと、筑波大学人間系の名川勝講師が代表理事を務める「日本意思決定支援ネットワーク(SDM-Japan)」(新潟県)が、クラウドファンディングに挑戦している。

思いを引き出す

トーキングマットは1998年にスコットランドで開発され、現在、ヨーロッパやオセアニアを中心に広まっている。知的障害や学習障害、認知症など、コミュニケーションや記憶保持が難しい人に対し、本人が生活の中で何を大切にしたいと思っているかを、周囲の支援者が理解したい時などに使われる。

例えば、好きな活動について話したいときには、「映画鑑賞」「スポーツ」等のイラストが描かれたカードを本人に渡し、その活動が好きか嫌いかを分類しながら、マットの上に置いてもらう。その後、その活動のどのようなところが好きかなどを聞きながら、会話を深めていく。カードを見て話すことで、会話のテーマが明確になり、具体的な情報を引き出せたり、本人が抱えている問題を発見できたりする。

昨年のクラウドファンディングで作成された日本語版トーキングマット

これまで英語版しかなかったため、同ネットワークでは、昨年3月にクラウドファンディングをおこない、カードや説明書を翻訳した日本語版トーキングマットを約100セット作成した。また、支援者がトーキングマットを使うための基礎研修も4回開催し、約40人が研修を修了した。現在、日本でも福祉や教育現場で障害のある子どもや成人に対して使われ始めている。

筑波大学大学院博士後期課程1年で、同ネットワークのメンバーでもある延原稚枝さんは「昨年のクラウドファンディングで、日本でもトーキングマットについて多くの人に知ってもらうことができた」と話す。

子どもにも意思決定支援を

昨年作成した日本語版は全年齢が対象で、子どもにも使うことができる。しかし、英語版には子どもとの会話を深めることに特化したトーキングマットも作成されており、今回、子ども版の作成を目指す。子どもの生活や教育に、より焦点を当てたもので、同じテーマでも発達段階に応じてイラストが異なるなど、子どもがリラックスして話せるように工夫されている。

「意思決定支援は知的障害など障害者のための支援だと思われがちだが、障害のない子どもでも、自分で何かを決めようとすると、十分に意見を聞いてもらえないことも多い。子どもにとっても意思決定支援は重要」と延原さん。

ヨーロッパでは「子どもの権利条約」で謳われている子どもの意見表明権を大切にしていて、子どもが自分の考えを表現しやすい方法としてトーキングマットが使われているという。学校で自分の進路を考える場面や、入院中に治療を安心して受けられているかを確かめる場面、罪を犯した少年に今後の人生について考えてもらう場面などで活用されている。

「現在、日本では障害福祉や特別支援教育の分野で使われることが多いが、子ども版を作ることで、児童福祉や少年司法分野でも、子ども自身がどのように生活していきたいかを考える機会が増えれば」と、延原さんは話す。(川端舞)

◆支援募集期間は4月19日まで。クラウドファンディングはこちら

3月11日に家族が増えたおはなし 《ことばのおはなし》32

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【コラム・山口 絹記】出産予定日を数日過ぎた深夜2時。「破水してるかも…」と言いながら、私の部屋に入ってきた妻。「いやぁ、そんな出てないかも、我慢できるくらいの痛みだし」

いやいやいや。破水してる時点で病院直行でしょう。我慢できるとかできないとか、関係ないでしょう。車のエンジンをかけ、暖房を入れ、座席シートにビニールを敷いて、寝ていた上の娘(もうすぐ6歳)に上着と靴下を装着して病院へ。

かけていたラジオから、震災から10年、みたいな話が流れてきた。

そうか。どうやら2人目の我が子は3月11日、あの日からちょうど10年のこの日に生まれるらしい。

こんなご時世なので、出産には夫といえど立ち会えず、面会も1人だけで毎日15分まで。上の娘のときはつきっきりで、妻の背中を全力で押し続け、へその緒も切らせてもらえたし、夜遅くまで病室にいられたことを考えると、ずいぶん違った世界になっていて興味深い。

すっかり目がさえてしまった娘を寝かしつけ、落ち着かない気持ちをごまかしごまかしギターをいじってみたり、狭い部屋をウロウロ歩いているうちにカラスが鳴き始め、外も明るくなってきてしまった。コーヒーをいれていると娘が目をこすりながら寝室から出てきて、無言でストーブをつける。

