火曜日, 12月 30, 2025
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大池由来水草の域外保全の試み《宍塚の里山》105

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茨城県自然博物館に置かれた保全ポット

【コラム・嶺田拓也】2010年に農水省が選定した「ため池百選」に指定された宍塚大池では、かつて豊かな植生が見られました。とくに水草では、抽水植物であるハス、フトイ、カンガレイなど、浮葉植物ではヒシ、ハス、オニバス、ジュンサイなど、沈水植物ではクロモ、イヌタヌキモ、エビモ、シャジクモなど、多くの種類が生育していました。しかし、近年はヒシの葉が浮かぶ程度で、多くの水草が大池から姿を消してしまいました。

その原因としては、水質の変化やアメリカザリガニの影響などが考えられています。全国的にも各地で水草の衰退は著しく、その多くが絶滅危惧種に指定されるほどまで減少してしまいました。大池に見られた水草のうち、オニバス、イヌタヌキモ、シャジクモなどが全国的に絶滅の危機にあるとして、環境省から絶滅危惧指定を受けています。また、ジュンサイやクロモなどは茨城県のレッドデータリストで、県内では数少なくなった絶滅危惧種に扱われています。

私たち「宍塚の自然と歴史の会」では、大池で見られた希少な水草を絶やさないために、大池の底土を採取して、埋土種子として含まれている水草の系統保全を行っています。

大池の堤防から400メートルほど北側に位置する井戸のわきに、水草保全地として大きな水槽を並べて大池の底土を入れ埋土種子からの発芽を待ったところ、これまでオニバスやジュンサイ、クロモ、シャジクモなど多くの種類が再生し、系統が維持されてきました。しかし、この夏の猛暑で、給水用の井戸のポンプが故障してしまったことで、水槽に水がまかなえなくなり,大池由来の希少な水草が全滅してしまう危険性に見舞われました。

環境科学センターなどで見てね

そこで、系統保全していた水草のうち、大池産の水草としてシンボル的なオニバスとジュンサイについて、全滅のリスクを避けるため、これまで里山保全にご理解・ご協力いただいている茨城県霞ケ浦環境科学センター(土浦市沖宿)、茨城県自然博物館(坂東市大崎)、奥村組技術研究所(つくば市大砂)の3カ所に域外保全することにしました。

具体的には、干上がる前の保全水槽からオニバスとジュンサイを2~3株ほど採取して、別途用意した直径30センチ✕深さ28センチほどのポットに移植し、10日ほど涵養(かんよう)したポットを8月8日に各施設に運び入れました。域外保全地のうち、県自然博物館では園内野外施設の「自然発見工房」わきに置かせていただいています。

また、霞ケ浦環境科学センターの本館横にもあります。博物館や環境科学センターに行った際には、宍塚から「里子」に出しているオニバスとジュンサイをぜひ見ていってくださいね。(宍塚の自然と歴史の会 会員)

施設の補修・更新費34億円超 洞峰公園 つくば市、議会に示さず

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洞峰公園の新都市記念館

長寿命化計画で県試算

つくば市が県から無償譲渡を受ける方針を示している県営の都市公園、洞峰公園(同市二の宮、約20ヘクタール)について、園内にある体育館、新都市記念館、フィールドハウス、管理棟の4施設だけで、2024年度以降の維持管理、補修、更新費用などが合わせて34億円以上かかると試算されていることがNEWSつくばの情報開示請求で分かった。県が洞峰公園の各施設の長寿命化計画を策定するにあたって2016年度に調査を実施し、各施設ごとにライフサイクルコストとして算出していた。

情報開示資料によると、各施設のライフサイクルコストは4月に県からつくば市に提供された。さらに6月には補修費用と更新費用の算出根拠となる材料費や単価などが市に示された。

これに対し市は、6月の市議会全員協議会(全協)や7月の市民説明会で、施設の更新費用について見通しを示さなかった。市は議会などに対し、日ごろの維持管理費について年間約1億5100万円かかるとし、施設の修繕費用については80年の目標使用年数を示しながら、「今後、施設全体で想定される施設修繕費の想定額は年間約3500万円程度となる」などと説明していた。今後15~25年間で計約5億8000万円程度の施設修繕費がかかるという試算だが、この数字は、県が算出した公園施設のライフサイクルコストの中の補修費用などを積み上げただけで、最も金額が大きい更新費用は含まれていなかった。

県が長寿命化計画策定にあたって調査し試算した公園施設のライフサイクルコスト。左は体育館アリーナ棟の建物を維持保全するのにかかる試算、右は新都市記念館の試算

更新費用は、老朽化した施設の建築材料や設備機器を新しいものに取り替える費用。補修費用は、施設の大規模な手入れにかかる費用で、いずれも国の指針により長寿命化計画を策定する際に試算することが求められる。県は洞峰公園について、国の公園施設長寿命化計画策定指針や県県有建築物長寿命化実施基準に基づいて、施設の目標使用年数を80年と設定し、国のマニュアルに基づき施設を調査し、ライフサイクルコストを試算した。調査や試算に基づいて長寿命化計画を立て、国の補助金を活用して施設の改修や更新を実施する。

2016年度に県が実施した洞峰公園の調査では、各施設ごとに、建物の完成から50年や60年先の更新見込み年度までにかかる費用をライフサイクルコストとして算出している。ライフサイクルコストには、毎年かかる維持保全費用、5年に1回実施する健全度調査費用と、補修費用、健全度調査費用の計4項目がそれぞれ試算されており、各施設ごとにそれぞれ毎年いくらかかるかを算出している。

1980年に開園した洞峰公園は、プールとアリーナがある体育館、喫茶店やギャラリースペースがある新都市記念館などの施設が今年、築43年を迎える。県が算出した各施設のライフサイクルコストによると▽体育館のプール棟とアリーナ棟の電気・機械設備の更新見込み年度はいずれも7年後の2030年度で、市が無償譲渡を受けた場合、来年度から更新見込み年度の2030年度までにかかると試算されている維持保全・健全度調査・補修・更新費用の合計は約12億1700万円▽プール棟とアリーナ棟の建物の更新見込み年度は2036年度で、今後かかる費用の合計は約15億3200万円▽新都市記念館の更新見込み年度は2040年で、今後かかる費用の合計は約3億9700万円ーなどとなっている。

実際の修繕工事は、建物の状態や予算などを考えて行うため、長寿命化計画で算出したライフサイクルコストとは一致しない。ただし今後、施設の保全にいくらかかるかを調査し、見通した唯一の資料が県が算出したライフサイクルコストになる。洞峰公園にはほかにトイレ、倉庫、井戸などのほか、テニスコート、遊具、園路舗装、ベンチなどの施設や設備が数多くあり、これらを加えると今後かかる費用はさらに膨らむとみられる。

※県長寿命化計画策定資料(公園施設ライフサイクルコ スト算出根拠)より作成。2024年度以降かかる費用は、県が長寿命化計画を策定するにあたって試算した維持保全費用、健全度調査費用、補修費用、更新費用の合計

市が施設の更新費用を議会に示さなかったことについて、これまで市議会一般質問などで大規模修繕費用がいくらかかるかを明らかにするよう求めてきた飯岡宏之市議(自民党政清クラブ)は「(大規模修繕費用について)6月定例会で市は『確認中』と答弁し、最終日の全協でも教えてもらえなかった。この間、市と県とで(資料の)やりとりをしていたのに、なぜ全協で明らかにしなかったのか誠に遺憾。今後は議会に明らかにしてほしい」とし、「県が調査した時点と比べて現在は資材費が高騰しており、現時点で1.5倍以上の費用がかるのではないか」と話す。

