月曜日, 11月 10, 2025
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「風立ちぬ」考 その4 《遊民通信》25

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【コラム・田口哲郎】
前略

堀辰雄の『風立ちぬ』は1938年発表ですから正確には「戦後文学」ではありませんが、「戦後文学」がなし得なかったことを果たします。死者の真の思いを生き残った者たちに悟らせるのです。それは生者の死者からの解放です。「生きねば」派は魂を鎮めたい。生者の責務を全うするために。人間誰しも死が怖いし、逃れることはできない。こればかりはどうしようもありません。

しかし、彼らは死そのものの不安から逃れられたでしょうか? 「死者」からは逃れられても、「死」そのもの、「死」がもたらす恐怖や不安からは逃れられません。

「生きめやも」派には「生きねば」派の意図が理解できないかも知れません。「生きねば」派は自分自身の死そのものに向き合うのではなく、身近な人の死から戦争や災害による大量死の犠牲者にいたるまで、他者の鎮魂を重視します。一方、「生きねば」と考える人々からすれば、「生きめやも」はあまりに現実逃避的で軟弱な生活態度だということになります。両者の死に対するスタンスに決定的な違いが浮き彫りとなってきます。そして、アニメ『風立ちぬ』が与えた問いへの答えが導かれます。

「宮崎駿は、この設計者・堀越二郎の物語を、なぜ、堀辰雄の物語に、『強引に』接続したのだろうか」。それは、近代国家たる日本が積み上げてきた死者への鎮魂のためです。今を生きるために。宮崎氏の変奏曲としての『風立ちぬ』は小説と同じ題名を持つがゆえに、私たちを困惑させていました。

では、堀辰雄の『風立ちぬ』が読者に与えるものは、何でしょうか。実質的処女作と言われる『聖家族』を「死があたかも一つの季節を開いたかのようだった」と始めた堀は、死と向き合うはずです。死そのものと向き合うからこそ、「生きねば」ではなく、「生きめやも」なのです。死に対峙(たいじ)した時の浮世離れした躊躇(ためら)いこそが『風立ちぬ』なのです。

立原道造と遠藤周作

そして、小説『風立ちぬ』は「生きめやも」派の新たなふたりを結びつけます。立原道造と遠藤周作です。ふたりは堀辰雄を文学の師と仰ぎ、それぞれ『風立ちぬ』について評論を書きました。立原は1938年に評論「風立ちぬ」を発表し、遠藤は1950年に評論集『堀辰雄』を上梓(じょうし)しました。堀と立原の親密な交際は軽井沢・信濃追分で育まれ、彼らが雑誌「四季」を舞台に四季派として文学活動を行ったのは有名です。

一方、のちにカトリック作家として大成する遠藤は哲学者吉満義彦の紹介で堀との知遇を得たのをきっかけに文学活動に入り、堀に関する評論が作家としての処女作です。立原、遠藤に直接の交友があったわけではないです。でも、『風立ちぬ』が結んだ縁は、入れ違いのように堀の傍に現れたふたりの青年を「生きめやも」派として死を考えさせるのです。ごきげんよう。

草々(散歩好きの文明批評家)

ベトナム人材の採用に「セキショウジョブフェア」 11月にオンライン開催

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ベトナム・ハノイ工科大学で開かれた過去のフェアの様子=セキショウキャリアプラス提供

総合人材サービスのセキショウキャリアプラス(本社・つくば市、渡邊誠社長)は11月、「セキショウジョブフェア」をオンライン開催する。日本企業で働きたいベトナム人大卒予定者らへの合同企業説明・面接会。専門的な技術・知識を持つ人材を採用したい企業や、グローバルな展開を考える企業へ参加を呼び掛けている。

県内企業も熱視線

フェアは2016年からこれまでに7回開催され、次第に規模が拡大。最も盛況だった一昨年は参加企業が39社、学生・求職者の来場は2日間でのべ1089人に達し、うち101人が内々定を得た。このときは現地開催だったがコロナ禍により昨年からオンライン形式に変更された。「直接会って話すに越したことはないが、採用担当者が現地へ渡航しなくても、日本にいながらベトナムの学生と面接できるメリットもある」と、同社海外事業課の小田倉千明さん。

開催の背景には理系、特にシステム・IT系人材の確保が難しく、優秀な人なら国籍を問わず採用したいという企業が増えている現状がある。

今回参加対象のハノイ工科大学は、日本の東工大レベルと言われるベトナムきっての理工学系大学。ほかにハノイ工業大学、ハノイ交通運輸大学、ハノイ大学など。ベトナムにおいて筑波大など日本の大学が協力し、質の高いカリキュラムを提供している日越大学も含まれる。

参加者は、理系技術者では機械、電気電子、IT系など、文系では通訳・翻訳、貿易業務などで500~800人を想定する。オンライン化によりハノイ近隣以外からも参加しやすくなったため、さらに増えそうな見込み。昨年は日本に留学しているベトナム人学生や、現地日系企業からのステップアップを図る就業者の参加もあったそうだ。

出展企業は北海道から関西までと広域的だが、運営会社であるセキショウキャリアプラスのネットワークを生かし、約4分の1は茨城県内の会社だ。中堅以下の企業でも知名度や企業規模に左右されずフラットな目で見てもらえる。過去の説明会では大企業を上回る40~50人が着座した例もあり、国内学生向けの企業説明会でもなかなか見られない盛況だったという。

企業の将来性を広げる外国人材

「言葉の問題や住環境の提供、生活支援など、コストは日本人よりも正直かかるが、そこさえクリアすれば確実に優秀な人材が採用できる。5~10万円のプラスで、しっかりとした日本語教育を受けさせることもできる」と小田倉さん。

外国人材の受け入れは、組織のダイバーシティ(多様性)を高めるという副次的な効果もある。異なる価値観と接することで、従来は当たり前として見過されてきた企業文化や商慣習などが見直され、社内制度の改革につながった例もあるという。「今後ますますグローバル化が進み、人の行き来が盛んになる中で多様な文化を知り、新しいニーズをつかむことがビジネス展開上不可欠になる」と、同社営業部長の飯田理文さん。

新興国であるベトナムは、今後いっそうの経済発展が予想され、中国に替わる投資先として注目を集めている。企業からは新たなマーケットや海外拠点と見込まれ、また国内でのインバウンド需要の増大にも寄与しそうだ。その際にはベトナム人社員の存在が、大きな力になると期待されている。(池田充雄)

過去のフェアの様子=同

◆SEKISHO JOB FAIR(ベトナム高度人材合同企業説明会・面接会) 説明会が11月6日、面接会が12・13日。申し込みは9月30日まで。日本企業はZoomミーティング(事務局提供リンク)によるオンライン参加となる。詳細は専用Webサイトまで。

