木曜日, 11月 6, 2025
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4億円超調達しアプリ販売 筑波大出身医師、在宅・遠隔医療で切り込む

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講演する伊藤社長=つくば市吾妻、スタートアップパーク

【相澤冬樹】医療相談アプリ「リーバー(LEBER)」を開発し、法人向けサービスに乗り出したアグリー(AGRIE、つくば市谷田部)社が3億円を目標にした資金調達で、今月末までに4億円超えを達成、売り上げ20億円を目指す戦略が整った。29日、つくばスタートアップパーク(同市吾妻)で開催のつくばイノベーション・リーダース・ミーティングの会合で、講演した伊藤俊一郎社長(40)自らが明らかにした。病院への外来と入院に大きく依存した現代日本の医療体制に、在宅・遠隔医療で切り込もうとする同社の有力な“メス”になりそうだ。

リーバーはスマホを操作して医師と相談するアプリ。ユーザーは「痛い」「かゆい」などの症状を伝え、必要に応じ写真などに撮って送付するチャットスタイルで、自動問診に答える。これを見た医師が最速3分で診断結果を伝え、最寄りの医療機関や適切な市販薬などをアドバイスする仕組み。24時間365日相談でき、110人以上の医師、45以上の診療科で対応するという。

同社ではこれまで、アプリ開発と共に実証実験を行ってきた。2018年の調査では、3052人の相談者中、77%が「不安が減った」と答え、医師による回答は88%が「分かりやすかった」とした。相談の結果、60%が「病院に行かずに済んだ」ということだ。

この結果から同社は、アプリの販売に乗り出すことを決め、まず法人向けサービスから着手、昨年から3億円を目標に資金調達に乗り出した。これまでに地元地銀のほか、東京の大手印刷会社、インターネット関連企業などが出資に応じ、今月末までに4億円を超えての達成見通しになった。

若いスマホ世代と子供たちターゲット

講演では、「病院に行くのが難しい高齢者はスマホが操作できないものが多い。どう対応するか」の質問があった。伊藤社長は「現段階では高齢者は想定していない。多種の治療薬を服用しているため、相談アプリでは合併症などが懸念される」と、主に若いスマホ世代とその子供たちの利用を想定しているという。

医療難民となりがちな高齢者に対しては、在宅医療の展開がカギになる。アグリー社などを束ねるメドアグリケアグループでは、県内外7拠点で訪問診療・看護、リハビリ、入院治療を行っている。伊藤社長は筑波大学出身の心臓外科医で、2015年6月につくばみらい市にメドアグリクリニックを開院。昨年12月にはかすみがうら市に有料老人ホームのアグリケアガーデンかすみがうらを開設するなどしている。

17年度にはつくば市の「つくばソサエティ(Society)5.0社会実装トライアル事業」に、18年度には内閣府「近未来技術等社会実装事業」に採択。医療系ベンチャーとして注目されている。「日本は病院数こそ世界一だが、医師数があまりに少なく、医師の過重労働や医療費の増大を招いている。病院依存の外来診療、入院治療と役割分担する第3、第4の医療が必要」が伊藤社長の持論。5年後には在宅医療と遠隔医療が大きなウエートを占めるだろうと予見し、起業や就労を待っている分野だと強調した。

つくばイノベーション・リーダース・ミーティングは、若者や学生などに「つくばの起業家と夢を語る」機会として設けるもので、29日の開催が第1回だった。次回開催は2月26日、筑波大学システム情報系、鈴木健嗣教授による「サイエンスの勝利」が予定されている。問い合わせは、つくばグローバル・イノベーション推進機構(電話029-869-8034)

起業を目指す学生らが伊藤さんを囲み記念撮影=同

神も仏も習合の節分 土浦・つくばに豆まき行事を拾う

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昨年2月4日催された土浦市木田余の宝積寺の節分会。「福は内」の掛け声で豪快に豆まきする(左から)荒鷲、高安、田子ノ浦親方

【相澤冬樹】2月3日は節分。元々は、新年を控えた大みそかの晩に鬼を追い払った追儺(ついな)の儀式に行き着くらしいが、神社は節分祭、お寺は節分会(せつぶんえ)と呼ぶ神仏習合、極めて日本的な年中行事だ。近在では笠間稲荷、成田山新勝寺で知られるように、神社とお寺が競うように豆まき行事を行う。土浦・つくばで、拾ってみると―。

宝積寺の高安、今年は2日に

笠間稲荷、成田山新勝寺は大相撲の力士や芸能人の豆まきで知られる。土浦・つくばでは、宝積寺(土浦市木田余)と筑波山神社(つくば市筑波)に力士がやってくる。宝積寺では2日午後3時から土浦市出身の関脇、高安はじめ田子ノ浦部屋の力士らが親方ともども勢ぞろいして豆をまくことになっている。筑波山神社は毎年10、11日に催す年越祭の中で豆まきを行っており、ことしは顔ぶれが決まっていないが10日に友綱部屋から力士がやってくるそうだ。

神社では千勝神社(つくば市泊崎)の節分祭祈祷(きとう)・豆まき神事が毎年にぎわいをみせる。3日午前11時からの特別祈祷に加え、午後3時からの餅つき神事をはさんで午後4時からと6時から神事が行われた後、特設の舞台から福豆とともに福物をまく。祈とうは事前申し込みを受け付け中。

小児の安全と成長を祈願する「子育て観音」として知られる慶龍寺(つくば市泉)は5日から春季大祈祷会の時期に入り、その最終日、11日午後1時から4時にかけ年男らによる3回の豆まきが行われる。境内には屋台が出てにぎわう。18日には筑波山大御堂(つくば市筑波)で追儺式、豆まきがあり、お札が配られる。

神社とお寺が相次ぎ豆まきをする土浦中央1丁目の節分

土浦では、神社、お寺相乗りの節分豆まきが3日夕、中央1丁目のまちかど蔵「野村」脇の路地で午後5時ごろから行われる。琴平神社と、隣接する不動院の豆まきで、時間をずらしてお餅やお菓子を放り投げるように大量にばらまく。桜橋交差点を過ぎて旧水戸街道を下ると、東崎の鷲神社へ向かう道と交差する四辻で「まかしょ」という節分行事が行われる。こちらは厄落としのお金をまくことで知られる。

土浦の古い町には氏神さまの神社が少なくない。大概が神職不在の無住だが、地元の氏子らが絶やさず節分を続けているところもある。小松の二十三夜尊(三夜様)は3日、お寺の住職に来てもらって護摩をたき、豆まき神事を行う神仏習合。祭神に月読尊(ツクヨミノミコト)をまつるが、日中は本地仏の勢至菩薩に化身するそうだ。ご祈祷を法泉寺(同市大岩田)住職に頼んで、午後5時ごろから豆まきが始まる。

筑波大お笑い集団 「放課後定期ライブ」展開中!

