金曜日, 12月 26, 2025
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パリパラ柔道銀メダリスト 半谷さんに名誉卒業生の称号授与 筑波技術大

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在校生らに自身の経験を語る半谷静香さん

パリ2024パラリンピック視覚障害柔道女子48キロ級J1(全盲)クラスで銀メダルを獲得した半谷静香さん(36)に、母校の筑波技術大学(つくば市天久保、石原保志学長)が24日「名誉卒業生」の称号を授与した。半谷さんは「(4年後の)ロス大会を目指したいが、まずは2年後に日本で開かれるアジア大会出場が目標。自分が競技をすることを通じて障害への理解、啓発につなげたい。また障害の当事者とサポートする人の両者が共に居心地の良い空間をつくれるよう、追求していきたい」と意欲を語った。

筑波技術大は、聴覚と視覚に障害のある学生を対象とした国内唯一の国立大学法人。同大の「名誉卒業生」は、1998年の長野パラリンピックと2006年のトリノパラリンピック女子バイアスロン視覚障害者の部で金メダルを取った井口深雪さんに続いて、半谷さんが2人目。

石原学長に技を仕掛ける半谷さん

半谷さんは福島県いわき市出身。地元の中学で柔道を始め、筑波技術大に入学し視覚障害者柔道に転向した。大学時代は柔道に打ち込む傍らで、友人たちと筑波山を登ったりするなど学生生活を楽しんだ。2010年に初めて出場した国際大会「広州2010アジアパラ競技大会」の女子52キロ級で3位に輝き、2年後のロンドンパラリンピック女子52キロ級で日本代表に選出された。パリ大会は4大会連続パラリンピック出場となり、自身初のメダル獲得となった。

競技をする上で大切にするのが、自身の体や思いを「言語化」することだと話す。目が見えないため、他の選手や自分の動きや状態を鏡や動画で確認できない。動きや状態を、的確な言葉で指導者と伝え合う必要があるからだ。「目が見える人と、見えない人が同じゴールを目指す上で、欠かせないこと」だと話す。

今後については、競技を通じて学んだ『言語化』への理解を生かし、「見えない人や、見えにくい状態の人がもっとわかりやすく学べる環境を整備していきたい」と語る。

「名誉卒業生」を授与され写真撮影をする半谷さん(一列目中央)。左隣は石原学長

今できることを全力で

式典後に同大春日キャンパスで開かれた講演会では、厳しい減量で体が追い込まれる中、「周りのアドバイスに従い、試合2日前に休んだことでベストパフォーマンスを出せた」などパリ大会での思い出を語った。在学生に向けては「視覚障害の当事者は理不尽なことをたくさん味わっていると思うが、必ず解決する策はある。状況を分析し考えることとで立ち向かえる。今できることを全力で行うことが大切」などと、障害に向き合いながら力強く社会で生きていくための思いを語った。(柴田大輔)

「目標水準に」ドライバー74人応募 公共ライドシェア つくば、土浦など4市

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来年1月下旬から公共ライドシェアが実施される「つくば・土浦エリア」の桜ニュータウン

来年1月下旬から運行

つくば、土浦、下妻、牛久の4市が、バスやタクシーなど公共交通の確保が困難な4エリアで、来年1月から運行を目指している公共ライドシェア(10月1日付)について、自家用車を使って有償で乗客を送迎する一般ドライバーを10月から募集したところ、今月19日までの1カ月半で4市全体で74人の応募があり、目標の76人をほぼ達成した。実施を呼び掛けたつくば市総合交通政策課は「まずまずの水準ではないか」としている。

ドライバーが確保できたことを受け、来年1月下旬から運行をスタートさせる。

エリア別の応募者は、①つくば市桜ニュータウンと土浦市天川団地周辺を出発してつくば駅など4カ所に行き、平日朝と夕方などに運行する「つくば・土浦エリア」は目標41人に対し応募39人➁筑波山中腹からふもとまで行き、夕方などに運行する「筑波山エリア」は目標と同じ15人③下妻市の南側で日中などに運行する「下妻エリア」は目標と同じ3人④常磐線沿線などを除く市全域で朝と日中などに運行する「牛久エリア」は目標と同じ17人。現在「つくば・土浦エリア」のみ若干名募集し、他の3エリアは募集を打ち切っている。

ドライバー74人の内訳は男性65人(87.8%)、女性9人(12.2%)。年代別は20代が8人(10.8%)、30代が10人(13.5%)、40代が14人(18.9%)、50代が22人(29.7%)、60代が17人(23.0%)、70歳以上3人(4.1%、タクシーなどが運転できる2種免許所持者)。ドライバーとして当初、通勤・通学のため家族を毎朝送迎している主婦(夫)や定年退職者などの応募を期待していた。実際の応募者は男性が9割近くを占め、50代が最多となった。応募者はオンラインでの面接、講習受講、教育研修などを実施の上、ドライバーバンクに登録される。

一方、利用方法は、1月下旬までに開設するインターネットの特設ページから登録してもらい、スマートフォンやパソコンで予約できるようにする。乗車料金はエリアごとに異なり、「つくば・土浦エリア」は事前予約(前日の正午までに予約)は1回600円、直前予約(前日の正午から当日30分前までに予約)は800円。「筑波山エリア」はいずれも1000円。「下妻エリア」は事前予約700円、直前予約1000円。3エリアいずれも小学生は半額、未就学児は無料。「牛久エリア」は700円、小学生は600円、未就学児は無料など、エリアごとに異なる。支払い方法はスタート時は、当日、降車時に現金またはキャッシュレス決済のペイペイで支払う。3月末までには予約時にクレジット決済もできるようにする。

利用の周知については各エリアごとにそれぞれ実施し、地域住民が利用対象となる「つくば・土浦エリア」の桜ニュータウンでは来年1月と2月に計3回、説明会を開催する。観光客が利用対象の「筑波山エリア」は、観光案内所、ホテル、旅館、ケーブルカーやロープウエイの案内窓口などに市がちらしを持参し説明などするという。(鈴木宏子)

【追加】下妻、牛久市の最終的な運賃の分類はそれぞれ最新情報の確認が必要。

【訂正】ドライバーの当初想定の一部を訂正しました。

餅の焦げ目《続・平熱日記》172

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絵は筆者

【コラム・斉藤裕之】薪(まき)ストーブは柔らかく家全体を暖めてくれる。また、コトコトと煮物をするのも得意だし、焼き芋も焼ける。意外なところでは、部屋に干した洗濯物もよく乾く。そして、私の朝の楽しみはストーブの天板で餅を焼いて食べること。市販の切り餅をふたつ。

餅は乞食(こじき)に焼かせろというが、火鉢と違って直接火にさらされてないストーブの上では、それほど頻繁にひっくり返さなくても大丈夫。そろそろいい感じになってきたころに、もうひと手間。火ばさみでちょいとつまんで、ストーブの中のおき(炭の様な状態)になったところに数秒かざす。

すると、いい焦げ目がついて餅はプーと一気に膨らむ。砂糖にちょっと醤油を垂らした砂糖醤油(じょうゆ)でいただく。すると、この焦げ目が何ともいえない風味を醸し出してうまい。

例えばあれだな。森進一さん。よく物まねされる、歌声とも吐息ともつかぬ、歌い切った後の声もなくなって残る嗚咽(おえつ)のような、あれ。あれと餅の焦げ目は似ている。声とも味とも言えない、でもないと物足りない秘密の成分。うなぎ屋の秘伝という継ぎ足しのたれも。

