水曜日, 12月 4, 2024
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多文化共生 みんなの居場所に【広がる子ども食堂】1

子ども食堂の数が近年、顕著に増えている。開設支援や食材確保の仕組みづくりなどに取り組む茨城NPOセンター・コモンズ事務局長で、「子ども食堂サポートセンターいばらき」(水戸市)の大野覚さん(43)によると、県内の子ども食堂は、5年前は20~30カ所だったが、昨年末は約150カ所と5倍以上に増えた。生活困窮世帯の子どもだけに利用を限定している食堂はわずかで「全体の8~9割が『地域の誰もが利用できるみんなの居場所』として広く門戸を開いている」という。 地域の大人が1食200円を先払い 下妻市の中心市街地に、午前11時から午後8時まで平日は毎日開いている子ども食堂「お茶NOMA」がある。国籍を問わず幅広い年代の人たちが気軽に立ち寄れるたまり場を目指して、市民団体「しもつま外国人支援ネットワークTOMODACHI」(小笠原紀子代表)が昨年5月にオープンした。高校生以下の子どもは無料で食べられる。約2200人の外国人が暮らす同市の住民同士が国籍や言葉の違いを認め、支え合って暮らす多文化共生社会に向けて活動を続けている。 「お茶NOMA」は、イベントが盛んな中心市街地の「まちなか広場」に面するコミュニティスペース「かふぇまる」の一角で営業している。午後4時を過ぎると下校した子どもたちの「ただいまぁ」という元気な声が聞こえ、白いかっぽう着を着けたスタッフが「お帰りなさーい」と応えるアットホームな雰囲気だ。 メニューは、おかえり定食(1,000円)と下妻かあちゃんカレー(800円)の2種類。1食分の料金のうち、大人が子どもの食事代を先払いする仕組みで、200円が「未来チケット」という子どもの食事チケットに充当される。子どもはカウンター脇のボードに貼られたチケットを一枚取ってスタッフに渡し、惣菜付きのこどもプレートを受け取る。お腹いっぱい食べられるよう、ご飯はお代わり自由だ。「元気に大きくなってね」など、大人からのコメントが書き添えられた未来チケットは地域の大人たちからの心のバトンと小笠原さん(54)は話す。 運営を担うボランティアスタッフは、「手伝いたい」と名乗りを上げた若いママからシニア世代までの約30人。別のグループが交代で朝の仕込みを担当し、閉店後の片付けまでを家事の隙間時間を活用したスタッフたちが担当する。「スタッフの報酬は食事という現物支給ですが、上下関係や利害関係がないから気持ちよく活動してもらっている」と小笠原さんはいう。一緒に遊んだり宿題を見てくれる中高生のボランティアも、子どもにとって頼れる存在になっている。 食材は農家やJAなどから寄付されるものを多く利用している。メニューはスタッフたちが生活の知恵を生かし栄養バランスを考えて決める。食堂のお母さんをイメージしてそろえたスタッフのかっぽう着30着も寄贈された。 オープンから9カ月。テストなど学校行事で入店が少ない日もあるが利用者は定着し、平日5日間で100人以上の子どもが訪れている。そのうちの1割が外国籍の子どもだ。大人メニューの売れ行きも順調で未来チケットは常に数十枚をストックできている。 スリランカ人と隣り合わせがきっかけ 代表を務める小笠原さんが在住外国人と関わるきっかけは10年以上前。常総市で居酒屋を営み、スリランカ人が経営するレストランと隣り合った。人柄にひかれて役所の手続きや通院など日常の困りごとの相談に乗るようになり、スリランカの公用語シンハラ語を覚えていった。その後同国の食品を扱う店を開いたが、新型コロナの影響で店を畳んだ。 自身が暮らす下妻で外国人支援を考えていた時に、同市在住で、ブラジルで子供を出産した経験がある保育士の松本絵美さんと、ボリビアで青年海外協力隊として活動した保健師の中山美由紀さんに出会った。2人は「現地の人に助けてもらった恩返しをしたいし、外国人が安心して暮らせるまちづくりを」と思っていた。多文化共生を目指す仲間との出会いが2年前に会を発足させ、小笠原さんが代表に就いた。 発足以来、下妻公民館で外国人相談窓口などの支援を続けているが、いつでも気軽に相談できて日本人と仲良くなれる居場所づくりが必要と考え、子ども食堂なら自分たちでもできると運営に乗り出した。 食堂には外国人の子どもたちのほか、夕食を独りで食べていたり、共働き家庭でお腹を空かせて待つ日本人の子どもたち、子育てや仕事に疲れたひとり親、お茶を飲むのにふらっと立ち寄る高齢者など、幅広い世代が集うようになった。スタッフは、「最初、外国人と接した時は戸惑ったが今は普通にしゃべれるようになった」と自然体で交流している。 「外国人も日本人も両方が気軽に来られる場所になった」という小笠原さん。さまざまな年代の子が、ボランティアの中高校生や大人と一緒に同じ時間を過ごす。自然に多様な人との関わりを学ぶことが多文化共生社会の実現につながるとした上で「伸びてきた芽を大事に育てていきたい」と小笠原さんは話す。(橋立多美) 続く

「むすびつくば」4月から民間施設に 不登校支援でつくば市

不登校児童生徒の学習支援施設運営事業者の選定をめぐる迷走から、つくば市が認定NPO法人リヴォルヴ学校教育研究所(小野村哲理事長)と協働で運営してきた不登校学習支援施設「むすびつくば」が4月の新年度から、民間フリースクールの一つとして運営されることが分かった。 23年度は現在地のまま 小野村理事長は(63)は同施設ついて、4月から「むすびつくばライズ学園」として仕切り直すと話した。同市谷田部地域で20年間続けていたライズ学園の名称を入れた形だ。開所日時はこれまでと同じ週4日(月、火、木、金)午前10時~午後3時。現在は週2日のコースで各20人、計40人程度を受け入れているが、市が他の民間フリースクールを運営する事業者と利用者の補助を23年度から開始するなど、市全体のサポート体制が充実することから、登録定員を30人程度とし、希望があれば相談の上で週4日の通所を受け付ける。 同市は4月から、事業者のリヴォルヴに対し運営費の一部を補助する。利用者に対しては月2万円を上限に利用料の一部を補助する。場所は、23年度は激変緩和のため現在の市産業振興センター(同市吾妻)で継続するが、24年度以降は新たな場所に移るという。 同市の不登校支援をめぐっては、2021年12月に市が実施した「むすびつくば」の運営事業者の選定で、20年10月から同施設を運営していたリヴォルヴが2位となり、新規のトライグループが1位となった。選定結果に対し、むすびつくばの保護者会がリヴォルヴによる運営継続を五十嵐立青市長らに陳情。五十嵐市長は「現在の利用者や保護者に多大な不安を与えてしまった」などと謝罪し、22年度は約2300万円を追加計上して、「むすびつくば」のリヴォルヴによる運営を産業振興センターで継続した。トライは場所を移して、同市研究学園のトライ研究学園駅前校で新たに支援事業を開始するという異例の決着を図っていた。 一方、むすびつくばの一部の保護者などから、市内の不登校児童生徒すべてを公平に支援するよう求める要望が出ていたことなどから、市は昨年5月、今後の市の不登校支援のあり方について検討する「市不登校に関する児童生徒支援検討会議」を設置した。今後の支援策として昨年10月、校内フリースクールを小中学校全校に設置する、民間の支援事業者と不登校児童生徒の保護者の両方に運営費や利用料を補助するーなどの案を示し、14日開会した3月議会に民間フリースクール事業者と利用者への補助事業として約7300万円などを提案していた。 利用には月謝制と補助制度併用 これまでは無料で利用できたが新年度からは月謝制になる。市は、不登校児童生徒の保護者の経済的負担の軽減などを目的に新たな補助制度を設ける施策を明らかにしており、週4日通所の場合、補助金額の上限2万円を超えた月謝は利用者負担となる。 民間フリースクール運営者への補助額は経費の2分の1となる見込みで、24年度以降の場所について小野村理事長は「利便性の高い場所は望めないだろう」とした上で、「考えていた以上に幅広い支援策が検討されていることは進展だと思う」と公表された施策を評価する。一方「(市と民間による)公民協働で不登校の支援にあたる事業の事業者に採択され、教育分野における協働事業の草分けとなれればとの思いで臨んだものの、教育局と十分な協議と調整を図ることができず、協働に関する認識の違いを感じた」とも振り返る。 小野村理事長は「雨降って地固まる。これからはもっと多くの時間を子どもたちと向き合う時間に当てたいと思う」と述べ、「不登校の心に寄り添い、育ち・学びを支えるという姿勢に変わりはない。これからも子どもたちのサポートに取り組んでいきたい」と意気込みを語った。 むすびつくばの保護者会代表だった庄司里奈さんは「市が示した民間施設運営者と保護者への支援は全国に類を見ない先進的な策で、ぜひ実現してほしい」とする一方、「不登校児童生徒と保護者の現実は厳しく、当事者が声を上げていかないと変わらないと感じている」とし、保護者の塩見直子さんは「多くの市民が身近な問題として快く署名に応じてくれたことが支援策につながったと思う。賛同してくださった皆さんにお礼を言いたい」と話す。(橋立多美)

