火曜日, 12月 30, 2025
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冬のキッズアート体験 参加者の募集を開始 つくば スタジオ‘S

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2019年の「冬のキッズアート体験」のワークショップの様子=スタジオ‘S(関彰商事提供)

筑波大学で芸術を学ぶ大学生らの指南を受け、子供たちがアート体験をするイベント「冬のキッズアート体験2023」が12月16日、つくば市二の宮のギャラリー「スタジオ‘S」(関彰商事つくば本社1階)で開催される。

季節を感じる工作などを体験するワークショップを6種類ほど開く予定で、11月16日から子供たちの参加申し込みの受け付けを開始した。

関彰商事と筑波大学が連携して企画し、2016年から毎年夏と冬に開催している恒例のイベント。アートを通じて楽しみながら、大学生と子どもたちが交流できる内容となっている。

一昨年は「キッズアートおうえん展」と題し、展覧会形式で工作の作品や動画を紹介。子どもたちに工作キットを配布した。昨年は「キッズアートツアー」を開催し、小学生30人と保護者が参加。筑波大学芸術系のアトリエ見学ツアーを行い、日本画を専攻する大学生が指導して、染めた和紙でクリスマス用のランタンを作るワークショップを開催した。

関彰商事の浅野恵さんは「お子様が筑波大学で芸術を学ぶ学生と共にアート体験ができる機会として、また学生が地域の皆様と触れ合える機会として好評をいただいているイベント。コロナ禍により変則的な開催が続いていましたが、これからも地域の恒例イベントとして楽しんでいただければ」と参加を呼び掛けている。(田中めぐみ)

◆「冬のキッズアート体験2023」は12月16日(土)、つくば市二の宮1-23-6、関彰商事つくば本社内スタジオ‘Sで、①午前10時から正午までと②午後1時から午後3時までの2回、参加者総入れ替え制で開催。参加対象は小学生と未就学児、保護者が同伴する。各回とも事前申し込みが必要。各回35人ずつ、申し込みは先着順で、定員に達し次第、受付は終了する。参加費1000円。申込締め切りは12月1日(金)。申し込みフォームはこちら

最新の車いす、装具などが一堂に 18日つくばで福祉機器展

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2016年の福祉機器展の様子(幸和義肢研究所提供)

障害者の衣服デザインし紹介も 

全国の福祉メーカーが最新の福祉機器を展示する「TSUKUBA福祉機器展2023」が18日、つくば市竹園、つくばカピオで開かれる。車いすや義足、装具、補聴器、介護用品など、各メーカーが開発したさまざまな福祉機器を見て、実際に触れて、体験することもできるイベント。コロナ禍によりつくばカピオでの開催は2019年以来4年ぶりとなる。

35の企業や団体が出展し、機器を展示するほか、障害者とクリエイターが協働でデザインし制作した当事者のための衣服を紹介などする。障害者スポーツ体験、各種ワークショップのほか、キッチンカーによる飲食ブースの出店もある。楽しみながら最新の福祉機器を知ることができるという。

同展は義肢や装具などの製造販売、福祉用具の貸与などを行う幸和義肢研究所(つくば市大白硲、横張 巧社長)が主催する。福祉機器の技術やサービスの発展はめざましく、毎年新しい福祉機器が誕生しているが、どのような機器やサービスがあるのか一般にはあまり知られていない。福祉機器をもっと身近に感じてもらいたいという思いから、2007年より開催を始め、今年で15回目の開催となる。15年、18年は水戸で開催、20年と21年はコロナ禍によりオンラインで開催した。対面で開催した19年は約1000人が来場、21年のオンライン開催は数千人が視聴した。

今回、幸和義肢研究所は、義足、車いす、装具などの製品を展示するほか、機器の製作・修理履歴データをスマートフォンなどで一元管理できる新サービス「ぽーさぽーと」などを紹介する。

同研究所の志賀智史さん(43)は「全国の福祉機器メーカーが最新の福祉機器を展示する。会場内のイベントとして、障害をもつ人が自分一人で着用できる服をデザインし制作過程を動画に収めたので、見ていただける。福祉を身近に感じる機会はなかなかないと思う。どなたでも参加いただけるので、福祉の現状や最新の技術を目の前で見て体験していただけたら」と話し、来場を呼び掛ける。(田中めぐみ)

◆「TSUKUBA福祉機器展2023」は18日(土)午前10時から午後3時まで。会場はつくば市竹園1-10-1、つくばカピオのアリーナとホール。入場無料。詳しくは同社(電話029-875-7627)へ。

差別が根強い社会だから《電動車いすから見た景色》48

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イラストは筆者

【コラム・川端舞】どの性を好きになるかという「性的指向」や、自分の性をどのように認識しているかという「性自認」を、本人が誰かに打ち明けることを「カミングアウト」と言い、誰かの性のあり方を本人の同意なく第三者に暴露することを「アウティング」という。

自身もゲイであることを公表しているライターの松岡宗嗣さんは「あいつゲイだってーアウティングはなぜ問題なのか?」(柏書房)で、アウティング問題の本質に迫っている。

この社会は、出生時に割り当てられた性と性自認が一致する「シスジェンダー」、異性の相手だけを好きになる「異性愛者」しかいないことを前提に、あらゆる制度や文化がつくられている。その人の性的指向や性自認は、本人にしか分からない。

そして、性のあり方は誰にとっても大切な個人情報なのだから、誰に伝えるかどうかは本人が決めればいい。それなのに、本人から性的少数者だと名乗らない限り、勝手に「シスジェンダー・異性愛者」だと決めつけられ、日常会話が進んでいく。

時には、その場に当事者はいないと思われ、性的少数者に対する差別的な発言を周囲から悪気なく浴びせられる。そんな社会だから、性的少数者にとってカミングアウトはとても勇気のいることで、アウティングは当事者から時に生きる気力をも奪うと、松岡さんは指摘する。

共通項は「社会モデル」

常に車いす姿の私を見れば、初対面の人でも、良くも悪くも、私を障害者だと認識し、私の前では障害者を傷つける発言は控えるだろう。だから、周囲から無意識に発せられる差別や偏見を空気のように吸わされる性的少数者の痛みは、おそらく私には分からない。

しかし、「多数派」とされる者たちが生きやすいようにつくられた社会で、そこから外れた者は自ら声を上げなければ、存在すら無視され、生きづらさを押しつけられる構造は、性的少数者も障害者も同じだ。

差別や偏見がある社会だから、アウティングが性的少数者の生死に直結する問題になるという松岡さんの指摘はまさに、障害者が生きづらいのは障害者個人のせいではなく、その存在を想定してつくられていない社会の仕組みに問題があるのだという「障害の社会モデル」と全く同じ考え方だ。本の中でも「社会モデル」が引用されている。

社会はそう簡単には変わらないし、異なる属性のマイノリティ同士が連帯して運動するのも容易なことではない。しかし、同じように社会の「当たり前」を変えていくなら、協力しないのはもったいないと私は思う。(障害当事者)

座席のみ利用も 障害者就労支援施設がカフェ開店 つくば駅近く

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席のみの利用もできる「そらいろラウンジ」で開店準備をするスタッフ。奥がパーテーションで仕切られた個室スペース=つくば市東新井

つくば駅に近い同市東新井に、座席のみでも利用できるカフェ「そらいろラウンジ(LOUNGE)」がオープンし、話題を集めている。食事や飲み物を提供するが、メニューを注文せず座席のみを予約して持参したお弁当を食べたり、パーテーションで仕切られたスペースを個室のように使用することもできる。

