水曜日, 6月 26, 2024
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つくば市長の批判封圧は広報作戦の一環 《吾妻カガミ》128

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「つくば市民の声新聞」(左)と市長の似顔絵入り広報紙

【コラム・坂本栄】前回と前々回は五十嵐つくば市長の<元市議提訴~和解取り下げ>について検証しました。126「…市民提訴 その顛末を検証する」(2月7日掲載)では、杜撰(ずさん)な提訴など問題点を4つ指摘。127「…元市議の市政批判はウソだった?」(2月21日掲載)では、安易な目玉公約作りなど疑問点を3つ示しました。

こういった作業をしているうち、市長による元市議提訴が広報作戦の一環であったことに気付きました。今回はこの問題を取り上げます。

「発信の在り方を根本から検討」

2020年10月の選挙で再選された五十嵐市長は、選挙後最初の記者会見で「発信の在り方を根本から検討したい」と述べ、その理由として、①市の施策を知らない市民が多かった、②対抗候補も市政の基本を知らなかった、③市政について相当いい加減なことを書く人もいた―ことを挙げました。

詳しくは、記事「発信の在り方 根本から検討」(2020年11月5日掲載)、コラム95「つくば市長の『上から目線』」(2020年12月7日掲載)をご覧ください。

この会見は11月4日。元市議を名誉毀損で訴えたのが11月30日ですから、会見の時点で、ミニ紙「つくば市民の声新聞」(写真左)で五十嵐市政を批判した元市議(相当いい加減なことを書く人?)を提訴する準備が進んでいたようです。

2期目の市広報紙(写真右)を見ると、市民に市政情報を「PR色を抑え自然体」で提供するというよりも、「市民受けを意識した話題」が多く、割り引いて読むか、別の情報で補正する必要があります。市長は都合が悪い情報を隠すこともあり、コラム95(2020年12月7日掲載)、コラム126(2月7日掲載)の中で、その具体例を挙げておきました。

自慢話が多い市政広報。元市議提訴=批判封圧。五十嵐市長の広報強化と批判封圧はセットになっていたようです。コラム101「…市長の名誉毀損提訴を笑う」(2021年3月1日掲載)でも指摘したように、いずれも非民主国(中国やロシア)が好んで使う手法です。

広報紙と批判紙のセット配布を!

政策を批判されたら、「言論による名誉毀損にはまず言論で対抗すべき」という法理論に従い、言葉には言葉で応じるのが政治の作法だと、旧知の弁護士は言います。また、言葉で反論せず裁判に持ち込んだのは、批判者を萎縮させる狙いがあったのではないか、とも。

<元市議提訴~和解取り下げ>と<自慢話が多い市政広報>で、五十嵐市長の広報作戦は市民の信頼を失いつつあります。

そこで提案です。「対抗言論」の考え方を広報に導入し、市広報紙と市政批判紙(ミニ紙もその一つ)を一緒に市民に配ったらどうでしょうか。実現すれば、つくば市は民主市政のモデル都市「世界のあしたが見えるまち」になるでしょう。セット配布で、元市議提訴の失態を少し挽回できるかもしれません。(経済ジャーナリスト)

26日に起点側1.3km開通 牛久土浦バイパス 先行き視界不透明

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26日開通する牛久土浦バイパス起点の根古屋川第1橋=牛久市根古屋川渡河部付近

牛久市遠山町から土浦市中(なか)までの延長15.3キロ区間で計画されている国道6号の牛久土浦バイパスで、起点となる牛久市遠山町~城中町の延長1.3キロ区間が26日開通する。国土交通省関東地方整備局常総国道事務所(土浦市)が3日発表した。

1992年度の事業化(都市計画決定は94年度)から30年かかったが、圏央道(首都圏中央連絡自動車道)つくば牛久ICにアクセスする第1期3.9キロが暫定2車線で供用開始している以外、残る延長約10キロ区間は開通の見通しが立っていない。

同バイパスは、藤代バイパス、土浦バイパスに挟まれボトルネックとなっている区間で、牛久市や土浦市周辺市街地の交通混雑緩和を図るほか、圏央道へのアクセス道路として整備が進められている。

国道6号の牛久土浦バイパスの計画路線=常総国道事務所資料を元に作成

26日午後2時に開通するのは、牛久沼付近の牛久市遠山町で6号国道から西に分岐する延長1.3キロ区間。当日は起点の根古屋川第1橋で開通式典が行われる予定。同市内では一部未整備だった市道23号線が9日全面開通し、バイパスの接続道路となる。市街地を抜ける6号国道の混雑緩和につながる期待はあるが、圏央道をはじめとする広域交通のアクセス向上までの道のりは遠そうだ。

ボトルネックの解消は、第2期、第3期の事業進展にかかってくる。第2期は、つくば市の高崎-西大井と土浦市の中村西根-中の両区間で計画される総延長4.6キロで、18年に事業化されているが、用地買収が一部難航し、見通しが立っていない。同事務所は県や両市の協力を得ながら用地取得を進めるとしている。

第3期の牛久市城中町-つくば市高崎間延長5.5キロは今回開通区間につながる道路。都市計画の変更手続き(20年2月22日付)に入っているが、事業決定以降、先行きのロードマップは示されていない。(相澤冬樹)

ウクライナ子供のつぶやき 《くずかごの唄》103

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【コラム・奥井登美子】「空が光って、変な大きな音がして、怖かった」。テレビニュースで、ロシア軍に攻撃され、地下壕に逃げたウクライナの子供のつぶやきを聞き、涙が出そうになってしまった。77年前の日本でも、同じようなことが起こった。今はみんな忘れて、まるで違う世界の出来事みたいに思っている。

私が小学校6年生のときだった。夏休みの間に、東京の小学3~6年生はどこかに疎開しなければいけないという命令が下りた。親戚の家に疎開するのが縁故疎開。学校ぐるみ疎開するのが学童疎開。クラスはバラバラになってしまう。

私が通っていた小学校は成績順にクラス分けされ、1番組の男子は都立3中(今の両国高校)、同女子は都立7女(今の小松川高校)を目指して勉強していた。「クラスはバラバラになるけれど、来年3月の受験日には帰ってくるから、そのよき皆で会おう」。誰かが言い出して、再会を約束して別れた。

東京大空襲に遭った学友たち

私は学童疎開で湯の浜温泉(山形県)に疎開したが、食べる物がなくてお腹が空いて、お手玉の中のアズキを食べていた。父に「縁故疎開に切り替えてほしい。迎えに来て」と手紙を書いたが、先生の検閲に引っかかり、取り上げられてしまった。

友だちが熱を出したが、医者に薬を取りに行く人がいない。先生に頼まれて、薬を取りに行くとき、父への手紙をポストに投函した。昭和19年の秋、私は父の友だちのご縁で、長野県の下伊那に疎開できた。

さて、翌20年3月の受験は12日。疎開の人たちはその3日前に東京に帰るという。私も帰って都立中を受験したかったが、父が許してくれなかった。

3月10日。東京大空襲。6年生の受験者は9~10日に東京に帰った。偶然だが、まるで大空襲に遭うために帰るような形になった。現両国高・小松川高の範囲、錦糸町駅~亀戸駅の辺りに、家は一軒も残っていなかった。(随筆家、薬剤師)