今年から餅つきを再開

昨年は餅をつかなかった。今年はどうしたものかと…。そこに、「お餅つきはいつ?」と長女からのメール。こちらから誘うことはあっても、催促されたのは初めてだ。コロナ禍が開けた一昨年、孫のためにと餅つきを再開したのが布石となったようだ。恐らく、物心のつき始めた子供らに餅つきをさせたいということではないだろうか。ということで、今年から餅つきを再開することにした。

このご時世だからこそ、住宅街で餅をつく光景が年末年始の当たり前の風景になっていいと思う。餅つきはみんなを笑顔にする。老若男女、知らぬ同士も杵(きね)を持って餅をつけば、自然と息を合わせて言葉を交わす。みんなでワイワイ。クリスマスもハロウィンもいいけど、餅つきいいよ! そして、そろそろ次世代にバトンタッチ。今年は段取りを子供たちにしかと伝授しよう。

「きたのまちではもう悲しみを暖炉で燃やしはじめてるらしい…」。しかし、今年もいろんなことがあった。でもほとんど忘れている。忘れられるということは幸せなことである。燃やすほどの悲しみもなかったが、この節は請求書や領収書も電子化されて手紙の類がとんと来ないので、燃やせるものも少なくなった。

そんなことを思いながら餅を食べていたら、口の中になにやら違和感。やれやれ、餅に銀歯を持っていかれちまった。醤油と砂糖と焦げ目の味に混ざって感じる齢(よわい)。そろそろ焦げ目のついた絵が描ける齢となることを願う。(画家)

一人親世帯の子に歯ブラシを寄付 土浦の歯科医 山内隆弘さん【ひと】

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院長の山内隆弘さん

土浦市千束町の歯科医院「千束町歯のクリニック」が2020年から毎年、土浦市を通じて市内の一人親世帯に子ども用歯ブラシを寄付している。

同クリニック院長の山内隆弘さん(52)は「欧米の研究でも歯科疾患への罹患率と経済状況は相関関係があると分かっている」とし、一人親世帯は経済的な問題を抱えやすい。さらに親が働きに出ることで子どもにかけられる時間が限られることから「優先順位として、歯科医院が後回しになりがち。来院できなければ、歯科医である我々は(歯の問題に)介入できない。歯ブラシの提供は、違った角度からの問題への介入になると思っている」と寄付活動の意義を説明する。

コロナ禍がきっかけ

山内さんは「活動のきっかけはコロナ禍」だったと話す。「クリニックの開業日が、緊急事態宣言が初めて発令された日だったんですよ」と振り返る。開業したのは2020年4月。同市千束町に個人歯科クリニックをオープンさせようと準備する中で、新型コロナウィルス感染が急拡大した。準備していた内覧会が中止を余儀なくされるなどし、「こんな状態になるとは思いもしませんでした」と当時の混乱を思い出す。

千葉県出身の山内さんが大学を卒業して勤務したのが土浦市内の歯科医院だった。24年の勤務を経て独立し現在のクリニックを開業させ、15人のスタッフと働いている。大きな窓から外の光が注ぎ込む室内は「歯医者へのネガティブな雰囲気をなくして、色々な人が来やすくしたい」という気持ちでデザインされたものだ。子どもも親しみやすいよう、山内さんはアニメのキャラクターがプリントされたシャツを着る。「地域に根差し、長く続けていける歯科医院にしたい」という思いから、クリニックの名前に所在地の「千束町」を冠した。

開業当初、コロナ禍の中で「外出自粛」が叫ばれていた。地域には、歯医者に行きたくても行けない人がいた。一方で、新型コロナの感染予防に口腔ケアが有効だとされた。歯科医として何ができるのかを考えた山内さんが市に持ちかけたのが、歯ブラシ1000本の寄付だった。

市と相談して2年目からは、経済的な問題を抱える市内の一人親世帯の子どもを支援の対象にした。年々、寄付する本数は増え、今年は2011本になった。歯ブラシはクリニックで購入し、活動に賛同する企業から寄せられた歯磨き粉などを付けている。丁寧に施されたラッピングは、忙しい業務の合間にスタッフが手作業で行っている。

クリニックの外観

嫌がる子には磨く順番を決めて

子どもに向けて山内さんは「虫歯の細菌が口に定着してしまうのが、おおよそ1歳半から2歳10カ月までといわれている。離乳の時期から定期的にケアしていくことが大切」だとし、歯磨きを嫌がる子どもへは「磨く順番を決めてあげる」ことを勧める。「例えば右のほっぺ側から左側へなど、ルートを決めてあげると伝わりやすい。細かい磨き方はいろいろあるが、同じ場所だけ磨くのはだめなので、まずは順番を決めてあげると磨き残しがなくなる」と言う。

また山内さんが繰り返すのは「健康寿命を伸ばすためにも、定期的に口の中をケアすることが大切」ということだ。「全身の健康は口から全てが始まる」と言い、「放っておくと、加齢とともに歯周病が進行し歯は抜けていく。定期的に歯をケアすることで、(衰えの)角度をゆるめていける。健康寿命は伸びていく」。

山内さんは現在、市内の内科医と連携して他の疾患への対応にも臨んでいる。「歯周病の病原菌が、脳疾患や脳血管障害、血管、心臓の病気にリンクしている。(歯科と内科の)両方をコントロールしないと病気は良くならない」と話す。

継続していけるように

「土浦は、大学を卒業してすぐに縁があった街。再来年で土浦で働き始めて30年になる。クリニックの開業は、土浦への感謝と恩返しの気持ちがある」と山内さんは言う。「患者さんに対して、安心・安全で、満足度が高い治療を継続できる医療機関であることが責務。地域の歯科医療に携わり続けられるよう、私一代で終わらせるのではなく継続していけるようにしていかなければいけないと思っている」と今後への思いを語る。(柴田大輔)

自然災害と農協の役割を考える《邑から日本を見る》174

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手つかずの被害水田=秋田県由利本荘市(写真は筆者)

【コラム・先﨑千尋】元日の能登半島地震で始まった2024年はまもなく終わる。「異常」気象が当たり前となり、酷暑の夏だった今年。そして、いつどこで起きるのかが分からない地震と豪雨。まるで昨今の世情をあざ笑うように思える。能登半島では9月に記録的な豪雨となり、河川が氾濫し、豪雨による土石流災害が各地で発生し、仮設住宅も床上浸水。2次被害を被った。

豪雨被害地・秋田を訪問

私は能登半島には足を運んでいないが、今月初めに豪雨災害を受けた「秋田しんせい農協」管内を歩いた。7月末に秋田、山形両県を襲った記録的大雨により、秋田県での農林水産関係の被害額は185億円を超え、犠牲者も出ている。

同農協管内では2000ヘクタールの農地が冠水、浸水して土砂・流木が流入し、全耕地面積の26%になった。被害額は78億円に達し、その他に農協のカントリーエレベーターが稼働できなくなるなどの被害も出ている。

私が住んでいる旧瓜連町の面積は1466ヘクタールだから、それよりもはるかに広い。水害発生時は水稲の出穂時期。水路が崩落し、冠水しない水田でも水が入らなくなった。農協では水田に入水するためのポンプ・発動機を手配し、いもち病防除のために、ドローンによる農薬散布を実施した。

農協ではさらに、国や県、国会議員などあらゆる方面に支援を要請し、激甚災害指定を受けた。復旧工事には95~97%の補助を受けられるというが、いつ始まるのか、いくらかかるのか、見通しが立っていないと、同農協の佐藤茂良組合長は話している。

