日曜日, 4月 20, 2025
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100日目の米バイデン政権 《雑記録》23

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【コラム・瀧田薫】バイデン米大統領は、就任99日目の4月28日、上下両院合同会議で就任後初の議会演説に臨んだ。これは異例の遅さである。しかし、演説は、この短期間内に上げた成果を自画自賛し、さらなる目標の迅速な達成を予告する、自信にあふれたものであった。

バイデン氏が大統領選に勝利した直後、新政権の先行きを危ぶむ声が専門家の間で大勢を占めていた。しかし、100日目現在、新政権への評価は総じて高い。バイデン政権4月時点の支持率は59%(ピュー・リサーチ・センター)と、歴代大統領と比較すると高い方には入らない。しかし、トランプ氏の39%を大きく上回った。トランプ政権末期にあらわになった米社会の分断、分裂現象が依然として吹き荒れている中にしては上出来と言えよう。

さて、演説について筆者が注目するのは、バイデン氏が「世界に背を向けた前政権の姿勢とは決別し、同盟国との国際協調路線をとる」とし、同時に、「国外でのあらゆる活動は、米国の労働者(中間層)を念頭に置いて行う。外交と国内政策の間に、もはや鮮明な線引きはない」と宣言した部分である。

実は、この宣言は、数年前に発表された「報告書」が下敷きになっている。ヒラリー・クリントン氏が2016年の大統領選でトランプ氏に敗北した後、バイデン氏が主導して敗因を分析し、「中間層のための外交政策の見直し」と題する報告書を発表。それには、「外交エリートが支配する外交政策を国民の利益の観点から見直し、衰退する中間層に対する配慮を盛り込む」ことが強調されていた。

中間層のための外交政策の見直し

つまり、バイデン氏は、中間層支援策(国内政策)と外交政策を一つに組み込んだ政策パッケージを早くから用意し、大統領就任と同時に満を持して打ち出したのである。

トランプ氏によって取り込まれた米中間層の支持を民主党に取り戻さなければならない。同時に、中国というライバルやコロナウィルスや地球温暖化という誰も経験したことのない外部要因にも立ち向かって、トランプ政権との違いを際立たせたい。この「中間層のための外交政策の見直し」という、一見ちぐはぐに見える政策パッケージは、多正面作戦を強いられた政権のいわば「苦肉の策」なのかもしれない。

いずれにしても、バイデン政権は時間に追われている。来年の米中間選挙において、復権を狙うトランプ氏と共和党に対し、この政策パッケージが切り札になるだろうか。そうならなければ、現在バイデン与党(民主党)が辛うじて維持している上下両院における多数が崩れ、バイデン政権は一気に「レイムダック」に転落する。

ところで、菅首相とバイデン氏の首脳会談の内容はどのようなものだったのだろうか。その中身の詳細は追々明らかになってくると思われるが、それとともに、両政府の対応能力、特にスピードの違いが目立ってくるものと予想される。(茨城キリスト教大学名誉教授)

町歩き5万人を案内 創立20周年の土浦市観光ボランティアガイド協会

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協会会長の金丸興治さん(左)と顧問の篠崎修一郎さん=まちかど蔵「大徳」(土浦市中央)

観光客はじめ土浦を訪れた人たちに、市内の名所旧跡を案内する土浦市観光ボランティアガイド協会(同市中央1丁目)が創立20周年を迎える。5月20日にはクラフトシビックホール土浦(同市東真鍋町)に関係者を招き、20周年記念式典が開催される。

協会の発足は2001年、市観光協会の「歴史が好きな人」の呼び掛けで集まったのは10人。現在は30人のガイドが在籍している。案内した観光客は当初、年間400人程度だったが徐々に増え2019年には約8000人に上った。

20年間で案内した人数は約5万人に上る。現在はコロナ禍で減っているが、東京や千葉、埼玉のほか九州、青森からも訪れるという。

「とにかく土浦愛」のガイドたち

30人のガイドの年齢層は、50代から80代でメーンは70代。毎月一度はまちかど蔵「野村」(同市中央)で会議を行う。

案内時は最低でも2時間は歩くため、体力のある元気な人ばかりだという。元公務員や元会社員、自営業や主婦などさまざまな人がいるが、共通点は「とにかく土浦を愛していること」だ。

顧問の篠崎修一郎さん(87)は協会設立当初から在籍する。2018年金丸興治さん(80)に引き継ぐまで、会長職には15年以上携わった。「お客さんに土浦の魅力を知っていただききたいという思いで続けてきた。案内してもらってよかった、というお客さんの一言に20年支えられてきた」と話す。

会長の金丸さんは「ガイドは単に建物の歴史を話すだけではない」という。「土浦城主だった土屋家はどういうきっかけで城主になったのか。まちかど蔵の建物に使用されている木材は何か。大徳ではどのような着物を売っていたのかなど、インターネットだけで調べただけでは分からないことを、広く深く伝えることで喜んでもらえる」と語る。

22日に記念のぶらり歩き

発足当初はまちかど蔵「大徳」「野村」についての案内だけだった。しかし観光客からの要望に応えていくうちに、中城通り周辺や亀城公園、市立博物館、さらに同市大手町の東光寺や等覚寺、同市文京にある神龍寺まで範囲が広がっていったという。

ここ数年は小町の里(同市小野)や上高津貝塚ふるさと歴史の広場(同市上高津)、荒川沖まで案内することもあるそうだ。

毎週土日と祝日は、まちかど蔵野村にガイドが1人常駐、観光客の要望があれば案内をする。平日は事前予約があった団体客(3人以上)や市の公民館講座などで案内を行っている。

ボランティアガイドが土日、祝日常駐するまちかど蔵「野村」(同市中央)

また土浦全国花火競技大会やかすみがうらマラソン、桜祭りやひな祭りなどイベント時に観光客の案内も行う。

金丸さんは「土浦は城下町であり水戸街道の宿場町でもある。市全体が歴史の町。ニーズがあれば市内どこでも案内する」とし「20周年以降も土浦の歴史や魅力を伝えていきたい」と意気込みを語った。(伊藤悦子)

◆土浦市観光ボランティアガイド協会創立20周年記念「街中ぶらり歩きをしましょう」 5月22日午前9時30分、まちかど蔵「野村」集合で開催。「城下町と商家」「土浦城と寺社」の2コースをボランティアガイドの案内で歩く。申し込み・問い合わせは電話029-824-2810(土浦市観光協会)、詳細はこちら(市観光協会ホームページ内)

つくば市長の名誉毀損提訴 近く裁判開始《吾妻カガミ》105

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つくば市役所正面玄関サイド

【コラム・坂本栄】つくば市長の五十嵐さんがミニ新聞の記事に名誉を毀損(きそん)されたと裁判に持ち込んだ件については、本欄でも2度ほど取り上げました。その審理が5月半ばから水戸地裁土浦支部で始まるそうです。今回は、訴状で名誉を傷付けられたと主張している22箇所のうち、「総合運動公園用地返還交渉の回数」と「市職員増=人件費増の読み方」について検証します。

原告・市長の主張は「言い訳」

先のコラム「名誉毀損提訴を笑う」(3月1日掲載)と「名誉毀損提訴を検証する」(4月5日掲載)では、記事と訴状を読み込んで、▼総合運動公園用地返還「公約」は、返還の実現(記事)VS単なる返還交渉(訴状)、▼谷田部給食センター建設「補助金なし」は、当初からの計画(記事)VS県との交渉不調の結果(訴状)―と整理しました。その詳細と私の「判定」については、青字でリンクを張った上記コラムをご覧ください。

ざっくり言うと、いずれも、五十嵐さん側の論述は「言い訳」に終始しているということです。ミニ紙の市政批判記事を「フェイク(虚偽)」と主張するこの提訴、五十嵐市政にプラスではなく、マイナスに作用するかもしれません。

「返還交渉」は「アリバイ作り」?