障害者就労支援事業を営む民間企業「風」(つくば市稲荷前、山川宏社長)の所属団体である就労支援施設「アシタエ-ラボ(ASHITAE-Lab)」が9月13日にオープンした。アシタエ-ラボは今年5月に同市花畑から一部移転し、作業所を運営したり障害者が作ったフラワーアレンジメントなどを販売する。今回のカフェ開業は地域社会との接点を広げる試みとなる。

パーテーションで仕切られた個室スペース

プロジェクト責任者の室野智佳さん(27)によると「オフィスなどが多い東新井周辺は、お昼どきの飲食店が混雑して昼食をゆっくりいただけないケースがある。ウェブからの予約によってこの問題を解決したい。席のみ利用の場合、お弁当を持参していただくことも可能。お客様が自分だけの時間を得たいというリクエストも想定し、その場合はパーテーションを使って個室化したスペースを利用できる」と話す。

事前に予約して席を確保できるため、確実に昼食の場所と時間を確保でき「ランチ難民」にならずに済む。

利用時間はランチタイムが午前11時30分から午後2時まで、イブニングタイムが午後3時から5時30分まで。ランチタイムは座席を事前予約できる。いずれの時間帯も「席のみ利用」が可能だ。

ランチタイムの人気メニューは、ランチプレート(税込み1000円)やドリンクサービス(同700円)。席のみ利用なら500円(同)という料金設定も含め、市内にありそうで無かったカフェスタイルだ。食事や飲み物を注文すれば座席代500円は不要。

「私どもは福祉事業に従事する企業なので、料金については利益追求してはならないという理念がある」と室野さん。

アシタエ-ラボは就労継続支援B型の施設だ。同A型が、雇用契約を結び就労規定と賃金を設定するのに対し、B型は、雇用契約を結ばず就労支援を通して要支援者を社会に送り出すことが前提。もちろん就労の対価は提供することとなっており、その原資にはアシタエ-ラボでのフラワーアレンジメントなどの販売や、そらいろラウンジの売り上げが活用される。

「そらいろラウンジは、カフェというスタイルを用いて地域のお客様とつながりを持とうと考えた。アシタエ-ラボ全体でもその姿勢は共通。気づいていただき、楽しみ親しまれる場所を目指しています」と室野さんはいう。

敷地と街路を隔てる白壁に9月初め、飯泉あやめさんの手で壁画が描かれた

カフェオープンにあたり、明るく生命力のある表現をしたいと、店外にある白壁に壁画を描く企画が立ち上がり、つくば市在住のアーティスト、飯泉あやめさんを起用した。飯泉さんは、独創的な技法と表現で作品を描き、各地で個展を開いている。

飯泉さんは「初めはアートの創作を軸にした教室のようなものを依頼され、プランを練ってきた。コロナ禍でそのプランはまだ実現していないが、代わりに壁画を描いてくださいと、話が大きくなりました」と話す。

飯泉さんは9月初めに4日間をかけて絵を仕上げた。素材は飯泉さんのモチーフの一つである「花」。「いのち」の躍動を意味するという。

「植物は生命力の象徴であり、中でも花は私たちにポジティブなエネルギーをもたらしてくれる。このイメージが、福祉に出合い、つながる場所というイメージにふさわしいと評価してもらった」と飯泉さん

壁画は幅4メートル、高さ1.6メートルほどの大きさ。「風」や「アシタエラボ」の理念やイメージから、空色を基調とした色彩を強調している。(鴨志田隆之)

東新井のアシタエ-ラボ。そらいろラウンジは1階。

◆そらいろラウンジはつくば市東新井19-6。ホームページはこちら。ランチタイムの座席はLINEで予約できる。問い合わせは電話029-896-9655(同)。

「金色姫伝説旅行記」を終えて《映画探偵団》70

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イラストは筆者

【コラム・冠木新市】11月3日(金)、4日(土)、5日(日)、つくば市神郡(かんごおり)の石蔵Shitenで「金色姫伝説旅行記/つくばシルクロード2023」のイベントを開催した。3日は20人、4日は5人、5日は30人名集まった。この10数年間、つくばで活動してきたが、神郡の地では始めてのイベントだった。

享和3年(1803)。常陸の海岸に髪の長い異国の女性が「うつろ舟」で漂着した。その事件は江戸の瓦版で紹介され話題を呼んだ。今年はその事件から220年目にあたるので、ぜひとも伝説が残る神郡でやりたかつた。

全体は「演劇仕立ての講演会」になっていて、「第1章 筑波恋古道」「第2章 天竺から来たお姫さま」「第3章 瓦版・うつろ舟事件」「第4章 金色姫と八犬伝」「第5章 金色姫からのメッセージ」と、過去、現在、未来へと旅する構成である。

会場を「うつろ舟」内部のタイムマシーンに見立て、時間旅行して「金色姫伝説」の変容を体験するというもの。もちろんフィクションだと誰もが考えるわけだが、話が進むにつれ、これは本当のことではないかと見えてくる仕掛けになっている。

「第4章」で、満州事変があった年、昭和6年(1931)に製作された無声映画『里見八犬伝の暗号』のガリ版刷りの台本が、神郡の蔵で発見された。「それがこの蔵であり、だからこの場所でやりたかったのです」と語ると、ほとんどの参加者がうなづいていた。信じきって帰った人も多くいた。すみません、これはフィクションです。

うれしかったことがある。13年前に作った歌「筑波恋古道」をソプラノ歌手で吹き込みし直したところ、以前にまして評判が良く、CDが欲しいと3人の方から言われたこと。また、この曲をテ一マにした映画「つくつくつくばの七不思議/サイコドン」第1話を上映したところ、興味を持つ人が多くいた。以前、映画を見てあまり受けなかった2人からも、「今回見たら面白かった」との感想が聞けたこともだ。

そして「第4章」では、18年前の『北斗七星伝』を絵本バ一ジョンで語ったところ、皆、食いつくような目で見て、スマホで撮影していた。

T・カ一チスの「グレートレ一ス」

イベントを終えて、アメリカ映画「グレートレ一ス」(1965)が無性に見たくなった。監督はブレイク・エドワーズ。主人公は、全身白ずくめの善玉グレート・レスリー(トニー・カ一チス)と、全身黒装束の悪玉フェイト教授(ジャック・レモン)。フェイト教授は、レスリーに対抗しニュ一ヨ一クからパリへの自動車レースに出場する。

無声映画風のドタバタ喜劇で、2時間40分の大作である。特に、前半40分、レ一スに入るまでが面白い。フェイト教授が奇妙なデザインの人力飛行機などでレスリーを襲うシ一ン。レスリーが女性を見つめると、キラリとマンガみたいに瞳が光るシ一ンなど、次から次へと楽しい場面が連続する。

イベントの最後で、金色姫伝説は、つくばが誇るべき財産だから、つくばから世界に向けてアピールしていきたいと、フェイト教授ばりに宣言した。後で、参加者から感激したとの声をいただいた。うーん、このレ一スは、まだまだ続きそうだ。サイコドン ハ トコヤン サノセ。(脚本家)

洞峰公園問題で市民アンケート開始 賛否に主眼置かず つくば市

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洞峰公園の新都市記念館

34億円超の補修・更新費認めないまま

つくば市が県から無償譲渡を受ける方針を示している洞峰公園(つくば市二の宮、約20ヘクタール)について、市によるインターネットでの市民アンケート調査が10日から、紙でのアンケートが15日から始まった。設問は11問あり、10番目に無償譲渡の是非について尋ねているが、賛否の数の多寡に主眼を置かないとし、広くさまざまな角度から意見をもらって、無償譲渡を受けた後に市が設置する予定の協議会での協議の参考にするとしている。回答期限はいずれも今月30日。

