ホーム コラム 《県南の食生活》16 お盆の今と昔

《県南の食生活》16 お盆の今と昔

【コラム・古家晴美】今夏は新型コロナウィルスの影響で夏祭りが軒並み中止となり、何か忘れものをしてきたような気分だ。しかし、お盆行事は各家庭で例年通り行われたのではないだろうか。お盆はあの世から戻ってくる先祖の霊をもてなし、五穀豊穣(ごこくほうじょう)、子孫繁栄を祈る。

阿見町大室のあるお宅では、仏壇の前に盆棚(ぼんだな)を作り、仏壇から位牌などを出してホトケサマを祀(まつ)る。以前は、霞ケ浦湖岸で刈ったマコモを干して敷いた上に蓮(ハス)の大葉を載せ、そこに様々な供物を並べた。キュウリやナスで作った馬や牛、自宅で収穫したナス、キュウリ、カボチャ、サツマイモなどの野菜や三度三度の食事だ。

朝食には小豆あんを載せた餅、昼食にはうどん、夕食には白飯と精進揚げなどを用意した。また、7月21日にワカサギが解禁になるので、てんぷらにしてお供えすることもある。

お盆でお供えする餅(もち)は、昭和40年前後まで自宅で搗(つ)いていた。しかし、カゴヤサン(背負い籠に地元の農産物を詰めて常磐線に乗って東京で販売する人)に頼むと、東京で仕入れて来てくれると知ってからは、その人に注文するようになった。

夏場に餅を搗くと、表面がすぐに硬くなってしまい美味しくない。その上、お盆用に少量しか搗かず、あまり手間をかけたくないので、買って済ませるようになったとのこと。地元にスーパーができると、うどんも自宅で打たずに購入した乾麺を使用するようになった。

最近では、自宅で作らなくなった野菜や果物、真空パックの切り餅はスーパーで、マコモはホームセンターで購入してお供えしている。

「近ごろでは金がモテナイ」

シンボン(新盆)の家に見舞いに行くと、以前はビールやお茶、天ぷら、煮物が用意されており、ごちそうになった。ちょうどハスが出始めた時期なので、「新バス(盆バス)だから初物を食べていってくれよ」と勧められた。5ミリくらいの厚さに切り、醤油と酒、砂糖だけで煮たものである。

しかし、最近の新盆は、飲酒運転の取り締まりが厳しくなったことから、ご馳走を出さずに、香典返しのように葬儀社が用意した品物で返礼されることが増えている。ビールや醤油、鰹節、海苔などがセットになっている豪華なものもある。

コロナの影響で世の中の動きが一時停止してしまったが、お盆行事はこのように形を変えながらも、現在でも毎年行われている。餅つき、うどん打ち、シンボン見舞客の接待などの多くが外部化し、確かに余分な気遣いや手間はなくなり気楽になった。

しかし、葬儀ばかりでなく、お盆まで業者にお世話になるご時世。「近ごろでは(なんにでもお金がかかり)金がモテナイ(貯められない)」という土地の表現を教えていただいた。お金を貯めるのは一苦労だ。(筑波学院大学教授)

2 コメント

  1. 茨城都民40年。この記事に懐かしく何か新鮮な思いです。
    出身地の関西の都市近郊の祖父母宅で似たようなことを
    60年前ころには確かにしていました。
    父祖の思いこころ、神仏の思いこころをしっかりともって
    歩まねばとあらためて思いました。

  2. 小学~高校までマコモ刈りに動員された昭和40年代生まれです。
    マコモは墓地に設置する腰掛?のようなものに使いました。
    今思うとなかなか貴重な経験でした。
    お供えの梨は幸水や、今や希少種の?菊水が定番でしたっけ。
    餅は祖母や母が上新粉でこしらえていた覚えがあります。

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