里山保全活動と安全管理 《宍塚の里山》81

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里山さわやか隊

【コラム・佐々木哲美】今回は里山保全活動の主力チーム「里山さわやか隊」における安全の取り組みを取り上げます。

認定NPO「法人宍塚の自然と歴史の会」は、1989年の設立当初から、自然や歴史の調査や学習だけでなく、森林・小川・池の整備、ごみ拾い、観察路の草刈り、小川の整備、オニバスの復元、休耕田の復田―など、里山保全の実践活動に市民参加で取り組んできました。

特に、1990年2月、宍塚大池湖畔の通称「ゲンベーヤマ」で「雑木林のフレッシュアップ」活動を立ち上げ、山主さんの指導を受けながら、森林の下草刈り、間伐などを開始しました。その後、1998年2月に「里山さわやか隊」と組織化し、月2回の定例活動をはじめ、種々の保全作業を行っています。

里山さわやか隊は、設立当初から「楽しく汗を流すことにより里山の保全に役立つ」をモットーに活動し、大勢の方の参加をいただき、30年以上続いています。

活動が活発化するにつれて参加者も増え、チェーンソーや刈払い機を扱う頻度も増し、ケガの心配が出てきました。ボランティアは労働者ではなく、自主活動ですから、ケガをしても自己責任です。ケガをするときは労働者も悲惨ですが、ボランティアはもっと悲惨です。

チェーンソー作業では民間保険に加入

そこで3つの対策を考えました。

  1. 参加者の安全:ボランティア参加者がケガをしないために、安全教育の開催、ヘルメットなど服装の装備、朝礼・ラジオ体操、ミーティングなど日常安全管理を実施する。
  2. 被災者の補償:万が一ケガをしても補償が受けられるように、ボランティア行事保険、ボランティア活動保険などへの加入。特にチェーンソーを使用する作業はボランティア活動保険の対象外なので、民間の傷害保険やグリーンボランティア保険に加入する。当然、職員やアルバイトを雇用する場合は労災保険に加入する。
  3. 主催者の責任:ボランティア活動における行事主催者は、民事の安全配慮義務違反で訴えられる可能性がある。万一の活動団体に起因する災害や物損事故に備え、傷害賠償保険に加入する。
チェーンソー実技教育

里山さわやか隊の隊員は、おそろいのヘルメット、ビブスを着用し、ほぼ全員がチェーンソーや刈払機の法令に基づく有資格者であり、作業開始前の朝礼・ラジオ体操、ミーティングは定着しています。私たちは、ボランティア参加者が、楽しく、ケガせず、安心して活動できるように努めています。(宍塚の自然と歴史の会 副理事長)

つくば市が1位 2020観光客数 コロナ禍響き県内4割減

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「密」になりにくい山麓部で客足を伸ばしている筑波山観光

茨城県観光物産課は2020年の観光動態調査結果を発表した。市町村別では、272万9000人の入込客数(延べ人数)があったつくば市が県内1位となった。3位だった19年の425万9000人から減少したものの、コロナ禍の影響は、大洗町やひたちなか市の海水浴場、ひたち海浜公園などでより顕著な入込客数の減少となって表れた。

県全体の20年(1~12月)の観光入込客数は3854万4000人で、前年と比べ40.2%減った。観光消費額は2101億円で15.5%減となった。

減少した主な観光地は、国営ひたち海浜公園(ひたちなか市)103万人減、茨城空港(小美玉市)80万人減、イベントでは水郷潮来あやめまつり(潮来市、開催中止)が72万人減、土浦全国花火競技大会(土浦市、中止)が65万人減。

市町村別の入込客数は、2位が大洗町(昨年1位)で271万5000人、3位は阿見町(同6位)の265万3000人、4位は笠間市(同5位)の262万6000人、5位はひたちなか市(同2位)の198万4000人だった。3ランクアップの阿見町はアウトレットモールの集客が大きい

1人当たりの観光消費額は、宿泊が2万3617円(19年は2万5023円)、日帰りは3763円(同3559円)だった。利用交通手段は圧倒的に自家用車が多く全体の84.8%を占めた。(山崎実)

コロナの次は格差解消だ 《ひょうたんの眼》41

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コロナ忘れる月明かり=土浦・霞ケ浦総合公園

【コラム・高橋恵一】9月15日現在の65歳以上の高齢者人口の推計値が発表され、総人口に占める割合は、29.1%とされた。2位のイタリア(23.6%)、3位のポルトガル(23.1%)を大きく引き離して「金メダル」だ。人類の悲願である長寿のおかげなのだが、どうも世間の雰囲気はマイナーなイメージで捉えているようだ。

首相の引退や総選挙を控えて、コロナ対策からこれからの日本のあり方が議論されている。コロナ禍は、世界中に経済社会の課題を突き付けたが、単にコロナ感染流行の前に戻ればよいというわけではなかろう。コロナ禍で露呈した課題は、感染症対策のお粗末さだけでなく、社会生活のあり方、会社・職場でのあり方、学校生活のあり方、病院や施設のあり方も問われた。

しかも、それぞれの分野での雇用・賃金の格差、休業や休暇制度の格差、非正規雇用など、社会の弱い分野に顕著に現れた。しかも、面倒なことに、地球温暖化やプラスチックごみよる膨大な海洋汚染、国際社会が求めるSDGs、巨大地震や豪雨洪水への備えなど、後回しにできない課題が山積みなのだ。

人間は、どうしても未来に希望を持ちたいので、足元のコロナ禍の見通しも対策も不十分なまま、コロナ後の施策がにぎやかである。

超々高齢社会の社会保障費割合の縮減、デジタル化の推進による経済活力の拡大、規制改革の推進など、華々しく経済再生復興策が提唱されるのだろう。マイナンバーカードの100%保有、キャシュレス決済の推進、ワクチン接種証明のスマホ利用などなど、IT技術を最大限に取り込んだ諸改革が進められようとしているのだ。

日本経済の最弱点は個人消費の弱さ

しかし、大きな疑問が2つある。1つは、デジタル化を利活用する技術能力を政策当局が持っているのかという点である。コロナ対策においても、10万円の給付がマイナンバーと住民基本台帳のリンクがされてないために大幅に遅れ、臨時給付の意味をなくしてしまったこと。休業補償金、コロナ接触確認アプリ(COCOA)など、例示すると切りがないのだ。

要するに、政策当局が自分で考えず、システム設計から運用まで業者に丸投げだったということだろう。日本の公的部門におけるソフト施策の外部委託は数十年前からだが、公的部門が、自らシステム設計をできない事態は、今回は指摘だけにしておくが、深刻な問題なのだ。

2つ目は、キャシュレス決済などデジタル化を前面に出した取引だが、今のままだと、ますます格差拡大になってしまうのではないか。例えば、カードによる決済のシステム管理会社には、個々の取引でほぼ消費税の50%に相当する手数料が入るのだ。この業務をすべて国営で行えば、財源不足は解決してしまうかも知れないのだ。

日本経済の最弱点は個人消費の弱さである。小泉改革以降、改善されない。アベノミクスで企業業績を上げ、もうけを投資や賃金に回すはずだったが、企業の内部留保になってしまった。個人の所得が改善されなければ、日本経済の回復はない。給与の改善ではなく、個人への給付制度を具体化する時だ。(地図好きの土浦人)