アンケートは、公園の利用頻度や主な利用目的、筑波研究学園都市建設当時の公園緑地計画の基本方針の是非、洞峰公園に求めるものや将来について理由と共に尋ねている。ほかに維持管理費の削減策として利用料金の値上げの是非などについても尋ねている。氏名、住所は記入が必要。

アンケートの質問項目は2日開かれた市議会全員協議会で示され、議員から「新都市の公園緑地計画の基本方針(設問6)について尋ねているが、(新都市が)洞峰公園の基本方針か何かが分からない」「アンケートに答えるにあたって市民が費用負担について参照できるようにした方がよい」などの指摘があった。市は全協で、アンケートに分かりにくい点があることを認める一方、市ホームページにこれまでの資料を掲載するので、Q&A(「洞峰公園の無償譲渡に関してよくいただくご質問について」)などを確認してから、回答してほしいとしている。市公園・施設課によると設問にある「新都市の公園緑地計画の基本方針」は「つくばの自然誌-Ⅱ洞峰公園」(STEP発行)の中に記述がある二次資料から引用したもので、新都市は洞峰公園ではなく筑波研究学園都市を指す。

一方、洞峰公園内の体育館、新都市記念館など4施設だけで来年度以降、34億円以上の補修・更新費がかかると県が試算していた問題については、市は市ホームページのQ&Aで「施設修繕費の年額としては3500万円程度を想定」しているとの主張を続けている。

年3500万円という市の想定額に対してはNEWSつくばが、市は、県の2016年の健全度調査資料をもとに、県が計算した補修費だけを抜き取って算定し、施設の更新費を計算に加えておらず問題だと指摘している(9月23日付)。県は、9月25日に開かれた県議会調査特別委員会で、長寿命化対策を実施した場合、2016年度の健全度調査で4施設だけでなく公園全体で40億円ほどかかると算定していたと答弁している(9月25日付)。市議の要望で開かれた11月2日の市議会全員協議会では、市議らが、自ら調査した県の証拠資料を議会に開示し、市に対し、きちんと算定して市民に示すよう求めている(11月2日付)。全協では他の市議からも「いくらかかるか分からないまま(市民は)アンケートに答えるのか」などの疑問が出ていた。(鈴木宏子)

◆洞峰公園の市民アンケートに関する市ホームページはこちら。アンケートはこちら。市によるQ&Aはこちら。紙によるアンケートは、市内の各公園管理事務所と各交流センターでアンケート用紙を配布し、同所に回収箱を設置する。

つくば松代公園の紅葉《ご近所スケッチ》7

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イラストは筆者

【コラム・川浪せつ子】四季折々の日本。同じ場所でも、季節によってガラリと趣が変わります。今回は、1月11日に掲載した雪景色と同じ、松代公園(つくば市松代3丁目)の秋景色です。季節を巡り、雪のホワイトがグリーン→イエロー→レッドに変化。グリーンの前に、桜の花が咲いたらピンクも加わりますね。

どの季節が一番好きかと問われても、コレというのはなかなか難しいです。それぞれステキなので。また樹木の色だけではなく、季節によって、集まってくる鳥なども違います。風景を描いていると、人々の生活、そして洋服の違いに、なんだか楽しくなります。

この公園には、夏は小さな水場があり、我が家の子供たちも、そこで楽しい時間を過ごしました。先日スケッチしていますと、平日にもかかわらず、先生風の男性が、年齢の異なる数人の子供たちと、池の周囲をジョギング。

個人的な見解ですが、「フリースクール」ぽかったです。時代を反映しているような。

たった一つの公園であっても、四季折々の自然を映しているだけではなく、時代の流れまでも包んで、色々な人々を癒してくれているのだと感じたひと時でした。(イラストレーター)

老人福祉センターでレジオネラ菌検出 つくばの60代男性入院

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つくば市役所

つくば市は14日、同市台町、市谷田部老人福祉センターの浴室から、基準値を上回るレジオネラ菌が検出されたと発表した。同浴室を頻繁に利用している市内に住む60代男性が7日から医療機関に入院しており、レジオネラ菌が検出されているという。

男性の症状は不明。同浴室は8日から利用を停止している。他の利用者から健康被害などの報告はないという。

市高齢福祉課によると、7日午後6時、つくば保健所から、同浴室を利用し入院した男性からレジオネラ菌が検出されたと市に連絡が入った。市は翌8日、浴室の利用を停止、つくば保健所が同日、浴室の立ち入り検査を実施した。

一方、同センターが年3回行っている浴室の定期水質検査が1日に実施され、14日、検査結果が判明。基準値(100ミリリットル当たり10CFU=コロニー形成単位=未満)を少し上回る10CFUのレジオネラ菌が検出されたことが分かった。なぜ検出されたかなど経路は現時点で不明。市はさらにレジオネラ菌の遺伝子解析を実施している。

同センターの浴室は、ろ過装置を付けてお湯を循環し、週に3回、新しいお湯に入れ替えている。ジェット噴射装置などもある。60歳以上の市民は無料で利用でき、毎日140人から180人が利用しているという。

同課は、検査結果と保健所の立ち入り検査結果を踏まえ、保健所の指導を仰ぎながら対応していくとしている。浴室の再開時期は現時点で未定。

老ザル2匹、土浦 亀城公園から引っ越し 人気者になることなく

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23年住み慣れた園舎で最後の朝を迎えたスミレ(左)とリョウタ=土浦市中央、亀城公園

リョウタとスミレ、終の棲家へ

土浦市中央の亀城公園で飼われていた2匹のニホンザルが14日、石岡市吉生の動物園「東筑波ユートピア」に引き取られた。23年を過ごした公園園舎からの引っ越し、世話をしてきた市シルバー人材センターのスタッフらは「寂しくなる」と見送った。

2匹はオスのリョウタとメスのスミレ、ともに生年は不明、公園での飼育は2001年にスタートしている。ニホンザルの寿命はほぼ25年とされるから、23歳を超えては相当な高齢。健康管理ができる環境が望ましいと判断した市は県動物指導センター(笠間市)と相談し、東筑波ユートピアに引き取ってもらうことにした。

同ユートピア事業は2019年、神奈川県川崎市に本社を置く猿まわしの会社、戦豆(せんず)へ譲渡されており、現在12匹のサルが飼われている。さらに旧小田原動物園(神奈川県)のサル7匹も受け入れることになっている。

2匹のうちリョウタはもともと東筑波ユートピア生まれで、群れから排除されたはぐれザルだった。かたや笠間市で農作物を荒らし回って捕獲されたのがスミレ。ニホンザルの習性から元の群れに戻すのは難しく殺処分もできないため、同指導センターの仲介で土浦市が引き取った。亀城公園では昭和30年代にミニ動物園を設置、サルやタヌキ、クジャクなどの鳥類を飼っていた施設があったためだ。

以来23年、2匹は公園の人気者となることはなかった。気性が荒く、人間ばかりか互いに敵意をむき出しにし、毛をむしり合って争うなど、つがいとは言い難い奇妙な同居生活を送ってきた。

公園を訪れる市民から「虐待ではないか」との通報もあったが、管理者の同市は園舎のサイズなど飼養状況は獣医師ら専門家から適正と診断されたとしてきた。

日常的な世話に当たってきたのが同市シルバー人材センターのスタッフで、計6人が当番制で毎日園舎を清掃し、1日1回のエサやりも行ってきた。

その担当スタッフが見守る中、引っ越しは14日午前から始まった。動物園の担当者がサルをなだめすかし、移送用のオリに追い込む作業が行われた。担当者の誘導に特にリョウタは終始抵抗し、約1時間かかる作業になった。

