日曜日, 10月 1, 2023
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つくば市役所敷地で初の譲渡会 愛護団体の保護猫約30匹

つくば市の動物愛護団体「Team.ホーリーキャット」(重松聖子代表)が保護した猫の里親になってくれる人を探す譲渡会が10月1日、同市役所敷地内で開催される。 同会は6年前に発足。県南地域を中心に、捨てられたり、野良猫が出産するなど、飼育が困難な猫を保護して譲渡会を催したり、増え続ける野良猫を一時捕獲して不妊・去勢手術後に元の場所に戻す地域猫活動などを7人のメンバーがチームとなって続けている。 これまで、活動拠点のつくばでの譲渡会は借りられる場所が見つからず、牛久などで毎月2、3回の譲渡会を開催してきた。なんとかつくばで譲渡会が開けないかと、動物愛護の啓発や犬猫の不妊・去勢手術の補助事業を行っている、つくば市環境保全課との話し合いを重ねて初の譲渡会開催となる。同課の沼尻輝夫課長は「庁舎敷地内での譲渡会が犬猫の殺処分減少の第一歩になれば」と話す。 猫は春と秋が出産期といわれるが、栄養状態がよい、人工光も含め1日12時間以上明るいーなどの条件がそろえば一年中いつでも出産するといわれる。道端に生後間もない数匹が捨てられている、空き家で野良猫が出産したなどの連絡が入り、保護活動にはいとまがないそうだ。手の平に乗るほどの小さな命は同市栗原に同会が設けた保護部屋に収容し、ミルクボランティアの経験があるメンバー、村上由里子さんが猫用の粉ミルクを用いて人工哺乳で育てている。 保護猫を迎えるには条件がある。①責任と愛情を持って最期まで飼育する②脱走防止を常に心掛ける③災害時など避難の必要がある場合は同伴避難をするーなどだ。 譲渡費用必要

ベテラン教員にも新たな気付き【不登校生徒の居場所 校内フリースクール】下

伊東誠一さん(仮名、56歳)は、つくば市の公立中学校に今春設置された不登校生徒の居場所「校内フリースクール」の支援員を務める。県南地域の小中学校の教員として教壇に立ち、教頭も務めた。担当教科は理科。思うところがあって今春で学校教員を退いた。その後は放課後児童クラブの指導員になろうかと考えたが、周囲の勧めがあって校内フリースクールの支援員に就いた。 伊東さんが担当する生徒は5人で、このうち3人が常時通学している。登下校の時間や学習する内容、過ごし方は生徒たちの自由意志に任せている。校内フリースクールができたことで、それまで通所していた民間フリースクールを辞めてきた生徒もいるという。 着任し、子どもたちと過ごして分かったことがある。自分の意見をうまく言語化できない子どもたちだからこそ、その話に耳を傾けることの大切さだ。通常の教室では授業中に教員が学習事項を板書して生徒がそれをノートに書き写す。教員にとってはクラス全員が書き写すことは当たり前だが、書き写すことが苦手な子どもは「何が嫌なのか」を聞いてもらえず、級友からは怠けていると見られて学校が嫌いになることがある。「過去の私は子どもの意見をじっくり聞かず、自分主導で子どもたちに勉強を強制していた」と振り返る。 「待つ」ことの大切さにも気づいた。問題が解けない子どもがいたら、考えるヒントを示して答えを考えだすのをじっと待つ。自分は勉強ができないと思い込んでいる子どもほど、答えを見つけ出せたことで達成感を得て自己肯定感が高まる。同時に「考える力」をつけることになる。忍耐強く待てるようになった伊東さんだが、教えることが当たり前の教員にとって待つより教えたくなってしまう。ベテラン教員になるほど待つのは難しいのではないかと伊東さんはいう。 さらに、人と関わるのが苦手な子どもを孤立させないためにどうしたらいいかと考えたが、取り越し苦労だった。女子生徒2人が意気投合して楽しそうに過ごしている。分かり合える友だちがいて安心できる人間関係があれば、学校は楽しくなる。生きづらさを抱えている子どもたちにとって、校内フリースクールは育ちと学びの選択肢の一つとして必要と伊東さんは言い切る。 中学の教員だったころ、高校受験を控えた中3の2学期から不登校になった生徒の担任をしていたことがある。不登校の理由を聞いたがつかみどころがなく、家庭訪問や保護者を交えて話をしたが良い結果は得られなかった。生徒は卒業証書を校長室で受け取り、私立高校に進んだ。

教員確保できず 募集条件緩和を検討 つくば市【不登校生徒の居場所 校内フリースクール】上

つくば市は、不登校の小中学生が学校内で自由に過ごす居場所「校内フリースクール」の整備を始めたが、配置する支援員が足りない状況にある。今年度は新たにスタートした22校のうち3校で専任の支援員が確保できていない。来年度は市内全校に校内フリースクールを設置する計画だが、教員不足がいわれる中、支援員を確保できるかが課題になっている。 同市は、2021年12月に実施した不登校児童生徒の学習支援施設運営事業者の選定をめぐって迷走した問題を受けて、22年度に不登校支援のあり方について検討した。学校内の支援策の一つとして、全小中学校に校内フリースクールを整備し、不登校や教室に入れない児童生徒が安心して過ごせる居場所をつくる方針を決めた。 22年度に中学校1校に校内フリースクールを開設。今年度は、中学校16校につくり、全ての中学校17校に校内フリースクールを整備した。小学校は今年度、空き教室の活用ができ不登校児童が比較的多い6校に設置した。来年度は新設される1校を含め全32校に整備する目標を掲げている。 校内フリースクールには児童生徒の相談や学習支援を行う専任の支援員1人が常駐することになっている。ところが、小中学校合わせて22校の校内フリースクールのうち、支援員を配置できたのは19校で、小中3校は今も支援員が不在のままだ。 「数えきれない教員に応募呼び掛けた」 支援員はどのように募集が行われ、支援員のいない校内フリースクールはどう運営されているのか。市教育局学び推進課によると、支援員の公募は市のホームページ(HP)で2月に始まった。主な勤務条件は▽任期は24年3月31日までの1年間▽公立小・中学校に週4日または5日勤務▽時給1281円、通勤費支給▽教員免許保持者―。市教育相談センター所長で校内フリースクール担当の久松和則参事は「数え切れないほど多くの現役教員やOB教員に電話をかけて応援と応募を呼び掛けた」と話した。