秋最大のごちそう 新米 《県南の食生活》29

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【コラム・古家晴美】ようやく猛暑の盛りを過ぎ、実りの季節が到来する。採れたての栗や落花生を目にされた方も多いだろう。今回は秋最大のごちそう、新米を取り上げてみたい。

現在、米といえば新潟県や北海道、秋田県を思い浮かべるが、令和2年の水陸稲収穫量を見ると、茨城県は全国7位で、堂々ベストテン入りしている。県南地域でファンが多い地域ブランド米と言えば、「北条米」だろう。

筑波山麓の桜川沿いに広がる平野には、筑波山の岩石のミネラル分をたっぷり含んだ水も注ぎ込んでいる。つくば市北条、筑波、田井、小田の4地域で生産されているこの米は、適度な粘りと甘み、冷めても照り輝きと旨(うま)味が失われないことから、最上ランキング特Aと評されるのもうなずける。

この地域の明治時代の記録によれば、米は農業産出額の7割以上を占めていた。そして、様々な野菜、果物、畜産が生産経営されている現在でも、つくば市の農業産出額を見ると、2位の野菜を大きく引き離し、米が1位に輝いている。立派な米どころだと言える。(令和元年市町村別農業産出額=推計=)

生産者に敬意を表していただく

ところで、この時期、何段階かで収穫の労をねぎらうご馳走が作られてきた。稲刈り開始にあたり、赤飯や混ぜご飯を食べる(土浦市、つくば市、麻生町)。また、稲刈り完了を祝うのに、赤飯やぼたもちを作り、神棚や仏壇に供え、手伝ってもらった家には重箱に詰めて配る(土浦市、つくば市、牛久市、麻生町)。あるいは、新米で油揚げ、人参、かんぴょうが入ったカリアゲメシを炊き、神棚、仏壇、オカマサマに供えた(つくば市)。

そして、脱穀を済ませた後、新米を臼でひき、オカマノダンゴという団子を作り、オカマ様に供え、近所にも配った。一度にたくさんの団子を作り、毎日ゆで直して餡でくるんで食べた。地域により、あるいは時代的な変化により、これらすべてがそろっているわけではないが、収穫の喜びとそれまでの労苦がうかがえる。

新米を特別に扱うのは、農家だけではない。阿見町大室のOさんは、現在でも新米を人からいただくと、「食べ初め」として、炊いたご飯に、尾頭付きの魚、ヌッペ汁(大根、人参、ゴボウ、里芋)を添え、感謝を込めて神仏に供えてからいただく。

新米で卵掛けご飯も魅力的だが、新米に(無論、生産者の方に対しても)敬意を表していただくと、一段と味わい深いものになるのではなかろうか。(筑波学院大学教授)

つくば駅周辺 商業地、住宅地とも7年連続県内1位 21年地価調査

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県内の調査地点のうち7年連続で最も地価が高かったつくば市吾妻1丁目の常陽銀行研究学園都市支店

茨城県は21日、2021年の地価調査結果を発表した。県内で最も地価が高かったのは商業地、住宅地いずれもつくば市吾妻のつくば駅周辺で、7年連続1位となった。商業地は上位5位のうち2地点をつくば市内、住宅地は4地点をつくば市内が占めた。

つくば市(調査地点46地点)全体では、全用途平均変動率は前年より0.8%上昇し、0.1%下落となった前年から上昇に転じた。0.8%上昇は、守谷市と並んで県内で最も高い上昇率となる。

市全体の平均価格は1平方メートル当たり8万900円で、前年同様、守谷市に次いで県内で2番目に高い価格となった。

用途別では商業地(7地点)の平均価格は16万9400円で、2.9%上昇(前年は1.2%上昇)、住宅地(36地点)の平均価格は6万8900円で、平均変動率は0.3%上昇(20年は0.3%下落)した。工業地(2地点)は2万2600円で2.8%上昇(同0.7%上昇)した。

順位はいずれも昨年と同じ。1位は7年連続

商業地は調査地点7地点のうち6地点で地価が上昇した。上昇地点について県は、TX研究学園駅及びつくば駅から徒歩圏内の商業地域に位置しており、研究学園駅から徒歩圏内は、宅地分譲が進展し、背後住宅地の人口が増加していることに加え、新規店舗の立地が見られ、繁華性、集客力が向上していることから土地需要が高まっているとしている。つくば駅から徒歩圏内については、クレオに商業施設がオープンしたほか、駅近隣エリアにマンションが建設中で、背後住宅地人口の増加、繁華性や集客力の向上が見込めることから土地需要の高まりが続いていると分析している。

順位はいずれも昨年と同じ。1位は7年連続

住宅地は調査地点36地点のうち12地点で地価が上昇した。上昇地点について県は、つくばエクスプレス(TX)沿線の住宅地域で、大規模商業施設や各種店舗、小学校に近く、住環境に優れていることから、従来から土地需要が高いことに加え、新型コロナの感染拡大に伴うテレワークの普及などもあり、都心方面からの需要者層も見られ、新型コロナ感染拡大前の状況よりも土地需要が高まっているとしている。

工業地は調査地点2地点いずれも上昇した。県は、圏央道ICに近接し、研究施設や工場が集積する工業団地に位置しており、圏央道の県内全線開通による交通利便性の向上に伴い、IC周辺で、特定のテナントの要望に応じてオーダーメードで建設され賃貸されるBTS型物流施設の竣工が続くなど、土地需要の高い傾向が続いているとしている。

土浦市は下落幅縮小

土浦市(同34地点)の全用途平均変動率は前年と比べ0.1%下落し、コロナ禍で0.2%下落した20年と比べ下落幅が縮小した。平均価格は1平方メートル当たり3万8400円。

用途別では商業地(8地点)の平均価格は6万1900円で、前年と比べ0.4%下落(前年も0.4%下落)した。住宅地(24地点)の平均価格は3万2200円で、平均変動率は0%と昨年と同じとなった。20年は0.2%下落だったことから今年は横ばいに転じた。工業地(2地点)は1万9000円で0.6%上昇(同0.6%上昇)した。

商業地で上昇した地点はなかった。住宅地は調査地点23地点のうち2地点で上昇した。県は上昇地点について、JR常磐線の土浦駅から概ね徒歩圏内の市街地中心部は上昇しており、旧来からの市街地として根強い人気を誇ると共に、同一需給圏として競合するつくば市、牛久市、取手市などに対する割安感と相まって、土地需要が高まっているとしていると分析している。

工業地は調査地点2地点いずれも上昇した。県は上昇した工業地について、常磐道土浦北ICに近接し、向上や倉庫が集積する工業団地に位置し、より都心に近い千葉県に対する割安感から土地需要が高い状況が続いているとしている。

