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筑波実験植物園 -検索結果
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「戸籍」作り14年間調査 シジュウカラの暮らし知る企画展 筑波実験植物園
国立科学博物館 筑波実験植物園(つくば市天久保、遊川知久園長)で5日から、企画展「シジュウカラの社会ー鳥の眼で見る植物園」が始まった。同園内のシジュウカラの暮らしをつぶさに知ることができる展示で、餌となる昆虫や天敵の蛇、タカなど、園内に生息する多様な生き物との関係を通じて、同植物園を新たな視点で見るきっかけとなる展示でもある。園内で14年間、調査が続けられてきた。企画を担当する同館の濱尾章二名誉研究員は「2012年から続けてきた研究の成果を見ていただきたい」と思いを込める。
ひなから生涯を追う
シジュウカラは体長14センチ、体重14グラムほどの大きさ。手のひらに乗るくらいの小型の鳥で、市街地、住宅地など全国各地で見ることができる。近年の研究では、異なる意味を持つ鳴き声を⽂法に従って組み合わせ、⽂章をつくりコミュニケーションをとっていることが知られている。
同園では濱尾さんが中心となり、2012年から園内に30個の巣箱を設置しシジュウカラの観察をスタートさせた。現在は36個の巣箱を約50メートル間隔で設置し、つがいから生まれたひなを1羽ずつ把握しながら「戸籍」をつくり、それぞれの成長の過程と共に、次の世代を生み出す様子を観察し続けている。
死別により伴侶変える
シジュウカラは、オスとメスがつがいとなり子育てをする「一夫一妻」。他の鳥類でも見られる繁殖形態で、オスとメスが協力して巣を作り、抱卵、餌やり、ひなの世話などをする。主に3月から5月にかけて繁殖期を迎え、中には年に2回、繁殖するつがいもいる。一度の産卵で8から10個の卵を産む。ひなは40日ほどで巣立っていく。
これまでの研究でわかったのは、「一夫一妻」のシジュウカラが伴侶を変えることがあることだと濱尾さんはいう。生まれてから生育の過程で毎年半数の個体が、天敵の蛇やタカに襲われるなどして死んでいく中で、死別によって相手を変えていることがわかったのだと話す。これまで観測してきた中で最も長く生きた個体は7年だった。大半が、卵や孵化して間もなく、巣の中で天敵に食われるなどして1歳未満で死んでしまう。近年は、増え続けるアライグマも天敵の一つに加わった。
園内に二つの「名家」
こうした過酷な環境を生き抜く中で、4代にわたり、95羽を巣立たせた2つの家族がいる。約8年前から継続して観察している植物園が誇る「名家」だ。2024年には両家の間でつがいが生まれ、親族関係になったことが確認されている。
濱尾さんは、「シジュウカラは身近なところにたくさんいて、非常に調べやすいのが特徴。特に巣箱を使うと、生態を細かく観察できる。見るほどに、つがい関係や親子関係などを追跡できるのも魅力」と話す。また「今回は、植物園で開催する鳥の展示。鳥が好きな方だけでなく、植物に関心がある方、研究に関心がある方などにも見てもらえるような展示にした。展示をきっかけに、お子さんにも研究の面白さを知ってもらいたい」と思いを込める。
教育棟と研修展示館1階、2階の3会場で企画展が開かれている。教育棟では植物園での14年間にわたるシジュウカラ研究の成果を記したパネル展、研修展示館1階ではパネルや標本、実際に生きている昆虫の展示などを通じてシジュウカラと関わる植物園内で見られる動植物の生態について展示している。同2階では、中高生による鳥研究ポスターや、研究者の研究方法などが紹介されている。(柴田大輔)
◆企画展「シジュウカラの社会―鳥の眼で見る植物園」は5日(土)から13日(日)、つくば市天久保4-1-1、国立科学博物館 筑波実験植物園で開催。開園時間は午前9時から午後4時30分(入園は午後4時まで)。入場料は一般320円、高校生以下と65歳以上、障害者などは無料。会期中、7日(月)と13日(日)午後2時からは、濱尾さんによる鳥類学研究にまつわる講座が開かれる。研修展示館2階の「観察、研究への誘い」は8月31日まで開催される。詳細はイベント公式ホームページへ。
筑波実験植物園で倒木30本超 1日、35メートルの突風で被害
ダウンバーストかガストフロント 水戸気象台
つくば市が豪雨や雷に見舞われた1日午後、同市柴崎付近で突風が発生した。水戸地方気象台は3日、現地調査を実施し、4日、突風について、ダウンバーストまたはガストフロントの可能性が高いと発表した。突風の強さは秒速約35メートルだったと推定されるという。
発表によると、1日午後4時30分ごろ同市柴崎付近で、豪雨やひょうに伴って突風が発生し、木造住宅の損壊、作業用足場の損壊、倒木などの被害が発生した。同市天久保の筑波実験植物園では樹木30本以上が倒れたり折れたりした。
ダウンバーストは積乱雲から吹き降ろす下降気流が地表に衝突して水平に吹きだす激しい空気の流れ。ガストフロントは積乱雲の下で形成された冷たく重い空気の塊が、重みによって、温かく軽い空気の側に流れ出すことによって発生する空気の流れ。柴崎付近の被害は面的に発生し、突風の強さは、0~5まで6段階で評価する「日本版改良藤田スケール」で、最も小さい0階級(JEF0)という。
全て東から西に倒れる
つくば市天久保、国立科学博物館 筑波実験植物園の遊川知久園長によると、雨が降り始めたのは1日午後4時30分ごろ。瞬く間に激しさを増す雨が窓を打ちつけ、建物全体が揺れるような落雷の音が響き渡ったという。同施設内の研究管理棟にいた広報の久保田美咲さんは「全く外に出られないくらいの大雨で、あっという間に屋外が川のようになっていた。帰れないかと思った」と話す。その後、午後5時15分ごろまでに雨は小降りになった。
園内では展示室の一部でガラス窓が割れ、敷地内の東側周辺部を中心に、高さ15メートルほどのモミや、コウヤマキなど30本以上が根本から倒れたり、幹が割れるなどしているのが確認された。折れた木は全て、東から西に向けて倒れていた。
遊川園長は、「台風などで1、2本の木が折れることはあったが、一度にこれだけ倒れたのは初めてのこと。敷地に隣接する住宅に倒れなかったのは風向きが幸いした」とし、「来場者出入りのある主だった部分では倒壊した木々の除去は進んでいる。遊歩道から離れた箇所についてはこれから順次、除去作業を進めていく」と話す。
