土曜日, 4月 26, 2025
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全国で「令和の百姓一揆」《邑から日本を見る》181

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トラクターデモのしんがりを務めた瓜連勢(写真は筆者)

【コラム・先﨑千尋】「農家切実 首都騒然 トラクター30台行進 洪水のように進む離農」。4月2日付の『東京新聞』は、衝撃的な見出しで、3月30日の東京での「令和の百姓一揆」の模様を伝えた。「すべての国民が安心して国産の食料を手にするために日本の食と農を守ろう」と、全国各地からコメ生産者や酪農家などが東京・青山に集まり、集会を開き、沿道参加者を含めて4500人が、買物客などでにぎわう表参道を通って代々木公園までデモ行進した。

トラクターは別ルートで、渋谷駅前コース。この日の百姓一揆は、東京のほか、那覇市、福岡市、札幌市など14カ所で、トラクター300台が出て、沿道の人たちに農家の声を直接訴えた。

百姓一揆の実行委員長を務めた山形県の専業農家・菅野芳秀さんは「日本の農業は崩壊寸前だ。ムラから農民が消え、ムラそのものがなくなろうとしている。だが、都会の消費者はそのことを知らないでいる。農業が滅んで本当に困るのはその消費者だ。まだかろうじて農民が残っている今、国民とともに農を滅ぼそうとしている政治を変えていかなければならない。今日はそのための集会だ。農村では『農じまい』という言葉が交わされている。そうならないようにしていきたい。このことには保守も革新もない」と呼び掛け、元農水大臣の山田正彦さんは「日本の農と食を守るために、欧米並みの戸別所得保障をわが国でも実現させよう」と訴えた。

私は近くのコメ専業農家2人とこの集会に参加した。2人はトラクターを瓜連(那珂市)から運び、デモのしんがりを務めた。会場には集会の1時間前に着いた。舞台の前はカメラが林立。韓国のテレビ局も主催者にインタビューしている。むしろ旗、「小〇」(こまる)と書かれたのぼり旗やプラカードなど、参加者は工夫をこらしている。県北の大子町からは、特産のこんにゃくのぬいぐるみを着た生産者も参加し、「コメとこんにゃくを食べよう」と訴えていた。

周囲では農じまいも

原宿駅前を通るデモ(同)

私は茨城県の参加者とデモ行進に加わった。沿道からは、手を振る人、拍手をする人、スマホで撮る人など、好意的な人が多かった。瓜連から参加した浅川泉さん、秋山東栄さんは「思っていたよりも参加者が多かった。生産者だけでなく消費者の人も多く集まり、コメだけでなく農業をどうするのかについて、共感を持って参加していたのに驚き、すごいなと思った。沿道では『頑張って』と多くの人から声を掛けてもらい、励みになった」と話している。

「令和の百姓一揆」の解散後、明治記念館で活動や今後の方針を話し合う「寄り合い」が開かれ、今後も継続的に運動を続けていくことを決めた。

私がこの一揆に参加して強く印象に残ったのは、菅野さんの「農じまい」という言葉だった。私が住んでいる周りでも、純農村なのに農じまいが進んでいる。14世帯ある組内で農家らしいのはわずかに2軒だけ。空き家もある。現在はコメが値上がりしているが、それでも時給10円では誰も作ろうとはしない。「令和の米騒動」と言われていても騒動は起きていない。消費者と言われている方々、食べるものがなくなったらどうしますか。(元瓜連町長)

運賃値上げを申請 TX 開業以来初 来年3月から

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つくばエクスプレス

小児運賃と通学定期は値下げ

つくばエクスプレス(TX)を運行する首都圏新都市鉄道は11日、来年3月に向けて全体で12.2%の運賃値上げを国交相に申請したと発表した。値上げ申請は、消費税の変更による申請を除き開業以来初。

一方、少子化が進行する中、子育て世代が沿線に定着することが重要だとして、SuicaやPASMOなど交通系ICカードによる小学生の小児普通乗車券と、小中高校生や大学生の通学定期は据え置きまたは値下げする。

値上げ率は、定期券以外が8.2%、通勤定期が20.2%。一方、通学定期は15.3%の値下げとなる。

普通券は、ICカードの場合、初乗りが現在の168円から180円に7.1%値上げ。最長距離のつくば駅から秋葉原駅までは現在の1205円から1280円に6.2%値上げする。切符の場合、初乗りは現在の170円から180円に5.9%値上げ、つくば駅から秋葉原駅までは現在の1210円から1280円に5.8%値上げする。

一方、小児運賃は、ICカードの場合、13キロまでは据え置き、14キロ以降は200円均一とする。つくば駅から乗車する場合、みどりの駅までは据え置き、みらい平駅以降は200円均一とする。切符の場合は大人の半額となり、つくば駅から秋葉原駅までは610円が640円になる。

定期券は、通勤定期は現在は平均割引率が40.6%なのに対し、値上げ後の割引率は37.4%と縮小して値上げする。つくば駅から秋葉原駅までの場合の通勤定期は1カ月当たり、現在の4万3300円から4万7500円に9.7%値上げになる。

一方、生徒や学生の通学定期は子育て世代の負担軽減のため、平均割引率を現在の60.4%から70.0%に大きくして、値下げする。つくば駅から秋葉原駅まで通学定期の場合、1カ月当たり現在の2万8870円から2万3040円と20%値下げになる。加えて小児の通学定期は19キロ以降は1カ月当たり5000円均一とする。つくば駅から乗車する場合、守谷駅以降の小学生の通学定期は一律5000円となる。

3カ月と6カ月の定期の割引率は、通勤定期、通学定期いずれも割引率を縮小し、3カ月は5%から2%に、6カ月は10%から4%にする。割引率を縮小したとしても通学定期は全区間値下げになるという。

開業20年、大規模更新が急務

TXは2005年8月の開業以来、乗客数は順調に増加し、19年度は、06年度の2倍の約1億4310万人になった。20年度はコロナ禍の影響で19年度の70%の1億45万人に落ち込んだが、その後徐々に回復し23年度は19年度の97%の1億3868万人になった。

利用者数の増加に伴いこれまで、6両編成の車両を当初の30本から現在41本に増やしたり、秋葉原駅の出入口の増設などを実施してきた。今年8月は開業から20年を迎え、経年劣化した車両や架線、軌道など鉄道施設の大規模更新や、混雑対策のため車両を6両編成から8両編成にする長編成化、総合基地の増強などが急務になっているとする。加えて、TXの建設主体である鉄道建設・運輸施設整備支援機構に対する債務残高が23年度末時点で約4357億円残っており、今後も約20年間、毎年約200億円の返済を行っていく必要があるとして、昨今の物価高騰に対応しつつ、将来にわたって持続可能な経営を行うため値上げを申請したとしている。

残念だった県教育長の3月議会答弁《竹林亭日乗》27

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写真は筆者

【コラム・片岡英明】3月18日、茨城県議会の予算特別委員会で、山本美和議員(つくば市区)の県立高校定員に関する質問の様子を中継で見た(現在も視聴可)。

2022年11月議会で、当時の森作教育長が「進路選択に影響が出ないように県立高の募集定員の計画を示す」と答弁。その後、牛久栄進高の学級増、筑波高の進学クラス設置、つくばサイエンス高の普通科設置などの改善があったので、3月議会での県側答弁に期待していた。