上昇率が県内で最も高かった研究学園駅前広場接面

新型コロナの直接影響大きくない

県全体の全用途平均変動率は0.4%下落となり、前年の0.7%下落と比べ下落幅が縮小した。用途別では住宅地は0.5%下落、商業地は0.2%下落となり、住宅地と商業地の平均変動率は1992年から30年連続で下落となった。一方、コロナ禍で下落幅が拡大した昨年と比べると下落幅は減少した。工業地の平均変動率は0.3%上昇となり、16年から6年連続で上昇しており、昨年と同率の上昇となった。

県は下落幅が縮小した要因について、商業地は、昨年は新型コロナの感染拡大により一時は先行きの不透明感から取引停滞や減退も見られたが、飲食店やホテルなど収益性が大きく低下した業種を除き収益性の悪化は限られ、オフィス街では回復傾向となったと分析している。

住宅地は、昨年は感染拡大で、買い主が内覧等を控えたことで一時的に土地需要が減退したが、オンライン内覧の普及も相まって、土地需要の回復傾向が続いているとしている。

工業地は、昨年は感染拡大による景気の悪化や先行きの不透明感により企業が新たな用地取得や設備投資に慎重になり、地価の上昇傾向が鈍化したが、首都圏に近い県南や県西地区のインターンチェンジに近い工業地域では流通業務用地の需要が依然として高く、地価の上昇が続いているとしている。

県は、リーマンショックによる資金調達環境の急激な悪化や東日本大震災による災害リスクの高い土地の急激な需要減退と比べると、新型コロナが地価に直接的に与える影響は大きくないとしながら、引き続き注視が必要だとしている。

地価調査制度は、適正な地価の形成を図ることを目的に、国土利用計画法に基づき都道府県が7月1日を基準日として県内540点の標準価格を判定している。

「合理的配慮」義務づけに民間向け助成 障害者差別解消法改正でつくば市など

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改正障害者差別解消法を学ぶ参加者(キャプチャー写真)

今年5月に改正された障害者差別解消法の学習会が18日、市民団体「茨城に障害のある人の権利条例をつくる会」(事務局・水戸市)主催でオンライン開催された。障害者への「合理的配慮」を民間事業者にも義務づけたことを受け、参加者からは「民間事業者が合理的配慮を提供することを支援する制度がつくば市にもある。うまく活用してもらえれば」という意見が聞かれた。

市民団体がオンライン学習会

学習会には県内の障害者や支援者、県議会議員、つくば市議会議員など、約50人が参加した。内閣府障害者政策委員会の委員長である石川准さんが、障害者差別解消法の改正点や残された課題について解説した。

今回の改正では、民間事業者も「合理的配慮」を提供することが義務化された。合理的配慮とは、障害者が他の者と同等の生活を営むために必要な環境の調整である。例えば、車いすでも店に入れるように、入り口にスロープを付けたり、聴覚障害者に筆談で対応すること。2016年施行の障害者差別解消法で、行政機関等は、過重な負担でない限り、合理的配慮を提供することが義務化されたが、民間事業者は努力義務とされていた。

改正法が実際に適用されるのは「3年以内」という。自治体や事業者の準備期間が必要との理由だが、民間事業者は配慮の必要な範囲を見定め、計画的に進める対応が求められる。

合理的配慮を提供するには、スロープや筆談ボードの購入などの設備投資が必要だ。「―つくる会」では2018年に、当時から民間事業者等の合理的配慮提供にかかる費用を助成する独自制度があった兵庫県明石市の職員を呼び、内部向け学習会を行った。その後、加盟する障害者団体が各市町村に呼びかけた結果、2018年につくば市で民間事業者等への合理的配慮助成制度がつくられたのを皮切りに、現在は県内5市で同様の助成制度が実施されている。

差別解消法の対象にウェブサイトも

石川さんは「ウェブサイトやモバイルアプリもオンライン上で接客する店舗と言えるのだから、差別解消法の対象となる」と強調する。建物や交通機関のバリアフリーは法的な基準が設けられ、障害者の求めに応じた合理的配慮も進む一方、視覚障害や聴覚障害などで、情報を獲得しづらい障害者が他の者と平等にウェブや書籍を利用するための法整備は進んでいない。

ウェブサイトで字幕の付かない動画が掲載され、パソコンのアプリケーションは音声読み上げソフトで認識できないものが多い。音声読み上げソフトで認識できるテキストデータではなく、認識できないPDF画像で作成された選挙公報もあるという。

「しかし、ウェブサイト等も差別解消法の対象になるため、字幕付き動画や画像のテキスト化など、合理的配慮を求められたら対応しなければならない」と石川さんは説明した。

小規模店なりの合理的配慮

参加者から「民間事業者の合理的配慮を進めていくために、自治体の役割は何か」「小規模店などは過重な負担という理由で、合理的配慮を提供しなくていいことになるのか」と質問され、石川さんは「茨城でも進められているように、合理的配慮を提供する民間事業者への助成制度を各自治体で作ることで、事業者からの相談に柔軟に対応することができる。合理的配慮は事業者にとって過重な負担でないことを要件にしているが、小規模店なりの合理的配慮があるはずで、小規模店だから何もやらなくていいということではない」と回答した。

参加した市議会議員からは、「今まで選挙公報を画像ファイルで作ってしまい、視覚障害者が読めないものにしていた。誰でも情報を得られる選挙公報を考えることから始めたい」などの感想が聞かれた。

また中止された土浦の花火を考える 《吾妻カガミ》116

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土浦の花火(土浦市提供)

【コラム・坂本栄】11月第1土曜日に予定されていた土浦全国花火競技大会が中止になりました。コロナ禍の収束が読めない今、2カ月先の催事にGOは出せないとの判断です。昨年もコロナ禍を受けて中止。2年前と3年前は事故で途中取り止め。花火好きの私にとって、中止はもちろん事故も残念です。大音量スピーカーで来観者に挨拶できない土浦市長もさぞ残念でしょう。

桟敷で観るのが正しい作法

中止に至った経緯については「無念の中止決定 土浦の花火 第90回記念大会」(9月6日掲載)をご覧ください。土浦の花火は、地域住人の秋の娯楽であるとともに、全国の花火ファンに楽しんでもらう観光事業であり、煙火会社の意匠と技術を競うコンテストでもあります。競技花火は、伊勢神宮の花火(三重県伊勢市、8月上旬)、大曲の花火(秋田県大仙市、8月下旬)もありますが、土浦大会に参加する会社が最も多く、競技花火の締め役を担っています。

大相撲や歌舞伎と同じように、私は土浦の花火を家族や知人と桟敷席で観るようにしています。日本酒とウイスキーを持ち込み、重箱に詰めた肴(さかな)をつまみながら、大音をお腹に感じ、大声で讃(さん)を送る。これが正しい作法です。

湖面にも映る霞ケ浦打ち上げ

2回の事故と2回の中止を機に、土浦の花火について少し考えました。コロナ禍はいずれ収束しますから、大事なのは事故対応です。2年連続して、導火不良で破片が落下、それが地上で燃え、ケガ人も出ました。打ち上げ場所が桜川の土手周辺、観る場所もその近くですから、火薬の塊を数多く上げる花火の性格上、事故ゼロは容易でありません。といって、ヘルメットをかぶって観るというのも無粋です。

