木曜日, 5月 9, 2024
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公共交通を考える -検索結果

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電動自転車に補助金 免許返納後の「足」になるのか【公共交通を考える】5

つくば市は今年度、70才以上の市民を対象に、電動アシスト自転車購入費用の4分の3を補助する事業を行った。自家用車に代わる移動手段の確保と社会参加の促進、健康増進が目的で、高齢者500人の申し込みを見込んで3675万円の予算が割り当てられた。12月6日現在で補助金申請は約300人、概算で約1630万円分になった。 運転免許を返納した後の新たな交通手段として、電気がアシスト(手助け)してくれる電動自転車を購入する人がいる。こぐのに疲れると電動アシスト自転車を購入したり、「これは楽だよ」と勧められて乗り始める。だが自転車は体をガードしてくれるものはなく、高齢者が自転車事故に巻きこまれる心配もある。 交通安全講習受講が条件 補助を始めた市高齢福祉課によると、市が実施する交通安全講習を受講することを条件に、2輪車購入の場合、上限5万円、3輪車には上限12万円を補助している。2022~23年度に運転免許証を自主返納した人が2輪車を購入するとさらに1万5000円、3輪車購入の場合は3万円を上乗せする。加えて自転車用ヘルメットを同時に購入すると上限2000円が補助される。 市庁舎で行われた交通安全講習会は560人の参加を見込み、5月から11月までの14日間で合計28回(午前と午後の開講で1回20人まで)開催された。自転車メーカーによる座学と、市役所敷地内で電動アシスト自転車5台を使った試乗と実技講習が実施された。講習会を受講したのはこれまで計364人で平均年齢75.7歳、最高年齢は94歳の男性だった。 講習会を受けた364人中、実際に電動アシスト自転車を購入したのは今月6日現在、8割を超える約300人(2輪車250台、3輪車50台)。このうち約40人が運転免許証返納の補助申請を行った。ヘルメット購入の補助を併せて計約1630万円の支出になるという。 市防災交通安全課の非常勤職員で交通安全教育指導員3人が実技講習を担当した。指導員の廣瀬明子さんは「電動アシスト自転車は一般の自転車と比べて重く、バランスを崩すと車体を戻しにくい。両足がきちんと地面に着くのか試乗してもらったり、ペダルの踏み加減など安全な乗り方を体験してもらった。また、70歳以上の人が乗る自転車は歩道を走っても良いが、歩道は基本的に歩行者のもので自転車は車道寄りを走ること、道路の斜め横断は違反になること、交差点を右折する場合は原則、交差点をいったん直進して止まり右側に向きを変えて進む『2段階右折』とするなどの交通ルールを説明した」と話した。 市高齢福祉課によると、参加者からは「受講して自分に合う自転車のサイズが分かった」、「自転車の運転を見直す機会になった」とする高齢者がいた一方、「(身体が思うように動かず自転車の)運転は無理」と諦めた人もいたという。同課の日下永一課長は「試乗体験は大事で、安全を確認した上で申請してもらうために講習会を実施している」とした。購入費補助事業は来年度も実施する方針だ。 小さい乗り物にシフト 同市あしび野在住の稲川誠一さん(79)は、小学生の登校を見守る立哨(りっしょう)活動や自主防犯ボランティアとして活躍している。6月の講習会を受講した後に体調を崩して電動アシスト自転車の購入はかなわなかった。運転免許証は返納していない。 稲川さんは「交通安全教室が保育園や小学校などでしか開催されてない現状では、自転車が軽車両であり、道路交通法でルールが決められていることがあまり知られていない。それだけに講習会は有意義だと思う」とした上で「以前は、高齢者が乗る自転車はフラフラして危ないし、どんな動きをするか、最悪を考えて自家用車を運転していた。今は高齢になると行動範囲が狭くなって小さい乗り物にシフトしていくものだと分かった。自転車と自動車がお互いに譲り合うことが大切だと思う」と話した。 転倒の心配ない三輪自転車に補助 土浦市では高齢者に限らず、市民や子育て家庭の日常の移動手段を確保するため、転倒の心配が少ない三輪自転車と、幼児2人同乗用自転車購入費用の一部を補助している。いずれも自転車購入金額の半分を補助するもので、三輪自転車は2万5千円が上限。幼児2人同乗用自転車は3万円が上限だ。 三輪自転車の購入費補助は今年度から始まった。電動自転車だけではない三輪自転車も補助の対象となっている。土浦市都市計画課によると、今年度の予算額は25万円。11月末の時点で8人の申し込みがあり、今月12月の時点で残り約2台分の予算が残っている。募集開始直後は多くの問い合わせがあり、現在も数件の問い合わせを受けている。来年度の三輪自転車の補助は未定。安全走行のための講習会は実施していないが、購入前に必ず試乗することを呼び掛けている。(橋立多美、田中めぐみ) 終わり ➡「公共交通を考える」の過去記事はこちら

