土曜日, 11月 8, 2025
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【高校野球代替大会】常総 佐々木監督に聞く4 伝説のヒーローが好影響

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投手の2枚看板、菊地竜雅(㊧、中学3年の春季シニア関東大会当時)と一條力真(中学3年7月の夏季全日本軟式関東大会当時)

【伊達康】県の高校野球代替大会が11日から始まる。優勝候補筆頭、常総学院の佐々木力監督にインタビューした4回目は、ノッカーの心得やスカウティングについて聞いた。

島田直也さんがコーチに

ー今年からOBで元プロの島田直也さん(日本ハム、横浜などで活躍)が投手コーチとして加わりました。島田さんが加わったことはチームにどのような影響を与えたでしょうか。

佐々木 やはりプロで活躍してあれだけの成績を残した投手なので選手の信頼が厚いと言いますか、私には言いづらいことでも島田君には話したりしているようです。

私が野手出身なので、投手目線で指摘してもらったりあらゆる面でプラスになっています。取手二高でいうとエースの石田文樹(横浜で活躍、がんにより41歳で死去)が伝説のヒーロー扱いされるんですけれども、常総学院では島田君が石田みたいな伝説のヒーローなので(笑)。その辺は子どもたちも分かっていて、目を輝かせながら会話しています。

逆転で勝つ常総へ

ー大変聞きづらい質問ですが、試合終盤、特に9回に逆転負けを喫することがここのところ続いています。逆転負けについてどうアプローチし対策を講じているでしょうか。

佐々木 逆転負けに菊地と一條が絡んでいるのがほとんどなので、最後の夏にそのあたりを本人たちがどう解決してくれるか楽しみにしています。

これだけ投げる機会がなくスタミナが持つとは到底思えないので完封、完投っていうのはないと思います。

無理して投げさせたら壊す危険性もあるし。その辺は本人と話し合いながら大会に入っていこうと思います。あまり先行しないでこの大会は逆転で勝つ常総にしたいですね(笑)。

ノッカーの心得

ー常総学院の試合前ノックは芸術作品のようにリズミカルに進んでいく印象です。よろしければノックを打つ際にノッカーとして気をつけていることを教えていただけないでしょうか。

佐々木 私の場合、シートノックの7分間で大体110本くらい打っています。どういうノックを打つかという前に、選手20人と同じ呼吸で、同じリズムで入ることを心がけるべきですね。ギリギリのプレーとかじゃなくて、リズムで一連の動作が流れるようになるのが一番きれいなノックですし、「俺がノックを打ってやるんだ。俺がノッカーで偉いんだ」ってなると、絶対に選手は固まってしまいます。

リラックスして捕りやすいようにする。次どこに打つか決まっていますし、それをきちっと選手も分かっていますので。自分が周りに魅せたくて「あと3メートル右に打ってください」とかいう要求をしてくる選手も昔はいましたね。

110本をリズミカルに打っていって、選手たちがそこに乗っかってくれれば、本当にノーエラーでいけます。昔は110本打ってエラーが1個とか2個とか、シートノックの練習をしながら数えていました。

今はそこまで考える必要はないんじゃないかと思うんですけれども。気持ちを一緒にしてノックをやるみたいなところに気を遣っていましたね。

怒っているときはやっぱりずれが出てくるので、ノックを打つときは気持ちを落ち着かせて打つ。シートノックではない普通の練習の時は引っかけたりこすったり色々打ってやります。今は変化球の球種が多いので、先っぽや根っこに当たった打球も多いですからね。そうやっていくと選手は上手くなっていくと思います。

ボールがバットのどの部分に当たって切れていくか、伸びていくか、ヘッドを立てたり下げたり当たり損ねたりというのをノックでやってやらないと、試合では何本もないのに対応できませんからね。ノックで色々見せてやると、バットにどう当たればボールがどう回転するかが分かるので、バッティングの技術的な部分もノックを見ながら学習していく選手もいました。

スカウティングで重視すべきこと

ー最後に、選手のスカウティングについてお聞きします。中学生をスカウティングする際に重要視しているポイントはどこでしょうか。たとえば体つきですとか、フォーム、足の速さ、運び方などのポイントはありますでしょうか。

佐々木 センターラインがスカウティングで一番大事だと思います。キャッチャーに関しては肩が強いというのが条件ですね。それに股関節が硬いとショートバウンドが止められません。昔は体の大きなキャッチャーがホームでクロスプレーに有利だということでしたが、今はコリジョンルール(衝突プレー防止規則)があってそんなに大きなキャッチャーは必要なくなりました。

正捕手の中山琉唯(小山ボーイズ)なんかもそんなに大きくはないのですが、三拍子揃っていて非常に欲しかった選手なので、20校近くの誘いがあった中で熱烈に誘ってうちに来てもらいました。

1番捕手で主将の重責を担う中山琉唯=正面㊨、昨年秋の大会

ピッチャーは伸びしろを考えながら獲るっていうのが大事ですね。一條(力真、石岡中)なんかは軟式(オール県南選抜)の2番手でひょろひょろしていましたが、お母さんが大きくて、お父さんもがっちりしていますので、お母さんが大きいのでたぶん大きくなるから育ててみるかということで、大峰先生と相談して獲りにいきました。

当時180センチに満たなかったですが今は189センチです。また、取手シニアのエースとして全国でも有名だった菊地(竜雅、けやき台中)に関しては当時から137キロ放っていてできあがっていましたので是非欲しいと。できあがっている選手を獲るのも一つだし、伸びしろを計算して獲るのも大事だと思います。ピッチャーは怪我などがあり一人だけでは成り立たないですから、4人くらい獲れれば一番良いです。それも左右2枚ずついれば最高です。

ショートに関してはハンドリングと足裁きが一番大事だと思います。近年、カウンターになってボールに衝突してしまう選手が多いです。やはり肘から先で吸収できるような柔らかいハンドリングを持っている子が常総のショートにふさわしいのかなと。歴代のショートは金子誠さん(日本ハムで活躍し現在一軍野手総合コーチ)をはじめ非常に上でも活躍する選手が多いので、そういうところを見ながらスカウティングをしています。

外野に関して、以前は内野やピッチャーをやっていた子に外野をやらせたこともありました。内野ができれば外野もできるだろうと。ただやはり今は専門職というか、外野でトップクラスを獲らないと太刀打ちできません。ノックの量が少なくなったというのもあるのでしょうけれど、脚力プラスボールへ最短距離でいける感性を持った子が少なくなったので、そういう専門的な外野手を獲らないと潰しの起用では難しいと思います。

昨夏の日立商戦でコールド勝ちを決める2ランを放ち喜ぶナインが待ち構えるなか両足でホームを踏む中妻翔

ーそういった面では中妻翔選手(日体大1年)は外野手として抜群の能力を発揮していましたね。尋常じゃない守備力でした。

佐々木 中妻の場合、入学したての1年春のオープン戦でいきなりセンターとして起用したのですが、絶対に抜けるよなという大きな当たりを軽々と捕っていましたので、これはセンターが出来上がったなと、安泰だなと、その時点で確信しましたよ。ピッチャーでも左で小さい子でしたけれど、コントロールが良いので重宝しました。本当にユーティリティプレーヤーでしたね。

進学先の日体大の監督さんからも、素晴らしい選手だと、春先からメンバーに入る予定であると連絡をもらっていたのですがリーグ戦がありませんでしたからね。木のバットに対応できれば十分活躍できると思っています。(常総学院監督インタビュー編 終わり)

《吾妻カガミ》85 つくば市長選 2つの風景

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つくば市役所正面玄関サイド

【コラム・坂本栄】国や県のコロナ警戒レベルは下がりましたが、マスク着用とか対人距離など、まだ不自由な日々が続いています。コロナ問題を何度も取り上げてきた本コラム。今回は、「いま、つくば市政が面白い」(6月15日掲載)、「つくばの市長戦まで5カ月」(6月1日掲載)で扱った話をフォローアップします。

本コラムに市から抗議!