娘が幼稚園に行ってしまうと、また1人家の中をウロウロ。10時が過ぎたころ、妻から無事に産まれた旨の電話がかかってきた。

15分というのは本当にあっという間で、受付から病室までの距離を考えると、産まれてきた我が子を抱っこして、ミルクを飲ませているうちに終了してしまう。上の娘はちゃんと幼稚園行ったよということ、付き添えなくてごめんね、ということ、元気に産んでくれてありがとう、ということを伝えるのがやっとで、面会時間終了の電話が鳴った。

グッド・バイよりもグッド・ラック

自分のこどもがどんな道を歩んでいくのだろう。私自身とは違った初期設定の世の中で、こどもたちはどんなことを感じるのだろう。

はなにあらしのたとへもあるぞ さよならだけが人生だ、などということばもあるが、自分のこどもたちが過去を前提に未来に思いをはせるのは、まだもう少し先のことになるだろう。私もそれに習って、こどもたちとは、先だけを見ていこうと思う。

3月11日という日にも、息子は私に違った趣を与えてくれた。考えてみれば、365日、何もなかった日なんてないのだ。特別じゃない日なんてない。

本人が実際に経験しなかった事象を、経験したものが押し付けるのも、押し付けられる側からしたら迷惑な話でしかないだろう。

3月11日はおまえさんが産まれた日。彼にとってはそれで十分だ。そのうち、彼自身の悲喜こもごもが追加されるのかもしれないが、それはもう親の領分ではない。勝手に生きるだろう。

今の自分のこどもたちに必要なのは、グッド・バイよりもグッド・ラック、だと私は思っている。(言語研究者)

筑波大 4月開校のS高で講義やデータ分析 角川ドワンゴ学園と協定

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連携協定を締結した筑波大学の永田恭介学長(左)と角川ドワンゴ学園の山中伸一理事長

筑波大学(つくば市天王台、永田恭介学長)は29日、角川ドワンゴ学園(山中伸一理事長)と連携協定を締結した。同学園は、4月に筑波西中学校跡(つくば市作谷)に開校する通信制高校、S高を運営する。

高校、大学を通じたトップレベルの人材育成や教育・研究活動の充実に資することを目的とした協定で、筑波大教員らは、同学園が運営するS高やN高(本校・沖縄県うるま市)などの教育活動を支援したり学習機会を提供する。さらに、同学園が有するオンライン授業やアスリート及びアーティストの育成に関する大規模データを分析をしたり、双方が蓄積した知見やデータを活用した共同研究などをする。

具体的な協力内容について同大は「S高、N高の生徒に対し、筑波大教員が体育・芸術・情報・教育など専門分野の講義をしたり、反対に、同学園の生徒が筑波大学の研究室や授業を見学するなどが考えられる」とし、「同学園が展開するバーチャルリアリティ(仮想現実)によるオンライン授業に関して、学習効果の分析のほか、eスポーツ(コンピューターゲーム)に関する調査分析を行うことを具体的には想定している」と話す。

角川ドワンゴ学園は2016年に通信制高校N高を開校し、現在1万5000人以上の生徒がいる。生徒らが実際の教室で教師と対面しながら授業を受けるスクーリングの受け入れがいっぱいになることを見越して、つくばに2校目となるS高を開校する。

N高とS高のカリキュラムや学費の違いはない。イベントや部活動の参加に関しても、両校の生徒が同じ場で活動できる。異なるのはスクーリング。日程が両校で異なり、学校ごとに分かれて行う。ときには学校別の対抗試合を行うこともあるという。(山口和紀)

➡S高の過去記事はこちら

地域密着、デジタルクーポンアプリ「TOKTOK」開発 つくばのIT企業

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TOKTOK利用イメージ(TOKTOK提供)

つくば市松代のウェブマーケティング会社、クラッシュが、自社開発によるクーポンアプリTOKTOK(トクトク)の運用をきょう31日から始めた。つくば市内の飲食店や美容・エステ関係など約150店舗が発行するデジタルクーポンを掲載している。利用者はこれらをスマホ1台で管理し、店で提示することで代金割引などのサービスを受けることができる。

最大の特色は地域密着型であること。多くのクーポンアプリがファストフード店やファミリーレストランなど全国チェーンの店を主に扱うのに対し、TOKTOKでは地域の身近で個性的な店を多数掲載しているため、選択の幅が大きく広がる。いつもの店をよりお得に利用したり、いままで知らなかった店を発見したり、知ってはいても行く機会のなかった店を訪れるきっかけにもなる。