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ネタを披露する前川正樹さん

【山口和紀】筑波大学の学生サークル「つくばお笑い集団DONPAPA(ドンパッパ)」は、漫才やコントなど「お笑い」を中心に活動している。およそ月に1回のペースで「放課後ライブ」と称した定期ライブを行う。「つくばにお笑いの場を」―を理念に掲げ、お笑いの場が少ないつくばで、様々なお笑い企画を展開している。

メンバーは約15人。理系から文系まで幅広い学類のメンバーが集まる。2018年4月に結成され、今年で2年目になる。現代表は川合福太郎さん(社会学類2年)。

24日には「第6回放課後ライブ ガチンコお笑いライブ」が行われた。およそ30人の観客が集まり、8組のネタが披露された。このライブの企画・運営を担当した同団体の桑田和哉さん(生物学類1年)は「今回のライブから、私の発案で、サークル内で事前にオーディションを行い、披露するネタを厳選することにした。序盤から観客の皆さんに盛り上がってもらえて良かった」と話した。

今回のライブでは上級生だけではなく1年生も活躍した。桑田さんと根本遥隆さん(比較文科学類1年)のコンビ「禅問答」だ。2人のコントの設定はコンビニ店員と買い物客のやりとり。根本さんは「ネタのコンセプトとして、よくいる『迷惑な客』をテーマにしたかった」と話す。なぜか異常なまでにスナック菓子の「うまい棒」を買っていくお客さんと、それに対する店員のリズミカルなツッコミで、会場は大いに盛り上がった。桑田さんは「僕は飲食店でアルバイトをしている。レジの担当ではないが、迷惑な客とのやり取りをイメージしてみた」とネタ作りの経緯を語る。次回のネタは「飲食店で、お冷だけで長時間しのぐ客」をテーマにしたいと話した。

コンビ名「禅問答」の根本さん(左)と桑田さん。「うまい棒」を買いに来たお客役(左)に店員役がツッコミを入れる

この日の観客の多くは学生だったが社会人も来ていた。ライブを見に来た市内に住む社会人の男性は「代表の川合君を見に来た。よくDONPAPAのライブには来ている。若い子たちがどんな風に社会を見ているのかが分かって面白い」と話していた。

DONPAPAは同大の落語研究会のメンバーが「お笑いを通じて、サークルや専門科目の垣根を越えた大会を作りたい」と、14年にお笑いグランプリ「T-1グランプリ」を企画、開催したのが始まり。その後、全国の大学生にも参加を募って投稿型大喜利「お笑いモジュール期末試験」(現在は「全国統一大学生お笑いテスト」に名称変更)を開催したり、筑波大の学園祭で大喜利の参加型展示企画「つくば大喜利ランド」を開くなどしている。

◆次回ライブは3月15日。ライブハウスFROG(つくば市天久保1丁目6-7)で催される。DONPAPAのツイッターアカウントはこちら。ライブの告知もツイッターで行っている。定例ライブは月に1回程度。学外からの参加も歓迎。

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小田の小学生たちが短編映画制作 廃校や思い出たどる つくば

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映画を制作したチーム「おだのこ」と日原監督(右端)、まちづくり振興会の鈴木会長(左端)

【池田充雄】つくば市小田地域に住む4人の小学生が、廃校になるまで通っていた小学校や、地域の思い出深い場所などについて、映画監督の日原進太郎さんと共に映像化した短編映画が完成した。

「おもいでの町」と題する8分の映像作品。同市小田の旧小田小学校で25日、こども映像教室の完成作品上映会が開かれ、地域住民らに映像が披露された。

2018年3月末で廃校になった同小を地域のコミュニティの場として利活用するプロジェクトの一環で、小田地域まちづくり振興会(鈴木真人会長)が主催した。

こども映像教室に参加した4人の小学生は制作チーム名を「おだのこ」という。子どもたちは出演やナレーションのほか、助監督としても撮影の現場に携わった。

教室は昨年11月から月1回のペースで開催。第1回は「小田のまちの思い出」を作文に書き、第2回ではその作文を基に1日がかりで町のあちこちを撮影して歩いた。撮影した映像は日原監督が編集して仕上げた。

完成した作品は子どもたちも上映会で初めて見た。「小田はこういう場所だと紹介できる。これを見ていろんな人が来てくれたらうれしい」「もう1回撮りたい」「作文を考えるのが大変だった」「全部のシーンに自然がいっぱいで、みんなの力になったことがよく分かった」などと感想を語り合った。

登場するのは廃校になった母校や、校庭から見えた裏山、商店街のよく行く店や駐在所、サイクルロード、城跡に作った秘密基地、ザリガニを釣った小川など。そうした子どもたちの個人的な記憶が、映画を見た大人たちの記憶にも働き掛け、それぞれの思い出を語り始めるきっかけにもなった。

「皆さんの地域に対する強い思いを感じた。小田は数時間で歩いて回れる小さな町だが、住んでいる人には一つひとつがすごく大切な存在。たくさんの人のいろんな思い出が詰まっており、だからこそ守りたいとか、より良い形で残したいという気持ちが生まれる」と日原監督。「このような思いは、どの地域の人にも共感できるものだと思う。映像の特性は、人が目にしたものをそのまま残せることや、感情を伝えられること。この映画をお見せして、少しでも皆さんの心を動かすことができたらうれしい」と続けた。

作品は、2月29日、つくば文化会館アルスホール(同市吾妻)で最終審査会が開かれる今年の短編映画祭「第7回つくばショートムービーコンペティション」(筑波学院大など主催)に応募した。

映画を見終わって語り合う参加者

➡旧小田小学校の過去記事はこちら

つくば警察署が完成、3月2日開署 中央署と北署が統合

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つくば警察署の外観。27日報道関係者を対象にした内覧会が開かれ施設が公開された

【鈴木宏子】つくば市学園の森に建設されていたつくば警察署が完成し、3月2日開署する。つくば中央署(同市竹園)とつくば北署(北条)が統合され、市のほぼ中央に移転する。つくば警察署は敷地面積約2万平方メートルと県内の警察署で最大。初めて免震構造が採用され、災害に強く県南の拠点となる。

庁舎は鉄筋コンクリート造5階建て、延床面積約5600平方メートル。災害に備え、大型非常用発電機を備えているほか、敷地内の地下に約2万リットルのガソリンを備蓄する。約380台分の駐車スペース(来庁用は約180台)があり、災害時は駐車場の一部がヘリコプターの離発着場となる。