高齢者がスマホ予約に挑戦 AIで乗合タクシーを便利に【公共交通を考える】4

高齢化が進むつくば市茎崎地区を対象に12月1日から、同市が運行する乗合タクシー「つくタク」のスマホ予約実証実験が行われている。スマートフォンで専用アプリを開き、乗車時間と場所、目的地を入力して予約すると、AIが自動生成したルートで複数の客を乗せながら効率良く目的地まで運行するという実験で、AIオンデマンドシステムと呼ばれる。来年2月29日まで3カ月間実施される。 「分からない」手を挙げる人続出 実証実験に先立ち11月21日、茎崎交流センターで、自分のスマートフォンからネット予約するための説明会が開かれ、60代から80代の高齢者56人が市職員らのサボートを受けながらネット予約に挑戦した。 つくタク利用者の8割を高齢者が占める。アプリを用いた予約に慣れてない高齢者が説明会に集まった。説明会は、高齢者が自分のスマートフォンに、QRコードからアプリをダウンロードすることから始まった。会場から「分からない」と手を上げる人が続出し、サボートにあたった市職員ら8人が1人ひとりに向き合って操作を支援した。 参加した同市自由ケ丘の民生委員で70代の男性は「みんなに教えないといけないから」と、前かがみになりながらスマートフォンの画面に目を凝らした。森の里の谷中絹代さん(80)は「外出にはつくタクを利用している。予約は当日利用が朝8時半から、当日以外は正午からと決められていて時計を見ながら予約している。操作ができると予約が便利になると聞いて来たが、インストールとかタップとか用語が分からないし難しい」と話した。 実証実験を推進する市科学技術戦略課は来年1月10日まで、同センターのほか茎崎地区の各所でスマホ相談会を開いて普及に努めている。森の里の自治会長、倉本茂樹さん(81)は「つくタクを利用するのは75歳以上の後期高齢者が多くを占めると思う。スマホ操作に不慣れな状況を踏まえて、高齢者でも使いやすいシステムにしてほしい」と、操作に不安な高齢者をおもんばかった。 25年度にネット予約導入へ 国交省の「スマートシティモデル事業」に選定された同市は、筑波大学、KDDIをはじめとする47機関で構成する「つくばスマートシティ協議会」(会長・大井川和彦知事、五十嵐立青市長)を設立。先端技術を取り入れて都市が抱える問題を解決する事業に取り組んでいる。つくタクの実証実験は、市と同協議会、AIを活用した効率的な配車システムのノウハウを持つ民間企業との連携事業で実施されており、同地区で使用されている8人乗りジャンボタクシー3台のうち1台が実証実験に使われている。 つくタクは現在、市内5つの地区(筑波、大穂・豊里、桜、谷田部、茎崎)ごとにオペレーターが電話予約を受け、2011年の運行開始以来、人手作業による配車を実施している。運行は1時間に1便で平日の午前9時台から午後5時台まで。年約4万4000人が利用し、そのうちの8割が高齢者で買い物や通院目的での利用が主体となっている。 同課がまとめた今年4~8月のつくタク利用実績によると、利用者数は5カ月間で2万590人で、前年度同期と比較して158人(0.7%)増えている。月別利用者数や地区別の1時間毎の利用者数などは地区によって増減が見られる。乗合率は全地区平均で52%(昨年は51%)と、ほぼ半数が1人での利用となっている。 一方、全ての地区で予約のお断り数が増加してキャンセル待ちが生じており、利用者からは「予約をとるのが面倒」「予約センターが混み合い、予約できない」など改善を求める声が挙がっている。 茎崎地区では3カ月間にわたる実証実験の後、利用者数や運行距離などのデータ、利用者とつくタクを受託している事業者の感想や要望などを元に検証が行われる。つくタクの運行を担当する市総合交通政策課は、現状の人手による電話予約に加えて2025年度から、24時間いつでもネットで予約受け付け可能なAIオンデマンドシステムを導入することを検討している。(橋立多美) 続く ➡「公共交通を考える」の過去記事はこちら