▼検証「運動公園用地返還交渉の回数」:ミニ紙が「(公約では都市再生機構=URと用地を返還する交渉をすると大見えを切ったのに)わずか1度交渉しただけで(返還を)断念した」と書いたのに対し、訴状で「複数回の交渉を行っている」と反論している箇所です。原告の主張は、複数回交渉しているのだから、交渉は1度だけという記事は間違いであり、市長としての名誉を毀損された―という組み立てになっています。

複数回とは何回なのか? 市が議会に提出した資料(今年2月19日付)によると、たった2回だったそうです。市長がUR首都圏ニュータウン本部を訪ね、「市の意向を伝えた」のが1回目、「文書による回答を求めた」のが2回目。市長選挙時の熱い返還キャンペーンを思い起こすと、やる気に欠ける「アリバイ作り」のような交渉でした。それに、1回も2回も「わずか」ですから、裁判でその回数を争うのは「喜劇」ではないでしょうか。

市人件費の著増は「ファクト」

▼検証「市職員増=人件費増の読み方」:ミニ紙が「(五十嵐市政3年目の人件費は前市長時代の人件費に比べて年間)7億6500万円も増えており、(前市長時代の)努力が水泡と消えてしまいます」と、行革の後戻りを批判。これに対し訴状で「あたかも原告の施策により市の税金を無駄に使っているかのように誘導するもの」と論述している箇所です。

この記事は「市総務部人事課資料」を使って書かれており、4年前に比べ、正規職員が195人、非正規職員が326人増え、その結果、人件費が年7億数千万円増えたことを示すデータも掲載されています。問題はこの数字をどう読むかですが、五十嵐市政の行革の「緩さ」は否定しようがありません。ミニ紙の筆が走ったとしても、記事の数字は「ファクト(事実)」であり、フェイクではありません。(経済ジャーナリスト)

日本で幸せに暮らすために 3カ国語でハンドブック「架け橋」

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筑波大4年のメレシオ・ジャン・コリンさん

「外国から日本に来る誰もが幸せに暮らせるように」。そんな思いを込め作られたハンドブック「Briging the gap ( ブリッジング・ザ・ギャップ、邦題:架け橋)」が完成した。外国人が日本で暮らす上で必要な多岐にわたる情報が盛り込まれている。制作は、フィリピン出身の法廷通訳士、島田ビトゥインさん(69)らが発起人となり、筑波大学生のメレシオ・ジャン・コリンさん(22)ら、フィリピンにルーツを持つ若者たちが作業の中心を担った。英語、タガログ語、日本語、各言語をウェブサイトから無料でダウンロードできる。

「これまでになかったハンドブック」

フィリピン人の両親を持つ筑波大4年のメレシオさんは、日系企業のエンジニアとして働く父の仕事の都合で1歳のときに来日した。その後、日本とフィリピンを行き来しつつ中学校から現在は、日本での生活が続いている。

メレシオさんは、今回作成したハンドブックは「これまでになかったタイプ」だと話す。

「日本での生活が長いフィリピン人の目線で作られたことがとても大切です。同じ事柄でも、日本人とは伝え方が変わってきます。規則など明文化された『ダメ』な事柄をあげるだけでなく、慣習による曖昧な判断が必要な場面も解説しました。日本人協力者のチェックも入っているので、誤解のない表現を選ぶことができたと思います」

メレシオさんは幼い頃、両親にかわって自宅に届く書類に目を通していた。保険や年金、ゴミ出しの規則など、わかりにくいことが多かった。大学ではフィリピンからの留学生とともに学園祭や地域イベントで文化紹介をするなど積極的に2つの文化の「架け橋」として活動している。

若者たちが制作の中心となった(写真提供:野口和恵)

ハンドブックで特におすすめの箇所を聞くと、法律関係をあげた。

「ビザや在留カード、その他、万が一疑われたり、法律に引っかかったりしてしまうと、日本人でもアドバイスできる人は多くありません。ハンドブックには、相談機関や対処法が書かれています。自分の身を守るためにも必要な知識だと思います」

また生活に欠かせない就業に関する事柄も充実させた。知っておくべき雇用契約内容、仕事の探し方、失業後の補償と手続きなど。

日常生活に必要な事柄もまとまっている。習慣、マナー、冠婚葬祭の服装にお金のやりとり、地域社会の一員としての自治会参加、児童館の利用方法など多岐にわたる。

また、「日本に来る前の確認事項」というチェックリストもあり、訪日前にウェブサイトからダウンロードすることで、事前に準備することができる。さらに情報を得たい場合、各項目に記載されたQRコードから詳細情報にアクセスできる。

若者のエンパワーメントの機会に

ハンドブック制作の発起人である島田ビトゥインさんは「外国人が日本で10年、20年生きていくために必要なことをまとめました」と話す。

10年以上、法廷通訳をして感じていたことがある。10代前半でフィリピンから来日する若者が、本人が望まない形で犯罪に関わってしまう姿を何度も目の当たりにした。その背景に、家や学校に居場所を作れないことがあった。そんな若者の多くが、日本語が理解できず、相談先もわからず、日本社会との間に軋轢を抱えざるを得ない状況があるという。

島田ビトゥインさん(写真右端)(写真提供:野口和恵)

島田さんはなんとかしたいと思っていた。周囲の仲間に声をかけ出し合ったアイデアが、ハンドブック作成になった。日本とフィリピンを結ぶ「架け橋」と名付けたこの活動は、2017年にスタートした。まず、フィリピンから来た人たちが抱える問題を知るため各地のフィリピン人コミュニティーを訪ねインタビューを繰り返した。より広い意見を得られるようウェブアンケートでも意見を募った。

そこで見えたのは、日本に来るための準備が不足していることだった。必要な情報を当事者目線で提供しようと考えた。

本の中には、エッセイとして個人のライフストーリーも複数掲載している。

「個人の物語は、辛い時にどう乗り越えたのか、どんな支援を得ていたのか具体的な事例が盛り込まれているので、そこを見て欲しいです」

ハンドブック作成には、フィリピンにルーツを持つ多くの若者が参加し、デザイン、執筆、翻訳などを担った。書籍版の印刷は、フィリピン人が経営する印刷会社によるものだ。

専用ウェブサイトから各言語ダウンロードができる

「このプロジェクトは、若者たちのエンパワーメントの場にもなりました。この経験を次の世代に引き継いで、将来の子どもたちのための活動につながればうれしい。フィリピン人だけでなく、あらゆる移民に応用できる内容です。是非、日本人にも読んでもらいたいと思い日本語版も作成しました」

総務省によると日本に暮らす外国人は2020年6月の時点で288万5904人。茨城には約7万人が暮らし、その内、土浦市とつくば市には1万5000人余りが暮らしている。両市の人口の4%あまり。全国平均の約2倍となっている。

ハンドブック「Briging the gap」はこちらから無料ダウンロードできる。(柴田大輔)

障害ある児童への養育支援 《介護教育の現場から》6

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福祉専門校の学習風景(今回コラムとは関係ありません)

【コラム・岩松珠美】東京都港区南青山に4月1日、児童相談所などが入る複合施設「港区子ども家庭総合支援センター」がオープンした。ここは、子育て中の人を支援する「子ども家庭支援センター」、専門性の高い職員が児童虐待や非行などに対応する「児童相談所」、子どもの養育に支援が必要な母子が入る「母子生活支援施設」から成っている。

この施建設をめぐっては、地元の一部住民が「南青山のブランドイメージにふさわしくない」などと反対したことがあり、その報道を覚えている方もいると思う。コロナ禍で、児童虐待の相談受理数が増加。子どもへの支援とともに、子育て力が乏しい保護者も支援する必要があり、これら3施設の開所は時宜を得たものといえる。

出産や子育て環境が整わない生活環境下で、妊娠から出産、出生した子どもの養育に継続的に寄り添うシェルターの整備が地方でも進んでいる。生まれてくる子どもに最善の生活環境を提供するには、既存の乳児院や児童養護施設だけではなく、里親制度や特別養子縁組制度のような、家庭に近い養育を受けられる制度の整備が進んでいる。

「あすなろの郷」「つくし学園」

最近の傾向として、これらの施設や制度に託される子どもたちには、重度の疾患や障害を持って生まれてきたことで、わが子として受け入れることができず、家庭から離されるケースが増加している。こういった子どもたちには、重度心身障害児入所施設のような場所は少ない。水戸市の「あすなろの郷」でも、医療型障害児入所施設・療養介護事業所としては定員40名ほど。

親元で養育されている障害を持つ子どもたちは、土浦市の「つくし学園」のように療育センターで支援を受けながら、義務教育期間は特別支援学校などで教育と療育を受けられる。これらの制度の多くは18歳までの支援体制である。その後、数少ない障害者の通所デイサービスか、通所作業所を見つけるのが大変で、地域社会での受け皿がとても不足している。(つくばアジア福祉専門学校校長)

