金曜日, 12月 26, 2025
ホーム ブログ ページ 26

女性管理職、目標の30%に 土浦市人事異動’25

12
土浦市役所

土浦市は14日、4月1日付人事異動を内示した。異動者数は前年度より15人多い337人(消防職を除く)で、昇格は108人となる。女性活躍の視点から職域拡大と能力に応じた管理職への登用を積極的に行い、女性管理職の割合は前年度の29.6%から2.1%増加して31.7%となり、女性職員活躍推進プランの目標である30%を達成する。

定年引上げにより、役職定年職員を調整官と位置づけ、これまでの経験を生かせる部署に配置する。県などとの人事交流を継続する。

組織改編は、ふるさと納税返礼品のPRをシティープロモーションと一体的に実施し市の魅力を効果的に発信できるよう、広報広聴課シティプロモーション室にふるさと納税推進室を統合する。税外債権未納者への措置を加速するため、法務部門との連携を図り、納税課債権管理室を総務課に移管する。ICT(情報通信技術)教育の一体的実施のため、教育委員会事務局指導課内に教育DX推進室を設置する。企業誘致を推し進めるため商工観光課産業政策係の一部事務を政策企画課企業誘致室に移管する。

◆4月1日付人事異動(課長以上)は以下の通り。カッコ内は現職。敬称略。

【部長】4人
▽総務部長(総務部人事課長)塚本浩幸
▽市民生活部長(総務部管財課長)皆藤秀宏
▽保健福祉部長兼福祉事務所長(市民生活部長)水田和広
▽産業経済部長(市民生活部環境衛生課長)羽成健之

【参事】8人
▽政策企画課長(都市整備課長兼りんりんポート土浦館長)福澄雄祐
▽生活安全課長兼消費生活センター所長(人権推進課課長)福原守
▽こども政策課長(総務課長)細野賢司
▽保育課長兼子育て交流サロン館長兼こどもランド館長(教育委員会教育総務課長)塚本富美代
▽商工観光課長(政策企画課長)佐々木啓
▽道路建設課長(道路建設課長)浅岡武徳
▽会計課会計管理者兼課長(商工観光課長)沼尻健
▽農業委員会事務局長(下水道課長)室町和徳

【課長】26人
▽総務課長(納税課長)北島康雄
▽人事課長(保育課長兼子育て交流サロン館長兼こどもランド館長)野中佑起男
▽管財課長(秘書課長補佐)渡邊隆明
▽課税課長(派遣・観光協会課長補佐)中西弘治
▽納税課長(道路管理課長補佐)萩島克延
▽人権推進課長(こども政策課長)中川光美
▽市民課長兼上大津支所長(市民課長)菊田宏巳
▽環境保全課長(都市計画課長)鈴木孝昌
▽環境衛生課長(派遣・産業文化事業団課長)草間正志
▽社会福祉課長(政策企画課主任政策員)川村明弘
▽高齢福祉課長(生活安全課長)中山悟
▽農林水産課長(農業委員会事務局長)岡田将之
▽都市計画課長(建築指導課長)齋藤仁志
▽都市整備課長兼りんりんポート土浦館長(都市整備課長補佐)石引康博
▽建築指導課長(建築指導課長補佐)市村俊宏
▽道路管理課長(住宅営繕課長)三浦誠
▽住宅営繕課長(水道課長)和田利昭
▽下水道課長(道路建設課長補佐)飯塚照秋
▽水道課長(道路管理課長)滝田昌曉
▽教育委員会教育総務課長(農林水産課長補佐)山口晃一
▽教育委員会学校給食センター所長(学校給食センター所長補佐)渡辺直子
▽教育委員会生涯学習課長兼青少年センター所長(生涯学習課長兼青少年センター所長兼青少年の家所長)矢内良則
▽教育委員会博物館副館長(博物館館長補佐)関口満
▽教育委員会スポーツ振興課長兼川口運動公園管理事務所長兼新治運動公園管理事務所長兼武道館長(環境保全課長)日髙寿志
▽議会事務局次長(議会事務局次長補佐)小野聡
▽派遣・産業文化事業団課長(農林水産課長)坂本直親

【調整官】役職定年対象職員、10人
▽政策企画課調整官(産業経済部長)塚本隆行
▽行政経営課調整官(総務部長)塚本哲生
▽管財課調整官(社会福祉課長)坂本英宣
▽課税課調整官(教育委員会スポーツ振興課長)寺崎敏彦
▽消費生活センター調整官(保健福祉部長)羽生元幸
▽高齢福祉課調整官(会計課会計管理者)佐野善則
▽下水道課調整官(清掃センター 所長)木村浩之
▽教育委員会学務課調整官(課税課長)田中裕之
▽教育委員会生涯学習課調整官・行政経営課調整官併任(高齢福祉課長)刈山和幸
▽会計課調整官(学校給食センター所長)小池政幸

【退職】
▽教育委員会博物館副館長 木塚久仁子
▽議会事務局次長 元川宏

消防本部
【部長級】1人
▽消防長(次長)堀本良博
【次長級】1人
▽次長兼土浦消防署長(予防課長)比氣武行
【課長級】8人
▽かすみがうら市消防本部出向(土浦消防署上席副署長)町島修
▽予防課長(神立消防署副署長)橋本浩一
▽荒川沖消防署長(土浦消防署副署長)小倉一夫
▽神立消防署長(荒川沖消防署副署長)羽成博之
▽新治消防署長(土浦消防署副署長)飯田浩
▽土浦消防署南分署長(新治消防署副署長)中野雅文
▽土浦消防署上席副署長(土浦消防署副署長)平山正樹
▽土浦消防署上席副署長(消防総務課長補佐)小島博
【退職】
▽神立消防署長 大塚勝久
▽新治消防署長 三上健市
▽土浦消防署上席副署長 御幡満
▽神立消防署副署長 高橋義憲

方角かそれとも距離か?《文京町便り》38

1
土浦藩校・郁文館の門=同市文京町

【コラム・原田博夫】今回は、コラム28(2024年5月23日掲載)で触れたアダム・スミス『国富論』購読の続きになる。講読会も半ばに差し掛かり、今年1月には第4編「経済政策の考え方」第6章「通商条約」第7章「植民地」に達した。

私の認識では、スミスは植民地支配を前提にした重商主義の経済政策に批判的で、当時イギリスの植民地だったアメリカの独立を(諸般の理由から)支持していた、というものだった。再読してみると、この認識自体には誤りはないのだが、当時の植民地がヨーロッパ諸国とどのような経緯・関係にあったかは、実に多様だったことが分かる。

非ヨーロッパを植民地化していた先発のベネツィア・スペイン・ポルトガルと、後発のフランス・イギリス・オランダなどは、その狙いと手法が異なり、ひとくくりに宗主国と植民地の関係性では総括できないことが明らかである。

いずれにせよ、当時の植民地政策の展開を博識・適格に描写しているスミスの筆致に感服しながら読み進めると、第4編第7章第1節「新植民地建設の動機」で、ジェノバの航海者コロンブスの西回りによるアジア航海の大胆な計画(1492年)についての言及に、はたと膝を打った。

邪馬台国は九州説に一理

「ヨーロッパとアジア諸国の位置関係・距離については、当時はきわめて不正確だった。アジアまで旅行したヨーロッパ人は少なく、距離を誇張して伝えていた。おそらく無知のためもあり、測定する方法もなかったので、確かにきわめて遠い距離が無限に遠いと思えたのだろう」

「あるいは、ヨーロッパから極端に遠い地域を旅した冒険を飾り立てるために、距離を誇張したのかもしれない。東回りの距離がそれほど遠いならば、西回りの航路は短いはずだとコロンブスは考え、最短で確実な航路をとれば成功の可能性が高いと主張し、カスティーリャのイサベラ女王を説得した」(太字は筆者)というのが、スミスの見立てである。

