土曜日, 10月 24, 2026
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申請わずか2件 つくば市の民間フリースクール補助事業

つくば市内の民間フリースクールを対象に、市が7月に申請受け付けを開始した補助事業について(7月7日付)、申請があったのは2件だけだったことがわかった。運営経費の2分の1などを補助する事業で、市は市内8カ所程度からの申請を想定して制度設計していた。申請件数が少なかったのはなぜなのか、背景を探った。

制度設計を担当した市教育局学び推進課課長補佐の東泉学さんは、あまりに申請の少ないことに「正直驚いた」と胸の内を明かした。東泉さんによると「昨年、市内にある民間施設10カ所中、市内在住の児童生徒が通所している8カ所の状況調査を行い、その内容を事業者補助制度に生かした」という。利用人数や利用料など、施設の規模に応じて交付額を300万~900万円台までの4段階に分け、8カ所の施設への交付を想定して算出した補助金4850万円を23年度当初予算として計上した。

申請受け付けにあたっては、既存の民間施設10カ所と、同課に相談のあった5カ所に補助金の情報提供をした。しかしふたを開けてみると申請件数は2件。審査を経て、2カ所には交付決定が通知された。そのうちの一つは、認定NPO法人リヴォルヴ学校教育研究所(小野村哲理事長)が運営する「むすびつくばライズ学園」(4月に改称)だ。

なぜ人気がなかったのか。月20人程度が通所するフリースクール「TSUKUBA学びの杜学園」を運営する中谷稔さん(57)と、月平均7、8人が通所する小規模施設を運営する鈴木恵子さん(仮名、46)に話を聞いた。2カ所とも補助金申請はしなかった。

つくば市内には10カ所の施設があり、このうち半分程度の施設が収容能力10人前後の小規模施設だという。フリースクールは法や制度で定められていないため、規模や運営形態、月謝などの費用は施設によって異なる。小中学生は元の学校に在籍したまま通所することになる。

中谷さんは「多くの事業者が様子見になったのではないか」と推測する。「利益を目的とせず、不登校で困っている親子のために尽くそうというボランティア感覚で運営している小規模施設の事業者にとって、いきなり助成金を受給するのにはハードルが高かった。また、施設規模を問わず、なんとか月謝や寄付などでやり繰りできているし、事業計画を立てて申請しても受給できる保証はないし、受給できても制度が打ち切られたら立ち行かなくなるという思いがあったと思う」。

鈴木さんは「煩雑な事務処理で手を出しづらかった」と話した。事業者と、利用者が在籍する学校との連携が重視され、毎月、利用者の出席状況報告書を学校長に、また施設利用状況報告書を市学び推進課に提出することが義務付けられている。鈴木さんは小中学生2人の子どもを育てながら週4日を施設運営、平日の残り1日を子どもの塾通いの送迎に充てる多忙な毎日を送る。土日に施設のホームページの更新やSNSでの情報発信、保護者への対応、会計処理などをこなしている。「ボランティの手を借りながら、ほぼ1人で運営している。これ以上の事務処理をする手間も時間もない」とした。

中谷さんは「補助対象経費を定めた条項の『(つくば市在住の)利用者が5人未満の月の事業に要する経費は、補助対象経費としない』の規定も申請をためらわせる要因になった」と指摘した。利用者に近隣自治体居住の児童生徒が含まれるのは珍しくない上に、体調が悪くなったり気分が落ち込んで通所しなくなるのはフリースクールにありがちなことだという。「キャパが大きく利用者の多い施設には問題ないだろうが、利用者10人程度の小規模施設にとって5人枠はきつい」とし「5人の根拠が示されないまま申請受け付けがスタートした」と、口惜しそうに話した。

続けて中谷さんは「自分1人が思っていることかもしれないが」と前置きした上で「(2021年12月の事業者選定をめぐり迷走した不登校学習支援施設の)むすびつくばへの市のやり方に不安を覚えた。22年度の不登校の学習支援施設の委託業者の選定で1位はトライだった。市の委託を受けて同施設を運営していたむすびつくばは2位になった。継続を求める陳情があると事業費を追加して1年延ばし、昨年度は市内2カ所で委託事業が実施された。その一方で昨年5月から不登校支援の検討会が開かれ、わずか1年というスピードで補助制度がスタートした。これは何か切迫した事情があったのか、と不信を招きかねない」と語った。そして「4850万もの補助金を継続できるのか、首長が変わったらどうなるかという思いも拭いきれない」とも。

鈴木さんは「複雑な事務処理などないシンプルな制度にしてほしい」と強調した。中谷さんは「施設の状況調査はあったが制度について意見を述べる機会はなかった。地元事業者の現状に合うものではなかった」と締めくくった。

申請を断念したフリースクール運営者の声について市学び推進課の東泉さんは「補助経費に関する規定には、児童生徒5人以上での施設利用が制度活用に必要であるという意味を込めた」とし、数カ所から「3人ではどうか」などの問い合わせがあったと明かした。そして「100点満点の制度はないが、5人枠を含めて見直しを行い、使い勝手の良い制度にしていく。事業者さんたちの話を聞く機会は必要だと思っている」と語った。

一方、申請し交付を受けることが決まったリヴォルヴの小野村理事長は「改善を求めたい点もあるが、公的資金を原資としているから要件が厳しくなるのは仕方がない」とした上で、「補助対象外とされることが多い人件費を経費として認めるなど、比較的使いやすい制度設計だと思う。補助金は、カウンセラーによるサポートやスタッフの研修機会を充実させるなど、子どもたちにとってより良い環境づくりに生かせる」と話す。

利用者補助は74人が申請

同市は民間フリースクールへの補助金と併せて、不登校児童生徒の保護者がフリースクールに支払った利用料を補助する事業をスタートさせた。利用料補助は期限までに74人が申請した。

利用者への交付事業は8月4日に補助金交付要綱を公表した。1年を4カ月ごとに区切って年3回交付が行なわれる形で、9月30日まで申請を受け付けた。特例として4月から7月までの利用料はさかのぼって交付した。

昨年実施した民間施設への調査で小中学生100人弱が施設を利用していることが分かり、100人程度への支援を想定して、23年度当初予算に利用者への交付金2400万円を計上した。所得制限を設けず、1人当たり月額上限2万円を交付する。

申請には施設を利用した際の領収書の写しなど5枚の書類を市学び推進課に郵送又は直接提出することになっているが、初めての申請で不備を心配してか、申請者の9割が同課に持参したという。(橋立多美)

➡つくば市の不登校児童生徒支援施策の迷走問題に関する過去記事はこちら

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