木曜日, 12月 8, 2022
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《邑から日本を見る》70 『八郷からの便り』を読む

【コラム・先﨑千尋】石岡市八郷に住む有機農業の仲間橋本明子さんから表題の本が届いた。これまで書きためたものをまとめたという。サブタイトルは「農といのちに注ぐひたむきな愛の記録」。本を開く前に、「ああ、橋本さんも自分史を書く歳になったのだなあ」と思ってしまった。

昨年には、山形県高畠町の星寛治さんがそのものずばりの『自分史』(清水光文堂書房)を出した。今年に入って、知人では、筑摩書房の名編集者で山代巴の本を出すために径書房を作った原田奈翁雄さんが『生涯編集者』(高文研)を、早稲田環境塾の原剛さんが『日本の「原風景」を読む』(藤原書店)を、『文化連情報』という農協病院向けの雑誌を編集していた高杉進さんが『踏跡残し』(自費出版)を出している。自分史と謳ってはいないけれど、それぞれが自分の歩んできた道をふり返っている本だ。それぞれに味わい深く読んだ。

本書の著者橋本さんは、大阪外大を出て大阪労音に勤務し、結婚して東京に移住。消費者運動を進めながら、八郷に共同の消費者自給農場「たまごの会」を作り、1988年に連れ合いの信一さんと共にとうとう八郷に移住し、「日本一小さい畑を耕す」ようになる。その畑で採れた野菜類を知り合いの首都圏の消費者に届けてきた。橋本さんと私との出会いは、多分高畠町有機農研での集まりだったと思う。高畠で有機農業に取り組み、早くに亡くなった片平イチ子さんを描いた『イチ子の遺言』(ユック舎)を2005年に、仲間の山崎久民さん、海老沢とも子さんとまとめている。

「個性豊かな人たち」「小さな農学校の試み」

前置きが長くなった。本書は同じ八郷移住組の合田寅彦さんが編集、出版(ゆう出版)した。本書の構成は、「コメの現場に足を運ぶ」、「八郷の暮らしから見えてきたもの」、「個性豊かな人たち」、「小さな農学校の試み」、「八郷での出会い」など8つのタイトルから成っている。これまで発表してきたことと講演記録に、生まれ育った若狭での生活などを書き足している。

日本の水田を守るために生産者と消費者をつなぐ提携米運動、生産者と一緒に闘った減反差し止め訴訟、消費者が生産現場に足を踏み入れるたまごの会、自立をめざす農学校「スワラジ学園などに関わり、全国を駆け回る。とにかく行動的な橋本さんのエネルギーはどこから生まれ出るのだろうか。

それはやはり、彼女を取り巻く仲間、同志なのだと思う。先にあげた片平さん夫妻、高松修さん、愛媛の無茶々園、全国のコメ生産農家等々。八郷でも杉線香を作っている駒村さん一家、ブドウ栽培の桜井太郎平さん、しめ飾り作りを教えてくれた高倉弘文さんらの活動が活写されている。

著者の橋本さんとはそんなに深い付き合いをしてきた訳ではないので、その生い立ちや若かりし頃のことは知らなかった。本書で、若狭の寺の生活(親が僧侶だった)や大阪労音の活動など、未知の世界を知ることができた。「はじめに」に「一隅を照らす」という仏教の言葉が出てくる。それにふさわしい本、そう考えながら読んだ。(元瓜連町長)

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