アプリにはさまざまな店のクーポンが掲載されている

現在はつくば市内の約150店が参加しており、飲食系や美容系のほか整体・マッサージ、ホテル・宿泊、運転代行、英会話、スマホ修理などさまざまな分野の店がそろう。クーポン内容も料金割引のほか大盛り無料、メニュー1品サービスなど多様で、毎月更新されるため飽きずに足を運べる。参加店や利用エリアは順次拡大し、まずはつくば市内で500店、茨城県内で2000店が目標。その後各地の営業代理店と提携し、全国展開を目指す。

店側にとってのメリットも大きい。クーポン使用後30分ほどで利用者のスマホに届くデジタルアンケートは、回答すると次回同店で使えるクーポンがプレゼントされ、顧客の利用頻度向上が図れる。アンケートの結果は店舗のサービス改善や、スタッフのモチベーション向上などにもつながる。

通常のクーポンとは別に、クラウドファンディングのリターンや株主優待など、ちょっとしたプレゼントに使えるデジタルチケットの発行もできる。また運営母体のクラッシュは、フェイスブックやユーチューブといったSNSを使ったマーケティングや、キャッシュレス決済導入などのコンサルティング業務も行っており、店の経営やサービス提供のデジタル化を進めることも可能だ。(池田充雄)

◆TOKTOKは、顧客側は利用無料で個人情報の登録なども不要。店舗側の利用料は月額プラン4980円、年間プラン40000円。現在オープニングキャンペーンとして、つくば市内の店舗は半年分、市外の店舗は1カ月分が無料になる。導入相談はこちら、アプリダウンロードはiOSAndroid

満開の桜川河口で満月を見下ろす 《土着通信部》45

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29日午後7時22分撮影、土浦市港町

【コラム・相澤冬樹】満月の夜は、土浦駅東のビル屋上に陣取った。ここからだと眼下に桜川河口から霞ケ浦土浦入りまでを見渡せる。河口部には両岸の堤に桜が植わっていて、満開の樹冠越しに月の出が望めるはずだった。

お月さまの写真は毎月のように撮っているが、満月に限ると桜の時期では1年前の4月7日の宵だった。新型コロナウイルスの感染拡大で、ちょうど国の緊急事態宣言が出た日のこと。月の出は午後5時過ぎで、「月は東に日は西へ」太陽コロナも沈む時分だし、お月見ぐらいよろしかろうと勝手な理屈をつけて霞ケ浦畔まで出掛けたのである。

ところがこの日は東の空に低く雲がたれ込め、まさに桜の季節の花曇り。水辺から昇るお月さまは拝めず、雲間から満月が姿を現したのは午後9時過ぎ。自宅からでも見物可能な高みに昇ってからだった。

お月見とはいうが、月の出の時間帯にこだわるようになったのは、二十三夜をはじめとする「月待」の行事に興味をもった(コラム第16回第22回)からだった。中天に昇った月を撮れば天体写真になってしまうが、地表近くなら樹木や水辺の写り込みが逆に興趣を誘う。月の出と同時に空の色調が一変するのをおもしろがった。

そんな話をしていたら、昨春土浦駅東に事務所を構えた知人が「花見の時期においでよ」と誘ってくれた。3階建てのビル屋上から川岸の桜並木を一望できるのが自慢だ。今年は早めに散ってしまいそうな懸念もあったが、満月の3月29日は昨年より1週間以上早く、ぴったり満開のタイミングに合った。

東に開けたロケーション

月の出時刻に合わせて午後6時30分過ぎにビルを訪ねると、知人は「曇ってしまったねえ」と迎えてくれた。屋上に昇ると日はとうに沈み、河口の先、東の方角は点々と街の灯が見える程度で月の気配はない。今年も低く立ち込めた雲に月見を阻まれるのか。

しかし10分も経つと、対岸上空の一点ににじむような赤みが差し、やがて月の色だと分かる。昇る月はいつだって深紅の色合いなのだ。

「あれは雲じゃなく霞。霞ケ浦特有の春霞ですよ。じきに満月が見えるはず」と解説するそばから、桜並木を越えたあたりでこうこうと輝きだした。手前の桜と望遠でのぞく満月、いずれかにしか焦点は合わないが、構図をいろいろ探してシャッターを押した。

「春霞 かすみの浦を 行舟の よそにもみえぬ 人をこひつつ」藤原定家

霞ケ浦のおかげで、高いビルに昇らずとも東に開けた展望を持つ土浦は、月の出見物に格好のロケーションをもっている。平坦な地形で、家屋や電線・電柱にさえぎられることもあまりない。ビューポイントに月の出の時刻と方角を表示する掲示板を設けたり、月光サイクリングを仕掛けたり、観光資源としてもっと活用できるはず。月々の月見のたびに思うのである。(ブロガー)