JA水郷つくば大使・安達勇人さん レンコン栽培スタート

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ADACHI HOUSE LOTUS FARMの直筆看板を持つ安達さん=土浦市田村町

声優・俳優・アーティスト業のかたわら、いばらき大使として活動し、昨年12月にはJA水郷つくば大使に就任した安達勇人さん。このほど土浦市田村町に自身のハス田「アダチハウス・ロータスファーム(ADACHI HOUSE LOTUS FARM)」を開き、4月12日に種バスの植え付けをした。「スーパーなどで売っているレンコンは見てきたが、ハス田に入るのは初めて」だそうだ。

JA水郷つくばが日本一の産地を誇るレンコンを特にPRしたいと、安達さん自身の希望で栽培にチャレンジする。広さ10アール(1000平メートル)の区画が用意され、今後、収穫までの一連の作業を体験するという。

真剣な表情でハス田に挑む

初めてのハス田は、深さはひざ下ほどだが、泥がまとわりつくので足の抜き差しにも四苦八苦。一方、作業を教えてくれる田村れんこん部会青年部のメンバーは、止まらずにすいすい歩く。実は、動かずにいると泥が締まって、ますます抜けなくなるのだそうだ。足を踏み込むときはかかとから。つま先からだとバランスを崩してつんのめりやすい。抜くときは足を真上に持ち上げる。

植え付け作業では、同JAレンコン部会の石神一幸部会長から「芽を傷めないよう注意しながら、優しく泥のベッドに寝かせる。押さえが足りないと浮き上がってしまうので、優し過ぎず強過ぎず」とのアドバイスが飛んだ。

エンタメが農業とタッグ

植え付けを終えての感想は「想像以上にかなり大変。楽しいし奥が深い。青年部の皆さんは速く植えられてすごい、かっこいい。生産者さんの側に立ってみて、土浦のおいしいレンコンが、農家の皆さんのたくさんの愛でできているんだと改めて思った。茨城でも東京でも土には触れてきたけれど、こんなに全身泥だらけになるのは初めて。みんなにも一度体験してもらったら、レンコンへのイメージが変わって、さらに愛してもらえるのでは」とのこと。

青年部の大川正勝部長は、作業する安達さんの様子を見て「童心に帰ったように、新鮮な気持ちで楽しんでいたようだ。彼の人柄に触れ、また話を聞いて、応援したい気持ちがますます強くなった」との印象。

大川さんはこの機会を通じて、都心部にいたのでは気付かない田舎や農家の良さがたくさんあることを発信したいという。「農業は自分の考え一つでいろんなことができる職業。良いものを作るという根本は昔と同じだが、経営スタイルや販売戦略など大きく変わってきている。農業のさまざまな可能性を、安達さんと共に広げていけるといい」

安達さんも「エンタメはお客さんに気持ちいいものを持ち帰っていただく。それは生産者の方々も同じだと思う。おいしいものを作って感動を与える。これから青年部の皆さんと一緒に、僕らしい新しいやり方で、老若男女に向けてメッセージを送り、農業を盛り上げていきたい」と応じる。

ロータスファーム全景

今後、安達さんは定期的にロータスファームを訪れ、スケジュールの許す限り草刈り・追肥・防除などの作業に携わり、9月下旬には収穫を迎える予定。JA水郷つくばの特設サイト「れんこんチャンネル」や、NHK水戸放送局「いば6」番組内「レンコン向上委員会」コーナーで随時、その様子を知らせるという。(池田充雄)

そんなことも分からないの? 《続・気軽にSOS》84

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【コラム・浅井和幸】もう20年ぐらい前になるでしょうか。ある女性と2人で酒を飲んでいました。いつも笑顔で朗らかなAさん。なんでもおいしく食べて飲み、どんな話もうれしそうに話をする女性でした。ところが、こちらから何気ない質問をしたら、突然泣き出してしまいました。

突然どうしたのか訳が分かりません。「どうしたの?」と聞くと、質問にうまく答えられないので怖くなったのだと言います。「どうして怖いの?」と聞くと、みんなが自分のことをバカだと言うとのこと。そこからの会話は次の通りです。

浅井「今、2人で飲んで会話しているよね。なんで、みんながバカだというと思うの? それとも、浅井にバカにされていると思うの?」

Aさん「小さい時から、みんながバカだと言うの。分からないから、どうして?と質問しても、そんなことも分からないのかって、みんながバカにするの」

浅井「そうなんだ。でもそれは、Aさんの質問に周りがうまく答えられないから、そんなことも分からないのかと、逃げているだけだね」

Aさんは、とても理解力があり、順序立てて説明をすると、たくさんのことを身に着けていける人でした。分かった気になって物事をやり過ごすことが下手だったので、疑問をよく人に聞く子どもだったそうです。

でも、あまり質問を続けると、周りが怒り出してしまうこともあったそうです。「そんなことも分からないの?」の言葉が怖くなり、質問をすることもされることも怖くなっていったそうです。

分からないことを分からないと言える勇気

事実や言葉に対して理解力がある人が、理解力や表現力がなく強がる人から強い言葉で責められ、押さえつけられて、事実が何であるか分からなくなり、恐々と生きるということが少なからず起こります。

そんなことも分からないの? なんで失敗するんだ? もっと早く相談に来てくれればよかったのに。このような言葉で、相手を責めることで得られることは、ちょっとした自尊心と責任逃れぐらいが関の山です。問題解決にはほとんど役に立ちません。

物事に対して理解力があるからこそ、分からないことを分からないと考えられる。それを、分かることも分からないこともゴチャ混ぜにして分かった気になっている人にたたかれ、質問することどころか、さらに理解しようという気持ちをそがれていく。とてももったいないことですね。

分からないことを分からないと言える勇気、そして環境はとても大切です。どこまでが理解できてどこからが理解できないのか。その境目が、勉強、練習、訓練をする部分なのですから。そこが把握できることが、成長につながる大切な部分です。

もちろん、分からないところをそのままにして前に進んで、ある所でつながって、そのままにした分からないところが、いつの間にか分かるようになることもあります。ですから、あまり一面からだけにとらわれないことは、とても大切です。(精神保健福祉士)

資本金2900万円少ない、なぜ? つくば市まちづくり会社

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4月1日設立されたまちづくり会社「つくばまちなかデザイン」の事務所入り口=つくば市吾妻、つくばセンタービル1階

つくば市中心市街地ににぎわいを創出する目的で、4月1日設立された第3セクターのまちづくり会社「つくばまちなかデザイン」(同市吾妻、内山博文社長)の資本金が、これまでの市の説明より2900万円少ないことが分かった。

27日開かれた市議会中心市街地まちづくり調査特別委員会で、山中真弓市議(共産)が指摘した。

つくば市の説明は1億5千万円

市はこれまで議会や市ホームページで、筆頭株主の市が6000万円、沼尻産業、関彰商事、LIGHTz(ライツ)の3社が各3000万円の計1億5000万円出資して設立すると説明してきた。

NEWSつくばが登記簿で確認したところ、設立時の資本金は1億5000万円ではなく、1億2100万円だった。

実際は2900万円少なかったことについて市はこれまで、議会などに説明してなかった。

27日の議会での市の説明によると、民間企業3社のうちAIベンチャーのLIGHTz(つくば市千現)の出資が3000万円ではなく100万円だったためという。

議会で山中市議は「この間ずっと、3社が3000万円ずつ出資すると説明を受けてきた。まちづくり会社は大丈夫か。事実関係を調べてほしい」とただした。「市はいつの時点で(LIGHTzの出資が)100万円だということが分かったのか」(飯岡宏之市議)などの質問も出た。

市学園地区市街地振興課はこれに対し「事実関係を確認し、調査をして報告したい」と述べるにとどまった。

2月下旬に株主全員が合意

取材に対し、LIGHTz広報は30日「出資の経緯につきましては当社から単独でお話できるものではなく、つくば市にて対応を定め、正式なご回答を申し上げます」などとしている。

出資の経緯について市は「去年夏ごろから3社に出資をお願いしていた。LIGHTzからは会社設立の時点で100万円という申し出があった。(残り2900万円について)いつ、どの金額が払い込まれるかについては、今後、LIGHTzとの話し合いになるので、今の時点ではお話できない」としている。

