金曜日, 11月 7, 2025
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委託先の最終処分場、来年3月で満杯に つくば市 処理費膨らむ恐れ

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ごみ焼却施設「つくばサステナスクエア」=つくば市水守

つくば市が焼却灰などの最終処分を委託している、下妻市にある民間の最終処分場が、来年3月末で満杯になり、同4月から受け入れができなくなることが分かった。3日開会した6月議会冒頭、五十嵐立青市長が明らかにした。新たな処分先を早急に探すことが求められるが、遠方になり運搬距離が増えると、処理費用がさらに膨らむ恐れがある。

市は現在、年間約1万トンの焼却灰や破砕ごみなどを、下妻市と山形県米沢市内の民間最終処分場2カ所に委託処理している。運搬費用も含めた最終処分費用は年間約3億1000万円になる。

処分量のうち、94%の約1万トンを下妻市、6%の約600トンを米沢市内に埋め立てており、仮にすべてを米沢市で最終処理した場合、処理費が年間約8000万円増える計算になるという。

市環境衛生課によると、下妻市には25年3月末まであと4年間、埋め立てできる容量が残っているはずだった。市は23年3月末まで下妻の民間業者と埋め立て契約を締結していた。

業者が残余容量を測量し直した結果、来年4月から受け入れができないことが分かった。同処分場に埋め立て処理している自治体は県内にほかに6市町あるという。

今月7日、委託先の民間業者から市に、来年3月で処分場が満杯になるなどの報告があった。五十嵐市長は契約不履行に対し、ペナルティーも検討しているとした。

新たな処分先について市は、少しでも経費が圧縮できるよう関東周辺を探したいとしている。受け入れてもらうためには民間業者のほか、最終処分場が立地する自治体の承認を得ることも必要になるとして、早急に調査、検討し、話し合いをしたいとしている。

同市は、下妻市内に民間の最終処分場が稼働した当初の1991年4月から最終処分を委託している。19年からは米沢市を加えた。

ごみ処理は、ごみが発生した地区内で処理するという「自区内処理の原則」がある。しかし迷惑施設であるため、実際は最終処分場を保有していない自治体が多い。つくば市でも現時点で、市が市内に最終処分場をつくる計画はない。(鈴木宏子)

民間企業など12社から17件の活用意向 つくば市旧総合運動公園用地調査

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旧総合運動公園用地=つくば市大穂

住民投票で計画が白紙撤回となった旧総合運動公園用地(つくば市大穂、約45ヘクタール)の利活用意向調査について、つくば市は3日開かれた市議会特別委員会(浜中勝美委員長)に、民間企業などを対象に4、5月に実施した意向調査(サウンディング型市場調査)結果を報告した。12社(団体)から計17件の利活用申し込みや提案があったという。

同調査は2017年度に実施したの続いて2回目。2017年度も今回とほぼ同じ13社から申し込みが出された。

市公有地利活用推進室によると、12社の内訳は、ゼネコン、物流不動産開発・管理会社が各2社、不動産デベロッパー、倉庫業、物販、スポーツクラブ、用地開発・分譲、金融業が各1社、ほかに不動産会社などの共同企業体が2社。

活用方法17件は、物流・倉庫施設が3件、市が利用する防災倉庫をつくるなどの防災拠点が3件、産業団地・工業団地が各2件、各企業のデジタル情報を処理・保存するサーバーなどを置くデータセンターが2件、太陽光発電施設が2件、日用品などの複合型商業施設が1件、スポーツツーリズム推進拠点1件、電気自動車の開発研究・実験などの複合施設が1件。

同用地の購入を希望する企業と、借地を希望する企業とでほぼ半々。利用面積は、45ヘクタール全部を利用したい意向もあったほか、4分の1以下の利用などさまざまという。

購入や賃借の場合の金額については、特別委でも質問が出されたが、市は「購入価格等は差し控えたい」とした。

特別委は、今回の意向調査結果を参考資料の一つにして、今後、提言をまとめる。市は議会の提言を踏まえ、利活用策を決めるという。提言をまとめる時期は未定という。

旧総合運動公園用地をめぐっては、2019年3月、五十嵐立青市長が、用地を一括売却する方針を出し、66億円で購入された用地を、事業者1社が40億円以上で一括購入し物流倉庫などを建設する案が出された。しかし、住民説明会で異論が噴出、市議会が調査特別委員会を設置し、民間売却案はいったん凍結となった。その後五十嵐市長は、改選直後の20年12月、一部を防災倉庫にして残りを民間売却したいと発言、翌年2月、3分の1を防災拠点として公共利用し、残り3分の2を民間活用したい意向を市議会に示し、4、5月に2回目の民間企業意向調査が実施された。

「1基は無くてもよい」で一致 エスカレーター計画で市議会 つくばセンタービル

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3日開かれたつくば市議会中心市街地まちづくり調査特別委員会

つくばセンタービル(つくば市吾妻)のリニューアルで、市がセンター広場にエスカレーターを2基建設する計画を立てている問題(4月27日付)を扱う市議会中心市街地まちづくり調査特別委員会(ヘイズ・ジョン委員長)が3日開かれた。エスカレーターを計画通り2基設置すべきかなどについて各会派が意見を出し合った結果、議会として、北側(ホテル日航つくば側)の1基は無くてもよいとする意見で一致した。

市は、今回の議会の意向を踏まえて改めて検討し直し、結果を議会に示す。3月時点では、エスカレーターを2基設置する内容の実施設計を6月にも発注する予定だったが、ずれ込む見通しだという。

一方、今回は「西側(クレオ側)のエスカレーター1基をつくって(2基目は)改めて検討する方がよい」などとする意見と、「つくばセンタービルは文化財的価値が高い建造物なのだから2基とも設置する必要がない」などの意見に分かれたほか、新たに「北側(ホテル側に)にエスカレーターではなくエレベーターを設置してはどうか」などの意見が出された。特別委では、市民活動拠点の配置なども含めて今後さらに検討する。

各会派の主な意見は次の通り。(鈴木宏子)

2基が妥当、妥協点として1基でもよい

つくば自民党・新しい風(発言者は黒田健祐市議)エスカレーターを2基つくるのが妥当だが、妥協点として1基でもよい。視認性、回遊性をみても2カ所が妥当。ソフト面とハード面、両輪で推進することを考えた場合、中心市街地まちづくり戦略全体の中で、ハード面が先行し、議論の的になっている。2基が妥当な考えだが、活性化した姿を前提に、まちづくり戦略を進めていく中で、1基造って様子を見て、もう1基つくるという考え方もある。市民活動拠点は原案通り。

2基ともいらない

自民党政清クラブ(飯岡宏之市議)2基ともいらない。市民への説明が足りない。市の顔である建造物をいじるのはいかがなものか。景観と費用対効果の観点から2基ともいらない。2階から1階に行く動線を考えても、市民がエスカレーターで1階に降りるということではない。エスカレーターを設置したから人が行き来するようになるかどうか分からないところに設置するのはいかがなものか。

ホテル側はエレベーターに

つくば・市民ネットワーク(皆川幸枝市議)北側(ホテル側のエスカレーター)は無し、西側(クレオ側)のみ1基だけつくる。障害当事者と現地を確認した。北側エレベーターはセンター広場の手前で止まってしまい(広場までは)スロープか階段で移動することになる。スロープは角度が急で、車いすの一人での上り下りは危険。その部分にエレベーターを設置する方が重要。(改修計画では既存のV字型の)階段をL字型にするが、手すりが設置できない。(既存の)階段に手すりを設置することを提案したい。▽市民活動拠点は、つくば駅周辺で住宅の建築が進むので、行政の案内をするコンシェルジュを置くことを提案したい。(市民活動拠点の)公共スペースは狭いという指摘があるので、(市役所の)窓口事務室をBiViつくば2階に移動させ、その分、キッズスペースを設け、子供連れの親子が集える場所をつくったり、授乳室を設けてはどうか。市民活動を増やしていく機能も求められる。吾妻交流センターの各部屋の利用状況を調査し、畳の部屋が必要か、調理室の使用頻度が高くないなら調理以外も利用できないか、ダンスも盛んなので音楽室の壁の1面全部に鏡を付けたりなどを検討すべき。