県教育長「既存校の志願者増やすこと優先」 つくば市の県立高校問題

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県議会本会議で答弁に立つ小泉元伸県教育長=4日、水戸市笠原町

県議会一般質問で答弁

県議会第1回定例会本会議が4日開かれ、星田弘司議員(いばらき自民党)が、つくば市に県立高校が少ない問題について一般質問した。答弁に立った小泉元伸県教育長は「既存の県立高校の魅力化を図り、志願者を確保することを優先したい」と答弁するにとどまった。県議会でつくば市の県立高校問題が取り上げられたのは初めて。

星田県議は、つくば市内の小中学生数は県内1位であるにもかかわらず、改編や統廃合などにより進学先となる市内県立高校が少なくなっていること、同市周辺でも募集枠減少が進められていることなどをあげ、生徒が安心して望んだ進学先を確保できるよう教育環境を整える必要があると主張。そのための対応について県教育長にただした。

小泉教育長は、2023年度につくば工科高校をサイエンス専科高校に改編するのに伴い2学級増やすなど、エリアの実情に応じて柔軟に対応していると答弁した。さらに、市内や隣接する全日制県立高校では欠員や定員割れが生じていることをあげ、既存校の志願者を確保することを優先したいとした。

既存校の魅力化を図る具体策としては、1人1台のタブレット端末やパソコン、電子黒板などを導入し、個別最適化学習を展開するICT(情報通信技術)の活用などをあげた。

傍聴に訪れた市民団体「つくば市の小中学生の高校進学を考える会」の片岡英明代表(71)は、県議会でこの問題が取り上げられたのは今回が初めてで、大きな前進だとし、答弁の中で、「来春から2030年にかけて県全体の中学卒業数が大幅に減少すると推計される中、つくばエリア(つくば市、つくばみらい市、守谷市、常総市)では約800人が増加する見込み」だと語られた部分をあげ、「(県立高校の適正規模や適正配置計画について示す)県立高校改革プランからしても、クラス増の必要性は十分認められたのではないか」と話した。

つくば市の県立高校の課題については、8日にも山中たい子県議(共産)が一般質問する。

つくば市に県立高校が少ない問題をめぐっては、考える会が昨年9月、つくば市議会に、県立高校を市内に早急に新設し、進学環境の充実を求める請願を出し、全会一致で採択された。採択を受けて市議会は昨年10月、知事と県教育長に県立高校新設などを求める意見書を提出している(花島実枝子)。

あなたは必ずだまされる! つくばエキスポセンターで「錯視の世界」展

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展示作品の一つ「呼吸する箱」。高さ反転立体の例。箱の面がへこんだり膨らんだりして見えるが、実際は平面で模様による錯覚

「錯視(さくし)」は見たものが事実とはちがうように見えてしまう目の錯覚で、同じ大きさの図形が違う大きさに見えたり、同じ色がちがう色に見えたりする。この錯視の科学を紹介する企画展「錯視の世界ーあなたは今度もかならずだまされる!」が、つくばエキスポセンター(つくば市吾妻)で5日から始まった。5月8日まで。

展示されるのは錯視研究者の杉原康吉さん、北岡明佳さん、山口康さんの作品、合計56点。模様によって形がゆがんで見える「高さ反転立体」、直接見るのと鏡で見るのとで全く異なって見える「変身立体」など、錯視の様々なテクニックを楽しむことができる。

変身立体の例。直視すると9個の丸だが、鏡に映ると13個の四角に見える

2013年にレディ・ガガが発表したアルバム「アートポップ」のCDのインサイドデザインに使用された作品「ガンガゼ」も展示されていて、静止画なのにウニのトゲが動いているように見える。ベスト錯覚コンテスト世界大会受賞作品も6点展示されている。

展示室の外の廊下には大きな作品が展示されていて、見応えがある。またエントランスには、オブジェの中に自分が入って、両側にある鏡に見える像の違いを体験できるコーナーがある。展示作品の解説パネルの漢字にはルビがふってあり、子供でも読みやすい。

エントランスに設置された巨大な錯視作品。中央の白いオブジェの中に入って両側の鏡を見ると、一方ではオブジェが円に見え、もう一方では四角に見える

企画を担当したエキスポセンター運営部の松岡安希子さんは、「錯視は目から入った信号を脳で処理する過程で起こる現象なので、見え方に個人差がある。子供と大人とでも見え方が異なる場合があるので、親子でどう見えるか話すのも楽しいと思う。大人の方も『そんなことはない』と分かっているのにだまされてしまうのを楽しんで下さい」と話す。

新型コロナ感染拡大防止のため入場制限を行う場合があるので、来館前に最新情報をウエブサイトで確認してほしいとのこと。入館料のみで企画展も見ることができる(如月啓)。

◆企画展「錯視の世界」は3月5日(土)~5月8日(日)。開館時間は午前9時50分~午後5時。入館料は大人500円、4歳から高校生250円。休館日などの問い合わせは電話029-858-1100(つくばエキスポセンター)。

答えは急がなくていい《続・気軽にSOS》104

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【コラム・浅井和幸】ある引きこもり状態の青年がいました。母親との関係も悪く、外出をすることはほとんどなく、人との接触はほぼない状況でした。しかし、祖母の介護をしているし、話をしていると気遣いもあり、周りの悪口を言わない、元運動部で健康な様子です。

元気で若いのだから、ぜいたくを言わず働いて、お母さんを助けたらよい―。この状態の青年に、そうアドバイスをするのは簡単でしょう。

今、その青年は実家から仕事に通い、家にもお金を入れ、お母さんの助けになるように生活をしています。だからと言って、最初に会ったときに、そのようなアドバイスをすることがよいことでしょうか。私はそうは思いません。むしろ逆効果になると考えています。

生活習慣は簡単に変えられない

人はそう簡単に生活習慣を変えることはできません。頭でわかっているからと言って、それを行動に移すには時間が必要です。うまくいかないことが続き、なかなか前を向けないときは、ちょっとした喜びを感じるような「伴奏」が必要になるものです。

その青年は最初、私が訪問をしてささいな話をし、その後、親元を離れてシェハウスで暮らようになりました。今までとは違うけれど、何気ない生活をし、たまたま生死も危ぶまれるような体験をし、見ず知らずの人に助けられ、いろいろと考え悩み、苦労をして親元に帰って、仕事を見つけたのです。

仕事の面接に受かって、もう出社するだけというときにトラブルがあり、就職は見送ることになったという体験もしました。その間の良かったことも悪かったことも含めて、かかった時間も含めて、すべてが必要だったのだと思います。薄っぺらな正論のアドバイスは、その前では霞むような、軽い正義感でしかないのです。

その母子の様々なことを取材して書かれた記事が「サイゾーウーマン」に掲載されています。ぜひ、下のリンク先の記事を読んでみてください。(精神保健福祉士)

ずっと良い子だった優秀な息子が―「大量のごみが散乱する真っ暗な部屋」で見た、信じられない光景

https://www.cyzowoman.com/2021/04/post_335365_1.html

大学生の息子がゲーム依存症でひきこもり!「ネット依存外来」に通院も打つ手なし…母が助けを求めた先は?

https://www.cyzowoman.com/2021/04/post_335366_1.html

つくば市、スーパーシティ特区に指定へ 内閣府専門調査会が原案了承

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スーパーシティの構成(内閣府のホームページより引用)