これはまさしく、3世紀後半の(普の陳寿が記した)歴史書『三国志』の一部である、魏志倭人伝における邪馬台国の推定地論争での、距離をとる(畿内説)か、方角をとる(九州説)かの錯綜(さくそう)を物語っていないだろうか。記述のままとすれば、邪馬台国は太平洋上に位置する。その後の大和朝廷への連続性を踏まえれば畿内説になるが、考古資料の数的優位などでは九州説も捨てがたい。

私自身はこの分野の専門家でもないので、どちらの説にくみするものではないが、15世紀頃のヨーロッパの冒険家たちの粉飾された記録を冷静に読み解くスミスの指摘にならえば、九州説には一理があるのではないか。(専修大学名誉教授)

微生物で温室効果ガスに立ち向かう 茨城大 農学部中心に新研究組織 

1
4月1日スタートする「グリーンバイオテクノロジー研究センター」について説明する小松崎将一教授=茨城大学農学部

4月1日立ち上げ

二酸化炭素やメタンなど温室効果ガスの排出量削減に役立つ微生物を探して農業に取り入れ、気候変動緩和や環境保全につなげようとする研究が4月1日、茨城大学(太田寛行学長)でスタートする。新たな研究組織「グリーンバイオテクノロジー研究センター(Gtech)」を立ち上げるもので、18日、準備委員長の小松崎将一農学部教授らが記者会見して概要を明らかにした。

同センターは総合気候変動科学の推進を掲げる。さらに農業生態系の保全技術の革新、産学官連携を通じた社会実装を目指しており、阿見町中央の農学部を中心に、理学部(水戸)、工学部(日立)にウイングを広げて編成される。

農学部がある阿見キャンパスには1999年に設置された遺伝子実験施設(GRC)があったが、四半世紀が経過し、遺伝子研究は新たなステージに移行したとの判断から、同施設を発展的解消し、Gtech設置に向かった。

研究体制は、①微生物を活用した農業や生態系における温室効果ガス低減に取り組む「農業・生態系保全ユニット」②微生物による物質循環機能のゲノム解析の解明に取り組む「微生物遺伝子情報解析ユニット」⓷これらの研究の社会実装を促進する「社会共創ユニット」-の3つのユニットで構成される。

環境再生型有機農業の成果ベースに

世界の二酸化炭素(CO₂)やメタン(CH₄)、一酸化二窒素(N₂O)などの温室効果ガス(GHG)排出量のうち「農業・林業・その他の土地利用」はおおむね4分の1を占めるとされる。日本の農業分野からのGHG排出は稲作によるメタン排出(約39%)が最多で、畑地からのN₂O排出(15.5%)も多くを占める。

地中でメタン生成や硝化、脱窒などの反応が起こっての排出のプロセスだが、肥料を投入せず地中の微生物の働きに任せた有機農法を採用すると土壌の炭素貯留能力が向上し、土壌に健全性をもたらすことが分かっている。同農学部では不耕起栽培やカバークロップの活用などによる環境再生型有機農業で成果をあげてきた。

これらの実績をベースに今後は、農地における土壌炭素・窒素の動態や循環機能の解析などを行うとしている。作物としては稲作と穀物を中心とした畑作が対象となる。

小松崎将一教授は「農業活動は世界中で営まれており、特にアジアにおける農業の温暖化対策研究の拠点としたいが、農学部には霞ケ浦流域で培った研究実績もあり、まずは地域の農業や環境保全に貢献する成果を上げていきたい」としている。(相澤冬樹)

谷田部の飯塚伊賀七「五角堂」《ご近所スケッチ》15

0
イラストは筆者 15

【コラム・川浪せつ子】つくば周辺の絵を描いていくと言っておいて、最近はなんだか行き詰まりを感じていました。ステキな風景はたくさんあるのですが、もう一つ個性を出すことができませんでした。そんな時にたまたま見つけたのが、つくば市民センター講座「つくば市の歴史や文化財を知ろう!」というチラシ。開校1日前に締め切られていましたが、電話するとあと1名OKということで滑り込み。

以前から、つくば周辺の歴史には興味がありましたが、なかなか勉強するチャンスがありませんでした。でもこの講座、あまりに面白くて目覚めました! つくば市には遺跡が600カ所以上あるそうです。TX工事などで掘り返したところからも発掘され、研究学園駅~みどりの駅の間では、県の大規模な発掘が始まったそうです。

郷土史に目覚めた私

そこで、以前から気になっていた「飯塚伊賀七の五角堂」(つくば市谷田部)を見に行き、描いてみました。前々から、この地にどうしてこんな素晴らしい研究(和時計)ができたのか疑問に思っていましたが、それを解決してくれたのが「つくば市谷田部郷土資料館」。五角堂の近くの建物(1階保健センター、2階図書館)の3階にあります。40数年近くつくばに住んでいて知りませんでした。皆さん、ぜひ行ってみて!

歴史に目覚めた私は、土浦市の「上高津貝塚ふるさと歴史の広場(考古資料館)」へも。それに、つくば市内にある「桜歴史民俗資料館」。いずれも無料か低価格で入館できます。私の場合、歴史館巡りの目的は歴史の紹介ではなく、あくまでも「絵」です。でも歴史を知ることで、今まで以上に地域を愛しちゃうことになりました。(イラストレーター)

飯塚伊賀七が設計した五角堂=つくば市谷田部

筑波山地域ジオパークが絵本に

0
絵本を紹介する岡林ちひろさん(左)と、おおさわちかさん=つくば市役所

独特の地形や地質をもつ「筑波山地域ジオパーク」をモチーフとした絵本「ロッグとビットのおかしな旅 ひみつのてっぺん」(ロクリン社)が完成した。18日、作者の岡林ちひろさん(53)と、絵を担当した絵本作家のおおさわちかさん(51)がつくば市役所を訪れ、五十嵐立青市長を表敬訪問した。本はAB判サイズ、44ページで、前半35ページが絵本に、後半9ページがジオパークについての解説になっている。筑波山地域ジオパーク推進協議会が監修を務めた。

作品は、筑波山や周辺地域を舞台にした、好奇心旺盛な主人公のカエルとウサギによる冒険物語。今にも落ちそうな巨岩の下をくぐり抜ける「弁慶七戻り」や「ガマ石」など筑波山の奇岩や、12万年以上前のカキの化石が露出する霞ヶ浦に面する出島半島南端の崎浜・川尻地区の崖、大きく蛇行する桜川と小貝川など、筑波山地域ジオパークの特色ある自然が多数登場する。フランスで絵画を学び、フランスや日本で絵本作品を出版してきたおおさわさんが、色彩豊かに筑波山地域の自然を描き込んだ。

岡林さんは「物語に登場するのは地域に実際に生息する植物や動物たち。主人公と一緒に冒険を楽しんでもらうような物語にした。苦労して山頂にたどり着いて見た風景への感動を、主人公と同じように感じてもらえたら」と作品への思い話す。おおさわさんは「実際に筑波山に登って、山頂から見た平野の広がりに感動し、その思いを絵に表現した。自然の質感や温かさを大切に描いたので、見てくれる子どもたちにそこを感じてもらえたらうれしい」と語った。

同ジオパーク推進協議会会長を務める五十嵐立青つくば市長は「ジオパークの認知度について悩んできた。ジオパークには未就学児や小学生たちが多く訪れている。今回の作品を通じてジオパークの存在をさらに多くの方に知ってもらい、実際に現地に足を運び、学びを深めてもらうきっかけにしてもらいたい」と話した。

筑波山地域ジオパークは、つくば、石岡、笠間、桜川、土浦、かすみがうらの6市にまたがるエリアで構成されており、一帯にある筑波山、霞ケ浦、平野を流れる河川が生み出す独特の地形や地質、地域に根ざした営みが評価され、2016年に日本ジオパークに認定された。4年ごとの審査をへて、今年1月に2度目の再認定を受けた。(柴田大輔)