ハンバーガーに寄せる「おいしい絵」 つくばで川浪せつ子さん水彩画展

NEWSつくばにコラム「ご飯は世界を救う」と「ご近所スケッチ」を執筆している川浪せつ子さんの水彩画展が29日まで、つくば市松代のマツシロバーガー&カフェで開かれている。同市在住の水彩画家、イラストレーターによる「おいしい絵 ハンバーガーの水彩画展」で、同店のハンバーガーやスイーツなどを描いた作品17点と、つくばや周辺地域の四季折々の風景画21点が展示されている。 いずれの作品もA4サイズほどの判型に、透明水彩絵の具を用いて細やかなタッチで丁寧に描き込まれている。風景画は2017年に廃刊となった常陽新聞に川浪さんが寄稿していたコラム「花もダンゴも」で掲載された作品。透明感と清涼感に満ちた作品を熱心に鑑賞する入店者の姿が見られた。 細やかなタッチで描かれたハンバーガーなどの水彩画に魅入る女性たち 会場のマツシロバーガー&カフェは、コラム「ご飯は世界を救う」の54回目に登場したハンバーガー店(2月14日付)。以前は同市小野崎の商業施設でフランチャイズ「フレッシュネスバーガーLALAガーデンつくば店」として営業していた。川浪さんは当時から、施設内の民間のスポーツクラブに通うときに必ず立ち寄る居心地の良い店だったが、22年10月にLALAガーデンつくばが閉店したことで独立し、フランチャイズ店で培ったノウハウを生かし、昨年末松代ショッピングセンター内にオープンした。 独立を果たした同店を応援しようと川浪さんらは3月から準備を進めてきたそうで、おいしそうなハンバーガーが壁面を飾っている。入店した50代から60代の女性たちからは「つい食べ慣れたハンバーガーを注文してしまうが、レパートリーが広がりそう」といった声や「風景画は自然の清々しい空気感が感じられて優しい気持ちにさせてくれる」と話していた。 川浪さんは「ランチスケッチ『ご飯は世界を救う』には食べることは心を豊かにしてくれるという思いと、安全で安定した食への思いを込めている」と話す。イラストを添えながら独自の視点で捉えた店の成り立ちや人間模様が書き添えられ、食べログとは一味違うランチガイドに仕上がっている。昨年から始まった「ご近所スケッチ」は地元再発見散歩で、身近な場所の魅力に触れられる。(橋立多美)

民間フリースクールに補助 つくば市が募集開始 不登校支援

つくば市は、不登校児童生徒の学習を支援したり居場所を提供する市内の民間フリースクールに、運営経費の2分の1などを支援する補助事業をスタートさせる。3日に補助金交付要綱を公表し申請受付を開始した。 家庭の経済的負担を減らし、民間フリースクールの経営を支えることで、不登校児童生徒の社会的自立を支援することが目的。特例として8月3日までに申請すると今年4月にさかのぼって補助金適用とする。 同市は、2021年12月に実施した不登校児童生徒の学習支援施設運営事業者の選定をめぐって迷走した問題を受けて、22年度に不登校支援のあり方について検討し、支援策の一つとして、民間事業者と利用者に支援する方針を決めた。 昨年、市内の小中学生が利用している民間施設8カ所を調査し、小中学生100人弱が利用している実態があったことなどから、今年3月、23年度当初予算として、民間への補助金4850万円と利用者への交付金2400万円の計7250万円を計上した。利用者100人程度への支援を想定している。昨年市内の小中学生の利用がなかった施設も含め、市内にある既存の民間10施設と、市に相談があった5施設に補助金交付について情報提供するとしている。 補助対象となるフリースクールは①月曜から金曜まで週3日以上開所する②午前8時から午後5時までの間に4時間以上開所し学習支援または居場所を提供する③不登校児童生徒の相談や指導に関して深い理解と知識、経験がある④学校との間に連携協力体制を構築できる⑤必要な施設及び設備がある、または準備できる⑥家庭と連携協力関係を構築できるーの6つの要件を満たすことなどが必要。 一方、フリースクール運営の実績や、スタッフの資格の有無や経験年数、施設の広さや設備など明確な基準は示されていない。これについて市教育局学び推進課は「フリースクールは発展途上で経験値はなく数字で推し量れない」とし、「(民間事業者は)手探りで多様な学習の機会を提供しようと活動されており、増加傾向にある不登校の児童生徒たちの居場所を広げていきたい」とする。