同市消防本部によると1日午後は、突風の被害やけがなどによる救急車や消防車などの出動要請は無かったという。市危機管理課によると柴崎で2カ所、金田、玉取、今鹿嶋でそれぞれ1カ所倒木の被害があった。市公園・施設課によると筑波実験植物園近くの山鳩公園(同市天久保)のほか、流星台北公園(柴崎)、松見公園(天久保)、天久保公園(同)で各1本、倒木の被害があり、4日までに撤去した。(鈴木宏子、柴田大輔)
江戸文化伝える「さくらそう展」 筑波実験植物園で始まる
現存する最古の品種など展示
江戸の武士や庶民の文化を今に伝えるさくらそうが一堂に展示されるコレクション特別公開「さくらそう品種展」が19日から、国立科学博物館 筑波実験植物園(つくば市天久保、遊川知久園長)で始まった。主催は同植物園と、筑波大学つくば機能植物イノベーション研究センター。展示されるのは、現存する最古の品種「南京小梅」をはじめ、遺伝資源の保存を目的に筑波大学が保有する園芸品種314種の中から選ばれた約100種のサクラソウだ。同園によると期間中の入場者数は約5000人を見込んでいる。
サクラソウの栽培は、室町時代に宮廷貴族が始めたとされる。野生種を自宅の敷地で栽培していた。江戸時代中期ごろになると、江戸に暮らす人々の間で園芸用の品種改良が盛んになった。現在、国内に300種以上ある園芸品種のルーツを遡ると、江戸郊外の荒川流域に咲いていた一種の野生種に行き着くことがDNA研究によって分かっている。
江戸で庶民の娯楽や文化が活発になった当時、桜の花に似た野に咲く小さなサクラソウの美しさに魅せられた人々が、競うように改良を重ねていった。品評会も盛んに行われ、白い花弁に緑の筋が入る「青葉の笛」、淡い桃色と白のグラデーションと深い切れ込みのある花弁が印象的な「勇獅子(いさみじし)」、丸みを帯びた真っ白な花弁が特徴の「臥龍梅(がりゅうばい)」など、作り手の思いが名前に込められた品種が今に伝わっている。今回の展示で鉢が置かれる縁台は、江戸時代に生まれた「桜草花壇」だ。上から注ぐ光の加減や、吹き抜ける風、人の目線を意識した品種ごとの配置など、いかにサクラソウを美しく見せるかを追求したものだ。
筑波大と市民団体が保存活動
長年、庶民に愛されてきたサクラソウだが、近年は、都市開発などによる環境の変化や野生種の持ち去りなどから個体数が激減し、環境省が定める準絶滅危惧種に指定されている。今回、コレクションを展示する筑波大学では、2005年、市内のNPO法人つくばアーバンガーデニングと協力し、サクラソウの遺伝資源の維持・保存を目的とした里親制度「さくらそう里親の会」を立ち上げた。サクラソウの園芸品種においては世界有数の遺伝資源保存施設である同大が保有する品種を、会員が1人1品種、自宅で育てることで、災害などの緊急時にも品種を維持できるようにした。
里親の会に立ち上げから参加する、つくばアーバンガーデニングの佐藤久美子さんは「寒さに強く、乾燥に弱いのがサクラソウ。小さな花が可愛く、育つのを見るのが楽しみ」と活動のやりがいを話す。展示を担当する同博物館植物研究部多様性解析・保全グループ研究主幹の田中法生さんは「サクラソウはバリエーションが多い。江戸時代には400種を超え、今でも300種以上の園芸品種が残っている。たった一種の野生種から生まれたものが、花弁の大小、切れ込みの深さ、配色など、時代と共に変化していった。携わるたくさんの人々の相当な努力や思い、情熱が背景にあったはず。そんな歴史を想像しながら見るのも面白いと思う。是非、自分の好きな花を探してほしい」と話す。(柴田大輔)
◆コレクション特別公開「さくらそう品種展」は19日(土)~27日(日)、つくば市天久保4-1-1 筑波実験植物園で開催。開館時間は午前9時から午後4時30分(入園は午後4時まで)。26日(土)、27日(日)は午後5時閉園(入園は午後4時30分まで)。休園は21日(月)。期間中、教育棟ではサクラソウの歴史や専門家のお薦め品種の紹介、解説などのパネル展と共に、景品が付くクイズ・スタンプラリーが催される。筑波大と「さくらそう里親の会」によるサクラソウ品種の販売会もある。入園料は一般320円、高校生以下と65歳以上は無料。障害者と介護者1人まで無料。
「つながり」がテーマの水草展 筑波実験植物園で8日から
岩礁、ため池、マングローブなど再現
「水草展―水草がつなげる世界」が8日から、つくば市天久保、国立科学博物館 筑波実験植物園で始まる。多様な水環境の中で他の生物や環境とつながり、進化してきた水草に焦点を当てた企画展だ。水草と生き物、環境、人とをつなげる水辺の世界をさまざまな角度から紹介する。過去最多となる約250種の水草を展示しており、そのうち3、4割が絶滅危惧種だという。
会場の一つ、研修展示館では、アマモ場や岩礁、水田、ため池、マングローブなど、水草と生物が生み出すさまざまな環境を再現してそのつながりを解説する。水草を使って水面に巣を作るカイツブリや水草に産卵するマルガタゲンゴロウなど水草を利用する生き物を紹介する。世界で最も小さい陸上植物であるミジンコウキクサの顕微鏡観察などもできる。
人と水草のつながりは深く、人々はかつて農業などに水草を利用してきた。だが農業の高度化や農薬の使用などにより、それまで共存していた水草とのつながりが失われつつある。そうした中、再び共存の道を探ろうと新たな動きが始まっている。企画展では、これまでとこれからの人と水草とのつながりの多様性を紹介。水草を使った身近な食品や生活雑貨なども展示する。
ほかに、食虫水草ムジナモやタヌキモを顕微鏡で見ながらえさをあげる体験や、岩礁の海草の根元に生息する生き物の観察、実際に触ったり観察したりして水に浮く仕組みを学ぶ水草タッチプールなど、体験型展示も目玉の一つ。
教育棟では「水草の美しさを楽しむ」をテーマに、日本を代表する水槽レイアウトのプロが作製した数々の水草水槽を展示する。来場者が自由に水槽に草を植えて大きな水草水槽を作る企画やオリジナルのアクアリウム(飼育水槽)を作るワークショップもある。
同館研究員の田中法生さんは「バラやランに比べるとマイナーだが、まずは水草を楽しんでほしい。生物としての水草の面白さを知ることが、水草を守ることにつながる」と来園を呼び掛ける。