つくば市は4日、同日開かれた内閣府の第3回スーパーシティ国家戦略特区専門調査会で、同市をスーパーシティ国家戦略特区に指定する原案が了承されたと発表した。今後さらに国家戦略特区諮問会議で原案が審議され、認められれば閣議決定でスーパーシティ特区に指定される。ほかに大阪市が原案了承された。

スーパーシティ特区の指定に向け内閣府は2020年12月に公募を開始。21年4月までにつくば市を含め31自治体から指定に向けた提案があった。しかし指定された自治体はなく、専門調査会は昨年8月、31すべての自治体に対し、さらに規制改革を進めて再提案するよう求めた。

昨年10月までに、つくば市など28自治体がさらなる規制改革などを再提案し、第3回専門調査会でつくばと大阪の指定が原案了承された。

10月のつくば市の再提案は、マイナンバーを活用した健康関連データの情報連携、転院搬送にかかる救急隊編成の見直し、外国人起業家の創業活動期間の延長と外国人研究者の資格外活動許可の撤廃など。

4月に提案した、住宅地におけるドローン飛行の制限撤廃など8事業は、現行法でも実施できるなどの意見が付いたことから提案書から取り下げた。

10月提案では新たに、外国人起業家がつくばで起業しようとする場合、特区による規制緩和により就労ビザを取るための期間を6カ月間から1年間に延長する事業や、国立大学法人が土地を貸し付ける場合、文科相の認可を取らなくても首相の特区認可をとれば貸し付けができるようにする特例、先端サービスを支える先進的商品サービスと随意契約できる特例など3件を追加した。

つくば市内で事業を実施する区域は、高齢者が多い小田地区と宝陽台地区、学生や外国人が多い筑波大周辺地区、子育て世代が多いつくば駅周辺地区の4地区。

今後、スーパーシティ特区に指定されれば、区域会議を立ち上げ、住民合意をとりながら、どのような事業を実施し、どのような規制改革を進めるかなどの区域計画を策定する。

4日の原案了承について五十嵐立青市長は「つくばスーパーサイエンスシティ構想が先進的かつ革新的であり、この構想を実現できるという実行力が期待されたと光栄に思っている。今後、諮問会議の審議が控えているので、お認め頂けるよう引き続き努力して参ります」などとするコメントを発表した。

スーパーシティは、AI(人工知能)やビッグデータなど先端技術を活用し、複数の分野でデータを共有して、行政手続き、移動、医療、教育などさまざまなの分野で暮らしの利便性を向上させる未来型の都市づくり。

【10日追加】つくば市は10日、内閣府の国家戦略特区諮問会議(議長・岸田文雄首相)が同日開かれ、同市をスーパーシティ特区に指定することを決定したと発表した。

つくば市役所と近隣駅に爆破予告

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つくば市役所

つくば市は4日、市役所などに爆破予告があったと発表した。同市役所と近隣駅を7日午後4時33分前後に爆破するなどの内容。

市は4日の閉庁後から7日まで、警察と協力し、庁舎などの点検や不審物の捜査を実施するとしている。

市役所は土日の休日窓口のほか、7日も通常通り開庁し、安全対策を徹底した上で業務を行う。

市危機管理課によると、爆破予告は3日午前2時49分、市役所ホームページの問い合わせフォームから危機管理課に送られてきた。送信者は不明という。市は同日午前、つくば警察署に連絡した。

爆破予告は全国で相次いでおり、2020年8月にも同市役所への爆破予告があった。

【7日追加】市は7日午後7時30分ごろ、予告された時間を過ぎても異常がないことを確認したと発表した。

筑波学院大生、筑波ハムのヨーグルトラベルをデザイン

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ヨーグルトラベルをデザインした筑波学院大4年の下村月乃さん(左)と下村さんがデザインしたラベルが貼られたヨーグルト各種

食肉加工会社、筑波ハム(つくば市下平塚)が、自社が販売するヨーグルトのラベルデザインを一新する。新デザインを担ったのは、筑波学院大4年の下村月乃さん(22)だ。専攻するビジネスデザイン学科での卒業制作作品が、採用された。

曲線と色で「つくば」らしさを表現

筑波山を表す二つの起伏と、ヨーグルトをイメージする滑らかな波—。下村さんは、つくばの研究者との共同研究で生まれたヨーグルトを、3本の曲線と豊かなグラデーションカラーで表現した。自然と都市が同居する「つくば」らしさを打ちだし、商品の手に取りやすさと、ささやかな特別感を併せ持つイメージを形にした。

大学のサポートを受け地域企業と協働する「実践活動」の授業をきっかけに、筑波ハムと関わりのあった母親とのつながりから企画が始まった。当初は企業パンフレット制作を想定したが、ヨーグルトラベルの一新を検討していた筑波ハムから、ラベルデザインを持ちかけられた。

ハムやベーコン、ソーセージなどを手がける筑波ハムでは、元農林水産省畜産試験場第一研究室の吉野正純博士との共同開発で生まれた乳酸菌を使用する乳製品を、吉野博士にちなむ「ナチュラル吉野」というブランド名で製造・販売している。

下村さんは、ラベル制作の過程で製造、営業など、企業内の多様な立場の人と意見を交わし、細部調整を繰り返した。その過程を「とても大変だった」と話しつつ、「立場による見方の違いを知り勉強になった」と振り返る。実際に店頭に並ぶ商品を見ると「本当に並んじゃった。よかった」と安堵し、「完成にこぎ着けられ自信になった」と喜んだ。

筑波ハム乳製部の岩本俊典さんは、下村さんのデザインを「試案からこちらの想像を超えるものでした」とし、「完成品に大変満足しているし、お客さんの反応もとてもいい」と笑みを浮かべる。

駆け抜けた学生生活

中学時代から、コンピューターゲームを自作し、小説を書くなど創作活動に打ち込んできた下村さんは、筑波学院大入学の動機を、「様々なことにチャレンジできる環境に魅力を感じた」からと話す。大学では、卒業制作につながった学外団体と連携をはじめ、文化祭実行委員、コロナ禍でのサークル活動のためのオンライン活動環境を作り上げるなど、積極的に活動してきた。そんな4年間を「あっという間。駆け抜けちゃったという感じです。いろいろな世界を知ることができ、社会勉強になりました」とさわやかに振り返る。卒業後は、アプリ開発やWebサイトのデザインを手がけたいという。

これから新ラベルが貼られたヨーグルトを手に取るお客さんに対して、「グラデーションの色使いやフォントなどの調和に目を向けてもらえたらとてもうれしいです」とし、「手に取るそれぞれが、好きなところを見つけてほしい」と話した。(柴田大輔)

露のウクライナ侵攻に思うこと 《つくば法律日記》20

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堀越さんの事務所があるつくばセンタービル

【コラム・堀越智也】前回のコラム(1月5日付)で、ソ連邦成立100周年に触れました。こう書くと、ロシアのウクライナ侵攻を示唆していたように聞こえるかもしれません。しかし実は、100周年といってもロシア関連のニュースはそんなにないだろうなと思い、資本主義の話に持っていったわけです。

100周年だから、何か重大事が起きるかもしれないと書いていれば、預言者になれたのですが…。

1月のコラムを読み返して、先見の明のなさを感じながら、正月に何気なく勉強した、ソ連邦の知識を思い出しています。東欧の社会主義圏が消滅し、ソ連邦が解体された後、その構成国がどうなったのか、もやもや状態だったのをすっきりさせたくて、世界史の教科書を読みながら地図を眺めました。