被災地に入り、被害を受けた山間部の農家の話も聞いた。「土石が水田に入り、農道や水路も寸断され、修復は個人ではできない。被害箇所が多すぎて、由利本荘市役所は何もしていない。復旧には数年かかるだろうが、その間、収入は絶たれる。個人負担もあるが、出せない。土地は本体国のものなので、修復は国がやるべきだ」などの話が聞けた。

農産物自給運動の発祥の地

今年は夏から米価が高騰し、民間業者がコメを買いあさり、農協への出荷が大幅に減っているという。しかし、同農協管内では秋の集落座談会で「困った時こそ助け合いの精神。今こそ協同組合の真価を発揮する時だ。コメを1俵でも多く農協に出荷してくれ」と訴えた。そのため、管内からの流出は出荷契約数量の2%程度にとどまったという。

同農協は合併して28年たつ。その間、米価は半分に下落した。それに合わせるように、管内の農地、農家戸数、組合員が減り続け、農協の販売取扱高も半減した(コメは6割減)。そこで農協では、組合員のために農協をなくしてはならないと考え、支店の統廃合など様々な効率化を図った。その結果、赤字だった営農経済部門を黒字化し、出資配当だけでなく利用高配当もできるようになった。

効率化戦略が一段落したので、農協では成長戦略に舵を切り、地域農業ビジョンを打ち立て、そのための体制も整えた。そうした中での今回の大災害。私はコメの販売戦略、有機農業と学校給食への取り組み、地域の消費者と結びつく直売所の拡充、自給運動など、生活視点での活動の展開を組合長に提案した。ここはかつての農産物自給運動の発祥の地─合併前の「仁賀保町農協」なのだから。(元瓜連町長)

主力 長谷川の穴埋められず ロボッツ、長崎に敗退

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チームトップタイの17得点を挙げた茨城ロボッツの駒沢(左から2人目、青いユニフォーム)=撮影/高橋浩一

男子プロバスケットボールBリーグ1部(B1)の茨城ロボッツは21日、水戸市緑町のアダストリアみとアリーナで長崎ヴェルカと対戦し75-91で敗れた。茨城は2026年開幕の最上位リーグ「Bプレミア」への参入を決めたばかりだった。長崎も参入が決まっている。今季の茨城の通算成績は7勝16敗で東地区6位。22日は同会場で再び長崎と対戦する。

2024-25 B1リーグ戦(12月21日、アダストリアみとアリーナ)
茨城ロボッツ 75-91 長崎ヴェルカ
茨城|20|25|15|15|=75
長崎|23|25|13|30|=91

第1Q、ドライブで攻め込むモサク・ダミロラ

茨城は第3クオーター(Q)までは長崎と互角の戦いをしていたが最後に突き放された。60-61で迎えた第4Q、長崎はマーク・スミスやジャレル・ブランドリー、馬場雄大らが得点力を発揮し前半5分間で16点を挙げ、この間に茨城はわずか2点しか奪えなかった。その後は遠藤善の3点シュートやジェハイヴ・フロイドのバスケットカウントなどで追い上げるがなかなか点差は縮まらず、最後は5ファウルに追い込まれた。

第2Q、フロイドのダンクシュート

「4Qの頭から相手が守備の強度を上げてきて、自分たちはそのプレッシャーで攻撃のリズムが悪くなり、守備も崩れてしまった」と茨城、中村功平の談。クリス・ホルムヘッドコーチ(HC)は、相手の得点源であり28点を奪われたスミスへの守備を例に挙げ「彼に対しては選手全員が責任を持って守らなければならないと話していたが、マークを受け渡す場面で得点を許してしまった。特に4Qは、全員がそこに集中してプレーすることができていなかった」と評した。長崎が古巣のフロイドは「相手がフィジカルに戦ってくることは分かっていて準備していたが、それを40分続けられなかった。明日は意識を集中して試合に勝ちきりたい」と話した。

第2Q、チェハーレス・タプスコットが相手をかわしてシュートに入る

茨城はチームの要である長谷川暢がアキレス腱断裂の重傷で前節からチームを離脱しており、代わりを務めるポイントガードが課題だった。この日は今季新加入の駒沢颯が前節に続いてスターターを務め、約20分間コートに立ち、3点シュート5本を含む17得点と4アシストの活躍。「前節の北海道戦ではガード陣の得点が少なかったので、今日はオープニングから積極的にシュートを打っていった。明日も常に前を向いてアタックしていきたい」と意気込んだ。後は駒沢がベンチに下がった時間帯をどうするかだが、平尾充庸はまだ本調子ではなく、久岡幸太郎もこの試合ではミスが多かった。

鶴巻啓太と、昨季まで茨城に在籍した山口颯斗のマッチアップ

「長谷川とエリック・ジェイコブセンという主力2人が長期離脱中。いままではこういう場面で選手が下を向きがちだったが、今は不利な場面でも戦うことを止めないチームになってきた。ただ、成長はしているがまだ完璧ではない。全員が共通認識のもと責任を持って戦い、ロボッツがBプレミアの舞台にふさわしいチームであることを証明したい」とクリスHCは先を見据える。(池田充雄)

第3Q、遠藤がドリブルで攻め込む

野山に消えた子たち 「ひきこもり」その5《看取り医者は見た!》32

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写真は筆者

【コラム・平野国美】今風に言えば「ひきこもり」とか「不登校」と呼ばれるであろう子供たち。通学路から外れ野山に消えていった子供たち(12月6日掲載)。元気であれば齢90前後になる彼らの人生はその後どうなったのか? 就職はできたのか? 社会からドロップアウトした状態で過ごしたのか?

私の患者さんの話は意外でした。「当時、貧しさが理由で学校に通えなかった子が多くいました。そうでなく、勉強が嫌いなのか、みんなと群れるのが苦手なのか、野山に消えて行く子が、私の周りに3名ほどいました。3人とも普通に大人になり、うち2人は社長になりました」

私には「不登校」「ひきこもり」と「社長」に違和感がありましたが、この患者さんの話には驚きました。

「社長と言っても、株式を上場するような一流会社じゃないですよ。家族経営の土木や建築会社を立ち上げ、自分も現場に出て朝から晩まで働き、いつの間にか仲間を増やし、会社の看板を掲げていた。あの2人は頑張ったんだ」

なりふり構わず働く姿は想像できました。しかし疑問も湧きました。「小さい会社でも帳簿付けなどの能力が必要と思うのですが、学校に行かないことで読み書きや計算にハンディがあるのに、独学で何とかしたのでしょうか」

私の患者さんは笑いながら、「いや、2人とも読み書きはできなかったな。親戚の人や妻が事務的なところはやっていた。彼らは肉体的に働いていた。見ていてすがすがしかった」

みんな、呼んでくれてありがとう

患者さんは話を続けます。「70歳のとき同窓会を開いたんです。1人は欠席でしたが、もう1人は黒塗りの運転手付きの高級車でやって来ました。会の中で、1人ずつ近況を報告する時間がありました。彼は決して偉ぶる感じもなく、子供のころの表情で、みんなの前で話そうとするのですが、うまく話せないんですよ。口下手でね」

「やっと出た言葉、『オレ、学校にほとんど行ってないのに、みんな、呼んでくれてありがとう』と言うのが精一杯なんですよ。恥ずかしそうにしているから、そばに行って、お前、頑張ったなって肩をたたいてやったら、泣いて喜んでいた」

私の友人でも、彼らのその後を聞くと、意外な活躍をしている人がいます。バランスよく規格にはめようとすると、外れてしまう子供もいるのです。患者さんから聞いた規格外の人たちの生き方を見ていると、興味深いものがあります。(訪問診療医師)