つくば市の高校の特殊性

柳橋教育長はこの中で、①2019年改革プラン策定以降、県内各エリアの生徒数に応じて県立高募集定員の調整を行う方針である、②つくばエリアでは生徒数が増加する-この基本点を説明した。

また、つくば市からの入学者が多い土浦・牛久・下妻を加えた「拡大つくばエリア」で考えた場合、定員増は必要ないとも答弁した。つくばエリアは生徒増が見込まれるのに、エリアでの定員増は必要ないとの言葉は残念であった。山本県議の質問の背景には子どもたちの願いがある。その声に耳を傾けてほしかった。

なぜ、つくば市の多くの生徒がエリア外の隣接3市に通学するのか? つくば市内に県立高が少ないからである。今でも8学級募集の並木高(今は中高一貫)があれば、これほどの問題にはなっていない。TX開通によって生徒が増えたことで問題が顕在化した。

「拡大つくばエリア」という飛躍

柳橋教育長による説明の組み立ても気になった。まず、つくばエリアの生徒増を語り、次に「つくば市」のつくばエリア外への通学状況を説明し、そこから「拡大つくばエリア」の設定へと飛躍した。

「つくば市」を語るのであれば、構造的に県立高が不足しているつくば市の必要学級数(県平均水準)を計算してほしい。県立高を2校新設する必要性が判明する。

さらに、「拡大つくばエリア」を設定するのであれば、県全体の12エリアについても再試算する必要がある。私たちの会の試算では「土浦を除いた元の土浦エリア」で、新たに定員不足が発生する。

生徒が増えているつくばエリアに、生徒が減っている隣接3市を加え、「学級増必要なし」との試算には疑問がある。私たちは計算ではなく、現実から出発している。これからも、つくばエリアの受験生の願いを教育長に届けたい。

地域にとって魅力ある県立高を

生徒が増えるつくばエリアに学級増は必要ないと、ブランコで言えば「いったん限界まで振り切った」答弁は我々を驚かせたが、これはつくばエリアの定員を考える契機にもなった。

現状は、TX沿線に県立高新設が必要なのは明らかである。受験生の小さな声に耳を傾けると、振り切ったブランコはしかるべきところに落ち着くような気がする。

多くの生徒の関心は、募集定員だけではなく、各県立高の魅力や通学方法にも広がっている。県教育庁は、つくばの定員問題を早期に解決して、地域にとっての魅力ある県立高づくりに力を注いでほしい。(元高校教員、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表)

協議会スタート 洞峰公園の管理・運営方針など提言へ つくば市

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11日スタートした洞峰公園管理・運営協議会の様子=つくば市役所

2024年2月、県からつくば市に無償譲渡された洞峰公園(つくば市二の宮、約20ヘクタール)の今後の管理・運営方針などを市に提言する同市の「洞峰公園管理・運営協議会」(委員長・藤田直子筑波大芸術系環境デザイン領域教授)が11日スタートした。同日、第1回協議会が市役所で開かれ、昨年6月に同公園で開催した市営化スターティングイベントのような協議会のスターティングイベントを、今年6月ごろに開催することなどを決めた。

当初予定より1年遅れの設置となった(1月3日付)。委員は16人で、生物多様性や環境教育、まちづくりなどの学識経験者5人、洞峰公園などで活動する住民団体の関係者2人、公園を管理する委託事業者1人、造園会社の団体関係者1人、県と市の行政関係者7人で構成する。委員の任期は2年。

都市公園法の規定に基づき公園利用者の利便の向上を図るため必要な協議を行う協議会で、同公園の生物多様性の保全方針、公園施設の維持管理と更新方針、公園施設の運営方針などを、市長に随時、提言する。

協議会の組織の構成は、16人の委員による「委員会」と、公募市民がテーマごとに各テーブルに分かれて意見を出し合う「分科会」の2層構造となり、分科会で出た市民の意見をもとに委員会が協議して市長に提言する。

分科会は①生態系保全など「環境」②施設の維持管理と更新など「施設管理・運営」➂子育てと子どもの遊び場など「教育」の3つの分科会をつくる案が事務局案として出されている。6月ごろのイベント開催後、各分科会ごとに市民の公募を開始する予定で、応募があった市内外の市民全員が参加できるようにする。

分科会の運営方法は、テーマ別に市民が各テーブルに分かれて意見を出し合う。各テーブルでは筑波大の学生が司会者役となるほか、学識経験者の協議会委員1~2人が各分科会全体のまとめ役となる。今年度のスケジュールは、各分科会をそれぞれ1回、計3回程度開催する予定だ。

議会の2025年度予算は委員の謝礼などが計240万円。一方、分科会に応募する市民には無償で参加してもらう。

11日の協議会では併せて、公募で参加する市民が分科会に参加できなくなった場合などに意見を書き込める場などとして、筑波大発ベンチャー企業が開発した意見交換プラットフォームを活用することなども報告された。

協議会の設置に向けては昨年3月に、市長や議会議員、学識経験者など9人による準備会を設置して、3月、4月、12月の計3回準備会を開き、協議会の組織や運営方法などについて非公開で協議してきた。

市が県から洞峰公園の無償譲渡を受けるにあたってはこれまで、県が負担していた公園の維持管理費が新たに市の負担になることから維持管理費の負担軽減ほか、体育館・プール、新都市記念館など施設の長寿命化費用の負担軽減などが、市議会や市民説明会などで指摘されてきた。(鈴木宏子)

霞ケ浦用水のパイプラインはずれ水が流出 川の土手が一部崩落 つくば市北条

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つくば市役所

市発注の河川改修工事中

つくば市北条、八幡(はちまん)川の川岸で7日午後1時ごろ、工事受注業者が同市発注の河川改修工事を行っていたところ、土の中に埋まっていた霞ケ浦用水の農業用パイプラインの接続部分がはずれ、パイプラインの中にたまっていた水が流出して、川の土手の斜面の一部が長さ約10メートル、高さ3~4メートルにわたって崩落した。9日、同市が発表した。

霞ケ浦用水は霞ケ浦から水を取水し、農業用水などを県南西に供給している。事故があったパイプラインは霞ケ浦用水土地改良区が管理し、筑波土地改良区が用水を利用して、同市北条と小田地区に農業用水を供給している。事故時は田植え前だったため水は供給されておらず、今月21日から田んぼに水を張るため通水する予定だった。現場では9日からパイプラインの復旧工事が始まり、21日の通水開始までには復旧する見込みという。

八幡川は桜川の支流。市道路整備課によると、八幡川では昨年9月から今年6月までの工期で、川の氾濫を防ぐため川幅を広げる工事を行っていた。7日は同市北条、大池公園野球場近くの右岸で、川の土手の土を斜めに削ってコンクリートブロックを敷設する工事を行っていたところ、川岸の土手の土の中に埋まっていた霞ケ浦用水のパイプラインの接続部分がはずれ、水が流出した。流出した水の量は不明。