45年の歴史に幕「常陽リビング」 土浦本拠の生活情報紙

茨城県南地域を中心に毎週土曜日、新聞折り込みで届けられたフリーペーパー「常陽リビング」が17日付をもって休刊する。発行元の常陽リビング社(土浦市桜ケ丘町、米山典克社長)が3日付、10日付の紙面などで公表した。1977年4月8日の創刊以来、つくばや土浦など13市町村に地域の生活情報を伝えてきた。 常陽リビングは土浦市に拠点を置いた地方紙、常陽新聞(2013年廃刊)が創刊した「常陽リビングニュース」が始まり。1985年8月、常陽新聞社が常陽リビングを京葉ガス(千葉県市川市)に譲渡し、京葉ガスのグループ会社となった。 1980年代後半から2010年ごろの紙面構成は平均28ページと他のフリーペーパーの追従を許さないページ数と情報量を誇った。隆盛を極めた98年から08年までの11年間は、不動産広告や求人広告などの掲載申し込みが引きも切らず、従業員は平均36ページ、年に数回は40ページもの紙面作りに追われた。ピーク時の2007年ごろは約25万部を発行し、年間約10億円の売り上げがあった。 コロナ禍に紙媒体の活路見出せず 現在の発行部数は約22万部。広告媒体が紙からインターネットに移行し、コロナ禍で収入が減少、さらに円安などによる紙やインク代の高騰が見込まれることから休刊を決めたという。45年の歴史に幕を下ろす。 スマホとインターネットの普及が状況を変えた。2018年ごろから、大きな割合を占めていた不動産広告がインターネット広告にとって代わり、広告収入が落ち込み始めた。加えてコロナ禍により20年から飲食店や旅行関係の広告が減少した。 行動制限が緩和された秋以降も、職場などの飲み会や宴会が復活しないなどコロナ前と行動様式が変わり、飲食店などの広告収入は元に戻らなかった。広告の減少に伴って8~12ページの紙面となり収入の減少に歯止めがかからなかった。昨年度は数千万円の赤字だったという。 同社は、リビング紙発行のほかに、就職支援サービス、不動産事業、結婚相談事業、カルチャー教室の主催・運営など経営を多角化し、さらに固定費を削減しようと2、3年前から希望退職者を募ってきたが、広告減少をカバーするのは難しかった。第三者への営業譲渡などで事業継続が望めないかと奔走したが「紙媒体だと黒字化できるイメージが付かない」など、見つからなかったという。広告主などには9月に、休刊を知らせた。 米山社長(60)は「苦渋の決断だった」と語る。「45年発行してきて知名度もあり、読者からもクライアントからも『毎週楽しみです』という声をいただいてきた。常陽リビングは地域に浸透した情報紙だと実感しているが、スマホを使いこなす若者にはあまり知られていない。コロナ禍でデジタル化はますます広がり、紙媒体は厳しい。この間、赤字が続き、何とか続けようと模索してきたが、いったん立ち止まろうとなった。今後、印刷用紙の大幅値上げが確実視されて経営改善策を見出すのは困難で、休刊し、従業員に退職金を支払うという結論を出した」 現在の従業員数は20人。一部は他事業や清算事業のため3月まで仕事を続けるが、他事業の従事者や経理担当者を除いて31日で退職となる。同社は今後1年間は再就職の支援を行うとしている。(橋立多美)

ウクライナの動物支援 愛護団体呼びかけ つくばでチャリティーライブ

戦禍のウクライナの動物を支援する「クリスマス・チャリティー・ジャズライブ」が18日、つくば市春日の積水ハウスつくば支店で開かれる。演奏は、松戸市在住のジャズピアニスト、竜野みち子さんとベース、ドラムのトリオで、クリスマスソングや誰もが知っているジャズの名曲などが披露される。 竜野さんは主に東京、横浜を中心に演奏活動をしているが、カリブ海のハイチやカナダのモントリオールジャズフェスティバルへの参加など、国外での演奏も経験している実力派だ。 ライブを主催するのは、つくば市を拠点に保護猫の譲渡活動やTNR(捕獲し、不妊・去勢手術を行い、元に戻す)活動を行っている動物愛護団体「Team.(チーム)ホーリーキャット」(2019年7月17日付)。 ロシアによる2月の軍事侵攻以降、ウクライナでは国民はもちろん、多くの動物が窮地に立たされている。国外脱出を余儀なくされた住民たちはペットをなんとか一緒に連れ出そうとしたが、多くの動物が残されているという。 代表の重松聖子さん(74)は東日本大震災が起きた2011年の10月、福島第一原発に近い警戒区域で置き去りにされた猫の救出作業を行った。ウクライナの惨状に、避難指示が出されて住む人のいない家で猫たちのむくろを見たことが思い出された。またウクライナの首都にあるキーウ動物園の餌がないという報道にも心を痛めた。 竜野さんは震災以降、被災地で動物たちの命をつなぐ活動を続けているグループを音楽活動を通して支援している。4年前、自宅近くの神社に住み着いた野良猫たちが地域猫として暮らせるよう、ホーリーキャットにTNR活動を依頼したことで、重松さんたちメンバーと親交を深めた。この出会いがつくばでのチャリティーライブ開催に結びついた。 竜野さん出演のウクライナ動物支援チャリティーライブは11月20日にも開催したが、市民への周知時間が十分でなかったため、重松さんの知人が会場を埋めるという結果になった。11月のライブを楽しんだ人の「また生演奏を聴きたいし、戦火におびえる動物への支援の輪を広げて」という声に押され、改めてクリスマスにちなんだライブを開催することになった。 重松さんは「災害で置き去りにされるのは動物たち。厳寒期を迎えるウクライナで戦闘に巻き込まれて傷ついたり、飼い主を待ちわびる動物たちを支援してほしい」と協力を呼びかける。(橋立多美) ◆ウクライナ動物支援「クリスマス・チャリティー・ジャズライブ」 18日(日)午後1時30分〜3時30分、積水ハウスつくば支店(つくば市春日2-28-1、駐車場有)で開催。10歳以上の50人定員。入場無料だが募金への協力を呼び掛けている。申し込みは電話090-8058-3129(重松さん)か、ホーリーキャトのホームページ内のブログから。締め切りは15日。募金は全額、寄付事情に詳しい竜野さんを通じてウクライナ動物支援の窓口へ送られる。

「むすびつくば」リヴォルヴへの満足度高い 不登校支援の民官協働事業検証終わる

つくば市の不登校に関する児童生徒支援検討会議が29日午後2時から、市消防庁舎の多目的ホールで開かれた。昨年12月、不登校児童生徒の学習支援施設「むすびつくば」の運営事業者の選定をめぐり迷走した問題を受け、5月に設置された検討会議(5月17日付)の第11回の開催となる。 会議は森田充市教育長と市教育委員4人を委員に構成される。5月に始まった検討会の議論は終盤に近づき、市が2020年10月から22年3月末までNPO法人リヴォルヴ学校教育研究所(同市二の宮、小野村哲理事長)と協働で実施した「むすびつくば」の事業に関する検証報告書が検討会議で承認された。同報告書は12月1日に市議会の文教福祉委員会(木村清隆委員長)に提出される。また、今後の市の全体的施策と方針の取りまとめについて意見が交わされた。 「むすびつくば」は、民と官が相互に協力、補完して増加する不登校児童生徒の個に応じたさまざまな学習機会の提供と、民間事業者の専門的知見を活用して新たな学習支援の知見を深めることを目的にスタートした。検証は、利用者の小中学生と保護者へのアンケート(6月~7月実施)や、協働事業者のリヴォルヴとつくば市による自己評価、利用者在籍校の聴き取りなどで得られた結果を基に分析と評価が行われた。 協働事業の分析では、①リヴォルヴは学習障害の傾向のある児童生徒への支援や、教科書学習に拒否反応を示す児童生徒には遊びの時間を設けるなど工夫して学習支援を行った②新たな支援方法の構築として、20年以上に及ぶ指導のノウハウを生かして一人ひとりの特性に応じた学習支援を行った③スタッフが児童生徒の目線で対応し、信頼関係を気づいて心理的な居場所づくりをした④保護者同士の交流と経験の分かち合いを目的にした「親の会」や教育相談を開催して保護者への支援を行った-など、リヴォルヴに対する保護者の満足度は高かった。 一方、アンケートでは「子ども同士の関わりが深まる放課後的な時間があると良い」という保護者の意見や、体験入所を利用したが「子どもが行きたくないと言った」ため入所しなかったケースもある。全体を通して児童生徒と保護者の満足度は高く、利用者の期待に応えられるような学習支援活動を提供していたと検証報告書は評価している。 リヴォルヴによる「むすびつくば」の運営は1年間延長されて来年3月まで。23年度以降どうするかについては検討会議で協議しているが結論は出ていない。 支援に8つの柱 検討会議ではまた、第9回会議で示された支援施策案(10月13日付)の要旨を伝える取りまとめが話し合われた。施策は、①校内フリースクールの整備②スクールカウンセラーの増員③スクールソーシャルワーカーの増員④市教育相談センター(同市沼田)の教育相談員の増員⑤不登校児童生徒の保護者への補助⑥民間の不登校児童生徒支援施設の運営者への支援⑦公設の不登校生徒支援施設の運営継続⑧家庭にいる児童生徒への支援-の8つの柱で構成されている。 不登校児童生徒の状況に応じて、担任やスクールカウンセラーなど学校関係者をはじめ、フリースクールなどの関係者が連携して支援することで、社会的な自立に向けた取り組みを行う枠組だ。この施策の基本理念を盛り込むため、検討会議メンバーが構成や文言に知恵を絞る形になった。児童生徒を主体に、幅広い支援を積極的に提案するものだが、予算のハードルは高く、内容が縮小される可能性も懸念される。 検討会議は来年1月に全体的な施策と支援方針をまとめる。次回の検討会は12月27日を予定している。(橋立多美)