移送用のオリに追い込まれ、ほえるリョウタ

スタッフの1人、山崎さんは「面倒をみて3年、スミレはようやく慣れてきて、好物のサツマイモを持って園舎に入ると後からついてくるようになった。引っ越しは突然のことで驚いている。寂しくなる」と話す。

同社では「2匹は別個に飼う形になるだろう。他のサルと同じ猿舎で飼うことはない」とする。余生を過ごす終の棲家(ついのすみか)が用意されそうだ。山崎さんは「必ず様子を見に行くからね、サツマイモを持ってくね」と見送った。

同市公園施設管理課によれば、亀城公園の園舎は「特定動物」飼育の許可を28年まで取っていたが、新たな動物を飼育する計画はなく、このまま廃止される見込みという。(相澤冬樹)

➡亀城公園のサルの過去記事は2019年1月11日付同12月22日付

【15日午後1時5分】3段落目、戦豆の社長名に誤りがあり削除しました。

クリスマス間近 金管ハーモニーを 筑波大生らが企画・運営

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2019年につくばカピオホールで開催されたつくばリサイタルシリーズ第7回「読響ブラスーいま、一番聴きたい金管五重奏団」の演奏の様子(つくばリサイタルシリーズ提供)

筑波大学の学生を中心に企画・運営されているクラシックコンサート「つくばリサイタルシリーズ」の第14回目となるコンサートが12月16日、つくば市竹園、つくばカピオ ホールで開催される。読売日本交響楽団(東京都千代田区神田錦町)の金管セクションが公演する。題名は「読響プラス―クリスマスに贈る金管のハーモニー」だ。

同楽団の金管セクションがつくばリサイタルシリーズに出演するのは、2019年1月14日に行われた第7回コンサートに引き続き二度目となる。出演者は、桒田晃(トロンボーン)、辻本憲一(トランペット)、次田心平(チューバ)、日橋辰朗(ホルン)、尹千浩(ユン・チョノ=トランペット)だ。

つくばリサイタルシリーズ実行委員の加藤千尋さん(同大障害科学類3年)は「金管五重奏のすばらしさがまずある。その上で、見ているお客様との距離の近さ、一緒に盛り上がる形のコンサートという点が特徴的だと思う。コロナ禍の制限が緩和している中で、演奏会ならではの魅力を感じられるコンサートになるはず」と話す。

新たに留学生や外国籍住民にも広報

2012年に始まったつくばリサイタルシリーズだが、10年以上が経ち、組織体制も充実してきている。筑波大学の学生を中心に運営がなされており、クラウドファンディングでの資金の調達や会場の運営なども学生によって行われている。現在、実行委員会のメンバーとして活動している人数はおよそ30人で、中心的に活動するメンバーも多くなってきているという。

今回、筑波大学に通う外国人留学生や外国籍の住民などに向けた広報を新たに始めた。「これまでも留学生などが来場することは多かった。しかし、日本語のみでの告知や案内だったので、そうした方にコンサートの情報が届きやすい環境はつくれていなかったと思う。委員会の体制が充実してきたこともあり、大学の留学生が多く住む宿舎などに英語のポスターを貼ったり英語での告知文を作成したりしている」と加藤さん。

つくばリサイタルシリーズの趣旨は、いままでクラシックになじみの薄かった人が気軽にクラシック音楽を楽しむ環境をつくることであり、そのための様々な工夫をこれからも行っていきたいと意気込む。

12月の開催となる第14回のテーマは「クリスマス」だ。「少し早いが、クリスマスのムードを楽しんでもらえたらうれしい」と加藤さんは語った。企画の創設者である同大の江藤光紀教授(比較文化学類)による新曲も披露される予定だ。(山口和紀)

◆第14回コンサートは12月16日(土)午後1時30分開場、午後2時開演。チケットは一般1500円(税込み)、大学生無料。事前申込必要。つくばリサイタルシリーズの情報は公式ブログで発信されている。現在、開催に向けたクラウドファンディングも実施中だ。

神社仏閣の逆襲「ゲニウスロキ」《看取り医者は見た!》7

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写真は筆者

【コラム・平野国美】今日のタイトルは「神社仏閣の逆襲」ですが、中身はこの表現ほど過激なことはありません。神主さんも僧侶さんも、今後の神社仏閣の存在について多少不安を感じています。人口減少、少子高齢化、シャッター商店街化が、檀家や参拝客の減少につながるのではないかと。

いくつかの神社とその商店街の成り立ちを調べると、戦後、引揚者に境内を開放して住まわせ、そこに闇市が立ち上がり、飲み屋街や商店街として発展した歴史が見られます。そのため、敷地や建物が避難所の役目を果たし、その一角に怪しい場所が存在したこともありました。それゆえ、本体の寺社仏閣が枯れてゆくと、商店街も同じ道筋をたどる運命共同体なのです。

私は、こういった場所を、いつからか探して歩くようになりました。今は寂しげなのですが、全盛期のざわめきや勢いを感じるのです。郊外の大型ショッピングセンターでは味わえない雰囲気があります。佐賀神社にあったアーケードの商店街に唯一残った店、八女市の神社と同居してシャッター街化した所などです。大家が先か?店子が先か? いずれにしろ、運命共同体だったのです。

神田明神のIT系お守り

茨城南部では最近、寺社仏閣で新たな動きが始まっています。私たちが学生だったころ、学校の古典や漢文の先生には、神主や僧侶と併任の方がおりました。この20年間、私が仕事で回っている間に、寺社仏閣の世代交代が始まりました。

新しい後継者は古文や漢文の先生でなく、IT系の方もおります。神社仏閣のホームページをしっかりと作られ、SNSも利用し情報を発信しています。おそらく、御守りや御札に関しても伝統と斬新さを混ぜて来るでしょう。

数年前、神田明神では、システムエンジニアの皆さんに対し、IT系の御守りが用意されていましたし、将門神社にはキューピーちゃんの将門バージョンが置かれていました。石岡の歴史ある神社の神職は、有名な雑誌の編集者でした。その仕事で得た人脈を利用して、ファッションショーも開催しています。

お祭りでは御神輿(おみこし)の担ぎ手が街から消えたように見えましたが、TXの開通もあって新住民が住むようになり、担ぎ手が抽選になる地域もあるようです。

時代が変わり、担い手も変わっていく姿に期待してしまいます。今、神社仏閣の存在の仕方は大きく変わりつつあると思います。地霊そのものである神社仏閣の逆襲が始まりそうです。(訪問診療医師)

<参考>

「ゲニウスロキ」シリーズ、前回「地域の神社仏閣」はこちら、前々回「土地の守護精霊」はこちら

40年振り返るミニ企画展開催 筑波実験植物園

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来園を呼び掛ける筑波実験植物園の細矢剛園長

開園40周年を迎えた国立科学博物館 筑波実験植物園(つくば市天久保)教育棟で14日から、同園の40年の歩みを振り返るミニ企画展「開園40周年記念・筑波実験植物園の過去・現在・未来」が始まる。会場の大型モニターでは、アカマツ林を切り開いた造成時の風景から現在に至るまでの同園の変遷を、スライドでめぐる映像が上映される。

開園当時の筑波実験植物園プロムナード(筑波実験植物園提供)