2011年から始まった水草展の開催は3年ぶり6回目。つくば市と周辺地域の水草の分布も紹介しているが、水質の変化や外来種の影響により前回の3年前の展示と比べて一部の品種が消失したという。一方で今年4月、姿を消していた水草の一種、ヒルムシロがつくば市二の宮、洞峰公園の土の中から見つかった。
展示される約250種のうち絶滅危惧種が3、4割を占めることについて田中さんは「(水草が)育つ環境があれば復活できる種がある。まだ間に合う」と話す。(泉水真紀)
◆企画展「水草展―水草がつなげる世界」は18日(日)まで、つくば市天久保4-1-1、国立科学博物館 筑波実験植物園で開催。開園時間は午前9時~午後5時(入園は4時30分まで)。会期中無休。入園料は一般320円、高校生以下と65歳以上、障害者などは無料。問い合わせは電話029-851-5159(同館)。詳細は同館ホームページまで。
江戸から続く花壇で鑑賞を 筑波実験植物園で「さくらそう展」
筑波大保有の100種展示
国立科学博物館・筑波実験植物園(つくば市天久保)で13日からコレクション特別公開「さくらそう品種展」が始まる。植物園屋外には江戸時代からの鑑賞方法である「桜草(さくらそう)花壇」が設置され、遺伝資源の保存を目的に筑波大が保有する鉢植えされたサクラソウが100種以上展示される。
白い花をつける「薄蛇の目(うすじゃのめ)」、中心の白から外に向かって赤く色づく「天晴(あっぱれ)」、梅の花のような丸みをもつ「鶯宿梅(おうしゅくばい)」、大ぶりの真っ白な花が印象的な「満月」、現存する最古の品種とされる「南京小桜」など、それぞれ色や形に特徴を持つのが見どころだ。
室町中期ごろから貴族の間で栽培が始まったサクラソウ。品種改良が盛んになったのは江戸中期ごろとされる。江戸を流れる荒川流域に自生地が広がっていたこと、鉢植えで育てられることから「庶民の花」として江戸の人々の間で人気を博していった。
「野生の花を持ち帰り、種を採取してまいてみるとちょっと変わった花が咲くことがある。今まで他の人が持っていない珍しい花を選びとることが繰り返されて今に至る。途中から意図的に交雑させることをしていったと考えられる」と筑波大学つくば機能イノベーション研究センター准教授の吉岡洋輔さんが説明する。「並べて展示することで人の目をひきつけることができ、鑑賞者を喜ばせることができる」のも人気の要因だという。
絶滅の危機
人々に親しまれてきたサクラソウだが、近年は、環境の変化や乱開発により個体数が減り、環境省の準絶滅危惧に指定されている。愛好家らによる自生地の保全活動は全国的に活発になり「保全活動のアイドル的存在」なのだと吉岡さんは言う。
筑波大では園芸品種の遺伝資源の保存を目的に、つくば市民に栽培を委託する「サクラソウ里親制度」を2004年からスタートさせている。大学で保有する品種が、天災などの原因で絶えてしまったときに、里親から株を返還してもらう仕組みだ。同時に、江戸から続く文化を市民に知ってもらいたいという意味も込めている。会場には10年、20年続ける里親の声がパネル化され、屋外にはそれぞれが育てた鉢植えも見ることができる。
「サクラソウは元々日本に野生種がありそこから広がっていったもの。起源が日本にある園芸種は珍しい。四季のある日本の気候に合っているため、基本的な管理ができれば栽培はそこまで難しくはない。形や色など豊富な品種を見ることができるので、是非、自分好みのサクラソウに出会っていただけたら」と吉岡さんが来場を呼びかける。
教育棟ではサクラソウ栽培の歴史を知るパネル展が開かれる。(柴田大輔)
◆コレクション特別公開「さくらそう品種展」は4月13日(土)から21日(日)まで。15日(月)は休園。開場は午前9時から午後4時30分。入園料は一般320円、高校生以下と65歳以上、障害者などは無料。販売もあるが、無くなり次第終了する。
世界最大の花、結実・種子発芽に成功 筑波実験植物園
国立科学博物館 筑波実験植物園(つくば市天久保)は20日、世界最大級の花を咲かせる絶滅危惧種ショクダイオオコンニャクの結実と種子発芽に国内で初めて成功したと発表した。
京都府立植物園から譲り受けた個体と、東京大学小石川植物園から譲り受けた個体が今年5月、筑波実験植物で連続して開花。2個体のうち、先に咲いた個体から花粉を採取し、次に咲いた個体に人工授粉したところ、実がなり、11月上旬、実が赤く柔らかくなった。実から種を採取。同10日に種をまき、12月12日に発芽した。栽培下でショクダイオオコンニャクが実をつけ、種子が得られるのは日本で初めて。実は全部で736個でき、実の中には長さ2~3センチの種が0~3個できたという。
ショクダイオオコンニャクは、インドネシア・スマトラ島の限られた場所に生えるサトイモ科の絶滅危惧種で、花は高さ3メートル、直径 1メートルになるものもあり、世界で最も大きな花の一つとされる。開花時は独特の強烈な悪臭を放つ。花は同じ個体に雄花と雌花が咲くが、同一個体では受精しない。今回、2つの個体を連続して開花させ、先に開花した個体の花粉を保管することによって、人工授粉が可能となった。
同園植物研究部多様性解析・保全グループ研究員の堤千絵さん(46)は「種子の発芽までの命をつなぐ作業に100人の研究者が日々努力をしてきたので、報われてとてもうれしい。また筑波実験植物園と、小石川植物園、京都府立植物園が連携することで高い栽培技術が生まれ成果につながった。これまでは(葉をとって発芽させる)葉挿しによりクローンの株を増やしてきたが、受粉により、遺伝組成の異なる種子が出来たため、種を保全することにつながる」と意義を話す。
温室担当の小林弘美さん(51)は「絶滅危惧種でもあるショクダイオオコンニャクの育成は温度管理などかなり気をつかう仕事だった。種の保存、命をつなげる仕事をこれからも続けていきたい。何より植物の不思議を伝えていきたい」と語った。(榎田智司)
40年振り返るミニ企画展開催 筑波実験植物園
開園40周年を迎えた国立科学博物館 筑波実験植物園(つくば市天久保)教育棟で14日から、同園の40年の歩みを振り返るミニ企画展「開園40周年記念・筑波実験植物園の過去・現在・未来」が始まる。会場の大型モニターでは、アカマツ林を切り開いた造成時の風景から現在に至るまでの同園の変遷を、スライドでめぐる映像が上映される。