一方、当時、市担当職員だった、つくばまちなかデザインの小林遼平専務は「2月上旬ごろ、LIGHTzから『コロナの影響で一括でなく分割で払いたい。設立時は100万円、そのあと少しずつ払う』という話があった」とし、「2月下旬に株主全員が、分割で構わないと合意した」と説明。「今後(LIGHTzは)コロナの状況を見ながら増資していくことになる」とする。

一方、議会や市HPで資本金の変更を説明しなかったことに対しては「(議会への)説明の中でも、4月1日にすべて払い込むと言ってなかった。LIGHTzが3000万円払うことに変わりはなかった」ためだとした。

市は3社から各3000万円の出資を受けることを前提に今年3月、まちづくり会社の事業収支を議会に説明していた。

小林専務は「事業収支では(3社からの各3000万円を含め)出資金を7~9社から2億円として試算している。現在、MINTO機構(民間都市開発推進機構)を含めて追加出資を調整しており、今後、出資を増やしていく」とし、6月からつくばセンタービル1階のアイアイモールの一部を解体し貸しオフィスに改修する事業計画に変更は生じないとしている。(鈴木宏子)

ホーム開幕戦で初勝利 つくばFC

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後半30分、コーナーキックから山下宇一がヘディングシュートを放つ。青のユニフォームがつくばFC(撮影/高橋浩一)

関東サッカーリーグ1部前期第4節、ジョイフル本田つくばFC 対 東京23FCの試合が29日、つくば市山木のセキショウ・チャレンジスタジアムで開かれ、つくばが2-0でリーグ戦初勝利を挙げた。つくばはこの試合が今季ホーム開幕戦。大型連休の初日ではあったが、東京都に緊急事態宣言が発令されているため無観客での開催となった。

第55回関東サッカーリーグ1部 前期第4節(4月29日、セキショウ・チャレンジスタジアム)
ジョイフル本田つくばFC 2-0 東京23FC
前半1-0
後半1-0

リーグ戦初勝利に喜ぶつくばイレブン(同)

つくばは今季、かつてJ2水戸やJ1大宮でDF(ディフェンダー)として活躍した冨田大介さんを新監督に迎えて始動。だがここまで0勝3敗で12チーム中11位という成績。一方の東京23は3連勝で2位に付けている。

強い風雨の中、コイントスでつくばが風上の陣地を選び試合開始。地の利を生かした攻撃で猛然と相手ゴールに迫り、上々の立ち上がりを見せた。だが東京23は、ボールと共に数人の選手がラッシュをかける迫力ある攻撃で対抗。前半9分には守備の要の竹中広大が負傷交代、つくばはシステム変更を迫られるなど、難しいゲーム展開となっていった。

負傷した竹中に替わり左SBに入った冷岡。後半には追加点をアシストした(同)

だが前半30分ごろからつくばが盛り返し、相手のプレスをかわしてボールを前へ運び始める。そして前半アディショナルタイムには待望の先制点。ボランチ岩出拓也のフィードに右SH(サイドハーフ)鳴海慈が抜け出し、シュートは一度はポストに嫌われるものの、その跳ね返りに自ら詰めた。

「システムが変わって慣れないポジションだったが、この位置からでも裏を取れる自信はあった。岩出がルックアップした(上を向いた)瞬間にダイアゴナル(斜め)に走り込むと、ちょうどいい位置に落としてくれた。2度目のシュートは戻ってくる相手DFの逆をとって、無人のゴールに流し込んだ」と振り返った鳴海。国士館大学からの大卒ルーキーだ。

前半アディショナルタイム、鳴海のシュート。ここから先制点が生まれた(同)

後半は、最初は押し込まれる時間帯が多かったが、「相手のドリブルからのスルーパスやワンツーに注意し、前に行き過ぎずじっくり守ろう」との冨田監督の指示を選手が体現、無失点で試合を締めた。「前節まではちょっとした対応のミスで崩されていたが、たくましくなった。交代選手もしっかり戦ってくれた」と冨田監督は選手を讃えた。

後半39分には追加点。冷岡幸輝の左サイドからのクロスに途中出場の伊藤陸人が合わせた。「いいクロスがきたし、動き出しも良かった。自分らしいゴールだと思う」との感想。流通経済大学からの新入団で「大学時代も途中から出て多く点を決めていた。今日もリードはしていたが押し込まれていたので、自分が声を出してボールを引き出そうと思った」という。

後半39分、伊藤が追加点を決める(同)

これでつくばは勝ち点3を獲得し、暫定だが8位タイに浮上。「正直ほっとしている。これから1戦1戦、開幕から取れてなかった分をしっかり取り返しに行く」と、冨田監督は前を見据える。(池田充雄)

和食の合言葉「まごわやさしい」 《食とエトセトラ》12

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霞ケ浦総合公園=土浦市大岩田

【コラム・吉田礼子】「茨城県は健康寿命が高い県」ということはあまり知られていないかもしれない。平均寿命は、男性が80.2歳(34位)、女性が86.3歳(47位)だが、健康寿命は、男性が72.5歳(9位)、女性が75.5歳(8位)と上位に。おいしい食材が身近にあって手に入りやすく、気候にも恵まれているからだろうか。

ご存じの方も多いと思うが、今回は「まごわやさしい」という言葉で、健康寿命上位の背景を読み解きたいと思う。

豆、ゴマ、ワカメ、野菜、魚、椎茸、イモ

:豆類。日本人の昔からのタンパク質供給源は、大豆、小豆、黒豆。加工して、味噌や納豆などの発酵食品、高野豆腐、湯葉(ゆば)など。 保存性を高めるために、発酵や乾物にする生活の知恵に脱帽。

:ゴマ。そのほか、クルミ、落花生。リノール酸が含まれる油脂、ミネラル、食物繊維が多い。すりつぶして、ゴマあえ、ゴマ豆腐などに。精進料理にも欠かせない。

:ワカメ。そのほか、ノリ、コンブ。塩蔵、乾燥させたものを戻して味噌汁や煮物でいただく。だし(グルタミン酸)として和食に欠かせない。食物繊維も豊富。

:野菜。緑黄色、淡色野菜など。ビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富。生でも煮ても蒸しても、四季折々合った食べ方ができ、体の調子を整える。

:魚類。食べ方は、生、焼く、煮る、蒸す、揚げる…。海に囲まれた日本人には必要不可欠な食材。川や湖でも、川魚、小魚、貝類。乾燥・塩蔵して、だしとしても欠かせない。

:椎茸(しいたけ)などキノコ類。ミネラル、食物繊維が豊富。乾燥して、だしとしても優れもの。

:イモ類。炭水化物だけでなく、食物繊維も多い。忘れないように取り入れたい。まずはご飯(胚芽米、古代米、五穀類を入れ)。

和食は高齢者の食事のようにも見えるが、若い人にとってもどこかホットする食事。冷凍、冷蔵、缶詰め、ビン詰めなど上手に活用を。人は今日食べたものでつくられており、日々の食事を大切に。(料理教室主宰) 

熱中症警戒アラート開始 GWの農作業 注意を

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田植えの準備が始まる

熱中症の危険を呼び掛けるため、環境省と気象庁は28日から「熱中症警戒アラート」を全国で開始した。近年、熱中症による死亡者数・救急搬送者数は増加傾向にある。つくば市では、2019年、20年の2年間に207件の熱中症による救急搬送があった。

全国では昨年、熱中症による救急搬送者数が約5万8000人を数えた。08年夏季(7〜9月)は約2万3000人だった。熱中症による全国の死者数は18年以降、年間1000人超で推移し、65歳以上の高齢者が8割を占めている。

警戒アラートは、気温や湿度、日差しの強さなどを元に算出された「暑さ指数(WBGT)」をもとに、熱中症になる危険性が高くなると予測したときに発表される。環境省の熱中症予防サイトや、自治体の防災無線、報道などを通じて知ることができる。

前日の午後5時と当日の午前5時の2回、気象庁の予報区ごとに発表する。運用は、4月28日から10月27日までで、茨城県を含む関東甲信の1都8県では昨年試行されていた。

政府は今年3月「熱中症対策行動計画」を策定し、熱中症による年間の死亡者数を1000人以下にする目標を打ち立て、危険が特に大きい高齢者への予防行動促進に重点を置いている。

ビニールハウスで死亡例も

農作業中に熱中症にかかる人も多い。全国では2020年までの10年間で、農作業中の熱中症が元で251人が命を落としている。そのうち70歳以上が8割を占める。つくば市では、19年から20年、2年間の救急搬送のうち9件が農作業中による熱中症だった。