いろいろな文献には、ソ連邦解体後のことについて、早々に独立したバルト3国を除く12の独立国家共同体=緩やかな連合体と書かれています。一方で、プーチンが「強いロシア」の再建を主張して、長期政権となったとも書かれています。

緩やかな連合体の中心に強くなろうとする国がいたら、何が起こるか想像に難くありません。経済的に脆弱(ぜいじゃく)な国は、強い国に依存するか、飲み込まれます。経済的自立ができる国は、強くなろうとする国と対立するようになります。

ロシアから見たウクライナの存在が日本の奈良と京都の関係に近いことが、ウクライナ侵攻の1つの理由に挙げられることがあります。確かに、ウクライナの首都はキエフで、ロシアという国の歴史をさかのぼると、キエフ公国に行きつきます。

ただ、キエフ公国を建てたのはノルマン人ですし、そのキエフ公国はモンゴルに滅ぼされているので、ウクライナが奈良―京都的関係であることは大きな理由になりません。いずれにしても、武力侵攻という手段を取ったことは過ちです。

国際法による抑止力の議論を

ウクライナがロシアに侵攻されたことで、日本も核を保有して抑止力を持つことが必要だという意見が増えています。核保有の正否はともかく、抑止力を有するのは核だけではありません。法律にも罰則があれば抑止力になります。

各国には罰則付きの法律があり、国民の犯罪を抑止します。ロシアのウクライナ侵攻は国際法違反と言われますが、グローバリゼーションが進展した今でも、全ての国を規制する法はなく、武力侵攻をピンポイントで抑止する法はありません。

学生のころ、地球上で文化が異なる国々を同じ法でまとめることに違和感を持っていました。しかし、人が生まれたらその地の法律に従わなければならないように、地球上に国をつくった以上、従わなければならない法があるべきなのではないか―。国際法の父・グロティウスが「戦争と平和の法」を著したのは1625年でした。

それ以来、国際法の「母も子」も現れていません。そろそろ、核による抑止力だけでなく、普遍的に適用される国際法による抑止力について、深い議論ができないものでしょうか。(弁護士)

新年度も運営事業者継続へ 不登校の学習支援拠点 つくば市が追加提案 

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「むすびつくば」がある市産業振興センター=つくば市吾妻

1位のトライは研究学園駅前に移動

つくば市吾妻、不登校の学習支援拠点「むすびつくば」をめぐって、市が新年度からの運営事業者を公募した結果、新規の民間事業者が1位となり、現在、同拠点を運営するNPO法人リヴォルヴ学校教育研究所(同市二の宮、本山裕子理事長)が次点となったことから、保護者会が、リヴォルヴによる事業継続を市長らに陳情していた問題(1月20日付)で、五十嵐立青市長は3日開かれた3月議会本会議で、リヴォルヴによる事業を現在と同じ場所で新年度も継続するための事業費など約2300万円を追加提案した。

一方、1位となった事業者はトライグループ(本社・大阪市、平田友里恵社長)であることが分かった。トライは公募型プロポーザル方式による選定結果に基づき、市の委託事業として新たに研究学園駅前で4月から不登校の学習支援事業をスタートさせる予定だ。

2カ所とも3月議会で審議され、最終日の23日に採決が行われる。

3日の追加提案によると、学習支援拠点を別の事業者に委託することで現在の利用者や保護者に不安を与えていることから、リヴォルヴが運営するむすびつくばに利用者が引き続き通えるよう、2022年度もリヴォルヴに事業を委託するとした。

議会からは、むすびつくばとトライに通所することになる子どもは金銭的な負担がないが、他のフリースクールに通所している子どもとの格差はどう対処していくか、などの質問が出た。これに対して吉沼正美教育局長は「他市町村を例に制度設計の研究をしていきたい」と答えた。

3日開かれた3月議会本会議で補正予算案などを追加提案する五十嵐立青市長(奥の壇上)=つくば市役所

部屋と備品の使用料が追加発生

市教育局によると、リヴォルヴは今年3月末までの2カ年、市との協働実証事業として年間約1400万円で事業を運営した。現在35人が通所している。新年度は市の委託事業として約2100万円で運営し、受け入れ人数を計40人に増やす。

トライは公募時点では、むすびつくばがある同市吾妻で事業を実施する計画だったが、場所を移す。研究学園駅前のトライ研究学園駅前校で、午前9時30分から午後3時まで、不登校の学習支援事業を新たに展開する。現在、駅前校の利用がない時間帯に実施するという。別の場所に移すことにより、部屋や備品の使用料などが新たに発生し、トライの委託事業費は年間約180万円増え、計約2300万円になる。駅前校の面積はむすびつくばとほぼ同じ約125平方メートル、スタッフ10人程度を配置し、40人を受け入れる方針だ。

トライの委託期間は2025年3月末までの3年間。利用を希望する児童生徒には小中学校を通して3月中に希望を募り、面接をしたり必要な支援内容を個別に聞き取ったりして4月上旬からスタートできるようにするという。

不登校の学習支援事業が実施される予定のトライ研究学園駅前校=つくば市研究学園、TX研究学園駅前

五十嵐市長は「障害のある就学児童には放課後デイサービスなど、国や県が予算を負担する仕組みがあるが、不登校児童生徒には制度設計が足りていない。公設、民間で手を携えて市全体での支援を行なっていきたい」と話した。

むすびつくば存続の方向が示されたことについて、保護者会代表の庄司里奈さん(45)は「議会で発表されてほっとしました。一連の騒動は市内の不登校児童生徒を考えるきっかけになったと思う。公募の方法を含めて市教育局と連携しながら、保護者の立場からどうプランニングできるかみんなで考えていきたい」と語る。

1年先は未確定

むすびつくばは2022年度も存続する方向だが、今回、追加提案された事業費は1年間だけ。1年後どうなるのかは現時点で何も決まっていない。むすびつくばの保護者の一部からは、事業者の存続を求める要望とは別に、市内の不登校児童生徒すべてを、公平に支援するよう求める要望も出ている。

これについて市教育局は、22年度に有識者を加えた検討の場を設け、だれ一人取り残さないことと、公平性の両方の観点から方向性を定めていきたいとしている。(橋立多美)

制服を回収し繕い安く譲渡 市民が息の長いリサイクル活動 つくば

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寄付された体操着や制服のチェック作業をする「茎崎家庭教育と地域を考える会」のメンバー=つくば市小茎の茎崎交流センター

茎崎家庭教育と地域を考える会

寒さが緩み、入学シーズンが間近になった。子どもの成長を喜ぶ一方で親が戸惑うのは、学校指定の制服費用の高さだ。つくば市茎崎地区の市民グループ「茎崎家庭教育と地域を考える会」(三澤春枝代表)は家計の負担を軽減しようと、着なくなった制服を回収し、必要に応じて補修した上で安く譲る息の長いリサイクル活動を続けている。また、制服のリサイクル活動が全国に広がりつつあり、制服リユースショップ「さくらや」つくば店が制服回収と安価での販売に取り組んでいる。