精密さと力仕事のオーダーメード 家具職人高橋伸治さん【ひと】

つくば「ラスカル・ファニチャー・ファクトリー」 畑が広がるつくば市若栗の集落に、家具工場「ラスカル・ファニチャー・ファクトリー」を訪ねた。主の高橋伸治さん(50)は大学卒業後、華やかなアパレルの仕事に従事したが、ものづくりの世界に魅了されて家具職人に転身した経歴の持ち主。オーダーメード家具の製作から修理、リメークを行っている。 顧客がついて安定した経営に、影を落とすのが新型コロナ、家具のリメークの注文が増えたものの、木材価格の高騰に見舞われている。心身ともにタフな高橋さんは現状にめげず、独自の規格による定番商品を実現しようとしている。 工場は、かつて鉄骨造の牛舎だった。専門業者に依頼して壁を施工した工場はテニスコート2面分に相当する約500平方メートルの広さで、木材加工の大型機械10基が設置されている。 アパレルからの転身 高橋さんは秋田市生まれ。父親の仕事の関係で中学生の時から横浜で暮らした。大学卒業後、ファッションデザイナー、芦田淳(1930ー2018)が創業したアパレル会社に就職した。 転機は入社から1年半後。高品質の既製服作りに専念する芦田の姿が輝いて見え、思いを形にする「ものづくり」への願望が湧きあがった。少年期、わくわくしながら木箱や木製の小物入れを作ったことを思い出し、家具職人になる道に踏み出した。 最初に、埼玉県の飯能職業訓練校木工工芸科で基本的な木工技法や機械の操作技術を習得した。「中高時代はよく授業をサボったけど、訓練校の授業は楽しくて1日も欠席したことはなかった」と当時を懐かしむ。 その後、家具工房やアンティーク家具ショップなどで経験を積みながら修理と経営スキルを磨き、人脈もできた。独立資金をためて35歳で独立した。以来、注文に応じて打ち合わせからデザイン、製作、納品まで一貫して1人で行っている。 高橋さんの家具づくりのコンセプトは「使い手のライフスタイルに寄り添い、次世代に引き継がれるシンプルな家具」。家具をどう使いたいか希望を聞き取ってデザインを提案するという。また「変化する生活スタイルに対応できるよう余白をとって製作している」と話す。 木で作られていたら直せないものはない 日々向き合う木材については「触ると優しくて温かいが、鉄のように丈夫で手をかければ応えてくれる万能の材料。経年変化で風合いがでるのも魅力。木で作られていたら直せないものはない」。 新型コロナの流行をきっかけに、今ある家具を素材として新たな家具を作るリメークの相談が増えたという。外出自粛で「おうち時間」が増え、身の回りを見つめ直したことが要因では、と高橋さんはいう。ところが、コロナ禍をきっかけに「ウッドショック」と呼ばれる木材価格の高騰が起こり、家具製作にも影響を及ぼした。以前と同じ価格で製作するのが難しくなったそうだ。 家具職人は0.1ミリ単位の精密な作業を行うための集中力と手先の器用さが要求される一方、重い木材を運んだり長時間立ち続けるなどの体力も必要とされる。今年50歳になった高橋さんは精神的にも肉体的にもタフで、制作意欲に陰りは見えない。 「温めてきた計画を実行に移したい」と高橋さん。流行に左右されないテーブルや椅子など独自の定番商品作りで、そのために家具職人を増やし、オーダーメード家具製作との両立を目指すプランだという。「これからも長く人に寄り添い、どこか懐かしくて温かみのある家具を作っていきたい」と力強く語る。(橋立多美) ■ラスカル・ファニチャー・ファクトリー ホームページはこちら

文章を磨き上げる速記者の腕 つくば 竹島由美子さん【ひと】

つくば市松代の竹島由美子さん(74)は51年にわたり、速記者という仕事に一筋に向き合ってきた。現在は都内の速記事務所から委託を受け、自宅に届く講演会やインタビューの録音をパソコンで文字に起こす仕事を続けている。現場に出向く仕事はほとんどなくなり、速記の符号に出番はないが、培った技術を生かし仕事に磨きをかけている。 速記は、簡単な線や点でできた符号などを使って、人が話す言葉をその場ですぐさま書きとり、それを解読して文章に書き直すまでの作業を指す。 竹島さんは「符号の出番がなくなってきたことは寂しいが、技術の進歩に助けられて仕事を続けてこられた」と話す。コロナ禍で仕事がキャンセルになったことがあったが、仕事が物心両面で支えになっているという。時代とともに新たな言葉が生まれたり、流行したりする。これからも毎日2紙の全国紙に目を通して話題や言葉にアンテナを張り、レベルアップを図っていきたいという。 アナログ録音機で独学 東京生まれ。中学生の頃から作文や感想文を書くのが好きで、子ども向けの雑誌に載っていた「速記文字を使えば人の話が書ける」という速記専門学校の宣伝文句にひかれたのが始まり。当時は速記学校の募集広告が多く見られ、「就職したら速記を勉強しよう」と決めたという。 高校卒業後、比較的休みの多い学校の事務職員なら速記を勉強するのに都合が良いと考え、明治大学の採用試験を受けて職員に採用された。 大学から帰宅すると速記に独学で取り組んだ。アイウエオの五十音の符号を覚えてつなげるだけでは話すスピードに追いつけず、さまざまな略字が用いられる。それらの符号を覚え、自分でアナログの音声録音機(オープンリールデッキ)に吹き込んだ朗読を再生し、速記符号で書く作業を繰り返した。「言葉を聞いて自然に手が動くまで、根気よく練習した」と振り返る。 もっと速記の腕を上げようと週末に速記学校に通い、大学職員になって3年目に日本速記協会が実施する技能検定試験を受けて3級に合格した。 合格から2年後に大学を退職し、速記事務所に就職して速記者の道を歩むことにした。「速記の仕事は私に合っていました。会議やインタビューで未知の人や有名人に会えて、録音した話はためになった上にお金がもらえる」 この頃、大学の教職員組合の文化祭で知り合った男性と交際していたが、新たな船出の時期、彼は会社の仕事で海外にいた。帰国を待って報告すると、安定した職場を辞めたことを叱責され恋は終わった。 速記者として充実した毎日を送りながら、猛勉強して技能検定2級に合格した。2級検定は分速280字のスピードと文章の正確性が求められ、合格率はおおよそ20%と狭き門だ。 フリーの速記者を経て32歳で東京速記士会(東京・品川)に入会し、先輩の速記士、竹島茂さん(1925-2012)に会った。東京大学文学部卒の竹島さんは速記の仲間たちから一目置かれる存在だった。 5年後の1985年、竹島さんがつくばに創業した地域出版社「STEP」の社員となり、活動の場を東京からつくばに移した。「つくばの個性を生かしたまちづくりに向けた出版活動」という考えに共感したことが大きかった。 社長の竹島さんの片腕となり、月刊オピニオン誌『筑波の友』の発刊や、筑波山や霞ケ浦に関する書籍、研究者の研究成果などの出版に奔走した。53歳で竹島さんと結婚。10年前に夫竹島さんを見送り、会社は廃業(2016年)したが今も現役の速記者としてパソコンに向き合っている。 速記を取らないデジタル環境 50年経って速記者の環境は大きく変わった。仕事を始めた頃は重いアナログ録音機とコード、マイクを提げて現場に行き、全ての発言を録音することに集中した。その後録音した音声を聞きながら速記し、万年筆で原稿用紙に書き直した。 今は手書きの速記を取らず、小型のICレコーダーなどで録音した音声をパソコンに移し、音声を聞きながら直接パソコンに入力する方式が一般的になった。議会の議事録などありのままを記録することが求められるケースもあるが、「講演会やインタビューなどは誰もが読みやすい文章にするのが速記者の仕事」という竹島さん。 「意味が分かりづらい話し言葉や重複している表現を整文するなど、文章を磨きあげるのは速記者の腕にかかっている」と現役の速記者としての意気込みを語る。(橋立多美)

不登校生徒の居場所つくる校内フリースクール つくばに開設から5カ月

つくば市内の公立中学校に4月から、校内フリースクールが設置されている。不登校児童生徒を対象に、NPOなどが学校外で運営することの多いフリースクールを、市が学校内に開設したもので、校舎の中に生徒が自分のペースで学んだり友達と過ごしたりできる居場所ができた。 同市の不登校児童生徒数は、2014年度の約200人から20年度の399人、21年度には592人(小学生243人、中学生349人)と年々増加し、対応は待ったなしの状況。今年度、県から学校に2人の教員が加配されたことで開設に至り、校内フリースクールのより良い在り方を研究するパイロット校と位置づけられている。 市内の別の中学校では4月から別室登校がスタートしている。こちらは県からの加配がないため、NPOからスタッフ1人の派遣を受け、教員などと連携しながら支援を実施している。 自己決定に基づく学習支援 校内フリースクール「SSL教室」は、Special Support & Learning(スペシャル・サポート・アンド・ラーニング)の頭文字から名付けられた。開放感があり、教員が生徒をいつでも温かく迎えている。 支援目標は「社会的な自立を目指す」。校内にあっても教室復帰を目的とせず、生徒本人の社会的な自立を目指して個々に寄り添う支援が行われている。例えば、登下校の時間や学習する内容は生徒自身が決める。どの教科を勉強するかは自由で、読書もOKだ。放課後の部活動に参加するという計画を立て、SSL教室で過ごす生徒もいるという。 専用の昇降口にはSSL教室に通う生徒向けのシューズボックスが置かれている。在籍する学校の昇降口を利用することもでき、どちらを使うかは生徒の判断に任されている。 教室内には学習用の机と椅子のほかに、リラックスできるソファーが置かれ、靴を脱いでくつろげるスペースがある。広いテーブルがあって生徒たちが会話を楽しめる。1人で勉強したいなど、生徒たちの過ごし方に応じてパーティションで仕切るなどの工夫がされている。 「多様な学びを受け入れる教室」 SSL教室は、本人または保護者の希望をもとに受け入れている。利用状況は5月初旬までの1カ月間で10人だったが、7月末には14人と入室希望者が増えている。長期欠席だった生徒が登校してくるようになったという。 教室は、主に3人の教員が担当している。いつも教室にいる担任と、担任とともに教科を指導する専属の担当教員、そして他教員や保護者との連絡、調整など運営を担う教員3人だ。その他に教科担当の教員らが計画的に授業を行う。 担任教員は「時間割で区切られた学びが苦手な子どもは学校に行くことで苦しむようになる。学校の枠を超えて多様な学びを受け入れるSSL教室が、生徒にとって居心地の良い居場所であってほしい」と話す一方で、「教室に集まる生徒たちはみな前向き」と目を細めた。 校長は「SSL教室に通う生徒を目の当たりにしたり、職員会議での担当教員からの報告を通して、生徒たちを理解して見守る雰囲気が学校全体に広がってきた」と語った。 市教育局学び推進課の岡田太郎課長は「校内フリースクールは児童生徒が自分で家から通学できるという利点がある。パイロット校の経験値を生かして市内の公立学校に開設したいが、人員配置のために市の予算を確保するという課題がある」と話した。(橋立多美) 【お断り】「不登校生徒が特定されないように」との市学び推進課の意向から学校名は伏せ、撮影は生徒のいない夏休みに行った。