「いま、つくば市政が面白い」では、市が4月に発表したコロナ施策の目玉「市内事業者応援チケット事業」について、「(市は制度設計を)内々に変えました」と指摘したところ(詳しくは上の青字部をクリックしてご覧ください)、市の幹部から「変えていない」と抗議の電話が入りました。これに私は以下のように反論しました。

1点目は、事業の柱であるクラウドファンディング(CF)について。CFとは「リスク承知の投資資金をネットで集めること」です。したがって、応援者がおカネを払い込む際に受け取るチケットが紙クズになっても、おカネを集める側に払い戻し責任はありません。ところが市は、この事業を発表したあと、チケットに「払い戻し保証」を付けました。設計の基本を変更したわけです。

2点目は、応援チケット事業の事務局について。市議会への議案説明、そのあとの市長記者会見では、事務局として「つくば観光コンベンション協会」などの業界団体が例示されていました。ところが最終的には、事務局は業界団体=民ではなく、市役所=官に置かれることになりました。これも大きな変更です。

それなのに、市はなぜ「変えていない」と言い張るのでしょうか? どうやら、変更を認めるのは格好(かっこう)が悪いと思っているようです。でも、いま流行(はやり)のCFでおカネを集めてチケットを配るという事業の設計のうち、CFはリスクマネー(大損覚悟のおカネ)の受入口ではなく、払い戻し保証を付けることによって、単なる入金口座に機能が変更されました。こうしなければ、市はリスクのある投資事業(!)を運営していたことになりますから、賢明な変更といえるでしょう。

要は、入金先をCFでなく銀行口座の類にしておけば、迷走はなかったのです。秋の市長選挙を意識した現市長のパフォーマンスは、何かと手違いを引き起こすものです。

コロナは市長選の障害?

もう一つのコラム「つくばの市長選まで5カ月」では、「(現市長のほかに)保守系の現職県議が着々と(立候補の)準備を進めています」と書きました。こちらも、詳しくは青字部をクリックしてください。ところが、先月、この挑戦者は出馬を断念してしまいました。

政治家も政策も選挙で鍛えられます。現県議と現市長との激戦と読んでいただけに、残念です。戦線離脱の理由について、コロナ禍が長引き思うように活動できないと話しているそうですが、いろいろあったようです。準備はかなり進んでいたと聞きますから、この県議にとっては大きな政治的失点になります。新しい挑戦者の登場を待ちましょう。(経済ジャーナリスト)

【高校野球代替大会】常総 佐々木監督に聞く3 「3年生主体で勝ちにいく」

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2016年に優勝しマウンドに集まるナイン(水戸市民球場)。この年以来の夏の頂点を狙う。右は佐々木力監督(常総学院グラウンド)

【伊達康】県の高校野球代替大会が11日から始まる。優勝候補筆頭、常総学院の佐々木力監督にインタビューした3回目、大会に向けた意気込みなどを聞いた。

ーいよいよ11日から代替大会が始まります。常総学院はシードのため初戦の相手は18日に取手二と取手松陽の勝者と決まりました。今大会をチームとしてどのように位置付け戦うのか、大会に向けての意気込みを教えてください。

佐々木 3年生は全員ベンチ入りします。大学に行って野球を続けたくても、一度も公式戦で登録されていない場合は高校での実績がないため大学から評価してもらえません。

今回は代替大会ではありますが、それを県大会として位置付けて評価してくれる大学さんもあるので、大学で野球をやるかどうかに関わらず、今までの公式戦で一度も登録されていなかった選手を背番号一桁から登録し、優先的に出場させます。

その後の背番号には県大会や関東大会で登録されたことがある3年生が並びます。40番まで背番号を作ったので残った番号には下級生が待機し、ゲームの状況によって出られるようにします。地区予選はこのような布陣で臨みます。

3回戦(県大会)以降は3年生優先のフルメンバーで背番号を与えたいと考えています。18日は大学進学のために有利なGTEC(英語4技能検)という検定試験の日程と重なっており出場できない選手が何人かいます。通常ですと野球の方が優先なのですが、今年は野球だけで大学に行けるかというと難しくなりそうですから必要な子には受けさせます。その選手のためにも初戦は絶対に落とせません。

また、県の代替大会ということで土曜日と日曜日に行われる、普段の夏の大会と異なる日程ですので、それに早く慣れるように持って行くことが大事だと思います。

それと、3年生を出してやりたいという大会でありながら、最後は優勝で終わりたいという強い気持ちがあるので、勝つためには力のある下級生も少しは入れていかないといけないのかなとも思います。

その辺は勝ち上がりながら、試合を進めながら考えていこうと思いますね。ピッチャーも野手もスタミナ、持久力を相当鍛えなければいけない時期にコロナの影響があり、思ったような練習ができなかったものですから、今年は特に疲労や球数なども見極めながら優勝を目指してやっていきたいと思います。

霞ケ浦と明秀日立を警戒

ー他のチームについてお聞きしたいと思います。この夏、一番警戒する選手やチームはどこでしょうか。

佐々木 春の大会が中止になって試合を見ていないし全く分からないんですよね。

霞ケ浦のエース左腕の山本雄大君とは先日練習試合で対戦したんですが、秋からかなり成長していました。非常に良くなっている。結果は2対0で勝ちはしましたが、油断できない相手です。県南では霞ケ浦が上がってくるのかなと思います。

明秀学園日立は良い選手がいるし、練習試合の結果も強豪を相手に勝ち試合をしているという話も聞いているので、県北でマークすべきは明秀でしょうね。

ー昨夏、準々決勝で常磐大高の所宜和君に4安打5打点を浴びました。所感をうかがえればと思います。

佐々木監督が頼もしくなったと語る菊地竜雅。試合展開を読んで準備する(昨年秋の大会)

佐々木 所君には菊地が打たれたんですけれども、一條(力真)も菊地(竜雅)も去年よりはるかにレベルアップしていますし、今年は良いゲームができるんじゃないかと思います(笑)。

この1年で菊地は特に内面がたくましくなりましたね。一條を先発させて菊地が抑えというパターンで投げさせることが多いのですが、以前は自分から投げたいと申し出ることがありませんでした。しかし最近は、一條がピンチを招いても菊地は全然動じずに「行けますよ」みたいな感じで準備しアピールできるようになっています。

すごく頼もしくなっているし成長を感じる。代替大会を前にしてこのチームは自分と一條で勝つんだという自覚が芽生えてきましたね。チームのためにという姿勢が見られるようになりました。(続く)

《霞月楼コレクション》3 小川芋銭 農村と水辺の風物を愛した文人画家

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「浮れ舟」紙本淡彩 霞月楼所蔵

長期滞在の礼にと贈られた作品

【池田充雄】小川芋銭(おがわ・うせん)が霞月楼に滞在した際、主人に贈ったとされる作品「浮れ舟」を掲げる。制作年代は1934(昭和9)年春と伝わるが定かではない。かつての霞月楼は宿泊もでき、長逗留(とうりゅう)して作品に向かう文人墨客(ぶんじんぼっかく)が多くいたそうだ。

落款(らっかん)には「芋銭併題」とあり、これは画と題(賛、添え文とも)共に芋銭という意味。題の冒頭にある「花」と「月」の図柄で「花月」と読ませ、店の名である「霞月」を折り込んだ。全文は以下のように読める。

「花月美なるてふ 千金のよい おぼろ月夜や かすみが浦に 遊ぶなら あの うき草の 浮れ舟」

洋画を学び挿絵画家として出発

小川芋銭は1868(慶応4)年、江戸・赤坂溜池の牛久藩邸に生まれた。本名茂吉。父は同藩大目付職を務めたが、1871(明治4)年の廃藩置県を機に帰農し、牛久沼畔の新治県城中村(現牛久市城中町)に住んだ。

小川芋銭

芋銭は1879(明治12)年に上京すると、本多錦吉郎の画塾「彰技堂」で洋画を4年間学んだほか、独学で和漢洋の画技や教養を修めたという。その後、政治家でジャーナリストの尾崎行雄の推挙を受けて「朝野新聞」の画工となるが、1893(明治26)年、父の意思により牛久に戻り、農業に従事する。

1903(明治36)年、「読売新聞」の懸賞絵画に応募した「新年の意」が第1等当選し、元旦の紙面に掲載された。この頃から「いはらき」「平民新聞」など多くの新聞雑誌に挿絵や短文を発表し始める。1908(明治41)年には初の作品集「草汁漫画」を刊行し、挿絵画家としての名声を高めた。

院展の同人になり土浦で初執筆

1911(明治44)年、友人の小杉未醒(放庵)と2人で初の展覧会を東京と大阪で開催。1915(大正4)年には平福百穂、川端龍子らと「珊瑚会」を結成し、1917(大正6)年6月の第3回珊瑚会展に出品した「肉案」が横山大観に激賞され、日本美術院の同人に迎えられた。

「肉案」1917年 紙本墨画軸装 137×64cm 茨城県近代美術館所蔵

同年8月、芋銭は院展同人としての初作品を制作するため、画想を霞ケ浦に求めた。舟で数日かけて巡った後、神龍寺(土浦市文京町)の一室を借りて2景を描き上げ、牛久へ戻って残り3景を完成させ、「澤國五景」として9月の再興第4回日本美術院展に出品。これを斉藤隆三は「やや漫画的な臭いを残しつつ、克明な写生に基づく細心な風景」と評している。

内助の功により画家として大成

生来虚弱だった芋銭が農業を営みながら画業を続けられたのは、1896(明治29)年に結婚した妻こうの働きぶりが大きかったという。河童や獺(かわうそ)などの妖魅を多く描いたのも、神経衰弱による幻覚の現れと見る人もいる。