同様の企画展は、25周年を記念したものに続く2回目の開催となる。会期は来年1月21日まで。

植物園が開園した当時は、現在の筑波研究学園都市一帯が、建築物がまばらな開発途上期にあった。モニターに映し出される開園直後の植物園では、現在は木々が生い茂る場所もまだ新しく植えられたばかり。スライドでは、敷地から、広い空と筑波山を見渡すことができた当時の様子がうかがえる。そんな開発初期のつくばの風景を含め、緑豊かな現在に至るまでの40年間の変遷を、約6分間で振り返る。

40年後の現在のプロムナード(同)

その他、培養室での希少種の無菌培養などの活動紹介や、ランやシダ、琉球の植物など希少種についての解説、過去の園内パンフレットなどが展示され、同園が経てきた40年の歩みを一覧できる。

同園は、1983年10月2日に開園して以来、生きた多様な植物を収集・保全し、絶滅危惧種を中心とした植物多様性保全研究を推進している。42ヘクタールの敷地では、常緑広葉樹林、温帯性針葉樹林、砂礫地植物、山地草原、岩礫地植物、水生植物など世界の生態区を再現することで、環境省が指定する絶滅危惧種の約20%、日本の固有種の約24%を含む、約7000種の植物を保有している。現在は、8人の研究員を含む、約30人のスタッフが勤務する。

広報の中山瑠衣さんは「研究者やボランティアが行う園案内に昨年は約5000人が参加した。全国から修学旅行の学生が来るなど、コロナが明けて来園希望が増えている」とし、「年間来場者も初めて10万人に届きそうなところへと伸びている」と明るい現状を語ると、「今回の展示では、40年前にお子さんだった方が当時を振り返ることができると思う。多くの方に来ていただきたい」と、来園を呼び掛ける。

日本初の結実

熱帯雨林温室でショクダイオオコンニャクの結実がみられる

また現在、温室では、日本初となる、高さ130センチ余りのショクダイオオコンニャクの結実を見ることができる。「世界最大の花」と呼ばれるショクダイオオコンニャクの花が、今年5月に開花し、現在は真っ赤な果実をびっしり実らせている。世界でも開花はまれ。同園の細矢剛園長は「スタッフの努力の賜物。展示と合わせてぜひ足を運んで欲しい」と話す。(柴田大輔)

◆ミニ企画展「開園40周年記念・筑波実験植物園の過去・現在・未来」は、14日(火)から来年1月21日(日)まで。入園料は一般320円(税込み)、高校生以下と65歳以上は無料。期間中休園日等の詳細は筑波実験植物園内のイベントホームページへ。

マンホール蓋に残る旧県章 筑波研究学園都市に多数現存

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つくばエキスポセンター裏手の歩道に敷設された旧県章のマンホール蓋=つくば市吾妻

1966年に制定された茨城県の旧県章デザインを刻んだマンホール蓋(ふた)を、意外にもつくば市で多く見掛ける。筑波研究学園都市の造成時に敷設された下水道は、合併前の当時の旧町村ではなく、茨城県と日本下水道事業団によって整備されたためだ。学園都市の黎明期に整備された旧国家公務員宿舎の車道や市中心地区の歩道などで見ることができるが、順次、現在の県章デザインや市のシンボルデザインの蓋に置き換えられ、姿を消している。

ご当地の観光資源やアニメのキャラクターなどデザインマンホール蓋が増える中、茨城県の歴史文化を伝える旧県章のマンホール蓋は、今となっては貴重な県政資料の一つ。

雨水幹線に刻まれた旧県章の「いばら」のマーク

旧県章のデザインは、1911(明治44)年に公募により旧制中学の学生が提案したものが採用され、使用されるようになった。1966年にデザイン補正され、県章や県旗となった。「いばら」のイメージを模した図版内に、「イ・ハ・ラ・キ」の旧仮名遣いカタカナ文字が隠されており、難解なパズルにも見える。

旧県章は1991年まで主に県旗として県内各地の公共施設などで使われてきたが、同年11月13日の茨城県民の日を契機に現デザインへと変更された。今では「いばら」のマークは使われていない。

現在の県章(上)と1991年まで使用されていた旧県章

土浦市湖北にある県流域下水道事務所は、県内5流域の公共下水道を管理しており、その一環として雨水幹線、汚水幹線などの老朽化したマンホール蓋を更新している。

どれほどの数の旧県章マンホール蓋が残っているのかを同事務所に尋ねたが、概数は不明との答えが返ってきた。

「マンホールの更新事業は流域ごとに進めています。更新の判断基準は耐用年数として車道部の蓋は敷設から15年、それ以外は30年を越えているものとし、その中でも腐食や劣化の激しいものから交換することになっています。蓋の摩耗によるスリップ事故、蓋のがたつきや離脱による車両物損事故、騒音・振動や通行障害等の発生を防ぐためです」と同事務所。

同事務所が管理する下水道のうち、県南地域の流域下水道は、霞ケ浦湖北流域下水道(土浦、かすみがうら、石岡市、阿見町など)と霞ケ浦常南下水道(つくば、牛久、龍ケ崎、稲敷市など)に分かれている。湖北流域だけでも1900カ所ものマンホール蓋があるという。

土浦市内では相当数の蓋が土浦市市章やその他のデザインに交換された。流域下水道事務所では「土浦市内にもまだ旧デザインの蓋があるが、2023年度の更新事業対象なのでもうすぐ無くなる予定」と解説してくれた。

その敷設地点にあたる大岩田地区を訪ねてみたが、道路上のものは既に土浦市のマークに交換されていた。歩道上には「いばら」マークではなく「茨城県」と刻印された蓋があったが、これは上水道の制水弁と空気弁であった。

一方、県下では新しい街に属するつくば市内で多く見られるのは、まだ耐用年数内のものがたくさんあるということだ。それでもつくば市内の蓋の数々もやがて耐用年数を迎える。

県霞ケ浦浄化センターに展示されている新旧県章のマンホール蓋

「未使用品と劣化により取り外された蓋の違いは、デザインの新旧も含めて、当事務所のエントランスホールに展示してありますので、ご来場ください。平日の業務時間内であれば、安全に、いつでも見学することができます」(流域下水道事務所)

マンホールの大半は車道上に存在するため、事故やトラブルの懸念としてそれらを見物するのは控えてほしいという。つくば市内を歩いてみると、つくばエキスポセンター裏手の歩道上に2カ所、旧県章の汚水幹線マンホール蓋が現存しているので、これらは安全に見ることが可能だ。

きょう11月13日は県民の日。足下に残る茨城県の歴史を考えた。(鴨志田隆之)

農協がなくなってしまった!《邑から日本を見る》147

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「常陸農協ふれあいプラザ瓜連」と移動金融店舗「だいすき号」

【コラム・先﨑千尋】先月26日、私が住んでいる常陸農協瓜連支店が店を閉じ、今月6日に「ふれあいプラザ瓜連」に替わった。私はこれで、この地区(旧瓜連町)から農協がなくなってしまった、と思った。ATMはそのままで、購買品は取り扱うというものの、農協としての機能は隣接の那珂支店に移行された。同農協管内では、同日に山方支店、水府支店もなくなった。

今回の店舗再編計画は、茨城県内農協の本支店体制整備方針(2014年策定)により、貯金や共済で一定の事業量がない支店を統合するというもの。県全体では192店舗を105店舗にほぼ半分に減らし、常陸農協でも10店舗が消える。農協も経営環境が厳しくなり、赤字店舗を減らすということだ。

旧瓜連町管内ではすでに常陽銀行が撤退し、金融機関として残っているのは郵便局だけだ。ATMやコンビニがあり、キャッシュレスの時代だから、1日に10数人程度の来客しかいない店は残さないという方針は、経済原則では当たり前のことかもしれない。だが、私には寂しさが残る。