「学校に行かない」に困ったら相談を つくばの支援団体

長い夏休みが明けた9月は「学校に行かない」と言い張る子どもが多くなる。親はパニックになり、どう対処したらいいかと悩む。 そんな悩み相談に乗っているのが民間支援団体「つくば子どもと教育相談センター」(事務局・つくば市梅園)だ。代表で同市在住の穂積妙子さん(73)は「困ったら相談に来てください。きっとお力になれると思います」と呼び掛けている。 同センターは不登校が増え始めた1995年、元教員たちが学校生活の困りごとの相談に乗る組織として設立。以来、子どもの不登校や発達障害などに悩む親の相談を軸に、学校生活に不安を抱える子と親を支援する活動を続けている。 代表の穂積さんも創設メンバーの1人。センター始動後、臨床発達心理士になるためにお茶の水女子大、同大学院で学んだ後、資格を取得。臨床心理の専門家として相談者の悩みに耳を傾ける。 9年に及び支援継続 ある日、公立中学2年のA君が母親と相談にやって来た。内容はA君の不登校だった。A君はポツンと「部活の先輩との人間関係がつらい」ー。 穂積さんは「つらいよね」とA君の気持ちを受け入れた。A君が言葉にならない悩みをため込んでいることが伝わってきたという。 母親はセンターが運営する「不登校親の会」に入会し、不登校を経験した先輩から助言を受けたことでA君を理解できるようになった。 3年になったA君は学校にいられる時間が少しずつ長くなった。義務教育を終えると通信制高校に進み、希望する関西の私大に入学したが、大学でも人間関係による悩みが再燃し、1年休学して5年かけて卒業した。 9年に及んだ相談を振り返り「深い悩みを抱えると簡単に結論は出ない。内容によっては解決まで10年以上かかることは少なくない」とも。公的機関の相談窓口は新規相談者を受け入れるため、概ね相談は年間3回までで継続相談は難しい。「私たち民間組織だからできる」と穂積さんは言い添えた。 相談は年間延べ150件 同センターは、専門職による個人相談をはじめ、不登校や引きこもりがちな青年の居場所事業、同じ立場の親たちが交流したり相談できる「親の会」の運営などを通して子どもと親を支援している。運営委員会が運営を担い、約270人が会員となって活動を支えている。 相談は年間延べ150件に上る。相談者の8割がつくば市在住者だという。ただし2020年は新型コロナ対策のため相談受付を3カ月間中止したことで3分の2に減少した。 長引くコロナ禍で相談変容 2020年春の突然の長期臨時休校以降、いじめの相談件数が減ったが、被害者の児童生徒が心身に苦痛を感じたり転校を考えるなど、深刻なケースが散見されるという。 また、これまで人間関係や勉強に悩む思春期の中学生で占めていた不登校の相談が、小学生と高校生に広がり、小学生の親からの相談の過半数を不登校が占めるようになった。 「小学生でも学校生活の中で生きづらさを感じる子が増えている表れで、長引くコロナ禍で制限のある学校生活に疲れた子どもが増えているのではないか。深刻ないじめもコロナ禍の生活へのストレスが一因では」と穂積さんは心を痛める。 社会に羽ばたいた子どもたちから近況を知らせる手紙がセンター事務局に届くという。さまざまな問題に直面しながらも、困難を乗り越えて成長していく姿が穂積さんや運営委員たちの励みになっているそうだ。(橋立多美) ◆つくば子どもと教育相談センターは同市社会福祉協議会などと協働事業を行っており、つくば市民を対象に無料で相談に応じている。受け付けは▽毎月第1、第3金曜午後1時~4時30分、同市筑穂1-10-4、大穂庁舎内 市社会福祉協議会相談室。電話029-879-5504▽毎週水曜日午前9時15分~午後0時30分、同市吾妻2-5-1、産業振興センター1階フリースクール「むすびつくば」相談室。電話080-3152-6298▽月1回土曜日午前10時30分~午後4時30分、同市谷田部2844-2、YMCAみどりの事業所相談室。電話029-828-8189。こちらは相談者の居住地や年齢制限なし。いずれも事前予約必要。つくば子どもと教育相談センターのホームページはこちら。

挫折経験を強みに活躍するチームリーダー 土浦市 池田あゆみさん【ウーマン】3

土浦市田村町在住、池田あゆみさん(42)は、生命保険会社の土浦営業部に勤務して8年目の支部マネジャー。チームリーダーとしての仕事に「楽しくてやりがいがある」と笑顔で話す。余裕を感じさせる姿勢は、食いぶちを稼ぐための水商売を振り出しに、幾多の失敗や困難で得た経験によって培われた。 16歳で家出して水商売に 陸上自衛隊の自衛官だった父親の霞ケ浦駐屯地への異動で、小学6年のときに阿見町中央に引っ越してきた。4人きょうだいの末っ子。しつけが厳しく過干渉な母親から逃げたくて、中学3年になるとプチ家出を繰り返すようになった。 「夕方家に帰りたくなくて公園にいることが多かった。お腹が空いて、公園に隣接したコンビニが食べ残しの弁当を裏手の物置に入れるのを見ていたので、こっそり持ち出して食べました。(人の食べ残しに)抵抗はなかった。冬は学校のジャージだけで寒くて辛かった。行く当てはなくて翌朝には家に帰りました」 高校生になっても家は息が詰まり、週末は友だちと土浦の中心街に出かけるのが常だった。当時は駅前通りに大型店の小網屋や西友、丸井があって賑わい、路上でワゴン車に積んだ倒産品などを売る30代の男性、ノリさんと顔なじみになった。 何度もノリさんに「自分で稼いで食べていきたい」と訴え、夏休みが終わる頃、家出してノリさんの住む東京・小岩の高級クラブで働き始めた。クラブを経営していたママはノリさんの知人で、ママが衣装を貸してくれた。年齢は4歳サバを読んで20歳で通した。 水商売は高収入が得られると甘く考えていたが、クラブは「大人の社交場」。世間知らずで知識も乏しく、客と会話が続かず居場所がなくて傷ついた。退職を申し出て阿見町に戻ったのは高校1年の3学期だった。 夜職で稼ぎ高校、短期大学を卒業 挫折したがめげなかった。勉強に遅れをとったし戻りたくないが、ここで高校を諦めたら学歴は『中卒』になる。それは嫌だ。「働きながら一から出直して学歴を手に入れよう」と決めた。 在籍していた普通高校を自主退学して定時制高校昼間部に入学。その後、高卒認定(旧大検)に合格して大学受験の資格を取り、東京文京区にあった女子短大で英語を学んだ。 定時制高校と短大の学費や、土浦に住む友人の部屋に同居してからの食費と生活費は、土浦桜町のスナックで働いて捻出した。 「クラブの二の舞にならないよう、先輩の接客を見習って会話術を身につけました。スナックの閉店は深夜になるのは当たり前で、いつも睡眠不足でした。短大時代は土浦駅で常磐線に乗り込んで座ると同時に爆睡。通学時間が睡眠時間でした」と振り返る。 金銭感覚マヒ? 堅実な暮らしにかじを切る 短大卒業後は旅行会社の準社員として採用されたが、5年先輩の給与が新入社員の自分と変わらないことを知り、希望が見えずに2年で退職して水商売に戻った。 接客スキルが上がって収入は多い月で50万円、日払いなら1万円になった頃、金銭感覚がおかしくなっていることに気づいた。「高額な商品でも〇日働けば手に入ると迷わず買ってしまう。計画を立てるとか、やりくりという考えがなくなっていました」。 「こんな生活を続けていたらサラ金に手を出すようになって自滅する」と実家に帰った。それまでの親不孝を言葉で詫びることはしなかったが、両親は黙って受け入れてくれた。家族で夕食を囲む幸せを実感したという。 堅実な暮らしをしようと派遣会社に登録し、稲敷市にある大手食品・飲料会社の工場に職を得た。工場は常時稼働し、社員は3交代制で操業を支える。 世間に縛られ1人育児で力尽きる 正社員に登用され、社内結婚して実家に近いアパートで暮らし始めた。27歳だった。2年後に長男、翌年次男が誕生。次男の産休を終えて復帰してから過酷なワンオペ育児が始まった。 早朝5時、眠っている2人を布団から車内に移して職場に向かい、工場内の保育所に預けて始業7時に滑り込みセーフ。帰宅後は夕食、風呂、寝かしつけ、翌日の保育園の準備と息つく暇もなかった。 3番目の長女が生まれると、育児疲れから誰とも話したくないなどの産後うつの状態になり、長女が2歳を迎えた頃に力尽きて退社した。 「育児に協力しない夫に不満を抱えながら、『男は仕事、女は家事』という性別役割分業に縛られ、夫は自由でいいなと思っていた」と話す池田さん。「世間の目も気になって良い妻を演じていた」とも。 後輩のキャリアアップと新人教育に尽力 専業主婦になり、中学の同窓会で「働いてみない?」と誘われたことをきっかけに生命保険会社に入社した。当初は「自分にできるか」と不安だったが、水商売で身につけた会話力が武器になった。加えて、お金の大切さを知り尽くした池田さんだからこその提案が顧客に信頼された。 気がつけば入社2年半で新人3人を採用し、着実に営業成績を伸ばしたことで支部マネージャー(チームリーダー)になった。現在、池田さんのチームはシングルマザーを含む6人。主力業務の採用活動をこなしながら、仲間のキャリアアップの支援と新人育成に取り組んでいる。 子育てなどで社会の一線から退いた主婦が、復職した時に立ちはだかるのが顧客とのコミュニケーションだという。池田さんが同行するなど会話力を養う一方で視野が広がり、やがて主婦のレッテルが取れていくという。 池田さんは「営業ウーマンの育成だけでなく、積極的に社会とつながり、女性の立場で堂々と発言できる人を育てていきたい。それが女性たちの生きやすさにつながると思うから」と語ってくれた。(橋立多美)