◆絵本「ロッグとビットのおかしな旅 ひみつのてっぺん」は今月27日から販売される。価格は1870円(税込み)

京都・94歳の語り部《デザインを考える》18

1
白川女(京都府立大学歴彩館・京の記憶アーカイブより)

【コラム・三橋俊雄】今回は、1998年の暮れに、白川女(しらかわめ)をされていた94歳のYKさんから伺った「ちょっと昔の京都」のお話です。白川女とは、京都北白川に住み、四季の草花を頭上に載せて京都市内を売り歩いた女性たちのことです。

「ひーふのさんきち、ひるはうまおい、よるはくつおち、おひめさまがた、りょうちすごろく、おめんかけとて、にわのもみじを、はるとながめて、ほーほけきょとさえずるあすは、ぎおんのにけんじゃやで、ことやしゃみせん、はやしてんてん、てまりうた、うたのなかやま、ちょろんごんじゅで、ちゃろくろくろく、ちゃしちしちしち、ちゃはちはちはち、(中略)いちでよいのが、いとやのむーすめ、にでよいのが、にんぎょやのむーすめ、さんでよいのが、さかやのむーすめ、さかやむすめはきりょうがようて、きょうでいちばん、おさかでにばん、さがでさんばん、よしだでよばん、よしだおとこにだきしめらーれて、くしやこうがい、こちゃもーろーた」

この唄は、YKさんが天保2年生まれのおばあさんから教わった「てまりうた」です。

生活文化の美学や哲学

京大農学部をつくるときに、お地蔵様がぎょうさん出てきて、そのお地蔵様を粗末に扱ったら皆ケガして、それからお祭りをしはった。比叡山から良い石が出て、夫が東福寺山門の前の石灯篭一対、京都市美術館や国立京都博物館の土台の石をつくった。御所の建令門の土台の石の仕事では、戸籍謄本を持って身分の保証とした。

「味噌(ミソ)豆たことて 、豆炊いて、豆の数ほど家焼いて、もよもん(屋号)とは、ちーはうちーはう」。これは、「おひたき」という氏神さんの行事があり、ミカンやユズの香りのする三角のオコシやオマン(饅頭)をもらいに行きたくて、頼まれていた豆の火の番を放ったらかしにして火を出してしまった、というお話です。 

YKさんが、親指などすれたところを刺し子した足袋に草鞋(わらじ)を履いて花売りに行くと、皆がきれいに刺してあるなと言ってくれた。おばあちゃんが小さな布を刺して、雑巾にして使った。夜なべに、行灯をくるっと回して、灯明の明かりで着物を継いで継いで、ほかさへん。誕生日にボウダラを炊くのがごちそうだった。普段は野菜を炊いて揚げ豆腐を入れたり、男は酒を呑むので魚が一つ付いた。

毎月1日は小豆ご飯、1日と15日はカシワ(鶏肉)をすき焼きにして食べた。ニシンと刻みコブのおかずの「しぶうこぶう(ニシンの渋みと昆布)」は慎ましく暮らすようにとの意味があった。桶(おけ)がすいて(隙間が空いて)きたものは、川幅が1メートルくらいで深さ30センチくらいの小川に沈め、コイモ(里芋)を入れて、竹の棒を組んだ道具で芋洗いをした。白川女が頭に乗せていて使い古された「箕(み)」は、ちりとりや土運びの道具として転用した。

こうしたYKさんとの出会いが、コラム16(25年1月21日掲載)と17(2月18日掲載)で取り上げた「京のしまつ調査」の始まりでした。京都の「普段着」の暮らしの中には、ものを大切にしながら豊かさを追求する「生活文化(Design of Life)」の美学や哲学がありました。(ソーシャルデザイナー)

「利他的行動とり社会の役に立って」 日本国際学園大学で卒業式

0
答辞を読む犬嶋美雨さん(中央右)

日本国際学園大学(つくば市吾妻、橋本綱夫学長)で17日、卒業式が催された。128人の卒業生を前に橋本学長は「世界は自国の利益を追求する時代へと変わってきた。今後一層競争が激化する社会で生き抜くために重要となるのはAIとデータだ。本校では経営情報学を学んだと思うが、利他的な行動をとることが必要。社会の役に立つようがんばってほしい」とエールを送った。筑波学院大学から名称を変更し、昨年4月、日本国際学園大学として開学後、初めての卒業式となった。

告辞を述べる橋本綱夫学長

卒業生を代表して経営情報学部メディアデザインコース4年の犬嶋美雨さん(22)は答辞で「大学生の集大成として臨んだ卒業研究は、想像していたより多くの経験と学びを与えてくれた。扱った研究テーマの中で、私たちは案外自分のことを不確かにしか知らないまま生きていることがわかった。実験も一人では出来ないように、自分一人だけの知識思考では自分の特性すら知ることが出来ない存在であることを知った。大学で得た知識や経験を生かし、これからの未来を歩んでいきたい」と語った。

犬嶋さんは大学時代を振り返り「卒業研究は大変だったが、楽しい学生生活を送ることができた。仕事は介護職、資格などをとりしっかり仕事をしていきたい」と述べた。

式典では、卒業生を代表して経営情報学部4年の佐藤碧さんが橋本学長から学位記の授与を受けた。優秀な成績や功績があった卒業生に褒賞が授与され、経営情報学部4年の佐藤碧さんに学長賞、同4年の日高悠希さんに理事長賞、矢治竜乃介さんに大江賞がそれぞれ贈られた。

式典に臨む卒業生ら

同大は1990年、東京家政学院大の筑波短期大学として開学。96年に4年制の筑波女子大学になり、2005年に男女共学の筑波学院大学になった。大学の運営は19年度に東京家政学院から学校法人の筑波学院大学に移り、23年からは学校法人名を日本国際学園に変更した。昨年からは姉妹法人の東北外語学園(仙台市、橋本理事長)が運営する仙台市の東北外語観光専門学校に新たに日本国際学園大学の仙台キャンパスを設置した。

つくばキャンパスは、国際教養モデル、英語コミュニケーションモデル、現代ビジネスモデル、公務員モデル、AI・情報モデル、コンテンツデザインモデルがあり、これらのモデルから選択し専門の学びを深めることができる。外国人留学生は日本文化ビジネスモデルで学べる。昨年の新入生からは、開学とともに選択できる学びに変わった。(榎田智司)

現金取扱でつくば市が虚偽報告、県「非常に悪質」 生活保護 特別監査

66
昨年末、県がつくば市に出した特別監査結果の通知の一部

つくば市の生活保護行政に関する不適切な事務について、県が同市に対し異例の特別監査を実施している問題で、昨年末、県が特別監査結果を同市に通知し、現金の取り扱いについて、同市が県の監査に虚偽報告を行っていたとして「非常に悪質」「誠に遺憾」だと指摘していたことが情報開示請求で分かった。

特別監査の結果は昨年12月25日に同市に出された。総括的事項として①現金の取り扱いに関する一般監査での虚偽報告のほか、②誤支給に伴う保護費返還決定事務の遅延③生活保護費返還金の不適切な債権管理の3点について指摘している。

①現金の取り扱いに関する一般監査での虚偽報告ついては、同市が生活保護費を受給者に支給するにあたって、2019~23年度にかけて現業員(ケースワーカーなど)が現金の取り扱いを組織的に行っていたにもかかわらず、市は県に提出した同年度の監査調書に虚偽の回答を行い県に提出していた、さらに23年度の事務監査でも事実と異なる説明をしていたとし、市に対し「監査において虚偽の報告を行う行為は非常に悪質であり、生活保護行政に対する社会的信頼を損なうものとして誠に遺憾」だと指摘、「二度と同じ過ちを繰り返さないよう対策を講じ」、要因を分析した上で改善に向けた取り組みを報告するよう求めている。