農協という組織の前身は産業組合で、産業組合法は1900年に成立している。資本主義経済の中で、農民は経済的に弱い立場にあった。弱い者でも集まれば強くなると先人たちは考え、信用、購買、販売の組合をつくった。共済事業は戦後始まった。

農協に行けば用が足りた

瓜連町地域では、1933年に保証責任静村信用販売購買利用組合(静村産業組合)が誕生し、水郡線静駅前に事務所、倉庫を建てた。その時、敷地内に、協同組合の元祖である二宮尊徳(金次郎)を祀(まつ)った報徳神社も建立している。同組合は、戦時統制経済のもとで「農業会」と看板を塗り替え、戦後の1948年に「農業協同組合」となった。

静村は無医村地域だった。そこで産業組合の先人たちは、組合主導で国民健康保険組合を設立し、診療所を開設、無料診療を実施した。戦後は農協が引き継ぎ、茨城県協同病院静村分院となり、医師と看護師が常駐し、往診まで行った。県内で診療所を持つ農協はここだけだった。

静村農協はそれだけでなく、理髪所を持ち、澱粉(でんぷん)工場、製粉製麺所を経営し、肥料・農薬などの農業資材だけでなく、酒や塩、切手も含めた日用品も販売していた。葬儀用の祭壇もいち早く備え、葬儀があれば貸与していた。とにかく、農家の暮らしに必要なものは農協に行けば用が足りた。私が子どもの頃、床屋は農協以外にはなかった。農協の総会のあとは演芸会があり、年寄り、子どもまでが芝居や漫才などを楽しんだ。

酒は四斗樽(たる)から量り売り。あとで聞いた話だが、宿直に当たった職員が寝しなに少し酒樽から失敬し、その分、水を入れてごまかした。それが続くと酒がだんだん薄くなり、売り物にならなくなってしまったとか。

頭で分かっていても寂しい

同村農協は、このように県内でも最先端を行く活動を展開していた。1953年には「茨城農政研究会」が結成され、「茨城農民自由大学」を開いた。この活動にも農協青年部の活動家が積極的に関わり、近藤康男、山川菊栄、住井すゑ氏らを講師に招き、多くの聴衆を集めた。

このような先駆的な活動を行ってきた農協が消えてしまう。農業が衰退し、今や農協に頼らなくとも生きていける。必要でないものはこの世から消え去る運命なのだと頭で分かっていても、やはり寂しい。(元瓜連町長)

次期県立高校プランにつくばの人口増反映を 市民団体がフォーラム

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つくば市役所内の会議室で12日開かれた「つくばに県立高校を求める教育フォーラム」

人口増が続くつくば市に県立高校が少ない問題で、現在、県が策定を進めている2024年度からの県立高校改革プラン実施プランⅡ期(26年度までの3年間)に、児童・生徒数の増加が続くつくば市などの状況を反映させ入学枠の改善などを改めて要望しようと、市民団体「つくば市の小中学生の高校進学を考える会」(片岡英明代表)が12日、同市役所内で「つくばに県立高校を求める」と題した教育フォーラムを開いた。

小中学生の子供をもつ父母らのほか、市議、県議、国会議員など計約70人が参加した。考える会は、この日のフォーラムで出た報告や意見などをまとめ、近く県に要望書を提出する予定だ。

同改革プランは、県立高校の適正規模・適正配置や学校・学科の在り方などについて方向性を示すもので、県は同実施プランⅠ期(20-23年度)に基づき、つくば工科高校を改編しつくばサイエンス高校を新設などした。つくばエクスプレス(TX)沿線では、改革プラン策定時の2018年時推計を上回って、児童・生徒数が増加している。

基調報告する片岡英明代表

基調報告した片岡代表は「改革プランでは県内を12のエリアに分け『エリア区分ごとに募集学級数を調整する』という方針を出しているにも関わらず、県議会などの答弁で県は、周辺エリアを加えエリアを拡大させた答弁をしており、おかしい」などと指摘。つくば市などつくばエリアの全日制県立高校の募集数は2023年度で中学卒業数の50.1%にとどまっていることから「実施プランⅡ期ではエリア区分ごとに募集学級数を調整し、県平均水準(68.4%)までつくばエリアの募集枠を増やしてほしい」などと話した。

フォーラムでは、国光あやの衆院議員や、海外出張中のためビデオメッセージを寄せた五十嵐立青市長から、県が現在、竹園高校の定員増を調査していることなど、新たな動きについて報告があった。

一方、市内に住む小学5年と2年の子供をもつ母親は「5年前につくばに転居し、高校に困ることになることは想像してなかった」と述べ「(つくばは)小学校3年、4年から塾に通っている子がほとんど。学費をねん出するため親はほぼ共働き。子供は夜遅い時間に自転車で塾などから帰宅する。親も子もほぼ家にいない。高校生になると通学に月3万円かかると聞く。通学に時間がかかると子供の時間が失われるのがもったいない。(牛久栄進高校の1学級増など)コトが動いていることも感じるが、(片岡代表が指摘する)ファクトに基づくデータをもっと見える化したい」と話すなど、参加した父母からは切実な声が相次いだ。(鈴木宏子)

軽トラデート《続・平熱日記》145

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絵は筆者

【コラム・斉藤裕之】弟の次女は誰に似たのかとても勉強が好きで、大学で英語を学んだ後にちゃんとした会社に就職した。その後大学の同級生と結婚して、そのだんなさんもお堅い仕事に就いているのでとりあえず弟夫婦も安心という、なんとも親孝行な娘だ。

余談だが、見た目が幼く見えるせいで、私の長女の結婚式では未成年が飲酒していると勘違いされたり(お酒はかなり強い)、また仕事で海外に出張するというのだが、外国の人から見ると余計に幼く見えて、子供がやって来たと思われはしないかと心配している。

そんな姪(めい)夫妻が茨城に遊びに来たいという。山口の山の中で育ったせいか、東京での都会暮らしに物足りなさを感じるらしく、通勤圏内のちょっと郊外、つまり茨城に住んでみたいらしい。

いつだったか、この姪夫婦がこの前うちに来た時に近くをドライブしたいというから、あいにく軽トラしか空いてないけどいいかと聞くと、むしろ軽トラがいいという。天気も良かったので筑波山方面を勧めておいた。軽トラには似つかわしくないいでたちの若いカップルは、うれしそうに出かけて行った。

軽トラには乗用車にはない特別感があるのかもしれない。座席は狭いし地面の振動がダイレクトに伝わってくるので、妙な一体感がある。地元民のような、労働中のような、気取りがないのもいい。どこを回ったのか詳しくは忘れてしまったが、夕方帰ってきた2人は茨城にも軽トラにも満足していた様子だった。

乗り心地は軽トラより軽乗用車

そんなことがあって(というか前回の軽トラデートも茨城移住の布石だったとも考えられもするが)、今回の軽トラデートの目的地は守谷らしい。守谷は都心へのアクセスも良く、今や人気の住宅地だ。車があれば海にも山にも行ける。都心から同じ距離・時間離れた神奈川や埼玉では、家賃も高いし車を持つのは容易ではない。

ただ2人にはその先の計画もあって、将来外国で暮らすという夢があるそうな。もしも私が親なら、せっかく安定した仕事に就いているのに…と思うだろう。ところが、弟夫妻は「自分たちの生きたいように」と言うばかりか、移住先に遊びに行きたいとまで言っている。