これに対し、市公園施設課は「(更新費用については)施設の長寿命化計画を策定の上、国庫補助金を活用しながら施設の長寿命化を図っていきたい」としている。

差額4500万円の内訳は更新費や建物以外の修繕費など

一方県は昨年、パークPFI事業を実施するにあたって、17年度から27年度までで大規模修繕費が年平均8000万円かかるとしていた。市が今年6月、市議会に説明した施設修繕費の年平均の想定額3500万円程度と比べ、4500万円開きがあった。今回情報開示された資料でそれぞれの内訳を確認したところ、県の内訳には、市が試算した建物の補修費などのほかに、市が試算に加えていない建物の更新費と、建物以外のベンチや柵などの更新費などが含まれていた。

つくば市が県から無償譲渡を受けるにあたって、市は市内の建築士に建物の調査をしてもらい、指定管理事業者からの聞き取りと合わせて、修繕が必要な箇所を洗い出した。現在県は、体育館プール棟の雨漏り改修、天井材のボルトの締め直し、プール室内の暖房機器修理、アリーナ棟の空調機器修理、フィールドハウスの外壁レンガの修繕や防水対策などの修繕工事を実施中だ。修繕費用について県は計4000~5000万円になると県議会調査特別委員会で明らかにしているが、引き渡しにあたり現在不具合が生じている箇所の修繕にとどまっており、今回の県の修繕が今後、各施設の補修や更新工事費をいくら減らすことになるかは県も市も調査していない。

洞峰公園は自然林や洞峰沼を生かした筑波研究学園都市最大の都市公園としてつくられ、研究学園都市を南北に結ぶペデストリアンデッキの緑の帯に面する。園内の体育館と新都市記念館はいずれも、著名な建築家の大高正人(1923-2010)が設計した。筑波研究学園都市の名建築の一つで、体育館のプール棟は太陽熱、アリーナ棟は太陽光を利用するなど当時の先進的な技術を取り入れて設計された。新都市記念館は洞峰沼の上に乗り出して建っており、屋根の勾配は圧迫感のない自然な稜線を表現するなど、両施設とも自然と一体となった設計になっている。当時の建設・造成事業費は31億円という。(鈴木宏子)

喉によい桔梗湯《くずかごの唄》131

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イラストは筆者

【コラム・奥井登美子】

「モシモシ奥井さん。お宅の薬局に桔梗湯(ききょうとう)ありますか?」

「あるわよ」

「よかった。処方箋を送るからよろしくね」

コロナ旋風で、メーカーの薬の品切れが多く、小さな薬局は薬の調達で忙しい。漢方薬までが品切れに入ってしまった。

電話の彼女は東京在住の薬史学会の友達で、外国に留学した人。薬剤師のくせに、フランス語もドイツ語も自由にしゃべれるすごい人。薬の植物成分についても詳しい。昔、彼女に仏パスツール研究所を案内してもらったこともある。

「喉が痛い時、私は桔梗湯しか効かないの。ないと困るのよ」

「声患い。声が出ない時でも効くかしら?」

「桔梗根のほかに甘草も入っているから、甘味があっておいしいわよ」

私は漢方薬を飲む時、必ずお湯に溶いて、味と匂いを確かめながら慎重に飲む。匂いや味がその時の身体の調子に合わない時は、効かないので絶対飲まない。

彼女に言われて、私も試しに飲んでみた。甘味が喉に染みわたっていくのが分かる。幼児の時から喉痛を恐れている私に合う薬なのかもしれない。

漢方薬のうわさは味見して確かめる

関東大震災の時、新富町(東京都中央区)の家が焼け、母は妊娠中のおなかを抱え、銀座通りを横切って皇居前広場に逃げたという。銀座を横切る時に火の玉が飛んできて、危うく命を落とすところだったらしい。芝公園の中にできた臨時の産院で兄を出産したので、兄の戸籍謄本には「出生地芝公園内」と書かれていた。

大震災で身心ともにくたくたになった母は10年間子供ができなかった。震災で焼け出された人達が新しい住まいを求めて移ったのが、荻窪や阿佐ケ谷だった。私の父母も荻窪に引っ越して、私はそこで生まれた。田河水泡というノラクロ漫画家のお隣で、兄はノラクロ小父さんに遊んでもらったこともあったらしい。

幼児の時、私は法定伝染病のジフテリアにかかってしまった。当時はジフテリアに対応できる医者が少なくて、死ぬ子供が多かった。父は「10年目にやっと生まれた子供を死なしてなるものか」と、ジフテリアでお世話になった淀橋病院勤務医の飯島先生の自宅のお隣に引っ越してしまった。

医療情報が公開され、どんな薬が効くか分かる時代になったが、コロナ病の後遺症は多すぎて、まだまだ分からないことの方が多いらしい。味が分からなくなったり、喉が痛くて声が出ない。そういう時に、桔梗湯が効くといううわさが流れている。漢方薬のうわさは味見して確かめるしかない。(随筆家、薬剤師)

支払免除の19人から誤って給食費徴収 つくば市

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つくば市役所

経済的に困窮しているなどから学校給食費の支払い免除を受けているつくば市内の小中学校の就学援助認定者19人に対し、つくば市は22日、誤って7月分の給食費を徴収してしまったと発表した。

市教育局学務課によると、就学援助の認定は毎年6月までに申請を受け付け、7月に決定するため、4月から6月まで3カ月分の給食費については、保護者の口座から引き落とすなどし、認定決定後の8月に返金している。

7月以降は認定決定者に対して、給食費を口座から引き落とすのを停止したり、納付書を送るのを止めなければならないが、27人については教育局内で認定者の情報が共有されず、口座引き落としを停止するなどの手続きが漏れてしまったという。

市は8月31日、27人のうち19人から計8万1100円を引き落とすなどして徴収。その後9月4日に保護者の一人から市に連絡があり、発覚した。

市は、27人に謝罪の通知を出すと共に、実際に徴収してしまった19人に対しては至急、返金するとしている。

再発防止策として同課は、教育局内で情報共有し、さらに確認を徹底することで再発を防止しますとしている。

同市の給食費は小学1-2年生が月額4100円、3-6年生が4300円、中学生が4700円。就学援助の認定を受けている市内の小中学生は現在1925人という。

久しぶりのインドネシアで《文京町便り》20

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土浦藩校・郁文館の門=同市文京町

【コラム・原田博夫】9月初旬、インドネシア大学を訪問した。専修大学の研究グループが日本学術振興会の助成を受けた若手研究者ワークショップに、アドバイザーとして参加するためである。参加国は、日本、インドネシア以外に、韓国、台湾、モンゴル、フィリピン、ベトナムなど7カ国に及んだ。

私にとっても、コロナ禍で学会出張(米カリフォルニア州)を直前で取りやめた2020年3月以来の海外である。実はこの間に、海外旅行に関わるいろいろな申請手続きが変わっていた。

海外旅行保険やビザも、電子申請が推奨されているだけでなく、(従来は機内で記入していた)入国時の免税申告も事前の電子登録が推奨されている。これらの変更は接触機会をできるだけ削減する効果もあるが、利用者にはこれらの申請に結構なストレスと時間がかかる。現時点では利用者の負担の方が大きい。

実際の現場でも、すべての利用者が一様には準備・対応できていないので、搭乗や入国の流れは必ずしもスムーズではない。

2015年(前回)以来のジャカルタの交通渋滞は、さらにひどくなっていた。ジャカルタ首都特別州の人口(2020年9月の国勢調査)は1056万人。近郊を含めると3000万人を超え、東京に匹敵しているが、増加は止まらない。その結果、ジャカルタの交通状態は“世界最悪”との評もあるが、基本都市基盤と人口増加が整合していないことがそもそもの原因ではないか、と感じた。具体例を三つ挙げてみよう。

首都移転は「打ち上げ花火」?