埋設されているパイプライン近くの土を削ったことから、パイプラインにかかっていた土の圧力が減り、接続部分がはずれたとみられるという。パイプラインの埋設位置について市と工事業者はあらかじめ把握しており、市は、なぜはずれたのかについて原因を調べるとしている。川の改修工事の再開は現時点で未定という。

崩落した八幡川の土手に隣接している大池公園野球場について、市は7日から、野球場の利用を制限している。安全が確認され次第、早急に利用を再開できるようにする。

再発防止策として市は、市と受注業者の双方で周辺状況を把握し安全管理を徹底した上で、施工にあたっては細心の注意を払って作業を進めるとし、市発注工事を受注している全業者に注意喚起を徹底するとしている。

復旧工事完了し21日通水

【21日追加】つくば市北条、八幡川の河川改修工事で7日、霞ケ浦用水の農業用パイプラインの接続部分がはずれた事故で、つくば市は21日、復旧工事が完了し、同日、通水したと発表した。利用を休止していた隣接の大池公園野球場は、外野の一部に立ち入り防止のネットを設置し10日から利用を再開しているという。

湖岸線日本一 霞ケ浦沿岸15市町村の魅力を一堂に 土浦市職員がイラスト展

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イラスト展「日本一の湖の ほとりにある 街の話」を紹介する若田部哲さん=土浦市民ギャラリー

若田部哲さん

土浦市職員、若田部哲さん(49)のイラスト展「日本一の湖の ほとりにある 街の話」が8日から、土浦駅前の土浦市民ギャラリーで開かれている。土浦市やつくば市など湖岸線の長さ日本一の霞ケ浦沿岸と筑波山周辺15市町村の名所や特産品、祭りなど地域の魅力を、計150点のイラストで紹介している。

若田部さんはNEWSつくばのコラム欄で2022年7月から毎月1回、「日本一の湖のほとりにある街の話」と題して、霞ケ浦沿岸地域の魅力をイラストと記事で紹介し今年3月までに計32回連載している。今回はNEWSつくばに掲載されたイラストも含め一堂に展示している。

展示作品は、稲敷市の大杉神社、阿見町の予科練平和記念館、つくば市のペデストリアンデッキ(遊歩道)など。大杉神社はかつて、巨大な杉の木が霞ケ浦のどこからでも見えて航路標識の役割を果たしたと言われていることから、空を覆うように杉の木を描いている。予科練は「戦争を経験した方々がおり、今という平和な時代がある」という同館学芸員の言葉をイラストに添えている。ペデストリアンデッキは松見公園、つくばセンタービル、洞峰公園それぞれの風景を描いている。大学時代に都市計画を学んだ経験からペデストリアンデッキは、「歩く」という人間の基本的な行為を安全に楽しめて人と人が交わるところという思いを込めている。

休日などに土浦市内や霞ケ浦周辺を巡り、実際に足を運んで、現地で話を聞いて感じた魅力を、各市町村それぞれ10点ずつ紹介している。いずれも色鮮やかな版画のような作品で、現地で撮った写真をもとに手描きで輪郭線を描き、パソコンに取り込んで着色している。イラストの大きさはいずれも縦横18センチ×27センチ、色合いはグレーをベースに、いずれも2色の濃淡で表現している。グレーは全作品に統一して用い、15市町村のつながりを感じられるようになっている。

若田部さんは筑波大大学院芸術研究科修了後、建築設計事務所に勤務し、2009年に土浦市職員になった。これまで土浦市内の昭和レトロな老舗を紹介するイラストと記事を常陽新聞(2017年に休刊)に連載などしてきた。霞ケ浦沿岸地域に着目したのは2017年に滋賀県の琵琶湖のほとりで開催された全国市町村職員研修会に参加したことがきっかけ。各地の自治体職員に霞ケ浦を紹介したところ、琵琶湖に次いで2番目の大きさなのに霞ケ浦を知らない職員が多かった。アピールするなら日本一のものと考え、霞ケ浦の湖岸線の長さが日本一であることから「日本一の湖のほとりにある街の話」と題するホームページを2019年に開設した。すでに300点以上のイラストを描き、発信している。

若田部さんは「自身が住む街を振り返ることはなかなかなかったり、見過ごしている場所もあると思うので、こんな場所があるということをご覧いただければ」と話し、「イラストで巡る霞ケ浦、筑波山の旅という展示なので、改めて行ってみたいというところがあったらぜひ実際に訪れていただければ」と語る。(鈴木宏子)

◆イラスト展「日本一の湖の ほとりにある 街の話」は若田部さんとNEWSつくばの共催。8日(火)~20日(日)、土浦市大和町1-1 アルカス土浦1階 土浦市民ギャラリーで開催。入場無料。若田部さんのホームぺージはこちら。NEWSつくばのコラムはこちら

尾道 坂の街にて《続・平熱日記》179

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絵は筆者

【コラム・斉藤裕之】愛犬パクと故郷山口に帰って来て1週間。明日は弟夫婦と日本海側に行っておいしい魚でも買ってこようかと…。「尾道はどう?」。義妹の一言で行き先変更。翌日、3月も後半になるというのに広島では雪が舞って、遠くの山々は山水画のよう(日本海側に行かずによかった)。

尾道までそれほど遠くはないのに、訪れるのは初めて。まずは千光寺のロープウェイに乗って、尾道の街を見下ろす。川の幅のような向島との間の尾道水道には、渡し舟が行き交う(3月末で廃止と後日知る)。寒風が身に染みるが、そのおかげで空気は澄んでいて尾道大橋や西に続く島々までよく見える。戸艮(うしとら)神社の樹齢千年と言われる大楠を眼下に、ロープウェイで下りて日本有数の長さで知られるアーケード街へ。

他の地方都市の多くと同じくシャッターを下ろした店舗も目立つが、なんとか踏ん張っているようにみえる商店街。平日にもかかわらず、外国からの観光客も多く見かけた。義妹は金物屋で取っ手の長いトタンのチリトリを買い、私は少々値が張ったが晩のおかずに焼きアナゴを買った。

坂の街と知られる尾道。せっかくなので、少し坂を登ってみようということになった。登り始めてすぐに、かわいらしい薄緑色の木製のドアが気になった。ローマ字で「KAPPAN…」。どうやら活版印刷の店のようだが、あいにく閉まっている。

それから少し上まで行ってみたが、すぐに息が上がってしまい、早々に引き返す。おや、さっきの店に明かりがついているような気がして、ドアに手をやったら開いた。すると、女性が出てきて中に招き入れてくれた。店内には手動の印刷機が2台とその奥に活字の並んだ棚がある。

がんす、タコのてんぷら、

「懐かしいなあ。実は実家が印刷をやっていて…」と、私と弟はかって活版印刷を生業(なりわい)としていた実家のことなどについて話し始めた。

「そうなんですか。この機材は北海道から船で運んできたんですよ…」。店の方と話が弾む。私は実家から唯一運び出して、弟の家に置きっ放しにしてあるものを思い出した。「うちに電動の立派な活版印刷機があるんですけど、いりますか? ちゃんと動きますよ」。店の方は意外な提案に少し戸惑った様子だったが、それならばと責任者の方の連絡先を教えてくれた。