庁舎1階は中央ホールを囲んで、総合窓口と運転免許更新窓口などが設置され、さらに交通課などの執務スペースと相談窓口などが配置される。2階は刑事課、生活安全課の相談窓口と、さらに取調室18室が設置される。3階は留置施設で男性用が12室、女性用が6室配置。4階は会議室など、5階は道場。

庁舎1階ホール。ホールの両側に総合窓口や運転免許更新窓口などが設置される

庁舎は、県民が利用しやすい、災害に強く県南地域の拠点になる、警察活動を効率的・機能的にする―の3つのコンセプトで設計された。

署員は250~260人が配置される予定で、土浦署よりやや多い規模となる。建設費は約30億円。

中央署は解体、北署は分署に

県警本部の警察施設再編整備計画第2期計画に基づいて統合・新設された。北署は小規模であること、一つの市に二つの警察署があり市内を分断していたことから、統合後は行政や地域住民とより一体となった警察活動を推進する。

移転・開署後、中央署は建物を解体する。跡地の利活用は県庁が検討する。一方、北署は分署として維持し、運転免許の更新などが引き続きできるようにする。

同市の2019年の刑法犯認知件数は2125件(暫定値)と、水戸市を抜いて県内44市町村中、ワースト1位だった。人口当たりの犯罪率は土浦市、神栖市に次いでワースト3位。

「もうかる農業」で注目 つくばのワールドファームが農水大臣賞

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十数人のスタッフが一斉にキャベツを収獲する=24日、つくば市真瀬の畑

【鈴木宏子】つくば市谷田部に本社がある農業生産・加工業「ワールドファーム」(上野裕志社長)が、2019年度6次産業化アワード(6次産業化推進協議会主催)で最優秀の農水大臣賞を受賞することが決まった。2月20日、都内で表彰式が催される。「もうかる農業」のビジネスモデルを確立し、注目されている農業法人だ。

野菜を露地栽培し、カット野菜や冷凍野菜に加工して販売する「もうかる農業」を全国展開している。「アグリビジネスユートピア構想」を掲げて農業の担い手を積極的に育成し、耕作放棄地の活用や農産物の国産化などに取り組んでいることなどが評価された。

2000年に創業。現在、つくば市など県内のほか、秋田県から熊本県まで10県の14カ所に計約300ヘクタールの農地を借り受け、平均年齢30歳のスタッフ約70人が、主にキャベツ、ホウレンソウ、ゴボウ、コマツナの4品目を栽培している。農業と加工を組み合わせ、農作業の無駄を省いて効率を高め、収益をアップしたのがもうかる農業のビジネスモデルだ。

加工工場でキャベツをカットするスタッフ(ワールドファーム提供)

働き方は「晴耕雨工」

野菜を加工することで付加価値を高めたほか、農業は天候に左右されることから、晴れた日は農業をし、雨の日は工場で加工するなどして人件費の無駄を省いた。畑は工場から半径10~15キロ圏内とすることで輸送コストを削減。収獲する野菜は、従来なら大きさや見栄えが規格品の対象外のため廃棄していたものを加工用にすることでロスを無くすなど、作業を徹底的に効率化した。さらに畑を全国各地に確保してリスクを分散したり、産地間リレーをして年間を通して安定量が生産できるようにした。

スタッフは全員を正社員として雇用し、7~8年で一人前の担い手に育てる教育プログラムを導入している。非農家出身者がほとんどで、新規就農意欲が高い若者が全国から集まってくるという。

販路は、近年、加工野菜の需要が増え、さらにコンビニや外食産業、冷凍食品業界などが野菜の国産化を求めている背景から、現在の年間生産量約7000トンに対し18倍もの引き合いがあるという。

農業への参入を計画している企業と合弁会社をつくって、もうかる農業のビジネスモデルを展開したり、農業者として地域で独立した元スタッフと連携した事業も始まっており、今後も事業を拡大していく方針だ。

上野社長は「大変名誉な賞をいただいた。この賞に恥じないように全国でもっと担い手育成をしながら、若い人たちの就農を目指しながら、展開を頑張っていきたい」と話す。

ワールドファームのスタッフ(同社提供)

畑違いの植物工場建設へ 土浦の電気設備業が農業参入

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植物工場の栽培ベッドの写真を説明する植田社長㊧と工場長に就任予定の辻井康介さん=土浦市のTEC本社

【相澤冬樹】電気設備業のつくば電気通信(TEC、土浦市東若松町、植田利収社長)が、畑違いの農業分野に参入する。全額出資の子会社、ベジタブルテック社により、完全閉鎖型の最新植物工場を那珂市に建設する。工場は4月にも着工し、来春の完成時には日量1280キロのリーフレタスを生産・出荷する計画だ。

リーフレタスを毎日6400個

植物工場建設には事業費約13億円を投じる。すでに那珂市堤に5600平方メートルの用地を確保しており、約2000平方メートルの建屋を建設する。工場内には最大で20メートルの長さの「栽培ベッド」が横に16列、縦に8段設置される。培養液が循環し、人工照明が当てられるベッドで、レタスは種子から200グラムの大玉になるまで約40日かけて育てられる。

操業は年間365日、毎日15人程度の従業員で稼働させる。収穫などに人手が必要だが、光合成のための二酸化炭素の量やLED照明を当てる時間調整などは自動制御となる。「農家出身で農業の難しさは十分理解しているが、電気のコントロールなど技術力を武器に参入するならやっていけると思った」と植田社長。「耕作放棄地対策や食料の自給率向上など農村・農業の課題に少しずつ取り組んでいきたい」という。

同社によれば、1個200グラムの大型リーフレタスを生産する完全密閉型の植物工場としては関東初。最大日産6400個、1280キロ収穫する予定で、出荷先となる大手コンビニエンスストアなどと協議に入っている。ハウス園芸と異なり、無菌状態の環境を実現でき、季節を問わず安定供給できるのが強みということだ。

照明や空調などで消費電力がかさむため、夜間割引を活用する時間帯での稼働となるが、那珂市には立地後7年間電気料金の半額程度を交付する制度があり、コスト圧縮を図れることから進出を決めた。植田社長は「1万平方メートル規模で第2期を目論んでいるが、まずはこの工場に全力投入をし、ノウハウや経験を蓄積したうえで展開したい」と意気込んでいる。

TECは1991年設立で電気設備業を中心に業容を拡大し、ネットワークシステムや太陽光発電などから人材派遣、デジタルコンテンツの人材養成スクールなどに進出、2018年度には経産省の「地域未来牽引企業」に選定されている。ベジタブルテック社は18年の設立で、植物工場建設に向け異業種交流会などを通じ情報を収集してきた。今回は、完全閉鎖型植物工場で実績のある木田屋商店(浦安市)、工場プラントでは大気社(東京・新宿)の協力で詳細設計を詰めている。