画号の「芋銭」は「自分の絵が芋を買うほどの銭になれば」という思いによる。また「牛里」の号で俳人としても活躍し、正岡子規らとも交流があった。雑誌「ホトトギス」では1910(明治43)年から没年まで、表紙絵や挿絵を数多く手掛けている。

芋銭は1938(昭和13)年12月、自宅前の画室「雲魚亭」で没した。この建物は現在、小川芋銭記念館として牛久市が管理し、作品や遺品、書簡などを展示している。墓は近くの稲荷山得月院にある。

「水魅戯」1923年 紙本淡彩軸装 62.4×95.2cm 茨城県近代美術館所蔵
  • 取材協力・参考資料 ▽茨城県近代美術館▽赤坂美術▽図録「小川芋銭展」(2012年、茨城県近代美術館)▽書籍「芋銭書簡拾遺」(1942年、山雅房発行)▽北畠健「小川芋銭研究」ウェブサイト▽牛久市観光協会ウェブサイト

【高校野球代替大会】常総 佐々木監督に聞く2 バッティング感覚にズレ

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戦況を見守る佐々木力監督(中央)=昨年秋の大会

【伊達康】県高校野球代替大会が11日から始まる。優勝候補筆頭、常総学院の佐々木力監督にインタビューした。2回目はチームの状態について聞いた。

ー現在のチーム状況について伺います。空白期間の影響でバッティング感覚のズレが生じているとのことでしたが、練習試合でもあまり快音は出ていないのでしょうか。

佐々木 もともと今年は守備中心の投手力のチームだったので、冬場にどれだけ打ち込んだりトレーニングをしたり、また春先から生きたボールを打って打線を上げていくかというのが夏へ向けてのテーマだったんですけれども、それができませんでした。

その分、今まさに巻き返しをかけているのですが、感覚が戻ってきている子と戻ってこない子がいる。打順を入れ替えながら、また新戦力も見極めながら夏の代替大会のメンバーを組んでいこうと思います。

ー秋は飯田徹選手が4番を打っていましたが、飯田選手も調子を落としていますか。

佐々木 飯田もちょっとズレがあります。本来、気持ちがぶれるような子ではないのですが、春の大会がないとか、夏の甲子園がないとか、そういうショックを引っ張っていたような感じがします。

また、飯田だけではなくて何人かは大学進学という面で、大学のスカウトさんが県外に出られなくて見に来てもらえませんでした。こちらから行きますといっても「それはできないんだ」と断られる。そういった状況ですから、思う通りの進学先から良い返事をもらえていないということもあります。甲子園もない、進学先もうまく決まらないという状況で、何人かの選手は尾を引いているのではないかなとも思います。

2013年にエースとして甲子園8強入りを果たした飯田晴海投手(現日本製鉄鹿島)の弟・飯田徹が4番に座る=同

Wエースは上々の仕上がり

ー甲子園も地方大会も中止となった中で、茨城県は代替の大会を開催する運びとなりました。大会に向けて練習試合を重ねられていますが、言える範囲で、最近どのチームと練習試合を組んで、内容はどうだったかなど、知りたい高校野球ファンがたくさんいると思うので教えていただけないでしょうか。

佐々木 一昨日(6月27日)の学法石川戦では先発の一條が3回を持たずに6点を取られました。今まで試合を重ねてきて初めてこんなに打たれたもので、非常にショックを受けていましたね。

でも翌日の聖光学院戦ではお互いにベストメンバーで組んで、一條が2連投ということで先発しましたが、6回をピシッと抑えてくれました。

7回から遠藤にスイッチして、遠藤が一、二塁のピンチをつくって1回を持たずに菊地をマウンドに上げたのですが、菊地が抑えて結局完封リレーとなり2対0で勝ちました。

一條はそんなに天狗になるような子ではないのですが、いろいろとプロからも注目されて、新聞や雑誌に取り上げられて進路のことも悩んだようです。

大会直前の今が一番悩む時期だし気持ちが浮つく時です。このタイミングで打たれたのもよかったのかなと思います。聖光学院戦は見違えるような感じで投げてくれました。

最速144キロを誇るプロ注目右腕・一條力真=同

細かい常総野球へと回帰

ー菊地竜雅君と一條力真君をはじめとしたプロ注目投手がおり、今年も常総の戦いぶりが注目されます。チーム全体としてはどのような仕上がり具合になっているでしょうか。

佐々木 練習試合を重ねるたびに良くなってきていると思います。バッティングでもピッチングでも一番大事な粘りが出てきている。

ピッチングであればファウルボールで相手に粘られてもフォアボールを出さない。逆にバッティングであればファウルボールで粘ってフォアボールを取る。そういうのがちょっとずつ増えてきています。

去年のチームのような破壊力のある打線ではないものですから、長打はなかなか望めないので、以前の常総がやっていた細かい野球を少しでも展開できればと思っています。やっぱり3年生ですのでその辺は体に染みついていて、毎試合こちらが求めるプレーが出ています。

ー三輪拓未選手(2年)が秋はショートのレギュラーで大活躍していました。最近は練習試合に出ていないようですが。

佐々木 三輪は今故障しているんですよ。この頃の練習試合はダブルヘッダーだと午前中には3年生のチーム同士で、午後からは1、2年生の秋のチーム同士でという日程で組んでいます。ですから三輪は秋のチームの方でDH(指名打者)やファーストをやっています。やはり秋には中心になってくる選手ですので。当然ベストの状態であれば夏の代替大会でベンチに入ってくるのではないかと思います。

続く

《つくば法律日記》9 あおり運転と平和な車社会

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堀越氏の弁護士事務所があるつくばセンタービル

【コラム・堀越智也】あおり運転に対する罰則を強化する改正道路交通法が6月30日施行されました。

これまで、あおり運転という言葉に具体的な定義はありませんでした。かつては「安全運転していたら後ろからあおられたよ」みたいな使い方がしっくりきた方は多いのではないでしょうか。それが、痛ましい事件が起き、マスコミで様々な危険な運転のニュースが取り上げられるようになり、あおり運転とはなんだ?後ろからなのか前からなのか?などと、素朴な疑問が国民に生じているさなかの道交法改正です。

あおり運転として10の類型が定められています。車間距離不保持、急ブレーキ、割り込み、幅寄せや蛇行運転、不必要なクラクション等々。あくまでもこれらの運転を「交通を妨害させる目的で」ということになっているのですが、運転があまりうまくないせいで列挙されているような10の類型に当てはまる運転をしてしまう人もいそうで、悪気ない人が不利益を被らないかと若干心配になります。

道交法が改正されたことで、これらの類型を頭に入れて運転している人は,他の車両の運転にも目を光らせることでしょう。例えば、急な車線変更をした車を見かけた時に、それが初心者であったり、道に不案内であったせいでも、警察に通報されるようなことがあれば、初心者や慣れない土地で運転する人は、少し怖くなります。僕も首都高を走っていて、どこで高速を下りるかの判断を迷い、急に車線変更しなければならなくなった時に困るなあと心配になります。

さらに言うと、マスコミで取り上げられたような危険な運転をしている人に、10種類の類型のどれかに当てはまる車を見つけて、嫌がらせをするための武器を与えていないかと心配になります。

一番は思いやり運転

今回の道交法改正は、痛ましい事故の影響を受けている点で、飲酒運転の厳罰化とパラレルに語られることがあります。確かに、飲酒運転の厳罰化の経緯に、マスコミで重大な事故が取り上げられ、かつ当時の法律だと罰則が軽すぎるという事情があったことは、今回と同様です。しかし、飲酒運転は、厳罰化しても、交通ルールを守っている真面目なドライバーにとって何ら困ることはありません。また、僕の手元にデータがあるわけではありませんが、飲酒運転をしているドライバーが多かったことも事実なのだと思います。

しかし、今回の道交法改正に関しては、真面目ドライバーが運転をするのに不安を覚える可能性があると思います。また、悪質なドライバーがどれだけ多いかというデータをとって、国民の運転態度を制限することにしたのか、疑問があります。

ただ、車がないと生きていけない車社会に生きる僕の思いとしては、道交法が改正されたことは仕方ないとしても、その過程で、思いやり運転を推奨する議論をもっとしてほしかったです。

マスコミが取り上げた事例に、周囲の車に腹を立てて危険な運転をしている人がいましたが、実はその周囲の車に悪気はなく、運転技術があまり高くないだけの場合も多いです。そんな時、少し冷静になって他者を思いやれば、腹を立てずに済みます。

また、初心者や運転技術があまり高くない人への思いやり運転を心がけていれば,改正道交法を根拠にむげに他のドライバーを批難することも減るでしょう。車社会に身を置いて大切だと感じることは、個々の運転技術や注意力もさることながら、一番は思いやり運転です。