「茎崎家庭教育と地域を考える会」は1990年、旧茎崎町の家庭学級を修了した主婦たちが地域に役立つリサイクル活動を目的に発足した。当時町内は大規模宅地開発が行われ、急激な人口増加に伴って小中学校の増築や新設が進められた。開校した町立茎崎第三小学校は児童数1500人のマンモス校だった。転入生の増加のほか、成長著しい中学生は制服の買い替えを迫られることから、制服リサイクルに取り組むことになった。

発足から32年経った今も、扱うのは茎崎地区の小学校3校(第一、第二、第三小)が指定する体操着と、中学校2校(高崎、茎崎中)指定の制服とジャージ、体操着だ。着なくなった体操着や制服を中学2校と茎崎交流センターに設置したリサイクルボックスで回収し、使用に耐えられるかチェックした上で希望者に販売している。

同地区では中学入学時、学校指定の制服や体操着などを購入すると一式で8万円前後かかる。県立高校は一式約10万円、私立高校は一式15万円以上だ。同会の場合、リサイクルした制服を男女とも上着1500円、中学生のジャージ上下各300円、小学生の体操着上下各200円などで販売する。収益金は各中学校に寄付している。

同会が扱うリサイクル品の多くは、子供たちが2着目として使用する洗い替え用に活用されている。寄付される制服のほとんどは律儀にクリーニングされているという。桜井さんは「年間約100着を扱い、5月に回収と販売の流れが加速する」と話した。

メンバーの(左から)古屋野寛子さん、三澤春枝さん、桜井妙子さん=同

「貧困の相談 コロナ禍以前はなかった」

新型コロナウイルス感染が広がる3年前までは年4回、同センターロビーで販売していた。現在は感染拡大防止対策として奇数月の第3水曜午後1時半から2時半までの1時間とし、少人数による入れ替え制の予約販売に切り替えている。会場は回収した制服を収容しているセンター倉庫室を使っている。

学校から相談を受けることがある。「困窮世帯で中学入学までに制服を購入できない子どもがいる」「引きこもっていた子どもが修学旅行に参加を希望しているが、入学時に購入した制服が成長した体に合わない」などだ。会はどんな場合も対応してきた。一方で「貧困世帯の相談はコロナ禍以前にはなかった」と三澤さんは顔をくもらせる。

現在、会員は3人。古屋野さんは「地域に根づき、待っている人がいるからやりがいがあって楽しい。仲間になりませんか」と呼び掛けている。(橋立多美)

◆入学前のリサイクル販売は3月16日(水)午後1時30分から茎崎交流センターで。予約申し込みと入会の問い合わせは電話029-876-0568(三澤さん、平日の午前9時〜正午)。

◆学生服リユース専門店のさくらやつくば店は、不要になった学生服の寄付を各所に設置した回収ボックスで受け付け、低価格で販売している。回収ボックスは、竹園高校(つくば市竹園)、土浦自動車学校(土浦市中村南)、わたなべクリーニング「洗濯王」各支店にある。また、つくば市(一部対象外)、土浦市、牛久市を対象に、出張買取を行なっている。入荷商品はインスタグラムで公開している。

春を探しに学園都市を散歩 《ポタリング日記》6

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【コラム・入沢弘子】庭先の梅が香りはじめました。梅の別名は春告草。今日はポタリングで春を探しにいきましょう。つくば市の洞峰公園に車を止め、折りたたみ自転車「BROMPTON(ブロンプトン)」を組み立てたらスタート。

つくばでは老舗の洋食店、パン屋などが並ぶ洞峰公園通りを進んでいくと、左手に筑波宇宙センター、右手に産業技術総合研究所つくばセンター。東大通りを渡ると、左手に物質・材料研究機構の国際ナノアーキテクトニクス研究拠点、右手に産総研つくばセンターつくば東事業所と続きます。

この並木地区は、世界有数の研究機関が隣接する地域。垣根のない芝生の庭に造られた低層の公務員宿舎、電線のない街並み、縦横に整備された車線の多い道路は、まるでシリコンバレー周辺の景観のようでした。30年前にパロアルト(米カリフォルニア州)からつくばに引っ越した際、違和感がなかったのはそのためでしょう。

直進していくと視界が開けました。畑が広がり筑波山がくっきり見えています。花室川の橋の上で振り返ると、つくばセンターの三井ビルと高層マンション群。下は枯れ草に覆われた川辺に遊ぶカモの群れ。花室川流域の地層は約3万年前に形成されたもので、ナウマンゾウの化石が発見された場所。新旧が混在したこの景色を眺めるのが好きです。

ここは難読地名で有名な、大角豆(ささぎ)地区。農家の家屋、道端の石碑や祠(ほこら)に癒されます。あぜ道にははうようにタンポポが咲いていました。河川沿いに田園地区を抜け、桜南小学校に出ます。約150年続く歴史ある小学校です。学校裏手から再び田園地帯へ向かうと、畑や雑木林の周辺に建設中の住宅が増えてきました。藤沢荒川沖線を渡り、並木地区に戻ると景色が一変しています。

数年離れていると「浦島太郎」に

段階的に売却が進められていた公務員宿舎の跡地には、分譲住宅地やマンションが完成していました。桜南スポーツ公園や並木公園の周辺も、すべて一般住宅地。並木ショッピングセンターの隣には、新業態スーパー「ブランデ」ができています。この地域に約1800戸あった公務員宿舎が消え、新しいまちに生まれ変わっていました。数年離れていると、浦島太郎の気分になるのではないでしょうか。

藤沢荒川沖線に戻り国道を渡ると、「いちご狩り」の看板。田村農園はミニチュアホースのいる農産物直売所です。イチゴを買って元の道へ。梅の木通りの梅の香りを楽しみながら東大通りを渡り、ペデストリアンデッキを進みます。

梅園公園に到着しました。小山の上に腰を降ろし、梅林を見渡します。花は3分咲きぐらいでしょうか。ここは、つくばに越してきたころから変わらない景色。梅の木は高く、大きくなりましたね。甘酸っぱいイチゴを口に含むと、懐かしい記憶がよみがえってきました。

お弁当持参で散歩した日、ベビーカーを押して日光浴をした日…。激変するつくば市内ですが、変わらない場所を見つけるとホッとします。

梅園公園から赤塚公園を経由し、洞峰公園に至るつくば公園通りも、以前の面影をとどめています。思い出に浸りながら戻るといたしましょう。(広報コンサルタント)

テイクアウトのモバイルオーダーをスタート 百香亭

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右はQRコードでの注文の仕方について説明する統括マネージャーの許さん。左はテイクアウト人気メニューの(上から順に)黒酢豚弁当、炒飯、焼きそば=百香亭筑波大学店 

店内飲食もスマホから注文可能に

県南を中心に全8店舗を展開している中国家庭料理の店「百香亭」(ひゃっこうてい、本店・つくば市東平塚)が2月から、待たずに持ち帰りができるテイクアウト予約のモバイルオーダーシステムをスタートさせた。コロナ禍、昨年から同店は、弁当や一品メニューの持ち帰り販売に力を入れている。

スマートフォンでQRコードを読み取って注文する形式で、受け取りの時間を10分刻みで指定できる。現在、筑波大学店(つくば市天久保)では初回から3回目までの注文が割り引きになるテイクアウト専用割引券を配布中で、今後さらにテイクアウト利用客を増やしていきたい考えだ。テイクアウトで人気なのは500円(消費税込み)のワンコイン弁当のほか、店内飲食でも人気の看板メニュー黒酢豚に、炒飯や焼きそばだという。