外観の改修行うべきでない

公明党つくば(小野泰宏市議)つくばセンタービルには(設計者の)磯崎新氏の深い哲学や理念があり、こうした下地があって、重要な文化財的価値がある。2階(ペデストリアンデッキ)から見る劇場型広場(センター広場)など、価値を市民に周知すべき。つくばならではの財産だ。動線は、既存のエレベーターの利便性を高めるなどするのが適切。外観に関わる大規模改修は行うべきではない。市民活動拠点は、概ね市執行部提案に同意する。

西側の1基のみでよい

創生クラブ(中村重雄市議)エスカレーターは西側(クレオ側)の1基のみでよい。北側はV字型の階段を残し、デザインや費用の面から、エスカレーターがよいか、エレベーターの方がよいか、数年後に検討すればよい。液晶パネルなどを使って、誘導・案内看板を増やし、動線を表示したらよい。市民活動拠点は市執行部提案に賛成。

西側の1基で足りる

つくばチェンジチャレンジ(川久保皆実市議)エスカレーターは西側の1基で足りる。費用対効果を考えると、エスカレーター1基のひと月当たりの経費は46万円。市民活動拠点1日当たりの利用人数は平均200人、働く人を支援する場は2000平方メートルなので1日当たりの利用者は多く見積もっても400人。計600人の利用人数のために2基設置するのは費用対効果から適切ではない。(エスカレーター設置の目的は)視認性や回遊性を高めるためということだが、市民活動拠点も、働く人を支援する場も、明らかな目的をもった人が行く場であり、雑貨店やカフェのような、目に付いたからふらっと行くというのは低い。エスカレーターで人を誘導するというのは低い。▽市民活動拠点は乳幼児の授乳室などはあるが、靴を脱いで上がれるキッズスペースがあったらいい。窓口センターの待ち時間に利用できるように設置してほしい。

シンボル壊す2基ともいらない

日本共産党つくば市議団(山中真弓市議)エスカレーターは2基ともいらない。つくばセンタービルは歴史的な価値の高い建造物であり、つくばのシンボルを壊してエスカレーターを設置するのは反対。センター広場には筑波山ジオパークを凝縮したような造形部分もある。エスカレーターを設置してほしいという要望が市民から多く寄せられているわけでもない。バリアフリーのためには案内板を設置して動線を行き来しやすいようにしたり、既存のエスカレーターを改修することで解決すべき。▽公共エリア(市民活動拠点)は面積が十分でない。市民の声が生かされている改修計画になっていない。市民の声を生かして、1階の(市民活動拠点の)面積を広げるべき。オフィスありきで考えるのであれば、吾妻交流センターや消費生活センターを生かすなど、いろいろ検討すべき。議会としても執行部も、市民の声を聞く場を設けるべき。

西側設置し様子見て

清郷会(木村清隆市議)エスカレーターの需要がどの程度あるか、西側(クレオ側)の1基を設置して、その後、様子を見て、検討すればいい。▽青少年や若者が集える場をより多くしてほしい。(つくばセンター研究会から出された要望書=6月1日付=に)「市民の意見を十分聞いてない」とある。市は、時間を掛けて市民の声に耳を傾けてきたと思うが、そういう声があることを真摯に受け止め、説明の仕方を工夫し、新たな周知の仕方をお願いしたい。

丁寧にやるべき

新社会党つくば(金子和雄市議)つくばセンタービルは今日まで40年くらい、つくばの中心的役割だったが、店舗が撤退したり、民間が出て行ったことは事実。そういうときにどうしたらいいか。歴史的建造物なので、どう改修するか、丁寧にやるべき。エスカレーターが必要か、必要でないかだけでは解決できない。今あるものをどうやって利用して(現状を)乗り越えていくかに力を注ぐべき。

【7日訂正】つくばチェンジチャレンジの川久保皆実市議の発言で「エスカレーター1基の1日当たりの経費は46万円」とあるのは「ひと月当たり」の誤りです。お詫びして訂正します。

イオンモールにツェ伯号飛来! 4日から「飛行船と土浦の物語」

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ツェッペリン伯号イメージ=イオンモール土浦提供

展示「飛行船と土浦の物語」が4日から、土浦市上高津のイオンモール土浦で始まる。6日まで。5月に迎えた同モール開業12周年記念祭の一環で、かつて土浦に巨大飛行船ツェッペリン伯号が飛来した事跡を、資料パネルや映像などでに伝え、地域振興につなげようというもの。協力は土浦ツェッペリン倶楽部、土浦商工会議所、土浦市観光協会。

会場はモール1階東端にある「花火ひろば」。大型ビジョンで飛来時の様子を紹介したニュース映像や、うるの拓也さんのコミック「ツェッペリンが舞い降りた日」などを上映する。パネル展示では土浦ツェッペリン伯号展示館(土浦市中央1丁目)に保管されている史料写真などを紹介、時間によっては土浦ツェッペリン倶楽部のメンバーも来場し、展示解説などしてくれるという。

また個人コレクターの協力により、実際にツェッペリン伯号で運ばれた航空郵便や、飛行船が図案となった当時の記念切手、世界中を飛んださまざまな飛行船の写真など、数々の資料を複写で紹介する。フォトスポットでは全長4メートルのツェッペリン伯号の大型模型や、2005年に再び土浦の空を飛んだツェッペリンNT号のノーズコーン(機首部分)の実物を置き、一緒に写真を撮ることができる。

イオンモール土浦外観(土浦市上高津)=同

ドイツの飛行船ツェッペリン伯号が人類初世界一周飛行に成功したのは1929(昭和4)年。その数少ない停泊地に選ばれたのが、阿見町の霞ケ浦海軍航空隊飛行場(現陸上自衛隊霞ケ浦駐屯地)だった。当時の最先端技術で造られた全長236.6メートルの巨大飛行船を一目見ようと、5日間の停泊期間中に押し寄せた人の数は30万人とも40万人とも言われている。

企画を担当したイオンモール土浦の色川晃代さんは「こんなにすごいものが本当に土浦へ来たんだと、皆さんに実感していただけるようにしたいと考えた」と話す。同モールでは毎年、土浦の成り立ちや歴史を紹介する展示を行っており、今回は特にツェッペリン伯号にスポットを当てた。(池田充雄)

「飛行船と土浦の物語」関連イベント

石原之壽さんの街頭自転車紙芝居=同

・石原之壽さんの街頭紙芝居「ツェッペリン号物語2」=5日・6日、各日とも午後1時30分、2時30分、4時から
・日本ツェッペリン協会会長で、飛行船の歴史・文化史の第一人者として知られる天沼春樹さんの講演=6日。午後1時から「土浦とツェッペリン飛行船」、3時から「ツェッペリン飛行船、土浦をめざす」
・ワークショップ「飛び出す飛行船ツェッペリン伯号」=5日・6日。子ども向けのペーパークラフト教室

関連記事はこちら《霞月楼コレクション》12 ツェッペリン伯号霞ケ浦飛来と熱烈歓迎

コロナワクチン接種 《くずかごの唄》87

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イラストは筆者

【コラム・奥井登美子】新聞を見てもテレビを見ても、コロナワクチンの話題ばかり。コロナ禍で行事が全部ストップされてしまっているので、マスコミも取材のタネがない。新聞やテレビにはスペースがあって、埋めなければならない。話題がコロナばかりになってしまうのも、やむをえないのかもしれない。