墳丘の輪郭を探る 土浦 常名天神山古墳から大量の埴輪片

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前方部のトレンチで元来の土地の形状について学生が説明=土浦市常名、常名天神山古墳

土浦市常名(ひたな)の市指定史跡、常名天神山古墳で21日、発掘調査に当たった筑波大学考古学研究室の滝沢誠教授らによる現地説明会が行われた。壺型埴輪(つぼがたはにわ)の破片とみられる土器(須恵器)が大量に出土、前期古墳としての築造年代をより詳しく検討できることとなった。

前方後円墳の姿変わって再測量から

調査は同研究室と同市上高津貝塚ふるさと歴史の広場の共同で、2023年度から行われた。

墳丘の長さが70メートルから75メートルの前方後円墳。古墳時代前期、4世紀ごろの前方後円墳と見られていたが、後世になって墳丘の上に土砂が堆積し、地元常名神社の神域として手が加えられたりしたため、元来の輪郭が不明確になっていた。

西側「前方」部には宝篋(ほうきょう)印塔が据えられ、市指定工芸品にもなっているが、東側「後円」部の墳丘上に鎮座していた神社本殿は23年5月の火災で焼失した。

出土した土器片について説明する筑波大学考古学研究室の滝沢誠教授(左)=同

23年度の調査は古墳周りにトレンチ(溝)を数本掘っての再測量からスタートした。24年度は新たに6本のトレンチを掘って、地層や土砂の地質から墳丘の輪郭や傾斜を割り出す発掘作業が行われた。

考古学研究室の学生らが実習の一環として取り組んだ。トレンチは幅1メートル、長さが4~6.5メートル。在来の関東ローム層や常総粘土の地層が出てくるまで垂直に掘り進める作業だ。

その結果、地質の違いから、墳丘の大半は元々あった丘を削ってならす「地山削り出し」の手法で築造されたことが明らかになった。

前期古墳に特徴づける壺型埴輪

前方後円墳はお椀を2つ伏せたように並んでいる見た目だが、西の前方部は後世の盛り土で、高さが数メートルせり上がっていることが今回初めて突き止められた。

これらのトレンチからは大量の土器片がみつかった。古墳時代の前期、特に東日本での副葬品を特徴づける壺型埴輪の破片だ。いわゆる人型や馬型の埴輪が出てくるのは古墳時代の後半5世紀以降になってからだそうだ。

今回は「コンテナ3箱分」(滝沢教授)もの土器片が見つかった。前方と後円の中間部、「くびれ」部のトレンチからは長さが40センチほど「底の部分だけ欠けた」ものが見つかったという。

木の根の下から取り残した土器片が見えている=同

現地説明会には同市内外の古代史、郷土史ファンら68人が集まった。滝沢教授の総括的な解説の後、各トレンチで研究室の学生による説明が聞けた。展示された壺型埴輪片の周囲には人だかりが出来た。

同市上高津貝塚ふるさと歴史の広場の比毛君男副館長は「これで調査は完了。トレンチは埋め戻して報告書にまとめる作業に移る。出土品を展示する機会はぜひ持ちたい」としている。(相澤冬樹)

猪口孝先生の訃報に接して《文京町便り》35

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土浦藩校・郁文館の門=同市文京町

【コラム・原田博夫】11月27日夜、思わぬ火災事故がTVなどで報道されました。猪口邦子・参議院議員の住居が火災に遭われ、その後、ご夫君・猪口孝先生(東京大学名誉教授)とご長女が亡くなられたことが判明しました。私は孝先生とは2011年に初めてお目にかかってから、重要なタイミングで刺激と激励を受けていましたので、残念な気持ちでいっぱいです。今回は、そうした経緯を踏まえたエピソードを3つ紹介します。

一つは、私が研究代表を務めていた専修大学社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)研究センター(文部科学省私立大学戦略的研究基盤系施支援事業、2009~13年度)主催のシンポジウム「アジアのソーシャル・キャピタル―実態調査を踏まえて」(2011年12月3日)で、基調講演を引き受けていただきました。

孝先生は当時、新潟県立大学長(2009~17年)で何かとご多忙でしたが、自らアジア・バロメータ調査を精力的に進めていたこともあり、われわれの研究グループをその後発グループ(の一つ)として認めてくださり、その立ち上げを寿(ことほ)ぐ観点からも出向いてくださり、この種のサーベイ調査の課題を指摘してくれました。

二つは、孝先生が創始者・編集長を務めていたAsian Network for Public Opinion Research(世論調査のアジア・ネットワーク)の研究大会が新潟トキメッセで2014年11月29日に開催され、そこに招待されたことです。共同論文の発表後、数名の招待発表者と、孝先生の研究チーム(新潟県立大学以外の関係者も)数名による会食(情報交換の機会)を設定していただきました。

そこで、中堅・若手研究者に強調されていたことは、英語による論文・著作を発表することでした。学問で(それ以外でも)世界で認められるには、現状では英語だ、というのです。それを自らに課している、と繰り返していました。

先生のサービス精神に驚く

三つは、ISQOLS(国際「生活の質」研究学会)の第16回年次大会が香港工科大学で2018年6月14日に開催され、私もそこで共同論文を発表しまとき、孝先生は基調講演者でした。

私は会場の前方で聴講していましたが、孝先生が突然、私の名前を挙げ指さし、日本でもアジアをベースにしたサーベイ調査を進めている研究グループがいる、と言及してくれました。先生の講演後、数名が私に近寄り、情報交換を求めてきました。講演者の影響力は大だな、と実感した次第です。また、孝先生のサービス精神には驚きました。

前回コラム(11月24日掲載)で触れた英書(邦語タイトルは『アジアにおけるソーシャル・ウェルビーイング(社会的安寧)、発展、多様な近代化』)も、孝先生の叱咤激励へのささやかな回答の一つです。国連大学上級副学長(1995~97年)などの公職で多忙な中、若手の先導役も務めた猪口孝先生の御霊に同書をささげたいと思います。(専修大学名教授)

103万円の壁、メディアは正しく検証せよ《ひょうたんの眼》74

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小田山(宝篋山)=写真は筆者

【コラム・高橋恵一】先の衆院選で国民民主党が「103万円の壁を撤去して手取りを増やす」という公約を掲げ、議席を4倍に伸ばした。さらに、所得税の基礎控除下限を103万円から178万円に引き上げ、地方税の基礎控除も同額以上に引き上げるよう主張している。

壁撤去の手段は、基礎控除を178万円まで引き上げるという所得税減税で、累進課税の裏返しだから、103万円の低所得者(210万円)の減税額に比して、高額所得者(2300万円)の減税額は約38万円ということになり、格差が拡大し、減税による経済効果も薄くて、期待できない。

ところで、103万円の壁見直しによって、年収103万円以内の給与で働いている人(約500万人?)の手取りは増えるのだろうか? 壁の撤去は、178万円まで給与を上げてもよいということで、給与を支払う側が、年額178万円に賃上げするということではない。

年末になって、年収の壁に達し、働き控えが起こると、職場が機能しないから、壁を越えて就労時間を増やせば給与が増えることになる。しかし、零細事業者にとって、人件費負担を増やすことは簡単ではない。最低賃金の引き上げや従業員の就労抑制の圧力で賃上げをせざるを得ないとしても、賃上げする原資の裏付けが無ければ、最低限の賃上げしかできないだろう。