帰宅して連絡をとると、すぐに返信が届いた。だれかに使ってもらえればと思って取っておいた活版印刷機。残念ながら、弟も私も使い方を知らず鉄くずになりかけていた。願わくば、尾道の街で鉄製の精巧な歯車が力強い印字を刻む雄姿を再び見せてほしい。きっと、インクの匂いとガッチャン、ガッチャンというレトロな響きはこの坂の街に似合うだろう。

その夜の食卓には、がんす(魚のすり身にパン粉をつけて揚げた広島の郷土料理)、タコのてんぷら、焼きアナゴが並んだ。また尾道を尋ねて、今度は別の坂を登ってみようと話し合った。(画家)

見事に矢が的中 日枝神社で流鏑馬祭 土浦

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見事に命中した三の矢

土浦市沢辺の日枝(ひえ)神社で6日、流鏑馬祭(やぶさめまつり)が催された。伝説の登場人物にふんした鎧(よろい)武者が、馬にまたがって長さ150メートルほどある境内の馬場をゆっくり進み、立ち止まって、3カ所に立てられた的に向かって馬上から矢を放った。

一の矢から三の矢まで見事に命中すると、大きな拍手がおこった。当日はあいにくの雨模様だったが約600人の見物客が訪れ、写真愛好家らが矢を打つ瞬間を待ち構えるなど、にぎわった。

境内にすみついた大ザルが村里の作物を食い荒らし村人に害をなしたことから、領主と、弓の達人である家臣が大ザルを退治したという言い伝えをもとにした祭りで、県指定無形民俗文化財に指定されている。山ノ荘地区の平和と五穀豊穣を祈願し、毎年4月の第1日曜日に催される。

日枝神社流鏑馬保存会の宮本勉会長

開会式には、青山大人、国光あやの衆院議員、土浦市観光協会の中川喜久治会長などがあいさつし、伝統行事の大切さなどを述べていた。日枝神社総代代表で同流鏑馬保存会の宮本勉会長(75)は「これからも未来に向けて続けていければよいと思う。昨年から稚児行列の衣装が変わるなど工夫している。地域全体でもっと盛り上がってくれれば」と話した。

日枝神社は、山ノ荘と称される小高、沢辺、東城寺、小野、大志戸、本郷、永井、今泉、粟野の9カ村の総社で、796年に創建されたと伝えられている。(榎田智司)

コラムの執筆陣が少し変わります《吾妻カガミ》205

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花壇のチューリップ=4月5日、霞ケ浦総合公園

【コラム・坂本栄】新年度に入りました。4月からコラム欄の構成を少し変えます。これとの関連で、5月から新しい執筆者に参加してもらいます。コラムは原則として1日1本ですが、行政記事や催事記事とは色合いの違うコラムを引き続きお楽しみください。

執筆回数は月1回に統一

これまでの執筆者は、月2回の方、月1回の方、隔月の方に分かれていました(ほかに随時出稿の方も)。4月からは月2回を止め、月1回に統一します(隔月執筆はそのまま)。仕事で多忙の方もおり、月2回はきついとの声が寄せられたからです。月2回の田口哲郎さんは研究活動の都合もあり、109回(3月29日掲載)が最後になりました。

研究学園駅周辺の地域活動を紹介してもらった「けんがくひろば」は、15回(2月25日掲載)が最終回になりました。題材が尽きてきたとのことで、4月から「随時」に移ってもらいます。12回(24年11月7日掲載)の後、忙しくて休載が続いた医療通訳の松永悠さんも「随時」に移行します。

親友の瀧田君が昨秋逝去

告知はしませんでしたが、国際政治について独自の分析を執筆してくれた瀧田薫さん(茨城キリスト教大学名誉教授)は2024年秋、逝去されました。バイデンとトランプが争う米大統領選挙の構造を取り上げた62回(24年8月4日掲載)が最後です。

瀧田さんは、幼稚園-小学校-中学校-高校の同級生でした。土浦聖母幼稚園(土浦市大町)の第1回卒園で、いろいろな場でいろいろ議論してきました。彼の茨キリ大での専門分野は国際政治、私の通信社での専門分野は国際経済でしたから、「解」を見つけるための情報をお互いに補完できました。田中角栄は米情報機関によって抹殺されたとの陰謀論については盛り上がりました。

茨キリ大で、彼は常務理事として大学運営にも携わっていました。経営学部を立ち上げた後、「新しい学部で兼任講師として国際経済を教えてくれないか」と誘われました。もちろん私は快諾し、毎週1回、大学がある日立市まで常磐高速道を飛ばしました。若い同僚講師との懇親会、好奇心あふれる学生との交流は実に愉快でした。

水戸の元広報課長も参加

逝去、多忙などで生じた「穴」は埋めていきます。2月から古本屋店主の岡田富朗さん(初回は2月1日掲載)に加わってもらいましたが、5月からは写真家の海老原信一さん、元水戸市課長の沼田誠さんにも参加してもらいます。海老原さんは鳥類の撮影が得意で、毎回2枚アップしてもらいます。今休載中のオダギ秀一さん(直近は1月16日掲載)に続き、写真家は2人目です。

沼田さんは、水戸市の「みとの魅力発信課長」を務めていました。変わった組織名ですが、他の役所で言えば広報課長に当たります。数年前に市役所を辞め、今はつくば市に住み、環境問題や街づくりの分野で活躍しています。好奇心が強い方で、水戸地域の話だけでなく、「水戸っぽ」の視点から学園都市のことも書いてもらいます。

ほかの執筆者についても、現在リクルート活動を続けています。独自の視点や面白い話題を提供してもらい、ネット媒体ならではのコラムにしたいと思います。ご期待ください。(NEWSつくば理事長)

逆転で開幕戦勝利 アストロプラネッツ

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7回裏、北原の三塁打で高田(背番号4、常総学院高出身)と原(背番号3)が生還=撮影/高橋浩一

プロ野球独立リーグ・ルートインBCリーグの茨城アストロプラネッツは5日、ノーブルホームスタジアム水戸(水戸市見川町)で今季開幕戦を迎え、栃木ゴールデンブレーブスに8-6で逆転勝利した。

【ルートインBCリーグ2025公式戦】(4月5日 ノーブルホームスタジアム水戸)
茨城アストロプラネッツ-栃木ゴールデンブレーブス
栃木 013 002 000 6
茨城 001 000 61X 8

試合終了、ハイタッチで勝利を祝う選手たち

茨城は5点ビハインドで迎えた7回裏、打者一巡の猛攻で6点を奪い逆転に成功した。この回先頭の5番打者ジョ・ミンヨンが四球で出塁、6番の山本仁が右前打でチャンスを広げ、7番・秋川正佳の敵失と8番・原田京雅の遊ゴロ、9番代打・草場悠の内野ゴロで計3点を奪う。この時点で2死走者なしとなったがむしろここから本領発揮。1番・新太郎が遊撃への内野安打、2番・高田龍が右翼線への安打、3番・原海聖の中前打で1点を加え、とどめは4番・北原翔の中越え三塁打で2点を加えた。