「常陽新聞がなくなり市民が失ったもの」 茨城大生が土浦シンポで問いかけ 

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研究発表をする茨城大学の学生=土浦市中央の亀城プラザ

【崎山勝功】メディア論の村上信夫茨城大学人文社会学部教授が指導するゼミ主催のシンポジウムが25日、土浦市の亀城プラザで開かれた。土浦・つくばを本拠に活動した地域紙「常陽新聞」が2017年3月に事実上の廃刊をしてから3年を迎えるのを前に、「新聞廃刊のインパクト―常陽新聞がなくなり市民が失ったもの」を掲げての開催で、市民や報道関係者ら約40人が参加した。

集会の第1部では、学生たちが紙面を読み、読者らへの聞き取りを通じ行った調査研究が発表された。地域紙が廃刊することで報道の監視が及ばないエリアが生じることを「取材空白カテゴリー」と定義した上で、同紙が手厚く報じていた土浦など県南地域の①市政②事件事故③街ネタ-の3分野を中心に検証した。

市政では、地域紙の機能の一つに、全国紙や県紙があまり取り上げない市政の問題を取り上げる「報道機能補完」があるが、同紙廃刊で「市政の問題を市民が知る機会が減ったと考えられる」と言及した。

事件事故では、同紙では窃盗事件などの軽微な事件事故の記事が多い特徴を踏まえ「市民への注意喚起や犯罪の抑制効果につながると考えられる」と指摘した。

街ネタでは、土浦市立真鍋小のお花見集会や土浦駅前ハロウィンイベントなどを例に挙げ「地域のコミュニティー形成の要だった」と結論づけた。

パネル討論で話すゲストたち=同

「取材空白域」の出現を危惧

第2部のパネル討論では、朝日新聞東京本社編集局の伊藤宏地域報道部長代理が、水戸総局長時代に発生した八千代町での選挙違反事件に触れ、同社記者の取材に八千代町議経験者が「警察に呼ばれることは無かった。マスコミも取材に来ることも無く怖くなかった」と話し、茨城県内にも報道機関の監視の目が届かない「取材空白域」が出現している現状を明かした。

集会後取材に応じた村上教授は、常陽新聞廃刊をテーマに取り上げた理由を、地元の新聞廃刊を学問的に取り上げる必要を感じていたところに、昨年のゼミ生が「常陽新聞廃刊をテーマに卒業論文を書きたい」と申し出たのがきっかけに始まった。村上教授は、複数の常陽新聞関係者から「論文にしてもらえないか」という申し入れがあったと言い、今後も研究を続ける可能性を示唆した。

同ゼミ所属の3年生、久保葵さん(21)によると、19年5月ごろからテーマを決めて、同年6月から今年1月まで常陽新聞関係者5人を含む計32人にヒアリングを実施したという。久保さんは、常陽新聞廃刊により行政監視機能や防犯機能、地域コミュニティー形成機能が失われる危機感を研究発表で提示した上で、「新聞が無くなって本当に困らなかったのか、訴えたくて土浦でシンポジウムをした」と語った。

➡常陽新聞廃刊に関わる過去記事はこちら

生誕100年の李香蘭から新民謡まで 2日に新春つくばおどり

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李香蘭の「紅い睡蓮」の踊りを稽古する出演者=つくば市天久保

【橋立多美】人生100年時代を元気に踊って長生きしよう―をテーマにした「新春つくばおどり」が2月2日、つくば市小野崎のホテルグランド東雲で開催される。

地元の名コンビが手がける

さまざまな踊り手の共演が楽しめる集いを目標に、昨年発足した「つくばおどり実行委員会」が主催。同市天久保の舞踊スクール、国際美学院学院長で実行委員長の恩田鳳昇さん(88)が舞台制作と振り付けを担当。同市在住の脚本家で副委員長の冠木新市さん(68)が企画・構成した。

つくばおどり実行委員会の恩田鳳昇委員長㊧と副委員長の冠木新市さん=同

幕開けは「李香蘭誕生百年を舞う」で、今年生誕100年(1920年2月12日満州生まれ)の歌姫、李香蘭こと山口淑子の代表曲「支那の夜」「蘇州夜曲」など11曲を、中国舞踊を取り入れた振り付けで17人が踊る。

第二景「おんなの朧(おぼろ)月」は、俳優松平健の新曲「マツケン・アスレチカ」と同市出身の演歌歌手、北条きよ美さんが歌う「きよ美の元気節」が繰り広げる人生賛歌のステージ。

続く第三景「夢二憂愁」は、人生100年を全うするには平和であることが必要との考えで構成された。太平洋戦争末期、旧陸軍の特攻基地が置かれた知覧を舞台にした曲「知覧の母」を演歌歌手、黒岩安紀子さんが熱唱。また竹下夢二をモチーフにした曲「夢二憂愁」も登場して歌と踊りで独特の憂愁と叙情を表現する。

最後の第四景「春夏秋冬花をどり」は民謡が流行し歌い継がれるのは、戦後75年平和が続いているからと構成された。同市北条を舞台とした新民謡「筑波節」や「水戸春秋」「長生きよさこい」などの民謡と踊りが披露され、民謡グループが華やかに踊って終演となる。

恩田鳳昇さんは、日本舞踊はもとより太極拳やフラメンコも教えるマルチな舞踊家。「格式を重んじつつ、振り付けと衣装は枠にとらわれず自由にイメージした」と話した。

つくば、土浦地域のまちおこしを目的に冠木さんが立ち上げた演劇集団「桜川芸者学校」の出演者、ぼたんさんは今回のつくばおどりにも出演する。「恩田先生の教え『心を込めて踊る』を実践したい。舞台は何度経験しても体が震えます」と、稽古の汗を拭いながら笑顔で話してくれた。

チケットは完売も続演決定

冠木さんは「中国で4000年前から続く健身気功やフラメンコ、太極拳とコラボした。つくばおどりは多彩な舞踊がつながる舞台。参加希望の舞踊家や舞踊教室はぜひ連絡を」と話す。また新春つくばおどりはすでに満席となり、年内に次回つくばおどりを開催するという。

問い合わせは、同実行委員会(Eメール:casatakenoko@meil2.accsnet.ne.jp)まで。

土浦駅周辺で働く若い人集まって 生涯学習センターが呼びかけ交流会 

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付箋を貼って参加者は活発に意見を取り交わした=プレイアトレ土浦3階「Lap's」