同様の企画展は、25周年を記念したものに続く2回目の開催となる。会期は来年1月21日まで。
植物園が開園した当時は、現在の筑波研究学園都市一帯が、建築物がまばらな開発途上期にあった。モニターに映し出される開園直後の植物園では、現在は木々が生い茂る場所もまだ新しく植えられたばかり。スライドでは、敷地から、広い空と筑波山を見渡すことができた当時の様子がうかがえる。そんな開発初期のつくばの風景を含め、緑豊かな現在に至るまでの40年間の変遷を、約6分間で振り返る。
その他、培養室での希少種の無菌培養などの活動紹介や、ランやシダ、琉球の植物など希少種についての解説、過去の園内パンフレットなどが展示され、同園が経てきた40年の歩みを一覧できる。
同園は、1983年10月2日に開園して以来、生きた多様な植物を収集・保全し、絶滅危惧種を中心とした植物多様性保全研究を推進している。42ヘクタールの敷地では、常緑広葉樹林、温帯性針葉樹林、砂礫地植物、山地草原、岩礫地植物、水生植物など世界の生態区を再現することで、環境省が指定する絶滅危惧種の約20%、日本の固有種の約24%を含む、約7000種の植物を保有している。現在は、8人の研究員を含む、約30人のスタッフが勤務する。
広報の中山瑠衣さんは「研究者やボランティアが行う園案内に昨年は約5000人が参加した。全国から修学旅行の学生が来るなど、コロナが明けて来園希望が増えている」とし、「年間来場者も初めて10万人に届きそうなところへと伸びている」と明るい現状を語ると、「今回の展示では、40年前にお子さんだった方が当時を振り返ることができると思う。多くの方に来ていただきたい」と、来園を呼び掛ける。
日本初の結実
また現在、温室では、日本初となる、高さ130センチ余りのショクダイオオコンニャクの結実を見ることができる。「世界最大の花」と呼ばれるショクダイオオコンニャクの花が、今年5月に開花し、現在は真っ赤な果実をびっしり実らせている。世界でも開花はまれ。同園の細矢剛園長は「スタッフの努力の賜物。展示と合わせてぜひ足を運んで欲しい」と話す。(柴田大輔)
◆ミニ企画展「開園40周年記念・筑波実験植物園の過去・現在・未来」は、14日(火)から来年1月21日(日)まで。入園料は一般320円(税込み)、高校生以下と65歳以上は無料。期間中休園日等の詳細は筑波実験植物園内のイベントホームページへ。
研究者の愛があふれる「シダ展」 16日から 筑波実験植物園
国立科学博物館 筑波実験植物園(つくば市天久保)で16日から、シダ植物がテーマの企画展「シダ・ミュージアム―つくばシダ展」が始まる。同園が保有するシダ植物600種以上の中から、初公開となる近年発見された新種や絶滅の恐れのある希少種などを含む約200点が展示される。同園でのシダ展開催は19年ぶりとなる。
現在、世界中にある1万2000種余りのシダ植物のうち日本には約600種が生息しているとされる。一方で、野生のシカに食べられるなどして、約3分の1にあたる260種あまりが絶滅の危機にひんしており、環境省が定める「レッドリスト」に登録されている。
こうした状況の中で同園は、希少なシダ植物を絶滅から救うため胞子から培養し育てている。今回の展示では、保護の取り組みの様子が公開されるとともに、「タカサゴイヌワラビ」など絶滅危惧種に指定されている約80種を間近に見ることができる。
また2018年に長崎県対馬で発見された新種の「ツシマミサキカグマ」や、今回の企画展を担当する同博物館植物研究部陸上植物研究グループの海老原淳さん(45)らが同年に鹿児島県徳之島で、日本国内で初めて自生するのを発見した新産種で、これまで台湾、中国、ベトナム、ミャンマーで確認されていた「ムシャシダ」など、直近7〜8年の間に見つかった新種・新産種を8種、展示している。
ほかにも、水分を含むとフィルムのように半透明に輝く、コケに似た「コケシノブ」や、江戸時代にも人気を博し、古くから園芸品種として愛好されてきたシダ植物で根や葉をもたないことが特徴の「松葉蘭」、見るだけでなく日本の食生活に根付いた「わらび」など食べられるシダ植物のレシピを「3分シダクッキング」という動画で会場で流すなど、ユーモアを交えながら、シダに親近感を覚える仕掛けも用意されている。
企画展の担当者で同博物館植物研究部多様性解析・保全グループの堤千絵さん(46)は「シダ植物は地味なイメージがあるかもしれないが、着生することで高い木に登る。それだけでなく、落ちる雨水を集めるなど、シダは自然の中で賢く生きている。そんなシダ植物の多様な生き方は魅力的。より多くの人にその魅力が伝われば」と思いを語る。
海老原さんは「今回、筑波実験植物園で開催するシダ植物の企画展は19年ぶり。シダに詳しい方も、初めて接する方も、大人からお子さんまで楽しめるような構成を作った。ぜひ、シダの多様な魅力を知る機会にしてもらえたら」と、来場を呼び掛ける。(柴田大輔)
◆「シダ・ミュージアム―つくばシダ展」は9月16日(土)~24日(日)まで、つくば市天久保4-1-1 筑波実験植物園で開催。開園時間は午前9時から午後4時30分。料金は一般320円(税込み)、18歳以下と65歳以上は無料。期間中は「シダの多様性研究と保全の最前線」(16日開催)など専門家によるセミナーが複数予定されている。それぞれ定員制で、予約が必要なものもある。詳細はイベント特設サイトへ。
筑波実験植物園 季節の花を楽しむ《ご近所スケッチ》5
【コラム・川浪せつ子】筑波実験植物園の正式名は国立科学博物館 筑波実験植物園です。上野にある国立科学博物館が本館で、つくば市にあるのは植物関連の分館。こんな素晴らしい施設が近くにあるのは驚きです。
四季折々お散歩してもいいし、お花の季節にはそれぞれの草花に会いに行きたくなります。私のお気に入りは上のイラストの水生植物園。それから温室です。行ったこともないサバンナや熱帯雨林。「どこでもドア」を開けて入り込んだ気分になります。
また色々なイベントがあるので、それに合わせて訪問します。NHKの朝ドラで、今、植物学者「牧野富太郎」博士の人生を元にしたドラマが放映されています。筑波実験植物園でも4月末から6月初めまでミニ企画展「牧野富太郎 植物を観る眼」が開催されていました。早々に見てきました。
牧野博士は今風のイケメン?