現金の取り扱いに対しては、会計検査院が2007年度決算検査報告で、実地検査した全国212の福祉事務所のうち42カ所で現業員が生活保護費を取ったり、失くしたりしたなどがあったことから是正改善を求め、厚労省は現金の取り扱い手順や決済権者を明確にした事務処理規定の整備や、現業員の出納業務への関与の縮減や事務処理方法の見直しなどを求めていた。

市によると、内部規定はあったが組織内に周知徹底されず、引き継ぎもされなかったため適切に運用されなかったとしている。昨年1月、県から確認があり、その後是正したとしている。

特別監査で県が指摘した②誤支給に伴う返還決定事務の遅延に関しては、県の指摘を受け同市が昨年7月に発表した、一時扶助による障害年金の診断書料の誤支給、障害者加算の誤支給、重度障害者加算の誤支給などの(24年7月20日付)その後の対応について、保護費の返還決定事務が遅延している例があるので「返還決定事務を遅滞なく行い、返還金にかかわる国庫負担金を適切に精算する」ことを求め、遅延の要因を分析した上で、改善に向けた取り組みを報告するよう求めている。

➂生活保護費の返還金の不適切な債権管理については、同市が昨年8月に発表した生活保護費の過支給分の返還金にかかわる不適切な事務などについて(同8月21日付)、期限までに過支給分を返還できなかった受給者などに対し行うこととされている催促や催告にかかわる記録がない例、受給者など死亡した場合の相続人調査が適切に行われていない例が認められたほか、不納欠損にかかわる事務が遅延している例が認められたなどとして、厚労省の通知に基づいて適切な債権管理を実施し、さらに不適切な債権管理の要因を分析した上で、改善に向けた取り組みを報告するよう求めている。

特別監査結果について県福祉人材・指導課は「継続して指導中の案件」だとしている。(鈴木宏子)

広がるか? 壊し屋トランプの世界《吾妻カガミ》204

8
高層マンション(土浦市)と筑波山

【コラム・坂本栄】トランプが米大統領になってから2カ月がたちました。予想通りと言うか、世界中をハラハラさせています。「100年前に戻る?トランプの世界」(1月20日掲載)では、経済は保護主義(自国経済・産業優先)、政治は孤立主義(自国第一・他国軽視)、外交は「力が支配」と書きましたが、予想以上です。

自由貿易の終わり

関税引き上げを多用する「関税原理主義」には驚いています。仮想敵国中国からの輸入を減らして相手にダメージを与えたいという理屈は分かります。しかし隣国のカナダやメキシコからの輸入品に高い関税をかけ、日本や欧州にも同様の行動を起こすというのは狂っています。

私が通信社の経済記者だったころ(1970~2000年)、米主導で貿易の自由化(関税引き下げがその柱)が進められました。南米ウルグアイまで飛んで多国間交渉を取材したこともあります。しかし自由化の流れが後退、21世紀に入ると自由貿易圏(域内は自由貿易、域外には保護貿易)が主流になります。米国、カナダ、メキシコで形成する北米貿易圏はその代表的なものでした。

ところが、トランプは域内2国に高関税を適用することで北米貿易圏を自ら壊し、両国との間の貿易を混乱させる動きに出ました。自由貿易と保護貿易の間に位置する自由貿易圏システムさえ否定、世界を保護貿易に戻そうとする動きです。

自ら国是を捨てる

トランプの孤立主義がよく分かるのは、移民嫌いです。米国は、欧州、アフリカ、中南米、中国、日本など世界中からの移民によって出来上がった国です。それを自国に都合のよい外国人を除き入国させないというのですから、米国の国是を自ら捨てるようなものでしょう。

クリントンとレーガンが大統領だったころ、私はワシントンの郊外に住んでいました。首都から車で20分のマクリーン(VA)という住宅地でしたが、右隣りはドイツ系の退役陸軍中将、左隣りは世界銀行に務めるインド人でした。どちらも米国移民(退役中将は数代前)のエリートです。彼らのような働きがなければ米国は偉大(トランプの決めぜりふ)になれなかったでしょう。

私は、マーロン・ブランド、アル・パチーノらが出演するフランシス・F・コッポラ監督の映画「ゴッドファーザーⅠ・Ⅱ・Ⅲ」のファンです。イタリア移民の生活やマフィアの世界を描いた映画ですが、彼らのようなハングリーな移民がいなければ米国の生活娯楽産業は育たなかったでしょう。

決めるのは強国?

トランプがロシア・ウクライナ戦争の仲裁に乗り出すに当たり、ロシア寄りの姿勢をはっきり示したことにも驚きました。これは米国がウクライナを見捨てることを意味します。独ヒットラー総統の領土的野心に譲歩した英チェンバレン首相を思い起こさせます。

こういった強国間の取引を目の当たりにすると、日本としても対米関係を見直す必要があるでしょう。NATOの欧州主要国は「米の核の傘は当てにならない」と思っていますから、米の核抑止力を前提に安全保障を考えている日本にとって米の軽さは深刻です。トランプが言う日米安保の片務性(米側に不利だ!)どころか、枠組み全体を再考しなければなりません。(経済ジャーナリスト)

土浦花火2025「春の章」《見上げてごらん!》38

14
「HEART花火」クラウドファンディング募集のデザイン

【コラム・小泉裕司】4月5日(土)は、土浦出身の俳優、故三浦春馬さん(享年30)の誕生日。午後6時30分、霞ヶ浦ほとりの土浦新港で、春馬さんを慕う仲間「HEART花火」がミュージックスターマイン花火を打ち上げる。2022年の第1回から、クラウドファンディングで全国の賛同者から資金を集めて開催しているもので、今年で4年目。

昨年に続く音楽付き花火、今年は春馬さん主演の映画「天外者」(てんがらもん)のオープニングテーマ。打ち上げ担当の煙火業者は、春馬さんの著書「日本製」に登場する山﨑煙火製造所(つくば市)。初回から担当しているが、これまで以上の見応えあるプログラムが用意されたようだ。

オープニングは恒例の、春馬さん慰霊の白菊花火4号玉が3発。このあと、最大直径約15センチの5号玉が19玉。イルミネーションのように光が動き回る花火も含まれ、地上から吹き上がる色とりどりの花束花火、ハートや桜を模した型物花火などが、観覧者に強烈な感動を醸し出すだろう。

企画起ち上げから現在まで

今回に至るまでには、スタッフの並々ならぬ努力と多くの関係者の支えがあった。

2022年1月、三浦春馬さんに鎮魂の祈りを捧げるとともに、誕生日祝いの思いを花火にのせたいと思う仲間3人で、この企画を立ち上げた。このときの資金賛同者は286人。68万円の支援が届けられたが、コロナ禍の影響で、無観客での打ち上げとなった。

そもそも、この企画を後押ししたのは、新型コロナの影響を受けた花火業界支援のために土浦市が始めた「マッチング花火事業」。記念日などで花火を打ち上げたい個人や法人に花火業者を紹介するもので、まさに「HEART花火」との理想の「マッチング」といえる。2年目は356人から144万円、昨年の3年目は503人から241万円の賛同が寄せられ、金額の増加に伴い、打ち上げ、音響、記録動画、観覧者へのおもてなしなど、企画内容も拡充されてきた。

観覧者は国内にとどまらず、昨年は米国からも訪れた。今週、日本初の大リーグ開幕戦に期待が高まるが、ドジャースの本拠地ロサンゼルスやヤンキースの本拠地ニューヨークからもやって来た。そして今年は、678人から目標額の350万円を大きく上回る452万円が届けられた。

