木曜日, 11月 20, 2025
ホームコラム世界の笑いものになっていた? つくば市政《吾妻カガミ》149

世界の笑いものになっていた? つくば市政《吾妻カガミ》149

【コラム・坂本栄】つくばセンタービルを設計した建築家・磯崎新氏が昨年末に亡くなりました。センター地区のホテル+音楽会堂+その間のビル+広場をセットで設計した著名人です。追悼文が全国紙に掲載され、代表作としてセンタービルが挙げられていました。もし、市が広場に2基のエスカレーターを設置、磯崎作品に「2筋の大傷」を付けていたら、つくば市は「世界から笑われるまち」になっていたでしょう。

磯崎建築の意匠を損ねる改修

磯崎氏設計の3建築と広場で構成されるセンタービルを改修する計画は、▽1階広場を覆う屋根を取り付ける、▽1階広場と2階広場を結ぶエスカレーターを2基設置する、▽センタービル内部を改装する―などがありました。

これに対し、磯崎氏のポストモダン建築の代表作であるセンタービルの中央広場をいじり、デザイン(意匠)を損ねるのはおかしいと、市の計画に反対する市民団体が組織され、市や議会に撤回を求める運動を起こしました。また、本サイトのコラムニスト・冠木新市さんも、映画の蘊蓄(うんちく)を傾け、市の計画を批判しました。

市民運動やつくば市・議会の対応を、本サイトが逐一報道。私も本コラムで、改修は名建築を傷付けるだけでなく、エスカレーターは機能面からも「いらない」と指摘。他メディアも強い関心を示したこともあり、市はエスカレーター設置を取り止めました(屋根は計画段階で取り下げ)。その経緯や市民運動の記事と関連コラムは、下記にリンクを張っておきました。

全国紙が本サイト報道を紹介

磯崎建築の価値については、同氏と親交があった批評家・浅田彰氏が朝日新聞(2023年1月5日朝刊)文化欄で、「この建築家=芸術家は83年には世界的にポストモダン建築のパラダイムとされるつくばセンタービルを生み出すことになる。その後の世界を股にかけての活躍は誰もが知る通りだ」と書いています。

また、NEWSつくばのセンタービル問題報道については、毎日新聞の青島顕記者が同紙(2022年12月26日朝刊)オピニオン・メディア欄で、「つくば市中心部の広場へのエスカレーター設置計画に対して、市民から『デザインの価値を損ねる』などと異議が出たことを報じ続けて、市に計画を撤回させるなど…」と紹介、本サイトの行政監視姿勢を取り上げてくれました。

もし、本サイトの記事とコラムがなかったならば、建築史に残るセンター広場には屋根(デザインを隠す構造物)が架けられ、エスカレーター(デザインを壊す構造物)が設置されていたでしょう。そして、名建築を毀損(きそん)したことで、つくば市の文化レベルが世界に知られ、市民は恥ずかしい思いをしたでしょう。(経済ジャーナリスト)

<参考>

センタービル問題の経緯がわかる主な記事

「…センタービル改修計画 屋根は取り止め」(2020年12月4日掲載

「エスカレーター設置をめぐり論戦…市議会」(2021年4月27日掲載

「エスカレーター取り止め…計画大幅見直し」(2021年12月17日掲載

改修に反対する市民運動を扱った主な記事

「エスカレーター設置見直しを…市民らが要望」(2021年6月1日掲載

「『…広場の形状維持を』 市民団体が再要望」(2021年9月3日掲載

「…保存すべき価値示す 市民団体が報告書…」(2021年10月1日掲載

冠木さんの主なセンタービル関連コラム

「…センタービルで『ダイ・ハード』」(2021年7月9日掲載

「『たたり』と『科学都市』」(2021年8月12日掲載

本欄筆者の主なセンタービル関連コラム

「つくば市議の施設観と文化センス」(2021年7月5日掲載

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

33 コメント

コメントをメールに通知
次のコメントを通知:
guest
最近NEWSつくばのコメント欄が荒れていると指摘を受けます。NEWSつくばはプライバシーポリシーで基準を明示した上で、誹謗中傷によって個人の名誉を侵害したり、営業を妨害したり、差別を助長する投稿を削除して参りました。
今回、削除機能をより強化するため、誹謗中傷等を繰り返した投稿者に対しては、NEWSつくばにコメントを投稿できないようにします。さらにコメント欄が荒れるのを防ぐため、1つの記事に投稿できる回数を1人3回までに制限します。ご協力をお願いします。

NEWSつくばは誹謗中傷等を防ぐためコメント投稿を1記事当たり3回までに制限して参りましたが、2月1日から新たに「認定コメンテーター」制度を創設し、登録者を募集します。認定コメンテーターには氏名と顔写真を表示してコメントしていただき、投稿の回数制限は設けません。希望者は氏名、住所を記載し、顔写真を添付の上、info@newstsukuba.jp宛て登録をお願いします。