土浦市の65歳以上の人に「コロナワクチン接種のお知らせ」が届いた。予約開始日が80歳以上、75歳以上、70歳以上、65歳以上―と、年齢によって違う。接種可能日も年齢別で、医療機関と集団接種所に分かれている。

ワクチン供給の見込みの日までが書いてあるので、印刷物4~5枚の活字の全体を読んで、頭の中で整理し、さて、自分は予約をどこへ申し込んで、どこへ、いつ行けばいいのか―具体的な行動を順序立て、行動を起こすまでには、かなりの時間と理解力が必要だ。

市役所から届いた「難解至極な書類」

基礎疾患13項目の分類は抽象的なので、判断できない人も多いのではないかと思う。うちの薬局のお客様はご近所のご老人ばかりだ。こういう「難解至極(しごく)な書類」が配布されると、私は質問責めに会うことを覚悟しなければならない。

「いつも、かかっている医院へ、電話しても、お話し中なの、困ったわ」

「読んでもよく解らないわ、ステロイドって、私、飲んだことありますか?」

「基礎疾患がいっぱい書いてあるの、染色体異常って、何ですか、私の処方箋の薬の中でこの病名に該当するものがあるかないか、教えてください」

「鉄欠乏性(てつけつぼうせい)貧血を除く血液の病気って、何の病気?」

この文書を作った人物は、何か、後で、文句を言われないように、完璧を期して苦心して作ったに違いない。ワクチン供給の見込みの日など、一般の人にとって関係のないようものまでが、ていねいに入っているので余計ゴチャゴチャになっている。

コロナをきっかけにして、お役所も介護医療関係者も「医学的にややこしい事実を一般のお年寄りにも解りやすい理解できる用語で表現する」という難題に、本気になって取り組んでもらいたいと思う。(随筆家、薬剤師)

東京五輪スイス選手団 7月中旬から筑波大で事前合宿

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スイスの国旗や「つくばはスイスのホストタウン」と書かれたバナーが掲示されたつくば駅前

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、東京オリンピック・パラリンピックに出場する海外選手団の事前合宿を取り止める自治体が全国で出ている中、筑波大学で予定されているスイス選手団の事前合宿について、つくば市は2日の定例会見で、陸上と柔道の選手団計約70人が7月中旬から8月上旬にかけて、同大学で事前合宿を実施することを明らかにした。

新型コロナ対策として、スイス選手団は事前合宿中、毎日、PCR検査を実施するほか、選手団と直接接触する筑波大やつくば市担当者なども毎日、PCR検査を実施する。

選手団の練習中は、大学の施設を貸し切りにして、一般の筑波大生らと接触しないようにするほか、宿泊施設は市内のホテルのワンフロアを貸し切り、一般の宿泊者と接触しないようにする。選手団は練習会場とホテルを往復するだけにする。

選手団の食事は、スイスから随行する専用の料理人がホテルの調理室の一部を借りて調理する。食事は、専用の部屋でとるという。

市オリンピック・パラリンピック推進室によると、スイス選手の第1陣が7月13日夕方来日し、同日夜からつくば市内に滞在する予定だという。

競技種目ごとに順次、来日するため、市内に滞在する人数は最大で30人程度という。

当初予定では、陸上、柔道のほか、フェンシング、体操、トライアスロンの計5競技の選手団が、競技の2~3週間前に来日し、大学の陸上競技場や武道館、体育館などでトレーニングする計画だった。

5競技のうち、フェンシングと体操の事前合宿は取り止めになり、トライアスロンは未定される。

市民との交流イベントは中止

市によると、フェンシング選手団が取り止めとなった理由は、競技日程の都合だとし、来日後は直接、選手村に入る。未定のトライアスロン選手団が筑波大で事前合宿をする場合は10人程度になる見込み。

市民との交流は当初、ウエルカムイベントや小中学生との文化交流、事前合宿の見学会などが予定されていたが、選手と直接接触するイベントはすべて中止となる。一方6月中に市は、市内の市立幼稚園と小中学校などの給食にスイスの家庭料理メニューを出すことを計画している。

筑波大と県、つくば市は2018年4月、スイスオリンピック協会と基本合意書を締結し、事前合宿の受け入れを決めた。19年2月に同市はスイスのホストタウンとなった。

19年5月、スイスの女子リレーチームが、7~8月にはトライアスロン選手団がそれぞれ筑波大で事前合宿を実施し、小中学生が選手の食事を配膳したり、中学生が練習の様子を取材して記事を書くなどの交流イベントを実施してきた。

霞ケ浦の全魚種で出荷制限解除 原発事故から10年、アメリカナマズも

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7月解禁となる霞ケ浦のワカサギ漁で大量に獲れるアメリカナマズは廃棄されていた=土浦市沖宿

東京電力福島第1原発事故による放射能汚染で、茨城県が出荷制限を受けていた霞ケ浦のアメリカナマズが、基準値(1キロ当たり100ベクレル以下)を超えたものがなかったとして、5月19日付で出荷制限を解除された。

アメリカナマズは東日本大震災翌年の2012年4月に出荷制限を指示されて以来、霞ケ浦で唯一、出荷制限が続いていた。9年ぶりの解除となる。今回の解除により、霞ケ浦のすべての魚介類が制限解除となった。

4月22日、県が出荷制限解除申請を国に提出した。解除の範囲は、霞ケ浦、北浦、外浪逆浦と、これらの湖沼に流入する河川、常陸利根川で採捕されたアメリカナマズ(養殖を除く)。

解除の理由は、13年5月29日から20年10月29日までの間、放射性セシウム濃度を検査した結果、合計146検体の平均値は1キロ当たり37ベクレルで、基準値を超える値は検出されず、安定して基準値を下回っていたためという。

解除後も県は、出荷管理計画に基づいて月1回、サンプリングを行い、土浦、龍ケ崎、鹿嶋市や利根町など19市町で検査を続ける。万が一、基準値を超える結果が判明した場合は、県が関係各漁協に対し、解除された全範囲のアメリカナマズの出荷自粛を求める。

県内では、2011年3月の福島原発事故発生後、茨城沖のコウナゴから暫定規制値を超える放射性セシウムが検出され、市場での取引拒否や、出荷、販売の自粛があった。

翌12年4月、1キロ当たり100ベクレル以下という新基準値が設定されたが、海の魚28種の出荷制限が解除されたのはさらに5年後の17年3月だった。

しかし湖沼の霞ケ浦のアメリカナマズと、河川の利根川・境大橋(境町)下流のウナギは出荷制限が続いてきた。

一方、利根川下流のウナギはまだ出荷制限が続いている。調査地点には千葉県側もあるなど、足並みをそろえて検査を行っていく必要があることから、県漁政課は「引き続きウナギについても検査を推進していきたい」と話している。(山崎実)

あなたの趣味は何ですか? 《ことばのおはなし》34

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【コラム・山口絹記】このようなご時世だからだろうか。“趣味”というものの需要が高まっているようだ。

と言うのも、私自身が時間ができたら買おうと思っていた趣味的ニッチな商品が、ネット上で続々と売り切れているのだ。例えば、写真のフィルムをデジカメで撮影して、デジタル化する商品とか(かなりニッチな商品だと思う)。

ようは、日々の生活が今までと少し変わった結果として、お金をかけただけでは解決しないもの、時間を必要とするものの需要が伸びているらしい。きちんと調べていないので、真偽の程は定かではないが、言われてみればなるほど。納得できるおはなしである。

同時に、生活の変化をきっかけに新しい趣味をはじめてみよう、という人も多いようだ。

これも、どの程度の規模のおはなしなのかはわからないが、事実なのだろう。私自身、17歳の頃、浪人生活の開始とともに住み慣れた地を離れ、祖母と2人暮らしを始めたときから、いわゆる“趣味”というものが増えたからだ。外的要因で集団から切り離され、ひとりの時間が増えると、人間、何かを始めてみたくなるのではなかろうか。

定年退職した人が、仕事以外にやることが見つからなくて趣味を探し始めるといった、ありふれたおはなしが、世代関係なくいたるところで発生しているとすると、なかなか興味深い。

あなたはどんなとき幸せですか?