アライグマ対策追い付かず 捕獲数13年で166倍超、防除は住民任せ

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つくば市金田地区の民家で捕獲されたアライグマ(「衛生害虫獣駆除サービスたいじ屋」渡辺一之さん提供)

茨城県の「第2次アライグマ防除実施計画」が31日に期限を迎える。特定外来生物に指定されるアライグマは、「生態系への被害防止のため最終的には野外からの完全排除を目標として防除を行う」とする県の説明の一方で、防除対策は住民に任され増加に歯止めはかかっていない。次年度以降の対策はどうなるのか。県は「4月中旬頃を目安に正式な公表を予定」していると説明する。

9頭が1499頭超に

2月末の段階で、今年度に県全体で捕獲されたアライグマは1499頭。増加傾向が顕著になった2007年度は、わずかに9頭だった。茨城で初めて野生のアライグマが観測されたのが1994年。個体数の増加とともに生息域も広がった。

国により2009年「特定外来生物」に指定されたアライグマは、生態系への影響が強く危惧され、対策の緊急性が高いことから、2016年には「緊急対策外来種」のリストにも載った。県内ではつくば市、土浦市を含む12自治体が、最もアライグマが定着しているとの想定から「重点防除対応地域」になっている。「防除」とは、「予防と駆除」を同時に行うことを意味する。

県によると農業関連の被害額は、2019年度が約855万円。被害が顕著なイノシシによる被害額が9000万円であることに比べるとまだ少ない。全国的には2000年に3600万円だったものが、2018年は3億7500万円に増えている。

県は2010年、アライグマ防除実施計画を策定し対策を進めてきた。2016年には改めて5カ年間の「第2次アライグマ防除実施計画」を再策定した。その間も、捕獲された個体数は増加の一途をたどっている。

「科学的データが不足」

「防除計画」の課題として、県自然環境課自然・鳥獣保護管理グループは取材に対し、個体数を減少させるための科学的データが不足しており、引き続き防除と情報収集に努めると回答した。また今後の改善点として、行政の取り組みを充実させるとした上で、「住民自らによる捕獲と予防管理の実施」について、地域住民へ一層の周知拡大を図るとする。さらに「従来からの捕獲従事者の養成等を継続し、防除の体制の整備拡充を進めたい」と展望を述べた。

アライグマ駆除には狩猟免許が必要ないが、捕獲するには「防除作業従事者」になる必要がある。県が例年7月ごろに開催する講習会へ参加し、安全確保の講義やわなの組み立て実習などを経て、市町村の「従事者」として防除作業に臨むことになっている。

行政は捕獲用の檻を貸し出し、捕獲した個体を引き取る程度の役割で、捕獲自体は市民の自主性に任されている現状がある。

市街地からも駆除依頼顕著に

日本で野生化したアライグマが最初に確認されたのは1962年。全国的な広がりのきっかけは、1970年代に放映されたアニメによるペットブームだという説がある。以降、2006年までに全都道府県で確認されている。

アライグマやハクビシンの被害を受けたことがある岩瀬明さんの農地=つくば市内

つくば市の猟友会桜支部長、岩瀬明さん(72)は、アライグマを含めた野生動物増加の要因を、農村部の高齢化と人口減少、社会構造の変化が関連し合うと話す。手入れの行き届かない山林や耕作放棄地が増え、野生動物が住み着いた。それにより獣害が増えることで、さらに離農する人が増えるという悪循環を指摘する。

水戸市を拠点に活動する「衛生害虫獣駆除サービスたいじ屋」の渡辺一之さん(57)は、駆除依頼ケースの変化を話す。高齢化により家主を亡くした空き家に住み着く野生動物への依頼が増えているのだ。依頼は農村部だけでなく、市街地からも顕著になっている。また、駆除現場からの実感として、増加する「餌」の存在も指摘する。空き家敷地内に放置される樹木に実る柿や栗などの果実、農地に積み上げ遺棄される農作物などがある。

アライグマ対策は、県の防除計画をもとに市町村が現場に応対する。自治体によって対応に「熱量の差」があると渡辺さんは指摘する。アライグマは生後1年で、4月ごろから複数の子どもを出産する。このため、春から夏の捕獲圧を上げることが生息数を減らすのに効果的とされるが、講習会の開催時期が7月ごろで適切なのか。捕獲許可申請の迅速さ、担当職員の情報収集力など、行政の当事者意識が、多角的な対応を必要とするこの問題解決の鍵になる。(柴田大輔)