第1に、交通信号(赤・青<緑>・黄)が少ないと感じた。市内の主要交差点には設置されているが、なかなかそうした交差点には遭遇しない。推測だが、こうした交差点は元は(交通信号を必要としない)ランドアバウト(環状交差路)だったのではないか。しかし現在は、ランドアバウトの数はわずかだと聞いた。そうすると、電力事情の逼迫(ひっぱく)もあるのか。

第2に、オートバイによるオンラインタクシーがすさまじいまでに普及していて、路上を縦横無尽に駆け回っていた。Go-JekやGrabというマーク入りのグリーンのウィンドブレーカを羽織ったオートバイが、地下鉄駅やバス停近くにたむろしていて、客からのオファーを待っている。その客というのは比較的若い世代で、男女を問わない。

第3に、最も驚いたのは、交通信号が設置されていない交差点や車線変更地点には、パオガと呼ばれる交通整理人(警察ではない)が道路の真ん中で、車の通行を誘導している。パオガは、誘導した車が方向転換に成功した瞬間に、ウィンドーを開けたドライバーから硬貨500~1000ルピア(4~8円)を、ドライバーが外国人の場合は紙幣2000~5000ルピア(16~40円)を手品のように受け取る。

この危険な仕事に就いている人々に、労災はおろか、いかなる意味でも保険・手当などがつかないことは明らかである。

こうした交通渋滞を解消するべく、ジョコ大統領は2019年8月に、首都をジャカルタからカリマンタン(ボルネオ島)に移すことを発表し、完成目標は2045年としているが、その進捗(しんちょく)ははかばかしくない。先行の類似案と同様に、単なる打ち上げ花火なのだろうか。(専修大学名誉教授)

ラグビー・ワールドカップ 勝ちにこだわる戦士たち《遊民通信》73

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【コラム・田口哲郎】

前略

ラグビーワールドカップフランス大会で熱戦が繰り広げられていますね。日本男子代表チームの特番を見ていました。2015年9月19日、対南アフリカ戦で日本は勝利し、話題となりました。その模様を追ったドキュメンタリーです。日本チームは強豪相手にあらゆるトレーニングを積み、戦略を駆使して、勝利を目指していました。

こう書くと当たり前に見えるのですが、よく考えると、スポーツに対する姿勢が見えてきます。スポーツは心身の健康のために楽しんで行うものだ、という考え方があり、その中でうまかったり、強かったりする人たちが、国の代表やプロ選手として活躍するのだという意識があります。そこには勝つことへのこだわりはあまり感じられません。

オリンピックも、参加することに意義があると言われ、勝利へのこだわりは覆い隠されています。しかし、ラグビーの代表チームは勝利への執念というものがすごかったです。それはラグビーのみならず、最近のスポーツ、とくに代表チームに課せられる義務のようなものになっているのかもしれません。

スポーツは「戦い」

さて、南アフリカ戦に勝利した後、南アフリカ代表の人たちは、日本チームに対して、とてもやさしく、さっぱりと接したそうです。まさにノーサイド、敵味方はなくなり、たがいを尊重する精神です。そこに、逆に、スポーツの「戦い」としての厳しさがあるのではないかと感じました。スポーツとはいえあくまで「戦い」として、「勝利」にこだわり、そしてそのために力をつくす。これがすべてで、「戦い」が終われば、日常としての人間の平和な気持ちを取り戻す。

日本人は、何ごとも美しくつくり上げようとします。ラグビーでも何でも技を極め、整ったフォーメーションでトライを取りにゆくといったように。でも、「戦い」は「戦い」なので、勝てばよい。なぜなら、試合は「戦い」だからです。

簡単な考え方をすれば、なぜスポーツをするのか、国の代表として戦うのはなぜか、という意味もわかってきて、スポーツマンシップというもののさわやかさも見えてくる気がします。勝ちにこだわるけれども、人間的にすばらしいことは両立でき、それを人類は「戦士」と呼んできたのかもしれません。

何はともあれ、日本代表の勝利を祈りたいと思います。ごきげんよう。

草々

(散歩好きの文明批評家)

筑波山麓の彼岸花と燧ケ池《ご近所スケッチ》6

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イラストは筆者

【コラム・川浪せつ子】お墓の周りに咲いているイメージの彼岸花。私が大好きなお花です。たくさん咲いている場所を探し、見つけた所は「燧ケ池(ひうちがいけ、つくば市沼田)」。ナビを使ってもたどり着けず、地元の方に教えてもらいました。昔からの農業用「ため池」のようです。

田んぼばかりの所で、住所がはっきりしないのですね。群生している彼岸花はもちろんステキなのですが、そばの古樹が素晴らしい! 樹齢どのくらいなのか? 私が訪れた2018年には、下の絵のように、枝が横に伸びていたのですが、最近、枝がダメになり伐採されたようです。残念。

農道から池の方向を見ると、彼岸花→古樹→筑波山となり、絶景です。ウロウロして、たくさんの写真を撮りました。

上の絵は、反対側から見た筑波山。こちらの風景も、心穏やかになる景観です。稲刈りが9割方終わったころですね。こんなショットに出会うと、本当に筑波山に来てよかったと思います。

ストーリーがないと描けない

今回、ちょっと苦戦。彼岸花って、クローズアップして描くのが、かなり難しいですね。なかなか筆は進まず、眺めてばかり。でも、どうしても描きたかったモティーフ。90%くらいできたけど、もう一つしっくりしない。

そして気が付きました。私は、絵の中にストーリーがないと描けない。そこで畑で活躍するトラクターを入れました。お父ちゃんにお弁当を持ってきた奥さんと子供も小さく。あと一息。

気分転換に昼ご飯を食べに行きましたら、その道中、なんと!このトラクターに出会ったのです。それも目の前で。神様が、ちゃんと描いて!って、エールを送ってくれたのだと思いました。(イラストレーター)

売上10万円を赤い羽根に 土浦きららまつりで手作り玩具販売

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筑波研究学園専門学校こども未来科の学生から寄付を受け取る安藤真理子土浦市長(左から3人目)

筑波研究学園専門学校の学生ら

筑波研究学園専門学校(土浦市上高津、野口孝之校長)こども未来学科の学生らが19日、土浦市役所を訪ね、同市共同募金委員会の会長を務める安藤真理子市長に「赤い羽根共同募金」として10万円を寄付した。今夏の「土浦きららまつり」に参加、イベントで子供たちと遊びながら作成・販売したおもちゃキットの売り上げで、「4年生になって初めて、対面で子供たちと触れ合える機会を持てた」とコロナ禍の学生時代を振り返りながら、浄財を手渡した。

同学科は保育士など幼児教育の指導者を養成する専門課程。4年生の菊池葵さん、飯塚真央さん、吉田仁美さんの3人が野口校長らと市役所を訪れた。

8月5日、6日の「土浦きららまつり」では、会場の特設テントで十数人の学生が参加して「レインボースティック」と呼ばれる玩具を手作りした。カラフルなシートを紐状にカットし、末端を接着しスティックに取り付けると、振ったり回転させたり、シャボン玉のような光彩を楽しんで遊べる。

子供たちと一緒に300セットを手作りし、玩具を使いこなす検定イベントを行ったほか、事前に用意した販売用の350セットともども完売した。菊池さんは「入学して初めてこんなおもちゃがあると知った。実際に子供たちと遊ぶ機会を持て、さらに喜んでもらえてよかった」と感想を述べた。

同校では毎年、共同募金に寄付を続けているが、校外イベントで得た売り上げによるのは初めて。安藤市長は「市も21年度からこども未来部というセクションを作ったところで、こども未来学科にはシンパシーを感じている。大切に使わせてもらいたい」と笑顔で応じた。(相澤冬樹)

『金色姫伝説旅行記』を準備中《映画探偵団》68

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イラストは筆者

【コラム・冠木新市】今から220年前の享和3年(1803)。常陸国の海岸で不思議な事件が起きた。球体の舟に乗った髪の長い異国の女性が漂着したからだ。舟には奇妙な記号が描かれており、女性は謎の玉手箱を手にしていた。この出来事は当時、瓦版となり「うつろ舟事件」として江戸中で話題になったという。

