【コラム・坂本栄】今年もよろしくお願い申し上げます。
ロシアのウクライナ侵攻とハマスのイスラエル攻撃には共通点があります。自分たちが軽く見られるようになり、その存在を周りに再確認させたいとの焦りです。日本の周辺にもそういった思考癖がある国があります。用心しなければなりません。
昨秋、ネット媒体「NEWSつくば」が日本メディア学会で取り上げられました。研究者は「非プロフィット(非営利)・脱ペーパー・超ローカル」に強い関心を持ったようです。グーグルやヤフーなどが運営する「ニュース・プラットフォーム」との関係も話題になり、先生方との意見交換は有益でした。
以上は私の年賀状の全文です。今年最初の本欄は上の2パラグラフの補足になります。
問題の解決を武力に頼る時代
国際秩序のタガが緩んでいます。問題を暴力で解決することが目立つようになったからです。NATO(北大西洋条約機構)の拡大をロシアが恐れ、イスラエルと回教大国の仲直りがハマスを焦らせ、そういった恐怖や焦燥が彼らを武力行使に走らせました。米国の力が相対的に弱くなったことも、軍事が幅を利かせるようになった一因です。
日本の近隣にも、核弾頭やその運搬手段の開発で威嚇しようと考える小国、内外の問題を軍事力の誇示で解決しようとする大国があります。欧州や中東だけでなく、日本の周辺も厄介なことになってきました。
一番厄介なのは、米国が20世紀にそうであったような大国ではなく、内向きの国になったことです。前大統領の「米国第一」が、国民の気分を汲み取ったスローガンであることを考えると、対米関係もこれまでとは違ったものになります。大統領選がある今年、新たな米国との枠組みが必要になるかもしれません。
戦後の経済を律してきた自由貿易や市場原理も過去のものになりつつあります。軍事をコアとする安全保障が国際貿易や企業活動に介入するようになったからです。こういった国際構造の変化をきちんと受け止め、機敏に対応する必要があるでしょう。
ニュース砂漠と地域ジャーナリズム
昨年11月4日、日本メディア学会のワークショップ(ウェブ会議ツールZOOMを使った研究集会)で、当サイトが取り上げられました。タイトルは「ニュース砂漠と地域ジャーナリズム―非営利法人『NEWSつくば』を事例として」です。私、編集担当者、システム担当者が参加し、約2時間、全国の研究者と議論しました。
年賀状に書いたように、大学などの研究者は「NEWSつくば」の試み=非プロフィット(営利)、脱ペーパー(新聞)、超ローカル(つくば・土浦中心)=が面白いと思ったようです。
ここで私は、①税金で仕事をしている組織の監視が編集方針の一つ②記者は元記者(プロ)と市民記者(アマチュア)で構成、③新聞社などを退職した元記者の参加を歓迎、④地域に住まう識者のコラム寄稿も歓迎、⑤運営費は大口小口の寄付に多くを依存、⑥寄付文化が根付く米国との違い経費の捻出に苦労、⑦ニュース・プラットフォームは地域メディアの発信力にプラス―などと報告しました。
研究者の方々は、非プロフィットに強い関心を示しました。広告収入に頼る民間放送、購読料+広告料に頼る新聞がメディア運営の常識ですから、当然といえます。当サイトは今年でスタート(2017年10月)から7年。先に挙げた特性を踏まえながら、新基軸を取り入れていきます。(NEWSつくば理事長、経済ジャーナリスト)