厳罰化がやむを得ない場合もありますが、「人を罰するよりも許すことの方がはるかに気高い」と言ったガンジーの言葉は、相手の表情が見えにくい車社会では、より当てはまるような気がします。あおり運転を減らそうとした改正道交法が、国民同士の罰し合いをあおらないことを祈るばかりです。(弁護士)

感染対策をステージ2に引き上げ 新型コロナで県

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茨城県庁

【鈴木宏子】新型コロナウイルスの新たな感染者について、大井川和彦知事は3日、県内で新たに6人の感染者が確認されたとして、感染対策指針を最も緩い現在のステージ1から1段階引き上げ、ステージ2に強化すると発表した。

3日の新規感染者6人は、つくば市の20代男性派遣社員▽つくばみらい市の40代男性公務員▽他県の患者の濃厚接触者である美浦村や龍ケ崎市などのいずれも20代女子学生4人。

6人が確認されたことにより、感染対策指針の6つの指標のうち3つがステージ2の状況になったことなどから対策のステージを引き上げる。

県内の6月20日以降の新規感染者は計14人で、20代を中心に6割以上が都内で感染したとみられている。感染場所は通常の会食やイベントへの参加など。

大井川知事は、東京はいわゆる夜の街に行かなくても感染し得る状況になっているとして、東京への移動や滞在は慎重に判断するよう注意喚起した。さらに70歳以上の高齢者や妊婦などに対しては,外出を慎重するなど注意喚起している。

対策指針を改訂、一律の行動制限回避へ

大井川知事は併せて、感染対策指針の改定を発表した。第1波で実施した外出自粛や休業要請など一律の行動制限を回避するため、検査体制や医療提供体制を拡充させ、新しい生活様式の業種ごとのガイドラインを浸透させた上で、個別の店舗、施設の感染防止対策を後押しする。

学校については原則、休校しない方向とする。万が一、学校で感染者が発生した場合も一律に休校とするのではなく、幅広く検査を実施して感染拡大を抑え込むとした。具体的には校舎などの消毒のため2日間程度は一斉休校とするが、その後はクラス単位などで限定的に休校を実施する。さらに休みとなる児童生徒に対してもオンライン学習や分散登校などを組み合わせながら学習機会を確保していくとした。

検査体制については、PCR検査などを現在の1日300件から9月末までに1100件(うち抗原検査250件)に強化する。地域外来・検査センターも現在の4カ所から9月末までに15カ所とする。

大井川知事はその上で県内の事業者に対し、感染拡大防止システム「いばらきアマビエちゃん」=メモ=の導入と活用を呼び掛けた。

※メモ
【いばらきアマビエちゃん】18業種とイベントについて、県が作成した感染防止ガイドラインに基づく対策をとっていると宣誓した事業者に証明書(宣誓書)を発行する制度。事業者は「いばらきアマビエちゃん」という2次元コードを使って申し込む。一方、店舗や施設の利用者は、宣誓書に記載してある2次元コードを読み取って自分のメールを登録すれば、同じ日に同じ施設を使った人から感染者が出た場合、連絡が行くというシステム。近く「いばらきアマビエちゃん」のスペシャル版を作成し、感染がさらに拡大して対策指針がステージ3やステージ4に強化された場合、登録店以外の利用を自粛するよう県民に要請する方針だ。

【高校野球代替大会】常総 佐々木監督に聞く1 「気持ちの整理つかない」

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常総学院、佐々木力監督。忙しい中取材を快諾してくれた

【伊達康】いまいましい感染症の流行が世界のスポーツシーンを激変させた。高校野球においてはセンバツ甲子園だけでなく夏の甲子園までもが中止となり,その前段の地方大会も中止となった。

時を刻めない、区切りが付かない、最後の夏を奪われた球児たちの救済策として、県高野連は独自の代替大会の開催を決定した。

大会の名称は「2020年夏季茨城県高等学校野球大会」。今月11日から始まる大会は茨城の夏の頂点を決めるチャンピオンシップである。交流戦のような形を取って終わりにする他県高野連もある中で、選手に寄り添った茨城県高野連の英断にはとびきりの賛辞を送り敬意を表したい。

大会は原則無観客だが、野球部員1人に付き保護者2人まで入場できる。また登録人数に制限はなく野球部員は全員が出場可能とする柔軟な方針が示された。

コロナ禍を経て、最後の夏とどのように向き合うのか、代替大会を間近に控えた有力校の監督に話を聞いた。

春季大会中止、全体練習禁止

第1回は茨城が誇る名門・常総学院の佐々木力監督。常総学院は昨年秋の県大会で優勝し、今大会でも優勝候補の筆頭といえる戦力だ。菊地竜雅と一條力真というプロ注目の大型右腕2人を擁しながら野球ができないもどかしい日々をどう過ごし、夏に向けていかに気持ちを立て直していったのだろうか。

ー今年はコロナ禍で大変な年となりました。まず、3月11日にセンバツ甲子園の中止が決まり、3月30日に茨城県の春季大会の中止が決まりました。春季大会中止を聞かされた時のお気持ちはいかがだったでしょうか。

佐々木 先に高体連が大会の中止を決定していたので、センバツの中止もあり得るのかなと薄々は感じていたのですけれど、やっぱり中止はあってはならないことではないかと思うんです。3年生にとってチャンスが減るというのはなんとか避けたかった。中止を決定して可能性をゼロにするのではなくて、50%でも60%でも残してもらって、それでまた考え方を修正するみたいな形にしてもらいたかったなと。いきなり「大会はやりません。可能性はゼロです」というのは3年生にとっては非常に残酷な結果だったと思います。

ーその後、4月16日には全国が緊急事態宣言の対象地となり、寮生活すらままならない状態になったと思います。4月下旬だったと思いますが、私が野球場の前を通りかかりましたら「部外者立入り禁止」とのバリケードがありました。緊急事態宣言が出されてから宣言が明けるまでの期間、チームとしてどのようにモチベーションを維持し、練習をされていたでしょうか。

佐々木 3月からは全体練習は一切なし。寮や自宅から集まって自主練という形をとりました。緊急事態宣言の頃には寮を解散し自宅に戻しましたので、グラウンドを開放して、親の自動車による送迎でグラウンドに来られる人は自主練をしていました。特にピッチャーの体がなまってしまっては元に戻すのが大変なので、自宅に帰すに当たって「3日に1回は誰かを相手にしてボールを投げるように」と言い聞かせました。

ピッチャー陣は3日に1回は親の送迎のもとブルペンに入ったり走ったりしてくれていたようです。野手も同じようにバッティングやら守備やら自主練をやっていました。出身のシニアやボーイズのグラウンドで中学校の仲間とキャッチボールやバッティングをやっていた選手もいたようです。

5月25日に学校の分散登校が始まるということで、県外の選手もいるものですから、検温や手洗いなどを徹底しながら状況をみて登校させようということで、1週間前の5月18日に全員を寮に集めました。風邪症状のある選手はおらず、徐々に練習を再開することができました。全体練習を再開してみて、ピッチャーはそこそこ放れる状態でしたが、やはりバッティングは試合形式から離れていた分、感覚のずれが生じてしまっていました。今も打線という感じにはなっておらず打(点)という感じで得点能力が低い部分が見受けられます。

昨年4月の常総学院野球場のホワイトボード。コロナ禍がなければこれだけの試合をこなしているはずだったのだが

「中止あってはならない」

ー5月20日には夏の甲子園大会が79年ぶりの中止と決まりました。中止が決まった日、佐々木監督は何を思い、選手にどのような言葉をかけましたか。

佐々木 中止はないだろう、と強い憤りを感じました。実際には上が決めることなので仕方ないのですが…。選手たちには夏の大会が中止になってしまったということで、気を落とすだろうと思っていましたが、やっぱり3分の1くらいの選手は泣いていました。そんなの当然だと思いますよ。「これを機に野球を辞めますとか、野球を嫌いになったとか、そういうふうになるなよ」という声はかけたんですけれども…。甲子園はないけれど、大学の野球が待っているので、そこに向かって練習しようという話をしました。

ー佐々木監督ご自身のお気持ちはどのように整理されたでしょうか。

佐々木 私は高校野球に30年余り携わっていますが、やはり中止はあってはならないことですね。暴力事件で出場停止なんていうのは身から出たサビのようなところがあるので受け入れるしかないですけれども、これは受け入れることができません。

自分の感覚では、甲子園を夢見ていた子たちから甲子園を完全に奪ってしまうことはないのではないか、時期をずらすとか、もっと選手に寄り添って対応できたのではないかと思います。