その後、この事件は、インドから流れて来て養蚕を伝えたという筑波・神郡の『金色姫伝説』と結びつき、現代ではUFO遭遇事件として知られている(コラム21=2021年7月14日掲載=参照)。

現在『金色姫伝説旅行記/つくばシルクロード2023』のア一トイベントを準備中である。不思議大好きな私は、15年程前から「金色姫伝説」と「うつろ舟事件」に興味を持ち、なぜ二つの出来事が一つに結びついたのだろうかと探ってきた。

すると「うつろ舟事件」を『兎園小説』で紹介した読本作家・滝沢馬琴の存在が浮かび上がり、馬琴作の『南総里見八犬伝』とも関連してくることが分かったのである。

実は「金色姫伝説」を知る以前、アヘン戦争時に日本人は何を考えていたかを立体紙芝居『北斗七星伝』として、葛飾北斎、滝沢馬琴、二宮尊徳などを取り上げたことがある。日本科学未来館や慶應大学や浅草のシアターなどで公演したが、そのときは「金色姫伝説」と結びついてくるとは予想だにしなかった。

ポランスキー監督の『チャイナタウン』

数年前、それを知ったとき、公開から50年近く経ち、古典として輝きを増しているロマン・ポランスキー監督『チャイナタウン』(1974)を思い出した。

時は1930年代後半。所は米カリフォルニア州ロサンゼルス。元警官で今は探偵事務所を経営するギティス(ジャック・ニコルソン)は、浮気調査を依頼される。調査を進めるうちに、水道局長が殺され事件に巻き込まれていく。ギティスは警官時代にチャイナタウンで過ごした。

劇中、度々チャイナタウンの話題が出てくる。けれども、画面上にチャイナタウンが出てくるのはラストシーンだけである。しかし 執事や庭師などに中国人の役者を配し、全篇にチャイナタウンの怪しい雰囲気が漂う。

さらに、街のダム建設話から、水利権をめぐる行政と警察と経営者との癒着問題が浮かび上がる。そして、殺人事件と水問題をめぐる複雑な人間関係の象徴がチャイナタウンであると徐々に分かってくる。

イベントなどで「金色姫伝説」と「うつろ舟」を同時に取り上げることは意外に少ない。民俗学的な伝説とSF的なUFOとを同じ舞台で語るのには、まだまだ抵抗があるのかもしれない。いや、そんなことよりも、「金色姫伝説」を探っていくと、映画『チャイナタウン』みたいな世界へとつながるのではと妄想してしまう。私の「金色姫伝説」の旅は続く。サイコドン ハ トコヤンサノセ。(脚本家)

フェミニズム・LGBTQ・障害者を扱うブックカフェ つくばに開店

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自分で選んだ本だけを販売すると話す山田亜紀子さん

安心してつながる場所を目指して

ブックカフェ「本と喫茶 サッフォー」が今年6月、つくば市天久保にオープンした。性差別からの解放を目指す「フェミニズム」、LGBTQなどの性的マイノリティを含む「ジェンダー」、障害者などをめぐる社会課題を提起する「福祉」など、大型書店では見つけにくいジャンルを中心に、絵本から学術書まで幅広く扱う。店主の山田亜紀子さん(49)は多様な人が安心して繋がれる居場所を目指している。

居場所が奪われている

山田さんは6年前まで、都内の書店で女性向けの書籍を扱うフロアの店員をしていたが、フェミニズムの本はなかなか売れなかった。「良い本はたくさんあるのに残念」と感じ、2017年に出版社「現代書館」(東京都千代田区)に編集者として転職。多くの人が親しめるよう、フェミニズム入門雑誌『シモーヌ』をつくってきた。

転職した頃から、性被害の経験をSNS等に投稿する「#MeToo」運動が世界中に広がった影響で、フェミニズムも注目されるようになった。一方で、運動に反発する動きも強くなり、それまでマイノリティと呼ばれる人たちにとって安心してつながれる場だったSNS上の空間が危険にさらされるのを目の当たりにした。「本を作ることも大事だけど、安心できる居場所をつくりたい」と思い、50歳になる今年、出版社を辞め、生まれ育ったつくばで、ブックカフェを出すことを決意した。

街中に小さい本屋がたくさんある東京とは違い、車社会のつくばは、ショッピングセンター内の大型書店に足を運ぶ人が多いが、そこにもジェンダーやフェミニズムの本は少ない。ジェンダーに関心のある人を含め、多様な人が気軽に来られる場所にしたいと、筑波大学や小中学校、障害者の地域生活を支援する当事者団体「つくば自立生活センターほにゃら」(川島映利奈代表)、障害者の就労を支援する多機能型事業所「千年一日珈琲焙煎所」(大坪茂人代表)などがある天久保地区に出店を決めた。

様々な人が安心してつながれる居場所にしたいとカフェも併設。1人で来店した人が、LGBTQ当事者であることを打ち明けてくれることもある。「おそらく安心して誰かとつながれる場所が少ないのだろうと思う。そのような居場所を守っていきたい」と山田さん。

奥がカフェスペース。テーブル席で軽食をとりながら、ゆっくり過ごすこともできる

マイノリティ同士が知り合う場に

昨年、現代書館で編集した『シモーヌVOL.7』では、「不良な子孫の出生の防止」を理由に、多くの障害者が強制的に不妊手術を受けさせられた旧優生保護法をめぐる、女性運動と障害者運動の葛藤を特集した。出産の強制に反対する女性運動と、胎児の障害を理由とした中絶に反対する障害者運動は、時に対立したが、女性だけに育児や介護を押しつける一方、障害者はあってはならないものとする社会を変えるべく、共闘してきた。

「強制的に不妊手術を受けた障害者らが全国各地で国を提訴しているが、そこでは女性団体と障害者団体が連帯して動いている。また、2006年に国連で障害者権利条約ができたときに、世界中から障害者が集まって打ち出したスローガン『我々ぬきに我々のことを決めるな』も、女性やLGBTQの運動に応用できるはず。それぞれに関心のある人たちが交流し、互いの運動を知ってもらえる場所にしたい」

トランスジェンダーたちを知って

現在、店内ではパネル展「トランスジェンダーのリアル」を開催中。トランスジェンダーの実際の姿を知ってもらうために、21年に当事者たちにより制作された無料冊子「トランスジェンダーのリアル」に載る当事者5人の写真とライフストーリーを展示したパネル展だ。同制作委員会によると、冊子は全国の自治体や学校で4万部配布された。パネル展も、自治体や大学など全国各地で開催されている。

店内で開催中のパネル展「トランスジェンダーのリアル」

「カフェに展示することで、普段関心のない人にも当事者の姿を見てもらえたら」という思いから、サッフォーでは、年内はパネル展示を続ける予定だ。(川端舞)

◆サッフォーはつくば市天久保1-15-11 アイアイビル104。問い合わせは電話029-811-9644。ホームページはこちら

懸案に見る茨城県とつくば市の距離《吾妻カガミ》167

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茨城県庁(左)とつくば市役所

【コラム・坂本栄】コラム139「上り坂の市と下り坂の県」(2022年8月15日掲載)では、つくば市と茨城県の考え方の食い違いを克服するため、「市は県から『独立』したら?」と提案しました。記事「意見相次ぎ審査継続へ 洞峰公園問題で県議会特別委」(8月30日掲載)を読むと、改めて県と市が置かれている状況と方向性の違いを感じます。

