【コラム・山口京子】消費生活センターと関わるようになって2年がたちます。同センターとは、地方自治体に置かれる消費者サービス機関で、事業者に対する消費者の苦情や相談の対応をしています。両者の間には情報の量や質に格差が存在し、交渉力の格差も大きいため、契約トラブルなどから消費者を守るために設置されました。トラブルを防ぐための啓発活動やSDGsなど、消費生活にかかわる様々な活動に取り組んでいます。

センターには、消費者トラブルに関する注意喚起の冊子や書籍が数多く置かれています。たまたま手にした2冊の刊行物に奨学金制度の記事がありました。一つは、「国民生活」(独立行政法人・国民生活センター刊)2022年12月号、「奨学金制度を利用する前に知っておきたいこと」(あんびるえつこ氏)です。

この記事によると、奨学金を利用する学生は大学生の約5割近くになる、代表的な奨学金制度である独立行政法人・日本学生支援機構(JASSO)の奨学金には給付型と貸与型がある、給付型は9%程度で9割以上が貸与型である、貸与型には無利子の第1種と有利子の第2種がある、こういったことが書かれています。

奨学金は学生本人が卒業後返済していくもので、返済額によるものの、返済期間が長期にわたる傾向にあります。失業や減収などで滞納が続くと、延滞金発生や個人信用情報機関へ登録されるなど不利益が出るため、返済が難しい場合はJASSOの奨学金相談センターに連絡するよう呼びかけています。

奨学金を借りるとはどういうことか理解してもらうための金融教育の必要性や、奨学金制度のあるべき姿を大人も高校生自身も考えてほしい―というメッセージを読み取りました。

奨学金事業は貸金ビジネス?

もう一つは、「消費者法ニュース」(消費者法発行会議刊行)2023年10月号、「奨学金制度、会計年度任用職員制度 なぜ第二臨調を問うのか-日本社会疲弊の原点-」(柴田武男氏)です。2004年に発足したJASSOの前身である日本育英会の時代は、奨学金原資は国からの貸付金で、貸与は無利子であったが、第二臨調で有利子制度への提言がされ、家庭の責任が強調されたとありました。

第一種の原資は一般会計の貸付金ですが、第二種は日本学生支援債を発行し、市場から資金調達しているそうです。2023年5月の300億円の債券発行利率は0.08%、奨学金の貸付利率は7月時点で0.637%となっていて、奨学金事業が貸金ビジネスになっていると問題提起をされていました。

これからの在り方を考えるにあたって、今の制度を知ること、その歴史的経緯を知ることが必要なのですね。(消費生活アドバイザー)