センバツの代替試合を8月に甲子園でやるでしょう。夏もそういう大会があっても良いのではないかといまだに思っていますね。ですから、気持ちの整理がついていません。

続く

《続・気軽にSOS》64 低気圧と不安と

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【コラム・浅井和幸】梅雨の真っただ中。じめじめして憂鬱(ゆううつ)な人も増えているのではないでしょうか。古傷が痛んだり、喘息(ぜんそく)がひどくなったりということもあるかも知れません。

私の知り合いにも、これらの症状を持たれている方がいます。ある人は、遠い南の海に台風などが発生して日本に近づいてくるとき、どんどん気圧が低くなっていくとき、心身ともに不安定になって一番苦しいそうです。低気圧や台風が自分の住んでいるところに居座ってしまったら、調子が悪いのは確かだけれど、悪いなりに安定するからまだマシなどと言っていました。

雨が降るときに心身の調子を崩す人たちに上記のことを伝えると、そこまで細かく気にしたことはなかったけれど、そうかも知れないという回答が返ってきます。

雨だろうが低気圧だろうが、関係ない人にとっては、そんなものは気のせいだろう済んでしまうかも知れません。しかし、インターネットで「低気圧不調」や「天気痛」などのワードを検索してみるとよいでしょう。意外と不調に悩まされている方が多いことも分かるかも知れません。実際、大学病院内に「天気痛外来」というものもあります。

さすがにここまでくれば、医学的に、生理学的に、体調に天気が関係してくることは分かりますよね。もちろん、体調に不具合が生じれば、精神的、心理的にも不調をきたしても不思議ではありません。

安心感を得る心理的な対処法

それどころか、身体的なものよりも先に、心理的とか精神的に、脳の反応として低気圧が近づくときに不調が起こっても不思議ではないのです。以前、ケガをしたときに抑うつ状態になることで暴れまわらずにじっとしていて、ケガが治りやすいという効能があるとお伝えしたことがあります。

では、私たち人間の歴史として、天気が悪いときはどのようなときでしょうか。天気が悪いときに、狩りや漁に出かけたり、山菜の採取や田畑の作業に出かけたりしたら、大きな事故に遭う確率が上がるでしょう。足元が悪く滑ったり、がけ崩れなどの災害に遭ったりするかも知れません。そんなときに、膝の故障に気付かなかったら、さらに危険が待ち構えています。

そうならないためには、不安やだるい、やる気のない状態となり、家で待機することで生き延びる機会を増やしてきたのかも知れません。また、天気が悪いときに、自分の心身の調子が悪いことを普段より敏感に察知することで、危険を避けることが出来るかも知れないのです。

現在では様々な危険が社会的に対処されていて、危険回避機能が結果的に過敏と評価を受けることもあるかも知れません。しかし、その機能が悪いものであると捉えるのと、必要なものと捉えて過剰な部分だけ緩和する対処法を探すというのでは、全く違ってくることでしょう。

様々な治療もありますし、心地よい安心感を得るような心理的な対処法も考えられます。ダメだと自分を責めずに、まずは何か好きな飲み物を飲んで、リラックスすることから始めてみてはいかがでしょうか。(精神保健福祉士)

鈴木一彦土浦市議らを不起訴に 残土無許可搬入問題

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撤去されないままの残土=7月2日、土浦市沢辺

土浦市沢辺の土地に無許可で土砂を搬入したとして、市が昨年9月、市残土条例違反の疑いで、事業者の鈴木一彦市議と、施工業者、下請け業者の3者を水戸地検土浦支部に告発した問題(19年9月11日付)で、市は2日までに、同支部から不起訴の通知があったと発表した。

市によると、不起訴理由は明らかにされてない。

市環境保全課によると、業者は昨年7月18日ごろから8月末ごろまで、鈴木氏の親戚が所有する同市沢辺の約4000平方メートルに計約3万2000立方メートルの残土を無許可で搬入した。残土には汚泥を固めた改良土などが含まれ、県外から持ち込まれたとみられるという。

市は搬入が始まった昨年7月から鈴木市議ら3者に口頭などで搬入停止と撤去を指導し、9月に水戸地検と土浦警察署に同条例違反で告発していた。10月4日付で水戸地検は告発状を受理、その後、今年5月1日、3者を不起訴とする4月30日付けの処分通知書が市に通知された。

一方、残土は、搬入からほぼ1年経った現在も撤去されることなく、平均高さ8メートルほどに積み上げられたまま残っている。同課は「撤去に向け引き続き指導していきたい」としている。

《くずかごの唄》64 スペイン風邪の恐怖

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【コラム・奥井登美子】大正8年(1919年)、日本で大流行したインフルエンザ、いわゆる「スペイン風邪」と、今度の新型コロナが、同じような規模になるのではないかと、歴史的な注目が集まっている。

スペイン風邪は土浦でも流行し、奥井の祖父も第2波の大正8年2月、53歳で亡くなっている。父親の死で、アメリカの大学に進学する夢を挫折させられた姑(しゅうとめ)は、スペイン風邪が憎らしくて仕方がなかったらしく、生前、よくそのことを話していた。

「スペイン風邪のとき、消毒なんか、誰が町の指導者だったの?」

「巡査が、やたら威張りくさっていたわよ…」

「保健所は、なかったの?」

「保健所なんて、なかったわよ、すべて、お巡りさんの仕事でね」

「お巡りさんの産地は茨城だって、私の兄がよく言っていた。『オイ・コラ』は、茨城弁なんですって」

新型コロナも、23波が来る?

私の兄、加藤尚文(故人、評論家)は慶應大学の学生時代、学徒動員で土浦の海軍航空隊に所属。そこで何があったか知らないが、教官に頭を殴られて、3日間意識不明になったらしい。教官の話す茨城弁。特に土浦の言葉を、ものすごく怖がっていた。

「巡査の産地かどうか知らないけれど、巡査が威張りくさって、『ソコ退け、ソコ退け』と、石灰を道路にまいて歩いていた」

「石灰? 石灰が消毒薬だったの?」

「そう、クレゾールなんて消毒薬が出てきたのはその後だもの」

「おお石灰、オセッカイ? お節介だ。ワクチンもない時代ですものね、薬は何があったの」

「アスピリンくらいしかなかった」

第2波、第3波、たくさんの死者で、お棺が間に合わない騒ぎだったという。新型コロナも、2波、3波が来るかも知れない。(随筆家、薬剤師)

《ことばのおはなし》23 私のおはなし⑫

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【コラム・山口絹記】血管造影検査から2日後。

眠気でリハビリに集中できない。夜通し本を音読していたせいで寝不足である。2週間後に開頭手術が決まったことで、私は焦りを感じていた。というのも、手術で命を落とす可能性は低いらしいが、脳の出血している部分を摘出するため、失語や右半身の機能障害が再発する恐れがあるからだ。

明日手術です、と言われれば諦めがつくが、2週間時間があると言われると、いろいろやっておきたいと思ってしまうのが人情というものである。朝食後からノートに色々書いては悶々としていると、母からメールが届いた。「色々と考えておこうと思っているとおもいますが、窓辺で陽の光を浴びながら考えてごらん」。

やっと点滴も外れたため、メールを読み返しながら、病棟の廊下を歩いて日の差し込むベンチに座った。外はきっと寒いのだろうが、ガラス越しの日差しは優しく気持ちよかった。

欲をかけばすべて中途半端になるのは目に見えている。想定する状況は、術後2年間、失語症状と右腕の失行が続くこととしよう。それから、自分の口から今の状況を伝えたいと思う人を選定し、術前にリハビリも兼ねて会って話しておくこと。娘のために、できる限り本の朗読を録音しておくこと。自身のためのリハビリ教材の選定と作成、それを妻に託すこと。

手術は10時間近くかかることがあるというから、その間待ちぼうけになるであろう妻と母のレクリエーションも考えねばなるまい。せっかくだから長めの落語でも録音しようか。こんなときだから古典の「死神」なんてどうだろう。すんなり考えがまとまった。なるほど、陽の光というのは大切らしい。

数ヶ国語のAVM単語帳を暗記

その後の2週間はあっという間だった。

入院中の3日間は毎日日本語の文章を7時間、英語の文章を1時間音読、消灯後を含めた4時間は術後のリハビリ教材の作成にあてた。この3日間だけでかなりスムーズな発話能力を取り戻した。日記の誤字脱字もなくなった。

連絡をとった学生時代の友人は「今から行くよ!」と駆けつけてくれた。一児の母となった幼馴染(おさななじみ)は丸一日つくばに滞在してくれた。一時退院中は娘を連れて本屋に行き、子ども用の辞書を買い、一緒に辞書をひきながら絵本を読んだ。私がことばを話せなくなると、娘が暗記してしまったお気に入りの絵本を読んでくれた。日中は同僚や上司が家に遊びに来てくれて、家族が寝静まると、娘のための朗読と、妻と母のための落語を練習し、オンライン英会話で医療従事者と病気について話し合った。