夫への依存心を解き整体院開業 つくば市 石井みちよさん【ウーマン】2

日常会話がなく気持ちを共有できない夫と離婚を考えた石井みちよさん(53)=つくば市大角豆=は、経済的理由から踏み切れずに苦しみ、呼吸困難で救急搬送されたりもした。その後、思いのたけをブログにつづることで凍った心が解け始め、経済的自立に向けて昨年10月、「もむらく整体院」を開業した。 夫は研究者。31歳で結婚し、横浜市と同市並木の公務員宿舎で暮らしてきた。結婚から3年、一人娘が誕生したころから傷つくことが多くなった。 夫は娘には関心を示したが、みちよさんとは必要最低限の会話だけで食事中はテレビに釘付け。ある日、夕食後に自室にこもって研究のためにパソコンを打つ夫の背に声をかけると、邪魔だと言わんばかりに「シッ、シッ」と手で追い払われた。 無視されることが辛くて心が休まらず、いつも頭の中は「離婚」でいっぱいだった。離婚後の生活を支えるために時給の高い訪問ヘルパーの職を選んで働き始めたが、計画通りに収入を得るのは難しかった。 夫の仕打ちはなぜなのか、自分に原因があるのかと本で調べたことがある。話し合いが苦手、家族との時間より仕事に没頭する、みちよさんの気持ちが理解できないなど、夫の症状は発達障害の一つ、アスペルガー症候群の傾向がある状態だと分かった。が、夫を受け入れる気にはなれなかった。 5年前、並木の公務員宿舎にほど近い大角豆地区の集落に建つ店舗付き中古住宅を購入した。「庭が広く、店舗部分で何か楽しいことができそう」と想像がふくらんだ。夫の反対はなかった。 新居購入当時も夫と顔を合わせる休日は気分が落ち込むなど、不穏な毎日で不眠に悩んでいた。そこに新居のリフォームと中学2年の娘の登校行き渋りのストレスが重なった。息ができなくなって救急病院に搬送され、その後は心療内科で処方された精神安定剤を飲むようになった。ホームヘルパーの仕事は辞めた。 落ち着きを取り戻すとブログを開設し、3日に1度の頻度で夫との葛藤をつづった。書くことでいやされ、客観的に自分を見ることができるようになった。「初めは主人への雑言でしたが、次第に都合の悪いことは隠そうとする身勝手さに気づき、(私に)苦手なことを要求された夫も被害者だったと思うようになりました」 そして「お金の苦労を知らず、結婚すれば楽に暮らせると思っていたのは間違いだった。夫に依存せず、経済的に自立しよう」と心が定まった。 新居の店舗部分に整体院を開業する青写真を描き、東京・世田谷の整体学校で基本的な施術を学んだ。さらに東洋医学のエビデンス(治療法の根拠)に基づき施術する、東京・神楽坂のアラウンドセラピーのスタジオに通って「ボディケアセラピスト」の資格を取得した。 準備が整い、昨年10月「もむらく整体院」を開業した。リフォームを施した広さ約70平方メートルの空間の和室が整体院で、洋室はレンタルスペース「スペース田楽」として貸し出している。もむらく整体院の施術対象は女性のみで、全身フルコースは1日1人限定。 発達障害などで共感性に乏しいパートナーにストレスをため、体調を崩したり、精神疾患にかかる状態を「カサンドラ症候群」という。みちよさんは、自分と同じように夫との関係に悩む人に寄り添い、前向きになるための「カサンドラ自助会つくば~エトワール」を主宰。毎月会員がスペース田楽に集っている。 中学で登校をしぶった愛娘は今春県外の大学に入学して1人暮らしを始めた。みちよさんは「主人と2人だけなら振り出しに戻ったかも。今はスペース田楽に来てくださる人や仲間がいて、穏やかな毎日を送っています」とした上で、「整体院の収益を上げていきたい」と明るく前を向く。(橋立多美) ◆もむらく整体院(つくば市大角豆1340)やスペース田楽のブログはこちら、利用はこちらから。

「体育はマスク不要」通知に つくばの学校現場は半々

学校現場でのマスク着用について、文部科学省は24日、体育の授業はマスク不要との通知を出した。学校現場はどう受け止めているのか。文科省の通知が出された直後、屋外で運動会の練習に取り組むつくば市内の小学校を訪ねると、マスクを着用する子と外す子は半々だった。 新型コロナウイルス対策をめぐる24日の文科省通知は、体育の授業は屋外に限らずプールや屋内の体育館でもマスク着用の必要はない、運動部の活動も体育の授業に準じる、熱中症リスクが高い夏場の登下校時はマスクを外すーなど。ただし実際の運用に当たっては地域の実情に応じたものとし、マスク着用を希望する児童生徒に対しても適切な配慮が必要だとしている。 文科省や県の通知を受けてつくば市教育局は翌25日、市内の各小中学校などに対し、体育の授業はマスクの着用は必要ないなどの連絡をした。 強制はできない つくば市松代の市立手代木南小学校(澤邉芳幸校長、児童数354人)は来月4日にコロナ禍3年目の運動会を予定している。取材に赴いた26日、6年生が運動場で運動会の練習をしていたが、マスクを着けた子と外した子は半々だった。 これまでも感染対策の学校衛生管理マニュアルで、体育の授業ではマスクの着用は必要ないと示されている。今回、より具体的に強調された格好だが、澤邉校長は「コロナが収束していないし、保護者の考え方もあって強制はできない。体育の時間はマスクを外してもいいよ」と指導することにしている。また「マスクを外したくない子もいるようだ」と話す。 熱中症と感染対策の両方 運動会本番では熱中症対策と新型コロナウイルス感染対策の両方を講じる予定だ。熱中症対策のため、校庭に16張りのテントを設営して全児童が日差しを避けられるようにする。競技中はマスクを外すが、テント下でマスクを着けて応援する際は大きな声を出さずに拍手でエールを送るよう指導している。 また児童たちの間隔を十分に確保するために入場と退場の位置を分けたり、保護者席を2カ所設けて密を避けるなどの対策を講じる。 コロナ禍での熱中症対策として広がっているのが「半日運動会」だという。同校でも開催規模を短縮して気温が上がらない午前中に開催する。弁当はない。競技者の距離が近い綱引きなどの団体競技やPTA種目、児童によるダンス種目は姿を消し、同校の伝統、6年生による南中ソーラン踊りが披露されるという。 10代以下の割合高く心配 保護者の受け止めはどうか。小学6年生の娘を持つ同市茎崎地区在住の40代の母親は、県内の新型コロナ感染者は10代以下の割合が依然高いことを心配し、「言い聞かせても子どもたちの身体的距離は近くなりがち」とした上で、脱マスクの流れに不安を見せた。 素顔恥ずかしい 子供たちには、マスクを外したくない別の心理も働いているようだ。2年以上に及ぶ長期のマスク着用でマスクをしていることが常態化し、素顔を見せることを恥ずかしがる子どももいる。市内の小6の女子児童は「マスクをしていると安心できる。ないと外に出られない」と話す。 今春高校生になった市内の女子生徒は「高校に入学したときからずっとマスクを着けているので、友達に素顔を見せるのは恥ずかしいし、素顔を見たことのないクラスメートも多い。マスクは外したくない」と言う。 外したくないのは思春期を迎えた男子も同様だ。市内の中学2年の男子は「週に何度かひげをそらないとまずいが、マスクで隠れるから楽」と話している。(橋立多美)

マスク外し「外ヨガ」で開放感 栗原交流センター つくば

五月晴れとなった24日、筑波山と宝篋山を望むつくば市栗原の市栗原交流センターの芝生広場で、屋外でヨガを楽しむ「外ヨガ」が開かれ、15人の参加者たちは、新型コロナウイルス感染拡大以来ほぼ2年ぶりに、マスクを外して仲間と一緒に体を動かした。 今月23日、国が新型コロナウイルス対策の基本的対処方針を変更し、屋外で人と2メートル以上の距離を確保できない場合でも、会話をほとんど行わなければマスク着用の必要はないと発表したのを受けてマスクを外した。 村野一義所長は「マスクの着用について政府の方針が示されたので、会話しない受講生はマスクを外して参加してもらえる」と安堵(あんど)した表情を見せた。 外ヨガは、マットに仰向けの姿勢で大地と接触するグランディングという軽いウォーミングアップから始まり、水分補給をしながら座ったり四つんばいの姿勢で股関節や背骨を動かしたり、立ちポーズを取ったりした。最後は、横たわって何も考えない瞑想(めいそう)の時間を意味する「しかばね」のポーズで終了した。 「肩こりで体はガチガチ、できるかな」と不安げだった参加者の水谷浩子さん(62)は「マスクを外して気持ちよかったし、リラックスできた」。ヨガ経験者で50代の鷹巣あけみさんは「鳥の声や風を感じながらの外ヨガは、余計なことを考えることがなくて良かった。ここでヨガができるのは幸せ」と話した。夫に子どもを預けて産後5カ月で参加した30代の岡野絵莉子さんは「体を伸ばして開放された気分」と笑顔を見せた。 感染から身を守るとはいえ、長く続くマスク着用の生活は心の負担になっていたはずで、マスクなしで外気を吸いながらヨガのポーズをとる参加者たちは、心身ともに開放感を感じている様子だった。 外ヨガは栗原交流センターが企画した講座で、24日を初回に全3回開催される。「筑波山と宝篋山を見上げ、近くを流れる桜川に沿って水田が広がる景観と、広い芝生広場を有する栗原交流センターの立地を生かした講座を考えた」と同センターの村野所長は話す。コロナ禍による健康志向の高まりと戸外での活動に定員15人を超える応募があり、抽選で受講生が決まった。 講師を務めたヨガインストラクターの染川ひろみさんは、市内各地の交流センターやヨガサークルなどで幅広く指導している。染川さんは「心と体をつなぐことが大切で、ポーズの格好を気にすることはない」と話し「筑波山に連なる山々を眺めて田園をわたる風や鳥の声に耳を澄ますなど、心地良さを体感してください」と語りかけていた。(橋立多美)