校内フリースクールの可能性考える 21日にトークイベント つくば

不登校の子どもたちのフリースクールを運営する認定NPO法人リヴォルヴ学校教育研究所(つくば市二の宮、小野村哲理事長)が21日、同市館野、小野川交流センターでトークイベントを開く。地域ぐるみで子どもたちの学びと育ちを支えるために何が大切かを考える「校内サードプレイス(フリースクール)の可能性」がテーマ。 校内フリースクールは、教室に行けない子どもたちが、学校内の別の場所で学んだり過ごしたりする居場所で、つくば市は今年度、全公立中学校と不登校児童が多い6つの小学校に校内フリースクールを設置する。24年度は市内すべての小中学校に整備する方針だ。学習指導要領などに縛られず、子どもたちが主体的に学びに参加することをサポートする立場をとっている。 市の校内フリースクールに今年度から常駐の教員からの申し出で、教員6人が参加し4月下旬、むすびつくばライズ学園で見学説明会が開催された。参加した教員からは「子どもたちにどのように向き合っていけばいいのか、自分たち自身が相談できる場が大切」「同じ立場の先生たちと情報交換できてよかった」などの感想が寄せられたことが、トークイベント開催のきっかけになった。 ゲストトークで話す石井正宏さん(NPO法人パノラマ提供) イベントではゲストトークとして、神奈川県の県立高校2カ所に居場所カフェをつくった横浜市のNPO法人パノラマの石井正宏理事長が「校内居場所カフェの成果と課題」と題して話す。石井さんは14年12月、田奈高校の図書館に「ぴっかりカフェ」、17年6月に大和東高校の多目的ホールに「ボーダーカフェ」をオープンさせた。それぞれ週1日、無料でドリンクを提供し、昼休みや放課後に地域のボランティアが協力して運営している。いずれも毎回平均100人近い生徒が利用し、高校中退、進路未決定を防ぐ効果も期待されている。 続いてパネルディスカッションでは、20年からつくば市茎崎中で始まった別室登校にスタッフを派遣していた認定NPOのLearning...

小学校区に1カ所を【広がる子ども食堂】6

子どもに無料または低料金で食事を提供し、地域交流の場ともなっている「子ども食堂」。2017年から県内の子ども食堂など、食を通じた地域の多様な居場所づくりの設立・運営のサポートに取り組んでいる茨城NPOセンター・コモンズ事務局長で、子ども食堂サポートセンターいばらき(水戸市)の大野覚さん(43)によると、子どもが1人でも安心して利用できる子ども食堂には、子どもの貧困対策と地域の交流拠点の2つの柱がある。 ところが、子ども食堂イコール貧困対策のイメージが広がり、多感な時期の子どもは「周囲から貧困家庭と思われたくない」と利用を控えてしまうことがあるという。支援を必要とする子どもが入店しにくい状況を生まないため店の名称をあえて「子ども食堂」とせず、地域交流を前面に打ち出している食堂が多い。大野さんは「生活が苦しい子どもだけに限定している食堂はわずかで、全体の8~9割の子ども食堂が『地域の誰もが利用できるみんなの居場所』と広く門戸を開いている」と話す。 子ども食堂を開設する方法は、食品衛生責任者の資格が必要など保健所の問題だけで「参入の敷居が低い」と大野さんが言い表すように、開設しようという仲間がいて、調理と食事ができる公的施設などを借りることができれば始めることができる。運営者の7割を市民団体とNPO法人が占め、近年は民間企業が運営する子ども食堂が出現してきた。大野さんはその理由を「社会貢献として消費者に得点が高いからではないか」と分析する。 運営は明確な定義があるわけではなく、運営団体によって開催頻度、スタイル、メニューなどはさまざま。開催頻度は月に1回または2回が多く、土曜の昼食時や平日夜に営業したり、日曜の朝食時間帯に取り組む食堂もある。料金は子どもは無料、有料の場合は100~300円が主流で、大人については子どもより割高に設定されている。年齢を問わず誰でも無料の食堂もある。また、釜でご飯を炊いたり、地域の伝統食の提供や野菜の収穫と料理体験など、食育活動を行っている子ども食堂もある。 県内の子ども食堂の多くが市民ボランティアが主体となって運営されており、課題は「運営費の確保」だ。ボランティアが基本となる経営は必ずしも恵まれたものではなく、寄付や助成金制度などを活用しながら運営を行っているところが多いと大野さんはいう。 食材は農業協同組合からコメや野菜、フードバンクから加工品などの提供を受けているほか、野菜を多く作り過ぎた農家や、地域住民からの寄付で賄われている。

企業も参加 飲食店やキッチンカーで【広がる子ども食堂】5

飲食店が子ども食堂を開くなど、企業参加型の取り組みも現れ始めている。 つくば市天久保の中国料理店、百香亭筑波大学店は、月2回土曜日の昼間、1日30食限定で無料の弁当を配布する「百香亭みんなの食堂」を実施している。 利用は子どもから現役世代、高齢者まで年齢制限はない。筑波大学が近いことから大学生の利用も多い。2月初め、店頭に「みんなの食堂」の看板が出された同店では、成人の男性が無料弁当を注文していた。店内で数分待ち、スタッフからあたたかい弁当を受け取る。同店がテイクアウトで販売している600円の弁当と同じ大きさの器に中華のおかず3品とごはんが入っている。この日のおかずはにんにくの芽と豚肉の炒め物にたけのこの和え物、シュウマイ。 茨城ロータリーEクラブ会員でもある同店の徐佳鋭さん(41)は「奉仕活動として地元の子どもたちに何かできることをしたいと思い活動を始めた。年齢を問わず、来ていただける方には配布している。温かいものを食べてほしいのでお弁当は注文を受けてから作っている。毎回来る人もいるので、飽きないようにおかずの内容は変えている」と話す。できるだけ長く続け、多くの人に支援を広げるのが目標という。 百香亭みんなの食堂は昨年7月から始めた。つくば市が年間最大10万円を補助する市内8カ所の子ども食堂「みんなの食堂」の一つだ。配布時間中はみんなの食堂の看板を出しているが、最初は3~4個ほどの注文しかなかった。昨年9月に市の情報広報誌「かわら版」にみんなの食堂の情報が掲載されると徐々に来店者が増え、毎回30食が無くなるようになった。活動資金は市の補助金のほか、茨城ロータリーEクラブとロータリー財団が支援している。 「こちらから行けばいい」