店内飲食での感染リスクも減らそうと、店内でのモバイルオーダーもスタートした。席に着いた客が自分のスマートフォンで店内にあるQRコードを読み込み、メニューを選ぶと店側の端末に注文が届いて配膳される仕組み。伝票も必要なく、スマートフォンの画面をレジで提示して会計を行う。紙のメニューの消毒がしづらいことなどからメニューを触る必要なく衛生的と導入を決めた。アプリケーションのダウンロードが必要なく簡単で、若い客だけでなく、50代、60代にも好評だという。

統括マネージャーの許徳生(きょとくせい)さんは「お客さんは(テイクアウト用の)チラシをもらってもなくしてしまうし、注文したい時にどのようなメニューがあるか、そのメニューが持ち帰りできるのかどうかも分からない。感染リスクを抑えて安全に注文しやすい方法をと考え、モバイルオーダーシステムを導入した」と話す。

歓送迎会の予約はゼロ

一昨年はコロナ禍で売り上げが半分に減少。その後回復したものの店舗全体での売り上げはコロナ禍以前の7割ほどとなっている。昨年4月にデリバリー部門を新設してから1日50食ほどの弁当を主に官公庁に配達しており、売り上げ全体のおよそ3割をテイクアウトとデリバリーが占めている。

筑波大学の学生や教職員などの利用が多い筑波大学店では、コロナ禍以前、歓送迎会のある3月、4月には月の売り上げが1000万円ほどあった。しかし今年は歓送迎会の予約はゼロ。新システムの導入でテイクアウト部門を強化し、店舗への客足も増やしたい狙いがある。

百香亭筑波大学店のテイクアウト予約用のオーダー画面(左)とモバイルオーダー用のQRコード(右)

モバイルオーダーシステムはコミュニケーションアプリLINEを利用したもので、「百香亭筑波学園店」はLINE公式アカウントから店舗情報などを随時配信している。同店のシステム担当者は「(百香亭筑波学園店が)公式アカウントを開設してから1週間で300人のフォロワーが付き驚いた」と話す。現在は2100人以上のフォロワーがおり、今後の集客効果に期待を寄せている。

「百香亭」は医食同源をコンセプトにした中国家庭料理の店として2001年にオープン。特につくば本店、筑波大学店はつくば市民を中心に親しまれている。牛久など合わせて7店舗があり、いずれの店舗もテイクアウトサービスを実施している。(田中めぐみ)

◆筑波大学店のテイクアウトについて詳しくは電話029-858-4360(百香亭筑波大学店)

2週間程度の再延長を要請 茨城県 まん延防止等重点措置

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茨城県庁(イラストは「いばらきアマビエちゃん」)

6日を期限とする新型コロナウイルスのまん延防止等重点措置について、大井川和彦知事は1日、県内全域を対象にさらに2週間程度、再延長するよう国に要請したと発表した。延長されれば、すべての飲食店に引き続き営業時間の短縮などを要請する。

新規感染者数は2月上旬にピークを打ったが、2月末は週平均で1日当たり1200人を超えているなど減少傾向が下げ止まっていること、入院患者数が高止まっていることなどのためとした。

その上で、オミクロン株による今回の第6波の感染状況について、県内の一昨年からこれまでの累計感染者数約7万3000人に対し、2月の1カ月間だけでほぼ半数の3万7000人を占めていることを明らかにした。

現在の入院患者は60歳以上がほぼ9割で、そのうち80歳以上が過半数を占めているという。さらに入院患者の9割以上が3回目のワクチン未接種者だったとした。感染が確認された場合、60歳以上が入院に至るケースは15%、60歳未満は1%だった。

一方、2月27日時点の3回目のワクチン接種率は県人口の22%、2回目接種から6カ月を経過した高齢者は72%という。大井川知事は、2月末に8割の高齢者の3回目の接種を終えたいと思っていたが、届かなかったとした。つくば市の3回目の接種率は全人口の19%で県内44市町村中33位、6カ月を経過した高齢者の接種率は83%で同14位、土浦市は全人口の19%で30位、高齢者は66%で31位。

まん延防止等重点措置が延長された場合の対応策については、すべての飲食店に対し7日以降も夜8時以降、または9時以降の営業自粛や酒類の提供自粛などを要請する。協力金の支払いも延長される。金額は中小企業の場合、1店舗1日当たり売上高に応じて2万5000円~10万円。

県民に対しては、会食は4人までとし、混雑していたり感染対策が徹底されてないなど感染リスクの高い場所への外出や移動の自粛を引き続き要請する。

事故物件でもかまわない 《ことばのおはなし》43

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【コラム・山口 絹記】よく、「事故物件」という単語を耳にする。

前居住者が亡くなった物件には安く住めるらしいが、私は実際にそういった賃貸情報を目にしたことがない。この事故物件という用語は定義が少し曖昧らしく、科学的根拠がなくとも場合によっては該当してしまうらしいのだ。興味深い単語である。

個人的には、そこで過去に凄惨(せいさん)な事件が起こって今も地元で有名であるとか、テレビ画面から時折人が出てくるため視聴に著しい問題があるとか、夜ごと枕もとで落ち武者が金打(かねうち)していてうるさく眠れないとかでなければ、私は気にしない。

私は特に信心深いわけでもなく、どちらかと言うと「信心浅い」のだが、自宅に霊や妖(あやかし)が出るとて、今はもう気にすることはないと思っている。

夜中にトイレに行くのを怖がる娘にも、「賃貸だし、本質的に私の所有物ではないから、邪魔でなければ許してあげなさい」と言い聞かせている。夏は暑く冬は寒いし、なにぶん狭い家だが、それでもよろしければ、といったところ。

おはなしがだいぶ脇道にそれてしまった。

実は、私の実家の部屋は、母方の祖父がこの世で最後の時間を過ごした部屋だ。祖父は最期を家族の皆に看(み)取られたわけで、不審死でもなければ遺体が損壊したわけでもなく、これは当然、事故物件には当たらない。

亡き祖父の部屋にある数千冊の蔵書

だが、この物件に今、問題が発生している。

母や叔父が、この家を近い将来に手放して引っ越そうとしているのだ。幸い、相続トラブルのような事態にはなっていないのだが、一つ私にも関わる問題がある。祖父の部屋には数千冊の蔵書があるのだ。これは蔵書の一部であり、別の部屋にも段ボールに入ったものがある。

そして、これの処理は私の担当なのだ。書物に興味のない人間であれば、すべて処分してしまえばよいのだろう。お金はかかるがそれだけのおはなしだ。

しかし私は書物と、そこで紡がれることばを愛していて、これらを手放すのは身を切るような行為なのだ。問題は深刻であり、ごく個人的な精神的負担は相当なものである。

私の部屋にはすでに1300冊程度(ええ、また増えましたとも)の蔵書があり、現状、実家の書物を引き取る余裕もない。とはいえ、捨てたくない。よって、精神的に血を流しながらも徹底的に整理しなくてはならない。あまり泣き言は言いたくないが、有り体に言って内心パニック状態である。

私は幽霊など信じていないが、正直言って祖父の霊が出てきてくれることを心から願っている。そして書物の整理を手伝ってほしい。死人を鞭(むち)打つなどという残虐な行為に及びたくはないが、今は幽霊の手も借りたい。賃金は出せないが、住み込み可。司書資格歓迎。