ネット配信に工夫凝らし 24日まで科学技術週間 つくば

「発明の日」の18日に始まった科学技術週間は24日まで。つくば市内の教育・研究機関でも、各種イベントが展開中だ。新型コロナ感染対策から、施設公開やトークイベントなどをオンラインで行う一方、研究開発に取り組む現場の映像を配信するなど、工夫を凝らしたインターネット上での紹介が大半を占めている。(橋立多美) 宇宙と物質の謎配信 高エネルギー加速器研究機構(KEK)22日に東海村からサイエンスカフェ「大強度陽子加速器施設(J-PARC)で探る宇宙と物質の謎」を生中継する(午後6時~8時、要事前申し込み)ほか、つくばキャンパスの常設展示施設「コミュニケーションプラザ」にある霧箱を使って「宇宙からやってくる自然放射線を観察する」(午後5時半~8時)。23日は量子を題材にしたアニメの紹介や加速器のオンラインツアーが企画されている(午後1時~3時半)。いずれも参加は無料。配信はYouTube(KEKチャンネル)1日目=https://youtu.be/3muAqQSO04E 2日目=https://youtu.be/POV1rikg284   https://www.kek.jp/ja/ ショートムービー&トークライブ配信 産業総合技術研究所(AIST)日々研究に奮闘する現場にカメラを持ち込んで仕上げたショートドキュメンタリームービーを21日まで連日配信。題して「研究の日常は、非日常だ」。ムービーは研究部門ごとに編集され、驚きとワクワクにあふれた非日常空間を楽しめる。22日午後7時半からはムービー出演の研究者たちによるトークイベントが開催され、研究成果を生み出すための地道な作業などが語られる。ショートムービーは産総研公式 Twitter(https://twitter.com/AIST_JP)または YouTubeで。トークイベントの視聴はサイエンス・スクエアつくばのホームページから。参加無料。 食と農の科学館オンラインツアー 農業・食品産業技術総合研究機構(NARO)「食と農の科学館」をバーチャルで体験できるオンライン特設サイトを5月8日まで開設する。2021年度に新たに展示された植物工場の模型、超極細シルクドレス、農作業事故体験VR(バーチャルリアリティー、仮想体験)を動画で紹介などする。クイズやプレゼント企画などもある。特設サイトはこちら。 非常識な『ミカタ』~材料の科学者はこう考えた~ 物質・材料研究機構(NIMS)24日午前10時から、最先端材料開発の現場から装置や技術をYouTube、ニコニコ動画で配信する。非常識な「ミカタ」から生まれた材料がいっぱいのNIMSのラボからラボへと生潜入。最先端材料開発の現場から、研究者のユニークな視点・発想で生まれた材料・装置・技術を紹介する。登録なしで誰でも視聴できる生放送「ラボぶら」はこちらから。 特設サイトで発信 国際農林水産業研修センター(JIRCAS)一般公開用の特設サイトを設け、農業や食料をテーマにした6人の研究者によるミニ講演や、360度カメラで撮影した「動物目線から見た景色」、スタンプラリークイズなど、子どもから大人まで楽しめる企画を用意。24日午後1時からパネルディスカッション「変わりゆくアフリカ~研究者が現地で見たアフリカの農業・食料」のライブ配信が行われる。視聴は国際農研一般公開特設サイトで。 オンラインでつながろう! 国際協力機構(JICA)筑波国際センター21日午後6時半~8時、「国際協力のおしごと座談会!」(対象:高校生・大学生・一般、定員50人)。23日午前10時~11時45分。「つくってみよう世界の料理!~ガーナ“ジョロフライス”」(対象:小学生=保護者同伴=から一般、定員15組)、ZOOMによるオンライン開催。内容はこちら 視覚障害に配慮した学び体験 筑波技術大学春日キャンパス視覚と聴覚障害者のための国立大学法人・筑波技術大学が科学技術週間のイベントとして、視覚に障害のある学生たちが勉強している春日キャンパスを一般公開する。キャンパスには視覚障害の学生が在籍する保健科学部があり、障害に配慮された学習環境を見学するだけでなく、触覚を用いる教材や音声読み上げソフトウエアなど、さまざまな支援機器を体験できる。公開は22日午後1時~4時半、正面玄関脇の図書館入り口で受付。団体の場合は大学総務課広報・情報化推進係に問い合わせ(電話029-858-9311)を。https://www.tsukuba-tech.ac.jp/department/hs/ このほかの主な公開は次のとおり。 ▽筑波大学 スーパーコンピューターと学際計算科学の最前線など研究室紹介の動画配信。宇宙史研究センターによる「宇宙の誕生から銀河の形成」は力作。宇宙の始まりから銀河の形成、さらにその先まで、宇宙の歴史の5日の場面でとらえ、その最新研究の様子を届ける。視聴はこちらのメニューから。 ▽JAXA筑波宇宙センター 科学技術週間期間中、館内休憩室でJAXAの取り組みや最新の情報をショートムービーで紹介する。現在、一般見学は事前予約制、見学の案内サイト(https://visit-tsukuba.jaxa.jp) ▽産総研・地質標本館 2021年に発信した特筆すべき研究成果14件をまとめてウェブ会場から紹介。地質標本館は3月16日深夜の地震により一部不具合が生じ、点検と必要な修繕のため臨時休館中。6月末までの新たな来館予約を停止している。 ▽国立公文書館つくば分館 春の企画展「ゆっくら温泉ー江戸時代の湯めぐり」は終了した。新旧憲法、終戦の詔書(しょうしょ)などのレプリカ展示は常設で行われている。午前9時15分~午後5時、土日祝日休館。 ▽国土技術政策総合研究所 津波越流に対する海岸堤防に関する実験や、災害時の道路交通維持に貢献する道路基盤実験施設など、Webでの公開のみ。視聴はhttp://www.nilim.go.jp/ ▽土木研究所 研究所の紹介、免震橋や津波でも流出しにくい橋などの実験を配信。Webでの公開のみ。 ▽NTTアクセスサービスシステム研究所 細いガラス製の「光ファイバ」でさまざまな情報を伝える仕組みや、通信基盤を支える技術を紹介する。 ▽国土地理院「地図と測量の科学館」 企画展「緯度経度 世界共通の正確な『ものさし』へ」を開催。測量用航空機くにかぜの内部公開は21日午前10時~午後3時、雨天中止。 ▽つくばエキスポセンター=企画展「錯視の世界~あなたは今度もかならずだまされる」、科学のポスター展、科学技術映像祭など科学の不思議を体験できる。科学技術週間中は入館料が割引(大人200円、子ども100円)。 ▽筑波実験植物園=24日まで「さくらそう品種展」。100種類を超えるサクラソウの園芸品種を、江戸時代から続く伝統的な方法で展示する。一般320円(税込み)、高校生以下・65歳以上は無料。入園は午前9時~午後4時半。https://tbg.kahaku.go.jp/

2カ所の不登校支援事業をつくば市議会可決 支援事業者リヴォルヴ・小野村哲理事に聞く

つくば市議会は3月議会最終日の23日、不登校児童生徒学習支援事業2カ所の予算決議案の採決を行い、可決した。 不登校児童生徒が通所する「むすびつくば」は、2020年から市とNPO法人リヴォルヴ学校教育研究所が協働で運営してきた。契約終了に伴い、新年度からの委託事業者を公募型プロポーザルで選び、リヴォルヴは次点に沈んだ。保護者会が存続を求めて市に陳情書を提出(1月20日付)、4502筆の署名が集まった。事態を重くみた五十嵐立青市長は、リヴォルヴが新年度も事業を継続する施策を公表。プロポーザルで選定されたトライへの事業費とは別に、リヴォルヴによる事業費を追加提案した(3月3日付)。 保護者会が、リヴォルヴによる事業の継続を求めた問題はひとまず決着したが、契約期間3年のトライに対しリヴォルヴは1年。保護者からは早くも「1年先はどうなるのか」の不安の声が上がる。この状況下でリヴォルヴはどう活動していくのか。リヴォルヴの理事、小野村哲さん(62)に今後の取り組みなどについて聞いた。 市民に説明できるプロセスに ー今回の事態の原因は何だったと感じているか。「保護者や子どもたちの意見を聞く姿勢が市教委になかったことと、プロポーザルの運用に問題があったと思う。7人の選定委員中、むすびつくばを見学したのは1人だけという状況で採点が行われた。選定委員の人選とプレゼンを公開にして透明性を持たせ、市民に説明できるプロセスに改めなければ」 ー五十嵐市長はこの1年で、不登校支援のあり方を検討するとしている。「私たちは手続き上は委託でも、市教委と保護者、運営スタッフ、臨床発達心理士が一堂に会し、民官が手を携えて支援のあり方を考える運営協議会を準備している。学習支援の活動を誰がどう評価するかも並行して検討したい」 「公募のあり方も課題で、事業者の選定は公平性を確保し、既存の事業者が続行して新規事業者の参入を阻むことにならないよう、かといって事業者がころころ変わって子どもたちを不安にしないよう考えたい。リヴォルブは既得権益を守るつもりはない」 ー市教委の不登校への施策をどう見ているか。「授業の進度をいたずらに早めない、テストを強制しないなど、勉強についていけない子どもを置いてけぼりにしない指導が行われれば、確実に不登校は減らせる。授業の進め方や何を教えるか、また時間割は学校の自由で(改革は)すぐにでも始められる」 「新年度中に校内フリースクール1校を開校するという。全国的に見て、一挙に数校に配置したが単に空き教室に『校内フリースクール』の看板を付け、手の空いた教職員が見に行くだけという自治体がある。1校から始める当市は真剣に考えていると思う」 子どもたちの幸せとスタッフへの責任 ー次年度以降もむすびつくばの運営を目指しているか。「子どもたちのために新年度は続けながら、子らの心を大切にした支援目標を市教委や保護者と共有して支援のあり方を検討する。手ごたえがなければ引く可能性がある。私には子どもたちの幸せとスタッフへの責任があり、スタッフの生活が安定しなければ良い支援はできないということ。委託費約2100万円の全部を12人の人件費に回せるわけではない。フルに働く常勤スタッフ2人ですら月に20万円ほどしか払えない」 「私もスタッフもこれまで続けてきたのは子どもといるのが楽しいに尽きる。将来、通所している子どもたちが『むすびつくばがあったから今がある』と言ってくれたらうれしい」(聞き手・橋立多美)