「気がかり」をつなぎ ヤングケアラーを支援【広がる子ども食堂】3

5年前の12月、つくば市内の子ども食堂の運営者から、不登校やいじめなどの教育相談に取り組む同市の穂積妙子さん(73)に相談が持ち掛けられた。穂積さんは民間団体「つくば子どもと教育相談センター」の代表を務める。相談は「いつも来ている姉妹がいて、姉が妹の勉強を見てやっているが他の子どもと交流はなく、どこか違う。不登校の疑いもあるが、他にも事情がありそうで気がかり」というものだった。 同センターの相談員を務める元教員が子ども食堂を訪れ、姉妹と一緒に食事を取った。この時も姉妹の脇には教科書とノートが置かれていた。温かい食事に気持ちがほぐれた姉妹に「勉強熱心でえらいね」と話しかけたことをきっかけに、相談員の問いかけに姉がとつとつと話し始めた。 勉強を見てやっていたのは19歳の姉で、不登校の中学3年の妹の高校受験を案じてのことだった。シングルマザーの母親は入退院を繰り返していて、生活保護を受給していること、ホームヘルパーの生活援助を受けているが頼れる親戚はいないこと、姉は高校に進学しなかったこと、姉妹の下に小学6年の弟がいることが分かった。相談員は、姉の話に耳を傾けながらヤングケアラーだと直感した。 ヤングケアラーは、ケアを必要とする家族がいて、病気や障害の親のケア、きょうだいの世話、祖父母の介護など、大人が担うような家事や家族の世話、介護などを引き受けている子どもをいう。ヤングケアラーとなることで、遅刻や早退、欠席、成績の低下が生じ、進学もあきらめざるを得ない状況になるなど、子ども自身の生き方に影響を及ぼすことが問題視されている。 穂積妙子さん

多文化共生 みんなの居場所に【広がる子ども食堂】1

子ども食堂の数が近年、顕著に増えている。開設支援や食材確保の仕組みづくりなどに取り組む茨城NPOセンター・コモンズ事務局長で、「子ども食堂サポートセンターいばらき」(水戸市)の大野覚さん(43)によると、県内の子ども食堂は、5年前は20~30カ所だったが、昨年末は約150カ所と5倍以上に増えた。生活困窮世帯の子どもだけに利用を限定している食堂はわずかで「全体の8~9割が『地域の誰もが利用できるみんなの居場所』として広く門戸を開いている」という。 地域の大人が1食200円を先払い 下妻市の中心市街地に、午前11時から午後8時まで平日は毎日開いている子ども食堂「お茶NOMA」がある。国籍を問わず幅広い年代の人たちが気軽に立ち寄れるたまり場を目指して、市民団体「しもつま外国人支援ネットワークTOMODACHI」(小笠原紀子代表)が昨年5月にオープンした。高校生以下の子どもは無料で食べられる。約2200人の外国人が暮らす同市の住民同士が国籍や言葉の違いを認め、支え合って暮らす多文化共生社会に向けて活動を続けている。 「お茶NOMA」は、イベントが盛んな中心市街地の「まちなか広場」に面するコミュニティスペース「かふぇまる」の一角で営業している。午後4時を過ぎると下校した子どもたちの「ただいまぁ」という元気な声が聞こえ、白いかっぽう着を着けたスタッフが「お帰りなさーい」と応えるアットホームな雰囲気だ。 メニューは、おかえり定食(1,000円)と下妻かあちゃんカレー(800円)の2種類。1食分の料金のうち、大人が子どもの食事代を先払いする仕組みで、200円が「未来チケット」という子どもの食事チケットに充当される。子どもはカウンター脇のボードに貼られたチケットを一枚取ってスタッフに渡し、惣菜付きのこどもプレートを受け取る。お腹いっぱい食べられるよう、ご飯はお代わり自由だ。「元気に大きくなってね」など、大人からのコメントが書き添えられた未来チケットは地域の大人たちからの心のバトンと小笠原さん(54)は話す。 運営を担うボランティアスタッフは、「手伝いたい」と名乗りを上げた若いママからシニア世代までの約30人。別のグループが交代で朝の仕込みを担当し、閉店後の片付けまでを家事の隙間時間を活用したスタッフたちが担当する。「スタッフの報酬は食事という現物支給ですが、上下関係や利害関係がないから気持ちよく活動してもらっている」と小笠原さんはいう。一緒に遊んだり宿題を見てくれる中高生のボランティアも、子どもにとって頼れる存在になっている。