バス廃線後利用者3倍 住民主体で送迎サービス【公共交通を考える】3

水曜日の午前10時50分、つくば市下広岡の住宅団地、桜ニュータウンのほぼ中心にある市広岡交流センターの駐車場に、買い物バッグを手にした高齢の女性たちが集まってくる。ショッピングカートを押してくる人もいる。 桜ニュータウン高齢者等送迎システム「さくら」(中澤哲夫代表)が運行している「土浦イオン買い物乗合」で、毎週水曜日にワゴン車や乗用車に同乗して4キロ離れた大型商業施設、イオンモール土浦に向かう。利用者は思い思いに買い物やランチを楽しんで車に戻り、午後1時に桜ニュータウンに帰る。運転者は重い荷物と一緒に利用者を自宅まで送り届けている。 時々利用しているという87歳の女性は「山口県から娘の家に引っ越してきたので知った人がいなくて寂しかったが、買い物乗合を使うようになって顔なじみの人ができた。車内でのおしゃべりが楽しくて‥」。「夫と買い物に行くと急かされて落ち着かない。買い物乗合はゆっくり買い物できてストレス解消にもなる」という人も。 予約の必要はなく、料金は1回100円。乗車する時に運転者に支払う。毎週3~5人が利用し、そのうちの9割が女性だという。 キロ20円、土日祝日問わず朝8時から夕6時 高齢者等送迎システム「さくら」は、バス廃線問題に立ち上がった自治会の下部組織「桜ニュータウンのこれからを考える会」が、廃線問題が持ち上がる前の2020年に、高齢化が著しい桜ニュータウンには共助によるサボート体制が必要とスタートさせた。 65歳以上の高齢者と障害者、運転免許を返納した人が対象で、自家用車で利用者の自宅と目的地の間を往復する。第2種免許がなくても送迎できる国の制度を活用している。会員制の組織で、桜ニュータウンに住んでいる利用会員と協力会員(運転者)、賛助会員で構成されている。運行を開始した20年4月は新型コロナの流行が拡大した時期だったが、20人が利用会員となり、コロナ禍でも送迎は休みなく続けられてきた。 同団地とつくば駅を結ぶ路線バス「桜ニュータウン線」が廃止されると、外出が不便になった住民が送迎システムに関心を寄せ、利用会員は3倍の63人に増えた。運行開始から今年11月29日までの利用者は延べ507人を数える。行き先で多いのが病院または診療所だという。運転者は10人。すべて住民が担当している。 土日祝日を問わず午前8時から午後6時まで運行し、片道15キロの範囲で利用できる。予約方法は、利用会員が、自宅に届いた1カ月間の運転者10人のスケジュール表を見て、希望する時間帯が空いている運転者に電話する。利用者が増えたことで申し込みが重なり、予約が取れないなどのトラブルは今のところない。 料金はガソリン代としてキロ20円に設定され、例えば片道7キロの場合は往復で280円という低料金で運行されている。月初めに前月分を事務局が集金し、送迎実績に応じて運転者に支払う仕組み。予約不要で乗り合いの「土浦イオン買い物乗合」は、利用するたびに運転者に支払う。賛助会員からの会費や寄付金を活用し、送迎中の事故を補償する保険に加入している。 バスが消えるなんて想像してなかった 利用会員の男性(80)は「桜ニュータウンの欠点は交通の不便さで、高齢者にとってますます増える病院通いは、診療費よりも交通費の方が高くなることがしばしば。これを救ってくれたのが『送迎システムさくら』で助かっている」という。 代表の金子和雄さんは「長年この地域に住んできて路線バスが消えるなんて想像もしていなかった。公共交通の利用者は減少傾向で、いまはバスがある地域の人も『自分の身に降り掛かるかもしれない』と考えてほしい。だれもが他人任せにせず、地域の交通について考えるとき」だと話した。(橋立多美) 続く ➡「公共交通を考える」の過去記事はこちら