7回裏、茨城2死一・三塁、原が中前適時打を放つ

「打ったのはストレート真ん中高め。上がりすぎたと思ったが、思ったより飛んでくれた。タイムリーになってよかった」と北原の談。「打線はいい当たりをしていたが、野手の正面をつくなど乗りきれてなかった。みんなで勝ちに行こうという気持ちが全員に伝わり、この回爆発できた。負けてても返せるという自信につながったと思う」とも語る。

7回裏茨城2死二・三塁、北原が中越えの2点三塁打を放つ

新太郎はこの日5打数4安打の活躍。3回に迎えた第2打席のタイムリーでは、バントの構えで初球を見送った後の2球目、インコースのストレートを右前へ運んだ。「第1打席でもこの球があったので頭に入れていて、次来るなという予感があった」とコメント。オフには体づくりに取り組み、筋肉量が増えパワーやスイングスピードがついた。その成果がオープン戦からの好調につながっているという。

3回裏、茨城1死二塁、新太郎が右前適時打を放つ

今季はチームとして初めて沖縄・宮古島で10日間にわたる春キャンプを実施。「寒い時期に合宿でしっかりスイング量を確保したことで、他チームよりもバットが振れている。このアドバンテージを生かしてスタートダッシュしたい」と巽真悟監督は期待を込める。

投手は7回表を投げた清原浩斗に勝ち星が付いた。「死球でピンチを招いて苦しいピッチングだったが、無失点で抑えれば野手が点を取ってくれると思い、全力で腕を振って投げた。逆転に感謝」とコメント。今季は直球が最速150キロと5キロアップした。決め球のフォークやスライダーの切れ味も増し、成長を実感しているという。

7回に登板し1安打1死球で無失点の清原

8、9回は佐藤友紀と石野田拓斗が1イニングずつ投げ、いずれも3者凡退と安定感抜群。先発陣も試合で経験を積ませながら、持ち前の高い能力を発揮させていきたいと巽監督は目論んでいる。

次の試合は11~13日、さくら運動公園野球場(つくば市流星台)などで読売ジャイアンツ三軍との交流戦3連戦を行う。(池田充雄)

消費者トラブルと対処法《ハチドリ暮らし》48

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写真は筆者

【コラム・山口京子】定期的に学習会をしている市民グループから、消費者トラブルとその対処法についてのセミナーを依頼されました。訪問販売の点検商法、インターネットを使った契約トラブル詐欺まがいの投資話、強引な訪問購入、食品混入事件や薬害、不当表示など、消費者を取り巻く様々なトラブルについて話しました。

トラブルを避けるために、不意打ち的な勧誘による契約などには、消費者保護の立場からクーリング・オフ制度があります。クーリング・オフは、いったん契約の申し込みや締結をした場合でも、契約を考え直す時間を与え、一定の期間内であれば契約の解除ができるものです。

たとえば、自宅に来た業者に「無料で屋根を点検します」と言われて、屋根を見てもらったところ、「瓦がだめになっていて、このままでは雨漏りする。すぐに修理しないと家がだめになる」と言われて、その場で押し切られ工事の契約をしてしまった場合などは、クーリング・オフが使えます。

クーリング・オフができる取引は法律で定められています。また、事業者が約款で定めている場合もあります。店舗での直接購入や通信販売などは適用されません。インターネット契約は通信販売の一種であり、クーリング・オフ制度はありませんが、使えると誤解している消費者が少なくありません。この場合、事業者が表示する返品特約に記載された返品の可否や条件に従います。

消費生活センターに相談しよう

通信販売については、返品特約がどうなっているか、契約前にしっかり確認することが大事です。以下の点を知っておいてください。

▽消費者と事業者の間には、大きな情報の量と質、交渉力などの格差がある。

▽生産と消費が分離し、消費者に生産工程が見えなくなっている。

▽科学技術の発展や、化学合成物質の多種類・大量使用で、問題が複雑化している。

▽事業者は利益を出すために低コストの生産を強いられ、その無理が被害につながる。

▽被害が出ても、因果関係が証明されないとして、実態を企業がなかなか認めない。

▽被害者が訴訟を起こしてもなかなか認められない。認められても損害賠償金が不十分。

▽そもそも、諦めてしまう。

悪質事業者による被害から消費者を守るために、全国で「適格消費者団体」が立ち上がっています。総理大臣の認定を受けた法人で、全国に26団体あります。茨城県ではまだ設立されておりませんが、「消費者サポートいばらき」が適格団体になる活動を進めています。困りごとや不安があれば、居住地の消費生活センターに相談しましょう。(消費生活アドバイザー)

「動物に触れ合い、愛情と根気を」 つくば国際ペット専門学校で入学式

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新入生を代表して決意を述べるドッグトレーナーコースの松島リザさん=つくば国際会議場

動物分野で国内有数の専門学校、つくば国際ペット専門学校(つくば市沼田、東郷治久理事長)の入学式が5日、つくば国際会議場で催された。ペットビジネス学科のドックトリマー、愛玩動物看護師・動物衛生看護、ドッグトレーナー、ペットケア総合の4つのコースに、全国各地から206人が入学した。

高橋仁校長は「皆さんがこの学校を選んでくれたことはとてもラッキーなこと。美しい場所で学べる幸福も含めて、新しいことに挑戦してほしい。皆さんには(在学中ずっと生徒1人が1匹の子犬を世話する)パートナードッグが待っている」と式辞を述べた。

あいさつをする高橋仁校長

東郷理事長は「来年30周年を迎える(犬のテーマパークの)『つくばわんわんランド』をバックボーンにしている当校は最高の環境。必要なものは愛情と根気であり、動物に触れ合うことによって身に付く。皆さんの夢をかなえるために教職員一同尽力します」と祝辞を述べた。

続いて在校生代表を代表してドッグトリマーコースの大須賀新奈さんが歓迎の言葉を述べ「学校生活は忙しかったが、発見の連続でやりがいがあった。投げ出さず、あきらめずやっていければ、技術を身に付けることができると思う。学校、先生、自分自身を信じて思い出をたくさんつくりましょう」とエールを送った。

これを受けて新入生を代表しドッグトレーナーコースの松島リザさんは「大きな期待と希望をもって、夢の実現のため頑張っていきたい。動物たちとの触れ合いや仲間たちとの支え合い、助け合いを通じて成長していきたい」と決意を述べた。

入学式に参加した新入生の中山桃夏さん(18)は「動物が大好きなので、この学校に入れてうれしい。友達もたくさんつくりたい」と話していた。

写真撮影をする新入生一同と学校関係者ら

式典では併せて、3月29日に東京ビッグサイトで行われたジャパンケネルクラブ主催のトリミング競技大会で、トリマーコースの小堀美空さんと大友愛希が最優秀技術賞、遠藤晴希さん、小橋川花蓮さん、田島由紀乃さんが優秀技術賞を受賞し、同校が優秀養成機関賞を受賞したことが報告され、同クラブトリマー試験委員の高尾諭さんから東郷理事長に賞状とトロフィーが授与された。(榎田智司)