土浦の花火(同)

そこで、打ち上げ場所と鑑賞場所を少し引き離すため、打ち上げ場所を霞ケ浦に移し、湖岸に桟敷席を設け、そこから鑑賞できるようにしたらどうでしょう。事故防止のために花火と観客の「密」をなくすだけでなく、湖面に映る「逆さ花火」も観られます。

このアイデア、昨年の花火中止を埋め合わせる「サプライズ花火」(日時と場所を明示しない、観てほしいのかそうでないのかわからない、何かおかしなイベント)の形で試行されました。遊覧船がつながれている土浦港付近から約500メート沖に、タテ約10メートル、ヨコ約25メートルの船台を4つ連結して、打ち上げ場所を造ったそうです。時間は30分と正規の5分の1ぐらいでしたが、霞ケ浦まで徒歩10分の私の家からもよく見えました。

秋のほか春夏冬に縮小版を

湖上であれば、不燃片が鑑賞区域に落ちる可能性はほぼゼロですから、安全面では優れています。また、桟敷席を湖畔に設けることも可能です。さらに、霞ケ浦周辺のどこからも観られるメリットもあります。競技花火の審査員が桜川の土手から湖上の船上に移っても、採点に支障はないでしょう。

問題は、常磐線西側(市街地)から同東側(すぐ霞ケ浦)に移すとなると、大会にやって来る車の流れ、打ち上げ場所に向かう人の流れが変わり、交通整理を全面的に見直す必要があることです。そこで提案。秋の花火は事故対策を整えて従来通りとし、将来の場所移転の勉強と練習も兼ねて、縮小版大会を、春、夏、冬、湖上で催したらどうでしょう? 地元住民の楽しみを増やし、全シーズンで観光客を呼び込むために。(経済ジャーナリスト)

<後記> 執筆に際しては沼尻健・土浦市花火対策室長に情報を提供してもらいました。

企業経営で意識しておきたい3つの流れ 《地方創生を考える》20

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ダイヤモンド筑波

【コラム・中尾隆友】これからの企業経営では、3つの大きな流れを抑えておくことが欠かせない。

1つめは、「人口減少」だ。日本のマーケットは縮小に向かうわけだから、そのことを想定してビジネスを展開しなければならない。たとえば、国や地方自治体が将来の人口推計を公表しているので、自社のビジネスにいつごろ、どのような影響が及ぶ可能性があるかをイメージしてほしい。

2つめは、「デジタル化」だ。AIによる自動化と言い換えてもいいかもしれない。図らずもコロナ禍で注目されて加速することになったが、たとえパンデミックがなかったとしても、国や企業の基本方針として着実に進展していくはずだ。

3つめは、「地球温暖化」だ。世界が脱炭素実現へギアを上げる中、企業も環境保全をはじめとする持続可能性を強く意識した経営が求められる。2030年や2050年の具体的な成果に向けて、国内外のルールや法制度も段階的に刷新されていくだろう。

危機は新ビジネスのチャンス

実は、この内容は過去数年、全国の企業経営者の前で話し続けていることだ。コロナ前でもコロナ後でも、企業経営にとって変わらない本質的な話だ。(今年は茨城県経営者協会でも講演させていただいた)

それに加えて、世界的に危機が起こった時は、新しいビジネスが生まれるチャンスでもある。リーマン・ショック時の米国では、Airbnb(エアビーアンドビー)やUber(ウーバー・テクノロジーズ)など新興テック企業が数多く誕生した。

コロナ禍において、人々のライフスタイルや働き方、価値観などに変化が起きている。新しいビジネスチャンスが広がる中で、茨城の企業経営者が次々と新しいアイデアを生み出すことを期待したい。

また、茨城で起業する若者が増えることにも期待したい。総合的に判断して、茨城は起業するのに最も有利な都道府県の一つだと考えているからだ。そういった意味でも、筑波大学や茨城大学には革新的な取組みを求めたい。(経営アドバイザー)

黄色のリュック型も選択可能に 土浦市 新1年生にランドセル贈呈

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展示中のランドセルと通学用リュックサック=土浦市教育員会

土浦市では、市立小学校や義務教育学校に入学する子どもたちのために、1976年から毎年、入学祝品としてランドセルを贈呈している。来年度から、従来の赤と黒のランドセルに、黄色のリュックサックタイプが加わり、3種類の中から選べるようになった。

従来の赤と黒のランドセルは人工皮革で、重さ約1キロであるのに対し、黄色のリュックサックタイプは850グラム。軽量化のニーズに応え、選択肢を増やした。

同市教育委員会学務課の担当者は「実際に背負い比べた子どもたちは軽いと言う。子どもにとって150グラムの差は大きいのではないか」と話す。

ファスナーを開いた状態のリュックサック=同

黄色のリュックサックタイプは、ポリエステル製。出し入れしやすいようにファスナーが大きく開き、教科書やノート類は、中のベルトで固定できる。

背中は汗をかいてもべたつきにくいメッシュ仕様。背負いひもにはランドセルと同様にフック(ナスカン)があり、防犯ブザーを付けることができる。

2020年度まで、同市の贈呈ランドセルは「女子は赤色、男子は黒色」と決まっていた。保護者から「好きな方を選べるようにしてほしい」という問い合わせが増えたことから、21年度より子供たちが好きな色を選べる選択制に変更している。担当者は「ジェンダーの考えが、社会に浸透してきていることも影響しているのでは」と話す。

同市の22年度小学校入学予定者は6月1日現在969人で、内訳は男子513人、女子456人。ランドセルは17日現在で約100人の申し込みがあり、リュックサックタイプを選んだ子どもは2、3人だという。黒色を選んだ女子、赤色を選んだ男子はまだいない。

ランドセルの実物は10月29日まで市教育委員会学務課窓口(土浦駅前、同市大和町、ウララ2)で展示している。申し込み期間は10月31日まで。(伊藤悦子)

プライドと劣等感 《続・気軽にSOS》93

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【コラム・浅井和幸】①周りを低く見る言動をする。②自分は素晴らしいという評価を周りに押し付ける。ちょっとでも悪く言うと怒りだして、①や②の言動で周りを攻撃してくる。程度の差はあれ、誰にでもある性質です。ささいなことならば、子どもっぽくてかわいいで済みますが、程度がひどく、繰り返す場合は、厄介な人で、できれば関わりたくない人ですね。

関わらずに済むのなら簡単な話ですが、それが家庭、教室、職場でいつも顔を合わす人だと大変。気を使いすぎて、抑うつ状態になって、相談室を訪れる人もいるぐらいです。

DV、児童虐待、いじめ、パワハラなど、「自分のことをきちんと評価してほしい」という願望の持ち主(加害者)によって、弱者が苦しめられるという構図がしばしばあります。

「自分のことをきちんと評価してほしい」という願望は、「周りの評価が気になる」という性質と、「自分は正当な評価を受けていない」という気持ちが強ければ強いほど、大きくなります。これらの性質は、つまりは劣等感だと言うことです。