JA茨城中央会によると熱中症の事例として、室内が40度を超えることもあるビニールハウスで作業時の死亡例があるという。また、夏に向け作業量が増加する、水田や畑の畦(あぜ)などに生える雑草の除草作業時に熱中症によって救急搬送される事例も多いという。

県内在住の農家、大倉史江さん(42)は、田畑には日陰がなく直射日光を浴び続けること、また、地表からの熱、水田の照り返しも危険だと話す。特に高齢者が無理をして長時間一人で作業することの危険性を指摘する。

つくば消防本部

対策として、つくば市消防本部救急課長補佐の金子清志さん(51)は、体調を崩した時にすぐに対応できるよう、複数人での作業が重要だと話す。そして少しでも体調に異変を感じれば作業を中断し休憩を入れること、その際、風通しのよい日陰等での休憩に加え、必要があれば車内でクーラーを適切に使用し体を冷却させることを勧めている。

その他に留意点として、作業中だけでなく、作業前からこまめな水分補給をとること、気温の高い時間帯の作業をなるべく避けることの重要性を指摘する。飲料水はお茶や水よりも、スポーツドリンクを飲むこと、また合間に塩飴をなめるなどして塩分を補給する必要だと話す。

政府は、コロナ禍における熱中症予防行動として「高温や多湿といった環境下でのマスク着用は、熱中症のリスクが高くなるおそれがある」とし、屋外では2メートル以上の十分な人との距離を確保した上で、マスクをはずすよう呼び掛けている。(柴田大輔)

クレオ、5月19日オープン つくば駅前 1階核店舗は「ロピア」

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5月19日、1階がオープンする「トナリエ クレオ」=つくば市吾妻、つくば駅前

つくば駅前の商業施設、クレオ(同市吾妻)が5月19日、リニューアルオープンする。同施設を取得した日本エスコン(東京本社・港区虎ノ門、伊藤貴俊社長)が28日発表した。今回オープンするのは、食品スーパーとデパ地下型の食品物販専門店が入る1階のみで、2~3階は夏ごろのオープンとなるという。

1階の核店舗は、低価格、ビッグサイズのオリジナル商品などで急拡大する食品スーパー「ロピア」(本店・神奈川県川崎市)で、県内初出店だ。

併せて、つくば駅前のペデストリアンデッキを一部延伸し、同駅からクレオ、キュート、モグをつなぐ遊歩道が同日開通する。

夏ごろオープンする2階は専門店とキッズスクール、3階は物販、学習塾、アミューズメント、フィットネスなどが入る。4~6階のオフィスは昨年11月から順次、入居が始まっている。

5月19日の再オープンに合わせて、クレオは「トナリエ クレオ」に名称変更される。同社が取得した隣接の「トナリエ キュート」「トナリエ モグ」と合わせて「トナリエ つくばスクエア」となり、一体で運営される。

クレオが商業施設として再生するのは、2017年2月に西武筑波店、18年1月にイオンつくば駅前店が撤退して以来。一方、イオンつくば駅前店跡は来年11月の入居開始に向け、18階建ての分譲マンション(218戸)の建設が進む。

クレオの再オープンについて同社は「地域密着型として、地域住民に毎日利用してもらえる商業施設を目指す」とし、「地域に愛され、街の誇りとなるような開発を行い、地域のコミュニティ形成、活性化に貢献できる施設を目指す」としている。

トナリエ クレオは、敷地面積約1万平方メートル、延べ床面積約4万2000平方メートル、地下2階地上8階建て。店舗面積は約2万5000平方メートル、店舗数は54区画。(鈴木宏子)

筑波大「やどかり祭」 2年連続中止決定 コロナ禍で存続の危機に

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2019年度のやどかり祭の様子。クラスごとに出店した新入生の屋台が並ぶ(宿舎祭実行委員会提供)

筑波大学(つくば市天王台)で毎年5月末に催される学生イベント「やどかり祭」の中止が決定された。同大の宿舎祭実行委員会(望月圭委員長)が主催する春の風物詩的イベントで、新入生らがクラスごとに屋台を出店し、親睦を深める祭りだ。コロナ禍で昨年に引き続き2年連続の中止が決まり、祭りは存続の危機にある。

「やどかり祭は新入生同士が絆を深める大事なイベント。延期やオンライン開催の可能性をギリギリまで模索したが、準備期間の短さと委員の人員不足から断念した」と話すのは、同実行委員長で応用理工学類3年の望月圭さんだ。

昨年のやどかり祭が中止になって以降、実行委では規模を大きく縮小し感染対策を徹底することで、現地で開催することを目指していた。しかし新型コロナの感染拡大は続き、同大学生課からも対面での開催に難色を示された。実行委でもオンライン開催や延期など、別の方向性を探ろうとしたが「いずれも難しい」と断念した。

2019年度実行委員の集合写真。髪の色を奇抜に染めるのが「実行委員らしいファッション」だった(同)

背景にあるのは、授業のオンライン化に伴って生じた活動の難しさだ。同大は昨年度、一部の授業を除き全面的にオンラインで講義を行う方針を取った。そのため、新入生が大学に来る機会はほとんどなかった。

望月委員長は「昨年は新入生がほとんど大学に居なかったこともあって、勧誘の機会が失われ、実行委員会に加入する学生も大きく減った。コロナ禍のさなかに入学した現在の2年生の委員は10数人ほど。例年であれば1学年で40人強の委員がいるから、コロナ禍で入った委員は例年の半分以下ということになる」と語る。

この状況が続けば、やどかり祭そのものの存続も危ぶまれるという。「今年も勧誘がうまくいかなければ、実行委員会の体制は維持できない。2年連続の中止でさらに勧誘がしにくくなった。『今年は中止だが来年なら開催できる』という保証はどこにもなく、『祭りの運営をしませんか』と新入生を誘うことは難しい。このままでは先細り。近いうちにやどかり祭はもう開催できないということになったとしても不思議ではない」と望月委員長。

2019年度やどかり祭の様子。例年、筑波大学学生宿舎の敷地を使って行われていた(同)

副委員長で比較文化学類3年の樋口将也さんは「大変な状況であることは間違いないが、やどかり祭は多くの筑波大生にとって大切な思い出。それを無くしてしまうというわけにはいかない。今年度はまずは勧誘に力を入れ、実行委員会体制の維持を目指す」と語る。

危機的状況だが、希望もある。「もし来年度以降、祭りが実施できるならば、実際に運営する委員は『実際に自分では見たことがない祭り』を企画して実施することになる。大変なことかもしれないが、今までとは全く違うやどかり祭の可能性が開けるかもしれない。」と樋口副委員長は話す。(山口和紀)

◆やどかり祭実行委員会は新入生を募集している。詳細は公式HPへ。

「端午の節句」の食べ物 《県南の食生活》24

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かしわ餅

【コラム・古家晴美】もうすぐゴールデンウイークだ。時節柄、自粛生活を選ばれる方も多いだろう。今回はゴールデンウイーク中に迎える端午の節句について触れてみたい。単語の節句の食べ物といえば、最初に思い付くのが柏(かしわ)餅かもしれない。現在では和菓子店の店頭に並ぶが、最近まで自宅で手作りすることが普通であった。

初節句のときに、お祝いをいただいた家に柏餅をお返しとして配った(牛久市、かすみがうら市、つくば市、土浦市、龍ケ崎市、阿見町、行方市など)。柏餅以外に、白い餅(かすみがうら市、行方市)や草餅(稲敷市、つくば市、行方市)を配ったり、赤飯をふかして食べることもあった(稲敷市、つくば市、龍ケ崎市)。

県北地域や鹿行地域では、柏餅のほかに、しんこ餅(米粉の餅に食紅で赤や緑の色を点々とつける)を作ったり、柏の葉がない家では、茗荷(ミョウガ)の葉や朴(ホオ)の葉を用いることもあったと言う。

さらに全国的に見ると、その多様性に目を見張る。柏餅とちまき、笹(ササ)団子、笹餅などが入り乱れて分布しており、一概に「東の柏餅」「西のちまき」とは言い切れない。

シンプルに見える「ちまき」でも、中身がもち米のもの(山形県)、米粉のもの(山形県)、両方をブレンドしたもの(福井県)、小麦粉のもの(徳島県)、包む葉が笹(新潟県、山形県、新潟県、富山県、福井県、大阪府、三重県)以外に、カヤ・ヨシの葉(愛知県、奈良県、兵庫県、徳島県)、あるいはススキの葉でつと状に包む(愛知県)など、さまざまだ。