33 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

民有地の建物内にセアカゴケグモ 土浦市が注意呼び掛け

土浦市は18日、同市東中貫町、民有地の建物内で、特定外来生物のセアカゴケグモのメス1匹と、卵が詰まった卵のう4個が発見されたと発表した。クモはすでに駆除され、かまれた人や健康被害を訴える人はいない。 セアカゴケグモのメスは毒をもち、かまれると重症化することがある。素手で触るとかまれることがあるため、同市は、見掛けても絶対に素手で触らないよう注意を呼び掛けている。 市環境衛生課によると、17日、建物内にクモが1匹いるのが発見され、セアカゴケグモだと分かり、発見者がクモと卵のうを駆除した。発見者は同日午後5時30分ごろ、市ホームページの問い合わせフォームから市に連絡した。 翌18日午前9時ごろ、連絡を受けた市職員が現地を訪問し、駆除されたセアカゴケグモ1匹と卵のうを確認。県生物多様性センターが同日、セアカゴケグモであることを確認した。 駆除されたメスは体長1センチ弱、卵のうは袋状で、一つの直径が5ミリ程度。クモがどこから侵入したかなどは不明という。 同市内では今年8月、民有地でセアカゴケグモの死骸が発見された。生きた状態で見つかったのは今回が初めて。県内では2013年に神栖市で発見されて以降、各地で目撃されている。 市は、セアカゴケグモを見つけた場合、素手で触らず、家庭用殺虫剤か熱湯、靴などで踏みつぶして駆除し、市環境衛生課(電話029-826-1111内線2459)に連絡してほしいと呼び掛けている。

30年にわたり筑波山を撮影 会沢淳さんが写真展 ダイナミックな自然、見るものを圧倒

18日から 県つくば美術館 30年間にわたり筑波山を撮り続けているつくば市在住の写真家、会沢淳さん(70)の筑波山写真展が18日から、つくば市吾妻、県つくば美術館で開かれている。筑波山の姿のほか、ダイナミックな自然の動きや人々の暮らしを巧みな構図で撮影した70点が展示され、見るものを圧倒する。30年間にわたって撮影した年代、季節、地域など多岐にわたる作品が並べられている。 山頂付近のブナを撮った「白きブナたちの森」は、積雪した筑波山に登り撮影した。「燧ケ池(ひうちがいけ)の榎(えのき)」に写る榎は、今は伐採されたためもう見ることができない貴重な写真だ。「火の神山の神」は、山麓の小田地区で催される伝統行事、どんど焼きを撮った。ほかに、筑波山神社の祭礼、御座替祭(おざがわりさい)で女体山頂付近で撮った「天近きところで」、山麓の田植えの様子を写した「命を植える手」などが展示されている。 会沢さんは筑波山の写真集を出版している唯一の写真家。1955年北海道三笠市で生まれ、新潟県で育った。千代田写真専門学校卒業後はスペインやモロッコを放浪。帰国し1981年、撮影会社の竹見アートフォトスに入社。84年に独立し、95年に「2億4千万年の神々―会沢淳筑波山写真集」を出版。筑波山の写真展は2008年に東京・秋葉原のつくばエクスプレスプラザで初めて開催して以来、2回目。 つくば市に住み、筑波山に徐々に魅了され、素晴らしさに気づいたと話す。「標高877メートルの低山だが、百名山の一つ。関東平野にそびえる目立つ存在で、万葉集には25首の句が詠まれた。しかし、あまりにも当たり前にそこにある」。 ある時会沢さんは「自分が筑波山を見ているのではなく、筑波山が自分を見ている」という感覚になり、「筑波山に通うしかない」と思ったという。 「撮影中に、凍った地面で転落しそうになったり、中腹の白滝神社の前でシャッターが切れなくなったりなど、危ない目や、不思議な現象にたくさん遭った。やはり神々の山なのだと思い、それから筑波山神社でお参りするようになった。筑波山と対峙すると、山が意思を持っていると感じられる」と話す。 市内から来館した60代男性は「筑波山の写真がたくさん並べてあって楽しい。配列にも工夫があって、とても見やすい。全体として構図が素晴らしくさすがにプロの写真家」と話していた。(榎田智司) ◆同展は11月18日(火)から24日(月)まで、つくば市吾妻2-8、県つくば美術館で開催。開館時間は午前9時30分~午後5時(最終日は午後3時まで)。入場無料。問い合わせは会沢淳さん(電話029-838-2786、メールfffaizawa@yahoo.co.jp)。