ミニ企画ということでしたが、とても充実した展示でした。レプリカではありましたが、先生の線画のスケッチは素晴らしいものでした。色は付いていないのに、色を感じさせてしまう描写。つくづく「線に命が宿る」と。特別に植物学を専門学校で学んだわけでなく、絵も誰かに習ったわけでないのに、驚異的ですよね。
展示を見ていたとき、2人の女性の会話が聞こえてきました。「ね、ねぇ。こっち見て! 牧野先生の若いころの写真あるから」「あら~! 今でいうジャニーズ系のイケメンじゃない~」。まさしく! その後、知り合いの方々にこの話をしたら大うけでした。気になる方はネットで見てくださいね。(イラストレーター)
筑波実験植物園 季節の花を楽しむ《ご近所スケッチ》5
【コラム・川浪せつ子】筑波実験植物園の正式名は国立科学博物館 筑波実験植物園です。上野にある国立科学博物館が本館で、つくば市にあるのは植物関連の分館。こんな素晴らしい施設が近くにあるのは驚きです。
四季折々お散歩してもいいし、お花の季節にはそれぞれの草花に会いに行きたくなります。私のお気に入りは上のイラストの水生植物園。それから温室です。行ったこともないサバンナや熱帯雨林。「どこでもドア」を開けて入り込んだ気分になります。
また色々なイベントがあるので、それに合わせて訪問します。NHKの朝ドラで、今、植物学者「牧野富太郎」博士の人生を元にしたドラマが放映されています。筑波実験植物園でも4月末から6月初めまでミニ企画展「牧野富太郎 植物を観る眼」が開催されていました。早々に見てきました。
牧野博士は今風のイケメン?
ミニ企画ということでしたが、とても充実した展示でした。レプリカではありましたが、先生の線画のスケッチは素晴らしいものでした。色は付いていないのに、色を感じさせてしまう描写。つくづく「線に命が宿る」と。特別に植物学を専門学校で学んだわけでなく、絵も誰かに習ったわけでないのに、驚異的ですよね。
展示を見ていたとき、2人の女性の会話が聞こえてきました。「ね、ねぇ。こっち見て! 牧野先生の若いころの写真あるから」「あら~! 今でいうジャニーズ系のイケメンじゃない~」。まさしく! その後、知り合いの方々にこの話をしたら大うけでした。気になる方はネットで見てくださいね。(イラストレーター)
草分けの足取りたどる 筑波実験植物園で牧野富太郎企画
国立科学博物館筑波実験植物園(つくば市天久保、細矢剛園長)で29日から、ミニ企画展「牧野富太郎と植物を観る眼」が始まる。現在放送中のNHK連続テレビ小説「らんまん」の主人公のモデルとなった植物学者が採集した標本や植物図を通じ、日本の植物学の草分けの足取りをたどる。
牧野富太郎(1862~1957)は94年の生涯で1500種類以上の植物を名付けた近代植物分類学の権威。収集した標本は約40万枚といわれ、その一部は同博物館にも所蔵されている。押し花のように新聞紙を重ねて乾かす手法で作られた押し葉標本と呼ばれるもので、今回は1894年4月に筑波山で採取されたアズマスゲなど4標本が展示された。
標本を葉や茎、花などパーツごと精緻にスケッチした絵は植物図と呼ばれ、解説文書とセットになっているのが特徴。これらを元にした「牧野日本植物図鑑」は牧野の代表作で、現在でも研究者や愛好家の必携の書とされる。同書の初版本(1940年)と手書きの校正原稿、改訂版の「新牧野日本植物図版」が並べられ、その熱の入った仕事ぶりが垣間見られる。
企画は同博物館植物研究部、田中伸幸陸上植物研究グループ長が「らんまん」の植物監修を務めた縁で実現した。牧野の生地である高知県立牧野植物園(高知市)の協力を得て、合わせてパネル25点、標本類15点を展示した。
担当の同研究部、堤千絵研究員が一押しなのは、つくば市の花にもなっているホシザキユキノシタ。2枚の花弁がユキノシタほど長く伸びないことから、変種として学名をSaxifraga stolonifera Curtis f. aptera (Makino) H. Hara、和名をホシザキユキノシタとして名付けたのが牧野富太郎で、1926年のこと。筑波山だけに生育する固有種だが、同植物園内にある「筑波山の植物」エリアで見ることができる。花期は5~6月なので、会期中に星が咲き開いたような花を見るチャンスがあるかもしれない。
堤研究員は「牧野先生のように文字から学ぶだけでなく、山野を歩いて見て学ぶことが大切なので、植物園内にぜひ足を伸ばしてもらいたい」と語る。植物園では6月4日まで「クレマチス園」公開も行われている。
◆ミニ企画展「牧野富太郎と植物を観る眼」は6月4日(日)まで。入園料は一般320円(税込み、18歳以下と65歳以上は無料)。5月4日(木、みどりの日)と18日(木、国際博物館の日)は入園無料日。6日(土)午後1時30分からは田中伸幸さんによるYouTubeライブ配信「牧野富太郎と植物を観る眼」が予定されている。電話は029-851-5159。
外来植物の花粉持ち込むハナアブ類 筑波実験植物園で繁殖上の懸念材料に
国立科学博物館筑波実験植物園(つくば市天久保)で、ハナアブ類304匹を捕まえ、その体表に付着している花粉を1個1個分離して調べたところ、116の植物種が突き止められた。ハナアブに最も多く付着していたのはセイタカアワダチソウとセンダングサの花粉だったが、この2種の外来植物は園内にまったく生育していなかった。園内で保全される植物に、異種間の花粉輸送をもたらしている格好で、繁殖上の問題を引き起こす可能性があるとの懸念が示された。
植物園は敷地面積14ヘクタール。約3分の2を占める屋外の植生区画は、常緑広葉樹林や温帯性針葉樹林、水生植物などの区画に分けられ、2000種に及ぶ植物の生育域外保全の場として栽培管理が行われている。研究は、これらの保全している植物について、花粉輸送を介した繁殖を視野にいれた評価と環境構築の指針を示すため、まずはハナアブ類による花粉輸送ネットワークを解明しようと取り組まれた。国立科学博物館の田中法生研究主幹(植物研究部多様性解析・保全グループ)、堀内勇寿博士(研究当時:筑波大学博士後期課程3年、国立科学博物館特別研究生)、上條隆志教授(筑波大学生命環境系)の共同研究による。
ハナアブ類は広範な植物種に訪花する性質をもつ送粉昆虫。採集は2018年と19年の9月下旬~11月初旬に、小型粘着トラップを用いて行われ、304個体を捕らえた。その体表に付着した花粉は、顕微鏡での観察に基づき分類し、各花粉種につき1花粉粒ずつ単離してDNAを抽出、核と葉緑体から塩基配列を決定した。これを国内外で集積された塩基配列情報データベースと照合するなどして、花粉の植物種を突き止め(同定し)た。