【伊藤悦子】茨城県県南生涯学習センター(土浦市大和町)が昨年11月から、多業種交流会「はたらくみんなのぷらっとフォーム」をスタートさせた。土浦駅周辺で働く若い人たちに向けた若手プロジェクト事業。29日のイベント開催を前に、同センターの社会教育推進員廣木悠介さん、杉浦彰子さんに話を聞いた。

29日は「読書」をテーマにプレイアトレで

廣木さんによれば、「土浦駅(土浦市有明町)にプレイアトレができ、自転車の街として土浦が活性化してきた。しかしオープンから1年未満。プレイアトレで働く若い人と生涯学習センターとの交流が今までなかった」という。そこで、「さまざまなイベントをしている生涯学習センターとプレイアトレとが交流して、協力関係を築いていけないか」と考えたそうだ。

11月に1回目を企画した。杉浦さんは「プレイアトレをはじめ、土浦駅周辺で働く20代30代の若い人たちが、仕事の悩みやキャリアの悩みなど気軽に相談し合える場所が定期的に開かれるように」という思いがあった。仕事の休憩時間など、ちょっと空いた時間にでも立ち寄って欲しいという思いから「ぷらっと」という言葉を入れた。参加者は15人。それぞれの悩みや意見を書いた付箋(ふせん)を貼り、それを解決する提案を書いた付箋を貼っていくなどして意見を交換した。

若い人たちの思いや意見が書かれたコミュニケーションカードの数々=同

実は杉浦さんは「皆さんすぐに帰ってしまうのでは」と心配したそうだ。しかしふたを開けてみると、1人1時間ほどかけて、やりたいことや日頃の思いを話すなど、思った以上に活発な交流会になったという。

「図書館や生涯学習センターで勉強している高校生たちと一緒に何かやりたい」など前向きな意見がたくさんでたそうだ。一方プレイアトレ土浦で働く若い人たちの悩みもわかった。市外や県外から移り住んできた人も多く、土浦市民とのネットワークがほとんどない。そのため市民に「土浦駅に足を運んでほしい、駅で楽しく過ごしてほしい」という思いを伝える手段がなく、模索しているところだという。

「今の若い人たちは、自分たちの親が歩んできた人生は保証されない時代にいる。だからこそこれからは自分で切り開いていかなくてはならない。交流会は、個人的な悩みや思いを気楽に相談したり話したりできる場にしていきたい」と杉浦さん。今後は駅前のいろいろな施設と一緒に、講座やコラボレーションもできるのではと考えている。

第2回の交流会は29日午後3時から開催する。テーマは「新春 新しい出会いと読書」。プレイアトレ内にある天狼院書店とのコラボ企画で、第1回の参加者から生まれたアイデアだ。会場はプレイアトレ土浦3階「Lap’s(ラップス)」。

おすすめ本のアドバイスや読書好きと読書嫌いのトークショーもあり、本好きの人との出会いが期待できる。若者はもちろん、年齢を問わず参加できるそうだ。前半の交流コーナーでは配りたいチラシや名刺を持って気楽に立ち寄って欲しいという。事前申し込みは不要で、いつ来てもいつ帰ってもかまわない。

2月8日には親子で楽しめるイベント企画

第1回から生まれた企画はもう一つある。2月8日午前9時40分から、生涯学習センターで開く「子どもの未来を考えるネットワークフォーラム」との同時に行われる「親子で楽しめるイベント」企画だ。

「土浦駅前クイズラリー」は土浦駅近くの生涯学習センター、土浦市立図書館、土浦駅STATION LOBBY(ステーションロビー)―3施設に設置したクイズに答えて景品をもらう企画。このほかミニコンサートや筑波大学生グループによる「世界の17の目標SDGs(持続可能な開発目標)を知ろう」といったイベントがエントランスで開催される。

問い合わせは県県南生涯学習センター(電話029-826-1101)

➡多業種交流会をスタートさせた県県南生涯学習センターの杉浦彰子さんを招いたVチャンネルいばらきNEWSつくばチャンネルはこちら

博物館が先陣切る「土浦ひなまつり」 2月からは商店街でも

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「博物館の雛人形」展を案内する関口満さん=土浦市博物館

【伊藤悦子】江戸時代から大正時代に至る3組のひな人形を並べる土浦市博物館(土浦市中央1丁目)の展示を皮切りに、城下町・土浦におひなさまの季節がやってきた。2月4日からは旧市街の商店街を中心に「土浦のひなまつり」が始まる。関係者に話を聞いた。

立春の2月4日から節句の3月3日まで

土浦のひなまつりは、商家などの残る古くからのひな人形やつるしびな、今年の干支「子(ね)」をテーマにした人形、かすみ人形など、様々なおひなさまを楽しむことができる。土浦まちかど蔵(同市中央1丁目)を中心に周辺の店舗128軒に飾られる予定で、昨年より8軒多くなっているそうだ。

まつりの発案者が土浦市観光協会の主任浅川善信さん。2~3月は梅まつりなどで茨城県を訪れる観光客が増える時期だが、土浦は入込客が少なく、寄りたくなるようなイベントが何かないかと考えたのがきっかけだという。

観光協会の浅川善信さん=まちかど蔵

土浦旧市街では、ひなまつりシーズンにつるしびなやひな人形を飾る店舗がすでにあったため、商家に残る古いおひなさまも一緒に展示しようと提案した。2004年に開催した第1回「ひなまつり」のために印刷したポスターは、わずか3枚だったという。地道な活動が実り、おひなさま目当ての来街者も増え、16回目を迎える今年は500枚ものポスターで誘客を図る。

まちかど蔵に展示するひな人形は、江戸時代の人形師、仲秀英(なか・しゅうえい)が作った明治時代のもの。数年前、埼玉県川越市の学芸員が人形を見たときに「もしかしたら貴重なひな人形では? 鑑定をしたい」との申し出があったという。玩具専門の鑑定士が見せた結果、3代目秀英の作と判明した。土浦は湿度が高めだが、人形の保存状態は良好だったそうだ。

浅川さんは「土浦のひなまつりは2月後半からは混むので、前半にいらしていただくとゆっくり見学できます」と来場を呼び掛けている。期間中はスタンプラリーや、和服来場者へのサービスなども実施される。

会期は3月3日まで。問い合わせは土浦市観光協会(電話029-824-2810)

3組並ぶ時代ごとのひな人形

土浦市博物館のひな人形展には、江戸時代後期の「古今(こきん)びな」、明治時代以降の「内裏(だいり)びな」、明治時代から大正時代の「享保(きょうほ)びな」3組が並ぶ。