パワハラ上司と付き合う方法

自分とパワハラ上司という関係で考えてみてください。「自信満々で、自分のことを責めてくる上司が、劣等感を持っているなんて信じられない。大きな声で怒鳴られて、縮こまって苦しんでいる自分の方が劣等感の塊だ」と考えますよね。

上下関係で上から力で押さえつけられるわけですから、力が強い上司が劣等感を持っているはずがないと考えても当然です。しかし、力で押さえつけてくる上司は、誰にでも同じ態度をとっているでしょうか。もしかしたら、その上司にも頭の上がらない人がいて、小さくなっている場面があるかもしれません。

その上司が、誰かに悪い評価を受けることを怖がっていて、それを受け入れられないから、より弱いあなたを見つけて、強さを誇示することで高い評価を得ていると感じようとする動きとも考えられます。怒り出すのは、キャパシティいっぱいで、パニック状態なのかもしれません。

対抗するには、ひたすら謝ったり、こびへつらい続けたりしなければいけないのでしょうか。そのような方法も取らなければいけないこともあるでしょう。しかし、それ以外にも自分自身が本当に上司のことを尊敬できるところ(ちょっとは褒めてやろうかと思えるところ)を探して、伝えてみるとよいでしょう。どんな人でもよいところの一つや二つはあるものです。

もう一つは、そのような上司と面と向かうときに、こちらが緊張しすぎないことです。緊張が劣等感を持つ上司にも伝わり、上司を不安にします。不安になった上司は、自分が悪くみられているという気持ちになり、評価を上げようとパワハラをしてくるのです。しかも、無意識だから質が悪い。

完全にリラックスした最高の笑顔で接しろとは言いません。ひどい言動をする上司は劣等感に追い詰められて大きな声を出すのだなと考えて、ほんのちょっとだけ余裕を持つことを意識するところから始めましょう。(精神保健福祉士)

オンラインお見合い開始 いばらき出会いサポートセンター

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いばらき出会いサポートセンター県南センター=牛久市中央

少子化対策のカギは若者の未婚化・晩婚化対策にあるといわれる中、いばらき出会いサポートセンターは9月から、コロナ禍でもスマートフォンやパソコンでお見合いができる「オンラインお見合い」サービルを開始した。県外からも幅広く入会できるよう入会条件を緩和し会員の出会い強化に乗り出した。

同センターでは、すでに4月から新AIマッチングシステム(スマートフォン対応・AI診断機能搭載)の運用を開始し、男女の出会いと結婚を支援している。その結果、新規入会者数やお見合いの実施組数等が大幅に増加しているという。

AIマッチングシステムの特徴は、会員個人のスマートフォンやパソコンからお相手を検索したり、お見合いの申し込みが出来、価値観診断テストの結果からAIが相性の良い相手を紹介する。加えて9月からは、対面によるお見合いのほか、オンライン上でのお見合いが選択できるようになった。

入会の条件は、結婚を希望する人で、インターネットが利用できる人。

入会登録料(2年間有効)は県内在住か在勤、親が県内に在住か、あるいは県内への移住に関心がある人は1万1000円(消費税込み)。

9月からはこれらの条件以外の希望者も入会できるようになった。入会登録料は2万2000円(税込)。

現在の会員登録者数は1635人(うち新システム導入後の新規入会者は694人)。コロナ禍の4月からの活動実績をみると、お見合い実施が730組、交際開始が319組で、いずれも前年同期の3倍という好調さだ。(山崎実)

◆いばらき出会いサポートセンター(水戸市三の丸、県三の丸庁舎内)は電話029-224-8888、同県南センターは(牛久市中央)電話029-830-7502。

コロナ禍での認知症 《くずかごの唄》94

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【コラム・奥井登美子】

「コロナが心配で、心配で、朝まで眠れないんだ。睡眠薬5ミリではだめなので、今度10ミリにしてもらった」

近所に住むAさんが処方箋を持ってやってきた。ゾルビデム5ミリグラムが10ミリグラムなっている。この薬は向精神(こうせいしん)薬で、認知症を促進するデータがあるといわれている薬である。Aさんと高校時代からの同級生で仲良しのBさんに聞いてみた。

「このごろ、2人で散歩していないわね。けんかでもしたの?」

「けんかなんかしていないよ。けれど、A君このごろ、ちと、おかしい。いつもと同じ道を歩いているのに、違う道だ、なんて言うんだ」

「困るわね」

「散歩に誘っても来ないし、僕も心配しているんだ」

薬なしで眠れる方法をトライ

認知症でない人が、コロナで外に出ない。人と会話ができないなど、日常生活での刺激がなくなって、認知症になってしまうケースも多いと聞く。もし、認知症になってしまったら、一番苦労するのは家族である。

Aさんが、もし認知症になってしまったら一番困るのは、Aさんの奥さん。ご近所だから、ゴミ出しの時などお世話になっている人である。私は、NHKテキスト「きょうの健康」8月号の「コロナ禍での認知症」特集のコピーを持って家に行ってみた。

「ご主人の睡眠薬マイスリーが5ミリから10ミリになっているの。どうして増えてしまったのかしら? 認知症になってしまってからでは遅いわ。奥さんが、ご主人をだまし、だまし、誘導して、認知症予防をしなければ大変よ」

「眠れない、眠れないって、大騒ぎなの。眠れないと、夜中に公園に行ってしまうの。真っ暗だから、もし転んで倒れても、誰も助けてくれない。どうしたらいいのかわからないので、医者に行って、もう少し効く薬出してもらいなさい、なんて、私が言ってしまったの」

「薬に頼り過ぎるのよ。薬なしで眠れる方法を、2人でトライしてみたら?」

昼間、重労働して身体を動かせば、夜は否応なしに眠くなってしまう。眠れないというのは贅沢だ。自動化、機械化が、人間をいつのまにか、むしばんでしまっている。(随筆家、薬剤師)

1週間前倒し19日で解除 県独自の非常事態制限

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茨城県庁(イラストは「いばらきアマビエちゃん」)

学校は分散登校とリモート授業併用

26日まで延長するとしていた県独自の非常事態宣言について、大井川和彦知事は16日、1週間前倒しし、19日で解除すると発表した。2学期が始まってもリモート授業となっていた学校は、解除後の21日から、週1~2回の分散登校とリモート授業の併用となる。

部活動は平日のみ2時間以内なら練習できるようにし、休日は引き続き禁止とする。ただし大会2週間前からは休日も3時間以内なら練習できるようにする。他校との練習試合などは引き続き自粛を要請する。

県の施設は図書館や美術館は20日以降、順次再開する。一方、水族館や自然博物館、フラワーパークなどの施設は休館を継続する。

国の緊急事態宣言は30日までとなっていることから、飲食店の酒類提供の終日停止、夜8時以降の時短営業要請などは30日まで継続される。一方、すべての商業施設などに通常時の2分の1とするよう要請していた入場制限は20日から解除する。