下り坂の県と上り坂の市

洞峰公園問題と県立高校問題を取り上げた139で触れた「つくば独立」論を箇条書きにしておさらいすると、こういうことです。

<洞峰公園問題での対立>

・茨城県:県立公園の運営を民間に任せて利益を出し、維持管理費を捻出したい

・つくば市:今の都市公園の形を維持すべきで、レジャー施設などは造らせない

<県立高校問題での対立>

・つくば市:人口増に伴い中学生も増加している⇒市内に県立高を新設してほしい

・茨城県:新設は県全体の人口減少に逆行する⇒既存高の学級増などで対応したい

<洞峰公園問題の背景>

・茨城県:県立公園内に民営レジャー施設を設けて少しでも稼ぎたい「貧しい県」

・つくば市:学園都市のシンボル的な公園に余計なものは不要と考える「豊かな市」

<県立高校問題の背景>

・大きな流れとして「下り坂」の茨城県:県全体の人口減・少子化が進んでいる

・県全体とは逆に「上り坂」のつくば市:TX効果もあり沿線の人口が増えている

こういった分析を踏まえ、「県立高問題は、県を当てにせずに市立高をつくば市がつくり、自分で解決したらどうか… また、洞峰公園問題は公園を買い取って市営公園にし、現状のまま市民に供したらどうか… 県と市が置かれている状況と方向が違うのだから、市は県から『独立』したら?」と提案しました。

貧しい県と豊かな市のズレ

周知のように、洞峰公園については県が市に無償で譲渡するという合意=無償という餌で釣り維持管理を市に転嫁=ができていますが、県議会が「待った」をかけました。その理由は冒頭のリンク先記事に出ているように、貧しい県と豊かな市の対立そのものでした。古参県議の言い分は「68億円の財産(洞峰公園の資産価値)を不交付団体のつくば市に無償で譲渡するのは疑問だ」に集約されます。

言い換えると、70億弱の価値がある公園(周辺は高級住宅地)を、地方交付税交付金(財政が苦しい自治体に国が配る一種の補助金)をもらっていない自治体(県内の不交付市町村はほかに神栖市と東海村)にタダでやるのはおかしい、つくば市は運動公園用地売却でもうけているのだから土地代を払わせろ―ということです。

下り坂の県の議員が上り坂の市の懐具合を見て、知事と市長の基本合意に文句を付けている図といえます。公立高校を県立にするか市立にするかの議論(問題解決のために私はコラムで市立高設立を提案)の構造も同じことです。

県南に政令指定都市を創る

そろそろ「つくば独立」論に移ります。簡単に言うと、つくば市が核になって周辺自治体と合併し、政令指定都市(要件は人口50万人以上)を誕生させ、多くの行政権を県から市に委譲してもらい、県とは違う方向性を持つ行政単位を県南につくったらどうかという構想です。実現すれば、茨城県の「へそ」は水戸市から新つくば市に移ります。

前市長の市原さんが提起した土浦市との合併による中核市(当時の要件は人口30万人以上、現在は20万人以上)づくりは、政令指定都市に向けた準備のプロセスでした。「独立」構想を実現できる豪腕市長の誕生が待たれます。(経済ジャーナリスト)

ホーム最終戦 引き分け つくばFC

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前半22分、つくばFCの青木(青のユニフォーム)が先制のゴール(撮影/高橋浩一)

関東サッカーリーグ1部後期第8節、ジョイフル本田つくばFC対東京国際大学FC(本拠地・埼玉県坂戸市)の試合が16日、つくば市山木のセキショウ・チャレンジスタジアムで開催され、2-2で引き分けた。つくばのリーグ成績は7勝4分6敗で10チーム中4位。これでホーム最終戦を終え、残るはアウェー1試合。最終節は10月1日、神奈川県サッカー協会フットボールセンター(かもめパーク)にて東邦チタニウムと対戦する。

第56回関東サッカーリーグ1部 後期第8節(9月16日、セキショウ・チャレンジスタジアム)
ジョイフル本田つくばFC 2-2 東京国際大学FC
前半 1-1
後半 1-1

つくばはこの試合、3-4-2-1のフォーメーション(※メモ)で臨んだ。前線はFW熊谷誠也を中心にMF鍬田一雅、FW恩塚幸之介が左右に並ぶ1トップ2シャドーの形だ。前線がワンツーやくさびのパスで中へ入ると、相手DFが絞って外が空くので、そこを使って左のMF青木竣や右のDF山崎舜介が攻撃参加する形だ。

先制は前半22分、恩塚とのコンビネーションで青木が相手DFの裏へ抜け出し、GKの脇を射貫いて決めた。「恩塚が左サイドで組み立てながら、いいところで裏へパスを通してくれたので、DFとうまく入れ替わり、簡単に流し込む形で決められた」と青木。

ただしここまで、つくばのチャンスの数は決して多くなかった。東国大は屈強なFWを前線に置き、ロングボールを頭でつないで攻め込んでくる。セットプレーになれば長身のDFがゴール前へ上がり、さらに脅威は増す。32分の同点シーンもこの流れだった。東国大のコーナーキックを一度はクリアするが、もう一度放り込まれたボールをセンターバック石井偉理亜に頭で合わせられた。

この得点で東国大は勢いを取り戻し、つくばが我慢する形で前半の残り時間は推移した。「先制した後でもっと畳みかけていければよかった」と恩塚。「ボールを持ったときは押し込めていた。相手のスタイルは分かっていたので、守備が下がりすぎずにしっかりと対応できた」と副島秀治監督。

後半のつくばは、前半以上にサイドが活性化した。「右は押し込む形が前半からできていたし、後半は相手守備が前から来ていて、左サイドに穴ができ始めていた。そこをしっかり突いていこうと指示した」と副島監督。

後半24分、恩塚のゴールで2-1と勝ち越す(同)

結果が出たのは右から。後半24分、ロングボールに山崎が反応して駆け上がり、中央で待っていた恩塚にラストパス。糸を引くようなミドルシュートが左サイドネットに突き刺さった。「DFがボールに意識を奪われているのを見て、気付かれないよう少し遅れて進入。山崎が顔を上げた瞬間にボールを呼び、ファーストタッチを決めて2タッチ目で振り抜いた」と恩塚。今季5つめのゴールだ。

これで勝利が決まったかに思われたが40分、フリーキックの場面でGK三沼慶太が相手選手と接触、イエローカードを受けてしまい、直後のPKを決められ再び同点。副島監督は「ボールに触れていれば問題はなかったが、積極的にチャレンジしたことは悪くない。残り時間であと1点決められるかどうかが、もう1つ上のレベルへ行くためのカギになる」と評した。

試合終了後、観客とタッチを交わす選手たち(同)

次節は4位と5位の直接対決になりリーグ戦は終了するが、さらにその先がある。10月20日から佐賀県で開催される全国社会人サッカー選手権大会だ。「ここ数試合安定した戦いができており、勝ち上がるチャンスは大きいと思う。最終節でいい成果を収めて全社へ乗り込んでいきたい」と副島監督は意気込む。(池田充雄)

【メモ】フォーメーションは、ゴールキーパー(GK)を除く10人の選手の配置。3-4-2-1はディフェンス(DF)3人、守備的ミッドフィルダー(MF)4人、攻撃的MF2人、フォワード(FW)1人という配置隊形をいう。

どうする?花火旅《見上げてごらん!》18

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イラストは筆者

【コラム・小泉裕司】煙火業界は、あっちの大会、こっちの大会と大忙し。旅行会社の花火ツアーも好調で、各地の花火会場は赤や黄のツアー旗にワッペンを胸に付けた行列が続く。その人混みをかいくぐり、プラチナチケットを手に観覧席に向かう。今回は、コラム5「…越後3大花火」(2022年8月21日掲載)で書いた「海の大花火大会」(新潟県柏崎市)の会場に到着するまでの「どうする?」お話。

午前11時、JR土浦駅改札口に到着するや、「列車事故のため、土浦駅から取手駅間は運転を見合わせています。復旧の見込み時間は不明です」のアナウンス。この告知がトラウマの読者も少なくないはず。