「むすびつくば」4月から民間施設に 不登校支援でつくば市

不登校児童生徒の学習支援施設運営事業者の選定をめぐる迷走から、つくば市が認定NPO法人リヴォルヴ学校教育研究所(小野村哲理事長)と協働で運営してきた不登校学習支援施設「むすびつくば」が4月の新年度から、民間フリースクールの一つとして運営されることが分かった。 23年度は現在地のまま 小野村理事長は(63)は同施設ついて、4月から「むすびつくばライズ学園」として仕切り直すと話した。同市谷田部地域で20年間続けていたライズ学園の名称を入れた形だ。開所日時はこれまでと同じ週4日(月、火、木、金)午前10時~午後3時。現在は週2日のコースで各20人、計40人程度を受け入れているが、市が他の民間フリースクールを運営する事業者と利用者の補助を23年度から開始するなど、市全体のサポート体制が充実することから、登録定員を30人程度とし、希望があれば相談の上で週4日の通所を受け付ける。 同市は4月から、事業者のリヴォルヴに対し運営費の一部を補助する。利用者に対しては月2万円を上限に利用料の一部を補助する。場所は、23年度は激変緩和のため現在の市産業振興センター(同市吾妻)で継続するが、24年度以降は新たな場所に移るという。 同市の不登校支援をめぐっては、2021年12月に市が実施した「むすびつくば」の運営事業者の選定で、20年10月から同施設を運営していたリヴォルヴが2位となり、新規のトライグループが1位となった。選定結果に対し、むすびつくばの保護者会がリヴォルヴによる運営継続を五十嵐立青市長らに陳情。五十嵐市長は「現在の利用者や保護者に多大な不安を与えてしまった」などと謝罪し、22年度は約2300万円を追加計上して、「むすびつくば」のリヴォルヴによる運営を産業振興センターで継続した。トライは場所を移して、同市研究学園のトライ研究学園駅前校で新たに支援事業を開始するという異例の決着を図っていた。 一方、むすびつくばの一部の保護者などから、市内の不登校児童生徒すべてを公平に支援するよう求める要望が出ていたことなどから、市は昨年5月、今後の市の不登校支援のあり方について検討する「市不登校に関する児童生徒支援検討会議」を設置した。今後の支援策として昨年10月、校内フリースクールを小中学校全校に設置する、民間の支援事業者と不登校児童生徒の保護者の両方に運営費や利用料を補助するーなどの案を示し、14日開会した3月議会に民間フリースクール事業者と利用者への補助事業として約7300万円などを提案していた。

45年の歴史に幕「常陽リビング」 土浦本拠の生活情報紙

茨城県南地域を中心に毎週土曜日、新聞折り込みで届けられたフリーペーパー「常陽リビング」が17日付をもって休刊する。発行元の常陽リビング社(土浦市桜ケ丘町、米山典克社長)が3日付、10日付の紙面などで公表した。1977年4月8日の創刊以来、つくばや土浦など13市町村に地域の生活情報を伝えてきた。 常陽リビングは土浦市に拠点を置いた地方紙、常陽新聞(2013年廃刊)が創刊した「常陽リビングニュース」が始まり。1985年8月、常陽新聞社が常陽リビングを京葉ガス(千葉県市川市)に譲渡し、京葉ガスのグループ会社となった。 1980年代後半から2010年ごろの紙面構成は平均28ページと他のフリーペーパーの追従を許さないページ数と情報量を誇った。隆盛を極めた98年から08年までの11年間は、不動産広告や求人広告などの掲載申し込みが引きも切らず、従業員は平均36ページ、年に数回は40ページもの紙面作りに追われた。ピーク時の2007年ごろは約25万部を発行し、年間約10億円の売り上げがあった。 コロナ禍に紙媒体の活路見出せず 現在の発行部数は約22万部。広告媒体が紙からインターネットに移行し、コロナ禍で収入が減少、さらに円安などによる紙やインク代の高騰が見込まれることから休刊を決めたという。45年の歴史に幕を下ろす。 スマホとインターネットの普及が状況を変えた。2018年ごろから、大きな割合を占めていた不動産広告がインターネット広告にとって代わり、広告収入が落ち込み始めた。加えてコロナ禍により20年から飲食店や旅行関係の広告が減少した。

ウクライナの動物支援 愛護団体呼びかけ つくばでチャリティーライブ

戦禍のウクライナの動物を支援する「クリスマス・チャリティー・ジャズライブ」が18日、つくば市春日の積水ハウスつくば支店で開かれる。演奏は、松戸市在住のジャズピアニスト、竜野みち子さんとベース、ドラムのトリオで、クリスマスソングや誰もが知っているジャズの名曲などが披露される。 竜野さんは主に東京、横浜を中心に演奏活動をしているが、カリブ海のハイチやカナダのモントリオールジャズフェスティバルへの参加など、国外での演奏も経験している実力派だ。 ライブを主催するのは、つくば市を拠点に保護猫の譲渡活動やTNR(捕獲し、不妊・去勢手術を行い、元に戻す)活動を行っている動物愛護団体「Team.(チーム)ホーリーキャット」(2019年7月17日付)。 ロシアによる2月の軍事侵攻以降、ウクライナでは国民はもちろん、多くの動物が窮地に立たされている。国外脱出を余儀なくされた住民たちはペットをなんとか一緒に連れ出そうとしたが、多くの動物が残されているという。 代表の重松聖子さん(74)は東日本大震災が起きた2011年の10月、福島第一原発に近い警戒区域で置き去りにされた猫の救出作業を行った。ウクライナの惨状に、避難指示が出されて住む人のいない家で猫たちのむくろを見たことが思い出された。またウクライナの首都にあるキーウ動物園の餌がないという報道にも心を痛めた。 竜野さんは震災以降、被災地で動物たちの命をつなぐ活動を続けているグループを音楽活動を通して支援している。4年前、自宅近くの神社に住み着いた野良猫たちが地域猫として暮らせるよう、ホーリーキャットにTNR活動を依頼したことで、重松さんたちメンバーと親交を深めた。この出会いがつくばでのチャリティーライブ開催に結びついた。