国民民主党は手取り増加=賃上げをできる方策は示していない。一方の所得税減税の財源も明示していないから、受けを狙った「絵に描いた餅」と言わざるをえない。

手取り増は賃上げが大前提

低賃金を改善するには、最低賃金の引上げが必要だが、1500円への目標時期は5年後だ。それでも先行国のヨーロッパやカナダ、オーストラリアなどには遠く及ばない。

低賃金構造の根底は、中小零細事業者の置かれている日本の産業構造の偏りにある。大企業の下請け企業や原材料調達先への低コスト指向支配を変えなければなるまい。中小零細事業者やそこで働く労働者の交渉力も高めなくてはなるまい。

最近の報道では、来年の春闘の賃金要求額が、大企業労組は5%引き上げ、中小企業労組は6%引き上げ、合同労組・ユニオンは10%引き上げとなったという。全て要求通り実現したとすると、103万円以内の労働者は、113万円まで年収が増え、所得税と地方税が課税されても、3~5万円手取りが増え、壁の引上げがあれば、10万円手取りが増えることになる。国民民主党の最低賃金引き上げの主張は1150円で、年収113万円弱になる。同党の本音もそのあたりなのだろう。

いずれにしても、手取りが増えるかどうかは、雇用主が賃上げすることが大前提で、賃上げ能力を確保しなければ、実効性はないということだ。国民民主党や協議している自公与党も、壁の引上げを支持する経済評論家やメディアも、手取り増額の具体的手法を提示していない(できない?)。無責任な議論としか言えない。

最近の政党のプロパガンダは、フェイクまがいのものも多いのに、SNS効果で世論をミスリードする例が増えている。マスメディアは適切なファクトチェックをすべきだ。(地歴好きの土浦人)

最上位のBプレミア参入決定 茨城ロボッツ

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ライセンス交付を受けて(左から)岡田会長、高橋市長、川崎社長、落GM

プロバスケットボールのBリーグが2026-27シーズンから創設する最上位リーグ「Bプレミア」のライセンス交付クラブが19日発表され、茨城ロボッツにライセンスが与えられた。これでリーグ初年度にBプレミアでプレーするクラブは24になった。最終的な顔ぶれは26日のBリーグ理事会を経て決まる。

Bプレミアは現在のB1・B2リーグが採用している競技成績による昇降格制ではなく、①平均入場者数4000人以上 ②年間売上12億円以上 ③Bプレミア基準のアリーナ要件ーの3つの条件を満たしたクラブが参入できる。初年度の2026-27シーズンについては今年10月までの1~3次審査で22クラブが決まっており、今回の4次審査で茨城ロボッツと京都ハンナリーズが加わった。翌年度以降は継続審査により資格を問われることになる。

発表の瞬間、手を取り合って喜ぶ川崎社長(左から3人目)、と高橋市長(同2人目)ら

ライセンス交付直後、水戸市中央の水戸市役所4階会議室で記者会見が開かれ、茨城ロボッツスポーツエンターテインメントの川崎篤之社長、落慶久ゼネラルマネージャー(GM)と、高橋靖水戸市長、県バスケットボール協会の岡田裕昭会長が出席した。

川崎社長は「この地域にロボッツが必要だと思ってくださる大勢の方々の頑張りに支えられた。ホームタウンの人口規模や経済規模も小さい中、大都市圏のクラブと同じ条件で戦うのは、針の穴を通すような至難の道だった。経営破綻からスタートして10周年、ようやくスタートラインに立った思い。ロボッツをあきらめないという思いやストーリーを20、30年先へつなぐため努力を重ねていく」などと思いを語った。

落GMは、2031年に日本一になるというクラブの長期目標に向け、Bプレミアを戦っていけるチームづくりとして「常に成長できる組織にする。応援してくれる方々に誇りに思ってもらえる、魅力あるチームを披露できるよう一丸となって準備していく」と話した。

このほか大井川和彦知事が「さまざまなハードルを見事クリアされライセンスを獲得されたのは、チーム関係者とブースターの皆様の努力の賜物。今後のますますの活躍を期待します」との談話を寄せた。(池田充雄)

筑波山に初雪 山頂付近がうっすら雪化粧

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筑波山山頂の女体山付近にうっすら積もった雪=19日午前8時、山麓のつくば市臼井から撮影

19日朝、筑波山(標高877メートル)に今シーズン初めて雪が降り、標高500メートルを超える山頂付近がうっすらと雪化粧した。

強い寒気が大陸から流れ込み、気圧の谷と寒気の影響を受けて雪が降った。気象庁の発表によると、つくば市館野の19日の最低気温はマイナス1.1度で、12月中旬並み。

記者は15年ほど前から毎年、筑波山の初雪を観察しSNSに投稿している。記録によると、平年の筑波山の初冠雪は12月中旬頃で、ほぼ平年並みの初雪となる。昨シーズンの初雪は今年1月13日だった。

山頂付近がうっすら雪化粧する筑波山=同

筑波山でロープウェイとケーブルカーを運行する筑波山観光鉄道(つくば市筑波)運転員で、標高840メートルの女体山山頂近くのロープウェイ女体山駅に勤務する北澤保明さん(37)によると、19日午前10時20分時点の同駅の外気温は0度で、女体山駅展望台には3センチほど雪が積もっている。午前10時過ぎ時点で、登山客は少なめで、雪の装備をした登山客が数人見られる程度だという。北澤さんは「最近は年内に雪が降ることは少なく、今年は秋も暖かかったので、こんなに早く雪が降ったことに驚いた」と話していた。

同鉄道によると、ロープウェイは19日、時刻表通り運行している。ケーブルカーは年に1度の定期点検のため16日から20日まで運休しており、21日から運転を再開する。(榎田智司)

◆筑波山の気象状況はライブカメラで確認することが出来る。

土浦学園線沿いの「お食事処 花むろ」《ご飯は世界を救う》65

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イラストは筆者

【コラム・川浪せつ子】今回は、土浦学園線の花室交差点から土浦方面に少し行ったところにある「お食事処 花むろ」さん(つくば市花室)。開店してから20年ほどらしいのですが、何度もお店の前を通っていたにもかかわらず、車が駐車場にほぼ止まっていないから、やっていないのかな~と思っていました。たまたまインスタグラムを見ていて、気が付きました。

「なんだぁ~、盛況じゃないの!」。お店横の駐車場は土浦学園線から見えるのですが、裏には大きな駐車場があり、ほとんどの方はそこに止めていたのです。正直にいいますと、私はずっと「なんだか変なお店だなぁ~」と思っていました。ごめんなさい。

実は、我が家から徒歩で行ける居酒屋のランチが、大のお気に入りでした。お店の方とも仲良くなり、土日も開いていることも。でも、コロナが収まったころ閉店し、かなりショックでした。庶民的で、安くて、おいしいお店って、案外ないのです。

焼き鳥定食、アジフライ定食

10年近く前になりますが、我が家から車で少し行ったところに、定食+宴会のお店がありました。私が疲れ果て、晩ご飯を作れないとき、3人の息子たちの胃袋をイッパイにするには、もってこいでした。

「ボク、今日は行かない」という子にはテイクアウト。何度も助けてもらいました。ところが、高齢化で後継ぎがいないということで閉店。このお店、本当に大好きでした。働いていた方々、「お元気かなぁ~」と時々思い出します。

最近見つけたのが、この「花むろ」さんです。 焼き鳥定食、アジフライ定食、たまんないわ~。庶民の味方の定食屋さん、頑張ってね! でも、もう少し近かったらなぁ~なのです。(イラストレーター)