クラファンのリターンは花火打ち上げ

花火大会を開催するまでには、火薬類消費や航空法関係、施設利用など、各般の手続きに加え、警備体制や保安対策などが必須となる。こうした課題をクリアして、美しい、心に残る花火を見ることができる。改めて、主催者、春馬さんのファンをはじめ、企画賛同者、カメラマン、音楽関係者などサポートされる皆さまが一体となって、土浦で春花火を実現されていることに、心から敬意を表したい。

HPでは、「一人で出来ることは限られているが、誰かが誰かを思いやる気持ちや、平和を願う気持ちの集まりが、何かを変えるきっかけになることが、私たちスタッフ一同、心からの願い。そして、花火師さんが創り出す花火を、春の土浦で打上げる取り組みを、これからも皆様と一緒に、少しずつ充実した催しに育てていきたい」と、控えめながらも、継続への熱い想いを伝える。

花火のご縁

土浦セントラルシネマズ(土浦市)では「天外者」を長期上映中。当日には、田中光敏監督が映画館を訪れるとのこと。田中監督は、昨年の大曲全国花火競技大会の審査員。ここでも土浦と大曲のご縁を感じざるを得ない。

そして、今年は土浦の花火100年。第1回が開かれた地で行われる「HEART花火」。100年前に思いをはせながら、春の湖上を見上げることにしよう。本日はこれにて、打ち留めー。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)

<参考> 当日は、市内各所で、春馬さんファンによるイベントが予定されている。

ちょっと先の未来に出会える 10年ぶり常設展示施設を一新 産総研つくば 

13
部外者には容易に立ち入れないスーパークリーンルーム(産総研つくば西)の見学も臨場感ある映像体験でできる=AIST-Cube「AIST DISCOVERY」

完全予約制 4月1日オープン

産業技術総合研究所(産総研、AIST)は、つくば市東、つくばセンターにある常設展示施設の展示内容を一新し、「AIST-Cube(アイスト キューブ)」と改称して4月1日にリニューアルオープンする。

これまで一般向けに「サイエンス・スクエアつくば」として公開されてきた展示施設の10年ぶりのリニューアル。新事業創出をめざす企業、研究を志す学生たちと研究成果を体感しながらコミュニケーションを深めて、新たな価値の創出につなげていくのが目的で、4月からは完全予約制になる。

社会課題20テーマで

施設は、エントランス部分を除くと約500平方メートルの広さ。展示は、産総研が取り組む20の社会課題をテーマ化した3つのゾーンで展開される。①エネルギー・環境・資源制約への対応②人口減少・高齢化社会への対応⓷レジリエントな(自然災害などからの回復力をもつ)社会の実現-の3ゾーン。

具体的には、安全に大量の水素を貯蔵できる水素吸蔵合金、音楽と歌詞を楽しむ新表現「リリックアプリ」、特殊なゲルで屋根に積もった雪を滑り落とす技術-などの開発がテーマ化された。

産総研の研究拠点は全国展開されていることから、現地映像や電子顕微鏡画像で紹介するAIST DISCOVERY(アイスト ディスカバリー)のゾーンも設けている。幅11メートルの大型スクリーンに展開される映像で、研究の最前線を体験できる。

最新の研究成果にとどまらず、その成果が社会に実装されたらどうなるのかなど“ちょっと先の未来”と出会える空間を意図したといい、内容は適宜更新され、テーマの入れ替えも行われるという。

産総研の宮崎歴ブランディング・広報部長は「フラッと来てのぞいてみるという見学の仕方はできなくなるけど、予約はスマホから簡単にできるので、たとえば地質標本館を見にきたついで寄りたくなったら試してみて。きっと発見があるはず」という。(相澤冬樹)

◆AIST-Cubeはつくば市東1-1-1、産業技術総合研究所つくばセンター中央事業所内にある。開館時間:午前9時30分~午後5時、毎週月曜休館。入館無料。見学は完全予約制。AIST-Cube公式ホームページから予約できる。問い合わせは電話029-862-6215(同ブランディング・広報部)へ。

「眠狂四郎」の悪女と聖女《映画探偵団》86

8
イラストは筆者

【コラム・冠木新市】市川雷蔵は映画『大菩薩峠』3部作(1960〜1961)を終えたあと、2年後に『眠狂四郎』シリーズを始める。柴田錬三郎原作『眠狂四郎無頼控』は中里介山作『大菩薩峠』の主人公・机竜之助の影響を受け書かれている。その意味から雷蔵にふさわしい企画だった。

だが第1作『眠狂四郎殺法帖』(1963)は、雷蔵自身や脚本家・星川清司、製作者も認める失敗作であった。雷蔵が結婚して幸せな家庭ができたため、主人公の虚無感をうまく表現できなかったからだ。

1964年の第2作『眠狂四郎勝負』、第3作『眠狂四郎円月斬り』でその点は修正され、転び伴天連の子で茶髪の狂四郎イメージは固まるが、興行的にはヒットしなかった。そして第4作がヒットしない場合は、シリーズ打ち切りの方針が決まる。

時代は東京オリンピックを迎え盛り上がっていたが、映画界はテレビの普及で斜陽の時期に入っていた。10月10日から開催されたオリンピックの最中、『眠狂四郎女妖剣』(併映は『座頭市血笑旅』)が公開される。これが大ヒットし、雷蔵が亡くなる年までに第12作が製作された(映画探偵団14)。

シリーズ続行の決まった『眠狂四郎女妖剣』を見てみよう。この作から、眠狂四郎の円を描く円月殺法はストロボ撮影となり、剣が幾重にも映り催眠効果を上げ、その後シリーズの定番になる。また、この作品から狂四郎を狙う悪女が次々と登場する。

この年の4月に『007/危機一発』が公開され、世界中で007大ブ一厶が起きていた。ジェ一ムズ・ボンドを助ける女性やボンドを狙う女性をボンドガールと呼んだ。ボンド映画の手法を取り入れて狂四郎ガールを設定し、これが受けた。

将軍の娘とキリシタン女僧

『女妖剣』には2人の女性が出てくる。1人は將軍の娘の菊姫(毛利郁子)。この女性は顔の下半分に火傷(やけど)のようなデキモノのようなものがあり、常に顔を隠している。それだけならよいのだが、菊姫は美しいものを憎み、大奥の美女をアヘン患者にし、薬が切れ苦しむ様子を楽しんだあと殺害し、全裸にして川に捨てる。

また若い美男を持て遊んだ後、同じく殺す狂女である。狂四郎に素顔を見られ、恥ずかしめを受けた菊姫は逆上する。その後シリーズには狂四郎の宿敵として能面をつけた菊姫が度々登場するようになる。『007/ノ一・タイム・トゥ・ダイ』(2021)には能面をつけ、顔に奇妙な痣(あざ)をもつ悪役がボンドの敵として現れるが、菊姫をモデルにしたのではないだろうか。

『女妖剣』には聖女が1人出てくる。キリシタンの尼僧のびるぜん志摩(久保菜穂子)だ。隠れキリシタンの信頼を一身に集める美しい指導者である。ところが、実は財力を欲しがる曲(くせ)者なのだ。

尼僧を信じて死んでいった者たちに代わり、その正体を知った狂四郎が『お前を斬る』と言うと、尼僧は開き直り『私を斬れるでしょうか』と、金を背に美貌を誇るのだ。聖女に見えた大悪女である。もちろん、狂四郎は斬って捨てる。金と美貌を無視する狂四郎を信じられないといった表情で死んでいく尼僧。

『眠狂四郎』シリーズに出てくる女性は、ほとんど狂四郎の命を狙う悪女である。雷蔵の女性ファンは、どう感じていたのだろうか。今にして思う。悪女をバッサバッサと斬る眠狂四郎に魅了された女性ファンは、同性として、悪女、偽りの聖女が許せないと感じていたのではないか。眠狂四郎は女性の本音を表わしている。サイコドン ハ トコヤンサノセ。(脚本家)

