火曜日, 5月 30, 2023
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世界の笑いものになっていた? つくば市政《吾妻カガミ》149

【コラム・坂本栄】つくばセンタービルを設計した建築家・磯崎新氏が昨年末に亡くなりました。センター地区のホテル+音楽会堂+その間のビル+広場をセットで設計した著名人です。追悼文が全国紙に掲載され、代表作としてセンタービルが挙げられていました。もし、市が広場に2基のエスカレーターを設置、磯崎作品に「2筋の大傷」を付けていたら、つくば市は「世界から笑われるまち」になっていたでしょう。

磯崎建築の意匠を損ねる改修

磯崎氏設計の3建築と広場で構成されるセンタービルを改修する計画は、▽1階広場を覆う屋根を取り付ける、▽1階広場と2階広場を結ぶエスカレーターを2基設置する、▽センタービル内部を改装する―などがありました。

これに対し、磯崎氏のポストモダン建築の代表作であるセンタービルの中央広場をいじり、デザイン(意匠)を損ねるのはおかしいと、市の計画に反対する市民団体が組織され、市や議会に撤回を求める運動を起こしました。また、本サイトのコラムニスト・冠木新市さんも、映画の蘊蓄(うんちく)を傾け、市の計画を批判しました。

市民運動やつくば市・議会の対応を、本サイトが逐一報道。私も本コラムで、改修は名建築を傷付けるだけでなく、エスカレーターは機能面からも「いらない」と指摘。他メディアも強い関心を示したこともあり、市はエスカレーター設置を取り止めました(屋根は計画段階で取り下げ)。その経緯や市民運動の記事と関連コラムは、下記にリンクを張っておきました。

全国紙が本サイト報道を紹介

磯崎建築の価値については、同氏と親交があった批評家・浅田彰氏が朝日新聞(2023年1月5日朝刊)文化欄で、「この建築家=芸術家は83年には世界的にポストモダン建築のパラダイムとされるつくばセンタービルを生み出すことになる。その後の世界を股にかけての活躍は誰もが知る通りだ」と書いています。

また、NEWSつくばのセンタービル問題報道については、毎日新聞の青島顕記者が同紙(2022年12月26日朝刊)オピニオン・メディア欄で、「つくば市中心部の広場へのエスカレーター設置計画に対して、市民から『デザインの価値を損ねる』などと異議が出たことを報じ続けて、市に計画を撤回させるなど…」と紹介、本サイトの行政監視姿勢を取り上げてくれました。

もし、本サイトの記事とコラムがなかったならば、建築史に残るセンター広場には屋根(デザインを隠す構造物)が架けられ、エスカレーター(デザインを壊す構造物)が設置されていたでしょう。そして、名建築を毀損(きそん)したことで、つくば市の文化レベルが世界に知られ、市民は恥ずかしい思いをしたでしょう。(経済ジャーナリスト)

<参考>

センタービル問題の経緯がわかる主な記事

「…センタービル改修計画 屋根は取り止め」(2020年12月4日掲載

「エスカレーター設置をめぐり論戦…市議会」(2021年4月27日掲載

「エスカレーター取り止め…計画大幅見直し」(2021年12月17日掲載

改修に反対する市民運動を扱った主な記事

「エスカレーター設置見直しを…市民らが要望」(2021年6月1日掲載

「『…広場の形状維持を』 市民団体が再要望」(2021年9月3日掲載

「…保存すべき価値示す 市民団体が報告書…」(2021年10月1日掲載

冠木さんの主なセンタービル関連コラム

「…センタービルで『ダイ・ハード』」(2021年7月9日掲載

「『たたり』と『科学都市』」(2021年8月12日掲載

本欄筆者の主なセンタービル関連コラム

「つくば市議の施設観と文化センス」(2021年7月5日掲載

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