子どもの成長と家の繁栄を願う

柏餅も、柏の葉以外に、サルトリイバラの葉(三重県)や朴の葉(静岡県)を用い、これに干だらを添えて、お祝いのお返しとする(東京都、埼玉県)。中身に米粉以外に、もち米・粟の粉・きびの粉(静岡県)を用いることもある。

むろん、この他に、初節句の来客に対しては、銘々膳もしくは大皿で、天ぷら、白和え、キンピラなど、地域によっては、刺身、煮魚、色とりどりの太巻きずしなどのご馳走が出される。

ところで、奈良県には、特大のちまき2本と柏餅をイグサで縛り付けた「ふんぐり」という行事食がある。これは、特に入り婿した家で初節句を迎える際に、婿の実家に贈られていた。男性の象徴であることは、形態からも名称からも容易に想像がつく。

このように、節句のごちそうは、気候や産物などが深く関わり生み出された行事食だが、その根底に流れる子どもの成長と共に家の繁栄を願う切実な思いは、共通している。今日でも、形を変えつつ、子どものイベントで作られる行事食として「こんぐり(こふんぐりが語源)」が生き続けている所以(ゆえん)ではなかろうか。(筑波学院大学教授)

エスカレーター設置めぐり論戦 つくばセンタービル改修計画で市議会

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基本計画で示されたリニューアル後のつくばセンター広場鳥瞰図。ホテル日航つくば側(右上)と旧ライトオンビル側(左)にエスカレーターが各1基設置され、ホテル側は階段の形状も変更される(図はつくば市提供)

つくば市が進めているつくばセンタービル(同市吾妻)のリニューアル計画で、エスカレーター2基の設置の是非が市議会で議論になっている。27日開かれた市議会中心市街地まちづくり調査特別委(ヘイズ・ジョン委員長)で、2基のうち、ホテル日航つくば側に計画されている1基について、費用対効果や建物のデザインを守る観点から「エスカレーターは1基だけでいい」という意見と、にぎわいをつくる観点から「2つある方がよい」という意見に分かれた。

市は「今後の詳細設計の中で、1基は設置しないことも可能」とし「議会のまとまった意見を踏まえて今後協議していきたい」とした。

エスカレーターは、つくば駅前のペデストリアンデッキとつくばセンター広場の一体的利用を促進するためとし、市が、ホテル日航つくば2階入り口そばと、旧ライトオンビル前に計2基設置する計画だ。ホテル側では、センター広場の視認性を高めるためとして、エスカレーター設置と合わせて、つくばセンタービルの壁や階段を一部壊し、階段の形状を変更する計画が進んでいる。

エスカレーターと新たな階段が設置されれば壊される壁と階段。ノバホールから松見公園展望塔まで一直線につながる位置にある

議会では、2基のうち1基の、ホテル側のエスカレーターについて「(2階ペデストリアンデッキから1階センター広場までの)半分の踊り場までしか設置されない。費用も8700万円くらいかかり費用対効果の観点からするともったいない。エスカレーターは一つでいい」「(同センタービルを設計した)磯崎新氏のデザインを考えると、デザインの完成度が削られる」など、ホテル側のエスカレーター設置は必要ないとする意見が出された。

これに対し「この場所をより活性化させる観点から西側と北側に二つある方が自然。北側を削るとアクセス性が削られる」「にぎわいを取り戻すことであれば、あってもいい。目的がある人は今までも(センター広場に)下りた。エスカレーターがあれば子供は興味をもって乗り降りする。にぎわいを取り戻す、活性化が目的なら、あってもいい」など2基とも必要だとする意見とに分かれた。

市は6月にも実施設計を発注する予定で、エスカレーター設置の是非は議会で引き続き審議される。

歩車分離のノバホール脇階段にスロープ

一方、27日の特別委では、2020年度に策定されたリニューアル基本計画が明らかにされた。エスカレーター2基と階段の形状変更のほかに、土浦学園線沿いのノバホール脇の階段のほぼ半分をスロープにし、イベント開催時に荷物を運ぶ車が通行できるよう改修する計画も新たに示された。

ほぼ半分が改修されイベント用の車両が通行するスロープが設置される土浦学園線沿いのノバホール脇の階段。筑波研究学園都市は歩道と車道を分離する「歩車分離」を設計思想の一つとしてつくられた

ほかに、現在のつくばイノベ―ジョンプラザと市民活動センターの場所に、吾妻交流センター、市民活動センター、消費者生活センター、国際交流機能を集約し、市民窓口と併せて設置される市民活動拠点の配置計画図などが明らかにされた。

市民の要望 どれほどあったのか

27日の同特別委のやりとりは以下の通り。敬称略

小野泰宏市議 (センター広場の)視認性を高めるためというのがエスカレーターの設置目的だが、エスカレーターは踊り場まで半分しか設置されない。価格は8700万円くらい。費用対効果の観点からするともったいない。エスカレーターは(旧ライトオンビル側の)1カ所だけでいい。

市学園地区市街地振興課長 現在は駅の方から(センター広場が)見えにくい。広場の景観やデザインを損なわない範囲で(エスカレーターは)踊り場までとする。設置しないことも今後の詳細設計の中で可能。場合によって1基のみで検討することもあり得る。

市都市計画部長 今年度(リニューアルの)実施設計を行う。2段階で考え、後から(エスカレーターの)必要性を判断してつくるというやり方と、最初から削ってしまうことも考えられる。議会のまとまった意見を踏まえて、今後、協議していきたい。

山中真弓市議 高齢者や視覚障害者の中にはエスカレーターを使えない人もいる。だれのためにエスカレーターを設置するかを考えると(2基とも)いらない。

小森谷さやか市議 視覚障害者にも(エスカレーターを)使いたい人がいる。きちんと点字ブロックを設置して、音声のアナウンスがあればいい。実際に障害がある人に現場を見てもらって意見をいただく場がほしい。

黒田健祐市議 エスカレーターは西側と北側に2つある方が自然。北側を削ると回遊性、アクセス性が削られる。この場所(センター広場)をより活性化させる視点で必要。

橋本佳子市議 費用対効果の視点は大事。エスカレーターを設置してほしいという市民の要望がどれほどあったのか。

金子和雄市議 エスカレーター2基をどのくらいの人が活用するのか、評価される基準をどのように考えたのか、それが見えない。(エレベーターを改修する等)大型の電動車いすでも使えるようになればいい。

長塚俊宏市議 黒田議員にほぼ賛成。目的がある人はいまでも(センター広場に)下りた。エスカレーターがあれば子どもが興味をもって乗り降りする。にぎわいを取り戻すことであれば、あってもいい。

山本美和市議 「(つくばセンタービルを設計した)磯崎新氏のデザインを考えると、ノバホールの入り口からセンター広場の真ん中を通って松見公園展望台までまっすぐ続く視線の中に、(エレベーターと階段を設定すれば壊されることになる)V字型の階段がまっすぐ突き抜けていく。エスカレーターがあれば便利かもしれないが、あの階段を無くしては視線が向くデザインの完成度が削られてしまう。磯崎新氏のデザインを優先するなら、ここにエスカレーターを設置するのはいかがなものか。

中村重雄市議 (ノバホール脇の階段を改修して新設する)搬入用のスロープだが、まつりつくばに出店した。(車がペデストリアンデッキに進入できる)出入口が少なくて、搬入・搬出が渋滞になる。(ノバホール脇の階段につくるスロープの幅は車両が通るには)かなりぎりぎりではないか。もう少し緩やかな傾斜にしてほしい。

課長 (通行できるのは)2トン以下の車両だが、幅は確保でき、通るに支障はない。傾斜は詳細設計で検討できる。

中村 イベント開催前は車両、イベント開催中は車いすが通れる(傾斜に)してほしい。

皆川幸枝市議 改修にあたって利用できる(国や県からの)補助金の種類や条件は。

課長 国交省から2分の1の補助金が出るが、(使えるかどうかは)施設によって限られる。

皆川 消費生活センターを入れることが補助金が出る条件になるのか。

課長 機能を集約することで補助金が出る都市構造再編集中支援事業費補助を活用する。(リニューアルの)すべての機能に補助が出るかどうか、国や県に相談しているところ。

皆川 (市民活動拠点は)公共スペースが足りないという指摘もある。配置を変えることでコミュニティスペースを広くできないか。補助金の条件はいつごろ分かるのか。(ノバホールの)小ホールは(イノベ―ジョンプラザの)2階につくり直すが、今も土日は使う人が多い。音楽イベントのスペースが足りないという声もある。貸しスペースが足りないのであれば、小ホールを運動や会議に貸し出すことなどを見込んでいるのか。