悠仁さま、筑波大入学

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入学式で隣に座る新入生と談笑する悠仁さま=筑波大学大学会館

開式を待つ間に談笑も

筑波大学(つくば市天王台)で5日、大学と大学院の入学式が開かれ、生命環境学群生物学類に入学した秋篠宮家の長男、悠仁さま(18)も参加した。大学の入学式は学群ごとに2回に分けられ、悠仁さまは午前9時から始まる最初の式典に参加した。

悠仁さまはスーツにネクタイ、黒いリュックを背負い、式典開始45分前に席に着くと、隣りに座る他の新入生と談笑しながら開式を待った。入学後は、東京・元赤坂の秋篠宮邸から通学するほか、大学近くにある単身用の民間の集合住宅の一室を借り、併用していくという。

入学式の様子

一人の夢のみならず豊かな未来社会実現へ研鑽を

式典であいさつに立った永田恭介学長は「現代の社会課題の解決には複数の分野にわたる総合的な知識と、それぞれの分野の原理的な概念が必要になる。皆さんにはぜひ、グローバルな視点で社会の変化に関心を持ち、これらの課題を自分のこととして認識し、専門分野にとらわれずに学びの幅を広げ、社会に出てから責任ある考え方に基づいて行動できる力を身につけてほしい」と新入生に語りかけると、「一人一人の夢の実現のみならず、豊かな未来社会を実現するために、ともに日々の研鑽に励んでいきましょう」と呼び掛けた。

式典で挨拶をする永田学長

医学群に入学する水戸一高出身の益子隆生さん(18)は、地域医療を担う医師を養成する「地域枠」で入学した。「期待より不安も多い」としながら「県内には医師不足に直面する地域があるが、各地の特色を理解し医療に取り組み、地域の方々に安心を届けられるような医師になりたい」と目標を語った。中国・北京市出身で、情報学群に入学するホウ・シキさん(20)は「大学では図書館の検索システムとともに、AIを活用した図書推薦システムについて研究したい。中国では登山が趣味だった。つくばには、日本百名山の筑波山がある。在学中に、他にもいろいろな山を巡ってみたい」とつくばで過ごす学生生活への思いを膨らませていた。

同大の今年度の入学者数は、学部にあたる学群が2230人、大学院が2568人、はり、きゅう、あん摩・マッサージ指圧を視覚特別支援学校で教える教員を養成する理療科が9人。午後からは大学院の入学式が開かれた。(柴田大輔)

入学式に集まる新入生たち=筑波大大学会館前

天才たちの老後(3)学園都市という場《看取り医者は見た!》39

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写真は筆者

【コラム・平野国美】前回(3月14日掲載)書いたように、私が関わっている患者さんの中には「ギフテッド(天賦の才)」と呼んで差し支えない方が存在します。筑波研究学園都市という街は研究者が集積する場所なので、お会いする機会が必然的に多くなるわけです。そのため、その天才たちの老後を見させていただいており、彼らの生い立ちは私にとって興味深いことです。

まず、ギフテッドの定義について、いくつかの観点から説明します。国や機関によって異なりますが、一般的には①非常に高い知的能力②優れた創造性③高い学習能力④特定の分野における顕著な才能―などを持っている人です。

単にIQ(知能指数)が高いだけではなく、特定の分野について強い好奇心と異常なまでの探求心を示す人たちです。ところが、他の分野や生活一般には、全くと言っていいほど興味を示さないのです。お話を聞いていると、独特のセンスやユニークさを感じる方が多いです。

それゆえ、彼らは奇人と言われ、決して幸せには見えない方も多いのです。しかし、彼らにとっての幸せは、自分の興味の分野に身を置けるかどうかであって、一般的な幸せの基準とは違います。そこに、現代人が求める「承認要求」などはありません。

魚にこだわる「さかなクン」

会ったことはないのですが、フギョギョの「さかなクン」は、この範疇(はんちゅう)に入ると思います。魚類という特定分野への強いこだわり、並外れた知識と記憶力、ユニークな言葉遣いや表現力には独特の気質が見えます。

さかなクンの周辺の人に話を聞いたことがありますが、普段から、あの話し方とキャラクターで過ごしており、決して営業用ではないそうです。

そして、誰よりも魚類に対する愛は深いそうです。学校の勉強は苦手でしたが、今ではイシガキフグの研究などが評価され、東京海洋大学の客員教授に就任し、皇室の方の前で講義をしたこともあります。彼は自身の興味や才能を生かし、多くの人々に魚の魅力を伝えています。彼の存在は、多様な個性を持つ人々がその能力を発揮することの素晴らしさを示していると思います。

脳の多様性を尊重するエリア

私の患者さんや、そのご家族にも似たような資質の方が存在します。昆虫、惑星、草木、鉱石に対する無限の「渇望」で生きてきた方がおられます。視線を広げると、芸術分野でもおります。さらに広げると、マニアやオタクの世界にまでたどり着きます。

多様性という言葉はジェンダーの世界で主に語られますが、もっと広げると、ニューロダイバーシティ、つまり脳や神経に由来する多様性を相互に尊重することではないでしょうか。その場所が、つくばエリアではないかと思うのです。(訪問診療医師)

「人格の完成を目指せ」 日本国際学園大つくばキャンパスで入学式

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総代として橋本綱夫学長から入学許可書を受け取るスリランカ出身のシルバさん(壇上左)

2期生87人が入学

昨年4月に開学した日本国際学園大学(橋本綱夫学長)の入学式が4日、同大つくばキャンパス(つくば市吾妻)で催され、第2期生87人が入学した。旧筑波学院大学から大学名を変更し2回目の入学式となった。

総代として、白い民族衣装をまとったスリランカ出身のサンタナ・デワゲ・ハルシ・ナワォデヤ・デウミニ・シルバさんが橋本学長から入学許可書を受け取った。新入生87人のうち44人は留学生で、中国、スリランカ、ベトナム出身者などが多いという。

橋本学長は式辞で「本学を支えている考え方は、大学で幅広い教養や知識を習得するだけではなく、問題解決能力や創造力といった、人格の形成を目指している。実社会に出たら必要なものはコミュニケーション力であり、本当に役に立つ人間を目指してほしい」とメッセージを送った。

入学生を代表してあいさつする茂木翔太さん

新入生を代表して茂木翔太さんは「恵まれた環境で学ぶことができることはとてもうれしい。それぞれの目標に向かって勉強するのはもちろんのこと、物事を多くの視点から見られるよう、学び、社会に貢献していきたい」と述べた。

在校生を代表して経営情報学部ビジネスデザイン学科の寺門光穂さんは「この大学の特徴は、先生と距離が近く何でも親身になって相談できるところ。学生生活を送るにあたって、時間をかけて待つだけではいけない。自ら進んで行動することが大事」だと新入生に向けてエールを送った。

当日は3日間続いた雨も止み、桜が咲く中での入学式となった。中国出身の新入生で留学生の森拓也さん(18)は「まずは日本語の会話がちゃんと出来るようにしたい。これからは情報が大事だと思うので、AIなど学べれば良い」などと話した。