法律には詳しくないが、労基法は労働者の生存権を保証するためのものだったはず。死後の人間には適用されないだろう。昼夜問わずテレビ画面から出入りしても構わないし、夜中に多少うるさくすることにもこの際、目をつぶろうではないか。(言語研究者)

5人の元首相の書簡が波紋を呼ぶ 《邑から日本を見る》106

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雪がかぶった田んぼ

【コラム・先﨑千尋】東京電力福島第1原発の事故から11年たつ。事故を起こした原発は、放射能が高く、本体にはいまだに手が付けられないでいる。また、原発周辺の住民は避難先から戻れないでいる。その原発事故がもたらしたものの一つに汚染水の処理問題があり、もう一つが子どもの甲状腺がんの多発がある。今回は後者をテーマに取り上げる。

2月27日付コラムでも取り上げられたが、1月27日、小泉純一郎、菅直人、細川護熙、鳩山由紀夫、村山富市の首相経験者5氏が、欧州連合(EU)の執行機関・欧州委員会に「東京電力福島第1原発事故で、多くの子どもたちが甲状腺がんで苦しめられている」と書簡を送った。

それに対して、山口環境相は2月1日、「福島県での甲状腺がんは、同県や国連の専門家会議などにより、現時点では放射能の影響とは考えにくいという評価がなされている。『多くの子どもたちが甲状腺がんに苦しみ』という表現は、差別や偏見につながるおそれがあるので、適切ではない」と抗議文を5人に出した。

また、西銘復興相は2月4日の記者会見で、「5人の書簡は誤った情報を広め、いわれのない差別や偏見につながる」と批判。内堀福島県知事は「科学的知見に基づき正確に情報発信するように」と要請した。さらに、自民党の高市政調会長は「誤った情報で、風評被害が広がる」と非難の声をあげている。

こういった国や県、自民党の批判に対して、2月4日には、東電を提訴している甲状腺がん患者の弁護団が「200人あまりの子どもが手術を受けており、苦しんでいる」と抗議声明を出した。

また、抗議を受けた5人の元首相は、脱原発運動に取り組む市民団体「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」を通じて逆抗議し、「この10年で266人に甲状腺がんが発症し、222人が手術している。一般には、子どもの甲状腺がんは100万人に2人程度。福島では事故前の70倍にもなっている。国や県が、この原因が原発事故由来でないと言うなら、増えた原因は何だと主張・立証するのか」と質問している。

環境省は2月10日、「福島県の甲状腺がんは、国内外の専門家会議により、現時点では放射能の影響とは考えにくいという評価がされている」と答えているが、質問に直接答えてはいない

「科学的知見」は何か?

両者のやり取りを見て、それでは、国や県が言う「科学的知見」とは何だろうかと考えた。

コロナ禍でもそうだが、国はしばしば専門家を持ち出す。しかし、専門家といっても、考え方、手法はさまざまだ。原発一つをとっても、「原子力むら」の研究者の意見と、それに真っ向から対峙する研究者とは全く違う。どちらを信用するか。その人の生き方、暮らし方によって皆違う。専門家が言う「科学的知見」は、皆が納得するものでなければ、それを信用しろと言われても無理な話だ。

今回の問題に戻すと、多発している福島の甲状腺がんは原発事故によるものではないというのなら、それならばどうしてなのかという因果関係を説明するのが「科学的」なことではないのか。汚染水の海洋放出についても同じことが言える。国や東電は「環境に影響がある」という主張を否定する根拠を示さなければなるまい。(元瓜連町長)

ツェッペリンカレーを無償提供 7つの子ども食堂に

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利用者にできたてのツェッペリンカレーが手渡される=27日、土浦市都和、都和公民館の「ひよこ食堂」

土浦市食のまちづくり推進協

土浦市食のまちづくり推進協議会(事務局・土浦商工会議所内)つちうらカリー物語事業者部会(藤澤一志部会長)は、「カレーのまち土浦」をPRし子供たちの食育を推進しようと、市内で活動する7つの子ども食堂に「ツェッペリンカレー」を定期的に無償提供していく。第1弾として27日、都和公民館の「ひよこ食堂」に300食が提供された。

土浦とカレーの歴史知って

市独自の食の歴史・文化を生かし、個性的なまちづくりを進める「食のまちづくり事業」の一環。ツェッペリンカレーの由来は1929年にドイツの大型飛行船ツェッペリン伯号が、史上初の世界一周飛行の旅程で土浦近郊に降り立ち、地元で乗組員の労をねぎらうためカレーを振る舞った史実に基づいている。

同部会は2007年から毎年11月に土浦カレーフェスティバルを開催するほか、市内小学校の給食に「カレーの日」を作ってもらうなど普及に務めてきた。だがコロナ禍でこれらの事業も中止が相次ぎ、新たな活動の場を模索していた。

「今日はサプライズ」

ツェッペリンカレーは、地元産のレンコンと県の銘柄豚ローズポークを使ってじっくり煮込んだぜいたくなカレーをいう。ターメリックライスに、ゆでたオクラも欠かせない。食材は推進協議会が提供した。27日はゆで卵とシーフードフライも寄付によりトッピングされた。

調理室では手分けして作業が進む

公民館の調理実習室で、調理や盛り付けの作業をするのは「ひよこ食堂」のスタッフ約10人。でき上がったそばから、電子レンジにもかけられる紙製の弁当箱に詰められ、手渡されていく。密を避けるため利用者は事前予約制で、決められた時間に会場を訪れる。出口ではマスクや野菜類、子ども向けの袋菓子などの配布もある。マスクは寄付金で購入した。野菜は市民農園や有機農園の規格外品などだそうだ。

「子どもたちはカレーが大好きなのでありがたい。コロナ前の食堂形式のときはよくカレーを作っていたが今の弁当方式だと難しい。今日はサプライズとして喜んでもらえたと思う」と話すのは、2019年から都和公民館で「ひよこ食堂」を運営するNPO法人「地域コミュニティワーカーズコレクティブみんなのたまご」代表の荒井敦子さん。

同食堂の弁当は、地域の一人暮らしの高齢者の家にも区長や民生委員の有志の手によって届けられている。これからも必要な人にはなるべくピンポイントの支援ができるよう考えていきたいと、荒井さんは話す。

推進協議会の小島俊光さんは「今はどの子ども食堂もテイクアウト方式だが、コロナが落ち着いて食堂形式が復活したら、そこで写真展や紙芝居などを開催し、ツェッペリン伯号と土浦のカレーの歴史についても理解を深めてもらいたい」と話している。(池田充雄)

◆今後のツェッペリンカレー提供予定は以下の通り。
・こども食堂たんぽぽ:3月6日(日)、たんぽぽ作業所(旧宍塚小学校前)
・ほぺたん食堂:3月26日(土)、一中地区公民館
・土浦ひまわり食堂:3月27日(日)、三中地区公民館
・ふれあい食堂かみもり:3月27日(日)、神立地区コミュニティセンター
・ロック応援弁当:3月27日(日)、六中地区公民館
※各所ともテイクアウト制。利用方法や申し込み方法、代金などはそれぞれ異なる。提供数には限りがある。問い合わせは電話029-821-5995(市社会福祉協議会・福祉のまちづくり係)へ。

昭和な世界の競り台に立つ紅一点 佐野聖美さん【ひと】

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流れに乗ってさばかれる切り花の競り。右手に立つのが佐野さん=つくば市花室、土浦生花市場