同館の学芸員、関口満さんに話を聞くと、古今びなは30年以上前、前身の郷土資料館時代からすでに所蔵されていたという。「誰から寄贈されたかなど来歴は不明だが、かなり立派なおひなさま。市内でも1、2番の大きな商家にあったものでは」と話す。

江戸時代、豪商の間でひな人形を飾ることが流行した。過熱して人形がどんどん大きくなっていったため、幕府から大きさを制限するお触れがでたこともあるそうだ。その影響か、同館のひな人形も高さ30センチと大きめ。さらに「玉眼」といって目にガラスが入っているなど細部にもこだわって作られている。

関口さんは「なかなかお目にかかることのできない、一世を風靡(ふうび)した江戸時代のおひなさまに一目会いに来てほしい。時代ごとのひな人形の違いにも注目してほし」と来館を呼びかけている。

「博物館のひな人形展」は3月8日まで。入館料(一般105円、小中高生50円)がかかる。問い合わせは同博物館(電話029-824-2928)

 

つくばR8地域会議「成果報告会」2月開催で参加者募集

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「つくばR8地域会議成果報告会」向けチラシの一部

つくば市は、2月11日に市役所コミュニティ棟で開く「つくばR8地域活性化プランコンペティション2019」採択プラン実証事業の成果報告と周辺市街地活性化協議会のメンバーによるパネルディスカッションの参加申し込みを受け付けている。

R8地域は周辺地区にある北条、小田、大曽根、吉沼、上郷、栄、谷田部、高見原の8カ所の旧市街地。市はこれらを対象に今年度、活性化プランを公募し、採択された4団体が実証事業に取り組んできた。その成果報告に合わせ、パネルディスカッションではそれぞれの市街地を盛り上げるために各協議会等で行ってきた活動について議論する。各市街地には今年度、地域住民等が主体となって地域振興のアイデアを自ら実現していくための市街地活性化協議会が組織されている。

4団体は▽わわわやたべや~からくり伊賀七と進める市街地活性化運動(わわわやたべや町民会議)▽「小田山を芝桜でキレイに飾ろう」プロジェクト(小田地域まちづくり振興会)▽R8ロゲイニング「魅力の発見と発信、賑わいの創出、マップづくりとまち歩き」(筑波大学芸術系環境デザイン領域)▽旅する大八車と小さなパレード(studio weekend)。

開催は11日午後1時30分からで、2月4日まで、参加希望者の事前申し込みを受け付けている。定員100人程度、申し込みは専用申込フォームで、つくばR8地域会議運営事務局(電話は029-257-1234、メールはtsukuba-r8@mikami-web.co.jp)まで。

⇒つくばR8に関する既報はこちら

原木シイタケづくりに大はしゃぎ つくばのNPO法人が体験教室

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親子で原木にシイタケの菌を植え込む作業=つくば市中野

【大山茂】シイタケのできる過程を学んでもらおうと、つくば市のNPO法人「里山再生と食の安全を考える会」は19日、同市内のなかのきのこ園で親子を対象に原木となるクヌギなどにシイタケ菌を植え付ける教室を開催した。

この日は市内外から親子連れ約100人が参加。主催者側が用意した長さ1メートル前後のクヌギ200本にドリルで穴を空けることから作業がスタートし、駒と呼ばれるシイタケ菌の入った1センチ四方のカプセルを埋め込んだ。子供たちはスタッフに手を添えられながら電気ドリルを手にし、真剣な表情で穴あけに挑戦。1本の原木に20~30個の穴を空けると、今度はその穴に菌を埋め込んだ。

種菌は駒菌と呼ばれ、あらかじめ培養された菌糸が直系1センチほどの円錐形に加工されている。簡単に穴に埋め込むことができるため、子供たちは大はしゃぎ。幾つもの駒菌を手にしては作業に興じていた。

小学生2人を連れた市内の30代の主婦は「子供はシイタケをスーパーでしか見たことがないので、どういう風に栽培されているのかを知って欲しかった。私も知らないことばかりで、勉強になった」と楽しそうに話した。

お楽しみは1年後

植菌した榾木(ほだぎ)には各自が名前を書いたプレートを取り付け、同きのこ園で水やりなどをしながら管理してもらうという。シイタケが発芽する1年後をめどに再び現地を訪れ、記念に持ち帰ることになる。

参加者らはこの後、従業員らの植菌作業を見学したり、園内の施設でシイタケ狩りを体験。昼にはJAつくば谷田部産直部会のスタッフによるシイタケカレーがふるまわれ、園内の食堂で楽しいひとときを過ごした。

里山再生と食の安全を考える会は、市内の平地林の保全活動を進めており、定期的に集まっては下草を刈ったり、休耕地を借りて草花や野菜を植えたりしている。

「違いの価値観を理解する」 シェイニー校長、水戸へ出前授業

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熱弁をふるうシェイニーさん=水戸市有賀町、妻里市民センター

【相澤冬樹】価値観の違いより、違いの価値観を理解する方が重要かもしれない―。つくばインターナショナルスクール(TIS、つくば市上郷)校長のシェイニー・クロフォードさんが19日、水戸市内へ出前授業、20年を超す日本滞在で身につけた日本語を巧みに操り、国際理解を進めるアプローチ法を体験的に説いた。

シェイニーさんはこの日、同市有賀町の妻里市民センターで開催の「みと好文カレッジ」の講師に招かれた。1995年に来日し、福島県田島町(現南会津町)で足かけ6年間英語教師を務め、2002年からはつくば市で日本語の勉強や翻訳の仕事など、英語・日本語のコミュニケーションに携わってきた。1992年設立のTISは英語を話す子供たちのために、英語をベースとした教育を進めている学校で、2008年から運営に関わり、11年から校長を務めている。

「ちゃんとさ」が壁になる

講座は「今、つくばがおもしろい」をテーマにした連続講演会の2回目で、双方向のSNSツールを使うなどしてユーモアたっぷりに話を進めた。「つくばでは人口統計が地区別に出るのだけど、おもしろいのは『うち外国人』っていう項目まで集計されているところ」など達者な日本語で会場を和ませた。

シェイニーさんの母国、カナダは外国人比率が20%を超え、カナダ人と外国人を区別しなくなっている。外国人とは何か、カナダ以外で生まれた人か、両親が外国人か、パスポートの国籍か、定義が意味をなさなくなっているからだ。ところが日本で一段と国際化が進んでいるはずのつくばでも、「うち外国人」の感覚からは抜け出せずにいる。そんな環境で「いきなり友達になる」のはとても難しい。