駅員に確認したところ、「1時間以上の遅れ、取手駅から上野駅方面は通常運転」とのこと。本来、11時25分土浦駅発で上野駅へ向かい、12時46分発「とき321号」に乗車。いったん長岡駅で下車し、ホテルへ荷物を置いてから、柏崎市の花火会場に向かう予定。往復乗車券と新幹線特急券は「えきねっと」の「チケットレス」で、在来線特急は紙切符で予約済み。

遅延に慣れない筆者の心臓はバクバク。「さあ、どうする?」。思いついた選択肢は次のとおり。

① 予約を変更し、運転再開まで土浦駅で待機する。

② 土浦駅まで送ってくれた家族を呼び戻し、その車で取手駅に向かう。

➂ ②と同様、家族の車で上野駅に向かう。

④ 自宅に戻り、新潟県までひとり車で向かう。

⑤ 中止する。

苦手な長距離ドライブ、しかもひとり

選んだのは、④の往復635キロのドライブひとり旅。花火をあきらめる考えなど毛頭ない。最大の理由は「自己完結」であること。家族の車で自宅に戻り、ガソリンを満タンにして、3本の高速道路をノンストップ、長岡市内まで4時間。宿泊ホテルに駐車後、長岡駅から信越本線で柏崎駅に17時50分到着。会場入りは18時20分。打ち上げ開始19時30分まで1時間の余裕だ。「花火を見る」に限れば、正解だった。

選択肢①の場合は? 新幹線予約を変更しようと土浦駅の駅員にたずねたところ、「ネット予約は駅窓口では対応できない。上野駅に着いたら電話で変更してほしい」と、渡された小さな紙切れには「えきねっとサポートセンター」の連絡先がプリント。早速電話したが話し中。この状況は終日続いた。つながったのは翌朝。かの常磐線は1時間20分後に運転再開したとの後日談だが、これでは上野駅に着いたところで、つながらず路頭(駅構内)に迷っていたに違いない。

車で長岡市に到着後、間に合わなかった信越本線柏崎駅までの特急券を払い戻そうと、並んだ長岡駅の窓口では「到着駅で手続きしてほしい」との案内。「花火大会で混雑する柏崎駅にたらい回し?」と切り返すと、「次の方どうぞ」と完全無視。不快な思いを残し、後日、サポートセンターと土浦駅窓口で払い戻しの手続きを完了。交通費に限っての収支は1,000円ほどの黒字で、苦手な長距離ドライブは、やはり正解だったのだろう。

以来、新幹線の予約は、割安な「eチケット」ではなく、「紙切符」に限ることにした。利用日間際に届く発券の催促メールが、少々わずらわしいのだが…。本日は、この辺で「打ち止めー」。「ドン ドーン!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)

よいボールペンを探す《続・気軽にSOS》141

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【コラム・浅井和幸】何人かで集まって軽い相談が始まります。相談というほどではなく、軽い情報交換程度のもの。例えば、ボールペンをなくしてしまったので、どこで買えばよいかな?という投げかけがあったとします。その投げかけに、Aさんは「コンビニで売っているよ」と即答します。Bさんは「〇〇画材屋でたくさんの種類を売っているから、そこで選んで買いなよ」と、いろいろ考えた後に答えます。

でも私だと、いつ使うの?とか、何に使うの?と、もうちょっと条件を絞るための質問をしてしまいたくなる癖があって、AさんとBさんはある条件下では正解だけど、今その提案は早急すぎないかと、違和感を持ってしまうのです。

もちろん、ボールペン程度の簡単なおしゃべりであれば、事務所に試供品があるから適当に持っていけと答えてしまいますし、むしろ大まかな質問に対して具体的に答えるほうが一般的なのだと思います。

しかし、真剣に悩んでいる人に対しても、このような場面によくぶつかり、私の中に違和感が長年ありました。例えば、よい勉強法ない?に対して、何の勉強とか、目的が分からないまま回答。例えば、風邪とかうつ病の対処法で、実際にどのような症状があるかを聞く前に回答する。

これら的が絞られる前の疑問に対する、具体的な回答は「人生を成功させるたった3つの方法」「これだけやればだれでもダイエットができる」というような本のタイトルが好まれることでも、日常的なやり取りで好まれるのだろうなと理解します。

もう少し具体的な条件を増やす

これらは、質問と回答がピタリとはまれば最短の解決となるでしょう。しかし、条件が大ざっぱなままなので、無駄に試行錯誤、トライアンドエラーの行動を繰り返すことになりかねません。具体的にしようと、疑問に対して質問を重ねすぎるのは、単なるウザい、面倒な奴となりかねません。(浅井は、面倒な奴に他ならないのですが)

しかし、あまりにも回答がしっくりこないことが多い場合は、もう少し具体的な条件を増やすことが必要なのかもしれないと頭の片隅に入れておきましょう。所在地を「茨城県」→「茨城県つくば市」→「茨城県つくば市二の宮」と絞り込むように。(精神保健福祉士)

研究者の愛があふれる「シダ展」 16日から 筑波実験植物園

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徳之島で発見した新産種「ムシャシダ」を解説する海老原淳さん=つくば市天久保、筑波実験植物園

国立科学博物館 筑波実験植物園(つくば市天久保)で16日から、シダ植物がテーマの企画展「シダ・ミュージアム―つくばシダ展」が始まる。同園が保有するシダ植物600種以上の中から、初公開となる近年発見された新種や絶滅の恐れのある希少種などを含む約200点が展示される。同園でのシダ展開催は19年ぶりとなる。

現在、世界中にある1万2000種余りのシダ植物のうち日本には約600種が生息しているとされる。一方で、野生のシカに食べられるなどして、約3分の1にあたる260種あまりが絶滅の危機にひんしており、環境省が定める「レッドリスト」に登録されている。

こうした状況の中で同園は、希少なシダ植物を絶滅から救うため胞子から培養し育てている。今回の展示では、保護の取り組みの様子が公開されるとともに、「タカサゴイヌワラビ」など絶滅危惧種に指定されている約80種を間近に見ることができる。

展覧会では、絶滅の危機に瀕するシダの保護についても知ることができる

また2018年に長崎県対馬で発見された新種の「ツシマミサキカグマ」や、今回の企画展を担当する同博物館植物研究部陸上植物研究グループの海老原淳さん(45)らが同年に鹿児島県徳之島で、日本国内で初めて自生するのを発見した新産種で、これまで台湾、中国、ベトナム、ミャンマーで確認されていた「ムシャシダ」など、直近7〜8年の間に見つかった新種・新産種を8種、展示している。

ほかにも、水分を含むとフィルムのように半透明に輝く、コケに似た「コケシノブ」や、江戸時代にも人気を博し、古くから園芸品種として愛好されてきたシダ植物で根や葉をもたないことが特徴の「松葉蘭」、見るだけでなく日本の食生活に根付いた「わらび」など食べられるシダ植物のレシピを「3分シダクッキング」という動画で会場で流すなど、ユーモアを交えながら、シダに親近感を覚える仕掛けも用意されている。

シダの調理動画も放映されている

企画展の担当者で同博物館植物研究部多様性解析・保全グループの堤千絵さん(46)は「シダ植物は地味なイメージがあるかもしれないが、着生することで高い木に登る。それだけでなく、落ちる雨水を集めるなど、シダは自然の中で賢く生きている。そんなシダ植物の多様な生き方は魅力的。より多くの人にその魅力が伝われば」と思いを語る。

海老原さんは「今回、筑波実験植物園で開催するシダ植物の企画展は19年ぶり。シダに詳しい方も、初めて接する方も、大人からお子さんまで楽しめるような構成を作った。ぜひ、シダの多様な魅力を知る機会にしてもらえたら」と、来場を呼び掛ける。(柴田大輔)

◆「シダ・ミュージアム―つくばシダ展」は9月16日(土)~24日(日)まで、つくば市天久保4-1-1 筑波実験植物園で開催。開園時間は午前9時から午後4時30分。料金は一般320円(税込み)、18歳以下と65歳以上は無料。期間中は「シダの多様性研究と保全の最前線」(16日開催)など専門家によるセミナーが複数予定されている。それぞれ定員制で、予約が必要なものもある。詳細はイベント特設サイトへ。