「公平な利用基準を」「予算平等か」不登校支援めぐり議論 つくば市議会

つくば市議会予算決算委員会(山本美和委員長)が17日開かれ、市が4月から2カ所で委託事業を実施する不登校の学習支援事業をめぐって改めて議論が行われ、「利用希望者への公平な選定基準を設けてほしい」「不登校児童生徒にだけ予算を使うのは平等か」などの意見が出された。 つくば市がNPO法人リヴォルヴ学校教育研究所(同市二の宮、本山裕子理事長)と協働で運営している不登校の学習支援拠点「むすびつくば」の契約が3月末で終わることから、市が新年度からの運営事業者を昨年11月に公募した結果、学習塾のトライが1位となり、リヴォルヴが2位となった。市は3月議会が開会した2月14日、トライへの委託事業費として約2100万円を当初予算として議会に提案した。 一方、公募結果を知ったむすびつくばの保護者会が、リヴォルヴによる事業継続を市長らに陳情し(1月20日付)、五十嵐立青市長は3月3日の本会議で、リヴォルヴによる事業を現在と同じ場所で新年度も継続するための事業費など約2300万円を追加提案した(3月3日付)。 紆余曲折する中、市議会文教福祉委員会(木村清隆委員長)の審議を経て(3月9日付)、17日、市議全員がメンバーの予算決算委員会で改めて不登校支援事業に対する審議が行われた。 川久保皆実市議(つくばチェンジチャレンジ)は、不登校児の保護者から出された「不登校児童生徒への公平な公的支援を求める」要望書を引き合いに、「リヴォルヴとトライが受け入れる人数は合計80人で、市全体の不登校小中学生400人の2割しか公的な支援を受けられない。また家庭状況をポイント化した点数で認可保育園の入所が決まるように、利用希望者への公平な選定基準を設けてほしい」とした。川村直子市議(つくば市民ネット)も「公的な不登校支援施設『つくしの広場』の20人を入れても足りない。多くの支援の場を広げてほしい」と発言した。 文教福祉委員会で審議を重ねてきた市議からは、支援を受けられない児童生徒への支援策の検討を求める声のほか、課題は多いが致し方ないという声も上がった。 五頭泰誠市議(つくば自民党・新しい風)は「不登校児童生徒にだけ予算を使っていいのか、通学している子どもと平等か」と発言し、「多様化が言われる今、不登校の子どもは弱者という捉え方はおかしい。学校へのサポートは万全とは言えず、公平に教育費の配分を考えていく必要がある」と述べた。 審議の末、4月から委託事業として2カ所で実施される不登校学習支援事業はいずれも賛成多数で可決された。3月議会最終日の23日も可決される見通し。 文教福祉委員会の委員でもある金子和雄市議(新社会党つくば)は閉会後、NEWSつくばの取材に対し「当初予算が出されていたのに間際になって補正予算を組んだのは例を見ない。しかし議会は子どもたちの立場に立って補正予算を受け入れた。さまざまな意見があるが支援の芽を育てていくことが大事だと思う」と話した。(橋立多美)

学習塾と不登校の居場所共存に疑問符 つくば市議会で意見相次ぐ

つくば市議会文教福祉委員会(木村清隆委員長)が7日開かれ、市が4月から新たに委託事業として実施する不登校の学習支援事業をめぐって質問が相次いだ。 トライグループ(本社・大阪市、平田友里恵社長)が研究学園駅前の学習塾「トライ研究学園駅前校」で、塾の利用がない日中の時間帯に不登校学習支援事業を実施するとする市の方向づけ(3月3日付)に対し、「(空間や環境づくりで)昼と夜の入れ替えは無理がある。場合によっては場所を変えることも含めて進めてほしい」(木村委員長)などの意見が出された。 不登校学習支援事業を学習塾で実施する方針に対しては「学習効率を上げ、受験を成功させるための環境に、通学できない子どもたちが通えるか。学力を上げていくための雰囲気が確実にある塾と、不登校の子供たちの居場所の両方が共存する環境がつくれるのか疑問だ」(山本美和市議)などとする意見が出された。 これに対し市教育局学び推進課の横田康浩課長は、公募型プロポーザルで次点となったNPOリヴォルヴ学校教育研究所(同市二の宮、本山裕子理事長)が同市吾妻の市産業振興センターで運営している学習支援拠点「むすびつくば」の扱いにも触れた。「(同じ場所で不登校学習支援事業を継続できないかなど)一連の流れの中で検討した結果、こういった形となった。(環境づくりの)重要性は認識しているので引き続き検討したい」と答えるにとどまった。 新規事業者(トライ)は研究学園駅前の教室で40人を支援する。「ニーズがあるか」などの質問に、横田課長は「学校には行けないがフリースクールには行けるという児童生徒は2020年の調査で100人以上いる。休みが多くなっている児童生徒への周知方法を模索している」とした。 トライの支援拠点に「トライ」の名称を入れるかという質問があった。トライグループが東京都練馬区から委託を受けて不登校生徒の学習支援を行っている教室の名称が「中学生対象適応指導教室トライ」のためだ。横田課長は「つくばでは名称に使わない方向で検討していく」とした。 横田課長はまた「オンラインでつながる手立ては必要で、トライにはオンライン学習への対応を期待している。むすびつくばに通所している保護者と意思の疎通を欠き、説明不足で陳情に至った反省に立ち、学び推進課が中心となって連携していく」とも述べた。 ほかに「不登校支援の事業者を選択するための公募に受験業者が入ることは慎重にするべき。今回の公募で道をつけてしまった」(橋本佳子市議)との意見も出た。  木村委員長は「むすびつくばは、人と交わりたくない子どもが1人になれるフリースペースを用意している。トライの学習拠点を駅前校から別の場所に移すことができないか検討する一方、学び推進課は密接な連携をとってほしい」と提言した。さまざまな意見が出されたことで、文教福祉委員会での不登校の学習支援は採決されず、議長以外の市議会議員が招集される17日の予算決算委員会で審議が続けられ、3月定例議会最終日の23日に採決される。(橋立多美)

新年度も運営事業者継続へ 不登校の学習支援拠点 つくば市が追加提案 

1位のトライは研究学園駅前に移動 つくば市吾妻、不登校の学習支援拠点「むすびつくば」をめぐって、市が新年度からの運営事業者を公募した結果、新規の民間事業者が1位となり、現在、同拠点を運営するNPO法人リヴォルヴ学校教育研究所(同市二の宮、本山裕子理事長)が次点となったことから、保護者会が、リヴォルヴによる事業継続を市長らに陳情していた問題(1月20日付)で、五十嵐立青市長は3日開かれた3月議会本会議で、リヴォルヴによる事業を現在と同じ場所で新年度も継続するための事業費など約2300万円を追加提案した。 一方、1位となった事業者はトライグループ(本社・大阪市、平田友里恵社長)であることが分かった。トライは公募型プロポーザル方式による選定結果に基づき、市の委託事業として新たに研究学園駅前で4月から不登校の学習支援事業をスタートさせる予定だ。 2カ所とも3月議会で審議され、最終日の23日に採決が行われる。 3日の追加提案によると、学習支援拠点を別の事業者に委託することで現在の利用者や保護者に不安を与えていることから、リヴォルヴが運営するむすびつくばに利用者が引き続き通えるよう、2022年度もリヴォルヴに事業を委託するとした。 議会からは、むすびつくばとトライに通所することになる子どもは金銭的な負担がないが、他のフリースクールに通所している子どもとの格差はどう対処していくか、などの質問が出た。これに対して吉沼正美教育局長は「他市町村を例に制度設計の研究をしていきたい」と答えた。 部屋と備品の使用料が追加発生 市教育局によると、リヴォルヴは今年3月末までの2カ年、市との協働実証事業として年間約1400万円で事業を運営した。現在35人が通所している。新年度は市の委託事業として約2100万円で運営し、受け入れ人数を計40人に増やす。 トライは公募時点では、むすびつくばがある同市吾妻で事業を実施する計画だったが、場所を移す。研究学園駅前のトライ研究学園駅前校で、午前9時30分から午後3時まで、不登校の学習支援事業を新たに展開する。現在、駅前校の利用がない時間帯に実施するという。別の場所に移すことにより、部屋や備品の使用料などが新たに発生し、トライの委託事業費は年間約180万円増え、計約2300万円になる。駅前校の面積はむすびつくばとほぼ同じ約125平方メートル、スタッフ10人程度を配置し、40人を受け入れる方針だ。 トライの委託期間は2025年3月末までの3年間。利用を希望する児童生徒には小中学校を通して3月中に希望を募り、面接をしたり必要な支援内容を個別に聞き取ったりして4月上旬からスタートできるようにするという。 五十嵐市長は「障害のある就学児童には放課後デイサービスなど、国や県が予算を負担する仕組みがあるが、不登校児童生徒には制度設計が足りていない。公設、民間で手を携えて市全体での支援を行なっていきたい」と話した。 むすびつくば存続の方向が示されたことについて、保護者会代表の庄司里奈さん(45)は「議会で発表されてほっとしました。一連の騒動は市内の不登校児童生徒を考えるきっかけになったと思う。公募の方法を含めて市教育局と連携しながら、保護者の立場からどうプランニングできるかみんなで考えていきたい」と語る。 1年先は未確定 むすびつくばは2022年度も存続する方向だが、今回、追加提案された事業費は1年間だけ。1年後どうなるのかは現時点で何も決まっていない。むすびつくばの保護者の一部からは、事業者の存続を求める要望とは別に、市内の不登校児童生徒すべてを、公平に支援するよう求める要望も出ている。 これについて市教育局は、22年度に有識者を加えた検討の場を設け、だれ一人取り残さないことと、公平性の両方の観点から方向性を定めていきたいとしている。(橋立多美)