「むすびつくば」リヴォルヴへの満足度高い 不登校支援の民官協働事業検証終わる

つくば市の不登校に関する児童生徒支援検討会議が29日午後2時から、市消防庁舎の多目的ホールで開かれた。昨年12月、不登校児童生徒の学習支援施設「むすびつくば」の運営事業者の選定をめぐり迷走した問題を受け、5月に設置された検討会議(5月17日付)の第11回の開催となる。 会議は森田充市教育長と市教育委員4人を委員に構成される。5月に始まった検討会の議論は終盤に近づき、市が2020年10月から22年3月末までNPO法人リヴォルヴ学校教育研究所(同市二の宮、小野村哲理事長)と協働で実施した「むすびつくば」の事業に関する検証報告書が検討会議で承認された。同報告書は12月1日に市議会の文教福祉委員会(木村清隆委員長)に提出される。また、今後の市の全体的施策と方針の取りまとめについて意見が交わされた。 「むすびつくば」は、民と官が相互に協力、補完して増加する不登校児童生徒の個に応じたさまざまな学習機会の提供と、民間事業者の専門的知見を活用して新たな学習支援の知見を深めることを目的にスタートした。検証は、利用者の小中学生と保護者へのアンケート(6月~7月実施)や、協働事業者のリヴォルヴとつくば市による自己評価、利用者在籍校の聴き取りなどで得られた結果を基に分析と評価が行われた。 協働事業の分析では、①リヴォルヴは学習障害の傾向のある児童生徒への支援や、教科書学習に拒否反応を示す児童生徒には遊びの時間を設けるなど工夫して学習支援を行った②新たな支援方法の構築として、20年以上に及ぶ指導のノウハウを生かして一人ひとりの特性に応じた学習支援を行った③スタッフが児童生徒の目線で対応し、信頼関係を気づいて心理的な居場所づくりをした④保護者同士の交流と経験の分かち合いを目的にした「親の会」や教育相談を開催して保護者への支援を行った-など、リヴォルヴに対する保護者の満足度は高かった。 一方、アンケートでは「子ども同士の関わりが深まる放課後的な時間があると良い」という保護者の意見や、体験入所を利用したが「子どもが行きたくないと言った」ため入所しなかったケースもある。全体を通して児童生徒と保護者の満足度は高く、利用者の期待に応えられるような学習支援活動を提供していたと検証報告書は評価している。 リヴォルヴによる「むすびつくば」の運営は1年間延長されて来年3月まで。23年度以降どうするかについては検討会議で協議しているが結論は出ていない。

精密さと力仕事のオーダーメード 家具職人高橋伸治さん【ひと】

つくば「ラスカル・ファニチャー・ファクトリー」 畑が広がるつくば市若栗の集落に、家具工場「ラスカル・ファニチャー・ファクトリー」を訪ねた。主の高橋伸治さん(50)は大学卒業後、華やかなアパレルの仕事に従事したが、ものづくりの世界に魅了されて家具職人に転身した経歴の持ち主。オーダーメード家具の製作から修理、リメークを行っている。 顧客がついて安定した経営に、影を落とすのが新型コロナ、家具のリメークの注文が増えたものの、木材価格の高騰に見舞われている。心身ともにタフな高橋さんは現状にめげず、独自の規格による定番商品を実現しようとしている。 工場は、かつて鉄骨造の牛舎だった。専門業者に依頼して壁を施工した工場はテニスコート2面分に相当する約500平方メートルの広さで、木材加工の大型機械10基が設置されている。 牛舎だった工場。丸太にカップがぶら下がる牛の給水器が残る

文章を磨き上げる速記者の腕 つくば 竹島由美子さん【ひと】

つくば市松代の竹島由美子さん(74)は51年にわたり、速記者という仕事に一筋に向き合ってきた。現在は都内の速記事務所から委託を受け、自宅に届く講演会やインタビューの録音をパソコンで文字に起こす仕事を続けている。現場に出向く仕事はほとんどなくなり、速記の符号に出番はないが、培った技術を生かし仕事に磨きをかけている。 速記は、簡単な線や点でできた符号などを使って、人が話す言葉をその場ですぐさま書きとり、それを解読して文章に書き直すまでの作業を指す。 竹島さんは「符号の出番がなくなってきたことは寂しいが、技術の進歩に助けられて仕事を続けてこられた」と話す。コロナ禍で仕事がキャンセルになったことがあったが、仕事が物心両面で支えになっているという。時代とともに新たな言葉が生まれたり、流行したりする。これからも毎日2紙の全国紙に目を通して話題や言葉にアンテナを張り、レベルアップを図っていきたいという。 アナログ録音機で独学 東京生まれ。中学生の頃から作文や感想文を書くのが好きで、子ども向けの雑誌に載っていた「速記文字を使えば人の話が書ける」という速記専門学校の宣伝文句にひかれたのが始まり。当時は速記学校の募集広告が多く見られ、「就職したら速記を勉強しよう」と決めたという。 高校卒業後、比較的休みの多い学校の事務職員なら速記を勉強するのに都合が良いと考え、明治大学の採用試験を受けて職員に採用された。