入学式に臨む新入生たち

同大は1990年、東京家政学院大の筑波短期大学として開学。96年に4年制の筑波女子大学になり、2005年に男女共学の筑波学院大学になった。大学の運営は19年度に東京家政学院から学校法人の筑波学院大学に移り、23年からは学校法人名を日本国際学園に変更した。昨年からは姉妹法人の東北外語学園(仙台市、橋本理事長)が運営する仙台市の東北外語観光専門学校に新たに日本国際学園大学の仙台キャンパスを設置した。(榎田智司)

家族行事のおはなし《ことばのおはなし》80

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写真は筆者

【コラム・山口絹記】久しぶりに家族でいちご狩りに行った。我が家ではこの10年、いちご狩りはほぼ毎年の家族行事のようなものになっているのだが、昨年は私がバタバタして行けなかったのだ(知らないうちに私抜きで行った可能性はある)。

つくばに暮らすようになって最初の数年は、いちご狩りができるところをいろいろと巡っていたのだが、ある時からふとしたご縁で同じ農場に通うようになった。毎年同じところを家族で訪れる、同じことをする、というのは、案外悪くないものである。

この10年ほどを思い返してみると、張り切って遠方に旅行したりするよりも、ただなんとなく毎年やっていることの方が記憶に根付いていたりすることに気が付いた。別に記憶に留めておきたくてやっているわけではないのだが、結果的にそうなった、という感じなのだ。

娘のおひな様を出したり片付けたりするのを忘れる程度の人間なので、あまり偉そうなことは言えないのだが、本来の家族行事もそういった意味もあるのかもしれない。

ただなんとなくいちご狩りに

いちごでおなかがいっぱいになってしまったので、妻と一緒にベンチに腰掛けた。また寒い日が続いているが、温室の中は暖かくて居心地がよい。油断すると満腹なのも手伝って気を失いそうになる。

息子はいちご狩りに飽きたのか、ヘタを入れる紙コップと食べかけのいちごを私に手渡すと、有り余る体力を消耗するためだけに駆けだす。それを追って娘も、いちごの間を駆けていく。息子の食べかけのいちごを食べながら、駆け回るこどもたちをぼんやり眺めていた。来年もまた、ただなんとなくいちご狩りに来られたらいいと思う。(言語研究者)

児童、生徒の増加に対応 新 桜給食センターが開所 つくば

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開所式には桜学校給食センターが配食する対象学校に通う児童と保護者ら23人も参加した

10日から6600食を提供

つくば市天王台に桜学校給食センターが開所し、3日、同センターで開所式が開かれた。つくば市では近年の児童・生徒数の増加と、既存施設の老朽化に対応するため新しい学校給食センターの設置が急がれていた。

2020年3月に閉鎖された旧・桜学校給食センターの跡地に新設された。建物は、鉄骨造2階建、建築面積3350平方メートル、延べ床面積3948平方メートル、総工費は約37億円、従業員は約70人。4月10日から市内の幼稚園4園、小学校9校、中学校3校へ約6600食の給食提供が始まる。同センターではアレルギーに対応した給食を含む、1日あたり最大で7000食の調理が可能だ。

環境に配慮した持続可能な給食センターを目指すとし、施設内での排熱利用や発電システムを設置した。都市ガスを使って発電するガスコージェネレーションシステムでは、発電した電気を施設内の照明等に使用し、発電時に発生した熱はお湯などの熱源に利用する。排熱の回収量は年間約3万600キロワットアワー、発電量は年間6万7200キロワットアワーとなる計画で、停電時の電力としても利用される。屋上には太陽熱給油システム用の発電パネル36枚を設置し、食器洗浄用に使われるお湯に必要な熱量の90%をつくり出す。学校から戻ってきた残飯は粉砕し水切りし、3分の1から5分の1程度に減量して、調理過程で出る野菜くずとともに生ごみ処理機で分解される。建物2階には、1階の作業を見学できる見学室や展示スペースが用意され、食育にも力を注ぐという。

参加者に、つくば産のコメや野菜などの食材を使った試食用給食が振舞われた

式典のあいさつで五十嵐立青市長は「次の世代に胸を張れる施設をつくろうと取り組んできた。この場所からつくばの新しい給食の形が始まると思っている」と話し、森田充教育長は「給食の時間は友情を深める大切な時間。給食は生きた教材、学びができる時間でもある。工夫をしたセンターを知ることも大事ですし、地元から調達される食材もあるので、食材についても学んでほしい。生産者との交流も学校を通じてしてほしい。食を通じて子供たちの豊かな感性、しっかりした心身が育っていけたら」と述べた。

4月から桜学校給食センターの運営を受託した東洋食品(東京都台東区)の荻久保瑞穂専務は「市内の人口増加、学校新設に伴い新設されたセンターへの市民の皆さんの期待の大きさを感じている。これまで58年間、食中毒ゼロでやってきた私たちの経験をもとに、子どもたちに毎日の給食を楽しみにしてもらえるよう、地元の食材を使用したものなどいろいろな献立に対応していきたい。気持ちを込めて調理した給食をしっかり食べてもらい、心も体も健やかに成長してもらえたら」と語った。

つくば市では、筑波学校給食センター(つくば市神郡)が開所から20年、茎崎学校給食センター(同市小茎)が40年以上経過し施設が老朽化するなどしている。市内では2014年につくばすこやか給食センター豊里(同市高野)、20年にはつくばほがらか給食センター谷田部(同市藤本)が、それぞれ開所した。茎崎学校給食センターは今年3月で閉鎖し、4月からは新しく開所した桜学校給食センターを含む4施設で学校給食を提供する。つくば市の給食提供の総数は1日あたり約2万6000食。4つの給食センターで最大約3万食を提供できる。(柴田大輔)

建て替えられた桜給食センターの外観

さよなら牛乳瓶《くずかごの唄》148

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イラストは筆者

【コラム・奥井登美子】配達の牛乳屋さんから、「牛乳瓶が無くなって、ポリ瓶になります」という通知。森永乳業系は昨年から、明治乳業系は4月から瓶が消える。牛乳瓶を手でなでながら、なぜか涙が出てしまった。

東京の新富町で生まれて育った私の父は、近所にあった芥川龍之介の実家の牛乳屋へ、毎日、瓶の牛乳を買いに行ったという。近藤信行さんが山梨文学館の館長のとき、芥川龍之介展に誘われて行ってみたら、龍之介の小学生時代の手書きポスターに「牛乳を飲みましょう」というのがあって、皆で大笑いした。

102年前の関東大震災で家が焼け、我が家は新富町から郊外の荻窪に引っ越した。当時の荻窪は、震災で焼け出された人達にとって、とてもよい住宅地だった。

子供好きの父は、慶應の学生時代から近所の子供たちを集め、絵本を読んだり、水泳をしたりしていたらしい。母は震災の中、芝公園で兄を出産し、震災ノイローゼ。母の実家も焼け、6人の弟(斎藤茂吉の家に書生として入りアララギ派に貢献した小暮政次も弟の1人)たちを残して母親が亡くなり、精神的にも不安定で、なかなか子供が出来なかったらしい。