つくば市「かつらぎ公園」の秋《ご近所スケッチ》20

【コラム・川浪せつ子】今年は夏が長くて、秋はあっという間におしまい? そんな中でも、紅葉狩りは楽しみですね。筑波周辺には、思いのほか紅葉のきれいな場所が多いです。「かつらぎ公園」(つくば市春日)もその一つです。市立春日学園義務教育学校の裏にあり、あまり知られていないかもしれません。 この公園にはテニスコートがあるため、常駐している方もいます。また、池が2つあり、石組の小川でつながっています。そこで見つけたのは、左側の落ち葉お掃除の様子。私は、いろいろな場所で(空港や海外でも)お掃除道具を見るのが大好きです。ついスケッチしてしまいます。日本では、空港掃除係の方が「プロフェショナル」として話題になったこともありました。 お掃除のプロフェッショナル プロと言えば、私の属している全国組織の団体の方の話です。そこで県のトップとして長年活躍していた方が、高齢になり仕事を辞めました。その方はその後も地域に貢献していきたいとシルバー人材センターに登録し、お役所関係の場所のお掃除を始めました。 「トイレのウォシュレットを引き出して、ここまでキレイにしているのは、多分、私くらい」との言葉を聞いて、感動してしまいました。だから、仕事を通して皆さんに信頼され、自分も誇りを持って生きてきのだと。その心持ちで何十年も仕事をしてきたプロだったのですね。 誇りを持って仕事をこなしていくことは、簡単ではないのではないでしょうか。たとえ誰も見ていない、誰にも認められなくても、手を抜かず仕事をこなしていくのは、結構シンドイです。主婦業はそんな感じですね。普通の人は褒められたいし、収入も多くと願うものです。自分を褒め淡々と、仕事も家事もこなしていける人でありたいと思いました。 宅配さんが東屋でお弁当 ちなみに、「かつらぎ公園」は紅葉の時期でなくても癒される場所です。お昼時、小さな東屋で、宅配便のお兄さんがお弁当を食べていました。何でもない、そんな日常がいとおしくなる公園です。(イラストレーター)

ウサギ捕り遊び仕事(3)《デザインを考える》26

【コラム・三橋俊雄】今回は、京都府北部・丹後半島で行われているウサギ捕りという「遊び仕事」について2つの事例を紹介します。「ククリワナ」(宮津市由良・南丹市大野)と「バイ投げ」(宮津市上世屋)です。 針金の「ククリワナ」 杉の新芽を求めて訪れるウサギのケモノミチに、針金で輪をつくり、近くの木へ仕掛ける―それが「ククリワナ」(図1)です。針金は藁(わら)で一度焼いて粘りを出し、柔らかくして用います。金属の匂いが消えるためか、よく捕れるといいます。罠(わな)の針金は使い捨てにし、山仕事の行きしなに仕掛けますが、同じ場所には続けて置きません。 ワナは7〜10カ所ほど設けておきます。ケモノミチはウサギがヒサカキの葉を食べたり、丸い糞を落としたりすることで見分けられます。猟の技術は大人から教わったものだといいます。 朝7時半に山仕事へ出発し、道中で仕掛けを確認します。ウサギが捕れていれば、仕事の間は木にぶら下げておきます。谷では仲間とともに山の作業をし、午後4時半頃には帰宅します。ある日には7羽もウサギが捕れて、近所に分けたこともありました。猟は10月から翌年4月まで続き、平均すると5日に1羽ほどの成果でした。 昔はウサギによる害が圧倒的に多かったようです。杉の苗木を春や秋に苦労して植えても、新芽を食べられてしまい、翌年には植え直しを余儀なくされることもありました。杉の木が一本でも助かればと思い、仇討ちのつもりでウサギを捕りましたが、それは同時に「楽しみ」でもありました。食料の乏しい時代でもあり、捕ったウサギは料理して食べました。 皮は喉から足まできれいに剥ぎ、なめすことはせず干して山の敷物にしました。内臓はうまく取り出せるので捨ててしまい、背や足の肉はすき焼きにして食べました。佃煮(つくだに)風の「コロ炊き」にすれば日持ちもしました。 二股枝の「バイ投げ」 「バイ投げ」は、まず雪山の陽の当たる斜面で、曲がった木の根元近くに眠っているウサギを探し出します。ウサギに気づかれないように近づき、バイ(二股の枝にアカマツの葉をくくりつけたもの)を用意します。そして、天敵のタカやトンビが襲いかかってきたかと思わせるように、続けざまにバイを空中へ投げ上げます(図2)。 バイはヒューヒューと風を切って唸(うな)り声を発し、その音に驚いたウサギは身をひるがえし、木の根元の隠れ穴へ一目散に逃げ込みます。間髪を入れず雪穴めがけて走り寄り、すばやく周囲の雪を踏み固めて逃げ道をふさぎます。テンズキ(木製の除雪具)で穴を慎重に掘り進め、ウサギの後ろ足を探り出して掴(つか)み、引きずり出します。 この「バイ投げ」は午前10時から午後3時頃まで行われ、猟期は節分(2月初め)までとされています。節分を過ぎるとウサギは発情期を迎え、行動が敏感になるため、追いかけるのが難しくなるといいます。(ソーシャルデザイナー)