さて、本題だ。そもそも趣味とは何なのだろうか。ここまで曖昧な単語もなかなか珍しいように思う。すでに趣味がある人にとってはたいした問題ではないのだろうが、自覚的には趣味が無く、かつ趣味を持ちたい、でも見つからない、という人には深刻な問題だ。

仕事や職業ではなく、人が個人の楽しみのためにやっている事柄、といった定義が一般的なのだろうが、この定義は意外とくせ者だと、私は感じる。

「あなたの趣味は、何ですか?」

誰もが、うんざりするほど訊(き)かれたことのある質問だろう。話題がなくなってきたサインでもある。ここで気の利いた返しができないと、その会話はたいてい、ゆるやかな死を迎えることとなる。“楽しみにやっている事柄”と問われると、どうしても単純な名詞で答えたくなるのが人の性だ。加えて、趣味を訊かれるたびにくどくど説明するのも、実際はばかられる。

言霊(ことだま)信仰とは違うのだが、ことばの持っている力というのを、あまり馬鹿にするものではない。名詞を問われているという思い込みは拭い難い。答えが見つからないと、自分には趣味が無いように思えてくる。

だから、質問を変えてみよう。「あなたの趣味は何ですか?」ではなく、「あなたはどんなときに楽しいですか?幸せですか?」

問うているのは、事柄ではなく、時間である。もしも何か思い浮かぶものがあれば、それはきっと大きなヒントになるに違いない。(言語研究者)

2年ぶりのアトリエ・ハートタイム展 県つくば美術館に190点

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県つくば美術館で始まったアトリエ・ハートタイム展=つくば市吾妻

アトリエ・ハートタイム展が1日、県つくば美術館(つくば市吾妻)で始まった。田中己永(みのり)さん主宰の絵画教室によるグループ展。土浦、石岡、東京に教室がある。

イタリア・ドロミテ山脈を「ランプブラック」という黒色顔料で描いた田中さんの作品をはじめ、色鉛筆画講師の三上詩絵さん、教室の生徒56人の水彩画や色鉛筆画190点を展示している。

透明水彩で描いた土浦の街並み、アクリルガッシュで描いた紅葉、色鉛筆でリアルなタッチに描いたスプーンとフォークなど力作が並ぶ。中には2年以上かけて完成させた作品も展示されている。

下妻市の女性(66)は「どの絵も光と影のコントラストが素晴らしい。最初は写真と思ったほどリアルな絵もあって驚いた。見に来てよかった」と熱心に見入っていた。

絵に見入る来場者たち=同

コロナ禍も絵を描けば気がまぎれた

グループは2007年から毎年、展覧会を開催していたが、新型コロナの影響で昨年は中止を余儀なくされた。準備のため前日に集まった生徒30人は、「2年ぶりということで、みんなうれしそうに作業していた」と田中さん。

三上さんは「展覧会は自分が描いた絵が額装されて、人に見てもらえる貴重な機会。次の作品へのイメージもわきやすくなる」とし「生徒同士も互いの絵を見ることで刺激になる」と話す。

各教室では、コロナ感染対策を行いレッスンは続けていたが、「感染が怖くて教室に行けない」と辞める人も多く、70人いた生徒が一時は40人にまで減ったという。残った生徒らは「家にこもりがちになっても、絵を描くことで気がまぎれた、いい趣味を持ってよかった」と話しているという。

現在は、三上さんが人気テレビ番組に出演していることから色鉛筆画の生徒が増え、56人になっている。生徒の水野敏幸さん(62)は、展覧会に絵を出すのは今回が初めて。2018年の同展を見て「自分も描いてみたい」と入会したという。「自分の絵が飾られることはすごい。最高」と話す。

田中さんは「教室では、1年で誰でも描けるように指導している。生徒たちは描きたいように描いているので、見る人も好きなように見てほしい」と話していた。(伊藤悦子)

◇会期は6日(日)まで。入場無料。午前9時30分~午後5時。問い合わせは田中己永さん(090 -1203-2439)

エスカレーター設置見直しを つくばセンタービル改修で市民ら要望

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小久保貴史市議会議長に要望書を提出するつくばセンター研究会の冠木新市代表(右)=つくば市役所

「つくば市が進めようとしているつくばセンタービルのリニューアル計画は、文化財としての価値を失わせることになる」などとして、市民団体「つくばセンター研究会」(冠木新市代表)は1日、五十嵐立青市長と小久保貴史市議会議長宛てにそれぞれ、センター広場へのエスカレーター2基の設置計画(4月27日付)を見直すよう求める要望書を出した。

同研究会は、センタービルでこれまで20年間、さまざまな活動を展開してきた市民らでつくる。

要望書によると、同センタービルは建築界のノーベル賞といわれるプリツカー賞を受賞した磯崎新氏のポストモダン建築の代表作で、市民の誇りであるとし、エスカレーターを2基設置し外観を改変してしまったら、後戻りはできない、などとしている。

さらに、築50年の2033年に登録文化財として申請すれば、将来のつくばの文化遺産及び観光資源になるのに、つくば市が改変を進めれば、市の貴重な文化資源の喪失になり、次世代の市民に引き継ぐ道を絶つことになる、などと指摘した。

つくばセンタービル。ノバホール3階から松見公園方向

センタービル1階に貸しオフィスと市民活動拠点を整備するのに伴うビル内部の改修についても言及し、東西南北どの方向からも広場に行き来できるよう設計されているのに、市の計画は、通路の一部を閉ざしてしまい、動線を減らすことになり、にぎわい創出とは逆方向だ、などとしている。

その上で、エスカレーター2基の設置見直しのほか、専門家の意見を聞いた上でセンタービルを文化財として保持すること、センター広場の活性化は、広く市民の意見を聞いて検討するよう求めている。

要望書を提出した冠木さんは「(市のリニューアル計画は)中心市街地が活性化していないことを、つくばセンタービルの設備のせいにしている。壊してしまったらもったいない。市にとって財産なのだから大事にしてもらいたい」などと話している。

同市議会の小久保議長は「要望書をお受けし、議員間で周知していきたい。(特別委員会の)勉強の機会もあるので、今後の取り扱いを協議したい」とした。

五十嵐市長宛ての要望書は飯野哲雄副市長に手渡され、関係者のみでやりとりが行われた。

「貴重な文化財に対する無謀な挑戦」

要望書は、著名な建築の専門家、筑波大学の鵜沢隆名誉教授の見解を紹介し、同センタービルは10数年後に登録有形文化財として認められ得る建造物であると断定している。

加えて、つくばセンタービルと筑波研究学園都市は、国の主要な科学研究機関を集約的に建設するという都市機能のユニークさと、都市建設の規模からも世界的に類を見ない新都市で、センタービルは研究学園都市の最も象徴的な文化施設だとして、将来の世界遺産登録の可能性すらある建造物群としてとらえるものだと指摘している。

エスカレーターの設置計画に対しては、磯崎新氏のプリツカー賞受賞に際して、改めて評価された中央広場に2基のエスカレーターを新設すること、市の改修計画が、磯崎氏のプリツカー賞受賞直後に作成されたことは「貴重な文化財に対する無謀な挑戦」で「将来に禍根を残すことにもなりかねない」と強調している。

さらに雨天への配慮から屋外のエスカレーターは屋根の設置が不可欠だが、エスカレーターの屋根は、「特筆すべき中央広場(センター広場)の空間意匠を決定的に損ねる」とし、動線を補強するなら既存のエレベーターの改修、拡充で対応すべきだとしている。

