「ファッションには自分を自由にしてくれる力がある」。そんな思いを込めて衣服を作るファッションレーベル・デザインオフィス「Design lab “Lights”(デザイン ラボ ライツ)」代表で、デザイナーの墳崎嵩史(つかざき・たかふみ)さん(38)の作品展が、28日からつくば市天久保のギャラリーYで始まった。
稲敷市出身の墳崎さんは、2014年に地元で同社を立ち上げ、以来、様々な素材を組み合わせて作る衣服によって独自の世界を表現してきた。「真っ白な空間に自分のやりたいことを表現できる」と語る同ギャラリーでの展示は5回目を数える。会期は11月5日まで。
今回のテーマは、螺旋(らせん)を意味する『スパイラル』と、寄せ集めて自分で作るという『ブリコラージュ』。前者には、迷いながらも少しずつ階段を上る墳崎さん自身の思いを、後者には、「世界にまだない新しいものを、すでに手元にあるものの中から作り出す」という強い思いを込めたと話す。
テーマ設定の背景には、アパレル業界で加速度的に広がる大量生産・大量消費の問題があると、墳崎さんは指摘する。「新作の衣服がすぐに廃棄されるか中古市場に回される」状況に直面し、「自分は何のために服を作っているのか、どこに向かっているのか」と、服作りへの疑問が膨らんでいたという。こうした中で思い至ったのが「少量でも納得できる一着を作る。無駄なものは作らない」ことだった。そんな、自身が抱く思いを表現したのが、余った素材や既存の服を活用し制作した今回の作品群だ。
シャツに開けた穴や裂け目から見えるよう裏地にビンテージ生地をあてがう、縫い合わせに伸縮の大きい糸を利用しシャツにしわをよせる、組み合わせた複数の襟をシャツの半身に縫い付けるなど、通常なら「失敗」と捉えられることを積極的に取り入れた。すでにある素材を利用し新しい価値を生み出すことで、素材の「再利用」に留まらない「ブリコラージュ」の世界を表現した。
自身が中学生の頃から好きだったという服の魅力について墳崎さんは「全部が正解であり、間違いがない」ところだと語る。「裏返しで着ても、穴が空いていてもいい。自分がいいと思った着方ができる。そんな、常識にとらわれない服に出会った時に、ふわっと心が軽くなった。自分を自由にしてくれるもの、それがファッションだと思っている」
地方に拠点、ロールモデルの一つに
東京でファッションを学んだ墳崎さんは28歳のときに地元の稲敷市で現在の会社を立ち上げた。間もなく10年を迎える。都市部が主となる業界で、拠点を地方に置くのはまだ珍しかった。「当初は若さもあって、周囲から『面白いね』と持ち上げられた。それも今は、プロとしてのサービスを評価されるようになってきた。これからも自分の感覚を信じて、周りの意見に左右されずに精一杯サービスを提供していきたい。地域ごとに、いろいろな働き方が増えるといい。自分もそんなロールモデルの一つになれたら」と思いを語る。
実務としてファッション、デザインに携わる一方で、作品展は2018年から毎年開催してきた。展示への思いを「周囲に楽しみにしてくれる人もいるし、自分のための展示でもある」と語ると共に、「僕にとって作品作りは自由への、人生を通じての挑戦。ファッションは自由への入り口ですから」と強調。「自分から何かを打ち出していくことは、自分の人生をデザインしていくこと。積極的に人生を生きることで、自分が感じている楽しさやワクワク感で周りにいい影響を与えていけたらうれしい」「会場には毎日いるので、いろいろ聞いてもらえたら」と来場を呼び掛ける。(柴田大輔)
◆墳崎嵩史さんの作品展「 “SPIRAL” bricolage(スパイラル ブリコラージュ)」は10月28日(土)から11月5日(日)まで、つくば市天久保1-8-6 グリーン天久保201、ギャラリーYで開催。開館時間は午後1時から午後7時。最終日は午後5時閉館。入場無料。詳しくはギャラリーYのホームページへ。