バス路線が突然廃止 その時住民は【公共交通を考える】2

つくば市下広岡の住宅団地、桜ニュータウンで今年1月31日、同団地とつくばセンター(つくば駅前)を結ぶ「桜ニュータウン線」が廃止となった。関東鉄道が運行する路線バスで、売り上げの減少が廃止の理由だ。 廃止の方針を聞き、2017年から同団地自治会の下部組織として活動しているまちづくり団体「桜ニュータウンのこれからを考える会」(金子和雄、阿部眞庭共同代表)が立ち上がった。 コロナ禍で利用減、年561万円の赤字 同団地は土浦市に隣接し、今年4月現在1244人が暮らしている。1979年に分譲が開始され、働き盛りの世帯がこぞって入居した。入居から約40年を経て団地全体が同時に老いることになり、高齢化率は市平均の19.2%を大きく超え51.7%に上る(5月1日現在)。 団地のほぼ中央にバスの回転場を備えた起終点の停留所があり、第1期の入居者が住み始めた時から現在に至るまで、土浦駅までの路線バスの起点及び終点となっている。入居当時、都心への通勤手段は常磐線で生活全般が土浦に向いていた。05年8月24日、つくばエクスプレス(TX)が開業すると生活圏がつくばに向かい、つくば駅と接続するバスターミナル、つくばセンターへのバス路線を望む声が上がるようになった。 06年4月につくば市のコミュニティーバス「つくバス」の運行がスタートしたが、地域循環ルートでつくばセンターまで時間がかかる上に便数も少なかった。5年後にルートを見直し、関東鉄道が運行する路線バス、桜ニュータウン線になった。廃止直前は平日9本、土日祝日は2本が運行していた。 桜ニュータウン線の廃止は、21年11月に市総合交通政策課と市議でもある同会代表の金子さんが、当時の関東鉄道自動車部長の訪問を受けたことから始まった。同年12月20日、関東鉄道は県バス対策地域協議会に22年6月30日をもって廃止を申請。新型コロナの影響で利用客が大幅に落ち込み、22年度以降に運行する場合の経常収支は年間561万円の赤字になるとし、路線の維持は厳しいというのが理由だった。年が変わって22年2月1日の同協議会で廃止申請案が審議され、路線沿線住民の意見を確認できていないことを理由に廃止決定はいったん保留となった。 2060戸にアンケート、廃止なら交通難民 同会は、沿線住民の利用実態と意見を聞き取るアンケートに乗り出した。104の区会を束ねる桜地区区会連合会にバス路線廃止の動きを説明し、アンケートへの協力を依頼。桜ニュータウンの3区会を含む路線沿線の21区会2060戸を対象に4月3日から5月8日までの期間でアンケートを実施した。回収枚数は724枚で回収率35.1%だった。 集計した結果、外出時の移動手段に桜ニュータウン線のバスを利用していたのは146人で、このうちの半数を桜ニュータウンが占めていた。また、廃線後の移動手段を聞いた項目では「廃線されると目的地まで移動できない」を選択した人は11人いて、7人が桜ニュータウンの住民だった。同団地の住民にとって、つくばセンターに向かうバスは重要な公共交通で、廃止されると「交通難民」になりかねない状況が浮かび上がった。 自由記載欄には▽今は運転しているが、この先が心配で免許返納に踏み切れない▽通院できないので困る▽老人は家に閉じこもるか、便利な地域に引っ越すしかない▽減便になってもいいのでなくならないでほしい▽通勤通学の時間だけでも運行してほしいーなど、廃止への困惑と不安、存続の訴えが書き込まれていた。アンケートの報告書はつくば市を通して同協議会に提出された。 22年8月26日に開かれた協議会で、保留となっていた桜ニュータウン線の廃止申請案が審議された。アンケート報告書によって沿線住民が存続を切望していることが認知されたが、廃止が決まり、翌23年の1月31日で運行を終えることになった。 代替交通を提案「市に希望託すしか」 同会のメンバー伹野恭一さんは「ここだけの話ではなく、売り上げの減少や乗務員の人手不足を理由にした廃線や減便が全国で問題になっている。関東鉄道の採算を考えると受け入れるしかないと思った」と当時を振り返る。 通勤や通学に桜ニュータウン線を利用していた人は、廃止になる前は、つくばセンターまで1本のバスで行くことができた。今は最寄りのバス停まで1キロの距離を歩いて2本のバスを乗り継ぐか、土浦駅行きのバスに乗車して乗り換えるルートを使うしかない。いずれも大幅にう回するルートで、25分だった所要時間が倍以上になって運賃も高くなった。 廃止が決まるまで、同会は市や桜地区区会連合会と何度も話し合うなど、粘り強く桜ニュータウン住民の意識を伝える努力をしてきた。廃止を受け入れた後も、活動の手を緩めずに代替交通の確保に取り組んでいる。 会が提案する代替案は、通勤通学客を輸送する朝晩の定時マイクロバスの運行と、商業施設を経由してつくばセンターに至る新たなバス路線だ。市と協議を進めており、代表の阿部眞庭さんは「市に希望を託すしかない」と話す。(橋立多美) (続く) ➡「公共交通を考える」の過去記事はこちら