その上で、中央広場を活性化するためには、広場への関心や注目を常に新たに呼び起こすために広く市民からのアイデアや企画を絶えず求め、それらを空間利用の専門家たちが検討・実践していくという方法やプロセスを定着させることが最も着実な活性化である、などとする専門家の意見を紹介している。(鈴木宏子)

➡つくばセンター研究会の要望書はこちら

タマネギの「ケルセチン」で前向きに 農研機構など研究グループが機能性確認

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ケルセチンを多く含むタマネギ「さらさらゴールド」=植物育種研究所提供

タマネギに多く含まれる「ケルセチン」が、認知機能の維持や前向きな気分の維持に役立つことを、農研機構食品研究部門(つくば市観音台)の小堀真珠子食品健康機能研究領域長らの研究グループが明らかにし、5月の学会誌オンライン版で公表した。成果を元に、ケルセチンを関与成分とする、タマネギの機能性表示食品の届出を目指すという。

ケルセチンに着目して研究を進めてきたのは、農研機構と北海道情報大学、岐阜大学の研究グループ。農研機構が試験食品の設計などを行い、岐阜大学が認知機能維持・改善に関わる作用を見出してメカニズムの検討を進め、北海道情報大学では健康な人を対象とした試験を実施した。

ケルセチンは黄色くやや苦みがある物質で、黄タマネギと呼ばれる一般的なタマネギには可食部100グラムあたり約10~50入りグラム含まれる。今回のヒト介入試験は、60~80歳の健康な男女計70人を2群に分け、約5か月間摂取してもらい、一般的な認知機能検査を行った。2群の一方は黄タマネギ粉末を1日1回11グラム(ケルセチン50ミリグラム)、他方はケルセチンを全く含まない白タマネギ粉末を食べてもらった。

その結果、認知機能については、ケルセチンを含むタマネギを食べた人は、一般的な認知機能検査(ミニメンタルステート検査)の点数が、対照群のケルセチンを含まないタマネギを食べた人に比べて、摂取24週間後により大きく増加し、タマネギのケルセチンが認知機能の維持に役立つことが示された。

また、抑うつ状態については、ケルセチン高含有タマネギを食べた人の脳機能評価点数が、対照群に比べて、摂取24週間後により大きく低下した。タマネギのケルセチンが前向きな気分の維持にも役立つことが示された。

ミニメンタルステート検査(MMSE)による認知機能評価の変化量(左)と気分を評価する抑うつ状態に関するスコア点数(高いほど抑鬱状態が高い)の変化量(右)の結果=農研機構提供

これらの結果から、日常の食事の中で摂取するタマネギが、加齢に伴い低下する認知機能の維持や前向きな気持ちの維持に役立つ可能性が示されたという。

厚生労働省が策定した「健康日本21」では、野菜はカリウム、食物繊維、抗酸化ビタミンなど、循環器疾患やがんの予防に効果的な成分を多く含んでいるので、通常の食事として1日当たり350グラム以上の摂取を目標とするとしている。しかし国民健康・栄養調査の結果では野菜摂取量の平均値は280グラムで、目標に届いていない状態が続いている。

タマネギ研究10年以上の小堀研究領域長によれば、ケルセチンは加熱しても構造が壊れにくく調理してもほとんど壊れない。タマネギはケルセチンの摂取に適しているだけでなく、炒め物や煮物などで他の野菜とともに調理されることが多い。その成分が機能性表示されれば、野菜全体の摂取量増加も期待できると考えた。研究成果は、ケルセチン高含有タマネギを使った食品の機能性表示に根拠を与える。

農研機構ではケルセチンを高濃度に含むタマネギを開発するとともに、野菜消費増加に向けて、生産者による機能性表示の届け出を支援するサイトも運営している(農水水産物の研究レビュー

ケルセチン高含有たまねぎ「クエルゴールド」。農研機構で開発した=同

小堀領域長は、「これまでは個々の野菜の健康機能に着目してきたが、今後は普段食べている食事で健康を維持できる食生活とはどういうものかを探求したい。ひとりひとりの体質や、その時々の体調に合った食事やレシピを提案するシステムの開発を目指します」と話す。タマネギについては既にレシピ本「The たまねぎ料理」がネットで公開されている。(如月啓)

書評:ジョセフ・S・ナイ著『国家にモラルはあるか?』 《雑記録》24

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【コラム・瀧田薫】この著作の原題は「DO MORALS MATTER ?」、直訳すれば「道徳も大切では?」です。書名の邦訳が本書の内容とはいささか「不適合」の印象です。「政治にモラルはあるか?」の方が、売れる本になるかどうかは別にして、タイトルとしてふさわしいでしょう。

さて、本の中身ですが、「アメリカの外交を通貫してきたモラリズム」について論じ、その上で「道義的な外交政策とは何か」を問います。本書の面白いところは、歴代米大統領(F.D.ルーズベルトからD.J.トランプまで)の外交について、「意図と動機」「手段」「結果」に分けて独自の方法で採点し成績評価したところです。

邦訳の監修をされた駒村圭吾慶大教授による、明晰(めいせき)にして含蓄に富む解説を引けば、「ナイの採点表の特徴は一刀両断の裁定ではなく、複合的視点を通じての総合評価」をしている点にあります。ただし、「試験の答案の体をなしていないものや、解答する気のないようなものについては容赦しない」ともあります。

確かに、まだご存命の前そして元大統領(どなたかは読んでいただきたい)が本書を読んでいるとすれば、さぞかしご立腹でしょう。

「グローバルコモンズ」を志向

本書の結論部分で、ナイはパワーの「水平移動」(中国を代表とするアジアの興隆)と「垂直移動」(テクノロジーの発達に伴うプラットフォーム企業などの勢力拡大)が現在進行中だと指摘しています。つまり、西洋主導の国際秩序やアメリカの一極支配が限界にきていることを否定しません。

しかし、それにもかかわらず、彼は近未来の世界とアメリカの行く末について極めて楽観的です。楽観の根拠として彼が指摘するのはアメリカが持つ「ソフトパワー」の威力です。この概念はもともとナイの提唱によるもので、「自国の持つ文化や価値観に対する他国からの理解、信頼、支持、共感によって自然に獲得される国際的影響力」のことです。

つまり、ナイは、アメリカがソフトパワーを活用して、諸外国と「制度的協力の枠組み」をつくるべきだと言い、そうすれば、「開かれたルール」に基づく国際秩序の再構築とその維持に成功できると主張しているのです。ここでいう「開かれたルール」というのは、アメリカの独善的主張のルール化ではなく、諸外国との熟議によって折り合いがつけられたルールを意味します。

私見ですが、ナイの提言は「アメリカファースト」の主張とは明らかに違い、グローバルコモンズ(普遍的価値と秩序)を志向しているように見えます。しかし、ナイの場合、アメリカという国家の可能性を論じているという意味で、かの斎藤幸平による「脱国家、脱資本主義、脱成長によるグローバルコモンズ志向」とはまったく異なる思想の提唱であると思います。

今回、ナイの著作によって、われわれの眼前に、グローバルコモンズという頂上に至る2つ目の登山コースが示された、ということではないでしょうか。(茨城キリスト教大学名誉教授)

おいしい水の生産拠点「アクアクララ筑波山工場」完成 土浦

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完成したアクアクララ筑波山工場=土浦市真鍋

安心・安全でおいしい水を生産する「アクアクララ筑波山工場」が31日、土浦市真鍋1丁目に完成した。

中川商事(中川清社長)が、近くにあった工場を移転、新築した。クリーンルームなど最新の設備や機器を備え、国際的な衛生管理基準HACCP(ハサップ)の認証を得ている。

新工場は、延床面積1365平方メートル、平屋建て。極小フィルターで水を純水近くになるまでろ過し、カルシウムやマグネシウムなど4種類のミネラルを添加する。1時間当たり288リットルの飲料水を生産できる。