県内の感染状況は、ピークだった8月23日の新規感染者数318.5人と比べ9月15日は133.1人と半減し、減少傾向が続いている。9月10日から16日まで直近1週間の人口1万人当たりの新規感染者数はつくば市が2.73人、土浦市が5.95人。

病床稼働状況は重症者数は高止まりしているものの、新規感染者数の減少により、病床稼働状況が改善しているとした。

つくば市 1回接種率42位、2回43位

14日時点の市町村別のワクチン接種率が発表され、つくば市の12歳以上のワクチン接種率は1回接種が63.5%で44市町村中42位、2回接種率は47.1%で43位と県内でも接種率が低いことが分かった。県平均は1回目72.9%、2回目57.7%。

大井川知事は、特に人口の多いつくば市や古河市などについて、県として大規模接種会場を使って優先的に枠を振り分けるなど、接種率向上をしっかりと図っていきたいとした。

市町村別ワクチン接種率(%)
1回目順位市町村1回目2回目
1大子95.181.8
2八千代   89.073.2
3城里88.762.4
4大洗88.667.4
5利根88.180.9
6河内86.780.2
7潮来83.369.5
8桜川80.963.4
9つくばみらい   80.065.8
10境町78.766.5
11牛久78.364.4
12鹿嶋77.565.4
13鉾田77.563.7
14常陸大宮77.563.3
15美浦76.163.6
16取手75.660.3
17五霞73.564.3
18常総73.151.2
19北茨城72.853.8
20高萩72.458.4
21筑西72.454.8
22稲敷72.360.3
23龍ケ崎71.9   61.0
24下妻71.957.5
25行方71.758.5
26水戸70.454.6
27東海70.451.4
28茨城70.156.9
29神栖69.750.5
30阿見69.352.3
31笠間69.257.6
32坂東69.257.3
33小美玉68.745.2
34守谷68.452.4
35かすみがうら68.352.2
36那珂   67.055.7
37結城66.558.7
38土浦66.552.7
39常陸太田66.153.7
40ひたちなか64.349.8
41日立63.750.1
42つくば63.547.1
43古河63.4   51.0
44石岡63.1   51.0
9月14日時点

一転、つくば市が使用を許可 食材無料提供 25日松見公園で開催

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つくば市松見公園で開催された食材無料提供会の様子

つくば市から公園の使用許可が出ず、開催が危ぶまれていた「学生応援プロジェクト@つくばPEACE(ピース)」(冨山香織代表)の食料支援について、NEWSつくばの取材後、公園を管理する市公園・施設課がつくばPEACEに対し、松見公園の使用を認めたことが分かった。

これを受けつくばPEACEは、無料の食材提供会を25日午前10時から正午まで、同市天久保の松見公園で開催する。人流を抑制するため事前予約制とし、参加時間をそれぞれ指定して実施する。

緊急事態宣言により飲食店などが時短営業や休業を余儀なくされる中、アルバイトが減って困窮する学生や母子家庭などを支援するのが目的。

今月9日、つくばPEACEは市から、緊急事態宣言により公園の使用を許可できないと断られ、翌10日、開催場所未定のまま開催告知をツイッターなどSNSで発信した。

NEWSつくばは14日、市に対し、なぜ公園を貸さないのか電話取材した。その直後、つくばPEACEに対し市から連絡があり、冨山代表が市役所を訪ねたところ、市から「一度断ってしまって申し訳なかった。人流抑制ができる体制であれば開催できる見込みがある」などの回答があり、同日夕方、公園を使用できる旨の連絡があったという。一方、市役所での話し合いの際、冨山代表は公園の使用基準について説明を求めたが、市は明確な基準を設けておらず、それ以上の説明はなかった。

松見公園での開催が決まったことに対し、冨山代表は「初めは相手にされず、話し合う余地もなく断られた。今まで頑張ってきた活動が行政に理解されないことはひじょうに悔しかった」とし、「公園での開催が認められたときは、行政が思い直してくれて本当に安心した。経済状況が悪化する中で、節約のためにわずかな明かりで夜を過ごす学生や、カップ麺に水を注いで食べる学生もいる。今回は取材が入ったおかげで、松見公園での開催決定にこぎつけた。さらなる周知活動が必要だと改めて感じるとともに、引き続き行政への働きかけをしていきたいと思う」と語った。

食料支援の利用者の一人である筑波大学情報学群1年の学生は「市に協力してもらえてよかった。学生を含め、多くの人が利用しやすくなると思う」と話した。(武田唯希)

障害者の権利のために闘ったリーダー 《電動車いすから見た景色》22

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つくば市に寄贈した「わたしが人間であるために-障害者の公民権運動を闘った『私たち』の物語」

【コラム・川端舞】今月、障害者団体「つくば自立生活センターほにゃら」がつくば市の中学校等に寄贈した「わたしが人間であるために—障害者の公民権運動を闘った『私たち』の物語」(現代書館)。アメリカの障害者リーダーであるジュディス・ヒューマンの自伝本だ。

アメリカは、障害児が最大限に可能な範囲で、障害のない子どもとともに教育を受けることを原則としている。しかし、ともに学ぶことを法律で規定するまでには、障害者たちの長い闘いがあった。

幼少期から車椅子で生活していたジュディスは、障害児だけが通う学校で学び、自分はアメリカの一般の教育制度から排除された存在であることを自覚していく。同じ学校に通う障害のある仲間たちと、なぜ自分たちは障害のない子どもたちと異なる扱いを受けているのか話し合うこともあった。

大学入学後は、階段がある校舎に入れないなど、障害のために不利益を被ることがあっても、同じ経験をする障害学生同士で話し合ことで、障害という問題の原因は自分たちにあるのではなく、自分たちを受け入れない社会にあるのだと考えるようになった。

障害者が他の人と同じように学校や社会に参加できないのは、社会の在り方に問題があるという考え方を「障害の社会モデル」という。私は障害者運動に関わる中でこの考え方を学んだが、その後も無意識に障害のある自分が悪いと思ってしまう癖が残っている。社会モデルの考え方を自分の経験から導き出したジュディスたちの聡明さを見習いたい。

悩みながら戦い続ける

ジュディスは上院議員のアシスタントとして、障害児が障害のない子どもとともに教育を受けることを保障する法案の起草にも関わった。幼少期に障害のない友達と同じ学校に行けない悔しさを味わったジュディスは、「傷だらけの経験を、子どもたちの人生を変える法律の立案に役立てられることにワクワクした」と書いている。

私も通常学校で学んだ障害者として、障害児教育をよりよくしたいと思っているが、障害児教育に関わることは、自分の辛かった経験とも向き合い続けることになり、痛みを伴う。

しかし、障害者が他の人と平等に生きる権利を獲得するために政府などと闘い続けたジュディスも、差別を受けた時は動揺したり、政府と闘う前日まで自分は正しいのか悩んでいた。私も悩みながら、インクルーシブ(障がいのあるものとない者が共に学ぶ)教育を実現するために自分のできることをやり続けたい。(つくば自立生活センターほにゃらメンバー)