再入院前日には父がふらりと家にやってきた。散々関係ない話をして、帰り際に父は言った。「血管の奇形って言われると、製造元としては責任を感じるんだが。まぁ返品できるもんでもないしな」。

そうなのだ、有りものでどうにかやっていくしかないのだ。

手術前日、再入院した病室では、数カ国語で作成したAVM(脳動静脈奇形)に関する単語帳を暗記しながら眠りについた。明日は久々にゆっくり眠ることができる。-次回に続く-(言語研究者)

実名あげ短歌で墓碑を記す 松崎健一郎さんが第4歌集

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歌集「死者たちの時」表紙と松崎さん近影

【相澤冬樹】水戸市在住の歌人、松崎健一郎さん(72)が第4歌集『死者たちの時』を上梓した。茨城文学賞を受賞した『仕事と日々』以来6年ぶりの出版。亡くなった義母や同僚、大学・土浦一高の同級生など26人について実名をあげ、墓碑を記すかのように歌を送る「追悼」の章を設けている。

松崎さんは元高校の国語教員、茨城民俗学会で常任理事(副会長)を務める。歌集以外にも「親鸞像」「起源の物語『常陸國風土記』」などの著作がある。

歌集に収めたのはいずれも近作だが、高校教員時代にさかのぼっての「日常の風景」の記憶から始まる。

「電車内も禁煙になり高校生のたばこ吸へるを見ぬはよろしも」

やがて、訪れる老い。

「家族らの先頭をいつも歩きしが老いてはあとをついてゆくなり」

歌集後半は、死の色が次第に濃くなる。

「あの本もこの本も読んでおきたいと思へど死んでしまへば読めぬ」

そして、「追悼」の章。義母の伊藤とみ子さん(2014年没)に向けては「お金とは人を動かすみなもとの力なること知り抜きしひと」と詠む。

親鸞の研究家である古田武彦さん(2015年没)には「グランドデザイン描ける者は稀なるを古代史ならば古田武彦」、高校同級の山岡憲さん(2018年没)には「俗からはとほく息してをりながら俗に強くて頼ることあり」と記す。

歌集ではこれら物故者について、個人名のほか逝去の日にち、死因と享年まで記した。松崎さんによれば「それが墓碑には必要なものである」との思いからだそうだ。遺族の了解を取り付け掲載しており、「本の形で名前が残ることにそれぞれが喜んでくれた」と語っている。

▼松崎健一郎『死者たちの時』(A5判、150ページ、真昼のうみかぜ社、本体価格1800円)問い合わせ電話029-259-4406。

《食とエトセトラ》4 梅ジュースや梅干しを作る

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霞ケ浦総合公園の紫陽花

【コラム・吉田礼子】今年の紫陽花(アジサイ)は例年より鮮やかに感じられる。梅雨空にピンクや紫の花の色は一服の清涼剤。空梅雨(からつゆ)の年には瑞々(みずみず)しさが失われ、気の毒なくらい萎(しお)れるが、今年は恵みの雨。紫陽花に元気づけられる。梅雨ならではの仕事がある。梅仕事である。

先ずは梅シロップ(梅ジュース)から始める。固い青梅が最適で、日にちが経っても充分おいしくいただける。酷暑を乗り切るため、原液に氷を入れ、炭酸で割って何度も助けられた。簡単に作れる一品。お忙しい方にもお勧めしたい。

次は梅干し。昨今は、健康維持のために塩分摂取量を減らすことが求められ、梅干しの消費量は減っている。昭和40年代ごろまでは、30%ぐらいの塩分量はよく聞いた。最近は、減塩しても、美味しく傷まない梅干しを作る。

以前、ある梅干しメーカーに5%の減塩梅干しを、どのように作るのか問い合わせたことがある。先ず20%以上の塩で漬け、その後塩抜きをして、ハチミツなどで味付けをして市場に出すということだった。

でも、昔の梅干しを求める声も多い。義母も塩分16%に落ち着いた。高温多湿の日本の夏の気候風土に必要な食品である。昭和生まれの私たちには、日の丸弁当や、梅干しを具に醤油の焼きおにぎりを作ってもらったことが思い出される。

ラッキョウ、ジャムなどの保存食も

梅雨には、ラッキョウ、ピクルス、ジャムなどの保存食作りもある。菌類が活発に動くシーズンは、パン、ピッツア、イーストで作るシュテンゲル(棒状クラッカー)作りにも最適だ。

コロナ禍で、自宅での危機管理のひとつ、食料の調達・備蓄について検証する機会を得た。夫の実家は農家だが、32年前に祖母が亡くなったとき、分家の叔父が米1俵を持って来てくれた。独立した家は備えとして1俵は手を付けないでおく。本家がいざというとき持っていくためと、飢饉などの災害用に、である。

昔は、新米が出来たら1回は食べても、古米から食べていくので、正月を超えないと新米は食べられなかったとのこと。味噌、醤油、塩、砂糖、梅干しなどのほか、乾し椎茸、豆類、麩(ふ)、昆布、かつおぶし、切り干し大根といった乾物の備蓄も大事だった。

これらの使いこなし方の伝承も、昭和生まれの責務と痛感している、同時に、新しい生活様式も取り入れるため、若い人の力も貸してもらいたい。そんなことも考えながら保存食作りに勤(いそ)しんでいる。(料理教室主宰)

新規講座も続々 常陽藝文センターつくば教室 7月本格再開

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講座「竹で編む花籠」で制作する「四海波花籠」

【池田充雄】常陽藝文センターが主宰するカルチャースクール「藝文学苑つくば教室」が今年度の春期講座を再開し、受講生を募集している。

つくば教室は、2012年につくば市吾妻の常陽つくばビル内につくられた。今年度は春期講座を4月に開講したが、新型コロナウイルスの影響で4月7日から休講していた。感染の沈静化を受けて6月12日から一部講座を再開し、いよいよ7月から本格再開となる。

「今はまだ数講座だけの再開だが、受講生の方々は皆さん楽しみに待ってくださっていた。久しぶりの再会を喜び合う様子などを拝見して、単なる学びの場ではなく、集うこと自体が楽しみな、いこいの場にもなっているんだなと実感できた」と、事務局の笹沼亜希子さん。

再開にあたっては消毒や換気、座席の配置なども3密を避けるよう、感染防止に気を配りながら準備を進めてきた。

新規講座も多数用意されている。その一つ「特攻隊の故郷 茨城」(講師/伊藤純郎さん=筑波大学人文社会系教授)は、霞ケ浦・筑波山・北浦・鹿島灘での厳しい訓練と、食事や外出などの生活から、特攻隊の原風景を探り、その歴史を問い直そうというもの。7月7日から第1・第3火曜日開講、全5回。受講料は会員6600円、一般9900円。テキスト代別途。

「美味しい珈琲(コーヒー)の淹(い)れ方と楽しみ方」(講師/小池美枝子さん=コーヒーハウスとむとむつくば店、コーヒーアカデミードンマイスター主宰)は、テイスティングやラテアートなどを通じて楽しさや奥深さを学び、家庭のコーヒーをワンランクアップさせてくれる。7月11日から第2土曜日開講、全4回。受講料は会員6600円、一般8250円。教材費4400円。

「竹で編む花籠(かご)」(講師/橋本千菜美さん=竹かご作家)は、青竹のひごを使って「四海波花籠」を編む。講師の橋本さんは筑波大学芸術学群彫塑コースを卒業後、笠間などの竹細工工房で修業し、現在はつくば市北条に拠点を置く。材料の竹ひごは橋本さん自身が筑波の竹林で採取・加工したもの。工程も本来は座り仕事だが、いすに座ってできるようアレンジし、初心者でも楽しんで作業できる。8月8日(土)、全1回。受講料は会員2200円、一般3850円。教材費2000円。

このほか当初は4月開講予定だった講座も、ほとんどが7月から仕切り直しとなっており、途中からの受講も可能だ。耳よりな話題として、昨期までは火~金曜のみだった開講日に、今期から第2土曜日も加わり、平日は仕事がある人でも参加できる講座が増えている。

詳細は常陽藝文センターホームページ、申し込み・問い合わせは藝文学苑つくば教室(電話029-855-1125)。

藝文学苑つくば教室が入る常陽つくばビル。2階には常陽銀行研究学園都市支店がある=つくばエクスプレスつくば駅から徒歩5分、つくばセンタービル向かい

《ライズ学園日記》6 With/Afterコロナの国語授業

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学校跡地

【コラム・小野村哲】小学校国語の模擬授業に参加した。都会の人混みが苦手な私には、自宅に居ながらにして参加できるオンライン会議システムを使った研修機会は天の恵みだ。