10年目に私が生まれてホッとしたらしく、次に妹、次に弟(加藤尚武元京都大学教授=環境倫理学)と、立て続けに出産している。私は1歳のとき、ジフテリアにかかって緊急入院。命は何とか取り留めたものの、ジフテリアの後遺症で喉が弱く、痛くて何も食べられないとき、父が作った牛乳ごはん(堅く炊いたご飯に牛乳を入れたおかゆ)が唯一の食べ物だった。

牛乳ごはんが私の常食

荻窪の家の隣にはノラクロ漫画の田河水泡氏のアトリエがあったが、父は、同じ荻窪区域内で、私を助けてくれた小児科勤務医の飯島先生の隣に引っ越してしまった。

夜中、私が40度近くの熱を出すと、父は私を抱いてタクシーを呼ぶ。飯島先生も乗って新宿の淀橋病院に行く。2~3日入院して、熱が下がったら帰る。その繰り返しだった。家に帰って来てからも喉が痛く、牛乳ごはんが私の常食だった。

土浦に嫁いで来て、私を救ってくれた飯島先生が牛久の飯島家出身ということを知り、びっくりした。龍之介の実家以来、牛乳瓶は私の食のシンボルだったのである。(随筆家、薬剤師)

29年春に「まち開き」 研究学園駅南の大規模開発 大和ハウス工業

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安全祈願をする村田誉之 大和ハウス副社長

6月の本格着工前に安全祈願

大和ハウス工業(本社・大阪市)は、つくばエクスプレス(TX)研究学園駅の南側隣接地(つくば市学園南2丁目)で進めている大規模複合開発「つくば学園南プロジェクト」の本格着工を前に2日、総面積15.5ヘクタールの用地内で安全祈願祭を行った。本格工事は6月から始まり、2029年春に「まち開き」を予定している。

同用地は日本自動車研究所(JARI)が保有していたが、23年12月、大和ハウスが142億円で取得した。同社によると、総戸数602戸の分譲マンションのほか、中高一貫校「茗渓学園」や学習塾「思学舎グループ」などの教育施設、スーパーマーケット「カスミ」などの商業施設、研究機関などの事業施設が入る。開発費は総額650億円。

「つくば学園南プロジェクト」完成イメージ(大和ハウス提供)

全用地の3割は茗渓学園

研究学園駅から徒歩9分の場所に建つ分譲マンションは地上15階建て。6月に着工し、27年7月完成の予定。間取りは2LDK~4LDKから成り、ワーキングルーム、パーティーラウンジ、筑波山が望める屋上デッキなどの共用エリアを設ける。

開発の目玉は、旧東京教育大や筑波大学のOB組織「茗渓会」が経営する茗渓学園(つくば市稲荷前)が移転してくること。大和ハウスは同学園誘致のために、全敷地の28%に相当する4.3ヘクタールを確保した。同学園は帰国子女や留学生が多く、国際色が強いのが特徴。26年夏から新校舎建設に入り、学園創立50周年に当たる29年の春に新校舎に移る。

「つくば学園南プロジェクト」鳥瞰イメージ(大和ハウス提供)

中央に3000平米の広場

安全祈願の神事が終わった後、五十嵐立青つくば市長の祝辞のほか、大和ハウスの村田誉之副社長、八友明彦茨城支店長、茗渓学園の宮崎淳校長・理事から説明があった。五十嵐市長は「市内の駅前に、このようにまとまった土地は残されていない。しかも、15.5ヘクタールと広く、人気がある研究学園駅から徒歩圏。この開発は駅南だけでなく、市全体のまちづくりにつながる」と、歓迎した。

大和ハウス側は「この規模の複合施設開発は当社でも最大規模。弊社、つくば市、筑波大学の産官学で開発し、29年春にオープンしたい」(村田副社長)、「商業施設と茗渓学園の間に3000平方メートルの広場を設ける。市民が集う場所として利用してもらいたい」(八友茨城支店長)などと述べた。

宮崎校長は「私学の良否を決めるのは、クオリティ(学校の質)、コスト(授業の経費)、アクセス(通学の利便性)の3つだが、新学園は駅から徒歩5分のところに位置し、アクセスは申し分ない。移転情報がすでに広く伝わり、これまで1500人で推移してきた学生数が最近では1600人に増えた。これを機に寄宿舎の収容力を増やし、1室2人から個室にする。学内の設備も大学並みに整える」と、意欲を見せた。(坂本栄)

「茨城いいね」って思えるチームに 新代表が抱負 アストロプラネッツ

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大井川知事(中央)を表敬訪問する小谷野宗靖社長(左端)、秋川正佳選手(左から2人目)、山田大河投手(同4人目)、河西知之球団代表代理(右端)

知事を表敬訪問

5日の開幕戦を前に、プロ野球の独立リーグ、BCリーグに所属する「茨城アストロプラネッツ」(球団事務所・笠間市)新球団代表の小谷野宗靖社長らが2日、県庁を訪れ、大井川和彦知事を表敬訪問した。小谷野代表は「選手にチャレンジする土台をつくって、NPB(日本プロ野球)入りの夢をかなえるサポートをしてあげたい。野球だけじゃなく生活指導、感謝、気遣いも大事。私たちが見本になって『茨城いいね』って思えるチームになりたい」と抱負を語った。

同球団は昨年12月2日、茨城県民球団から、スポーツプロモーションやアスリート支援などを展開する「ケーダッシュセカンド」(東京都新宿区、小谷野社長)に事業譲渡された。

2日は小谷野新代表のほか、河西知之球団代表代理、秋川正佳選手、山田大河投手の4人が県庁を訪れた。

大井川知事と話す小谷野宗靖球団代表

大井川知事は「(茨城アストロプラネッツは)これまでにもNPBに選手を送り出している。(ドジャースの)大谷の活躍もあり、野球人気がある。茨城県のプロ球団として活躍を期待している。頑張って下さい」とエールを送った。

今季から加わった土浦市出身の秋川正佳選手(常総学院ー駒澤大学)は「茨城で生まれて野球に感謝し、野球を通して夢と希望を与えたい。フルスイング、長打力が持ち味でホームラン王、日本一を取り、NPB入りを目指す」と意気込みを語り、かすみがうら市出身の山田大河投手(霞ケ浦高校)は「すべての球種で勝負できるので最優秀防御率を獲得したい」と力を込めた。

今年は3月4日から14日まで宮古島でキャンプを行い、その後は笠間でオープン戦を行った。開幕戦は5日にノーブルホーム水戸で栃木ゴールデンブレーブスと対戦する。

茨城アストロプラネッツは、飲食、農業、福祉事業などを展開するアドバンフォースグループの茨城県民球団が2017年に創設。19年にBCリーグに参入し、5年連続で選手がNPBにドラフト指名されるなど実績を残した。一方コロナ禍の2020年以降、観客動員数が減少し、その後もコロナ前の水準に戻すことができず、昨年12月、事業譲渡された。(高橋浩一)