大学などで学生同士が交流するにはサークルに入るのが近道だが、実際に「外国人」が入会・入部する例は極めて少ない。「日本人はものごとを皆で『ちゃんと』考えてから行動をする考えがしみこんでいて、この『ちゃんとさ』が壁になっている」という見方を示した。

 

シェイニーさんの身についている流儀は正確さよりスピード、「とにかく早くやるのが大事だ」という考え方で、文化の違いが見いだされる。これが対立して時にケンカになってしまう。友達をつくるのに1年もかかるのは大変に思えた。

いわば外側に殻をもつ卵が日本人で、自分の中に芯をつくる桃が外国人。卵と桃のどちらが正しいということではなく、「違い」に価値があるということを学んだ。これを理解しないと異文化同士で友達を作るのは難しいし、「実は、日本人同士でも友達になれない」と結んだ。

会場の女性からは「興味のあったインターナショナルスクールの話は聞けなかったけど、違いの価値観という見方は自分にはなく、とてもおもしろいと思った」という感想が聞けた。

「土浦」「パリ」「バリ」の3テーマ 吉田正雄の世界展Ⅱが開幕

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テーマ「バリ」で作品に見入る来場者=土浦市民ギャラリー

【伊藤悦子】二科展をメーンに土浦で長く活躍した画家、吉田正雄の作品展が19日から、土浦市大和町の市民ギャラリー(アルカス土浦1階)で始まった。没後翌年の1999年開催された「吉田正雄の世界展」から20年ぶりとなる「世界展Ⅱ」は、「土浦とパリ、バリ」がテーマ。油彩や版画の絵画作品をはじめ、木彫や彫刻作品など全部で63点で構成する。

吉田の子息で、ヨシダ・アート(土浦市永国)代表取締役の吉田薫さんによると「父の友人や後輩から、また吉田正雄展ができないかという声が多く寄せられていたが、展覧会を開くのはなかなか大変なこと。土浦に市民ギャラリーができたことから2回目の『世界展』を開くことにした」。20年も経つと、土浦生まれの偉大な画家を知らない人も増えており、「この機会に土浦の方に知っていただきたい」という思いもあったという。

父の肖像を前に吉田薫さん=同

吉田正雄(1935-1998)は土浦市大手町生まれの芸術家。1954年に19歳で二科展に全国最年少で初入選。1961年にはフランスに渡りアカデミーランソン・アトリエ17に入学し、イギリス出身の画家スタンレーウィリアム・ヘイター氏に学んだ。当時、フランスに行くのは大変なことで「渡仏前日は町内をあげて壮行会を開いた」そうだ。1993年にバリ島へスキューバダイビングに行った際、地元の彫刻集団に影響を受け、2カ月に一度はバリの工房に通って作品を作り続けた。

今回、作品は「土浦」「パリ」「バリ」の3テーマに分けて展示した。「3テーマの作品の違いなどもみていただきたい」と薫さん。見どころは、パリのコーナー天井に飾られた「オンディーヌの天井画」。「天井画として父が描いたものだが、今まで一度も天井に展示したことがなかった。天井に飾られているのを見たいという思いがあった。作品自体はかなり重みがあるため、インクジェットでレプリカを作成することで、今回初めて天井画として展示することができた」と話す。

土浦市の87歳の男性は「作品がどれも立派でとにかく驚きです。すばらしいの一言」と作品に見入っていた。龍ケ崎市から訪れた19歳の男性は「独特の色使いが本当にすごい。彫刻も迫力がある」と感想を話していた。

ナショナルサイクルルートをセグウェイで つくば りんりんロードを初走行

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セグウェイツアーの様子。旧小田駅跡を通過する

【池田充雄】国のナショナルサイクルルートに認定された「つくば霞ケ浦りんりんロード」で18日、搭乗型移動支援ロボット「セグウェイ」の体験ツアー(つくば市主催)が行われた。セグウェイの公道実証実験はこれまで、つくば市の中心市街地や谷田部地区で行われており、りんりんロードの活用は今回が初めてとなった。

今回の会場は、つくば市小田の小田城跡歴史ひろば周辺。各回定員6人で3回のツアーが開かれた。1回の所要時間は90分ほどで、前半は広場の中で基本操作などの講習を行った。

短時間の練習でだれもが乗れるようになる

セグウェイはアクセルやブレーキがなく、乗った人の体重移動を本体が検知し、電動で走行する。今回は公道を走るため自動車かオートバイの免許が必要だが、基本的にはだれでも簡単に操作できるという。

講習では乗り降りの仕方から直進と停止、方向転換、ジグザグ走行やスラローム走行などを練習した後、いよいよツアーに出発。広場を後にしてりんりんロードに入り、直線の道を一列になって1キロほど進む。街中を抜けて水田地帯に入ると一気に眺望が開け、行く手に筑波山が間近に眺められた。

鹿嶋市から来た寺田幸代さん(36)は「もっと難しいかと思ったが簡単に乗れて、すごく楽しかった。もっと遠くまで乗れたらよかったのに」と名残惜しそう。一緒に参加した大川文恵さん(37)も「上り坂は楽々で、下り坂も怖くなかった。インストラクターの教え方が上手で、乗れば乗るほど慣れてきた」と楽しんだ。

「馬に乗るときの感覚と似ている」と話したのは、甲冑武者姿で参加した鴨井宏児さん(48)。同会場ではこの日、地域イベント「第32回小田地区どんど焼きと小田城冬の陣」が開かれ、鴨井さんらはステージで演武を披露した。同イベントには市民ら約2000人が集まり、さまざまな催しで寒中の一日を楽しんだ。

筑波山をバックに記念写真を撮る参加者

異例の真冬開花 世界で最も大きな花 筑波実験植物園

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開花したショクダイオオコンニャク。18日夜時点の高さは2メートル32センチ=筑波実験植物園の温室

【田中めぐみ】世界で最も大きな花の一つ、ショクダイオオコンニャクが18日、国立科学博物館筑波実験植物園(つくば市天久保)の温室で開花した。これまで同園では5~8月に開花しており、真冬の開花は国内で初めて。開花期間は短く、咲いてから3日目にはしおれてしまう。

同園での開花は5度目となる。同じ株が連続して花を咲かせるのも国内初で、世界でも極めてまれな事例だという。

18日午後9時半現在、高さ2メートル32センチ、直径86センチでまだ開いている途中だという。虫を呼び寄せて受粉するため、動物の死骸に似た独特の臭いを放っている。

栽培計画担当の小林弘美さんは「ショクダイオオコンニャクが機嫌よく育つように皆で考え育ててきた。職員総出で手塩にかけて世話をしたことが開花の要因と考えている。しかし、開花スイッチがどこで入るかはまだ分かっていない」と話す。