ろ過やミネラルの添加をするクリーンルーム

環境に配慮し容器は回収して再利用するため、プラスチックごみを削減できる。削減量は500ミリリットル入りペットボトル換算で1家族平均、月84本分になる。備蓄をしながら飲んだ分だけ注文する「ローリングストック方式」のため、家庭での備蓄水にもなる。

地元土浦市と、災害時に飲料水を提供する協定を締結しており、災害時は全国約60カ所ある工場から同市に飲料水が提供される。

竣工式であいさつする中川清社長

31日、同工場で竣工式が催され、八坂神社(土浦市真鍋)の鈴木健一宮司が神事を執り行った。中川社長は「たくさんの方々にお世話になって今日がある。これから地域に恩返しできるよう、しっかりとやっていきたい」などと話した。

稼働は6月から。工場見学などもできるという。

【土浦市長会見】7月23日から17日間のキララまつり 山車やパレードは中止

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会見をする安藤真理子市長=31日、土浦市役所

土浦市、安藤真理子市長の定例会見が31日、同市役所で開かれた。新型コロナ感染拡大の影響で昨年度中止したキララまつりについて、7月23日から8月8日までの17日間の会期とし、例年と内容を変更して開催する旨明らにした。

まつりのタイトルは「2021土浦の夏キララ~星空へ願いを込めて~」。日程は東京オリンピックの会期(7月23日~8月8日)と重なり、期間中をキララウィークとし、行事を分散して実施する。

新型コロナ感染に配慮し、パレードなど人が集まって3密を作りやすい行事は中止する。市民山車、歩行者天国実施による七夕おどり、防犯パレード、模擬店などのイベントだ。

実施するイベントは密にならないよう配慮し、町の中を回遊する「まちなかキララリー」、「土浦キララ花火」打ち上げなどが予定されている。

土浦港では霞ケ浦湖上遊覧船の無料乗船会を行い、観光帆曳き船は通常の運行に加え朝夕の増便を行う。

期間中は、土浦駅西口うらら大屋根広場、川口2丁目モール川口バス停付近、駅前目抜き通り商店街などを七夕飾りで装飾する。

市観光課によると2018年は16万人、2019年は14万人の人出があったという。

花き農家を支援の「花の産地つちうら」プロジェクト

グラジオラスやアルストロメリア、ガーベラなど市で栽培されている花を中心とした展示を6月19日から24日まで、市役所1階で行うと発表があった。

「花の産地」としてのPRと新型コロナ感染拡大に伴うイベントや式典の中止や縮小で収益が減少した花き農家の支援が目的。「父の日(20日)に花を送って」というプロジェクトでもあるという。ツイッターやフェイスブックなどのSNSや広報誌を利用したPRも実施する。

県の花き銘柄産地に指定されているグラジオラスの出荷量は、2019年に355万本だったが2020年は313万本まで減少した。(伊藤悦子)

オンライン授業は合理的配慮か 障害ある学生の修学支援 筑波大が初の全国調査

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聴覚障害学生が遠隔で文字通訳を受けながら、オンライン授業を受けている様

障害がある学生に対し大学などが実施している修学支援の効果について、筑波大学(つくば市天王台)人間系の佐々木銀河准教授らは2019年から20年にかけて全国調査を実施した。研究報告書によれば、大学などの教職員ではなく、障害のある学生本人を対象にした全国調査が行われたのは初めてという。

昨年から全国に広まったオンライン授業の影響も合わせて調査された。障害の種類や本人の特性によっては、オンライン授業になることで障害学生が受講しやすくなることが分かった。今後、オンラインでの受講を障害学生への新しい合理的配慮として利用できる可能性が示唆された。

配慮が不要な場合も

調査は、全国の大学・短期大学・高等専門学校に在籍し、学生支援を受けている障害学生431人にアンケートを実施した。調査の結果、オンライン授業では障害学生が特別な配慮を受けなくても、他の学生と同じように受講できる場合があることが明らかになった。

対面授業の場合、聴覚障害学生に音声情報を文字起こしする必要があったり、視覚障害学生が紙の資料を読み上げソフトで読むために、教員から個別に資料をパソコンデータでもらう必要がある。オンライン授業になることで、利用者に応じて自動音声認識による字幕表示ができたり、すべての学生に資料がパソコンデータで送られてきたりするため、障害学生が特別な配慮を求める必要はなくなる。

「障害により体調が悪い時でも自分の家から授業に参加できる」「発達障害により周囲の音に過敏に反応してしまうため、教室で受講するよりオンラインの方が集中できる」など、障害特性のためにオンライン授業の方が受講しやすいという意見もあった。

一方、「対面授業で教員と直接会った方が障害のことを理解してもらえ、配慮を受けやすい」「自動音声認識で字幕を表示すると、専門用語などを誤変換しやすく、理解が難しい」「発達障害により時間の管理が難しく、対面授業の方が課題の締め切りを把握しやすい」など、障害特性のために対面授業の方が受講しやすいという意見もあった。

コロナ禍の現在、筑波大では障害の有無に関わらず、感染予防の観点からオンライン授業が基本だ。コロナが収束すれば対面授業に戻るとみられるが、オンライン授業の方が受講しやすい障害学生もいることから、「障害の有無にかかわらず、参加しやすい授業を大学が作るために、障害学生にオンラインでの受講を認めることも合理的配慮の新しい選択肢の一つになるのではないか」と研究代表である佐々木准教授は話す。

しかし、大学によっては対面授業に戻りつつあり、障害学生であってもオンライン授業を認めないところも出てきているという。

学生の声聞き検討

オンラインでの受講を障害学生への合理的配慮として認めるには課題もある。文部科学省の大学設置基準で、大学の教育課程でオンライン授業が認められるのは60単位までと決まっている。現在は特例としてすべての授業をオンラインで受けても卒業できるようになっているが、コロナ後は以前の規定に戻る可能性がある。障害学生への合理的配慮としてオンライン授業を認める場合、どのように単位として認めていくか、筑波大でも検討している。

佐々木准教授は「大学での支援を障害学生自身がどう感じているかに焦点を当てた調査はまだ少ないため、今後も継続して調査したい」と話し、どのような場合に、オンライン授業を配慮として受けることが合理的だと考えられるかを検討している。障害学生の声を聞きながら柔軟に対応を検討したいとしている。

自分に必要な配慮模索する期間必要

【取材後記】合理的配慮とは、障害者が障害のない人と同等の社会生活を営むために、環境や慣行、制度などを変えること。コロナ後に、障害のない学生は対面授業に戻る一方で、授業中の配慮が少なくて済むという理由で、障害学生だけオンライン授業を受けるのは、障害のない学生と同等の学生生活を営むことになるだろうか。

合理的配慮は基本的に障害者本人からの申し出により始められるが、大学入学当初から自分に必要な配慮を分かっている障害学生だけではない。授業を受け始め、教員や他の学生と相談しながら、自分に合った配慮が分かってくる障害学生もいる。自分に必要な配慮を周囲の人と話し合う期間も、大学卒業後、社会の中で自ら必要な配慮を求めていく準備として必要なことだろう。入学当初から配慮としてオンラインで授業を受けた場合、障害学生自身が自分に合う配慮を模索する機会が減る可能性はないか。

一方、佐々木准教授も指摘しているが、障害による体調不良時など、オンラインでしか授業を受けられない場合もあるだろう。オンライン授業が合理的配慮として認められるまでには、検討すべきことが多くありそうだ。(川端舞)

つくば市農業委会長選びの田舎芝居 《吾妻カガミ》107

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つくば市役所正面玄関サイド

【コラム・坂本栄】都市と田園が混在する研究学園つくば市。6つの町と村が合併して生まれた経緯もあり、農業関係でも面白い話があります。多くの方にとって「つくば市の農業委員会って何?」だと思いますが、今回は、このほど変更された農業委員の選び方、この委員の中から選ばれた会長の適格性について、気になったことを取り上げます。

何が引っかかるのか? 本サイトの記事「地区別人数制や農地法違反をめぐり紛糾」(5月20日掲載)が事実関係を伝えています。問題は2つあります。旧町村別の委員枠が地区別のバランスを欠く形に変えられたこと、農地法違反の過去を持つ人が会長に選ばれたこと―です。

記事の付表を使って計算すると、旧谷田部町の農地面積は市全体の24%、農家戸数は26%です。ところが、24人で構成される農業委の地区別枠が変更され、谷田部地区の委員数は25%から17%に減らされました。6人→ 4人です。2人減分は旧大穂町と旧豊里町に1人ずつ配分されています。旧谷田部町が不公平に扱われていないでしょうか?