ツェッペリン伯号の模型など展示 地域再発見を イオン土浦で16日から

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イベントの案内

子どもたちに地域の話題を紹介し、空への夢を持ってほしいと、「飛行船と空飛ぶ人たち」と題した催しが16日からイオンモール土浦(同市上高津)で開かれる。20世紀初頭、土浦に飛来した世界最大級の飛行船、ツェッペリン伯号の模型2機が展示されるほか、筑波大の学生サークルが製作した人力飛行機が展示される予定だ。協力は「土浦ツェッペリン倶楽部」、「つくば鳥人間の会」。18日まで。

会場はモール1階の「花火ひろば」。長さ約3メートルのツェッペリン伯号の模型2機が展示される。実物の約80分の1の大きさで、1機は今年2月に完成した新しい模型だという。時間帯によっては土浦ツェッペリン倶楽部の会員が来場し、展示解説を行う。また、紙芝居「ツェッペリンが舞い降りた日」の実演が1日2回、午後1時からと午後3時から行われる。

人力飛行機は、筑波大学のサークル「つくば鳥人間の会」が作ったもので、人力飛行機の練習用コックピットやプロペラ、2005年から歴代の人力飛行機の機体図面も展示する。子ども向けの体験イベントとして、各日先着100人限定で、ストローを使って不思議な形の紙飛行機を作る工作体験が行われる。

30万人押し寄せ、流行語に

巨大なドイツの飛行船、ツェッペリン伯号が土浦に飛来したのは1929年(昭和4年)8月のこと。世界一周の途中に霞ケ浦海軍航空隊(阿見町)の霞ケ浦飛行場に寄港し、5日間停泊した。乗員、乗客は料亭「霞月楼」(土浦市中央)で歓迎を受けた。当時最先端の乗り物だった236.6メートルの飛行船を一目見ようと30万人の観衆が押し寄せたと伝えられ、「君はツェッペリンを見たか!」が当時の流行語となったと言われている。

イオンモール土浦では「土浦と茨城」の話題を紹介し、地元を再発見してほしいと「知るをたのしく。まなびの」と題したイベントを毎月実施している。「土浦ツェッペリン倶楽部」の堀越雄二さんは「一般の方に土浦にツェッペリン伯号が飛来したという大きな歴史があることを知って誇りに思ってもらいたい。子どもたちも模型と一緒に写真を撮って楽しんでもらい、町おこしの起爆剤になれば」と来場を呼び掛ける。(田中めぐみ)

◆イベント「飛行船と空飛ぶ人たち」はイオンモール土浦1階、花火のひろばで、16日(土)から18日(月・祝)の3日間開催。開催時間は午前11時から午後5時まで(受付は午後4時半まで)。

コインランドリーの女王《短いおはなし》19

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イラストは筆者

【ノベル・伊東葎花】

彼女は赤いポルシェでやってくる。

胸元で揺れる長い髪、体形がそのまま出るようなミニのワンピース。

右手にピンクの大きなバッグ。左手に車のキーをじゃらりと鳴らし、ヒールの音を響かせる。

ここは、町はずれのコインランドリー。客は1人暮らしの男ばかり。

誰もが彼女のファンだ。

彼女がほほ笑むと、ハートの矢が刺さったようにメロメロになる。

コインを入れる仕草(しぐさ)にさえ誰もがときめく。

「どうぞ」

彼女のために椅子(いす)を空けると、優雅に足を組む。

ヘッドフォンで音楽を聴き、リズムに合わせて体をくねらせる。

ああ、なんてセクシー。

僕らは彼女を、クイーンと呼んだ。

クイーンが来るのは月・水・金の午後8時。いつも時間ピッタリだ。

そしてそれは、金曜の夜だった。

いつものようにクイーンが来て、僕らを翻弄(ほんろう)させて出て行った。

僕はその日、興味本位でポルシェを追った。

こっちは原付バイクだし、追いつくはずもないと思ったが、ポルシェは意外とゆっくり走った。

そして古いアパートの前で停まった。

ここがクイーンの家? まさか、こんなボロアパートに住んでいるはずがない。

そう思ったとき、ポルシェのドアが開いて女が出てきた。

「え?」

それは、まったくの別人だった。

よれよれのスエット上下、無造作に束ねたぼさぼさの髪、サンダル履き。

クイーンはどこに行ったんだ?

ぼさぼさ女は、クイーンが持っていたのと同じピンクのバッグを持って、アパートの階段を上がっていく。

次の瞬間、赤いポルシェが消えて、古ぼけた軽自動車に変わった。

まるでかぼちゃの馬車みたいだ。魔法が解けたのか?

僕は首をひねりながら帰った。

月曜日、クイーンはいつものようにコインランドリーにやってきた。

僕は、金曜日のことを確かめたくて、ポルシェの鍵を隠した。

クイーンが音楽を聴いているときに、こっそり自分のポケットに入れた。

帰ろうとしたクイーンは、焦って鍵を探した。

「鍵がないわ。誰か知らない?」

時間がどんどん過ぎていく。

5分後、魔法が解けた。

ぼさぼさの髪、毛玉だらけのスエット、ノーメイクの平凡な顔。

取り巻きだった男たちは、あまりの変貌(へんぼう)ぶりにうろたえた。

僕がポケットから鍵を出すと、彼女は泣きそうな顔で出て行った。

ポルシェは、もちろん軽自動車に変わっている。

「何だ、アレ?」「普通の女だ」

男たちは、事態が飲み込めないまま帰って行った。

僕は罪悪感と、何とも言えない喪失感を拭いきれなかった。

水曜の夜、僕の原付バイクが、突然赤いポルシェに変わった。

鏡を見たら、上質なスーツと整ったさわやかなルックス。

理想の男になっている。

今度は僕の番なのか?

おそらく魔法は1時間余りで切れるのだろう。

さてどうしよう。

僕はとりあえずコインランドリーに向かった。

いつもは男ばかりのコインランドリーが、女子大生のたまり場になっていた。

彼女たちは、目をハートにして僕を迎えた。

                                (作家)

敵対関係から、ともに闘う仲間へ 《電動車いすから見た景色》46

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イラストは筆者

【コラム・川端舞】今、女性団体と障害者団体の共闘の歴史を調べている。1972年、母体保護法の前身である優生保護法において、重度障害がある胎児の中絶を認める改正案が国会に上程された。だが、女性団体と障害者団体が反対し、法改正は阻止された。

女性の社会運動であるフェミニズムの歴史を解説した荻野美穂の「女のからだ―フェミニズム以降」(岩波新書)によると、当時の改正案には経済的理由による中絶の禁止も含まれ、当初、フェミニズムの運動に関わる女性たちは、「産む・産まないは女が決める」という「中絶の権利」を主張し、中絶の禁止に反対した。これに対し、障害者たちは「胎児に障害があれば、中絶するのか」と厳しく問うた。

昨年出版されたフェミニズム入門書「シモーヌVOL.7」(現代書館編集)では、当時、障害者団体側であった横田弘と、女性団体側であった志岐寿美栄が書いた文章を掘り起こし、女性と障害者が互いに葛藤を抱えながらも、共闘関係になっていく過程を特集している。

「胎児の障害の有無により、中絶するかを決めるのは、今生きている障害者をも否定する」「障害児を産んだだけで、女性は社会から冷たい目を向けられ、我が子を殺してしまうまで追い詰められる」という血を吐くような両者の葛藤の末、実は互いを苦しめているのは今の社会構造だと思い至り、社会を変えるべく共闘していった。その結果、優生保護法の改正は阻止されたのだった。