授業者は教師歴5年目の若い教師、題材は宮沢賢治の「注文の多い料理店」だった。まずは本文を読んで疑問に思った点を、PCに直接タイプしていく。「なぜ、クリームをぬらせたのか?」「どうして風が、‘どう’と吹き始めたのか?」など、他の参加者と疑問点を共有したら、今度は、その中のいくつかを選んで自分なりの回答を書き込んでいく。

もしもこれを一人ひとりに発表させ、板書していたら、大変な時間を要しただろう。挙手となると、発表する子も限られてしまいがちだ。しかし一人に1台のPCを用意すると、これまで手を挙げなかった子まで含め、より多様な考えがより積極的に打ち込まれるようになり、その後の話し合いも活性化したという。

ただ漫然と、塾や家庭で予習をしてきた子が模範的な発表をするのを聞かされて過ごすのでも、教師の範読のあとに棒読みするのでもない。With / Afterコロナの時代にあっては、与えられた情報をうのみにするのではなく、批判的に読み取る力が求められる。時代に取り残されつつある老教師にとっては、コンビ漫才のように宮沢賢治の作品に突っ込みを入れようという発想そのものが興味深かった。

次代に託す

コミュニケーションツールとしての「人の言語」は、あいまいで不完全なものだ。距離や方角を正確に伝えるという点ではミツバチのダンスにも及ばない。木々の間を風が吹き抜ける様子を正確に伝えるすべもない。英語の授業では‘critical’を「批判的」と訳すが、英語話者が思う‘critical’に比べて、多くの日本語話者が「批判的」という語から受ける印象はよりネガティブだ。

文字に変換された言葉はなおのこと、教科書に整然と並んだそれはいわばフリーズドライされたものだと思っていい。「馬鹿」という文字は「ばか」としか読めないが、解凍の仕方によっては「愛している」という意味にもなり得る。しかしこれまでの国語の授業では、これを受動的、無批判に読ませることに終始しがちだった。授業の後で行われるテストには、あらかじめ「そのときの主人公の気持ちは、…である」と正解が用意されていた。

もちろん基礎基本をおろそかにしてはいけない。しかし、時に不可解でさえある常識を押し付けるような授業では、言葉は生気を失う。当然、‘critical’で‘assertive’なコミュニケーション能力など養われようもない。

コロナ禍を文部科学省は「非常事態」だといい、授業のオンライン化を推し進めろと言う。「学びを止めるな!」というのももっともだ。しかし私は「学びが止まる」ことよりも、今の学びが「そのまま続く」ことを恐れる。ICT化はいいが、学びのあり方を見直すべき今、授業はおざなりに継続され、一人に1台のPCをもたせることが、目的とされてしまうことを恐れる。

時代は移り変わっている。幕末の先人たちがそうしたように、次の世代にバトンを渡し、その新たな取り組みを支援したいと思う。(つくば市教育委員)

【つくばセンタービル改修】㊦ 世界的アート建築に屋根?

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取り止めになったつくばセンター広場のドーム型屋根(「2019年3月策定のつくばセンタービルあり方検討業務報告書」より引用)

【鈴木宏子】つくばセンタービルのリニューアル計画では、センター広場に屋根をかける計画も検討されている。今回公表されたリニューアルの方向性案には「(センター広場は)多くのイベントが実施されているが、雨天であると実施が難しいなど運営面のリスクが高いことから、雨天時でも実施できるよう屋根の設置を検討する」とある。

今回公表された整備費用約9億8960万円(または約13億6280万円)は屋根を含めた概算費用になるという。「屋根については公共施設基本計画を進める中で検討」(市長・副市長報告案件指示要項)するとされている。

どんな屋根が検討されているのか。2019年3月策定の「つくばセンタービルあり方検討業務報告書」によると、軽量で透明性の高いアーチ状のドーム型屋根が検討されている。骨組みは木材を材質とし、「広場の楕円形に沿って剛強リング梁を設け、リング梁同士の間にアーチ状の架構を渡す」などとかなり具体的な記載がある。費用は非開示。イベントの都度、組み立てて設置するテント式の立派な屋根も各地の式典やコンサートなどですでに使用されているが、可動式の屋根は検討すらされていない。

固定式のドーム型屋根は建物全体のデザインやアート建築としての思想を変えることにならないか。

プリツカー賞受賞

つくばセンタービルは筑波研究学園都市のランドマークとして1983年に造られた。昨年、建築界のノーベル賞といわれるプリツカー賞を受賞した建築家、磯崎新氏の代表作の一つ(19年3月7日)。ポストモダン建築の代表作品ともいわれる。

センター広場は、ローマのカンピドリオ広場を反転した作品とされる。磯崎氏はその思想を「建築のパフォーマンスーつくばセンタービル論争」(パルコ出版局)で、筑波研究学園都市という国家プロジェクトでつくられた街ゆえに、中心に国家のシンボルを描き出すのではなく「中心を空間にし、空間の中に向かって消滅していくような反転した空間をつくり上げた」と述べている。

新しくつくられた街の中心には、普通なら周囲から目を引くシンボルとなる建物をつくるが、磯崎氏は、国家のシンボルをそびえさせるのではなく、あえて中心に沈み込む空間をつくった。

市はリニューアルの方向性案で、センタービルの課題として「店舗を外から視認できない」と、外から見えにくいことが集客する上で課題の一つだと指摘しているが、センター広場の、沈み込む空間こそが磯崎氏のメッセージとなっている。

文化的な事件

同方向性案で市は「磯崎氏の設計思想を継承する」とし、磯崎氏本人から「この建物が転用されていくことについて、それは建築の宿命。庭(センター広場)は500年くらい残っていくものである」という意見を伺ったと記している。

磯崎氏本人の意見は、情報開示された「つくばセンタービルあり方検討業務委託報告書」(2019年3月策定)にもっと詳しく記載されている。

設計者へのヒヤリングによると、磯崎氏は以下のように語っている。

「センタービルは、文化的な事件として世界的な議論が行われた。メディア的な建築、建物が初めてここで出てきた

「ベラスケスの『ラス・メニーナス』という絵画を構成する視線としての王=不在の王を引き合いに出すと、この『にわ』の不在はその視線がつくり出す建築として、各所に多くの建築の部分が引用されている。それを『読み解く』ことを建築というものが(書物のように)つくることができるということを示したことが事件であり、この建築のメディア性だった」

「中庭は『広場』(カンピドリオ広場)を反転することによって出来上がっている。それは何かといえば『にわ』として考えられる」

「この建物が『転用されていく』ことについて。それは建築の宿命。そこで自分は『にわ』について考えたい。歴史的に建築建物が壊れたとしても、中庭は祖型として500年ぐらい残っていくであろうし、そうあるように考えていた。それはアートの領域として考えてきたものだった」

「兵馬俑やローマのように、またメトロポリタンのセンター部、神殿の上にかかっている屋根の下の空間のように、この中庭が覆われたとしたら、建物以上に覆うことで皇族の儀式や世界的なイベントを開くにふさわしい空間としてつくばを代表する空間になるようなことぐらいのスケールで考えてほしい」

「そういった公共建築についての『事件=事例』が建築として今も使い続けられていることに、設計者としてはよろしくお願いしますという気持ちである」

市民にとって、つくばセンタービルは今どのような存在だろうか。

第1部 終わり

【訂正】第2段落「整備費用約9億8960万円(または約13億6280万円)の中に屋根は含まれていない」を「整備費用約9億8960万円は屋根を含めた概算費用になるという」に訂正しました。(29日)

《食う寝る宇宙》64  ソロリソロリと3時半起床

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【コラム・玉置晋】まずは御報告。2020年4月12日、宇宙ビジネスサロンの一般社団法人「ABLab」において、宇宙天気プロジェクトを発足させました。プロジェクトメンバーがキックオフミーティングの様子をまとめましたので、こちらをご覧ください。

プロジェクトのコンセプトは「宇宙天気キャスタ・宇宙天気インタプリタが活躍する近未来社会を創造する」です。「宇宙天気キャスタ」は読んで字の如くですが、「宇宙天気インタプリタ」って何?という人は、コラム49コラム50をご覧ください。昨年末に鹿島神宮でうけた神様のお告げ(コラム51)を、しっかり実践しておりますよ。

このプロジェクトは、ABLabと僕がお世話になっている茨城大学理学部・野澤研究室(宇宙天気防災)の協力により、「教育・研究」「社会ニーズの醸成」「利用・防災」の3つの柱をつなげていきます。

愛犬のご飯は僕の担当

さて、上記の宇宙天気プロジェクトを推進するために、僕は「会社勤めの宇宙エンジニア」と「宇宙天気防災を研究する社会人大学院生」の二足のわらじを履いています。時間のやりくりが大変なのですが、どのような1日を送っているのか紹介します。