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高校生の進学情報格差なくしたい 筑波大生らオンライン塾立ち上げ

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代表の長谷川弘貴さん=23日、筑波大学石の広場で撮影

筑波大学の学生らが昨年、無料のオンライン塾を立ち上げた。高校生らの学習や進路の指導を行う「学び舎栄智(まなびやえいち)」だ。活動の大きな目標は、地方と首都圏の高校の間にある大学進学に関する情報格差をなくすことだ。代表の長谷川弘貴さんは、同大理工学群数学類1年で、地方出身。団体を立ち上げた経緯とこれからの展望について話を聞いた。

―活動のきっかけはなにか。

長谷川 高校生の頃から大学進学に関する「情報格差」に大きな関心を持っていた。自分が通っていた高校は、授業料は払っているのに自分が望んだような情報が得られないという状況だった。そういう環境の中で進学の情報格差というものには大きな関心を高校時代から抱いていた。

行動に移すきっかけは新型コロナで時間の余裕が出来たこと。昨年、入学していきなりコロナ禍が直撃した。春学期(前期)が完全にオンライン授業になってしまって残念だったが、時間的には余裕が出来た。「時間だけはあるので何かをやってみよう」という気持ちになって、活動をスタートさせた。

―「学び舎栄智」はどんな活動をするのか。

長谷川 活動をスタートさせたのは昨年の4月から5月。将来的には有料の塾を運営したいと思っているが、今はその前の段階。高校生の学習指導や進路相談などを無料で行なって、市場調査をしているところ。団体の構成員としては、筑波大の学生が7人、茨城大学が2人、山形大学が1人の計10人で活動をしている。

―活動のきっかけとなった「情報格差」とは具体的にどういうものか。

長谷川 やはり大きな問題は地方と首都圏の大学進学情報の格差だ。地方に住んでいる高校生は、そもそも大学に通うイメージをもてなかったり、大学の情報を集めるということが難しかったりする。まずはそういう情報格差を出来るだけ埋めていきたいと思っている。

活動に協力してくれている大学生は地方出身の子が多い。彼らは地方と首都圏の間にある情報格差を実際に体感していて、栄智の活動方針に共感してくれている。具体的な活動としては、大学生がオンラインで大学生活について話す活動や、公式サイトで大学生活の様子などを書く活動をやっている。

活動をサポートしてくれている地方出身の学生は、そうした情報格差という問題意識を共有していると思うし、団体としてのモチベーションにつながっていると感じる。

―普段どのような活動を行っているのか。

長谷川 活動の主軸はオンラインでの学習指導。応募してきてくれた高校生とオンラインで面談をして、希望する進路に近い学部や学科の学生が個別で指導をしている。

今のところ、栄智に集まってきてくれている高校生は「現在の所属学年よりも進んだ範囲を予習しておきたい」と希望する子が多い。授業の予習をオンラインで支援しているという言い方が良いかもしれない。

その他としては、ブログで筑波大学のすごい学生を紹介したり「大学で役に立つ積分」と銘打って数学の解説を書いたりしている。

公式サイトで現役の学生に対するインタビューを公開している

―ほかの個人塾との違い、栄智ならではの特徴は。

長谷川 大学生がやっているということがあって、生徒と年齢が近い。面談をしながらお互いに指導の仕方を模索している。押し付けるのではなく、生徒と一緒に指導の方法から考えていくところが他にはない強みだと思っている。

―活動する上で苦労しているところは。

長谷川 やはり指導する講師とのマッチングが難しい。高校生の生徒は、一人ひとり求めているものが違うので、要望に合うような講師を充てることに苦労している。

今いるメンバーは、理系大学生に偏っているところがある。生徒は理系だけではないので、文系科目の指導には今は弱みがあるように思う。それも含めて自分としては楽しくやっている。一人ひとりに合った講義をするというのが強みであり、難しさだと感じる。

―今後はどのように活動していきたいか。

長谷川 今はその段階に向けて頑張っている最中だが、将来的にはお金をとってやっていきたい。それは教える方の責任にもなるし、「お金を払っているのだからきちんと受けよう」という生徒の姿勢にもつながる。まだ始めたばかりなので、そこまでいくのはまだ先だとは思っている。

そうして活動の質を上げていくなかで、高校生に情報を届けていくことが出来たらうれしい。

(聞き手・山口和紀)

◆栄智のホームぺージはこちら。公式ツイッターはこちら。活動に関わってくれる大学生を募集している。