筑波大学(つくば市天王台)は1日、放射性同位元素のニッケル63を含む分析機器、ガスクロマトグラフの検出器1台を、適正な手続きをとらずに誤って廃棄してしまったと発表した。
同大研究推進部研究企画課によると、誤廃棄した機器は縦、横、高さいずれも30センチほどの大きさで、大学キャンパス内の生物農林学系棟D棟の101実験室にあった。同棟の改修工事に伴い9月4~8日、長期間使用していない他の大量の実験機器と一緒に、同実験室の使用責任者であり同機器の使用責任者である教員が一斉廃棄した。
その後10月30日、同大の放射線管理委員会から管理状況の確認があり、翌31日、誤って廃棄してしまったこと、すでに溶融処理されてしまい回収が見込めないことが分かり、同大は同日、国の原子力規制委員会と県警に誤廃棄を報告した。
10月26日に同大生命環境エリア支援室に提出された産業廃棄物管理票(マニフェスト)によると、誤廃棄した機器は、9月13~16日にかけて産廃処理業者に廃棄物として回収され、10月7日には、破砕処理を行った上で、鉄くずはリサイクル業者が溶融処理するなど最終処分を終えていた。処分に際しては中間処分場で処理業者が放射線チェックを実施したが、放射線は検出されなかったという。
機器内のニッケル63は、ステンレスで覆われ遮へいされており、取り外しができない構造になっているという。同大は、処理過程の圧縮や破砕によって壊れる可能性はなく、人体や環境への影響はないと考えられるとしている。
誤廃棄した機器は2005年1月に同大が取得した。廃棄されるまで使用できる状態だったが、機器を使用していた教員が退職した後は、長期間使用されてない状態だったという。
本来は、機器の製造メーカーや放射性物質を扱う専門業者に処理を依頼すべきだった。誤廃棄の原因について同大は、廃棄にあたり確認が不十分だったこと、機器を使用していた教員との引き継ぎが不十分で、退職後は機器が長期間使われていなかったのに速やかな処分ができていなかったことが原因だとしている。
再発防止策として、放射性同位元素を含む機器について全学的に再点検を実施するほか、管理責任者に対し無断廃棄の禁止を徹底すると共に、その内容を記載したシールを目立つところに貼るなどとしている。
同大は「適正な手続きをとらずに誤って廃棄するといった事態を二度と起こさないよう、保管、管理に関して注意を要する機器のリスト化、学内における管理ルールの再徹底、教職員への再教育など、再発防止と適切な危機管理に努めて参ります」などしている。