制服を回収し繕い安く譲渡 市民が息の長いリサイクル活動 つくば

茎崎家庭教育と地域を考える会 寒さが緩み、入学シーズンが間近になった。子どもの成長を喜ぶ一方で親が戸惑うのは、学校指定の制服費用の高さだ。つくば市茎崎地区の市民グループ「茎崎家庭教育と地域を考える会」(三澤春枝代表)は家計の負担を軽減しようと、着なくなった制服を回収し、必要に応じて補修した上で安く譲る息の長いリサイクル活動を続けている。また、制服のリサイクル活動が全国に広がりつつあり、制服リユースショップ「さくらや」つくば店が制服回収と安価での販売に取り組んでいる。 「茎崎家庭教育と地域を考える会」は1990年、旧茎崎町の家庭学級を修了した主婦たちが地域に役立つリサイクル活動を目的に発足した。当時町内は大規模宅地開発が行われ、急激な人口増加に伴って小中学校の増築や新設が進められた。開校した町立茎崎第三小学校は児童数1500人のマンモス校だった。転入生の増加のほか、成長著しい中学生は制服の買い替えを迫られることから、制服リサイクルに取り組むことになった。 発足から32年経った今も、扱うのは茎崎地区の小学校3校(第一、第二、第三小)が指定する体操着と、中学校2校(高崎、茎崎中)指定の制服とジャージ、体操着だ。着なくなった体操着や制服を中学2校と茎崎交流センターに設置したリサイクルボックスで回収し、使用に耐えられるかチェックした上で希望者に販売している。 同地区では中学入学時、学校指定の制服や体操着などを購入すると一式で8万円前後かかる。県立高校は一式約10万円、私立高校は一式15万円以上だ。同会の場合、リサイクルした制服を男女とも上着1500円、中学生のジャージ上下各300円、小学生の体操着上下各200円などで販売する。収益金は各中学校に寄付している。 同会が扱うリサイクル品の多くは、子供たちが2着目として使用する洗い替え用に活用されている。寄付される制服のほとんどは律儀にクリーニングされているという。桜井さんは「年間約100着を扱い、5月に回収と販売の流れが加速する」と話した。 「貧困の相談 コロナ禍以前はなかった」 新型コロナウイルス感染が広がる3年前までは年4回、同センターロビーで販売していた。現在は感染拡大防止対策として奇数月の第3水曜午後1時半から2時半までの1時間とし、少人数による入れ替え制の予約販売に切り替えている。会場は回収した制服を収容しているセンター倉庫室を使っている。 学校から相談を受けることがある。「困窮世帯で中学入学までに制服を購入できない子どもがいる」「引きこもっていた子どもが修学旅行に参加を希望しているが、入学時に購入した制服が成長した体に合わない」などだ。会はどんな場合も対応してきた。一方で「貧困世帯の相談はコロナ禍以前にはなかった」と三澤さんは顔をくもらせる。 現在、会員は3人。古屋野さんは「地域に根づき、待っている人がいるからやりがいがあって楽しい。仲間になりませんか」と呼び掛けている。(橋立多美) ◆入学前のリサイクル販売は3月16日(水)午後1時30分から茎崎交流センターで。予約申し込みと入会の問い合わせは電話029-876-0568(三澤さん、平日の午前9時〜正午)。 ◆学生服リユース専門店のさくらやつくば店は、不要になった学生服の寄付を各所に設置した回収ボックスで受け付け、低価格で販売している。回収ボックスは、竹園高校(つくば市竹園)、土浦自動車学校(土浦市中村南)、わたなべクリーニング「洗濯王」各支店にある。また、つくば市(一部対象外)、土浦市、牛久市を対象に、出張買取を行なっている。入荷商品はインスタグラムで公開している。

小学校 臨時休校に 2月10日まで 県が要請

新型コロナウイルスの感染が急拡大し、県教育委員会が、県内すべての小学校にリモート学習と分散登校の併用などを要請したことを受けて、つくば、土浦市の小学校はいずれも1月31日から2月10日まで、臨時休校となる。 リモートとプリント授業 つくば市 つくば市は27日、市内すべての小学校と義務教育学校前期課程を臨時休校にすると保護者に緊急メールで連絡した。 県教委が26日、県内の小学校で複数のクラスターが確認されていることなどを踏まえ、リモート学習など感染拡大防止の取り組みを徹底するよう市町村教委に要請。これを受けてつくば市教委がリモート授業の実施を決めた。 つくば市では1月に入ってから毎日感染者が判明し、小学校は2校が休校、6校12学級で学級閉鎖となった。 31日から2月10日までは原則登校はせず、オンラインを活用した授業とプリントなどの学習を行う。ただし、保護者が医療や介護、保育、消防などに従事する場合や仕事の都合などで児童の面倒を見ることが困難な場合、自宅にインターネット環境のない児童は学校が受け入れる。 休校中に登校する児童は、集団で登校する登校班が機能しないため、保護者が学校に送り、午後3時までリモート学習を含めて自主学習となる。登校前の体温測定は必須。給食の提供はされず弁当を持参する。 市は児童クラブや児童館についても利用自粛を求めている。 保育園などの保育施設も感染者が急増して休園する施設が増加傾向にあることから、家庭での保育が可能な保護者に利用自粛を呼びかけている。 中学校の部活動も29日から2月13日まで活動中止となる。 保護者「火事が心配」「受験控える中学も」 31日から、小学校高学年の女児を1人残して仕事に行くという母親(45)は「2年前や昨年夏の休校の時も父親、母親共に仕事を休めなかった。子供は感染リスクを考えて家に居させることを選んだ。学校からタブレット端末が配布されていたが、音が出ない、突然画面が消えるなどの不調があった。今回もタブレットでの授業は大丈夫か、暖房が欠かせないので火事も心配」と不安を口にする。 一方、県立高校受験を控える中学3年の男子生徒の母親(38)は「中学も休校にしてほしい」と言う。「受験に向け、学校で感染しないかビクビクした毎日を送っている。コロナ禍での登校拒否は欠席扱いになるのか担任に聞いたところ、はっきりした返事はもらえなかった。欠席日数は受験する高校に提出され内申書に響くから登校させるしかない」と話す。 同市では2020年春に全国一斉休校し、21年9月には緊急事態宣言下で市内の小中学校が休校した。市教育局学び推進課によると、その経験からか、緊急メールを送信後、保護者からの問い合わせなど混乱はないという。 同課の横田康浩課長は「インターネット環境のない家庭の児童には学校を解放し、すべての児童が公平に授業が受けられるよう配慮している。児童の安全確保のため、自宅での学習に協力をお願いしたい」としている。 1,2年はプリント、3~6年はリモート授業 土浦市 土浦市も原則、登校せず、1、2年生はドリルやプリント学習、3年生以上は学校が用意するタブレットを利用したリモート学習を実施する。 ただし保護者が仕事で日中、自宅にいない家庭や、自宅にインターネットを使える環境がない家庭の児童などは午後2時まで学校で受け入れる。休校期間中、集団登校が実施されないため登校は保護者の送迎で登校し、給食がないため弁当を持参することが必要になる。 放課後児童クラブは、希望者を午後2時から午後6時30分まで受け入れる。 市教育委員会によると28日時点で、市内の小学校と義務教育学校計16校のうち、1校が休校、2校の2学級が学級閉鎖を実施しているという。 保育園や認定こども園など保育施設については、公立、私立いずれも開所を続けるが、保護者が仕事を休める家庭など自宅での保育が可能な園児については、登園を自粛するよう要請している。登園を自粛した場合の保育料は日数に応じて減額する。 公立幼稚園は原則休園とする。ただし保護者が日中自宅にいない家庭の園児は受け入れる。私立幼稚園は各園の判断になるという。 県内は27日から2月20日までの25日間、まん延防止等重点措置が適用されている。県は重点措置の対策を発表した22日時点では、学校の対策は部活動の大会中止などのみだった。その後、県内で小学生の1日の感染者が100人を超えた日があったこと、小学校で複数のクラスターが確認されていることなどから、県は26日、対策を追加した。 県内の27日時点の感染状況は、つくば市の新規感染者は県内で最も多い97人、土浦市は28人。27日の県全体の児童の感染者は、新規感染者の12.6%の98人、未就学児の新規感染者は9.4%の73人となっている。(橋立多美)

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