【コラム・原田博夫】昨今メディアをにぎわしているのが、自民党安倍派のパーティー券収入の裏金化問題である。岸田首相は、自派には影響ナシと見てか、当初はいつも通り慎重な対応だったが、なぜか自身の支持率も低下するに至り、とりあえずは安倍派の閣僚・党役員・副大臣・政務官などを差し替える弥縫(びぼう)策で、乗り切ろうとしている。

こうした金銭授受を巡る問題は、政治活動の少なからざる局面で多くの国民も昔からうさん臭さを感じながらも、漠然とやり過ごしてきた感がある。とはいえ、使途不明金の存在は、個人の活動であっても公的なものであれば税制上は認められるわけもなく、ましてや公人としての政治家の活動では透明性・公開性が求められる。

こうした問題を引き起こした政治家は、しかるべく、検察の捜査・立件・公判などの法の下での裁きを受けなくてはならない。

しかし、それが確定するまでには相当の日時がかかる。さらには、このような事案が他派閥でも生じているなど構造的なものであれば、選挙制度(衆議院の定数465人中、小選挙区289人・比例代表176人。参議院の定数248人中、比例代表100人・選挙区148人)の大改革や政治資金規正法改正を視野に入れるべきだとする論調も出ている。

刑が確定した政治家は公民権停止に

しかし、こうした制度改革には、現在の民主主義制度下では、国会議員の発議・立法化が必要である。仮にメディアなどでどれだけ機運が盛り上がっても、肝心の国会内での与党・政権党がその気にならなければ、結局は球場外の声に終わってしまう。では、この手詰まり感をどう突破すべきか。

まずはこの問題で、現行制度の下で刑が確定した政治家は、その後一定期間国政選挙には立候補できないというルール(すなわち公民権停止)を、国会の場(できるだけ全会一致)で取り決めることである。この公民権停止期間は、(現憲法下での二院制を前提にする限り)衆議院の場合は4年間、参議院の場合は3年間、とする。

政治資金パーティーを巡る裏金疑惑の深刻さ・波及範囲が見えない現時点では、ここまでの措置はフライイングだと躊躇(ちゅうちょ)する向きもあるかもしれない。さらには、そこまで罪の償いを求めては、せっかくの(国政に選出されていた)有為な人材も一網打尽に退場を求めるようなものだとの反論もあるだろう。

しかし歴史に範を求めれば、少なくともわが国の近代史に限っても、明治維新時、昭和20年代いずれも、それ以前の体制派の大方はどんなに人格・識見が高潔であっても、次代の公職からは排除された。軍事的な内乱は極力抑えられたが、次代の統治機構は、旧体制の打倒に貢献した勢力および全国から新たにリクルートされた人材から構成され、新機軸を試行錯誤で模索したのである。

仮に現行の国会議員の半数が公民権停止になったところで、全国に目を向ければ、有為な人材は澎湃(ほうはい)として存在している、というのが私の見立てである。わが国の進路を真剣に論じ確立するには、先例を安易に踏襲する形骸化した政治ゲームに安住している国会議員に活を入れるべきだと思う。(専修大学名誉教授)