土浦藩の町人・武士13人 それぞれの「まなび」 博物館で特別展

3
展示物の双六(すごろく)を複製して実際に遊べるようにした展示を紹介する土浦市立博物館の井上翼学芸員

「まなびのかたち―江戸時代のキャリアデザイン」をテーマに掲げた特別展が15日から土浦市中央、同市立博物館で始まる。同館が1988年の開館以来地道に調査、収集してきた史資料から、特に江戸時代の土浦藩で活躍した武士と町人13人の事績を紹介、それぞれの「まなび」の系譜をたどる。

13人は土浦藩土屋家の第2代藩主、政直(まさなお)と第10代寅直(ともなお)をはじめ、町人から5人、武士から6人で構成される。政直を除けばほぼ江戸時代後期に活躍した人物群だ。

町人は幕末期に寺子屋を開いた沼尻墨僊(地理・天文学者)、墨僊に学んだ尾形とみ(商家の女主人)、色川三中(国学者、商人)、内田義制(関東取締出役の道案内)、辻元順(医師)の5人。武士は関知信(砲術指南役)、山村才助(地理学者)、岡部洞水(藩のお抱え絵師)、藤森弘庵(藩校郁文館の教師)、関雪江(書家)、長島尉信(農政学者)の6人だ。

これまでも特別展など何らかの形で紹介された人物だが、内田義制がきちんと取り上げられるのは今回初めて。博物館が収集、あるいは個人から預かって管理している図画や文書のほか、墨僊の傘式地球儀や大店(おおだな)のひな人形などの標本を展示した。

 

沼尻墨僊制作の傘式地球儀(左)と渾天儀

水戸市の県立歴史館から借り受けた国重要文化財「一橋徳川家席順」も展示される。藩士の中でも藩主に会えるのは「席順」の上位者に限られるなど、当時の厳格な身分制度を表す文書となっている。同様の史料が土屋家文書の中にもあったことから、その対比を見せる形での展示となる。

この身分制度は当時の双六(すごろく)遊びの中にも投影され、最初のふりだしで低位の役職を選ぶとなかなか上位には行きつけない。ゴールの「大老」まで63マスで構成される双六は実際に遊ぶこともでき、「学び」の一端になっている。

◆第46回特別展「まなびのかたち―江戸時代のキャリアデザイン」は15日(土)~5月6日(火)、土浦市立博物館(土浦市中央1)で開催。開館時間は午前9時~午後4時30分(月曜休館)。入館料:一般200円、高校生以下無料。併せて博物館では13人に関連する史跡・遺産をめぐる「土浦城ウオッチング」を20日に開催する(要予約)ほか、永井博県立歴史館歴史資料課特任研究員と千葉真由美茨城大学教育学部教授による記念講演会を4月17日、県県南生涯学習センター(同市大和町)で開く予定だ(参加無料、要予約)。問い合わせは電話029-824-2928(同館)へ。

土浦城「御城印帳」「御城印」を刊行

 

土浦城「御城印」(手前)と2種の「御城印帳」

特別展開催に合わせ同博物館は15日から、新デザインの土浦城「御城印(ごじょういん)」と土浦城「御城印帳」を刊行する。御城印は第3弾、御城印帳は第2弾となる刊行で、前回分はすでに完売となっていた。

御城印帳は全体色調を一新し、表紙には土浦城櫓(やぐら)門と東櫓、歴代の城主たちの家紋と日本の伝統的な和模様を配した。すみれ色と草緑の2種がある。A5判、42ポケット。1冊2500円(税込み)。

御城印は5000部を作成。1枚300円(税込み)で販売。第2弾は完売となっているが第1弾は数百部の残部があるそうだ。博物館のほか土浦市観光協会(同市中央)で販売する。(相澤冬樹)

閉まるシャッターと接触し来庁者が顔面打撲 つくば市役所

40
つくば市役所

つくば市は14日、同市役所本庁舎1階ロビーで13日午後4時45分ごろ、歩行中の来庁者が、受付時間終了の4時30分に合わせて閉鎖作動中だった防犯シャッターに接触し、顔面に打撲を負う事故があったと発表した。

市管財課の発表によると、けがを負った来庁者に対し、市の保健師が応急措置を行い、医療機関への受診を促した。市は引き続き通院状況に応じた適切な対応をしていくとしている。

通常、防犯シャッターが閉まる時は、市が警備を委託している会社の警備員が安全確認を行うところ、事故時、シャッターが完全に閉まる前に警備員が持ち場を離れ、安全確認を行わなかったとしている。

市は、警備を委託しているビルメンテナンス会社のともゑに対し、安全管理を徹底するよう改めて強く指導したほか、市としても庁舎の安全対策に努めていくとしている。

貴重な野生種、最新の園芸品種など500点を展示 16日から「つくば蘭展」

3
空中で栽培されるラン。7割が着生植物といわれる

筑波実験植物園

世界有数の野生ラン保全施設である国立科学博物館 筑波実験植物園(つくば市天久保)で16日から、企画展「つくば蘭展」が開催される。同園が保有する「つくばコレクション」のうち開花中の貴重な野生種約200 点と、協力団体が丹精込めて育てた普段見ることのできない最新の園芸品種や失われつつある貴重な古典品種など300点の計500点を公開する。

今回は、学習帳の表紙を撮り続けたことで知られる写真家で自然ジャーナリストの山口進さん(2022年逝去)の渾身の力作「ランと昆虫の共生をとらえた」の追悼展示や、オーストラリアやヨーロッパの野生ランの実物も展示する。

バケツランの写真の前で説明する遊川知久さん

同館植物研究部 多様性解析・3保全グループ長の遊川知久さんによると、ラン科植物はキク科と並んで種類が多く、2万8000種の野生種がある。その姿は多様性に富み、一目ではラン科とはわからない種もある。見分ける方法は、特殊化した花弁と花粉、小さくて軽い種子、クッションのような根などの特徴だ。7割は着生植物で木の上で生活している。身近にもラン科の植物がいて、ネジバナなど普段雑草とし扱っている繁殖力の高い種類もいるという。

研修展示館入口付近に展示するのが、バニラの木。バニラもラン科だという。メキシコ産のバニラ・プラキフォリア、バニラアイスなどでおなじみの香りを持つ。遊川さんはボルネオ産のバニラ・ボルエンシスを比べて、おびき寄せる動物の違いでも匂いが変わってくると説明する。

メキシコ産のバニラ・プラキフォリア(中央左)とボルネオ産のバニラ・ボルエンシス(同右)

教育棟では、山口進さんによるランと昆虫の共生をとらえた貴重な写真のほか、虫をだまして命をつなぐオーストラリアやヨーロッパの野生ランの実物を展示する。熱帯資源植物温室では、つくば洋蘭会など愛好団体が育てた園芸品種など、研修展示館では筑波実験植物園のコレクションから世界の美しく、珍しい花を200点展示する。

遊川さんは「故山口進さんの写真は、何週間もかけて撮られたとても貴重なもので、ランと昆虫の不思議な共生のストリーを味わって欲しい」と来場を呼び掛ける。(榎田智司)

◆企画展「世界のランが大集合!つくば蘭展」は16日(日)~23日(日)、つくば市天久保4-1-1、筑波実験植物園で開催。開園時間は午前9時~午後4時30分(入場は4時まで)。関連イベントとして、植物園研究最前線と題した講座や、展示ガイド、オンライン講演会、栽培講座、持ち込み相談コーナー、鉢植え販売などのイベントも開催される。会期中無休。入場料は一般320円、高校生以下と65歳以上は無料。障害者手帳所持者とその介護者1人無料。つくば蘭展のホームページはこちら。詳しくは電話029-851-5159(同園)へ。