課長 片方を使ってないとき、別の用途に使うことも考えられる。ノバホールをどのように運営するかに関わっていくので、今後、調整しながら進めたい。

皆川 この計画、スペースでいいのか。運用計画と合わせてお示しいただければ。

飯岡宏之市議 (リニューアル基本計画の)新たな市民活動拠点には「①吾妻交流センター、市民活動センター、消費者生活センター、国際交流機能を統合するとともに、市民窓口を新設することで、市民交流の促進、市民サービス機能の向上を実現②音楽室、調理室の機能向上、フリースペースの拡充により、様々な市民ニーズに対応」とあるが、市民部とうまく連絡調整しているのか。

課長 市民部から必要な面積をいただき、調整を密にしながら進めている。

飯岡 吾妻交流センターを頻繁に使う市民団体との意見調整も必要ではないか。

課長 交流センターを通じて調整を行っている。

飯岡 市民説明会が無いので、その辺、心配がある。かなり手狭になるので、市民の意見を取り入れて進めてほしい。

橋本 (吾妻交流センターが集約されることで)交流センターが一つ減る。生涯学習としての位置づけを考えると、利用者の利用回数を減らすことになると本末転倒になる。市民がどのくらい影響を受けるかを説明いただきたい。コピー機や印刷機も一つになるが、うまく回るのか、利便性が担保されるのか、いろいろな団体の意見を聞いていくことは当然。

課長 吾妻交流センターが無くなるということではない、運営の中で残すこともあるし、一体として運営することもある。市民部でいろいろ検討し、それを元に(計画策定を)行っている。用途は確定ではないので、足りない部分は増やした方がいいのか、担当課と調整して進めたい。

橋本 根拠を示さないで、足りる、大丈夫といわれても困る。数字と合わせて根拠を示してほしい。

課長 大丈夫ですという意味ではない。それを今後、検討したい。

山中 だれのための改修なのか、そもそも市民の声を聞いてないことに根本的問題がある。本来、市民がどういうものがほしいのか、どんな機能が必要かを聞くべき。

人気の筑波山スタンプラリーアプリ 新コース、29日スタート

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筑波山頂.男体山側から女体山を望む(山と溪谷社提供)

山のスタンプラリーアプリ「YAMASTA(ヤマスタ)」による「筑波山トリビアスタンプラリー」が29日からスタートする。アプリは月刊誌『山と溪谷』を発行する山と溪谷社(東京都千代田区、川崎深雪社長)が提供する。イベントは、つくばエクスプレス(TX)を運行する首都圏新都市鉄道が協賛、つくば市、つくば観光コンベンション協会などが協力して、10月31日まで行われる。

スタンプラリーは、筑波山の名所や観光スポットを巡りながら、筑波山の山麓から頂上までをぐるっと歩いて楽しめる趣向。TXとコラボするスタンプラリーとしては第7弾となる。好評だった第6弾の「筑波山八景スタンプラリー」を継続開催とし、2つのコース設定で登山客を迎える。

山頂や観光名所などの所定の場所でアプリ内のチェックインボタンを押すと、その場所ごとにデザインされたデジタルスタンプが発行される。スマホのGPS機能を利用し、携帯電波(通話)の通じないオフライン下でもチェックインの利用ができる仕組みだ。

設定された複数のチェックイン場所を回ってスタンプを全部集めると、認定証がもらえ、達成感が味わえる。山と溪谷社は現在、全国で55のスタンプラリーイベントを実施しており、参加ユーザーは16万アカウントを超えているそうだ。

筑波山スタンプラリーは、これまでに参加者数が1万を超える人気イベントになっている。新コースはチェックイン対象に旧筑波山郵便局、筑波山神社、白蛇弁天、弁慶茶屋跡、筑波山(女体山山頂・男体山山頂)など7つの場所を設定。普段何気なく通っている道や場所の、知られざる歴史や秘密を知ることができ、筑波山の魅力を新たな視点から再発見できるということだ。

もう1つの「筑波山八景」は筑波山大鳥居、筑波山神社、つつじヶ丘、女体山駅、筑波山(女体山山頂・男体山山頂)、ガマ石など8カ所を巡る。このいずれかのコースを達成し、獲得したトロフィーまたはスタンプを筑波山観光案内所(つくば市筑波)で提示すると、その場で缶バッジと認定がプレゼントされる。

スタンプラリーのチェックイン場所マップ(同)

「県境を越えないよう」周知

筑波山を歩いて登る人向けの企画のため、つくば駅を除くTX各駅で発売される「筑波山あるきっぷ」の利用が推奨されている。1枚の切符でTXのほか、直行筑波山シャトルバス、つくバスに2日間乗ることができる。山と溪谷社によれば、スタンプ押印のために窓口に並んだりスタッフと対面する必要もないため、混雑を避けソーシャルディスタンスを保ちながら楽しめるウィズコロナの企画だとしている。

ただし、緊急事態宣言の発せられた東京都では「県境を越えない」行動が求められているので、当面「行政の指示に従うよう」周知するという。「イベントは10月まで長めに設定してあるので時間の取れるときにのんびり楽しんでほしい」と呼び掛けている。(相澤冬樹)

➡詳細はこちら

島の赤いレンガの建物 《平熱日記》84

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【コラム・斉藤裕之】レンガの建物は珍しい。地震が多く多湿な風土にも不向きなのだろう。ゆえに示準(しじゅん)化石のようでもあるし、その当時の経済や文化の状況を示す示相(しそう)化石のようでもある。横浜の赤レンガ倉庫や牛久シャトーのようにその時代の繁栄を象徴するかのように残っているものもあれば、忘れられたかのようにひっそりと佇(たたず)むものもある。

京都南禅寺で出会った水道橋や、引っ越してきた当時見つけた龍ケ崎のレンガの門がそうだった。

それにしても、幼少期から何度もこの島を訪れていたのに気が付かなかった。夏に展覧会を予定している、ホーランエー食堂のある郷里の粭島(すくもじま、山口県周南市)を訪れたのはまだ桜の残るころ。半分は釣り目的。打ち合わせが終わって、車窓からちょっとだけ見えた赤い建物。

言われなければわからないほどの、短く平たんな橋で半島とつながっている小さな島、粭島。ちなみに粭とは籾殻(もみがら)のことで、名前の通り籾殻の山のような形をしている。島の南側は険しい岩場で、なおかつ波や風がもろに当たるのだろう、民家は島の北側の海っぺりに集まっている。

今は廃校となっている2階建ての小学校も、学校にしては珍しく北向きの校舎だ。その建物も十分趣があるのだが、そのすぐ近くに1棟のレンガ造りの建物があるという。「これが売りに出ちょるんよ」と運転席の弟。

瀬戸内海は穏やかな海だ。埼玉育ちのカミさんなどは、初めてこの海を見たとき、「みずうみ?」とこぼしたほどだ。実はこの内海でシーカヤックを駆って釣りを楽しむ弟は、常々この島でのシーカヤックでのレジャーの可能性を考えていたという。その拠点としてこの赤いレンガの建物に目をつけたらしい。

また、最近はサイクリングの目的地として、この島までは市街地から程よい距離にあり、最高に気持ちのいいコースとのこと。実際、私たちがホーランエー食堂で名物の「ジャコ天そば」をごちそうになっていたとき、サイクリングのユニフォームを着た女性が入って来た。

いよいよ斉藤画伯の美術館か?

