【コラム・坂本栄】元日付コラムで、トランプ氏の内政・外交には呆然(ぼうぜん)としていると述べ、一例として「…ベネズエラの大統領を力で排除すると公言している」と指摘しましたが、新年早々、彼はこの言を実行に移しました。関税・移民政策で自国を壊すだけでなく、国際秩序も壊す動きに出たことに愕然(がくぜん)としています。
ベネズエラを植民地化する米国
トランプ氏と取り巻き連の主張を整理すると、米軍特殊部隊を使ったベネズエラ大統領の拉致作戦は「麻薬組織のボスを米国内法で裁く」ということでした。ところが、実行後の彼らの発言により、大統領排除の本音が▽ベネズエラに埋蔵されている石油が欲しい▽同国への中国の影響力を排除したい―だったことが分かりました。
つまり、地下資源と国際政治上の利益を得るために、もっともらしい理屈を付け、ベネズエラの政治機構を壊したわけです。トランプ氏によると、これからは米国がベネズエラを「運営」するそうですから、帝国主義による植民地政策の定義そのものです。
トランプ氏の言動で問題なのは、ベネズエラにしろ、デンマーク領グリーンランドにしろ、隣国カナダにしろ、「あそこが欲しい」と言っている先が中小国あるいは準大国であることです。一方、対ロシアでは同国が主張するウクライナ領切り取りに配慮し、対中国では貿易上の駆け引きで譲歩しており、強く出る大国には恐る恐る対応しています。
こういった米国のゆがんだ姿(米国が第一、弱者に横暴、強者には弱腰)を見てくると、日本が米国に追従(ついしょう)するのはとても危険です。特に防衛分野(例えば核の傘の信頼性)では再考が必要でしょう。
共通するのは「言論封圧」誘惑
トランプ氏のベネズエラ侵攻問題で熱くなり、今回の話題に充てる紙幅が少なくなりました。1メディア人として、トランプ氏の言動を批判的に伝えるメディアに対し、彼が名誉毀損(きそん)訴訟=損害賠償請求=で圧力を加え、言論封圧に出ていることにも強い違和感を覚えています。多様な意見によって練り上げられる民主主義を壊してしまうからです。
トランプ氏は1カ月前、英公共放送BBCの番組で自分の演説が意図的に編集され、名誉を毀損されたと、その損害の賠償をBBCに求める裁判を起こしました。2回目の大統領選でバイデン氏に負けたとき、トランプ氏が選挙結果の無効化をはかり、議会を襲撃するよう支持者を扇動したという筋書きになっていたとの主張です。放送でも記事でも限られた時間やスペースに素材を収めます。彼の主張はこういった編集作業を否定するものであり(無知?)、これでは政治家失格です。
BBC提訴の新聞記事を読み、4~5年前、つくば市でも似たような訴訟が起きていたことを思い出しました。トランプ対BBCに比べるとマイナーですが、元市議が発行したミニ紙聞に掲載された市政批判記事は虚偽が多いと主張し、五十嵐市長が名誉毀損で訴えた事件です。
詳しくは「つくば市長の市民提訴 その顛末を検証する」(2022年2月7日掲載)を読んでいただくとして、審理途中で勝てないと思ったのか、1年数カ月後に訴訟を取り下げました。私は市長の所業を「法律をよく調べないで市民を訴える=市長としての適格性に疑問符」「市民による市政批判を萎縮させる=民主主義の基本である『言論の自由』を軽視」と総括しました。(経済ジャーナリスト)






最近のコメント