花の直径を測る小林さん

絶滅危惧種で、インドネシア、スマトラ島の限られた地域にしか生えないサトイモ科の植物。同園では2006年に小石川植物園(東京都文京区)から株を譲り受けて栽培を始めた。02年から2年ごとに花を咲かせ、7年おきや十数年おきにしか咲かないとされていた定説を覆した。

今回は、昨年11月6日に67キロのコンニャクイモを定植。12月16日に地表に芽が出て、年明けの1月2日に花芽であることを確認した。18日、日没とともに花が開き始めた。

できるだけ多くの人に見てもらいたいと同園は19日から21日まで開館時間を延長し、午前8時半から午後5時まで(入園は午後4時半まで)開館する。開花までの成長の様子は同園ホームページで公開している。開花の様子のライブ配信も行う。入園料は一般320円。問い合わせは029-851-5159(同園)

➡筑波実験植物園の過去記事はこちら

「不況型」色濃く 2019年県内倒産件数 5年ぶり140件台

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帝国データバンク水戸支店のデータより作成

【山崎実】民間調査機関、帝国データバンク水戸支店(水戸市)によると、2019年の県内倒産件数は140件(負債総額は170億3700万円)で、前年比18件(14.8%)増。このうち県南地域の倒産件数は56件(構成比40%)、負債額は50億9400万円(同29.9%)と件数、負債額いずれも県内で最多だった。

業種別ではサービス業が33件(構成比23.6%)でトップ、次いで建設、小売業が各30件(同21.4%)と続く。主因別では販売不振が131件と実に93.6%を占め、不況型倒産を色濃くにじませている。

負債額では、1億円未満の倒産が101件と全体の72.1%に上り、裾野が大企業より中小企業に及んでいることを裏付けている。

年間倒産件数が140件台になったのは5年ぶり。米中貿易摩擦問題が、県内の大手製造業の景況感浮揚の足かせになったのを始め、台風19号などで甚大な被害を受けた影響で資金繰りの悪化を誘発した。

さらには一部企業によっては事業継承に問題を抱え、休業や廃業に追い込まれたことも考えられる。

今後の見通しについて同水戸支店では「深刻な人手不足による人件費の高騰、消費税増税による消費不振などの不透明感、米中貿易摩擦などの海外リスクが県内経済に及ぼす悪影響が懸念され、引き続き倒産動向に注視していく必要がある」としている。

伝統の百人一首大会で熱戦 筑波高校

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身を乗り出して札を取るなど熱戦が展開されたクラス対抗百人一首競技大会=17日、県立筑波高校紫峰館

【鈴木宏子】県立筑波高校(つくば市北条、国府田稔校長、生徒数240人)で17日、年始め恒例の「百人一首大会」が催され、クラス代表選手による競技大会や、全校生徒が参加したかるた取りなど熱戦が繰り広げられた。

同高は筑波山麓に立地する。筑波山には「筑波嶺の峰より落つるみなの川恋ぞつもりて淵となりぬる」(陽成院)という百人一首の歌があることにちなんで、1972年から大会が始まった。今年で48回目になる伝統行事だ。

同高ではこの日の大会に向け前年の秋から国語の授業で百人一首を勉強したり、かるた取りの練習などを重ねてきた。

大会には筑波大学歌留多部の学生や、地元、秀峰筑波義務教育学校の児童らも参加した。はかま姿で登場した同大歌留多部の学生らは全校生徒の前で競技かるたの実演を披露し大会を盛り上げた。

クラス対抗の競技大会は代表選手3人が1組となって1~3年生12チームが参加した。筑波大歌留多部員による本格的な百人一首の読み上げに耳を澄まし、互いに身を乗り出しながら取り札の数を競った。

競技大会決勝では3年生と2年生のチームが対戦。接戦の末、2年生の嶺田耕助さん(16)、吉田友希さん(17)、熊野修吾さん(17)3人のチームが3年生を逆転で破り初優勝を果たした。

3人は1年生だった昨年も決勝に進出したが準優勝だった。嶺田さんは「去年は決勝で負けたので、リベンジを果たせてうれしい」と語り、吉田さんは「人生で百人一首に接する機会はなかなか無いと思うので地元の文化に触れる機会になる」などと話していた。

GIGAスクール始動 萩生田文科相がつくばの学校視察

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ロボットが図面上の道を通って早く正確にゴールするにはどうしたらいいかのプログラミングを考える4年生の授業を視察する萩生田文科相(中央)=16日、つくば市みどりの中央、市立みどりの学園義務教育学校

【鈴木宏子】小学校のプログラミング教育が2020年度から必修となり、すべての小中学校の児童・生徒に1人1台のコンピューターを配備する文科省の「GIGA(ギガ)スクール構想」がスタートするのを前に、「学校ICT(情報通信技術)活用フォーラム」(同省主催)が開かれ、萩生田光一文科相が16日、全国でも先進事例のつくば市立みどりの学園義務教育学校(毛利靖校長、児童・生徒数1004人)のコンピューターを使った授業を視察した。

フォーラムは15~17日、京都と東京で開催され、併せて先進的なICT教育に取り組む全国の8校で公開授業が実施されている。萩生田文科相は8校のうち、みどりの学園1カ所を視察した。16日催された同学園の公開授業には全国の都道府県や市町村教育委員会のICT担当者ら約300人が参加した。

萩生田文科相は、2020年度中に全国すべての小中高校などに高速大容量の通信ネットワークを整備し、さらに23年度まで4年間で全小中学校の児童・生徒に1人1台のコンピューター端末を配備する計画を説明し、「ギガスクール構想推進本部を設置し文部科学省を挙げて取り組む。ICTを使うことによって授業が劇的に変わっていく。走ってくれる自治体を全面的に応援するが、どうしていいか分からない自治体は相談してほしい」などとあいさつした。

その後、各教室を回り授業を視察。小型のロボットと英語で会話する1年生の授業や、お話をもとにアニメをつくる2年生の授業、一定の面積の図形の形をさまざまに変形していく8年生の授業など、コンピューターを使った授業の様子を見て回った。

学校の中庭でタブレット端末を操作しドローンを飛ばす6年生の授業=同

国のギガスクール構想を受けて、つくば市も2020年度中に全小中学校に高速大容量の通信ネットワークを整備し、23年度までに児童・生徒1人1台のコンピューター端末を用意する計画だ。今後1人1台のコンピューターを用いて、一人ひとりに応じた学びや、探究したり協働する学び、実社会での課題解決に生かすSTEAM(スティーム)教育の実施などが期待されている。さらに授業の準備や児童・生徒の成績処理など教員の負担軽減、学校の働き方改革も期待されている。