もったいない(3)《デザインを考える》15

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イラストは筆者

【コラム・三橋俊雄】今回は、台湾新竹県で客家(ハッカ)民族のお母さんから伺った「大鍋菜(ダーゴゥーサイ)」という、一つの火と一つの大鍋を用いて次々と調理をしていく「もったいない」につながるお話しです。

「大鍋菜」は、藁(わら)・籾殻(もみがら)・薪(まき)を燃料とし、その調理方法は、竈(かまど)に火をくべ、火力促進期に「煮飯」「撈飯(ラオパン)」「おもゆ」「粥(かゆ)」、火力旺盛期に「野菜炒め」「油汁」、少し下火になって「蒸し物」、弱火で「残り総菜」「茶湯」「猪菜・潘(バン、豚の餌)」を作り、火の消えたころ「洗浄湯」を沸かすという一連の作業です。

大鍋菜の調理プロセス

(1)まず、火がちょろちょろしている火力促進期に、鍋に水を入れて米を煮ます。

(2)7分くらいで、まだご飯に芯のある状態を笊(ざる)ですくい、「飯桶」に入れて蓋(ふた)をします。すると中で蒸されて撈飯になります。鍋に残った「おもゆ」は、豚のエサや衣類用の糊(のり)として利用し、さらに残った米粒は、干したサツマイモやカボチャなどと煮てお粥(かゆ)にします。

(3)火が強くなったところで、月に一度の豚肉購入時に、その脂身を切り取り、鍋の中で油脂を抽出します。鍋に付いた「油鐤(ユディアン、おこげ)」は、温かいご飯にのせて醤油(しょうゆ)をかけて食します。月に一度のことでもあり、一番幸せを感じるときだそうです。

(4)鴨(カモ)や鶏(ニワトリ)を茹(ゆ)で、油脂の味が付いたところに保存野菜の酸菜(シャンツァイ)や干しキャベツなどを入れてスープにします。

(5)火が下火になったところで、豚の角煮や白菜にキノコや桜エビ、魚や膨皮(ポンプエイ、豚の皮を揚げたもの)などを入れて雑炊を作ります。この大鍋で温め直して何日も食べます。蒸し物として粽(ちまき)や粄(パン、米粉の料理)を作ることもあります。

(6)弱火(炭は赤いが炎は見えない)で、前回の料理の煮直しや茶湯を作り、お風呂用の湯(そのままで足湯としてちょうど良い温度)としても使うそうです。また、(2)の「おもゆ」にサツマイモの葉や大根、キャベツの古い葉を混ぜた「猪菜」、残飯の「潘」を温めて、豚の餌をつくります。

(7)火は消えていますが、鍋に水を入れて温め、洗浄用の湯を沸かします。竈の熱い灰の中に、サツマイモやサトイモ、トウモロコシなどを入れておきます。灰の中から焼けたそれらを探すのが、子どもたちの楽しみでもあったようです。

燃料も食材も大切に

日本統治時代から1950年代まで、台湾農村における客家の家族人数は7〜10人ほどであり、「大鍋菜」は豚の飼育と切り離せないものでした。

当時の豚の飼育は、政府と軍隊の管理下にあり、飼育にはお金がかけられず、サツマイモの葉や山菜の葉、アワ・ヒエなど雑穀のクズを餌として利用し、調理(1)から(7)まで、燃料も食材も大切に合理的に使い尽くす、「もったいない」のデザインがなされていたということです。(ソーシャルデザイナー)

アーム伸ばしたまま走行 クレーン車が民家の光回線ケーブル切断 つくば市

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つくば市役所

市発注の学校樹木伐採業者

つくば市は17日、同市竹園の市立学校近くの市道で15日午後5時ごろ、市が発注した学校の樹木伐採工事を請け負った業者が、クレーン車のアームを伸ばしたまま走行し、電柱に敷設してあった個人宅の光回線ケーブルの引き込み線を切断したほか、引き込み線接続部分の家屋の外壁を一部はがす事故を起こしたと発表した。

市教育局教育施設課によると、業者は15日学校で、伐採した樹木を積み込む片付け作業を実施し、作業が終了したため一旦学校を出た。その後、現場にはしごを忘れたことに気付き、午後5時ごろ、市内の事業所から別の作業をしたクレーン車がはしごを取りに来て、アームを伸ばしたまま走行したことから光回線ケーブルの引き込み線を切断したという。

翌16日朝、校長が光回線ケーブルが切断されているのに気づき、市に連絡した。クレーン車の運転手は事故時、気付かなかったという。

市から連絡を受け、業者はNTT東日本に復旧対応を依頼、さらに個人宅に対し謝罪し状況を説明した。個人宅では現在インターネットサービスが利用できない状態となっており、復旧は21日になる予定。業者はその後、外壁の補修も行う。

再発防止策として市は、受注業者に対し、周辺状況を把握し細心の注意を払って作業するよう指導すると共に、現在市の工事を受注しているすべての業者に対して注意喚起を徹底するとしている。

10年ぶり「科学の甲子園」ジュニア大会で全国制覇 並木中等と日立一付属中チーム

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優勝した茨城県代表チーム。並木中等の生徒は前列右の西端奏子さん、後列中央の村井秀次郎さん、同右の則包陽光さん=科学技術振興機構提供

科学技術振興機構(JST、橋本和仁理事長)は16日、第12回「科学の甲子園ジュニア全国大会」で茨城県代表チームが優勝したと発表した。13日から15日まで、兵庫県姫路市の「アクリエひめじ」に各都道府県から選出された47チーム、282人の中学生が参加し開催されていた。県代表チームは並木中等教育学校(つくば市並木)と日立一高付属中(日立市若葉町)から選抜された混成チームで、並木中等の3人は全員が1年生(中学1年)だった。

「科学の甲子園」は高校生対象に2011年に始まり、中学生対象のジュニア大会は13年に創設された。全国の中学生が科学と実生活・実社会との関連に気付き、科学を学ぶことの意義や楽しさを実感できる場の提供を目的としている。

全国大会では、各都道府県から選出された6人が1チームとなり、理科や数学などの複数分野に関する知識とその活用能力を駆使してさまざまな課題に挑戦した。筆記競技、実技競技2種目の得点を合計した総合成績により、茨城県代表が優勝、2位に千葉県代表、3位に東京都代表が入った。県代表の優勝は、並木中等が単独参加した2014年の第2回大会以来10年ぶりだった。

今回のチームは並木中等の則包(のりかね)陽光さん(1年)、西端奏子さん(同)、村井秀次郎さん(同)と、日立一高付属中の古川美心さん(2年)、内藤美希さん(同)、桑原侑史さん(1年)とで編成。筆記試験は高校レベルの問題で、物理、化学、生物、地学、数学、情報の6分野に分かれるため、それぞれが得意科目を集中的に学んで大会に備えた。筆記競技の得点は明らかにされていないが、2位の成績だったという。

2課題で争われた実技競技では、食塩水と真水を入れた水槽に食紅を入れ、波立てて波長などを調べる第1課題で最高得点をたたき出し第1位を獲得。県代表はまた、女子3人以上を含むチームのうち、総合成績最上位のチームに与えられる女子生徒応援賞も獲得した。

チームを引率した並木中等の前田邦明教諭は「ここ数年並木中等は県代表にも入れないでいたが、いきなりの全国優勝。日立さんには何度かつくばに来てもらい事前対策を一緒にした。筆記試験の後、子供たちは自信満々になり手応えを感じていたようだ」と語る。

朗報に同校は沸き立っており、23日にも全校集会を開いて全国優勝を報告し、改めて表彰を受ける。(相澤冬樹)