会長選びも変です。I氏(旧桜村地区)とT氏(旧谷田部町地区)が争い、I氏=13票:T氏=11票で、I氏が選任されましたが、I氏は会長としての適格性に問題がありました。農地を転用する手続きをせずに駐車場として使うという、農地法違反の過去があったのです。農業委の信頼性が揺らぐのではないでしょうか?

市が会長選に実質関与?

なぜこんなことが起きたのでしょうか? 解明する前に、農業委員会とはどんな仕事をする所なのか、簡単にまとめておきます。所有する農地を転売したいとか、住宅用や産業用に転用したいとか、農家から申し出があった際に、YESかNOかを判断するのが主な仕事になります。つまり、環境上も経済上も大切な農地を守る役割を与えられている農業委は、農地の転売や転用を承認ないし否認する公的機関です。

田園→都市が進む学園都市つくばのように、住宅用地や産業用地へのニーズが強いところでは、農業委はとても大事な組織といえます。別の見方をすれば、売り手・貸し手の農家はもちろん、買い手・借り手の事業者、売買・賃貸の仲介者にとっても、気になる組織です。

こういったことを考えると、会長選び=委員の多数派固めが激しくなるのはよく理解できます。この結果に決定的な影響を与えたのが、T氏の出身地区・旧谷田部町の委員枠2人減だったことは言うまでもありません。

気になるのは、地区別枠を変更したのが市であるということです。新地区別枠が会長選任結果の主因になったのか、結果は多数派固めの努力によるものなのか、何とも言えません。しかし、I氏会長就任にプラスに作用する仕掛けを整えた市には、不自然なものを感じます。本サイトの「知らせぬまま『各地区3人以上』に変更」(5月28日掲載)の記事からも、I氏陣営と市の親密度が透けて見えるからです。(経済ジャーナリスト)

つくば市923件、土浦市1283件 コロナ禍1年 生活困窮者支援資金貸付

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総合支援資金の申請件数の推移を示したグラフ。両市から提供された申請件数を元にNEWSつくば作成

新型コロナの影響で生活に困窮している人を支援する「特例総合支援資金制度」の申請件数が、昨年4月からの1年間で、つくば市で923件、土浦市で1283件に達したことが分かった。コロナ禍で収入が減ったり失業した人を対象に、暮らしを立て直す資金を最大60万円(3回まで)貸し付ける制度だ。

つくば、土浦両市とも申請件数は昨年6、7月に大きなピークがあり、以降は減少傾向を続けている。つくば市社会福祉課によれば「緊急小口資金貸付については世帯に対して一度の貸付制度であるため、該当する世帯が少なくなった結果、申請が減少したという可能性が高い」という。

その後、今年の2、3月に若干の増加が見られた。原因は分かってない。

困窮状態1年以上も

今年2月には、同制度を一度利用した世帯であってももう一度貸付を受けることが出来る「再貸付」が始まっている。再貸付の申請件数は2月の制度開始から4月末までで、つくば市が178件、土浦市が216件に達した。制度利用世帯のうちつくば市で19%、土浦市で16%が再申請したことになり、コロナ禍により生活困窮状態が1年以上続いている人がいることを示している。

総合支援資金を再貸付まで満額で借りた場合には、貸付の総額は180万円となる。一時的な収入の減少に対して最大20万円を貸し出す特例緊急小口資金と併用した場合には、総額で200万円の貸付額となる。昨年3月、新型コロナ禍における限定的な措置として始まった特例総合支援資金制度だがすでに5回の期間延長を重ね、今年8月末まで特例措置が継続されることが既に決まっている。

つくば市内で生活困窮家庭の子供の支援などを行うNPO法人「居場所サポートクラブ ロベ」の森美智子理事長は「(関わりを持っている範囲で)特に飲食関連の業種の就労環境が不安定になってしまっている状況がある。特例貸付は返さなくてはならないものなので、可能な限り避けたいものの、生活費で不足する分を貸付でなんとかせざるを得なくなるケースもあることは事実」と話す。(山口和紀)

「つくばインターナショナルスクール」に学ぶ 《令和楽学ラボ》13

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つくばインターナショナルスクール=つくば市上郷

【コラム・川上美智子】茨城県の教育委員は、それぞれ年に6校ほど県内小中高等学校の視察を行っています。つくば市の「みらいのもり保育園」の園長になってからは、できるだけつくば市内の学校を回るようにしています。その番外編として、4月中旬、以前から名前だけは耳にしていた「つくばインターナショナルスクール(TIS)」を見学する機会を得ました。

何の予備知識も無く訪れた学校は、まるで軽井沢の森の中に迷い込んだかのような自然あふれる中にあり、その建物は、アメリカ風の緑色を基調にした木造のおしゃれなものでした。

シェイニー・クロフォード校長先生の大歓迎を受けて、全ての学年の授業を見学することができました。TISには、3歳から18歳までの子どもたち、285名が在籍し、開設12年で生徒数が飛躍的に伸びたと言います。

ダイバーシティー(多様性)の言葉がピッタリの、様々な国の子どもたちがキャンパスに学び、親の国籍は25カ国に上ります。両親が日本人の家庭、片親が日本人の家庭、両親が外国人の家庭がほぼ3分の1ずつで、授業はすべて英語で行われていました。

また、3歳から12歳までを対象とするPYP(プライマリー・イヤーズ・プログラム)、11歳から16歳を対象とするMYP(ミドル・イヤーズ・プログラム)、16歳から19歳までを対象とするDP(ディプロマ・プログラム)のすべての国際バカロレア(大学入学資格・教育プログラム)が取得できるのは、県内では本校1校に限られるため、東京圏から通学する子もいるなど、大変人気があるとのことでした。

ユニークな国際人材育成カリキュラム

そもそも、国際バカロレアの目標は、①子どもたちが世界の複雑さを理解し、それに対処できるよう育成する ②未来に対し責任ある行動をとるための態度、およびスキルを身につけさせる ③国際的に通用する資格を付与し、大学進学へのルートを確保する―ことにあり、探求する人、知識のある人、考える人、コミュニケーションができる人、信念をもつ人、心を開く人、思いやりのある人、挑戦する人、バランスのとれた人、振り返りができる人を育成するとしています。

国際社会で活躍する人材育成のための教育カリキュラムはユニークで、例えばPYPでは、言語、社会、算数、芸術、理科、体育の6教科があり、「私たちは誰なのか、どのような時代と場所にいるのか、どのように自分を表現するか、世界の仕組みは自分たちをどう組織しているのか、地球を共有するとはどういうことか」などを教科横断的に学んで行きます。

私たちや人類にとっての普遍性や実社会の課題を、自分で考える、調べる、表現する、他人の意見も受容し共感する、解決法を探るなど、コミュニケーションを交わしながら学ぶアクティブ・ラーニングが基本のスタイルになっていて、TISでも、クロフォード校長先生の専門であるSDGs(持続可能な開発目標)のテーマで、どの学年の授業もアクティブに展開されていました。