不登校生徒の居場所つくる校内フリースクール つくばに開設から5カ月

つくば市内の公立中学校に4月から、校内フリースクールが設置されている。不登校児童生徒を対象に、NPOなどが学校外で運営することの多いフリースクールを、市が学校内に開設したもので、校舎の中に生徒が自分のペースで学んだり友達と過ごしたりできる居場所ができた。 同市の不登校児童生徒数は、2014年度の約200人から20年度の399人、21年度には592人(小学生243人、中学生349人)と年々増加し、対応は待ったなしの状況。今年度、県から学校に2人の教員が加配されたことで開設に至り、校内フリースクールのより良い在り方を研究するパイロット校と位置づけられている。 市内の別の中学校では4月から別室登校がスタートしている。こちらは県からの加配がないため、NPOからスタッフ1人の派遣を受け、教員などと連携しながら支援を実施している。 自己決定に基づく学習支援 校内フリースクール「SSL教室」は、Special Support & Learning(スペシャル・サポート・アンド・ラーニング)の頭文字から名付けられた。開放感があり、教員が生徒をいつでも温かく迎えている。

「学校に行かない」に困ったら相談を つくばの支援団体

長い夏休みが明けた9月は「学校に行かない」と言い張る子どもが多くなる。親はパニックになり、どう対処したらいいかと悩む。 そんな悩み相談に乗っているのが民間支援団体「つくば子どもと教育相談センター」(事務局・つくば市梅園)だ。代表で同市在住の穂積妙子さん(73)は「困ったら相談に来てください。きっとお力になれると思います」と呼び掛けている。 同センターは不登校が増え始めた1995年、元教員たちが学校生活の困りごとの相談に乗る組織として設立。以来、子どもの不登校や発達障害などに悩む親の相談を軸に、学校生活に不安を抱える子と親を支援する活動を続けている。 代表の穂積さんも創設メンバーの1人。センター始動後、臨床発達心理士になるためにお茶の水女子大、同大学院で学んだ後、資格を取得。臨床心理の専門家として相談者の悩みに耳を傾ける。 穂積妙子代表

挫折経験を強みに活躍するチームリーダー 土浦市 池田あゆみさん【ウーマン】3

土浦市田村町在住、池田あゆみさん(42)は、生命保険会社の土浦営業部に勤務して8年目の支部マネジャー。チームリーダーとしての仕事に「楽しくてやりがいがある」と笑顔で話す。余裕を感じさせる姿勢は、食いぶちを稼ぐための水商売を振り出しに、幾多の失敗や困難で得た経験によって培われた。 16歳で家出して水商売に 陸上自衛隊の自衛官だった父親の霞ケ浦駐屯地への異動で、小学6年のときに阿見町中央に引っ越してきた。4人きょうだいの末っ子。しつけが厳しく過干渉な母親から逃げたくて、中学3年になるとプチ家出を繰り返すようになった。 「夕方家に帰りたくなくて公園にいることが多かった。お腹が空いて、公園に隣接したコンビニが食べ残しの弁当を裏手の物置に入れるのを見ていたので、こっそり持ち出して食べました。(人の食べ残しに)抵抗はなかった。冬は学校のジャージだけで寒くて辛かった。行く当てはなくて翌朝には家に帰りました」 高校生になっても家は息が詰まり、週末は友だちと土浦の中心街に出かけるのが常だった。当時は駅前通りに大型店の小網屋や西友、丸井があって賑わい、路上でワゴン車に積んだ倒産品などを売る30代の男性、ノリさんと顔なじみになった。 何度もノリさんに「自分で稼いで食べていきたい」と訴え、夏休みが終わる頃、家出してノリさんの住む東京・小岩の高級クラブで働き始めた。クラブを経営していたママはノリさんの知人で、ママが衣装を貸してくれた。年齢は4歳サバを読んで20歳で通した。

夫への依存心を解き整体院開業 つくば市 石井みちよさん【ウーマン】2

日常会話がなく気持ちを共有できない夫と離婚を考えた石井みちよさん(53)=つくば市大角豆=は、経済的理由から踏み切れずに苦しみ、呼吸困難で救急搬送されたりもした。その後、思いのたけをブログにつづることで凍った心が解け始め、経済的自立に向けて昨年10月、「もむらく整体院」を開業した。 夫は研究者。31歳で結婚し、横浜市と同市並木の公務員宿舎で暮らしてきた。結婚から3年、一人娘が誕生したころから傷つくことが多くなった。 夫は娘には関心を示したが、みちよさんとは必要最低限の会話だけで食事中はテレビに釘付け。ある日、夕食後に自室にこもって研究のためにパソコンを打つ夫の背に声をかけると、邪魔だと言わんばかりに「シッ、シッ」と手で追い払われた。 無視されることが辛くて心が休まらず、いつも頭の中は「離婚」でいっぱいだった。離婚後の生活を支えるために時給の高い訪問ヘルパーの職を選んで働き始めたが、計画通りに収入を得るのは難しかった。 スペース田楽の玄関に立つ石井さん 夫の仕打ちはなぜなのか、自分に原因があるのかと本で調べたことがある。話し合いが苦手、家族との時間より仕事に没頭する、みちよさんの気持ちが理解できないなど、夫の症状は発達障害の一つ、アスペルガー症候群の傾向がある状態だと分かった。が、夫を受け入れる気にはなれなかった。

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ノスタルジア「八つ墓のたたりじゃ〜!」《訪問医は見た!》4