「公園が借りられない」 つくばの食料支援団体 場所未定のまま開催を告知

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公園の使用許可が下りなかったつくば市の松見公園

「公園が借りられない」。そう話すのはつくば市の食料支援団体「学生応援プロジェクト@つくばPEACE(ピース)」の冨山香織代表(40)だ。コロナ禍、毎月1回程度、食材の配布を行っているが、今、開催の危機にひんしている。

筑波大学近くの松見公園(同市天久保)を中心に活動している。9月は25日または26日に開催する予定を立て、公園を管理する市公園施設課に申し込んだところ「緊急事態宣言の延長により屋外であっても公園は貸せない」と利用を断られた。

やむを得ず、つくばPEACEはツイッターなどのSNSで、25日か26日に必ず開催することを利用者に知らせた。安心してもらうために日付けのみの告知を行ったという。しかし配布日が約10日後に迫っているにも関わらず、いまだ開催場所は決まっていない。

2020年12月に食料支援活動を立ち上げた。コロナ禍でアルバイトが減って困窮する学生や母子家庭などに食材や日用品を無償提供することにより、生活の心配を減らし安心して勉強してもらうための活動を行っている。

猛暑となった夏期も、屋外の炎天下での活動は、食材が傷んでしまったり、利用者の学生やスタッフが熱中症になる危険を避けるため、屋内の公共施設の利用を申し込んだが、いずれもコロナ禍を理由に断られ、場所探しに奔走した経緯がある。

長蛇の列ができた今年4月の食材無料提供会=松見公園

今回、松見公園の利用を許可しなかった市は、取材に対し「緊急事態宣言の延長もあり、すべての団体に(使用できない旨を)一律で伝えている。人流を抑制するためにも不要不急のイベントは控えてもらいたい」と話した。

市は、つくばPEACEに対しても「緊急事態宣言が出でいるから」の一点張りで、利用の基準等について何も説明はなかったという。一方、つくばPEACEは、コロナ禍で困っている人にとって食料支援はライフラインになる場合もあるとし、一律に使用させないのではなく、利用の基準を設けるべきだとする。

冨山代表は「毎月、必ず開催したい。活動を続けてほしいという声も多く聞く。仕送りが減り学業に専念することができない学生や、二つ以上の仕事を掛け持ちするWワークをせざるを得ない人がいる。(第5波の経済的影響が顕著になる)今からが本当に大変な時期になる。だからこそ支援活動を続けていかなきゃいけない」と語った。

食料支援を利用している利用者の一人で筑波大医学群看護学類3年の女子学生は「今、実習中でバイトが禁止されている中、様々なものを支援していただけて本当にありがたい。特に生理用品や即席で作れるレトルトはとても役立っている。コロナ禍でも支援してくださる人の温かさを感じることができてうれしく思う」とし「まだ開催場所が決まってないと聞き心配。早く会場が決まってほしい」と話す。

冨山代表はさらに「支援者の中には、毎月寄付金を送ってくださる方、配布会ごとに毎回、段ボール3箱ほど持ってきてくださる方もいる」とし「寄付は全国各地から集まってきている。また、スタッフの中にもレトルト食品や寄付金を行っている人もいる。活動を続けていくためにもより多くの寄付をお願いしたい」と話す。(武田唯希)

県産米ナンバー1を決定へ コンテスト出品米を募集

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稲刈りの様子

茨城県産米のおいしさを広くPRするため、茨城県は今年初めて「いばらき 米の極み頂上コンテスト」を開催する。10月15日まで出品米を募集している。

県産米ナンバー1を決定し、首都圏などへ売り込むのが狙い。認知度を高め、県産米の消費拡大とブランド化を目指す。

応募資格は、おいしい米づくりに取り組む県内の生産者または法人で、首都圏への販売PR、販路拡大に意欲的な農家。

出品要件は、今年、県内で生産された水稲うるち玄米で、コシヒカリ、あきたこまちなど産地品種銘柄であること、農産物検査受検済みで等級1等であることーなど。出品数は1経営体(個人、法人)に付き1点のみとし、首都圏での販売PR用に、出品した生産物と同一ロットを5俵を低温貯蔵でき、精米袋商品(2キロ以下)を提供できるーなど。

募集受付は9月1日から10月15日(必着)まで、11月上中旬に1次、2次審査を行う。2次審査への関門(必須条件)は玄米水分が14~15.5%、整粒歩合70%以上、食味値80以上ーなど。2次審査は食味分析機器での評価となる。

2次審査を通過した上位6点を、ホテルの料理長やお米マイスターなどが評価し、順位を決定する。

上位3点について、1位=ローズドール賞(最優秀賞、賞名の意味は金のバラ)、2位=アルエット賞(優秀賞、同ヒバリ)、3位=プリューネ賞(優良賞、同ウメ)を表彰する。

ローズドール賞に輝いた受賞米は、茨城県産の農林水産物と併せ、県が都内の高級レストランなどに提案する。さらに銀座のアンテナショップ「イバラキセンス」で販売、県ウェブサイトやSNSを活用した情報発信など、積極的にPR活動を展開する。(山崎実)

エキスポセンター「ほしまるカフェ」 《ご飯は地球を救う》39

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【コラム・川浪せつ子】つくばエキスポセンター(つくば市吾妻)は、科学万博つくば’85のとき、万博の第2会場として建設されました。その後も科学館として運営されています。H-Ⅱロケットの模型は、つくば市の象徴の一つでもありますね。

だいぶ前、レストランがあったのですが、閉鎖。とても残念でした。それが、今年夏、1カ月ちょっと、カフェがオープンしているとのこと。施設に入らずとも食事ができるというので、早々に行ってみました。

さすが科学館のカフェ。料理を注文するのはQRコード。配膳してくれるのは「SERVI」(サービー)というロボットです。QRコードでの注文は、スマホで時々使っていたので、どうにかアクセスできましたが、サイトに飛んでからがうまくいきません。仕方がなく店員さんを呼んで、教えてもらいながら入力。無事に配膳され、食べることができました。

「IT時代、ついて行けないわ」

最近のネットの進化は、私などがついて行けないぐらいのスピード。茨城県のコロナ対策のお店に行ったら、QRコードで登録ぐらいはできますが…。

3月からスマホで「P」という支払い方法を使っています。半年でポイントが2000円たまりました。また、店独自のポイントがたまるカード(現金支払いOK)で、ポイントを使い、おセンベイを2袋買いました。「買う」というよりも「もらった!」という感じですね。

100万円貯金しても年10円ぐらいしか利息がつかない時代。ポイントってすごい。と言っても、お金を使わないとたまらないのですが…。スーパーで他の方が使っているお店独自のカードを調べたのですが、ネットからの申し込み方がわからずに断念。デジタル庁が発足したようですが、「IT時代、ついて行けないわ」です。

「ほしまるカフェ」は人気で、9月10日から、土日限定のリニューアルオープンになるそうです。(イラストレーター)