一連の根気のいる作業は、研究当時筑波大学博士後期課程に在学中だった堀内さんが中心に担った。採集後1年半以上かけて照合に取り組み、ハナアブ個体と花粉種のネットワークを構築した。
結果、ハナアブ類の体表から、116分類群(種または属)の付着花粉が検出された。個体レベルでの花粉輸送を表すネットワークは2年間ともに、類似した構造を示した。特に、植物園敷地外に由来する外来のセイタカアワダチソウとセンダングサ属種は最も多くのハナアブに付着し、セイタカアワダチソウに限れば、2018年で34%、19年で31%の個体に付着していた。付着の確率は園内中心部ほど増加した。
植物園内だけでなく、周辺の外来植物を含めた環境管理が、植物園の植物保全に重要であると考えられた。研究主幹の田中さんによれば「セイタカアワダチソウの花粉による交雑は確認されていないが、花粉の付着によって正常な受粉を阻害している恐れがある」という。
堀内さんは「外来植物とはいえセイタカアワダチソウなどは長い間に環境に溶け込んで、今や生態系の一部になり、ハナアブ類にとっての餌資源になっている可能性もある。まずは、ハナアブ以外の昆虫、春の植物も調べてみるなどして、他の送粉者を含めた花粉輸送ネットワークの全体を明らかにして、さらに精度をあげていきたい」と語っている。(相澤冬樹)
花開く世界の野生ラン 筑波実験植物園に200点 31日から
国立科学博物館 筑波実験植物園(つくば市天久保)が保有する野生ランの「つくばコレクション」のうち、開花中の貴重種約200点などを公開する企画展「つくば蘭展」が31日から開かれる。11月7日まで。同植物園が発見した新種の花の香り物質の紹介、キノコから奪った栄養でつるを20メートルも伸ばす世界最大の菌寄生植物タカツルランの研究紹介などが見どころだ。
形、色、香りも多彩
同植物園は世界有数の野生ラン保存施設で、「蘭展」は開園から38年になる同園の定番企画。時期を変え、開催のタイミングに開花を迎えたランを選んで展示を行っている。
長く監修役を務めてきた多様性解析・保全グループの遊川知久グループ長(60)によれば、ラン科植物はキク科と並んで種類が多く、世界に約2万8000の野生種があるという。同園は特にアジア地域を中心に野生ランの収集、系統保存を進めており、コレクションは約3200種にもなるそうだ。
ニューギニアやボルネオ島の高地、アマゾン奥地のジャングルで採集した品種もあり、開花した状態で見られるのは貴重な機会。パフィオペディルム・サンデリアヌムというランは世界で最も長い花の一つ。垂れ下がった花弁の長さは1メートルにもなるという。つたや花茎が異状に長いランや根っこが広く張り出した鉢などをみることができる。
虫媒花が多いランは、花の色彩や形状に加え、香りで花粉を運ぶ虫たちを誘う。今回は特に香りの体験コーナーが設けられた。ハイライトは、同園で研究し2010 年に新種発表したデンドロビウム・ロセイオドルムの展示。学名のロセイオドルム(roseiodorum)は「バラの香り」という意味で、妖艶な香りをほのかに放つ。化粧品メーカーとの共同研究で、この植物のにおい物質を明らかにした成果を紹介する。
会場は多目的温室を始め、熱帯資源植物温室など巡る構成。つくば洋蘭会など協力団体の愛好家らが育てた最新の園芸品種なども展示され、合わせて約500点の花のりょう乱となる。
遊川グループ長は「さまざまな色や形で世界中に広がったランを集めた。地球の生命の豊かさを感じてもらえたら」と話している。(相澤冬樹)
◆企画展「つくば蘭展」 31日(日)から11月7日(日)まで、国立科学博物館 筑波実験植物園(つくば市天久保4-1-1)。期間中は写真展、デザイン作品展なども開催。会期中は無休。31日午後には遊川知久グループ長によるセミナー「シラン?ワカラン?ランの七不思議」もある(要事前予約)入園料は一般320円(税込み)、高校生以下・65歳以上は無料。電話029-851-5159。
異例の真冬開花 世界で最も大きな花 筑波実験植物園
【田中めぐみ】世界で最も大きな花の一つ、ショクダイオオコンニャクが18日、国立科学博物館筑波実験植物園(つくば市天久保)の温室で開花した。これまで同園では5~8月に開花しており、真冬の開花は国内で初めて。開花期間は短く、咲いてから3日目にはしおれてしまう。
同園での開花は5度目となる。同じ株が連続して花を咲かせるのも国内初で、世界でも極めてまれな事例だという。
18日午後9時半現在、高さ2メートル32センチ、直径86センチでまだ開いている途中だという。虫を呼び寄せて受粉するため、動物の死骸に似た独特の臭いを放っている。
栽培計画担当の小林弘美さんは「ショクダイオオコンニャクが機嫌よく育つように皆で考え育ててきた。職員総出で手塩にかけて世話をしたことが開花の要因と考えている。しかし、開花スイッチがどこで入るかはまだ分かっていない」と話す。
絶滅危惧種で、インドネシア、スマトラ島の限られた地域にしか生えないサトイモ科の植物。同園では2006年に小石川植物園(東京都文京区)から株を譲り受けて栽培を始めた。02年から2年ごとに花を咲かせ、7年おきや十数年おきにしか咲かないとされていた定説を覆した。
今回は、昨年11月6日に67キロのコンニャクイモを定植。12月16日に地表に芽が出て、年明けの1月2日に花芽であることを確認した。18日、日没とともに花が開き始めた。
できるだけ多くの人に見てもらいたいと同園は19日から21日まで開館時間を延長し、午前8時半から午後5時まで(入園は午後4時半まで)開館する。開花までの成長の様子は同園ホームページで公開している。開花の様子のライブ配信も行う。入園料は一般320円。問い合わせは029-851-5159(同園)
https://www.youtube.com/watch?v=MSdEkc-2uZY&feature=youtu.be
➡筑波実験植物園の過去記事はこちら
季節を先取り、満開のサクラソウ並ぶ 筑波実験植物園
【池田充雄】国立科学博物館筑波実験植物園(つくば市天久保)で13日から「さくらそう品種展」が始まった。筑波大学が保有する国内屈指のサクラソウ品種コレクションから、100種以上を特別公開している。これほどの種類と品数を一度に見られる機会は少ないとあって人気を博している。
筑波大が保有するサクラソウ品種は現在314種あり、本展ではそのうち100種以上を公開している。植物園の正門を入ってすぐ、教育棟の裏に設けられた展示台には、花の色や模様、花弁の形や咲き方などとりどりのサクラソウの鉢が並び、端から見ていくうちにその全容が分かる仕掛けになっている。
傍らにある「桜草花壇」は、江戸時代の伝統的な観賞方法を再現したもの。こちらには約30種が並ぶ。お互いが引き立て合うよう、花の色によって配置の仕方が決められているそうだ。