天才たちの老後(2)天賦の才《看取り医者は見た!》38

1
写真は筆者

【コラム・平野国美】今回は私が看た患者さんの話です。優秀な元物理学研究者でしたが、人付き合いが極度に苦手でした。引退後は引きこもるようになり、妻の作る食事にほとんど手を付けず、風呂を嫌がり、髪やひげも伸び放題でした。認知症を疑った妻は、認知症外来に連れて行きましたが、検査で簡単な引き算問題が出たところで診察室を飛び出し、外出を拒否するようになったというのです。

引きこもる部屋をのぞくと、椅子に座って寝ていた彼が「かっ」と目を開いて一心不乱に数式を書き始めたのです。その姿は不気味でしたが、どこか神々しくもありました。本人とはなかなか話せず、妻からこれまでのことを聞き出すと、若いころから奇行があったそうです。部屋にこもって数式を解いていて、食事を受け付けないこともたびたびあったそうです。

この日は、部屋にあったノートやメモ書きを少しもらって帰りました。この方は認知症なのだろうか? 紙に書かれた数式は落書きなのか? 何かを意味するものなのか? 高校の数学が赤点だった私にはまったくわかりません。

ところが、パソコンを使って、今はやりの人工知能に、ノートに書かれた数式を読み込ませると、「ロジスティック成長モデル」「ロンドン」「マクスウェル方程式」といったキーワードが出てきます。数式が合っているのか間違っているのか分かりませんが、何か意味のあるものが書かれていることは間違いなさそうです。

ある日の昼過ぎに診療に出向くと、やはり何かを解こうとしています。私と目さえ合わそうとしないので、その日のラスト診察に順番を変更して、夕方に再度出向くと、まだ計算をしておられました。1時間後、鉛筆を置いたところで、「解答は出ましたか?」と話し掛けました。

すると「解答は初めから分かっている。問題は、この数式が何を表現しているか? 美しいか? 醜いものか? そこなんだよ」と、神々しい答えです。「先生は頭が衰えているわけではないですね?」と話しかけると、「いや、大分衰えてきたよ。昔は紙と鉛筆を持たずに頭の中だけで完結できたからね」。おそらくこれが真実なのでしょう。

幼いころから難聴があり、ご両親は心配されたようです。しかし、独特の感性を認められて研究所に入ったようです。奥様の話では結婚し一緒に生活して、あまりに社会性や常識がないので驚いたそうです。金銭欲も出世欲もなかったそうです。

この方を認知症と呼ぶわけにはいかないと思います。この方とお会いしたあと、分野は違いますが同じタイプの方とお会いしました。そして私は、Gifted(ギフテッド、天賦の才)という言葉にたどり着きました。(訪問診療医師)

「サービスとエリアを拡大」 J:COM茨城の海老澤社長【キーパーソン】

12
海老澤孝一さん

ブランド名「J:COM茨城」の土浦ケーブルテレビ(本社・土浦市真鍋)は元々土浦地区を対象にしたケーブルテレビ会社として発足したが、今では県南を中心とした13市町村にサービスエリアを拡大、テレビ番組の放送だけでなくインターネットを活用する各種サービスを提供する会社になっている。サービスメニューとエリアを広げる戦略について海老澤孝一社長に聞いた。

ネットがサービスの柱に

本社は「つくば霞ケ浦りんりんロード」沿いに建つビルの中にある。裏手にはJ:COMロゴ入りの軽自動車を止める駐車場が確保され、県南地区へのサービス提供に出動できる体制が整っていた。

発足時(1983年)と現在の違いを聞いたところ、「元々ケーブルテレビ事業者、つまり電波障害を解消する補完メディアとしてスタートした。その後、インターネットによる通信サービスを事業に加え、今ではネットに付随するインフラを地域に提供する会社。メディア事業者として地域密着のテレビ番組も情報発信しており、生活インフラサービスとメディアとして地域情報を提供する特異な会社と言える」

サービスメニューは豊富で、電信柱経由で各戸に引き込まれた同軸ケーブルと、光ファイバーを使った①多チャンネルテレビ②インターネット接続③固定電話のサービスをベースにしながら、④ネット経由の防犯カメラ設置⑤住宅への太陽光発電パネル付設⑥電気・ガス・格安スマホ・小額短期保険の販売―にまで手を拡げている。

ケーブルは光ファイバー化

ユーザーとの契約は、インターネットとスマホは増えているものの、多チャンネルテレビは横ばい、固定電話は減少傾向にある。一方、アマゾンプライムビデオ、ネットフリックスなどの動画サービスを高速・大容量ネットで視聴する若者層が増えていることから、同軸ケーブル網を光ファイバー網に切り替えている。

工事は2024年夏から始まっており、サービスエリア(J:COM契約が可能な23万世帯)の光ファイバー化の完了は27年春になる。投資額は25億円という。

水戸地区でもサービス展開

光ファイバー化は、ベースになるサービスの強化、ケーブルを活用した新サービスの提供を狙ったものだが、対象エリアも広げている。自社ケーブルだけではなくNTTの光ケーブル網を借り受け、インターネットと固定電話の契約に絞って、今年から水戸・笠間エリアでもサービスを開始したそうだ。

「茨城はケーブルTV事業者が少ない。県庁所在地に事業者が存在しない唯一の県。事業者が存在する日立、県西、つくばの各エリアには進出しないが、今後は県央、県北、鹿行の各エリアには(他社ケーブルを借りる形で)出て行く」

言い換えれば、フルサービス地区の市町村(かすみがうら市、つくばみらい市、つくば市茎崎地区、阿見町、美浦村、牛久市、取手市、守谷市、常総市、石岡市、土浦市、利根町、龍ケ崎市)に安住することなく、メニューを限定して他エリアにも事業を拡大するということだ。

番組は地域密着が基本

J:COM茨城は、県南を中心としたローカル番組を地デジ11チャンネルで、全国展開するグループ局の番組などを同10チャンネルで提供している。最後に「地域に密着するテレビ番組」について聞いた。

「地域のイベント、暮らし、安心安全情報などを取材した『ジモト・トピックス』などの番組で放送していく。好評の高校野球番組は、夏季大会の生中継だけでなく、地元チームの監督や選手への事前インタビューにも力を入れる」「昨年末には、全国37カ所で開かれた花火大会のダイジェスト版を一挙放送した。今後もこういった企画番組を通じて地元を活性化するメディアでありたい」

【えびさわ・こういち】大学中退後、小金井市民テレビ(現ジェイコム東京)入社。ジェイコム埼玉東日本常務を経て、2024年6月から土浦ケーブルテレビ社長。水戸市出身、57歳。地元資本で発足した同社は1995年からジュピターテレコム(当時は住友商事が出資、2010年にKDDIも資本参加、契約先560万世帯)のグループ会社に。J:COM茨城の契約先は6万9000世帯。売上高86億円、純利益5億5000万円(2024年3月期)。

【インタビュー後記】県南に張り巡らしたケーブルを使って各種サービスを展開。多チャンネル番組も自前チャンネル番組もこのケーブルを経由。地上波TV局がない茨城ではJ:COMの番組は貴重。番組充実と視聴エリア拡大を期待。(経済ジャーナリスト、坂本栄)

文豪風入院日記④《遊民通信》108

12

【コラム・田口哲郎】

前略

日に日に腸の調子が良くなってくると、だんだん気持ちに余裕ができた。自分がいる病床の周りのことに関心が向くようになる。同室ではないが、廊下を挟んで向かいの個室には長期にわたって入院している患者が入っている。長患いということは病気が軽くないのだが、意識がはっきりしていて、歩き回れる人もいるようだ。

私のベッドは出入り口に近いので、他の病室の様子がよく聞こえる。向かいの個室の患者は高齢男性である。声が大きいので、元気そうなのだが、どうやら腹部の腫瘍をとる手術を行い、そのまま療養しているようだ。その患者は夜になると何度かナースコールを鳴らす。