江崎賞受賞研究者を前に成果発表 つくば市内3校の高校生

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生徒間の質疑応答による交流も展開された=つくば国際会議場

日ごろ探究活動や課題研究に取り組む高校生が第一線研究者を前に発表を行い、考え方や進め方について指導を受ける「科学交流会」が16日、つくば市竹園のつくば国際会議場で開かれた。今回はつくば市内3校の高校生6個人・グループが発表を行い、2022年度の江崎玲於奈賞受賞者、磯貝明東京大学特別教授から質問や助言を受けた。

江崎賞の歴代受賞者を会員とする「受賞者の会」(榊裕之会長)を発足させた茨城県科学技術振興財団(江崎玲於奈理事長)が主催して行う初めての事業で、関彰商事(関正樹社長)が協賛した。高校生が取り組んだ内容や成果を発表し、研究者からアドバイスを受けて、科学に対する学習意欲、探究心をさらに高めてもらおうとするのが目的。並木中等教育学校、つくばサイエンス高、茗渓学園高の3校から6個人・グループが発表を行った。

生長阻害物質の証拠探す

茗渓学園高2年の中山奏楽さん、片岡愛奈さんは別個に植物のアレロパシーの研究に取り組んだ。アレロパシーは植物が放出する化学物質によって他の生物の生長を阻害するなど、何らかの作用を起こす現象。植物が分泌する化学物質を「アレロケミカル」といい、生物農薬や環境対策に使えないか、関心が寄せられた。

中山さんはキノコのタモギタケ、片岡さんはアジサイの花から浸出させた物質からアレロパシーが活性化する証拠を見出そうと実験と観察を繰り返した。タモギタケでは軸より傘の部分が多くのアレロケミカルを持ち、アジサイでは植物の生長を阻害する働きがあると判定できる試料を見つけることができたとした。

講師の磯貝さんは「実験ではメタノールなど有機溶剤を安易に使わない方がいい」など技術的なアドバイスをしながら、「身近な関心に基づいた研究は自立の原点。大人社会では目的に対して研究開発を行う目的達成型が評価されるが、関心に基づいた実直な研究のスピリットには感銘を受けた。この先も大切にしてほしい」と励ました。

江崎玲於奈賞受賞につながったセルロースナノファイバーを手に解説する磯貝明東京大学特別教授

究極の黒、出来上がった

並木中等5年生(高校2年)の松田菜央さんは、ヨウ素の偏光板を作って偏光について研究しようとしたが、真っ黒なものしかできず一旦は挫折した。そこで黒さをそのまま生かした材料開発に取り組んだ。ヨウ素を用いたシート状の「黒体材料」を作製し、その吸収率を測った。

合成高分子のPVA(ポリビニルアルコール)にヨウ素の染色液を塗って作ったフィルムは最初96%の吸収率を計測した。PVAとヨウ素の包接化合物が形成されるが、らせん構造がヨウ素分子を引き込むと考察できた。そこでPVAのらせんの長さを違えると吸収波長が多様化し、ヨウ素は可視光全域の光を吸収できると考えた。フィルム表面に微細な凹凸を施して反射を防ぐ改良をすると吸収率は99.4%、「プロにも負けない自分なりの究極の黒」が出来上がったとした。

磯貝さんは「実験に失敗はない。失敗しても、その結果を次の実験に生かすチャレンジを続けてほしい」と評価した。

先輩が残した実験装置で

つくばサイエンス高は全員1年生の7人グループで「微小重力環境におけるがん細胞の影響について」をテーマに取り組んだ。同校には先輩の残したクリノスタットという実験装置があり、2つの軸を回転させ360度方向に重力を分散することによって微小重力環境を再現するものだそう。

これに白血病に由来するヒト単球細胞株から培養した細胞を計測板に置き動作させ、静置したものとの比較で細胞数の増減を見た。結果、微小重力下では通常重力下に比較し、細胞の増殖速度が約半分に落ちたという。微小重力環境ががん治療に新たな可能性を開くかもしれないとした。

メンバーの一人、末永円さんは「学校にはいろいろ実験設備があって毎日の勉強が楽しい。私たちはがん細胞を取り上げたけど、他校はアレロパシーとか身近な植物の力を追求していて、一緒に研究出来たらもっと楽しいだろうなと思った」と感想を語った。(相澤冬樹)

研究発表後、磯貝教授を中心に記念撮影.

昭和100年、時代は雨情の唄を求めている《映画探偵団》83

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イラストは筆者

【コラム・冠木新市】2025年1月25日に開催する、雨情からのメッセージⅢ・詩劇コンサ一ト『空の真上のお天道さまへの旅』を準備中である。野口雨情没後80年、筑波節・筑波小唄誕生95周年記念のイベントなので、『80年』と『95年』を意識してきたのだが、来年は昭和100年の年でもあった。

雨情の新民謡などの多くは昭和初期に作られている。昭和5年(1930)に『筑波節』(映画探偵団22)、昭和9年(1934)に『水戸歩兵第二連隊歌』(同79)、昭和10年(1935)に『土浦小学校校歌』(同28)。いつの間にか、昭和初期の出来事に詳しくなった。

2023年にタモリが現代を『新しい戦前』と命名し、マスコミでも盛んにこのフレ一ズを使うようになった。私も時代の空気を言い当てていると思う。

国産レコード第1号と言われる『波浮の港』は、昭和3年(1928)に作られ大ヒット。雨情は、伊豆大島の現地に行かないで作詞した。後で地元の関係者からいつ大島にいらっしゃったのですかと聞かれ、慌てたとのエピソードが残されている。雨情は、『波浮の港』の詞を故郷磯原の海辺をイメージして書いた。

つまり、記念すべき国産レコード第1号の景色は、茨城県を歌ったものなのである。そう思うと曲の印象が変わってこないか。

市川崑監督の『ビルマの竪琴』

映画監督・市川崑が、『ビルマの竪琴』(1956)を作っていた時のことだ。現地ロケのためにビルマの実情を聞こうと、原作者の竹山道雄を訪ねた。すると、竹山から「ビルマには行ったことがない。すべて頭の中でこしらえた世界だ」と言われ、大変驚いたという。

『ビルマの竪琴』は学生時代、名画座で見て深く感動した。日本兵の水島は、戦死した日本兵の遺骨を慰霊する外国人の姿に衝撃を受ける。戦友たちは日本に帰国することになるが、水島は1人ビルマに留まり、戦友たちの慰霊を続けるという作り話だ。

白黒の画面と戦争経験者の役者の演技が相まって、非常にリアリティが感じられた。実話を基にした話と信じた人も多かったのではなかろうか。後からファンタジー物語だと知り、私も大変驚いた。

『枯れすすき』『磯原節』『磯原小唄』

今回、雨情の詩集『枯草』を始め、童謡、新民謡、連隊歌、校歌などを取り上げる。謎めいた詞が多く、出演者から質問され答えに窮したことが幾つもあった。もっともらしく解釈した話もあるのだが、そう限定すると雨情の世界が極めて狹くなってしまう。

今回イベントの第1部は講演で本当の話だが、第2部は作り話が入る。雨情を尊敬する、詩人志望で水戸歩兵第二連隊の生き残りだった男が生前にコンサ一トを企画するが、亡くなってしまう。孫の3姉妹は、祖父の遺志を継いで詩劇コンサ一トを開催する。

そこに、筑波節、水戸歩兵第二連隊、土浦小学校の関係者が集まるという観客参加劇の設定となる。

語られる作り話に何が出てくるかは秘密である。だが、きっと実話だと思うのではなかろうか。また雨情の真実が感じられると信じている。『枯れすすき(船頭小唄・完全版)』『磯原節(完全版)』『磯原小唄』は、めったに聞けない企画である。また、『筑波節』のお囃子(はやし)、「サイコドン ハ トコヤンサノセ」の意味も語るつもりでいる。(脚本家)