まあ、私も弟もまたその長女も海を渡って暮らした経験があることを考えると、「とりあえず日本脱出」という遺伝子が斉藤家には受け継がれているのかもしれない。

ところで、今回は軽トラではなく軽乗用車を貸した。守谷偵察?を終えて帰って来た2人は「やっぱり乗り心地は軽トラよりいいですね」と素直に答えた。

コロナ禍で結婚式はしていない姪夫妻。随分と長い間娘のために母親が編んだレースのドレスを着て、今年の5月、生まれ育った家の庭でやっと記念の写真を撮ることができた。あいにくの空模様だったそうだが、撮影をする間だけ雨雲が協力してくれたそうだ。

帰り際の姪に、むかごご飯を炊いて持たせた。しばらくして「むかごご飯おいしー!」とメールが来た。ふたりだったらなんとかなるさ。まずは茨城にいらっしゃい。軽トラ、いつでも空いてるよ。(画家)

小美玉市の古刹・鳳林院《日本一の湖のほとりにある街の話》17

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イラストは筆者

【コラム・若田部哲】小美玉市の鳳林院( ほうりんいん)は、14世紀の室町時代は応永年間に開山されたとされる、市内有数の古刹(こさつ)です。初心者歓迎の坐禅体験会を定期的に開催していることで有名な同寺にて、物思いにふけりがちな秋、煩悩多きこの身を清めるべく坐禅体験をしてきました。

そもそも坐禅は、インドの菩提達磨(ぼだいだるま)を開祖とする禅宗の修行の一つ。日本では禅宗の代表的な宗派に曹洞宗と臨済宗があり、それぞれ内容が異なりますが、曹洞宗である鳳林院では、一般的な坐禅のイメージに近い、ただただ無心に黙って坐る「只管打坐(しかんたざ)」という行を体験できます。

この月に一度の坐禅会は50年以上前から行っているとのことで、老若男女問わず、県内外から20人ほどの参加者があるそうです。

まずはご住職に坐禅の流れをご説明いただき、早速体験に移ります。「結跏趺坐(けっかふざ)」という独特の足の組み方で坐り、両手を「法界定印(ほっかいじょういん)」という、半円を組む形で組みます。目は薄く開け、1メートルほど先の畳の上に落とし、天井から頭がつられているイメージで、いざ坐禅開始!

「煩悩の一つや二つ減らせるかな…」。いきなり煩悩が浮かびます。これはイカン。すると、「考えちゃだめだ、心を無に…」と思ってしまい、次いで「『考える』とはどういうことか?」と、意識の別のところから突っ込みが入ります。ううむ、心を無にすることのなんと難しいことか。

普通のしがらみを捨てるのが坐禅

しばらく、そんな感じに脳内で悪戦苦闘していると、ふと鳥のさえずり、さわやかな秋風の音がただ聞こえ、周囲と一体となった感覚が!…と感じるや、「あ、今無心になっていた!」と、湧き上がる雑念。トホホ、ふり出しに逆戻りです。

ほぼほぼ煩悩、合間にほんの少しの無心の境地?を体感し、十数分ほどで体験を終わりました。

「無心の境地を少しは得られるのではと思いましたが、難しいですね…」。苦笑すると、ご住職は穏やかにお答えくださいました。「初めて体験する多くの方が『何か得られるのでは』と期待されています。ですが、『ただただ坐り、一生懸命何もしない』ことで、普段のしがらみを『捨てる』のが坐禅なのです」

つまり、最初に「得る」のではなく、まずは余計なものを「置いていく」ことで、その結果として心身がリセットされ、新しい自分が得られるということなのだそう。

情報化の急速な進展により、私たちは常に膨大な情報の処理を強いられています。そのことに疲れてしまったとき、いったん心身をリセットする坐禅は、現代社会に生きる私たちにとって、とても心休まるリフレッシュの時間となるでしょう。ぜひ一度、日常の喧騒(けんそう)から離れたひと時をご体験ください。(土浦市職員)

<注> 本コラムは「周長」日本一の湖、霞ケ浦と筑波山周辺の様々な魅力を伝えるものです。

➡これまで紹介した場所はこちら

貸出金残高初の2兆円台 筑波銀行が中間決算

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中間決算を発表する筑波銀行の生田雅彦頭取

筑波銀行(本店土浦市、生田雅彦頭取)は10日、2024年3月期第2四半期(23年4月から9月まで半年間)の決算を発表した。財政状況は、貸出金残高が前年度末比531億円増の2兆43億円となり、2010年の同行設立以来初の2兆円台となった。

エネルギー価格など物価高騰の影響を受けた地元中小企業の資金繰り支援や本業支援に積極的に取り組んだ結果、中小企業の貸し出しが増えたことに加え、TX沿線の宅地開発やマンション需要の増加に伴う住宅ローンなど個人向け貸し出しや、地方公共団体向け貸し出しが増加したことが要因。貸出金残高のほか、預金残高(2兆5844億円)、預り資産残高(3124億円)も第2四半期としていずれも過去最高となった。

生田頭取は「貸出金が初めて2兆円の大台に乗った。3行(関東銀行、つくば銀行、茨城銀行の)が合併した時の貸出金は1兆円だった。合併して13年、ワンチームとして皆で積み上げてきた結果」だとし、「2兆円をクリアし、一つの節目を通過した」と強調した。

増収減益に

連結の中間決算は、売り上げに当たる経常収益が前年同期比11%増の206億2300万円と増収となる一方、国債など債券の売却損の計上や外貨調達コストの増加に伴う経常利益の減少などにより、中間純利益は同比14.5%減の19億3000万円となり、増収減益となった。

経常収益は、銀行本来の利息や手数料で稼ぐ本業はほぼ順調に推移した一方、国債など債券の売却損の増加を、株式などの売却益で相殺した形という。

要管理債権が増加

一方、不良債権の状況は、正常債権から要注意の要管理債権にランクダウンした債権が前年度末の80億円から41億円増えて121億円となった。

生田頭取は「新型コロナの影響や、その後の原材料高、エネルギー高、人件費などから、企業が収益を出しずらく、キャッシュフロー不足になる先があった」とし「(新型コロナ対策として国が実施した無利子・無担保の)ゼロゼロ融資の返済も重なって要管理債権が増えた。これをどう支援していくかが当行の役目。膝詰めで(企業の)経営計画をつくって、どうすれば価格転嫁を図れるかや、販路拡大などの支援を一緒にやっていきたい」とした。

不登校とは何なのか 経験者5人が赤裸々に語り合う

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座談会に登壇した5人。相手の言葉に耳を傾け、時にうなずき合いながら自分自身の経験を語っていた。右端は司会者=つくば市の桜総合体育館

きっかけは?後悔してない?

不登校を体験した大人たちが、当時を振り返って語り合う座談会が先月21日、つくば市の桜総合体育館で開かれた。親や学校との摩擦、友人関係、死を意識した心境…つらい経験を時にユーモアを交え、聴衆からの質問にも答えつつ、語りかけた。不登校になった子に、大人はどう接するべきなのか。切実な語りに耳を傾けると、ヒントが見えてきた。

フリースクールや、行政の教育相談機関など不登校を支援する関係者が集うイベント「不登校・多様な学び つながる”縁”日」の一環。保護者やフリースクール運営スタッフのほか、不登校支援に関心を持つ市議も出席していた。主催団体の「不登校・多様な学びネットワーク茨城」は今月12日にも筑西市の県西生涯学習センターで同じタイトルのイベントを開催。フリースクールのブースを設け、悩み相談会も開く。

登壇したのはざっきー(20代男性、NPO支援組織職員)、しーちゃん(30代女性、シンガーソングライター)、にっちー(20代男性、大学生でフリースクール職員)、まこちゃん(30代女性、精神保健福祉士)、まりりん(30代女性、フリースクール運営)の5人(いずれも仮名)。内容の一部を紹介する。

―いつから不登校に?当時の心境は?