土浦生花市場 

卸売市場はかなり独特な世界だ。隠語が飛び交い符丁で交渉する。競(せ)りをさばく競り人は、商品とお金のやり取りを瞬時に決する仕切り役だから、いわば「切った張ったの世界」に属する。世の中が男女共同参画、ジェンダーフリーと声を上げても容易には届かない、男の仕事だった。令和になって、つくば市花室にある土浦生花市場(齊藤巌社長)の競り台に初めて現れた女性競り人が、好感を持って受け入れられようとしている。

20年9月から競り台に立つのは、土浦市在住の佐野聖美さん(40)。株式会社組織である同社の花き流通部主任、市場にいる競り人3人の中の紅一点、海外から輸入の切り花、鉢物などを主力に扱っている。

売れ筋のデンドロビウムの鉢物を手に=同

流れを止めないとっさの判断力

将来の夢に「ケーキ屋さん」「花屋さん」をあげるようなタイプではなく、花好きというより緊張感ある職場に惹かれる女子だったという。アルバイトに来たとき、その素養を見抜き、正社員採用したのが齊藤社長。2015年ごろの話だ。「これからを考えたら女性を積極的に活用していかなければ」と経営判断、最初から競り人に育てるつもりで採用した。

同社は1974年創設。県内には水戸、土浦の両公設市場にある花き市場をはじめ、日本花き卸売市場協会の会員企業が5社5市場あるが「現時点で女性競り人は1人だけ。おそらく過去にもいなかったろう」(齊藤社長)という。

日本で最大の花市場がある東京・大田市場などでは、競り人になるには試験を受け、資格を得る必要がある。男女に等しく門戸が開かれ、女性の姿が珍しくなくなってきているが、「茨城県内では特に資格試験はなく、水戸公設(水産、青果、花き市場がある)でも競り台に立つ女性はいない」(県農林水産部)そうだ。

大手の卸売市場では近年、透明性確保から電光掲示板に取引価格が即座に表示されるようになっている。競りで、卸業者などが値段を暗に示す符丁の使用を禁ずるところも出てきているが、土浦生花市場は「まだ昭和が色濃く残る世界」。符丁をしっかり覚えるのが競り台に立つための第一歩だ。

ツラ(1)、ブリ(2)などと数えていくが、青果市場のような威勢のいい掛け声とも違う。競り人とひな壇に並ぶ買参人(ばいさんにん)たちとのやりとりはぶつくさ言い合う形で、部外者にはほとんど聞き取れない。チョンガは1と5の並びをいうが、それが15なのか150なのか即座に判断しなくてはならない。1本だったり、1束だったり、1箱だったり扱う単位も一定していないのだ。

「流れを止めないとっさの判断力を問われる仕事」と佐野さん。同時に声が上がった時、どちらが高いか、どちらが早いか即座に判定しないと、買参人になめられたり、怒鳴られたりしてしまう。「お互い真剣勝負だから、なかなか女性には務まりにくかった」

花産業受難のコロナ禍に業績伸ばす

土浦生花市場では常時30人ほどの買参人がひな壇に並ぶ。多くが生花店のバイヤーだ。土浦で切り花販売をしている古参の赤根孝さんは「30年通って初めての女性。どうなることかと思っていたが、きっぷがよくてねえ。評判はいい」という。

「1年半やってきて、ひな壇にも女性の姿が次第に増えてきた。やっぱりコロナの影響かしら。冠婚葬祭の需要が減って花き産業が大変になったのは確かだけど、売り上げを増やしている生花店さんだってある。自宅時間が増えた分、家に飾る花に販路を見出したりしてね」と佐野さん。ドライフラワー向けのアレンジがしやすいオランダアジサイの入荷を増やすなどした。

これらの花は自ら2トン車を運転して、東京・葛西の東京フラワーポートなどに仕入れに行く。競りは毎週月・水・金の3回、午前9時から2時間ほどだが、佐野さんが市場に入るのは午前6時。前日までに仕入れを確認して、相場価格をチェック、競りの戦略を練りながら、運び入れて競りに臨む。

齊藤社長もその仕事ぶりを頼もしく見ている。市場の直近の取扱量は年5億円ほど、コロナ禍にあっても一応の右肩上がりを確保した。春になれば、市場に入ってくる花の数も増えてくる。(相澤冬樹)

ウクライナ情勢が急展開 《雑記録》33

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【コラム・瀧田薫】2月24日、ロシア軍は首都キエフをはじめとするウクライナの主要都市周辺の軍事施設に空からの攻撃を開始した。今回のウクライナ攻撃が「力による一方的な現状変更を禁じた国際法」に違反することは明白であり、日本政府がロシアに対する非難声明を発表したのは当然のことである。今後、ロシア制裁について、政府はG7メンバー国と同一歩調を取ることになるだろう。

米欧側はロシア軍のウクライナ侵攻を抑止できず、今後、大規模な経済制裁を発動するにしても、手詰まり感は否めない。米軍あるいはNATO軍の軍事介入は、ロシアとの核戦争を覚悟しなければできないオプションであり、米欧にできるウクライナへの軍事支援としては、最大限、武器・弾薬と情報の提供ぐらいだろう。

一方、ウクライナ政府は「非常事態宣言」を発し、ロシア軍への反撃を国民に呼びかけている。しかし、彼我の戦力差は大きく、ロシア軍に対する組織的抵抗を長期間続けるには無理がある。ゼレンスキー・ウクライナ大統領は、親ロ派やロシアが送り込んだ工作員によるクーデターやテロの可能性にもおびえなければならない―それが実態と思われる。

他方、プーチン大統領は、ウクライナ侵攻を事前の計画どおりに進めており、現時点で戦争の主導権は完全に彼の手中にある。しかし、プーチン大統領にも不安材料はある。

彼の最終目的は「強国ロシアの復権」であり、そのための条件として、この戦争の後、ウクライナ、ベラルーシそしてロシアとの間で強力な同盟もしくは国家統合を形成する必要がある。この戦争でウクライナを徹底的に破壊してしまえば元も子もない。

そこで、可及的速やかにウクライナの現政権を無力化し、新政府(ロシアの傀儡政権)を誕生させることが、プーチン大統領の最優先課題となる。首都キエフの制圧に手間取って、ロシアとウクライナ双方に甚大な人的・物的損害が出るような事態になれば、プーチン大統領は、たとえ戦争に勝利したとしても、ロシア国民の支持を失うだろう。

旧い国家観のプーチン戦略

ところで、ウクライナ情勢がプーチン大統領の思惑どおりに展開したとして、最終目標の「強国ロシア」の復権は実現するだろうか。

国家を「強国たらしめる要素」は軍事力だけではない。経済力、外交力、文化的影響力など諸要素が相まって、また国内外からの評価もあって、初めて強国たり得るのである。その観点からすれば、プーチン大統領の今回の試みは、ソ連崩壊以来30年、衰退の一途をたどってきたロシアの国力を、軍事力だけで回復せんとするものであり、20世紀前半の旧い国家観にとらわれた戦略でしかない。

今後のロシアが、国際的に孤立するなかで、頼れるのは軍事力だけだとすれば、ロシアが「20世紀に取り残された国家」の枠を超えるのは、プーチン以後を待たねばならないだろう。(茨城キリスト教大学名誉教授)