木曜日, 7月 7, 2022
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どさくさに紛れトンデモ法案が成立 《邑から日本を見る》90

【コラム・先﨑千尋】テレビも新聞も、コロナワクチン注射とオリンピック・パラリンピックのオンパレード。国会で審議すべき大事な問題があっても、菅総理は野党の追及を恐れてか、国会を延長することなく、今月16日に店じまいしてしまった。しかし、そのどさくさに紛れ、自衛隊基地・原発など安全保障上重要な施設周辺や国境離島の土地利用規制法が16日未明に成立した。

この法律により、重要施設に指定された地域の土地が自由に取引できなくなるだけでなく、利用調査により、国民の思想・良心の自由が侵害されかねない。それなのに、衆参両院での審議時間は20数時間という短いもの。

政府は、この法律は、外国資本が土地を買収し施設の活動を妨害することで日本の安保環境が脅かされる事態に対処するためだと説明している。しかし、国会の審議では具体的な規制対象の区域や行為は明らかにしなかった。今後「規制方針」を決めると言う。

法律では、自衛隊や在日米軍基地、原発などの重要施設の周囲約1キロを「注視区域」に指定。重要性が高い所は「特別注視区域」とする。施設の機能を阻害する行為は処罰対象になる。どこを、何がということは、これから決める。しかしそれは政令などによるので、閣議決定だけ。政府がこうしたいと決めれば、それで通ってしまう。国会は関与できない仕組みだ。恣意的な運用が心配される。

どういう情報を集めるかも政令で定める。政府の裁量次第だ。この法の趣旨が「安全保障上」だから、政府がやろうと思えば何でも調査できるということ。これは憲法で保障されている思想信条の自由に反する危険性がある。

指定区域の候補地は全国で1000カ所以上に上ると言われているが、狙い撃ちされるのは米軍基地の島、沖縄であろう。沖縄本島を含め、すべてが国境離島だ。その気になれば沖縄県全域を区域に指定できる。県民全部を調査対象にすることができるということだ。名護市辺野古では新基地建設が進められている。「機材の搬入を阻止する行為は処罰の対象」になり得る。  

首相の首相による首相のための法案

原発の反対運動も対象にされる。なぜ原発が対象になるのかは国会では明らかにされなかった。原発では、周辺の住民は被害者であって、被害をもたらすのは原発そのものなのだ。東京電力福島第1原発の事故でそのことは証明されているではないか。

とにかく、それらの施設の周辺地域では、安全保障の名のもとに市民の行動が日常的に監視される。家族や交友関係にまで及ぶ可能性もある。戦前の治安維持法を思い出す。

6月14日の参議院での参考人質疑で、弁護士の馬奈木巌太郎さんは「取り返しのつかない法案。誰も止められず、事後検証もできない。沖縄を丸ごと監視下に置く発想。首相に限定のない権限を与えており、内閣総理大臣の内閣総理大臣による内閣総理大臣のための法案だ」と述べた。

ナチスドイツの全権委任法と同じではないか。それでも、この法案は国会を通ってしまった。今の国会は野党の勢力が弱いので、首相が「これを通す」と言えば法律ができてしまう。与党の中にまともな政治家はいないのだろうか。つい、ため息が出てしまう。(元瓜連町長)

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