サクラソウの園芸品種は数百種あるとされるが、これらはすべて日本の野山に自生していたわずか1種のサクラソウ野生種から、品種改良によって作出された。江戸時代後期に武士の間でブームが巻き起こり、爆発的に多様化が進んだという。
「眼福(がんぷく)。毎年来ているが、今年もきれいに咲いている」と話すのは来園者の一人、東京都の小川倫弘さん(46)。妹の博子さん(45)も「同じサクラソウでもいろんなバリエーションがあって、見ていて楽しい」との感想。
展示品は今展の会期に合わせ、ハウスなどで温度管理しながら育てられた。今年は気候の関係で、地植えのサクラソウはまだわずかに咲き始めたばかりだが、ここでは満開の姿を、季節を先取りして楽しむことができる。
「名前もそれぞれユニークなので、由来を想像しながら見るのも楽しいのでは」とアドバイスするのは、NPOつくばアーバンガーデニング(TUG)のメンバーで「筑波大学さくらそう里親の会」事務担当の佐藤久美子さん。栽培を通じて筑波大学による種の保存・継承に協力している。TUGではほかに松見公園(同市天久保)の「さくらそう花壇」も管理しており、こちらは4月中旬から5月中旬にかけて、約250種3000株が見頃を迎えるそうだ。
◆筑波実験植物園のさくらそう品種展は21日(日)まで。開園時間は午前9時~午後4時30分。入園料は一般300円。
花開く技術、農研機構作出の青いキクを特別展示 9日から筑波実験植物園
【相澤冬樹】青色花研究でトップをひた走る日本、平成の間に青いカーネーションと青いバラの開発に相次ぎ成功し、商品化した。次の狙いはキク。サントリーグローバルイノベーションセンター(本社・東京)と農研機構花き研究部門(つくば市藤本)は共同で、青い花色のキクを作出し、実用化に向けた研究を進めている。開発中の青いキクを一般公開する特別展示が、9日から筑波実験植物園(つくば市天久保)で始まるのを前に、同機構上級研究員、野田尚信さん(47)から話を聞いた。
野生のキクや人の手で作出された栽培キクには、紫や青の花色はない。花に青を発色させるには、青色味を帯びたデルフィニジン型アントシアニンという色素を蓄積させるのがカギとなった。遺伝子組換え技術を用いる。研究部門の前身である花き研究所では2001年から作出に取り組んでおり、野田さんは着任した2007年から研究に加わった。
遺伝子導入後、発根、生育を経て、温室内で開花させるまでには約10カ月かかる。バラやカーネーションで使われたペチュニアやパンジーの遺伝子ではうまくいかず、カンパニュラ(キキョウ科)の遺伝子を導入することで青色系の作出に成功したのは2011年(発表は13年)、アントシアニンに水酸基1つを加えた改変だった。しかしこの段階では花色は紫に近く、青色とは言い難い出来だった。
ここで野田さんが目を付けたのが、濃い青色の花をつけるチョウマメ、原産地のタイでは花が染料にも使われる。デルフィニジンに糖を2つ付けた青色遺伝子がある。カンパニュラ+チョウマメの遺伝子を同時導入すると、もともと花に含まれていたフラボン(補助色素となる有機化合物の一種)と作用し合って、青を発色した。成果を得たのは2017年のことで、発表には大きな注目が集まった。
農林水産省統計だと、キクの生産額は680億円(2016年)で、日本の花き生産の32%を占める。一方花き産業では利用できる青色系の花が乏しいのが長年の課題となっており、青いキクにはフラワーアレンジメントやブーケなど葬祭需要以外に販路を広げる期待があった。野田さんはこれまでに、16品種・系統の青色化に成功している。
しかし実用化にはなお、高いハードルがある。遺伝子組換え農作物は環境中への拡散防止措置が不可欠で、栽培中に近隣の野生キクと交雑してはならないから、花粉と種子が出来ない「不稔」であることが求められる。この作出も組換え技術で行う。そのうえで国の生物多様性影響評価の手続きを受けるため、一般ほ場で栽培が始まり市場で流通するまでには「あと10年程度の時間がかかる」(野田さん)ということだ。
樹脂標本でのお披露目
ここまでの研究の一部が筑波実験植物園で行われた縁で、今回の特別展示となった。お披露目されるのは、標本用に透明樹脂に封入された青いキク。一輪咲きからスプレー咲きの大型のものまで各種ある。サントリーフラワーズ提供で青いバラと青いカーネーションも展示される。
会期は9日から24日まで、毎週月曜日と22日は休園。9日には特別セミナーが組まれていて、野田さんも「青いキク~誕生までとこれから」をテーマに講演する。入場には実験植物園の入園料がかかる。一般310円、高校生以下と65歳以上は無料。問い合わせ電話029-851-5159
貴重な野生ラン、最新の園芸品種など500点公開 世界有数 筑波実験植物園で企画展
【鈴木萬里子】世界有数の野生ラン保全施設として知られる国立科学博物館 筑波実験植物園(つくば市天久保)で18日から「つくば蘭展」が開かれている。温室では、同園が収集した品種の中から、開花中の世界の珍しい野生ラン約200点が公開されている。ほかに協力団体の会員が育てた最新の園芸品種や貴重な古典品種など約300点、計約500点が展示されている。
昨年同園は、絶海の秘境、南硫黄島で自然環境調査を実施し、約80年前に絶滅したと思われていたシマクモキリソウとムニンキヌランを再発見した。発見の経過や南硫黄島のランの最新研究の成果などがポスター展示されている。花茎が2㍍以上伸びる巨大なニューギニアのランも今回、国内で初めて公開された。
初日の18日は朝から来場者がひっきりなしに訪れ、にぎわった。蘭展は「きのこ展」と並び同園で最大の人気を誇り、毎回シニア世代を中心に4000人近い来場者があるという。
世界の貴重な野生ランが公開されている温室で、展示を熱心に見ていた下妻市の70代の女性2人は「こんな貴重なランを知ることが出来て良かった。研究者の皆さんの努力の結果ですね」と感心した様子で話した。
つくば洋蘭会と水戸市植物公園蘭科協会の会員が丹精込めて育てた、最新の園芸品種や失われつつある貴重な古典品種なども展示されている。入り口では福田初枝さんが栽培した色鮮やかなカトリアンセの花が出迎える。温室内は色とりどりのランが咲き誇り、その艶やかな色彩と香りでむせ返るほど。龍ケ崎市の50代の夫妻は「友達に勧められて初めて来たが、こんなにたくさんのランがあって驚いた。これから栽培を始めてみたい」と話し、1点1点丁寧に見て回っていた。
◆会期は25日(日)まで、開館時間は午前9時~午後4時30分。会期中は毎日開園。会期中、イベントが多数用意されている。入園料は一般310円、高校生以下と65歳以上は無料。問い合わせは同園(電話029・851・5159)