雨情からのメッセージⅢのチラシ

ハム工房に直売所オープン つくば市唯一の養豚農家が直営

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直売スペースやイートインコーナーが新設されリニューアルオープンした「ハム工房HISAMITSU」(左)とオーナーの久松茂樹さん、貴子さん夫妻

イートインコーナーや切り売りも

つくば市で唯一の養豚農家が直営する加工場「ハム工房HISAMATSU」(ひさまつ、久松茂樹代表、つくば市酒丸)がリニューアルされ、16日直売スペースがオープンした。家族3代で飼育する豚で手作りしたハム、ソーセージ、ベーコンなどを直売するほか、イートインコーナーも設ける。ハム、サラミなどの切り売りもする。

ハム工房ではこれまで販売しておらず、TX研究学園駅前の商業施設イーアスつくばアウトモール内のJA水郷「サンフレッシュつくば店」などの店舗でしか購入できなかった。

住み込みで12カ月修行

養豚は茂樹さん(49)の祖父が1960年頃に始めた。現在は父親の隆夫さん(72)が中心になって繁殖から肥育までを一貫して行う。母豚を100~120頭ほど飼育し、食用として年間約2000頭を出荷、約100頭をハム工房で加工している。

27年前、加工技術を習得しようと、茂樹さんは群馬県内の手作りハム工房に住み込んで12カ月修行し、ハムやソーセージ、ベーコンの作り方を学んだ。2000年に敷地内に工房を開設した。

ハム工房内

加工する豚は、いも類を主成分とする飼料で飼育するブランド豚「いも豚」を使用している。トウモロコシが主成分の飼料で育てた豚と比べ飼育期間が長いが、脂身が甘く赤身が柔らかいのが特徴のブランド豚だ。加工は、防腐剤、保存料、増量剤などは使わず、鮮度の良い豚肉を使用する。「日常の食事として食べてもらいたい」とお手頃価格に抑えているという。

加工品は3年に一度開催されるドイツの権威ある食肉加工品評会「IIFA国際食肉コンテスト」で金賞などを受賞している。テレビや雑誌などでも紹介され、今年10月にはつくば市の地産地消認定店になった。

商品の一例のハム(ハム工房 HISAMATSU提供)

来年、創業25周年を迎えるのを機に、作り手と地域とのつながりを大事にしたいと、工房に直売スペースを設けた。

茂樹さんは「ハム工房で作られたフレッシュなハム・ソーセージを、その場でお楽しみいただける空間なので、ぜひ足を運んでいただきたい。夫婦2人で対応しており何かとご迷惑をお掛けしてしまうかもしれないが温かく見守っていただけるとうれしい」とし、茂樹さんの長男、勇斗さん(26)は「現代は、機械やAIによる食品製造の自動化が進み、効率的に大量生産することが進んでいる。そんな中で、職人の手で一つひとつ丁寧に、温もりや心を込めて作ったハムやソーセージをお届けしたい」と話す。

直売スペースは面積約20平方メートル(うち厨房は5平方メートル)。フランクグリル(700円)、つくばドッグ(870円)、ドイツつまみセット(1090円)のほか、コーヒー(350円)、ドイツビール・ヴァイツェン(950円)などを販売する。価格はいずれも消費税込。(榎田智司)

メニュー

◆ハム工房HISAMATSUは、つくば市酒丸767-111、営業時間は午前10時~午後5時、日曜定休。問い合わせは電話029-848-2072、Eメールinfo@ham-hisamatsu.com。公式オンラインサイトはこちら、X(旧Twitter)はこちら

「土浦の花火」に欠けていたリスク管理《吾妻カガミ》198

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こんな花火が見たかった。今年の「絵で伝えよう 私の町の宝物 絵画展」で土浦市観光協会長賞に輝いた柴山裕貴君の作品

【コラム・坂本栄】11月2日に予定されていた「土浦の花火」が降雨予報で中止されたことには驚かなかったが、延期日に設定されていた3日と9日の開催も中止すると同時に発表されたことには驚いた。その理由が両日の警備体制が整わなかったからと聞いて、もっと驚いた。延期日をセットしておきながら、両日の警備体制が確保されていなかったからだ。

曖昧だった延期日の警備手配

土浦の花火(土浦全国花火競技大会、実行委員会会長=安藤真理子市長)中止の速報は「開催を中止…」(11月1日掲載)、その後の市長会見は「…中止を改めてお詫び」(11月5日掲載)、中止に伴う予算措置は「…減収2億3千万円…」(11月21日掲載)を読んでほしい。

予備日の花火も中止されたことに、花火ファンだけでなく関係業者もショックだったようで、不満の声が市に多く寄せられた。市議会も機敏に動き、全員協議会(11月11日)では市執行部を問い詰め、12月議会の一般質問初日(12月9日)には奥谷崇議員(郁政会)が中止に至る経緯などについて質問した。

一般質問に立つ奥谷崇議員

答弁の中で、塚本隆行産業経済部長は延期日の警備体制について、①実行委と警備会社の契約では「相互に協議」することになっていた、②しかし、警備に必要な人数と手当て可能な人数についてお互いの「認識に差違」があった―と弁明した。

要するに、2日の警備体制(470人動員)ついてはきちんと契約していたものの、延期日(3日と9日)の体制については、曖昧になっていたということだ。昨今の人手不足(タイトな労働需給)が視野に入っていなかった市のミスと言える。

無駄だった花火興業中止保険

全日程中止により、収入の大宗を占める有料観覧席代を払い戻さねばならず、市は敷桟席整備費などの支出をまかなうために、2億3000万円の補助金を追加した。その結果、8500万円の当初補助金と合わせ、今年度の花火予算は3億1500万円に膨らんだ。

第2段落目のリンク先記事に寄せられたコメントの中には、想定外の花火大会中止に備えて、市はイベント損害保険を掛けていなかったのか、といった指摘もあった。

奥谷議員がこの点を突いたところ、塚本部長は、①来場者のケガなどに対応する賠償責任保険、花火事故による観覧者の損害に対応する同保険、悪天候などによる花火興業中止保険には入っていた、②このうち興業中止保険には「延期日有り」という条件が付いていた、③ところが今回は「延期日に延期せず中止」したことから、支払いの対象外になってしまった―と説明した。

要するに、予備日(3日と9日)に延期し、それでも中止に追い込まれたのであれば保険金が支払われていたが、全日程中止にしたために保険金が出なかったということだ。警備に必要な数の要員派遣が無理という想定外の事態はあったものの、こういった内容の契約をしていたのも市のミスと言える。

実行委に呼ばれなかった議長

花火大会は雨が降るとイベントそのものが成り立たない。以前、土浦の花火は10月第1土曜日に開かれていた。それが11月第1土曜日に変更されたのは、10月よりも降雨リスクが低いと判断したからだ。今回のバタバタ経験から、延期日の警備体制も契約書に明記する必要があるだろう。

全員協議会と12月議会を傍聴していて、「?」の場面もあった。大会中止を決めた実行委(10月31日夕方)に市議会の議長が呼ばれなかったというのだ。事務局が島岡宏明議長に声を掛けるのを忘れてしまったらしい。メンツをつぶされた議会は面白くなかったようだから、議長対応もリスク管理マニュアルに入れておいた方がよいだろう。(経済ジャーナリスト)