【コラム・平野国美】岡山県の山間部に吹屋(ふきや)という地区(高梁市)があります。ベンガラ(酸化第二鉄)の街並みで有名なのですが、私は15年ほど前、よく調べずにここを訪れました。街の外れから歩き出したのですが、なぜかデジャヴ(既視感)があるのです。しかし、私には縁もゆかりもない場所のはずです。 そのとき、私の背後に老女が忍び寄り、耳元で突然叫んだのです。「たたりじゃ〜! 八つ墓のたたりじゃ〜!」と。そこで、すべてを悟りました(この部分は作り話です)。 当時、この地域は高齢化が進み、住人の多くが80代の方々でした。そんな街の古民家を利用した喫茶店で、土地の皆さんと話しているうちに、この街の概要がわかってきました。江戸時代は鉱山として、明治時代はベンガラ生産地として、繁栄した街だったのです。 ベンガラは、神社などの建築物に使われる赤い塗料で、腐食を防ぐ目的もあって塗られていました。吹屋の街並みは、壁はベンガラ色、屋根は山陰の石州瓦(これも朱色)で、独特の風景が見られます。 なぜ、私がこの風景に既視感を持ったのか? 喫茶店にいたおばちゃん達と話しているうちに、わかってきました。上で書いた「たたりじゃ〜っ!」は、あながちウソでもないのです。ここは1977年に公開された角川映画「八つ墓村」のロケ地で、この映画の風景が目の前に浮かんだのです。

「大学改革の旗手に」永田学長 筑波大が開学50周年記念式典

マハティール元首相が祝辞 筑波大学(つくば市天王台)が10月1日、開学50周年を迎えるのを記念した式典が30日、同市竹園、つくば国際会議場で催された。永田恭介学長は「世界中の大学との間で頭脳循環を加速させ、知の十字路としてのキャンパスを充実させていきたい。大学改革の旗手として、固定化された社会を再構築する原動力でありたい」などと、次の50年に向けた式辞を述べた。 祝辞を述べるマハティール元首相 式典には大学関係者のほか、つくば市長、県内選出の国会議員、協定などを締結している海外の大学学長など計約1200人が参加した。文科省の安江伸夫政務官のほか、マレーシアのマハティール元首相らが祝辞を述べた。 同大は来年10月、日本の大学で初めて日本の学位を授与する海外分校をマレーシアの首都クアラルンプールにあるマラヤ大学に開設する。2019年、安倍晋三首相とマハティール首相(当時)が取り決めをし海外分校を開設することから、今回来日に至ったという。

朗読列車 今年は紅葉仕立てで運行 筑波山ケーブルカー

山頂駅展望台に新アクティビティ 紅葉シーズンを前に、筑波山ケーブルカー(筑波観光鉄道運行)で10月1日から、車内に色付いたモミジやイチョウを飾り立て、声優らによる朗読劇が体験できる秋のイベント列車「ストーリーテラーズ・レールウェイ」が運行される。昨年に続いて2回目。 8分間の乗車時間の間に、つくばエリアで語り継がれる民話「しっぺいたろう」、宮沢賢治の「注文の多い料理店」、筑波山名物「ガマの油口上」を声優や劇団員らが朗読する。さらに今年から、標高約800メートルの御幸ケ原の筑波山頂駅隣りにあるレストランの展望台屋上に、絶景に浮かぶ的に向かってウォーターガンを発射させるアクティビティが導入される。「天空のガマスプラッシュ」と名付けられたストレス発散系アクティビティだ。 御幸ヶ原、コマ展望台での天空のガマスプラッシュ 展望台での新遊戯ウォーターガン  企画会社の担当者は「今年は朗読に女性声優も参加するなど、昨年よりグレードアップした形となる。また新しいメニューを加え、筑波山観光をグレードアップさせたい」と語り、筑波観光鉄道営業本部の須藤淳さんは「昨年から朗読列車を運行し、大変評判が良く、乗客数も増した。今年は企画がバージョンアップしたので、乗客数がさらに増加することを期待したい」とし、「筑波山ロープウェイの方も、10月から土日祝日に夜間運行がはじまるので楽しみにしてほしい」と話す。

長者と金持ち《ひょうたんの眼》61

【コラム・高橋恵一】岸田首相は就任以来、基本的な経済政策として、これまでの新自由主義的経済から、「新しい」資本主義を掲げ、「成長と分配の好循環」「コロナ後の新しい社会の開拓」を目指すとし、新たな経済対策として、物価高対策、賃上げ、国内投資促進、人口減少対策、国民の安心・安全確保を掲げている。 首相に有言実行してほしいのは、賃上げだ。それも、教師と看護師、介護職員の賃上げと働く環境の改善だ。経営者にお願いしなくても、配置基準と給与額は、政府が決められる。下からの「トリクルアップ」で、非正規雇用と人手不足を解消できる。 バブル期に至る前の日本経済は、高度成長期。国全体の経済力の拡大とともに、個人所得も豊かになったが、まさにバブルの言葉通り、安易な浪費を行い、将来の高齢化社会に備えた社会保障の仕組みや産業基盤、安定的な生活基盤の整備をおろそかにしてしまった。 当時、高度成長は、西欧諸国も同じであり、特に北欧は、堅実に社会保障基盤を固め、ジェンダーフリーの条件を整え、女性の社会進出を実現した。日本は、それを横目で見ていたが、21世紀の今日、両翼飛行の北欧諸国の1人当りのGDPと1.5翼飛行の日本の1人当り所得には、大差がついてしまった。 バブル崩壊後の日本経済は、停滞し、アメリカを習って、新自由主義経済に傾倒した。いわゆる小泉改革であり、経済の効率化、極限のコストカットであった。 アベノミクスの失敗