主な関連イベントは次の通り。▽多目的温室では「らん蘭ガイド」(平日午後3時より30分間)が開かれ、つくばコレクションの中から「世界に1つだけの花」をめぐる物語を聞くことが出来る。予約不要▽20日(火)と21日(水)はランを使ったテーブルディスプレイを参加者と一緒に作る「テーブルディスプレイを楽しむ」が催される。事前予約必要。材料費500円▽講演会「クモキリソウの仲間を徹底分析」が23日(金・祝)午後1時30分から(事前予約必要)、「南硫黄島の自然とラン」が24日(土)午後1時30分から(予約不要)、いずれも研修展示館3階セミナー室で開かれる▽つくば洋蘭会(斉藤正博会長)は会期中の土日祝日にデスクを設け栽培相談を受け付ける▽香りの専門家が展示品を使ってランの香りの魅力を紹介する「ランの香りを感じるツアー」が24日(土)午前11時から多目的温室で催される。事前予約必要▽ランを木や岩に付けて野生の姿で育てるノウハウを紹介する「ナチュラルスタイルでランを楽しむ」が25日(日)午前10時30分から開かれる。予約不要など。
世界最大の花開花 筑波実験植物園
【鈴木宏子】世界最大の花、ショクダイオオコンニャクが26日、つくば市天久保、国立科学博物館筑波実験植物園で開花した。同園での開花は4度目。同じ株が4度も花を咲かせたのは国内初という。
高さは2m40㎝で国内の栽培記録としては3番目。開いた花の大きさは1m6㎝。動物の死骸に似た悪臭を放ち、虫を呼び寄せて受粉する。
インドネシア、スマトラ島の限られた場所にしか生えないサトイモ科の植物で、絶滅危惧種。2006年に小石川植物園(東京都文京区)から株を譲り受け、熱帯雨林温室で栽培を始めた。
12年に初めて開花。以後、2年ごとに花を咲かせている。これまで7年に一度しか咲かないと言われてきたが、同園によって覆され、1年おきに咲くことが立証された。同園の多様性解析・保全グループの遊川知久グループ長は「植物園スタッフの日頃の努力が実った」と話す。
今年は5月14日にこれまでで最も重い76㎏のコンニャクイモを定植した。同27日、地表に花芽が出て、6月26日午後0時50分に咲き始めた。花は3日目に閉じてしまうという。
開花を多くの人に見てもらおうと、同園は27~29日の3日間、朝夕の開館時間を延長し、午前8時30分から午後6時30分(入園は午後6時まで)まで開館する。開花までの成長の様子を見どころについては同園ホームページ(http://www.tbg.kahaku.go.jp/news/konnyaku/)で公開している。
◆入園料は一般310円。問い合わせは電話029・851・5159(同園)
日本屈指のコレクションを公開 さくらそう品種展始まる 筑波実験植物園
【鈴木萬里子】日本屈指のサクラソウの品種コレクションを一堂に公開する「さくらそう品種展」が国立科学博物館筑波実験植物園(つくば市天久保)で14日から始まった。筑波大学が保有する314品種の「筑波大学コレクション」が150点ずつ順に展示される。
サクラソウは室町時代後期から江戸時代前期に野生種の栽培が始まり、茶会の席にも使われるなど人気が高かった。江戸後期になると品種改良が進み多数の園芸品種が生み出された。筑波大は収集した品種のDNAタイプを調べ保全している。同展に展示されている150点は4~5日ごとに入れ替えるため、全品種を見ることが出来る。
NPOつくばアーバンガーデニングのメンバーらが中心となった「筑波大学さくらそう里親の会」による「里子コレクション」も展示されている。筑波大が保有する園芸品種を保存する里親で、市民と共に遺伝資源を守っている。里親の一人は「芽分け作業時には交配しないよう土を入れ替えるなど、細心の注意が必要。でもとても楽しい」と話していた。
会場には、サクラソウの花を観賞するために江戸時代に考案された陳列法「桜草花壇」が建てられている。下向きに咲く花は上段に、上向きの花は下段に配置するなど、花の色が一番きれいに見える工夫がされている。
植物園入口の教育棟には昨年のサクラソウ人気投票上位10品種が飾られている。
牛久市の60代女性は「サクラソウを見るのが楽しみで毎年来ている。あでやかなのに静かな雰囲気が良いですね」と話し、品種ごとに付けられた名前を丁寧にチェックしていた。名前は作った人が付け、和歌から取ったものが多いそうだ。中には日露戦争後に名付けられた「戦勝」などユニークな名前もあった。
◆同展は22日(日)まで。16日(月)休園。開館時間は午前9時~午後4時30分。入園料は一般310円。
キノコ愛でる、なでる、萌える 3連休は筑波実験植物園へ
「愛でるキノコ」が静かなブームになる中、つくば市天久保の筑波実験植物園で開かれている企画展「きのこ展―あの『物語』のきのこたち」が人気を集めている。
つくば市を中心に日本各地で採った100種類を超える野生の生キノコが並ぶ様子は、壮観だ。キノコをモチーフにした木版画を制作する同市北条の武井桂子さん(71)は「見てかわいく、食べておいしいキノコが子どもの頃から大好き。ここはキノコの魅力がいっぱいで、極上の気持ちになれる」とほほ笑む。
2010年から毎年開いている企画展。企画した国立科学博物館植物研究部の保坂健太郎研究主幹は「展示のキノコはさわれるので、実際にキノコに触れたり、重さを体感したりして、五感でキノコの多様性に触れてほしい」と話す。
生キノコが展示されている多目的温室には、つくば市内の公園で採取された直径約40㎝と巨大なニオウシメジや両腕で抱えるほどの大きさのミヤマトンビマイ、フランス料理の材料として知られるトリュフなどが展示され、その多様さに目が奪われる。
傷みやすいキノコを常時職員が採取した新鮮なものに入れ替えるため、展示される種類は日替わり。一日100種類以上、期間中ではのべ300種類にもなるという。
会場では、訪れた人たちが、キノコの傘をなでて「すべすべしている」と感想を話したり、目を閉じてゆっくり匂いを嗅いだりしながら、鑑賞を楽しんでいた。
また研修展示館1階では、キノコが登場する絵本や漫画など90冊以上を集めた展示コーナーを設置。それぞれのストーリーを紹介しながら、作中のキノコと実物の写真や標本を対比し、保坂さん自身が実際に作者に聞いたインタビューや、監修した図鑑の制作過程を紹介するなど、深く掘り下げた内容になっている。
同館2階では、武井さんら5人の作家によるアート作品や、同園主催の「きのこ画コンテスト」の応募作品270点も展示している。(大志万容子)
同展は9日まで。開園時間は午前9時~午後4時30分、入園料は大人310円、高校生以下は無料。詳細は同園ホームページ:http://www.tbg.kahaku.go.jp/event/2017/10kinoko/index.html