マイノリティを苦しめる正体

現在、母体保護法では、胎児の障害を直接的な理由とする中絶は認められていないが、出生前診断で障害があると判定された胎児の多くは、「身体的理由又は経済的理由により母体の健康を著しく害する恐れがある」として中絶されている。

障害児として生まれた私は、どうしても障害のある胎児に感情移入し、中絶する女性に敵意を向けてしまいたくなる。しかし、障害児者はいないことを前提に多くの建物や制度が作られ、健常児の育児さえ、女性だけに負担を強いる社会を考えると、苦悩の末に障害のある胎児を中絶する女性だけを責めることはできない。

「障害児の誕生は避けるべき」「育児は女性がやるべき」という圧力で、女性の社会進出や障害者の生きる価値を否定し続ける社会を変えていきたい。この社会は多数派が都合のよいように作られている。現在もマイノリティ集団同士が敵対してしまっている現象が至る所で起きているが、彼らに生きづらさを押しつけているのは誰なのか、冷静に考えたい。(障害当事者)

洞峰公園を現地視察 県議会調査特別委員会

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当初グランピング施設建設計画があった洞峰公園の野球場を視察する県議会調査特別委員会の委員ら(左側)

県営の都市公園、洞峰公園(つくば市二の宮、約20ヘクタール)を地元のつくば市に無償譲渡する県執行部の方針を審査している県議会の県有施設・県出資団体調査特別委員会(田山東湖委員長)の委員らが13日、洞峰公園を現地視察し、県都市整備課らの案内で、野球場や体育館のプール棟とアリーナ棟、新都市記念館、フィールドハウス、冒険広場や洞峰沼などを見て回った。

野球場は当初、パークPFI事業者がグランピングやバーベキュー施設を建設する計画を立てていた。現地で県の説明を受けた県議からは「(公園の中の)狭いエリアということが分かった」「皆さんへの説明が足りなかったのではないか」などの意見が出た。

体育館のプール棟とアリーナ棟、飲食店やギャラリースペースがある新都市記念館、トイレや会議室があるフィールドハウスの視察では、市への譲渡に向けて、県が現在、雨漏りやタイルのはがれなど不具合箇所を修繕しているなどの説明が県担当課からあった。

緑豊かな公園環境が維持されてきたことについて県は「4000本の樹木があり、100種類の鳥類が観察されている。公園サポーターが5団体登録されていて、若い人からお年寄りまで、花壇をつくったり清掃活動をして環境が維持されてきた」などとと説明した。

視察の途中、つくば市の飯野哲雄副市長らも参加して意見交換が行われ、県議からは「議会で(パークPFI事業を)議決して1年もたたないうちにこういったことになってしまった。つくば市の心配もあるし、県の貴重な財産を無償であげていいのかという県民感情もある」(森田悦男氏)、「(体育館や新都市記念館などの)建物の機能をきちんと維持していくことが課題。(県が策定した)長寿命化計画では建物の更新に数十億円かかる。市としてやっていけるのか」(江尻加那氏)、「プールは冬も温水で、体育館は暖房。つくば市は移管後、学校のプールに使いたいという話もある。燃料費は(年間維持管理費の)1億5000万円の中に入っているのか」(中山一生氏)などの質問や意見が出た。

田山委員長は「グランピングやバーベキュー予定地は(公園の中の)狭い一部の用地だということが分かった。いい悪いは別にして、県民やつくば市民への説明が欠落していたんだと思う。(公園の維持管理費など)経費だけの問題で云々ではなく、市民感情としてどうなのかということもあったと思う。現在の(県と市との)話の進み具合も意識して、今後に向けて検討したい。現場を見て良かったと思う」など感想を話した。

委員らはこの日、前回の8月30日の委員会で継続審査となった洞峰公園のほか、民間譲渡が計画されている鹿島セントラルホテルの計2カ所を現地視察した。次回の委員会は25日開催される予定。(鈴木宏子)

「今」と向き合う若手作家14人 県つくば美術館で写真展

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主催団体代表で写真家の田嵜裕季子さん(中央)と、出展作家の浦邉俊考さん(左)、三橋宏章さん(右)

国内外で活躍する14人の若手作家による写真を中心とした作品展「ヴィジュアル・コミュニケーション展2023ーレジリエンス:不確実性のうちを生きる」が、12日から県つくば美術館(つくば市吾妻)で始まった。主催は市内在住の写真家、田嵜裕季子さんが代表を務めるビジュアルコミュニケーション研究会。田嵜さんが教べんをとる日大芸術学部で写真を学んだ卒業生らが参加する。同会による展覧会は2011年4月に始まり、今回で7回目を迎える。

これまで展覧会では、その時代の世相を映像で表現することに努めてきた。今回のテーマを「不確実性」にした理由を田嵜さんは「私たちの元には、AI、コロナ、戦争など次々に起きる問題が、多くの情報と共に毎日押し寄せ、まるで霧の中を手探りで歩いているような時代を生きている。今が『不確実』であるとあえて言うことで、この時代を誰もがたくましく生き抜くことができればという思いを込めた」と説明する。

会場には、戦争の記憶を写真で表現する菊田真奈さんの「安らかに眠ってください 過ちは繰返しませぬから」▽横になれないよう真ん中に肘掛けを付けたベンチなど公共空間の「排除アート」をテーマにした阿部隼也さんの「The Appearance of Spaces(ゼ・アピアランス・オブ・スぺイシス)」▽施設に入所した祖母と向き合う飯田茜さんの「Unsicherheit(ウンジヒャーハイト)」など全14作品が展示されている。

相対化、問いかけ

出展者の一人で写真家の三橋宏章さん(38)は、これまで東海村の原子力関連施設や東京都千代田区にある千鳥ケ淵戦没者墓苑など、社会的な問題を抱える風景を写真にし、発表してきた。今回展示するのは数年前から取り組む国立公園をテーマにした「風景、まなざし、国立公園」。釧路湿原や富士山、瀬戸内海、屋久島の森など6カ所の写真を展示している。

千鳥ケ淵戦没者墓苑に関心を持つ中で、同墓苑の植生を設計した造園学者、田村剛氏が、日本の国立公園の「産みの親」であると知ったのが、このシリーズに取り組むきっかけになった。その目的を三橋さんは「国立公園は『日本を代表する自然の風景地』として法律で政治的に定められた『日本』を表すもの。それを写真にすることで日本という国を相対化して見ることができるのではないかと考えた」と話す。写真中央に、三橋さんのカメラに背を向け壮大な風景に見入る観光客が映り込むのが特徴だ。「不確実性の高い現代で、人間や社会を超えた存在を求めているようにも見える。そう駆り立てるものを写真で表現したかった」と作品への思いを語る。

地方都市の文化とコミュニティーをテーマに作品を作る浦邉俊考さん(23)は、故郷の房総半島と、そこと歴史的なつながりを持つ紀伊半島を舞台とした写真6点を展示する。民俗学者・柳田國男が説いた「黒潮」の流れに乗って移動した人の営みに、二つの半島のつながりを見出すとともに「地域らしさ、幸せとはなにか」を問いかける作品だ。

社会に向き合うきっかけに

SNSやニュースに動画が増えるなど表現手段が多様化している中、主催団体代表の田嵜さんは「私たちは、わかりやすく短時間で説明された情報を見せられ、無意識に消費しているが、写真は、そこに立ち止まって自分で読み解くという側面がある。若い作家たちが向き合っている『今』に出会うことで、より主体的に社会に向き合うきっかけにしてもらいたい」と来場を呼びかける。(柴田大輔)

◆「ヴィジュアル・コミュニケーション展2023ーレジリエンス:不確実性のうちを生きる」は県つくば美術館で開催。会期は18日まで。開館時間は午前9時半から午後5時、最終日のみ午後3時まで。入場無料。18日は、国内外で開催されるフォトフェスティバルの企画等に関わるキュレーターの菊田樹子さんと参加作家によるトークイベントが11時から開催される。問い合わせはメールで。