そういえば今から30年ほど前。「赤レンガの東京駅を残す運動」というのがあって、当時有名な文化人に混じって大学の恩師がそこに名を連ねていた。その保存活動の一環として、赤レンガの東京駅の絵を描いた子供たちの絵を隣接する百貨店に展示する手伝いをしたことを思い出した。そうやって東京駅も今の姿を残した。

そこで急にイメージがわいてきた。あの建物に展示スペースも作ろう。シーカヤックは天候や季節の影響も受けるだろうし…。いよいよ斉藤画伯の美術館か? 弟の長女が最近描いているボールペンによる作品の展示もいいな。先立つものはないけど、夢想するのは絵描きの得意とするところだ。

まれに、考えていることが世の中の出来事とシンクロすることがある。今日も暗闇の中の散歩を終えて新聞を開くと、日立の高校生が「カラミ煉瓦で町おこし」なる記事を見つけた。やはりレンガの赤は人を引きつけるらしい。(画家)

土浦市などを感染拡大市町村に追加 県全体をステージ3に引き上げ

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茨城県庁(イラストは「いばらきアマビエちゃん」)

県内で新型コロナウイルスの感染がさらに拡大しているとして、大井川和彦知事は26日、土浦市など9市町を感染拡大市町村に追加指定すると発表した。併せて県全域の感染状況の判断指標を1段階引き上げ、感染が拡大している状態のステージ3とした。今後さらに悪化した場合は、国にまん延防止重点措置の適用申請を検討するという。

感染拡大市町村は、直近1週間の陽性者数が人口1万人当たり1.5人を超える自治体。土浦市は同1.89人、つくば市は同0.73人。22日にすでに6市町村が指定されており、今回の9市町に加えて計15市町になる。

19日指定の6市町は、水戸、かすみがうら市、阿見町など。今回の追加指定は土浦市のほか、常総、石岡、守谷市などで、期間は29日から5月12日までの2週間。

県は、指定された市町のすべての飲食店に対し、営業時間を夜8時までとし、酒類の提供を午後7時までとするよう要請している。協力店に対しては、1店舗当たり売上高の規模に応じて1日2万5000円から7万5000円の協力金を支給する。ただしテイクアウトは午後8時以降も可。

ほかに感染拡大市町村に対して、不要不急の外出自粛、イベントは参加人数を収容人数の50%以下にするーなどを呼び掛け散ている。

特に大型連休中は、他県との往来を極力控えるよう県全域に呼び掛けている。

県全体の現在の感染状況は、12~18日の週は新規感染者数が1日平均45.6人だったのに対し、19~25日の週は同65人と1.24倍に増えた。そのうち経路不明者は同20人から26人と1.1倍に増加しており、水戸市を中心にひじょうに大きな感染が広がっている状況だとした。

それに伴って病床稼働率も急速に増え、県全体で180床を超えた。大井川知事はコロナ専用病床を現在の410床体制から、順次、600床体制に切り替えたいとしている。

「気軽にクラシックを」つくばリサイタル10周年 5月22日、筑波大生主催

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昨年冬につくばカピオホールで催されたリサイタルの様子(つくばリサイタルシリーズ実行委員会提供)

筑波大生有志が主催するコンサート「つくばリサイタルシリーズ 一流奏者が贈る 色とりどりの世界」が5月22日、同市竹園、つくばカピオ ホールで開催される。同リサイタルは、同大の学生有志でつくる、つくばリサイタルシリーズ実行委員会が「学生に気軽にクラシックを楽しんでもらいたい」と毎年行っている公演会で、今年で10周年を迎える。

10周年の節目となる今公演では、若い演奏家の発掘を目的とする「ヤングコンサートアーティスト国際オーディション」で2019年度第1位を獲得するなど国内外で評価の高い弦楽四重奏団「カルテット・アマービレ」と、都内のオーケストラで活躍するメンバーらが2012年に結成した木管五重奏団「アミューズ・クインテット」の2組が出演する。

これまでの公演では1回の公演につき1組が出演していたが「今回は10周年記念ということで、過去に出演したアーティストから2組に出演を依頼した。10周年に相応しい2組」と実行委員会で同大3年の岩永彩花さんは話す。

公演では5曲が披露される。いずれも企画の創設者である同大人文社会系、江藤光紀准教授(主たる研究テーマは芸術を巡る公共性)が作曲した。江藤准教授は学生時代に独学で作曲の勉強を始め、これまで多数の室内楽曲を作曲してきた。過去のリサイタルでも江藤准教授が書き下ろした曲が毎回演奏されており、10周年となる今公演ではその中から4曲と新作1曲の計5曲が披露される。

江藤准教授は「回を重ねるごとに、実行委員の皆が演奏会運営の能力を向上させ、経験を蓄積し、後輩たちに引き継いできた。その姿勢が評価されて、著名な、あるいは将来を嘱望されたアーティストの方々がスケジュールを調整して出演してくださるようになった。それとともに、多くのお客様に足を運んでいただけるようになった」とこれまでを振り返る。

昨年12月には新型コロナウイルスが感染拡大を続ける中、感染対策を入念に行ったうえで第9回(20年12月2日付)を開催した。当日のアンケートには「久々にコンサートを聞いた。大変だけど来てよかった」という声が多数寄せられた。岩永さんは「アンケートを見て、大変な状況だったが、来てくださった方に楽しんでいただけたことが実感できた」と話す。

コロナ禍での開催について江藤准教授は「パフォーミングアーツ(実演芸術)は、演者と観客が同じ場所・時間で感動を共有する点に、最大の魅力がある。コロナはそこに深刻なダメージを与えた。困難な状況を積極的に乗り越えることで、実行委員会も大きく成長していると思う」と話した。(山口和紀)

◆開場は5月22日(土)午後1時15分、開演は2時。入場料は学生無料、一般1000円(消費税込み)。チケットの詳細は公式ホームページまで。

昨年冬のリサイタルは、感染防止対策のため観客席の間隔が空けられた(同)

福島第1の汚染水、海洋放出へ-問題点は 《邑から日本を見る》86

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18日、いわき市で開かれた「廃炉・汚染水・処理水対策福島協議会」の様子

【コラム・先﨑千尋】政府は今月13日、東京電力福島第1原発で増え続ける放射性物質を含んだ処理水を海洋に放出する方針を決め、18日にいわき市で「廃炉・汚染水・処理水対策福島協議会」を開き、地元市町村長、漁連、農協など関係者にその方針を伝えた。県内の首長や団体代表から意見を直接聞いたのは初めて。

それに対して、「放出には反対。政府の方針は関係者の理解を得ておらず、国、東電への信頼性に疑問がある」(野崎哲県漁連会長)という声をはじめ、「方針を決めた後で説明するということは、結論ありきではないか。海洋放出は、漁民だけでなく県民全体にも影響を及ぼす。正確な、透明性のある情報を出してほしい。海洋放出による損害は、風評ではなく実害だ」など、政府の方針に批判的な意見が多く出された。

しかし、政府や東電の答弁は「今回の意見は今後の検討に反映させたい」などというもので、具体策には触れなかった。今回の経過を取材したが、そのなかで私にはいくつか疑問が湧いた。

東電は2015年に県漁連に「関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない」と文書で約束している。今回の政府の決定では、このことには触れていない。地元との約束を守らず、「丁寧な説明をする」と言われても、誰が信用するのだろうか。「国が決めたのだからそれに従って放出する」と、東電は主役のはずなのに脇役に回って、他人事のようだ。

第一番に、被害を受ける漁業関係者らが反対しても、国と東電はそれを無視して海洋放出する。沖縄・辺野古への新基地建設と同じ構図ではないか。

もう一つは、風評被害(実害)に対する賠償問題だ。東電は16日に公表した賠償方針で「期間や地域、業種を限定せずに賠償する」と明記した。商品やサービスの取引量の減少、価格の下落などに基づき、損害額を算定する。しかし、その基準はまだ決まっていない。風評と損害の因果関係を厳しく審査され、被害があっても救済されないこともあり得る。

事故賠償と同じことの繰り返し?

東京電力福島第1原発の事故に伴う賠償を求める方法は、東電への直接請求と、国の原子力賠償紛争解決センター(ADR)への提訴、訴訟の3つがある。

このうちADRへの申立件数は、2020年末現在で約2万2000件。このうち約6000件は和解に至っていない。私と交流のある飯舘村の菅野哲さんらは、ADRが示した和解案を東電が拒否したため、訴訟に持ち込んだ。この10年の経過を見ていると、賠償するかどうか、またその金額は、東電が決めること、としか思えない。

今度の汚染処理水の海洋放出がなされれば、原発本体の事故の際の賠償と同じことが繰り返されるのではないか。

朝日新聞は19日の紙面で「処理水を放出しても、雨や地下水の流入で増える汚染水が処分量を上回るので、(処理水をためる)タンクの増設は避けられない」と報じている。そうだとすれば、「廃炉作業のスペースを確保するために処理水を放出する」という政府の方針とは食い違うことになる。国、東電はどうするのだろうか。(元瓜連町長)