ざっきー 中2まではまじめでいい子。生徒会役員もやっていました。中3の始業式の日、熱が出て2週間体が動かなくなってしまった。「学校がイヤだから行きたくない」ってわけじゃない。今も学校に対してそんなに悪い印象はない。

にっちー 中3の時。はっきり覚えていないんだけど、人に会うのが怖くなった。頑張って学校に行ったときはしょうゆを携行して飲んでいた。体調不良を理由に早退できると思っていたので。ネットで知り合った不登校の友人と、学校に通う「リア充」とみなして敵意をツイッターでつぶやき合っていました。

しーちゃん 「リア充」への違和感、分かります。みんなが盛り上がっている話題だと、大して面白くないけど空気を読んで笑う。なかなか本当の自分が出せず、小6で一時不登校に。学校は戦いに行く場所でした。

まりりん 中1の冬から。家で寝て、テレビ見てゲームをして現実逃避していた。自分と関係ないところで時間が進んでいく感覚で、当時のことはあまり覚えていない。(学校には)スクールカーストがあった。明るく楽しくしていい人もいるけれど、私ははしゃいじゃいけない人、みたいな空気を感じて息苦しかった。

まこちゃん 小学2年生から。保育園や幼稚園に行っておらず、幼い頃は心の病気を患っていた母とずっと一緒に生活。就学前健診で初めて同年齢の子と出会った。女の子同士の遊びに入りたくても、遊び方がまるでわからない。周囲に合わせて「アルプス一万尺」を覚えたころには、もうポケモンがはやり出す。頑張ってもついていけない私はランクが下。上手に友だちづきあいできる同級生は手が届かない、「セレブ」のような遠い存在だった。

イベント会場の正面玄関では、カラフルな手書きのチラシが来場者の目を引いていた

―不登校の子と、そうでない子の違いは?

司会者 私は学校行っていたけど、人に合わせたり、つまらないと感じたりした時はあった。不登校の子との違いってなんでしょうか?

まりりん しんどいけど学校行ってた人は「いい子」。いい意味でも、悪い意味でも我慢することに慣れることができていたんだと思う。

しーちゃん 頑張りすぎて学校に行ってコップから水があふれたタイミングがたまたま小6だった。中学生や社会人になってそういう風になった可能性はあると思う。

ざっきー 同じですね。たまたまコップの水があふれた時期が学生のときだった。

にっちー 僕も同じ。いまだに、どうして不登校になったのかよくわからない。

まこちゃん 最初は頭痛から、そして全身に体調不良が広がっていった。それで親とも相談して病院にも行って「行かない」という選択をした。

不登校を経験した男性―学校に行かないで後悔したことは?

ざっきー 地元のつながりが消えてしまい、寂しい面もある。でも大学生の友達と昔話はするので、虚無感はない。

にっちー 文化祭に行きたくなくてトイレにこもっていた人なので、中学・高校の友達はほぼゼロ。でもゲームを通じて友達と交流できたし、大学で楽しいこともあった。人間関係が苦手になったという後遺症はあるけど、後悔はあまりない。

まこちゃん 小学生の学習支援をしていて、子どもたちに「二桁の割り算ができないの?」と驚かれた。小2から不登校で、小5でかけ算を覚え、その後で割り算に取り組んだ。先日、4歳の息子の保育園の運動会に行って、こんなに楽しいものなんだと気づいた。「学校に行っておけば良かった」と思う気持ちはゼロではない。子どもの時、学校に行かなくても、大人になって体験できることもある。でも、割り算は捨ててますけど(笑)。

まりりん 大学生のころ、同級生との会話で修学旅行の話題は避けていた時期があった。後悔していないが、親になってみると、自分のように家に引きこもるのはもったいないと思う。大学に入って最初は人と話せず、友人との距離感がなかなかつかめずに失敗を重ねた。そういう人間関係の失敗は早めにした方がいいと思っている。

しーちゃん 不登校の子の知り合いは多いが、「後悔している」という声はあまり聞かない。自分は臆病なので、片足突っ込んだぐらいで不登校の期間が終わった。今では、ちゃんと自分に向き合って不登校しておけば良かったと後悔している。

次ページに続く「親はどう受け止めればいいの?」

土浦一高の募集学級削減問題を考える《竹林亭日乗》10

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日没前の「紫峰」筑波山

【コラム・片岡英明】牛久栄進高の募集が来年から1学級増えるという、県教育庁のうれしい発表が7月にあった。一方、2020年まで8学級だった土浦一高の募集は、21年に7学級、22年、23年には6学級になり、来年は4学級に減らされることに心を痛めている。

教育庁は11月2日、土浦一高の来年の募集について、付属中からの進級2学級、高校4学級になると発表した。結局、私たちの高校学級削減停止の要望は届かず、土浦とつくばを中心とした県南の高校受験生は大きな苦労を抱えることになる。

そんな中、土浦一高の募集削減の影響を小さくとらえ、「付属中に入る生徒もいるので影響は少ないのではないか」といった疑問に聞くことがある。そこで今回は、高校受験を正確に論じるために、生徒の増減を、県立・私立の中高一貫や県立付属中の生徒を除いた、高校入試の当事者数で考えてみたい。いわば「真水」の分析だ。

中卒者が増えているのに募集削減

先の疑問に応えるため、つくば市の並木中等学校と茗渓学園中学校を除いた「市立中学卒業数」で、土浦一高の高校削減問題を考えてみたい。

23年入試では、つくば市立中学卒業者が入学した県立高校は、多い順に竹園高200人、牛久栄進高129人、土浦二高113人、土浦一高88人で、これらトップ4校の入学者数は530人。これは、つくば市立中学卒業数2183人の24.3%、茨城の県立高入学1265人の41.9%である。

トップ4校の募集学級数とつくば市立中学卒業数の推移を見ると、以下のようになる。

▽20年:4校とも8学級、つくば市立中卒業生1928人(32学級)

▽21年:土浦一高7学級、       同 1954人(31学級)

▽22年:土浦一高6学級、           同 2065人(30学級)

▽23年:土浦一高6学級、           同 2183人(30学級)

▽24年:牛久栄進9、土浦一高4学級     同  2175人(29学級)

20年入試は4校とも8学級で32学級だったが、県の「付属中を設置しても総学級数は増やさない」との方針で、土浦一高の募集枠は減っている。24年入試では20年と比べ卒業数は247人増えるが、受験者の多いトップ校の募集は3学級減となる。

付属中設置と並行して、つくば市の高校受験生が減少しているなら、土浦一高の募集削減の影響は小さいが、実態は逆で、生徒増の中での募集削減になる。

生徒増に対応する募集学級増を

県の高校改革プランでは生徒の3分の2を県立高が担うとしているので、つくば市の増加数247人の3分の2に当たる164人分、つまり県立高4学級増が必要となる。そのうちトップ4校が県立入学全体の41.9%を占めるから、生徒増に伴い、トップ4校にはその41.9%の69人、最低1学級増が必要となる。

これは、20年の土浦一高8学級時代の水準を回復するには、24年時点のトップ4校で4学級増が必要であることを意味する。

以上、土浦一高の4学級削減への対策を考えてきたが、つくばエリアの県立高校不足と生徒増の中で、土浦一高の一層の定員削減は受験生にとって「泣き面にハチ」である。入学者の多いトップ4校を中心に、緊急に募集学級増ができないものだろうか。

11月の土浦一高の定員削減発表で、9月のコラムで書いたトップ4校の10学級体制の必要性がさらに高まったと思う。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表)