バス減便 運転手不足深刻【公共交通を考える】1

深刻なバス運転手不足により関東鉄道(本社・土浦市)は今月20日のダイヤ改正に合わせて、つくば、土浦などでバスの減便を実施した(11月24日付)。「2024年問題」といわれるバス運転手などの時間外労働の規制によりつくば市では来年4月からコミュニティーバス「つくバス」の減便が予定されている(11月8日付)。現場で何が起こっているのか、公共交通はどうなるのか。バス事業者、利用者、行政の現場を5回にわたって取材した。 5年半で68人減「苦渋の選択」 県南地域などで路線バスを運行し、市町村からコミュニティーバスの運行を受託している関東鉄道 自動車部の白鳥賢部長(49)は今月20日から実施した減便について「(減便前のダイヤで)運行するにはバス運転手が600人必要だがすでに60人不足し、休日出勤や時間延長でまかなっている。来年4月からの基準を守ると、さらに20人足りなくなる。このままでは立ち行かない。秋以降、観光需要が増えることもあり、前倒しで12月に減便することにした。苦渋の選択だった」と理解を求める。 ここ10年間の同社のバス運転手は、2015年から18年まで600人前後で推移。18年3月時点の601人を境に減少に転じ、20年3月は567人、22年3月は551人、今年10月末時点で533人と減少が続いている。 白鳥部長は「入社して25年経つが、業界として人が足りたことはない。ここ数年は深刻化している。入社する人が減っているのに、退職する人は変わらず一定の人数いる」と説明する。当社のバス運転手の平均年齢は現在52歳。バス業界では平均年齢が50歳を超えると高齢化が進んでいるという指標になっており、「若い世代の入社が減り、運転手が高齢化している」という。 新型コロナの影響もある。同社は路線バスやコミュニティーバスなどのほか、高速バスを運行している。路線バスの赤字は自治体などからの補助金のほか、高速バスの収益で補てんし維持していた。会社全体の営業収益の6、7割を占めるのがバス事業で、そのうちの4割を高速バスが占める。 20年4月に新型コロナの緊急事態宣言が出された。高速バスの乗客はコロナ禍前の6、7割まで落ち込み、運行本数を通常の5割まで減便した。コロナ前の19年度、約71億円を計上したバス部門の営業収益は、20年度は約45億円までダウンした。「コロナ禍で収益の柱を失った。コロナ禍の間に退職した運転手もいる」と白鳥部長。コロナ禍により20年は収益が底を打ったが、今年はコロナ前の19年と比較して8割ほど回復している。「お客さんも戻ってきた」と語る。 積極採用、次世代の実験も 深刻な運転手不足に対し、同社は数年前から運転手の採用活動に力を入れる。バス運転手になるために必要な大型2種免許の取得費用を会社が負担するなどしてPRする。白鳥部長は「ここ数カ月、募集広告の宣伝効果が出て前年度に比べて採用ができている」というが、ほとんどが40代か50代で、長年バス運転手をやりたいと思っていた人が入社していて、20、30代の入社は年に数人。高卒者も年に1人か多い年で2人という状況だと明かす。 次世代の公共交通として期待される「MaaS(マース)」と呼ばれる新たな移動サービスにも挑戦。情報通信技術を使って複数の移動手段を最適に組み合わせる実証実験を2021年から地元土浦市と連携して実施しており、スマホなどで予約を受け付けAI(人工知能)を活用して効率的に運行するAIバスや、住宅地で時速20キロ未満の電気自動車を走らせ路線バスや鉄道など複数の公共交通と最適につなぐ取り組みなども積極的に行っている。ただし、AIバスや自動運転バスなどの「実用化はまだ先」だとし、現時点では、解決策にはなっていない。 すみわけ、再編し「最適化したい」 では今後どうすればよいのか。白鳥部長は「運転手がいない、お客さんがいないからと(便数を)どんどん減らすと、減らした直後は収支に効果が出るが、全体としてお客さんが減少し会社の将来はない。地域の足を確保することもままならなくなって負のスパイラルに陥る。これは意味がない」と認識する。 その上で、運転手不足に対する今後の対策としては「交通の最適化が求められる」とし、「例えば、現在つくバスの北部シャトルと当社の路線バスが競合している。限られた人数しかいない運転手を2人使うのはもったいない。民間の路線バス、自治体のコミュニティーバス、デマンドタクシー、企業の貸し切りバスなどが連携し、各地域で一回、公共交通を整理してすみ分けし、運転手を無駄なく使うなどの再編をしないと維持できない。1社ではできないので関係者に声掛けして検討していきたい」と話す。 「今回の減便は運転手不足に起因する減便なので、運転手が確保できれば便を復活することを視野に入れている。そういう努力はしていきたい」という。 続く ➡「公共交通を考える」の過去記事はこちら

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