看護師が駆けつけて、どうしたのか聞くと、「娘がそこにいるだろう?」と必ず言う。看護師が娘さんは今はいないと答えると、そうか帰ったのか、と納得する。同じやり取りが毎夜、繰り返されていた。

昼間、私が談話スペースにある自動販売機に水を買いに行くとき、ナース・ステイションのカウンターで、男性が「娘が来るはずなんだが」と看護師に聞いていた。看護師は娘さんが来る予定は今日ないよ、と丁寧に応対していた。私は声だけで知っていた男性の姿を初めて見た。やさしそうで、気さくな感じである。私の入院中、その男性がステイションで同じようなやりとりをしているのに何度か遭遇した。

家族的な人の存在

その男性患者がどんな病気なのか詳しく知る由もないし、家族関係がどうなのかもわからない。でも、男性が娘さんを待っているのは事実である。至れり尽くせりの医療を受けて、体は回復しているが、元気になってくると、心もはっきりとしてきて、体と同じように癒しを求めるのかもしれない。

ふと、人間にとって必要なものは何なのかを考えた。真っ先に浮かぶのは、衣食住であろう。それが満たされて、もし病気になっても、健康が回復し、必要になってくるのは家族あるいは家族的な人の存在なのかもしれない。

私は男性がさびしそうだとか、哀れだとかは思わなかったが、それでも早く娘さんに会えれば良いと思った。結局、私が入院している間、娘さんは現れなかったのである。ごきげんよう。

草々

(散歩好きの文明批評家)

新たに5課で残業代未払い つくば市 全庁調査結果

22
つくば市役所

生活保護業務などを担当するつくば市社会福祉課職員に対し、残業代(時間外勤務手当て)と特殊勤務手当ての未払いがあった問題を受けて(24年5月9日付)、他の課にも同様の未払いなどがなかったか、同市が昨年6~7月に全庁的な調査を実施した結果、新たに社会福祉課以外の5つの課で残業代未払いなど不適正な労務管理があったことがわかった。12日の市長定例会見で明らかにした。

市人事課によると全庁調査の結果、不適正な労務管理として職員から「(時間外勤務を)1時間以上やらないと(手当てが)付かない」「夜7時以降(の勤務)でないと付かない」「所属長に(時間外勤務手当ての)申請が認められない」など課の慣習や所属長の認識不足に関する回答が寄せられたという。

全庁調査は昨年6~7月、非正規職員を含む約3900人を対象に、実名で回答することを条件に庁内のネットワーク回線でアンケート調査を実施し、1203件の回答があった。そのうち不適正な労務管理があったと回答した職員にヒヤリングなどを実施し、新たに5つの課で残業代の未払いがあったとした。

今後は5つの課の職員を対象に、法的に未払い分を請求できる過去3年間にさかのぼって、対象人数や未払い時間などについて調査するとみられる。5つの課の名称は現時点で未公表。

一方、市社会福祉課職員に対する特殊勤務手当てと残業代未払いのうち(25年3月6日付)、まだ支払われていない残業代の支払い対象者は14人だとした。支払い時期について市人事課は、25日が最終日の市議会2月会議に未払い金の遅延損害金の議案を追加提案するのは難しいとし、できるだけ早期に支払いの手続きを進めたいとするにとどまっている。(鈴木宏子)

「楽しむことを諦めないで」インクルーシブ映画上映会 30日 つくばで

0
過去に開催されたAYAインクルーシブ映画上映会の様子(NPO法人AYA提供)

大きな声を出しても、動き回ってもOK

病気や障害を理由に、楽しむことを諦めないでー。そんな思いから生まれた「AYAインクルーシブ映画上映会 」が30日、つくば市稲岡、イオンモールつくば内の映画館 USシネマつくばで開かれる。上映作品は、映画ドラえもんシリーズ45周年記念作品の「のび太の絵世界物語」。イベントを企画したのは、医療的ケアが必要な重い病気や障害のある子どもと家族らがスポーツや芸術、文化を体験する場を提供するNPO法人AYA(東京都)だ。代表理事で医師の中川悠樹さん(41)は「会場では大きな声を出しても、じっとしていなくてもいいし、医療機器のアラーム音が鳴っても大丈夫。医療従事者もいる。大きなスクリーンで見る映画は絶対に楽しいはず」と来場を呼び掛ける。

体験を諦めざるを得ないのは社会課題

NPO法人AYA代表理事の中川悠樹さん(同)

AYAは2022年の団体設立以来、「健常の子どもが体験することを、病気や障害がある子どもにも体験してもらいたい」という思いから、スポーツ観戦や、小笠原諸島での海水浴等、多数のイベントを企画してきた。映画上映会は、過去の企画に参加した病気を持つ子の母親の声がきっかけだった。

「2000円握りしめて劇場に行けば映画が楽しめる、と言うのが一般的な感覚。でも私たちの社会には、周りの環境が整わずに映画にすらいけない人がたくさんいる」と中川さん。理由は、病気や障害の重さや、スロープやバリアフリートイレの有無だけでない。大声が出る、歩き回ってしまうなどの特性や、人工呼吸器のアラーム音、吸引機の機械音などが周りの迷惑になるのでは、という不安からくる遠慮があると言う。「『これがしたい』と思うことすら諦めている当事者や家族がいる。子どもたちがいろいろな体験を諦めざるを得ないのは社会課題」だと中川さんは指摘する。

上映会ではあらかじめ参加者に「医療機器のアラームが鳴る」「声を出したり動き回る」ことがあると周知し、歩き回っても足元が見えるよう照明を明るめに設定する、医療従事者を最低1人必ず会場につけるなどし、参加者が安心して映画を楽しめるよう配慮する。

環境さえ整えば体験できる

2023年に神奈川県川崎市で最初の上映会を開催した。その後、協力の輪が広がり、24年3月から6月にかけて「AYAインクルーシブ上映会2024春」を開き、全国11都府県で13回の上映会を実施し、延べ2056人が参加した。同年8月から10月の上映会では12劇場で約2000人が来場した。今年1月から3月初旬にかけても全国10か所で映画「モアナと伝説の海2」を上映した。参加者からは「家族で映画館に行けると思っていなかった」「兄弟にも我慢させてたけど、初めて家族で行けた」などの感想が寄せられているという。今回の上映会は、3月22日から6月15日にかけて、つくばを含む全国22か所で開催する予定だ。

中川さんは「いろいろなことを子どもに体験させたいと思う親は多いはず。体験する環境が社会に整っていないのが、今」だと話す。その上で「実際に映画を見て楽しんでいる姿を劇場の人に見せることで、劇場をより使いやすいものにしたいと思ってくれれば。実際に『これ、またやりましょう』と言ってくれる劇場の方もいる。病気や障害のある人を受け入れる事業者のハードルを下げることも我々の役目」だと話す。

「病気や障害を理由に諦めてしまう体験はゼロにしていきたい。周りの環境さえ整えば、病気、障害があっても体験できることはある。私たちの活動がきっかけになり、当事者や家族の方たちが社会に参加するきっかけになれば」と中川さんは思いを語る。(柴田大輔)

◆「AYAインクルーシブ映画上映会 in つくば」は3月30日(日)午前10時から上映開始。場所は、つくば市稲岡66-1イオンモールつくば2F、USシネマつくば。料金は、車いす席は全年齢1000円、一般席は3歳以上が1000円。2歳以下の子どもは保護者の膝上で鑑賞の場合は無料。事前申し込み制で、NPO法人AYAの公式LINEより申し込む。締め切りは19日(水)。応募多数の場合は抽選となり、抽選結果は24日(月)に応募者にLINEで連絡する。詳細は公式イベントページへ。