今、日本は国際スタンダードなこの学習スタイルをようやくスタートさせたところです。小学校2年生の女の子の「私たちの体にはもうマイクロプラスティックが入り込んでいるの」の言葉を胸に刻み、学びの多い視察先を後にしました。(みらいのもり保育園園長、茨城キリスト教大学名誉教授)

ボランティアで音楽祭をプロデュース 《塞翁が馬》1

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三浦一憲さん

【コラム・三浦一憲】このコラムに参加することになった私は、「まちかど音楽市場」の代表です。2004年から、音楽をテーマにした企画を立て、ボランティア活動をしてきました。なんで?どうして?音楽イベントを開催することになったのか。その歴史や動機などを話していきたいと思います。

つくば市に来たのは1991

筑波研究学園都市は1963年の閣議了解から建設が始まり、1987年、つくば市が誕生しました。今年で34年という歴史の浅い新しい都市です。私は、両親が1980年にこちらに移住していた関係で、東京からよく遊びに来ました。当時は、富士山や群馬の山並も一望できました。住宅はあまりなく、人も少ない、新興開発地域でした。北風や春風で砂塵が舞い、家の中が砂だらけになることもありました。

1985年につくば科学万博が開催されますが、JR常磐線が唯一の交通手段で、「陸の孤島」とからかわれ、自殺者が話題になっていました。この万博に合わせて、センター地区の複合施設(ホテル、ノバホール、ペデストリアン)が完成し、都市の核になる顔ができました。

私が家族で移って来たのは1991年です。そのころには西武百貨店やダイエーが進出していましたが、センター地区も夜になると寂しいものでした。夜、犬と遊歩道を散歩したときは、誰にも会わないこともあり、これが「学園都市センター地区なのか」と驚きました。

「まちかどに音楽が聞こえる街」

そんな状況を市民レベルで何とかできないものかと思っていたとき、つくば市商工会と市産業振興課が開催したワーキングループに参加、その「まちづくり」部門で、音楽を主体にした地域活性化を提案しました。

その創設チームに、地域まちづくり専門家、筑波大学専門家、音楽専門家、地域スポーツチーム代表などが加わり、「まちかど音楽市場」の前身「つくば・まちかど音楽市場ネットワーク」が誕生、2004年から活動を開始しました。活動テーマ「まちかどに音楽が聞こえる街」がそのまま名前となりました。

つくば市は新しい街なので、試行錯誤を重ねながら、この15年間で113回のライブイベントを開催しました。15年分の膨大な記録や画像を分析・整理し、音楽祭開催のノウハウを次世代につなげられればと考え、今、報告書を作成中です。(まちかど音楽市場代表)

【みうら・かずのり】高校3年生の時に8ミリ映画を自主制作。以来、フリーのフォトグラファー。 電鉄・建築・人物などの撮影のほか、写真館も経営。つくば市市民活動センター・スタッフとして2年間勤務。2004年「まちかど音楽市場」を立ち上げ、代表に就任。現在住んでいる団地内でボランティア環境美化活動(ローズマリーの会)も。1991年、つくば市に移住。1952年、東京都江東区生まれ。

➡まちかど音楽市場ホームページはこちら

知らせぬまま「各地区3人以上」に変更 つくば市農業委員会人数割

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つくば市農業委員会事務局窓口=つくば市役所コミュニティ棟

選考の公正性、透明性どう確保

改選後のつくば市農業委員会委員の地区別人数割をめぐり、総会で農業委員から異議が出された問題で(5月20日付)、農業委員の候補者を選ぶ市農業委員会委員候補者選考会(会長・飯野哲雄副市長)が第2回会合を開いた昨年12月、地区別の農業委員数を一律で「各地区3人以上」と変更していたことが分かった。

同市の農業委員数は公選制だったときも含めてこれまで、地区ごとの農地面積や農家戸数に応じて選ばれ、農家が最も多い谷田部地区は他地区と比べて委員数が多かった。各地区一律で3人以上とする人数割は、市農業委員会設立以来の大きな変更になるが、当事者である農業委員会や、同意を得なければならない市議会にも説明はされなかった。一方、市はホームページに、地区ごとの農地面積や農家戸数などを考慮した地区別人数割の考え方だけを公表していた。

選考会で各地区一律3人以上となったことについて市農業委員の一人は「初めて聞く。選考会にそこまでの決定ができるのか」と憤慨する。

問題になっている認識なかった

同選考会は、農業委員が公選制から市長による任命制に変わったのを受けて、選考過程の公正性、透明性を確保するため設置され、昨年12月、35人の候補者の中から定数の24人を選ぶ選考が実施された。

地区別人数割について、昨年12月7日の第1回選考会では、農業委員は農地転用や所有権移転など許認可の調査を地区ごとに行っていることから、事務に支障をきたさないよう、地区ごとの農地面積、農家戸数、農地転用や所有権移転など農地法の許可申請件数に応じて、谷田部地区6~7人、桜3~4人、大穂3人、豊里3人、筑波4~6人、茎崎2人とすることを、市長への答申書に申し添えることが事務局から提案された。

その後、同月21日に第2回選考会が開かれ、事務局提案とは異なる、各地区一律3人以上とすることが決まったという。

農業委員会事務局によると「各地区3人以上いれば仕事が十分できると(選考会の)話し合いの中で決まった」としている。

ただし第2回選考会の議事録や要約、答申は非公開で、基準を変更するに至った議論の経緯や意思形成過程は説明がないままだ。同事務局は議事録を非公開としている理由について「(採点結果など)個人情報がからむので、第2回選考会開催にあたって、あらかじめ議事録を公開しないことを決定した」ためだとしている。

第2回選考会では答申がまとめられ、五十嵐立青市長に提出された。市長は、答申にもとづき、選考会の採点結果をもとに24人を選んだとしている。24人の地区は、谷田部4人(改選前は6人)▽桜5人(同5人)▽大穂3人(同2人)▽豊里4人(同3人)▽筑波5人(同5人)▽茎崎2人(同2人)。各地区3人以上と決めたのに茎崎地区が2人なのは、候補者が2人しかいなかったためという。

各地区3人以上に変更されたことについてはこれまで、農業委員会に説明されたことはなかった。同事務局は「(農業委員の間で)地区バランスとの隔たりが問題になっているという認識がなかった」ためだと釈明している。

出席せず説明できなかった

農業委員の任命は市議会の同意が必要なことから、市長は3月議会最終日に24人を農業委員に任命する議案を提案した。議会では、本会議開会前に開かれた議会運営委員会で、塚本洋二議員から「地区バランスはとれているのか」などの質問が出されたが、地区別人数を各地区3人以上に変更したことの説明はなかった。

これについて農業委員会事務局は「人事案件を出すのは総務部で、農業委員会事務局は議会運営委員会に出席してなかったので、説明できなかった」としている。

本会議では24人のうち22人が全会一致で、2人が賛成多数で同意となった。

意見聞かれたこと一度もない

農業委員会は、農地法に基づいて農地の売買や貸借の許可、農地転用案件に意見を言うなど、農地に関する事務を執行する行政機関で、「農地の番人」とも呼ばれる。

農業委員の選出方法は、2015年の農業委員会法改正により、選挙で選ぶ公選制が廃止され、議会の同意を得て市長が任命する方式に変更になった。

市長任命制に変更後の選出方法について、農業委員会法規則は「関係者からの意見聴取その他の委嘱(任命)過程の公正性、透明性を確保するために必要な措置を講ずるよう努めなければならない」と定めている。農水省は、必要な措置について①推薦を受けた者及び募集に応募した者や推薦者の意見を聞くこと②前任の農業委員または推薦委員の意見を聞くこと③パブリックコメントを行うこと④選定委員会を設けること等が考えられるとしている。

選出方法について別の農業委員は「つくば市から意見を聞かれたことは一度もない」と話している。(鈴木宏子)