朝3時半にムクっと起き出し、ソロリソロリと椅子に座ってパソコンを開く。「ガタ」という椅子のきしむ音、カチャカチャというキーボードの音。これらの音で家族を起こすわけにはいかない。一挙一動を慎重に行う必要があります。

就寝前に仕掛けたプログラムの出力結果を確認したり、解析結果をドキュメントにまとめたり、プレゼン資料を作ったり、クリエイティブな仕事は早朝の3時間が勝負となります。

朝7時から8時半は家事の時間です。風呂掃除とゴミ出し、愛犬の「べんぞう」さんのご飯の準備は僕の担当です。この行程を忘却すると奥さんに怒られるので、必死です。

僕は会社勤めの宇宙エンジニアです。基本的には、9~18時の日勤帯は本業の人工衛星を見守る仕事をしています。研究で得た知見は、仕事にフィードバックさせるよう、意識しています。仕事と研究を分離しないことがコツだと思います。

また、担当する人工衛星で問題が発生したり、宇宙天気が異常に荒れたりといったクリティカルな状況にならない限り、定時には退勤するように心がけています。

夕飯の準備は夫婦で連携

先に奥さんが帰宅して、夕飯の準備をしてくれていることが多いので、まずは「べんぞう」の散歩などのお世話をしつつ、人間の夕飯の準備を交代します。夫婦共働きなので、その辺りの連携が生活をやりくりするポイントなのでしょう。ただし、主導権は奥さんにあります。

メール処理などの管理作業、明日の準備で2時間ほど費やします。そして、今日も1日が終わる。

以上は平日の様子なのですが、これだけではとてもタスクはこなせません。残りは、週末にまとめて行うことにしています。また、大学院通学や学会発表では、会社で有休を取得して対応することになります。家族、会社、大学の皆さんの御協力のおかげで、宇宙天気プロジェクトの遂行が可能になっています。心より感謝いたします。(宇宙天気防災研究者)

【つくばセンタービル改修】㊥ 民意と距離ある計画

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中心市街地居住者を対象とした中心市街地のまちづくりに関する意向調査結果(つくば市ホームぺージより)

【鈴木宏子】つくば駅周辺、つくばセンタービルリニューアル基本計画策定費や中心市街地エリアマネジメント団体の出資金などが予算化され、市民説明会が開かれないまま、中心市街地をイノベーション拠点にしようという取り組みが始まっている。これに対し市民は、中心市街地に何を求めているのか。

市は2017年から居住者や働く人の意向調査、オープンハウス、アンケートなどで市民の意見をたびたび求めてきた。

市民意向調査結果の方はホームぺージなどで公開されている。調査の一つ、中心市街地居住者580人の意向調査結果では、住民は中心市街地に「商業や滞在型施設などが多く立地し活気にあふれている街」「文化施設や公共施設が多く立地する公的機能が中心の街」を求め、「インキュベーション(創業支援)施設」がほしいとの回答は14番目だった。

市民は生活者として中心市街地に、にぎわいや都市機能、文化を求めている。昨年12月に出された市議会の「今後のつくば中心市街地まちづくりについての提言」も市民の意向に沿ったものだ。

今年3月策定の「中心市街地エリアマネジメント検討業務委託報告書」にも市民の意向について「文化・運動施設、商業施設、子育て施設を望む意見が多い。その他高齢者、子供の居場所、市の窓口、業務機能、ホテル」などと記されており、市は市民の意向を把握した上で、今回のリニューアル案を出したことが分かる。

市の計画は民意と乖離(かいり)してないか。3年半前の前回の市長選でも、中心市街地という場所は別にして、つくばに集積する研究機関のさまざまな資源を活用して科学産業をつくり雇用を増やす科学産業都市づくりを訴えたのは大泉博子候補だったが、市民が選んだのは、総合運動公園問題の完全解決を訴えた五十嵐現市長だった。

市民の意向を市長がどう考えたかは議事録が不存在で、「市長・副市長報告案件指示事項」と題した簡単なメモの一覧表しかなく、意思形成過程を検証できなかった。

「市の顔つくば駅が効果的」

なぜセンタービルに2カ所目のイノベーション拠点をつくるかについて「つくばセンタービルリニューアルの方向性案」では「(つくばセンタービルは)店舗自体を外から視認できないこと等により不特定多数を集客する商業等の入居は難しい」などと消去法で商業機能を省いている。さらに区分所有者の意向として「ホテルオークラ(ホテル日航つくば)から、ホテル運営が厳しい状況であるため相乗効果を生むオフィス機能となることが望ましい、オフィス機能であれば相乗効果が見込めるため連携した取り組みも可能」との意見があるとも説明している。

情報開示された「中心市街地エリアマネジメント検討業務委託報告書」には、つくば市は研究機関のさまざまな資源を活用した小さなビジネスは起こっているが市に根付く企業が少ないと課題を挙げ、「市の顔となるつくば駅周辺で、資源を活用したまちづくりを表現していくことが効果的」とある。

総合運動公園の教訓どこに

「総合運動公園問題の完全解決」を最大の公約に掲げた五十嵐市長が就任直後、著名な弁護士による総合運動公園事業検証委員会を設置した。総合運動公園がなぜ白紙撤回に至ったかについて同委員会は第1に民意との乖離を指摘し、7つの提言をまとめた。①大規模事業は民意の把握を適切に行い、市民の直接的な要請に基づくものでない事業は市民への説明を十分行うこと②事業計画、基礎的検討の段階で議会への適切な報告を行うこと③財源、市の財政負担の程度について確実な財源と見通しを区別して説明することーなどだ。

同検証委の提言を受け、市は18年9月「大規模事業の進め方に関する基本方針」を策定し、市が主体となる総事業費10億円以上の施設整備事業について、①事業の進め方、必要性や効果、課題、将来への影響など市民に必要な情報提供を十分に行うなど、民意を適切に把握する②事業の客観性を高め市民ニーズに即したものとし、意思形成過程の透明性を図るーなどの手続きを定めた。

「つくばセンタービルリニューアルの方向性案」によると、センタービルの改修費用は、すべての整備を市が実施した場合は約13億6280万円、市が出資する法人が運営整備した場合は約9億8960万円かかるとある。これはセンター広場に設置が検討されている屋根や、エリアマネジメント団体が担うことが検討されている中心市街地全体のまちづくりを含まない。

事業費は全体でいくらになるのか。エリアマネジメント団体の収支見通しをどう見積もっているのか。つくばには創業支援組織が多くあり多くの取り組みを行っているが、これまでやってきたことの分析はされ、課題を明確にしているのか。なぜ民意と乖離してでも中心市街地でなくてはならないのかー。市は総合運動公園の教訓を生かし市民に説明すべきだ。(つづく)

《茨城の創生を考える》16 茨城は対外アピール力を磨くべき

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ダイヤモンド筑波(筑西市)

【コラム・中尾隆友】昨年、茨城県議会が茨城空港の名称を「北東京空港」に変更することを提案したが、多くの県民がこの名称に疑問を持ったことだろう。非常に浅はかな名称変更案だったと思うのは、名称に茨城の特色が表れていないばかりか、東京への距離の近さだけを謳(うた)ったものだったからだ。

最終的には専門家の意見を聞いたうえで、「茨城空港」の名称を継続することとし、英語名では「東京首都・茨城空港」「東京北空港」「首都茨城空港」などとする折衷案が出されたが、いかにもお粗末なドタバタ劇だったと思う。

県議会には失望している。提案する前に最低限やるべきことをやっていないからだ。マーケティングでデータを揃えてから、茨城の強みは何かを考えるという発想があった方がよかった。

県や各自治体のPR能力が問われる

東京への近さをアピールしたかったのは、魅力度ランキングで全国最下位だというコンプレックスから来ているのかもしれない。以前も申し上げたように、茨城県の魅力度が低い理由として、経済性や居住性が優れているため、魅力度を磨く必要性に迫られていなかったという点が挙げられる。

人々はさしたる定義がないなかで「魅力度」と問われると、まず自分が観光地として行きたいところはどこか、といったことを思い浮かべる。茨城にも牛久大仏や袋田の滝といった観光スポットは存在するが、これらは茨城のイメージを決定づけるほどの強いイメージを持っていない。

たとえば、研究機関が集積するつくば市の「科学技術」を前面に押し出していくというのはどうだろうか。つくば市では2016年にG7の科学技術大臣会合、2019年にG20の貿易・デジタル経済大臣会合が開催されている。私はG7とG20の双方で会合が開かれた都市を他に知らない。

新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、都心でリモート勤務が増加し、地方へ移住するハードルが低くなりつつある。企業が地方へ移転する動機付けも強まっている。これまで以上に、県や各自治体のPR能力が問われる事態になっているのだ。そのことを強く意識して、成果を出してもらいたい。(経営アドバイザー)